従来から、この種の煙感知器Aとして、図11(a)に示すようにハウジング20内に検知空間を有し、この検知空間に向けて間欠的に光を出力するLED(発光部)6と、LED6からの直接光が入射しない位置に配置され受光した光を電流に変換するフォトダイオード(受光部)PDとを備えたものが知られている(たとえば特許文献1参照)。この煙感知器Aでは、検知空間内に煙が流入すると、LED6からの光が検知空間内の煙で拡散反射されることによりフォトダイオードPDでのLED6からの光の受光量が増加し、フォトダイオードPDから出力される電流量が増加する。
LED6およびフォトダイオードPDは、LED6の前方に配置された投光レンズ23およびフォトダイオードPDの前方に配置された受光レンズ24と共に光学ブロック25を構成する。ハウジング20は、下面に開口部が形成され当該開口部に向けてLED6からの光が出射されるように光学ブロック25を収納したボディ26と、上面開口の有底円筒状であってボディ26の開口部を覆うようにボディ26に結合されるカバー27とを備えている。カバー27の周壁には煙を取り込むための開口窓が形成されており、カバー27内に前記検知空間が形成される。ここでカバー27内には、検知空間への虫の侵入を防止する防虫網28、および検知空間への外乱光の入射を防止するラビリンス21が検知空間を包囲するように配置される。ラビリンス21は、蛍光灯や白熱灯などからの様々な外乱光の入射を防止するとともに、検知空間内に煙がない状態でLED6の光がフォトダイオードPDに入射することを防止するために入り組んだ光路を持つ複雑な構造を採用している。
この種の煙感知器Aにおいては、図11(b)に示すように、ハウジング20内に収納された回路ブロック1に、フォトダイオードPDからの入力電流を電圧に変換して出力する電流電圧変換回路(IV変換回路)2が設けられている。さらに、電流電圧変換回路2の出力電圧を増幅回路12とフィルタ回路13とを通して判定処理部である発報判定回路14に入力し、前記出力電圧の変化量が所定の火災判定レベルを超えると発報回路15(ブザー等)で発報するように構成されている。なお、回路ブロック1には、各回路に電源供給する電源回路16と、他の発報手段等を連動させる連動回路17と、LED6と直列接続されたトランジスタTr1(図12参照)を含みLED6を周期的にパルス発光させるLED駆動回路18とが設けられている。
ここで用いられる電流電圧変換回路2は、たとえば図12に示すように演算増幅器OP1の反転入力端子と出力端子との間に変換抵抗R2を接続してなる変換部3を有し、この反転入力端子に入力電流Iinが入力されると、入力電流Iinの変動に応じて電圧値が変動する出力電圧Voutを出力端子Toutに出力するように構成される。図12の例では、非反転入力端子に基準電圧Vsが印加されているので、変換抵抗R2の抵抗値をr2とすれば出力電圧Voutは、Vout=Vs−(Iin×r2)で表される。要するに電流電圧変換回路2は、フォトダイオードPDがLED6からの光を受光していない定常状態での出力電圧Voutを動作点として、入力電流Iinの変動に応じて動作点を基準に出力電圧Voutを変動させることとなる。
また、近年では、設置が簡単であることから、電池を電源とした煙感知器Aの需要が増えている。電池を煙感知器Aの電源とする場合には、煙感知器Aの平均消費電力を抑えて電池の長寿命化を図るため、煙感知器Aを間欠駆動させる必要がある。この場合には、図13(a)に示す電流電圧変換回路2への電源供給も間欠的に行われることとなる。そのため、LED6は図13(b)のように電流電圧変換回路2への電源供給が行われている間にパルス状の光を出力する。ここで、検知空間に煙が流入してフォトダイオードPDがLED6からの光を受光すると、図13(c)に実線で示すように電流電圧変換回路2の出力電圧Voutの変化量ΔVは大きくなり図中の火災判定レベルに達することとなる。一方、検知空間に煙がなければ、図13(c)に破線で示すように出力電圧の変化量ΔVは小さくなり、火災判定レベルに達することはない。
ところで、図12のような電流電圧変換回路2では、図14(a)に示すように演算増幅器OP1のダイナミックレンジが、演算増幅器OP1の電源電圧VDDとグランドGNDとの間に規定されており、上述した出力電圧Voutはこのダイナミックレンジの範囲内で変動する。そのため、入力電流Iinがある大きさ以上になると出力電圧Voutが飽和してしまう。
たとえば上述した煙感知器Aにおいては、ラビリンス21を設けてあるものの、検知空間を外部から完全には遮断することはできないので、フォトダイオードPDに対して僅かながら外乱光が入射することがある。通常、外乱光は時間的変動が小さく、フォトダイオードPDがこの外乱光を受光することによりフォトダイオードPDからは時間的変動の小さい電流(以下、「低周波成分」という)が出力されることになる。そして、入力電流Iinに含まれる低周波成分がある大きさ以上になると、出力電圧Voutが飽和する可能性がある。特に、上述のように電池を煙感知器Aの電源とする場合には、演算増幅器OP1の電源電圧が低く演算増幅器OP1のダイナミックレンジが比較的狭いため、出力電圧Voutが飽和しやすい。
すなわち、入力電流Iinに低周波成分が含まれていなければ、図14(a)のように出力電圧Voutの動作点は基準電圧Vsとなるから、入力電流Iinの変動があれば出力電圧Voutもこの変動に追従して変動するが、これに対して、入力電流Iinに低周波成分が含まれていると、図14(b)に示すように出力電圧Voutの動作点が低下し、入力電流Iinが増加した場合に出力電圧Voutが途中で飽和してしまう可能性がある。特に、低周波成分が大きく、図14(c)のように出力電圧Voutの動作点がグランドGND付近にまで低下している場合には、入力電流Iinの変動によらず出力電圧Voutが飽和状態にあり、入力電流Iinの増加を出力電圧Voutが追従することはない。
