JP5158073B2 - ジフルオロメタンビス(スルホニルフルオリド)の製造方法 - Google Patents
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Description
たとえば、分子中にスルホニルフルオリド基を2つ有するぺルフルオロアルカンビス(スルホニルフルオリド)である下式(F2)で表される化合物とNH3を反応させると、下式(A)で表されるアニオンのアンモニウム塩が得られる。該アンモニウム塩は、電気伝導性と化学的安定性とに優れた電解質材料として有用である(特許文献1参照。)。
RF2CHFSO2F(ただし、RF2は−F、−CF3または−CF2CF3を示す。)を液相中でフッ素と反応させるRF2CF2SO2Fの製造方法(特許文献2参照。)。
CH3SO2Fを液相または気相でフッ素を用いてフッ素化反応するCF3SO2F、CHF2SO2FまたはCH2FSO2Fの製造方法(特許文献3参照。)。
F(O)C−CF2−SO2F等のフルオロスルホニル基とカルボキシル基を有する化合物を電極反応によりカップリング反応させて、前記の式(F2)で表わされる化合物等を製造する方法(特許文献4参照。)。
下式(H3)で表される化合物を電気化学的にフッ素化することにより下式(F3)で表わされる化合物を製造する方法(非特許文献1参照。)。
また、他の文献(特許文献1〜4)には、本発明の式CF2(SO2F)2で表されるジフルオロメタンビス(スルホニルフルオリド)の製造方法について、具体的な記載はない。
本発明の目的は、分子中に2つのスルホニルフルオリド基、または2つの‐SO2結合を有するジフルオロメタンビス(スルホニルフルオリド)の製造方法を提供することにある。
[1]下式(2F)で表される化合物をフッ素化反応することを特徴とする下式(1)で表される化合物の製造方法。
FSO2−CHF−SO2F (2F)
FSO2−CF2−SO2F (1)
[2]下式(4)で表される化合物および/または下式(3)で表される化合物とH2Oとを反応させて下式(2F)で表される化合物を得て、つぎに該化合物をフッ素化反応することを特徴とする下式(1)で表される化合物の製造方法。
[4]フッ素化反応を液相中でフッ素と反応させることにより行う上記[1]〜[3]のいずれかに記載の製造方法。
[5]上記液相中の不活性溶媒が、ペルフルオロアルカン類、または、塩素原子、窒素原子、および酸素原子からなる群から選ばれる1種以上の原子を構造中に有する有機溶剤用化合物をペルフルオロ化して得られた溶媒である上記[4]に記載の製造方法。
[6]上記[1]〜[5]のいずれかに記載の製造方法により前記式(1)で表される化合物を得て、該式(1)で表される化合物と、アンモニアとを反応させる下式(Cy)で表される化合物の製造方法。
(1A):20〜30℃の反応温度、大気圧にて、無水ジエチルエーテルまたはテトラヒドロフラン存在下に前記式(1)で表される化合物とアンモニアを反応させる方法。
(1B):−78〜−30℃の反応温度、大気圧にて、液体アンモニアを含むテトラヒドロフラン溶液中に、前記式(1)で表される化合物を含むテトラヒドロフラン溶液を添加することにより、前記式(1)で表される化合物とアンモニアを反応させる方法。
本発明者は、公知の方法にしたがって化合物(2H)の製造を試みたが、化合物(2H)の原料であるClSO2CH2SO2Clの生成は認められなかった。これに対して、化合物(2F)は、後述する方法により入手できるため、本発明の製造方法は、工業的な製造がしやすく、高い収率で化合物(2F)から目的化合物(1)を得る方法である。
FSO2−CH2−SO2F (2H)
不活性溶媒は、ペルフルオロアルカン類、または、塩素原子、窒素原子、および酸素原子からなる群から選ばれる1種以上の原子を構造中に有する公知の有機溶剤用化合物をペルフルオロ化して得られた溶媒が好ましい。
バッチ方式による液相フッ素化反応の態様としては、反応器に化合物(2F)と不活性溶媒とを仕込んだ後に、反応器内を撹拌しながら、フッ素ガスを連続的に反応器中に供給して、化合物(2F)をフッ素化反応する態様が挙げられる。
本発明によれば、2つのSO2F基に挟まれたCHF部分の水素原子をフッ素原子に置換する反応を、高収率で実施できる。また、化合物(1)の回収率も高い利点がある。