たとえば変換抵抗R2の抵抗値r2を1MΩ、基準電圧Vsを1Vとすると、入力電流Iinが1μAで変換抵抗R2の両端間の電圧降下は1Vとなり、その結果、電流電圧変換回路2の出力電圧Voutが0Vとなって飽和する。この状態では、フォトダイオードPDがLED6からの光を受光して電流電圧変換回路2にパルス状の入力電流Iinが入力されても、電流電圧変換回路2の出力電圧Voutは飽和しているからこれ以上変動することはなく、出力電圧Voutの変化量ΔVが火災判定レベルに達することなく失報となる可能性がある。
そこで、電流電圧変換回路2として、入力電流Iinに低周波成分が含まれている場合に、出力端子Toutと入力端子Tinとの間にフィードバックをかけて前記低周波成分による出力電圧Voutの飽和を抑制できるようにしたものが提案されている。
この電流電圧変換回路2は、上述した変換部3に加えて、図15に示すように変換部3の出力電圧Voutを受けて出力電圧Voutの積分値成分に相当する積分電圧Vdcを出力する積分回路8と、積分回路8の出力と変換部3の入力端子Tinとの間に挿入された分流用抵抗R1とを備える。これにより、積分電圧Vdcの大きさに応じた電流を入力電流Iinから引き抜いて分流用抵抗R1に流すことにより、出力電圧Voutへの積分値成分の影響を抑制することができるので、入力電流Iinに低周波成分が含まれている場合には、この低周波成分が入力電流Iinから減算されることによって、出力電圧Voutへの低周波成分の影響を抑制できる。
この電流電圧変換回路2において、分流用抵抗R1に流れる電流の大きさは、分流用抵抗R1の両端間の電位差と分流用抵抗R1の抵抗値とで決まる。分流用抵抗R1の両端間の電位差は、入力電流Iinに含まれる低周波成分の大きさに応じて変化するので、変換部3の出力電圧Voutが飽和するほど大きな低周波成分が入力電流Iinに含まれている場合には、分流用抵抗R1の両端間の電位差も飽和することとなり、それ以上の電流を分流用抵抗R1に流すことができなくなる。このときの電流が、出力電圧Voutへの影響を抑制可能な低周波成分の大きさの上限となる。
ただし、上述した煙感知器Aではラビリンス21により検知空間への外乱光の入射が防止されているので、入力電流Iinに含まれる低周波成分が前記上限を超えるほど強い外乱光がフォトダイオードPDで受光されることはなく、上記構成の電流電圧変換回路2を採用すれば出力電圧Voutの飽和を十分防止することができる。
特許第2783945号公報(第1−2頁)
ところで、上述した構成の電流電圧変換回路2では、万一、前記上限を超えた低周波成分を含む入力電流Iinが入力されると、図14(b)、(c)に示したように出力電圧Voutの動作点が低下し出力電圧Voutが飽和してしまう可能性がある。分流用抵抗R1として抵抗値の小さいものを用いれば、分流用抵抗R1により多くの電流を引き抜くことで、出力電圧Voutへの影響を抑制可能な低周波成分の大きさの上限を広げることができるが、分流用抵抗R1自体の熱雑音が大きくなる。分流用抵抗R1の熱雑音が大きくなれば、電流電圧変換回路2の入力換算ノイズも大きくなるため、当該ノイズと検出対象である信号成分との比であるSN比が低下するという問題があるので、分流用抵抗R1の抵抗値はある程度大きく設定せざるを得ない。その結果、出力電圧Voutが飽和してしまう可能性が残ることとなり、たとえば以下の問題を生じる。
すなわち、上述した煙感知器Aにおいては、検知空間への外乱光の入射を防止するラビリンス21の構造が複雑であり、ラビリンス21の製造にかかるコストが煙感知器A全体の低コスト化の妨げとなっているので、ラビリンス21の構造を極力簡素化、あるいはラビリンス21自体を省略することで、煙感知器Aの低コスト化を図ることが要望されている。しかし、ラビリンス21を簡素化あるいは省略すると、フォトダイオードPDで受光される外乱光が強くなり、入力電流Iinに含まれる低周波成分が出力電圧Voutへの影響を抑制可能な低周波成分の大きさの上限を超え、結果的に、出力電圧Voutが飽和してしまうことがある。
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであって、受光部への外乱光の入射を防止する手段を簡素化あるいは省略することができる煙感知器を提供することを目的とする。
請求項1の発明は、検知空間に向けて所定のセンシング期間にパルス状の光を出力する発光部と、発光部からの直接光は入射せず検知空間内に流入した煙により拡散反射された発光部からの光が入射する位置に配置され、光を受光して電流に変換する受光部と、受光部から入力端子に入力される入力電流を当該入力電流の変動に応じて電圧値が変動する出力電圧に変換して出力端子から出力する変換部を有した電流電圧変換回路と、前記出力電圧に基づいて検知空間内の煙の有無を判定する判定処理部とを備え、電流電圧変換回路が、前記出力電圧のうち受光部が発光部からの光を受光したときに生じるパルス状の検出信号の周波数より低い第1カットオフ周波数以下の低周波成分を出力する第1の帰還回路と、回路グランドと前記入力端子との間に挿入され第1の帰還回路の出力に制御端子が接続されることで、第1の帰還回路の出力に応じた大きさの電流を入力電流から引き抜く分流用トランジスタとを有することを特徴とする。
この構成によれば、第1カットオフ周波数以下の低周波成分を分流用トランジスタに引き抜くことができるので、分流用抵抗に電流を引き抜く場合に比べて大きな低周波成分を引き抜くことが可能となる。したがって、受光部で受光される外乱光が強く入力電流に含まれる低周波成分が比較的大きい場合でも、変換部の出力端子に生じる出力電圧への前記低周波成分の影響を抑制することができる。その結果、受光部への外乱光の入射を防止する手段を簡素化あるいは省略することが可能になる。
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記電流電圧変換回路が、前記出力電圧のうち前記検出信号の周波数より低い第2カットオフ周波数以下の低周波成分に相当する電圧を出力する第2の帰還回路と、第2の帰還回路の出力と前記入力端子との間に挿入され第2の帰還回路の出力に応じた大きさの電流を入力電流から引き抜く分流用抵抗とを有することを特徴とする。
この構成によれば、第2カットオフ周波数以下の低周波成分を分流用抵抗に引き抜くことができるので、低周波成分を分流用トランジスタのみに引き抜く場合に比べて、出力電圧への影響を抑制可能な低周波成分の大きさの上限を広げることができる。したがって、より大きな低周波成分が入力電流に含まれる場合でも、変換部の出力端子に生じる出力電圧への前記低周波成分の影響を抑制することができる。
請求項3の発明は、請求項2の発明において、前記第1の帰還回路が、前記センシング期間においては第2カットオフ周波数より低く、センシング期間以外の期間においては第2カットオフ周波数より高くなるように第1カットオフ周波数を切り換える周波数切替手段を有することを特徴とする。
この構成によれば、第1の帰還回路は、第1カットオフ周波数を切り替える周波数切替手段を有するので、センシング期間以外の期間においては、比較的広範囲の低周波成分を分流用トランジスタに引き抜きながらも、センシング期間においては、検出信号が分流用トランジスタに引き抜かれてしまうことを回避できる。また、センシング期間においても、第2カットオフ周波数以下の低周波成分であれば第2の帰還回路によって分流用抵抗に引き抜くことができる。
請求項4の発明は、請求項3の発明において、前記第1の帰還回路が前記出力電圧の積分値成分を出力する積分回路を有し、前記周波数切替手段が、積分回路の出力と前記分流用トランジスタの制御端子との間に挿入された第1のスイッチを有するサンプルホールド回路を具備し、前記センシング期間においては第1のスイッチをオフすることでサンプルホールド回路を作動させ、保持された積分回路の出力電圧を分流用トランジスタの制御端子に印加することを特徴とする。
この構成によれば、センシング期間においては、第1のスイッチがオフすることで積分回路の出力と分流用トランジスタの制御端子との間が遮断されるから、積分回路に発生するフリッカ雑音等の定常雑音が入力に影響することを防止でき、SN比が向上する。
請求項5の発明は、請求項4の発明において、前記変換部の前記入力端子と前記出力端子との間には第2のスイッチが接続されており、第2のスイッチが、前記第1のスイッチがオンのときにオンすることを特徴とする。
この構成によれば、第2のスイッチがオンすることにより変換部の入力端子と出力端子との間の利得が低下し、第1のスイッチがオンすることによる系の発振を抑制することができる。
請求項6の発明は、請求項4の発明において、前記第1のスイッチが、オフ抵抗の値が、前記分流用トランジスタの制御端子と回路グランドとの間の抵抗値よりも小さく設定されていることを特徴とする。
この構成によれば、第1のスイッチがオフするセンシング期間においても、第1のスイッチのオフ抵抗を通して微小電流を流すことができるから、分流用トランジスタの制御端子と回路グランドとの間に生じる漏れ電流により分流用トランジスタの制御端子の電位が低下することを防止することができる。したがって、分流用トランジスタの制御端子の電位が低下することによる出力電圧の変動を抑制することができる。
請求項7の発明は、請求項3の発明において、前記第1の帰還回路が前記出力電圧の積分値成分を出力する積分回路を有し、前記周波数切替手段が、前記分流用トランジスタの制御端子と回路グランドとの間に接続されたコンデンサと、積分回路の出力と分流用トランジスタの制御端子との間に接続された抵抗および第3のスイッチの並列回路とを有するローパスフィルタ回路を具備し、前記センシング期間においては第3のスイッチをオフすることでローパスフィルタ回路を作動させることを特徴とする。
この構成によれば、第3のスイッチがオフするセンシング期間においても、抵抗を通して電流を流すことができるから、分流用トランジスタの制御端子と回路グランドとの間に生じる漏れ電流により分流用トランジスタの制御端子の電位が低下することを防止することができる。したがって、分流用トランジスタの制御端子の電位が低下することによる出力電圧の変動を抑制することができる。また、センシング期間における第1カットオフ周波数を精度よく設定することができるので、検出信号が分流用トランジスタに引き抜かれない範囲で、第1カットオフ周波数を高く設定することができ、センシング期間においても、比較的広範囲の低周波成分を分流用トランジスタに引き抜くことが可能になる。
請求項8の発明は、請求項3の発明において、前記第1の帰還回路が、第1の抵抗とコンデンサとで決まる時定数を有する積分回路を有し、前記周波数切替手段が、第1の抵抗と並列に接続された第2の抵抗および第4のスイッチの直列回路を具備し、前記センシング期間においては第4のスイッチをオフすることを特徴とする。
この構成によれば、サンプルホールド回路を設ける場合に比べて、回路の小型化、低消費電力化を図ることができる。また、センシング期間における第1カットオフ周波数を精度よく設定することができるので、検出信号が分流用トランジスタに引き抜かれない範囲で、第1カットオフ周波数を高く設定することができ、センシング期間においても、比較的広範囲の低周波成分を分流用トランジスタに引き抜くことが可能になる。
請求項9の発明は、請求項2ないし請求項8のいずれかの発明において、前記第2の帰還回路が、前記入力電流に対して逆位相の電圧を出力するアクティブフィルタからなり、前記第1の帰還回路が、入力電流に対して同位相の電圧を出力するアクティブフィルタからなることを特徴とする。
この構成によれば、第1および第2の帰還回路がアクティブフィルタで実現されているので、低周波成分に対して高利得を持つことができ、低周波成分による出力電圧の変動を確実に抑制することができる。
請求項10の発明は、請求項1ないし請求項9のいずれかの発明において、前記分流用トランジスタが複数個設けられており、各分流用トランジスタと前記入力端子との間にそれぞれ挿入された選択用スイッチと、前記第1の帰還回路の出力が大きくなるほどオンする選択用スイッチの個数が増えるように、第1の帰還回路の出力に応じて選択用スイッチをオンオフ制御するスイッチ制御回路とを備えることを特徴とする。
この構成によれば、分流用トランジスタに引き抜く電流が大きくなるほど、電流の引き抜きに使用される分流用トランジスタの個数が増えるので、大電流の引き抜きを可能としながらも、各分流用トランジスタにおけるチャネル幅(W)とチャネル長(L)との比(W/L)を小さく抑えて、分流用トランジスタ1個当たりの定常雑音を小さく抑えることができる。