方法(1A):20〜30℃の反応温度、大気圧にて、無水ジエチルエーテルまたはテトラヒドロフラン存在下に化合物(1)とアンモニアを反応させる方法。
方法(1B):−78〜−30℃の反応温度、大気圧にて、液体アンモニアを含むテトラヒドロフラン溶液中に、化合物(1)を含むテトラヒドロフラン溶液を添加することにより、化合物(1)とアンモニアを反応させる方法。
また、化合物(Cy)は種々の有用な化合物の出発原料としても有用である。たとえば、化合物(Cy)を出発原料として、下記の製造ルートを用いることにより、下記化合物(Cyh)、下記化合物(Cym)、下記化合物(Cyn)、下記化合物(Cyf)等の化合物を製造できる(ただし、Mはアルカリ金属原子を、Rは1価有機基を、Xは一価のアニオンを示す。)。
Rは、炭素数1〜10の1価炭化水素基が好ましく、炭素数1〜10のアルキル基が特に好ましい。また、4個のRは、同一であってもよく、異なっていてもよい。また、2または3個のRは、互いに連結して、N+を含む環構造を形成していてもよい。Rが環構造を形成する場合は、その環構造は芳香族性を有していてもよい。環構造を形成しない残余のRは、炭素数1〜10の1価炭化水素基が好ましく、炭素数1〜10のアルキル基が特に好ましい。
(NR4)+(X)−のXは、OH、Cl、Br、またはIが好ましい。化合物(Cyh)と(NR4)+(X)−との反応は、水溶液中で行うのが好ましい。理由は、化合物(Cyn)は水に難溶性であり、副生するHXまたはMXは水溶性であることから、反応後の両者の分離が容易になるからである。
化合物(Cyn)は、導電性材料、反応溶媒、熱媒体材料等として有用である。化合物(Cyh)は、中間体として有用であるだけでなく、超強酸触媒として有用である。
化合物(Cyf)はフッ素化剤(DesMarteau試薬)として有用である。
なお、以下においてガスクロマトグラフィをGCと、ガスクロマトグラフィ質量分析をGC−MSと、CCl2FCClF2をR−113と記す。純度および収率は、GC分析によるピーク面積比、または19F−NMRによる積分比(内部標準:パーフルオロベンゼン)から求めた。
化合物(1)を下式で示すスキームにしたがって合成した。
熱電対とコンデンサーとを据え付けた3つ口フラスコ(内容積2L)に、60%発煙硫酸を単蒸留して得られたSO3(461g)を仕込み、さらにCF2=CFCF2OSO2F(1458g)を25℃にて滴下して仕込んだ。滴下中、わずかなフラスコ内温の低下が観測された。
滴下終了後、フラスコ内を70℃まで加熱するとフラスコ内溶液の還流が始まった。さらに、反応の進行に伴ってフラスコ内温が上昇した。そのまま19時間、フラスコ内を加熱し、フラスコ内温が105℃に達した時点で加熱を停止した。
フラスコ内溶液をGC−MSと19F−NMRで分析した結果、化合物(7)が79%の収率で生成していることを確認した。CF2=CFCF2OSO2Fは14%で残存していた。
例1−1で得たフラスコ内溶液に、スプレードライで微粉末状にされたKF(500g)を添加した。添加は、フラスコを氷冷し、フラスコ内温の上昇に注意しながら行った。添加終了後、フラスコ内温25℃にて6日間、フラスコ内を撹拌した。つぎに、そのままフラスコ内溶液の精密蒸留を行い、129〜131℃の留分としてGC純度が99%以上である純粋な化合物(6)(1080g)を得た。出発原料のCF2=CFCF2OSO2Fを基準とした収率は60%であった。
内径1cmの管状反応器(インコネル製)にガラスビーズ(中心粒径105〜125μm、岳南光機社製ガラスビーズ#150)を充填高が40cmになるまで充填した後に、管状反応器を250℃に加熱した。
例1−2で得た化合物(6)の気体を25モル%含むように窒素ガスで希釈した混合ガスを用意した。管状反応器を加熱しながら、管状反応器内における混合ガスの線速が2.0cm/sになるように、管状反応器の底部から導入した。なお、管状反応器の上端部にはドライアイストラップを据え付けた。そのまま、前記混合ガスを2時間供給した後に、窒素ガスのみを1時間流通させた。管状反応器に導入した化合物(6)の量は、29.9gであった。
ドライアイストラップに回収した液(12.7g)をGCにて分析した結果、化合物(6)は確認されず、純度90%の化合物(5)の存在が確認された。前記液の回収率も加味した、化合物(5)の収率は69%であった。