請求項11の発明は、請求項9の発明において、前記第1の帰還回路と前記第2の帰還回路とが演算増幅器を共用しており、演算増幅器を第1の帰還回路に用いる動作モードと、演算増幅器を第2の帰還回路に用いる動作モードとを切り替えるモード切替手段を備えることを特徴とする。
この構成によれば、第1の帰還回路と第2の帰還回路とが演算増幅器を共用しているから、各帰還回路にそれぞれ演算増幅器を設ける場合に比べて、回路の小型化を図ることができる。
請求項12の発明は、請求項9の発明において、前記第1の帰還回路の電源電圧が他の回路の電源電圧よりも高く設定されていることを特徴とする。
この構成によれば、第1の帰還回路の電源電圧が他の回路の電源電圧と同じである場合に比べて、第1の帰還回路の出力の上限値が高くなり、したがって、分流用トランジスタに引き抜くことができる電流の大きさの上限を広げることができる。
本発明は、第1カットオフ周波数以下の低周波成分を分流用トランジスタに引き抜くことができるので、受光部で受光される外乱光が強く入力電流に含まれる低周波成分が比較的大きい場合でも、変換部の出力端子に生じる出力電圧への前記低周波成分の影響を抑制することができる。その結果、受光部への外乱光の入射を防止する手段を簡素化あるいは省略することが可能になるという利点がある。
(実施形態1)
本実施形態の煙感知器Aは、図12に示した従来構成と同様にハウジング20内に検知空間を有し、この検知空間に向けて間欠的にパルス状の光を出力する発光部と、発光部からの直接光が入射しない位置に配置され受光した光を電流に変換する受光部と、受光部からの入力電流に基づいて検知空間内の煙を検知する回路ブロック1とを備えている。この煙感知器Aでは、検知空間内に煙が流入すると、発光部からの光が検知空間内の煙で拡散反射されることにより受光部での発光部からの光の受光量が増加し、受光部から出力される電流量が増加する。ここで例示する煙感知器Aは電池を電源としており、平均消費電力を抑えて電池の長寿命化を図るために間欠駆動する。
本実施形態の回路ブロック1は、受光部から入力される入力電流を当該入力電流の変動に応じて電圧値が変動する出力電圧に変換して出力する電流電圧変換回路と、電流電圧変換回路の出力電圧に基づいて検知空間内の煙の有無を判定する判定処理部(図11(b)の発報判定回路14)とを備えている。
電流電圧変換回路2は、図2に示すように、入力端子Tinから入力される入力電流Iinを当該入力電流Iinの変動に応じて電圧値が変動する出力電圧Voutに変換して出力端子Toutから出力する変換部3と、変換部3の出力する出力電圧Voutのうち所定の第2カットオフ周波数fc2以下の低周波成分の大きさに応じた電圧を出力する第2の帰還回路4と、第2の帰還回路4の出力と変換部3の入力端子Tinとの間に挿入された分流用抵抗R1とを備えている。さらに、本実施形態では、出力電圧Voutのうち所定の第1カットオフ周波数fc1以下の低周波成分の大きさに応じた電圧を出力する第1の帰還回路5と、第1の帰還回路5の出力の大きさに応じた電流を入力電流Iinから引き抜く分流用トランジスタQ1とが設けられている。
変換部3は、図1に示すように、図15に示した従来構成と同様に演算増幅器OP1の反転入力端子と出力端子との間に変換抵抗R2が接続され、演算増幅器OP1の非反転入力端子に基準電圧Vsが印加された構成を有する。変換部3の入力端子Tinには、受光部としてのフォトダイオードPD(図11参照)が接続されており、フォトダイオードPDから入力電流Iinが入力される。ここに、本実施形態の変換部3は、変換抵抗R2に並列接続されたコンデンサC1を有しローパスフィルタとしても機能しており、所定のカットオフ周波数fc0以下の入力電流Iinのみを通すように変換抵抗R2とコンデンサC1との回路定数が設定される。このカットオフ周波数fc0は、変換抵抗R2の抵抗値r2とコンデンサC1の定数c1とを用いてfc0=1/(2π×r2×c1)で表され、少なくともフォトダイオードPDが発光部としてのLED6(図11参照)からの光を受光したときに生じるパルス状の入力電流(以下、検出信号という)Iinを通すように設定される。
したがって、電流電圧変換回路2は、フォトダイオードPDからの入力電流Iinがゼロの状態での出力電圧Vout(ここでは基準電圧Vs)を動作点として、入力電流Iinの変動に応じて動作点を基準に出力電圧Voutを変動させることとなる。
第2の帰還回路4は、変換部3の出力電圧Voutを反転増幅する反転増幅回路7と、反転増幅回路7で反転増幅された出力電圧Voutを積分し出力電圧Voutの積分値成分に相当する積分電圧Vdcを出力する第2の積分回路8とを有する。
第2の積分回路8は、反転増幅回路7の出力に抵抗R3を介して演算増幅器OP2の反転入力端子を接続し、この演算増幅器OP2の反転入力端子と出力端子との間にコンデンサC2を接続して構成され、抵抗R3とコンデンサC2とで決まる時定数を有するローパスフィルタとして機能する。この積分回路8は、少なくともフォトダイオードPDがLED6からの光を受光したときに生じる検出信号を遮る(つまり、検出信号の周波数より低い)第2カットオフ周波数fc2を有するように時定数が設定される。
反転増幅回路7は、積分回路8の出力を変換部3の出力電圧Voutに対して同相とするためのものであって、変換部3の出力端子Toutに抵抗R4を介して演算増幅器OP3の反転入力端子を接続し、この演算増幅器OP3の反転入力端子と出力端子との間に抵抗R5を接続して構成される。なお、両演算増幅器OP2,OP3の非反転入力端子には基準電圧Vsが印加される。
しかして、フォトダイオードPDがLED6からの光を受光したときに生じる検出信号と低周波成分とが変換部3の入力電流Iinに含まれている場合に、第2の積分回路8から出力される積分電圧Vdcは前記低周波成分に相当する電圧となる。このとき、入力電流Iinは変換部3にて一旦位相が反転され、さらに反転増幅回路7および積分回路8でもそれぞれ1回ずつ位相が反転されるため、積分回路8の出力には入力電流Iinと逆位相の積分電圧Vdcが現れる。ここで、変換部3の入力端子Tinには基準電圧Vsが印加されているので、分流用抵抗R1の両端間には、基準電圧Vsから積分電圧Vdcを減算した電位差が生じることになる。すなわち、積分電圧Vdcの大きさに応じた電流を分流用抵抗R1に流すことにより入力電流Iinから引き抜くことができるので、入力電流Iinに低周波成分が含まれている場合には、この低周波成分が入力電流Iinから減算されることによって出力電圧Voutから取り除かれる。
なお、分流用抵抗R1として抵抗値の小さいものを用いれば、分流用抵抗R1自体の熱雑音が大きくなり、電流電圧変換回路2の入力換算ノイズも大きくなるため、当該ノイズと検出対象であるフォトダイオードPDからの信号成分(入力電流Iin)との比であるSN比が低下するという問題があるので、分流用抵抗R1の抵抗値はある程度大きく設定される。
ところで、本実施形態の煙感知器Aにおいては、第1の帰還回路5は、変換部3の出力電圧Voutを積分する第1の積分回路9と、第1の積分回路9の出力をサンプルホールドするサンプルホールド回路10とを有している。
第1の積分回路9は、出力端子Toutに抵抗R6を介して演算増幅器OP4の反転入力端子を接続し、この演算増幅器OP4の反転入力端子と出力端子との間にコンデンサC3を接続して構成され、抵抗R6とコンデンサC3とで決まる時定数を有するローパスフィルタとして機能する。この積分回路9は、上述した第2の積分回路8の第2カットオフ周波数fc2よりも高い第1カットオフ周波数fc1(つまりfc2<fc1)を有するように時定数が設定される。なお、演算増幅器OP4の非反転入力端子には基準電圧Vsが印加される。
分流用トランジスタQ1は、入力端子Tinと回路グランドとの間に挿入され、第1の積分回路9の出力に応じた電流を変換部3の入力端子Tinから回路グランドに流すものであって、ここではNチャネルのMOSFETで構成されている。この分流用トランジスタQ1は、ドレインを変換部3の入力端子Tinに接続するとともにソースを回路グランドに接続し、ゲートがサンプルホールド回路10を介して積分回路9の出力(演算増幅器OP4の出力端子)に接続された形で設けられている。
サンプルホールド回路10は、積分回路9の出力と分流用トランジスタQ1のゲートとの間に挿入された常閉形の第1のスイッチSW1と、分流用トランジスタQ1のゲートと回路グランドとの間に接続されたコンデンサC4とを有し、第1のスイッチSW1を所定のタイミングでオフすることにより、当該所定のタイミングでの積分回路9の出力をコンデンサC4の出力電圧として維持する。
上述の構成により、積分回路9が変換部3の出力電圧Voutを積分することで、変換部3の出力電圧Voutのうち第1カットオフ周波数fc1以下の低周波成分が積分回路9の出力に現れることとなる。このとき、入力電流Iinは変換部3にて一旦位相が反転され、さらに積分回路9でも位相が反転されるため、積分回路9の出力には入力電流Iinと同相の低周波成分が現れる。ここで、積分回路9の出力はサンプルホールド回路10を介して分流用トランジスタQ1のゲートに印加されるから、サンプルホールド回路10のスイッチSW1がオンの状態では、分流用トランジスタQ1のドレイン−ソース間には積分回路9の出力(出力電圧Voutの低周波成分)の大きさに応じた電流が流れることとなる。したがって、入力電流Iinに含まれる第1カットオフ周波数fc1以下の低周波成分を分流用トランジスタQ1に引き抜くことができ、電流電圧変換回路2全体としては前記低周波成分の利得を下げることができる。
ここにおいて、サンプルホールド回路10のスイッチSW1をオフにすると、積分回路9の出力と分流用トランジスタQ1のゲートとの間は遮断されるものの、積分回路9の出力はコンデンサC4の両端電圧として維持されるから、分流用トランジスタQ1のドレイン−ソース間には、スイッチSW1がオフする直前の積分回路9の出力の大きさに応じた電流を流し続けることができる。言い換えれば、サンプルホールド回路10のスイッチSW1がオフすることによりサンプルホールド回路10が作動すると、分流用トランジスタQ1のドレイン−ソース間に流すことができる電流の周波数の上限値(第1カットオフ周波数fc1)は低下するが、直流成分については引き続き分流用トランジスタQ1に引き抜くことで出力電圧Voutから取り除くことができる。
本実施形態においては、サンプルホールド回路10のスイッチSW1をオフするタイミングを、煙感知器AのLED6がパルス状の光を出力し検知空間内に流入した煙の有無を検出する期間(以下、センシング期間という)に合わせて設定してある。すなわち、本実施形態の煙感知器Aは、上記センシング期間中にフォトダイオードPDがLED6からの光を受光したときに生じる検出信号を電圧に変換し、出力電圧Voutとして出力するためのものであるから、上記センシング期間における前記検出信号が分流用トランジスタQ1に引き抜かれてしまうことがないように、センシング期間にはスイッチSW1をオフとする。
さらに詳しく説明すると、第1の積分回路9の第1カットオフ周波数fc1は、第2の積分回路8の第2カットオフ周波数fc2に比べると前記検出信号の周波数の近くに設定されているから、スイッチSW1がオンの状態では、前記検出信号が分流用トランジスタQ1に引き抜かれ、電流電圧変換回路2全体として前記検出信号の利得が低減する可能性がある。そこで、本実施形態では上記センシング期間にスイッチSW1をオフしてサンプルホールド回路10を作動させることで、前記検出信号が分流用トランジスタQ1に引き抜かれることを回避し、電流電圧変換回路2全体として前記検出信号の利得を高く確保する。
ここで、上述したように煙感知器Aを間欠駆動する場合には、電流電圧変換回路2への電源供給も間欠的に行われ、電流電圧変換回路2への電源供給が行われている期間内に上記センシング期間が設定される。サンプルホールド回路10のスイッチSW1をオフするのはセンシング期間のみとし、電流電圧変換回路2への電源供給が開始してからセンシング期間が開始するまでの間、およびセンシング期間が終了してから電流電圧変換回路2への電源供給が停止するまでの間にはスイッチSW1をオンさせる。