コンデンサーを据え付けた200mLの4つ口ナスフラスコに、例1−3で得た化合物(5)(69.0g、0.42mol)と、反応直前に60%発煙硫酸から単蒸留により留出させて得た三酸化硫黄(31.8g、0.40mol)を仕込み、140℃で15時間反応させた。反応終了後、蒸留精製を行い、主留分64.7gを回収した。得られた主留分を19F−NMRによって分析を実施した結果、化合物(4)と化合物(3)を4:1(NMRにおける面積比)で含有する混合物を得た。化合物(5)の仕込み量に対する、化合物(4)と化合物(3)の合計収率は63%であった。
例1−4で得た化合物(4)と化合物(3)の混合物(63.5g、0.26mol)と、フッ化ナトリウム(21.8g、0.52mol)を、100mLの4つ口フラスコに仕込み、氷冷下、7.02g(0.39mol)の水を徐々に滴下した。滴下終了後、室温で一晩撹拌した後、目的物を単蒸留で留去した結果、水相(2.63g)と有機相(41.5g)を回収した。有機相をGC分析した結果、GC純度が99%以上である純粋な化合物(2F)であることを確認した。化合物(2F)の収率は80.5%であった。
オートクレーブ(内容積500mL、ニッケル製)に、R−113(312g)を加えて撹拌しながら、25℃に保持した。オートクレーブのガス出口には、5℃に保持した冷却器、NaFペレット充填層を直列に設置した。窒素ガスを1.0時間吹き込んだ後、窒素ガスで20体積%に希釈したフッ素ガス(以下、20%フッ素ガスと記す。)を、流速10.70L/hで30分間、吹き込んだ。さらにオートクレーブ内の圧力を0.10MPaまで加圧して、同じ流速で20%フッ素ガスを30分間、吹き込んだ。つぎに20%フッ素ガスを同じ流速で吹き込みながら、上記化合物(2F)(50.0g)をR−113(130g)に溶解した溶液を4.1時間かけて注入した。
つぎに20%フッ素ガスを同じ流速で吹き込みながら、オートクレーブ圧力を0.10MPaに保ち、ベンゼン濃度が0.01g/mLのR−113溶液33mLを、1.5時間かけて注入し、オートクレーブのベンゼン注入口を閉め、1.0時間撹拌した。ついで、オートクレーブ内温度を25℃から40℃まで加熱しながら、さらに1.0時間撹拌を続けた。つづいて、窒素ガスを1.0時間吹き込んでからオートクレーブ内の内容物を回収した。
内容物を19F−NMRにより分析した結果、目的化合物(1)の生成が確認された(NMR収率52.5%)。
化合物(1)の19F−NMRのスペクトルデータ(282.65MHz、溶媒:CDCl3、基準:CFCl3)δ(ppm):47.7(2F),−97.4(2F)。
なお、2007年3月12日に出願された日本特許出願2007−061942号の明細書、特許請求の範囲、及び要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。
Claims (7)
- 下式(2F)で表される化合物をフッ素化反応することを特徴とする下式(1)で表される化合物の製造方法。
FSO2−CHF−SO2F (2F)
FSO2−CF2−SO2F (1) - H2Oを、前記式(4)で表される化合物および前記式(3)で表される化合物の総量に対して0.1〜10倍モル用いて反応を行う請求項2に記載の製造方法。
- 前記フッ素化反応を液相中でフッ素と反応させることにより行う請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
- 上記液相中の不活性溶媒が、ペルフルオロアルカン類、または、塩素原子、窒素原子、および酸素原子からなる群から選ばれる1種以上の原子を構造中に有する有機溶剤用化合物をペルフルオロ化して得られた溶媒である請求項4に記載の製造方法。
- 下記(1A)または(1B)の方法により前記式(1)で表される化合物とアンモニアとを反応させて、前記式(Cy)で表される化合物を得る請求項6に記載の製造方法。
方法(1A):20〜30℃の反応温度、大気圧にて、無水ジエチルエーテルまたはテトラヒドロフラン存在下に前記式(1)で表される化合物とアンモニアを反応させる方法。
方法(1B):−78〜−30℃の反応温度、大気圧にて、液体アンモニアを含むテトラヒドロフラン溶液中に、前記式(1)で表される化合物を含むテトラヒドロフラン溶液を添加することにより、前記式(1)で表される化合物とアンモニアを反応させる方法。
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