しかして、スイッチSW1がオフされるセンシング期間には、第1の帰還回路5の出力はスイッチSW1がオフする直前の値に固定されるので、入力電流Iinに含まれる揺らぎのない直流成分に関しては分流用トランジスタQ1に継続して引き抜くことができるが、入力電流Iinに含まれる揺らぎのある低周波成分に関しては、当該低周波成分が第1カットオフ周波数fc1以下の低周波成分であっても、分流用トランジスタQ1に引き抜くことはできない。
ただし、センシング期間においても、第2カットオフ周波数fc2以下の低周波成分に関しては、第2の帰還回路4の出力として取り出すことにより分流用抵抗R1に引き抜くことを可能としている。
以上説明した構成の煙感知器Aによれば、センシング期間以外の期間において、入力電流Iinのうち第1カットオフ周波数fc1以下の低周波成分は第1の帰還回路5を通してフィードバックされ、分流用トランジスタQ1に引き抜かれることとなるから、たとえ入力電流Iinに低周波成分が含まれていても、出力電圧Voutの動作点は基準電圧Vsに落ち着くこととなる。また、センシング期間においては、入力電流Iinのうち第2カットオフ周波数fc2以下の低周波成分は第2の帰還回路4を通してフィードバックされ、分流用抵抗R1に引き抜かれることとなるから、たとえ入力電流Iinに低周波成分が含まれていても、出力電圧Voutの動作点は基準電圧Vsに落ち着くこととなる。このとき、サンプルホールド回路10のスイッチSW1がオフし、第1の帰還回路5の出力がセンシング期間直前の値にホールドされるので、検出信号が分流用トランジスタQ1に引き抜かれることはなく、検出信号に相当する出力電圧Voutを出力することができる。
すなわち、入力電流Iinの低周波成分を引き抜く手段として分流用抵抗R1と分流用トランジスタQ1とを用いたことにより、分流用抵抗R1のみで低周波成分を引き抜く場合に比べて、より大きな電流成分の引き抜きに対応することができる。しかも、第1カットオフ周波数fc1を高めに設定することで、センシング期間以外の期間においては出力電圧Voutから比較的広範囲の低周波成分を取り除きつつも、サンプルホールド回路10のスイッチSW1のオンオフ切り替えによって、センシング期間においては、検出対象となる検出信号を減衰させないようにすることができる。
また、第2の帰還回路4の第2カットオフ周波数fc2よりも第1の帰還回路5の第1カットオフ周波数fc1を高く設定してあるから、電流電圧変換回路2への電源供給が開始すると、第2の帰還回路4よりも先に第1の帰還回路5の出力が応答する。そのため、第2の帰還回路4を遮断する手段等を付加することなく、第1カットオフ周波数fc1以下の低周波成分の大部分を分流用トランジスタQ1に引き抜くことができ、結果的に、電流電圧変換回路2の小型化を図ることができる。
しかも、センシング期間に第1の帰還回路5の第1カットオフ周波数fc1を低下させる周波数切替手段としてサンプルホールド回路10を用いることで、センシング期間には、積分回路9の出力と分流用トランジスタQ1との間が遮断されるから、積分回路9で発生する雑音(フリッカ雑音等)が入力電流Iinに影響することはなく、SN比の向上を図ることができるという利点もある。
上記構成の電流電圧変換回路2の具体例を示すと、銅鉄形安定器を用いて商用電源(60Hzの交流電源とする)で点灯する蛍光灯からの光をフォトダイオードPDが受光しても、前記蛍光灯の光の点滅の影響で電流電圧変換回路2の出力電圧Voutが変動することがないように、第1の帰還回路5の第1カットオフ周波数fc1は少なくとも120Hzより高く設定される。さらに、第2の帰還回路4の第2カットオフ周波数fc2も120Hzより高く設定することで、スイッチSW1がオフとなるセンシング期間においても、第2の帰還回路4を通して前記蛍光灯の光の影響を受けた120Hz以下の低周波成分がフィードバックされ、当該低周波成分を分流用抵抗R1に引き抜くようにしてある。
ところで、図1においては、変換部3の変換抵抗R2に並列接続された第2のスイッチSW2が設けられている。このスイッチSW2は、第1のスイッチSW1と同一のタイミングでオフする常閉形のスイッチであって、以下に説明する機能を有する。
すなわち、仮に第1のスイッチSW1のみが設けられていると、第1のスイッチSW1がオンしたときに、第1の帰還回路5のカットオフ周波数fc1が高周波側にシフトするので、図3(a)に示す電流電圧変換回路2全体の利得の周波数特性においては、第1のスイッチSW1がオンしたときに実線で示すように低周波側の利得がつぶれ、変換部3のカットオフ周波数fc0と第1の帰還回路5の第1カットオフ周波数fc1との間に利得のピークが生じ、系が発振しやすい状態となる。つまり、出力電圧Voutが発振しやすい状態にあるので、図4(c)に破線で示すように出力電圧Voutが低いときに第1のスイッチSW1がオフされてしまうと、結果的に出力電圧Voutの立ち上がりが遅れるという問題がある。
これに対して、変換抵抗R2と並列に接続される第2のスイッチSW2を設けた本実施形態では、第2のスイッチSW2を第1のスイッチSW1と共に電源投入時からセンシング期間開始時点までオンすることで、図3(b)に示すように第1のスイッチSW1がオンしている間には変換抵抗R2の両端が接続されて変換部3の利得がつぶされ、上述した利得のピークをなくすことができる。これにより、第1のスイッチSW1がオンすることによる系の発振を抑制することができる。
さらにまた、本実施形態では、第1および第2の各帰還回路4,5の積分回路8,9としてパッシブ回路ではなく演算増幅器OP2,OP4を有したアクティブ回路を採用しているので、低周波成分に対して高利得を持つことができ、演算増幅器OP2,OP4のオープンゲインまで帰還をかけることができる。すなわち、パッシブフィルタを用いた構成では、第1の帰還回路5が作動したときに、出力電圧Voutには電圧降下(降下量は利得によって異なる)が発生し、その後、サンプルホールド回路10が作動すると、第2の帰還回路4が作動して出力電圧Voutが同様に変動し、結果的に、当該変動が最終出力にも現れる。そのため、当該変動中に検出信号の誤検出を生じることがある。なお、前記変動を抑えるために検出信号の発生するタイミングの直前までサンプルホールド回路10を作動させないことも考えられるが、この場合、回路全体の消費電流が増加する。これに対して、本実施形態ではアクティブフィルタを用いているから、低周波成分による出力電圧Voutの低下を抑制し、出力電圧Voutの飽和を確実に回避することができる。
ここで、第1の帰還回路5の電源電圧は、電流電圧変換回路2における帰還回路5以外の回路の電源電圧よりも高くすることが望ましい。これにより、第1の帰還回路5の出力電圧(つまり、分流用トランジスタQ1のゲート電圧)を大きくとることができ、したがって、比較的大きな入力電流Iinを分流用トランジスタQ1に引き抜くことが可能となる。その結果、比較的大きな振幅の低周波成分が入力電流Iinに含まれる場合でも、当該低周波成分を出力電圧Voutから取り除くことができ、出力電圧Voutへの影響を抑制可能な低周波成分の大きさの上限が一層大きくなるという利点がある。
また、第1のスイッチSW1がオフしてサンプルホールド回路10が作動しているセンシング期間内であっても、分流用トランジスタQ1のゲートと回路グランドとの間に生じる漏れ電流の影響により分流用トランジスタQ1のゲート電圧が時間経過に伴って徐々に低下することがある。このとき、分流用トランジスタQ1のドレイン−ソース間に引き抜かれる電流も徐々に低下するので、これに伴い出力電圧Voutが変動する可能性がある。この対策として、第1のスイッチSW1に、オフ抵抗が分流用トランジスタQ1のゲート−ソース間の抵抗値よりも小さくなる素子(たとえばアナログスイッチ)を用いることが考えられる。これにより、スイッチSW1がオフであるセンシング期間においても、スイッチSW1のオフ抵抗を介して流れる微小電流によって、前記漏れ電流によるゲート電圧の低下を抑制することができ、出力電圧Voutの変動を抑制することができる。
以上説明したように本実施形態の煙感知器Aは、フォトダイオードPDに対して強い外乱光が入射することにより大きな低周波成分を含んだ入力電流Iinが変換部3の入力端子Tinに入力された場合でも、変換部3の出力端子Toutに生じる出力電圧Voutへの前記低周波成分の影響を抑制することができる。したがって、ラビリンス21を簡素化し、図5に示すように煙感知器Aの薄型化等を図ることが可能となる。図5の煙感知器Aは、ハウジング20の前方(ハウジング20を天井に取り付けた場合の下方)を検知空間として、フォトダイオードPDがこの検知空間に流入する煙で拡散反射したLED6からの光を受光することで煙を感知する。
(実施形態2)
本実施形態の煙感知器Aは、図6に示すように分流用トランジスタQ1を複数個設けた点が実施形態1の煙感知器Aと相違する。
すなわち、本実施形態では、入力端子Tinと回路グランドとの間に複数個の分流用トランジスタQ1が並列に接続され、第1の帰還回路5の出力は各分流用トランジスタQ1のゲートにそれぞれ接続されている。ここで、各分流用トランジスタQ1のドレインと入力端子Tinとの間には、選択用スイッチSW11,SW12,・・・がそれぞれ挿入されており、各選択用スイッチSW11,SW12,・・・のオンオフ制御はスイッチ制御回路11にて行うように構成されている。
スイッチ制御回路11は、分流用トランジスタQ1のゲートに印加される第1の帰還回路5の出力を監視し、帰還回路5の出力が大きくなるほどオンする選択用スイッチSW11,SW12,・・・の個数が増えるように、帰還回路5の出力の大きさに応じて選択用スイッチSW11,SW12,・・・をオンオフ制御する。したがって、入力電流Iinから引き抜く電流が大きくなるほど、入力端子Tinと回路グランドとの間に並列接続される分流用トランジスタQ1の個数が増え、電流の引き抜きに使用される分流用トランジスタQ1の個数が多くなる。
要するに、入力電流Iinから電流を引き抜く分流用トランジスタQ1において、対応可能な電流値を大きくするためには、チャネル幅(W)とチャネル長(L)との比(W/L)を大きくとる必要があるが、W/Lを大きくすると、引き抜く電流量が同じであっても分流用トランジスタQ1の熱雑音が大きくなってしまう。これに対して、本実施形態では、各分流用トランジスタQ1のW/Lを小さく抑え、熱雑音を小さく抑えながらも、大電流を引き抜く際には複数個の分流用トランジスタQ1を並列接続することによって、比較的大きい電流に対応できるという利点がある。
その他の構成および機能は実施形態1と同様である。
(実施形態3)
本実施形態の煙感知器Aは、第1の帰還回路5の第1カットオフ周波数fc1を切り替える周波数切替手段として、図7に示すようにサンプルホールド回路10に代えてローパスフィルタ回路10’を設けた点が実施形態1の煙感知器Aと相違する。
ローパスフィルタ回路10’は、第1の積分回路9の出力と分流用トランジスタQ1のゲートとの間に挿入された抵抗R7と、分流用トランジスタQ1のゲートと回路グランドとの間に接続されたコンデンサC5と、抵抗R7に並列接続された常閉形の第3のスイッチSW3とを有している。このローパスフィルタ回路10’は、抵抗R7とコンデンサC5とで決まる所定のカットオフ周波数以下の低周波成分を通過させるものである。
上記構成により、第3のスイッチSW3がオンの状態では、積分回路9の出力が分流用トランジスタQ1に直接印加され、一方、第3のスイッチSW3がオフの状態では、積分回路9の出力がローパスフィルタ回路10’を通して分流用トランジスタQ1に印加されることとなる。したがって、第1の帰還回路5の第1カットオフ周波数fc1は、第3のスイッチSW3がオフすることで低下する。
本実施形態においては、ローパスフィルタ回路10’のスイッチSW3をオフするタイミングを、煙感知器AのLED6がパルス状の光を出力し検知空間内に流入した煙の有無を検出する期間(センシング期間)に合わせて設定してある。すなわち、本実施形態の煙感知器Aは、上記センシング期間中にフォトダイオードPDがLED6からの光を受光したときに生じる検出信号を電圧に変換し、出力電圧Voutとして出力するためのものであるから、上記センシング期間における前記検出信号が分流用トランジスタQ1に引き抜かれてしまうことがないように、センシング期間にはスイッチSW3をオフとする。
その他の構成および機能は実施形態1と同様である。
(実施形態4)
本実施形態の煙感知器Aは、第1の帰還回路5の第1カットオフ周波数fc1を切り替える周波数切替手段として、図8に示すようにサンプルホールド回路10に代えて第1の積分回路9に第2の抵抗R8および第4のスイッチSW4の直列回路を設けた点が実施形態1の煙感知器Aと相違する。
抵抗R8と常閉形の第4のスイッチSW4との直列回路は、第1の積分回路9の第1の抵抗R6と並列に接続されている。これにより、第4のスイッチSW4がオンの状態では、積分回路9の第1カットオフ周波数fc1は抵抗R6および抵抗R8とコンデンサC3とで決まる時定数によって決定し、一方、第4のスイッチSW4がオフの状態では、積分回路9の第1カットオフ周波数fc1は抵抗R6とコンデンサC3とで決まる時定数によって決定する。したがって、第1の帰還回路5の第1カットオフ周波数fc1は、第4のスイッチSW4がオフすることで低下する。
本実施形態においては、第1の積分回路9のスイッチSW4をオフするタイミングを、煙感知器AのLED6がパルス状の光を出力し検知空間内に流入した煙の有無を検出する期間(センシング期間)に合わせて設定してある。すなわち、本実施形態の煙感知器Aは、上記センシング期間中にフォトダイオードPDがLED6からの光を受光したときに生じる検出信号を電圧に変換し、出力電圧Voutとして出力するためのものであるから、上記センシング期間における前記検出信号が分流用トランジスタQ1に引き抜かれてしまうことがないように、センシング期間にはスイッチSW4をオフとする。
その他の構成および機能は実施形態1と同様である。
(実施形態5)
本実施形態の煙感知器Aは、図9に示すように第2の帰還回路4と第1の帰還回路5とで、演算増幅器OP2を兼用するようにした点が実施形態1の煙感知器Aと相違する。
すなわち、本実施形態では、第2の帰還回路4の演算増幅器OP2を第1の帰還回路5に兼用したものであって、第2の帰還回路4を作動させる動作モードと第1の帰還回路5を作動させる動作モードとを切り替えるための複数のスイッチ(モード切替手段)SW5〜SW10を備えている。具体的に説明すると、演算増幅器OP2の出力端子と分流用抵抗R1との間にはスイッチSW5が挿入され、出力端子Toutと抵抗R3との間にはスイッチSW6が挿入され、出力端子Toutと反転増幅回路7の入力(抵抗R4)との間にはスイッチSW7が挿入され、反転増幅回路7の出力と抵抗R3との間にはスイッチSW8が挿入されている。さらに、演算増幅器OP2の反転入力端子に接続されている抵抗R3と並列に、抵抗R6’とスイッチSW9との直列回路が接続されており、演算増幅器OP2の反転入力端子と出力端子との間にはコンデンサC3が接続され、当該コンデンサC3と並列に、コンデンサC2’とスイッチSW10との直列回路が接続されている。
ここで、スイッチSW6,SW9は、図10に示すように第1のスイッチSW1と同時にオンすることで第1の帰還回路5を作動させるものであって、このとき、その他のスイッチSW5,SW7,SW8,SW10はオフする。この状態では、出力端子Toutは、抵抗R3と抵抗R6’との並列回路を介して演算増幅器OP2の反転入力端子に接続され、演算増幅器OP2の出力端子は、分流用トランジスタQ1のゲートに接続され、演算増幅器OP2の反転入力端子と出力端子との間にはコンデンサC3が接続されることとなる。
一方、スイッチSW5,SW7,SW8,SW10は、図10に示すように同時にオンすることで第2の帰還回路4を作動させるものであって、このとき、その他のスイッチSW1,SW6,SW9はオフする。この状態では、出力端子Toutは反転増幅回路7と抵抗R3とを介して演算増幅器OP2の反転入力端子に接続され、演算増幅器OP2の出力端子は、分流用抵抗R1に接続され、演算増幅器OP2の反転入力端子と出力端子との間にはコンデンサC3およびコンデンサC2’の並列回路が接続されることとなる。
要するに、いずれの状態でも、反転増幅回路OP2は積分回路を構成するものの、そのカットオフ周波数は、スイッチSW1,SW6,SW9がオンの状態では抵抗R3および抵抗R6’の並列回路とコンデンサC3とで第1カットオフ周波数fc1に設定され、スイッチSW5,SW7,SW8,SW10がオンの状態ではコンデンサC3およびコンデンサC2’の並列回路と抵抗R3とで第2カットオフ周波数fc2に設定される。
以上説明した本実施形態の構成によれば、演算増幅器OP2を第2の帰還回路4と第1の帰還回路5とで兼用しているから、各帰還回路4,5にそれぞれ個別に演算増幅器を設ける場合に比べて、小型化、低消費電力化を図ることが可能になる。
その他の構成および機能は実施形態1と同様である。
なお、上記各実施形態では、フォトダイオードPDが光を受光したときに電流電圧変換回路2の入力端子Tinに対して入力電流Iinが流れ込む構成を前提として説明したが、入力端子Tinに対する入力電流Iinの向きを逆向きとし、フォトダイオードPDが光を受光したときに入力端子Tinから入力電流Iinが流れ出す構成を前提としてもよい。この場合、分流用抵抗R1および分流用トランジスタQ1は入力端子Tinから入力電流Iinを引き抜くように機能するのではなく、入力端子Tinに対して入力電流Iinを加算するように機能する。具体的には、分流用トランジスタQ1は、入力端子Tinと基準電源との間に接続されたPチャネルのMOSFETからなり、第1の帰還回路5の出力に応じた電流を基準電源から入力端子Tinに流すように構成される。
さらに、上記各実施形態では、受光部としてフォトダイオードPDを例示したが、この例に限るものではなく、たとえばCdSやサーミスタなどの素子を受光部に用いることもできる。すなわち、本発明の煙感知器Aは、フォトダイオードPDのように自ら光起電力を生じる素子だけでなく、CdSやサーミスタのように自ら光起電力を生じない受動素子からなる受光部にも対応可能である。