JP5157781B2 - 全固体リチウム二次電池 - Google Patents
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Description
本発明の全固体リチウム二次電池は、正極層、固体電解質層、および負極層を有する全固体リチウム二次電池であって、上記正極層が、酸化物系正極活物質表面にLi含有硫酸塩が形成されたLi含有硫酸塩被覆酸化物系正極活物質と、硫化物系固体電解質材料とを含有することを特徴とするものである。
図1は、本発明における全固体リチウム二次電池の一例を模式的に示す概略断面図である。図1に示される全固体リチウム二次電池は、酸化物系正極活物質表面にLi含有硫酸塩が形成されたLi含有硫酸塩被覆酸化物系正極活物質と、硫化物系固体電解質材料とを含有する正極層1、正極層1上に形成された固体電解質層2、固体電解質層2を正極層1と挟持するように設置された負極層3、を有するものである。通常、これらを挟持するように正極層1上に正極集電体4と、負極層3上に負極集電体5とが設けられており、さらに、これら全体を覆うように電池ケース6が配されている。
このような本発明の全固体リチウム二次電池においては、少なくとも、上記正極層、上記固体電解質層、および上記負極層を有するものであれば特に限定されるものではない。通常は、上述したように、正極集電体、負極集電体、電池ケース等を有する。
以下、本発明の全固体リチウム二次電池について、構成ごとに詳細に説明する。
まず、本発明における正極層について説明する。上記正極層は、酸化物系正極活物質表面にLi含有硫酸塩が形成されたLi含有硫酸塩被覆酸化物系正極活物質と、硫化物系固体電解質材料とを含有するものである。上記正極層においては、酸化物系正極活物質表面にLi含有硫酸塩が形成されている。これにより、上述したような硫黄と酸素との反応による高抵抗層の形成を抑制することが可能となる。本発明においては、このような正極層を有しているため、リチウムイオン伝導に対する抵抗が小さく、出力に優れた全固体リチウム二次電池とすることができるのである。
以下、本発明に用いられる正極層について、構成ごとに説明する。
上記Li含有硫酸塩被覆酸化物系正極活物質は、酸化物系正極活物質表面にLi含有硫酸塩が形成されたものである。
本発明におけるLi含有硫酸塩としては、少なくともLiを含有する硫酸塩であれば特に限定されるものではなく、必要に応じてLiF、LiCl、Li2CO3等のその他元素を有していても良い。本発明においては、中でも、Li2SO4であることが好ましい。Li伝導度が高く、さらに出力に優れた全固体リチウム二次電池とすることができるからである。また、Liのみからなる硫酸塩であるため、その他元素と酸化物系正極活物質や硫化物系固体電解質材料との副反応が抑制され、このような反応による抵抗層の形成等を抑制することが可能となり、より確実にリチウムイオン伝導に対する抵抗が小さく、出力に優れた全固体リチウム二次電池とすることができるからである。
本発明に用いられる硫化物系固体電解質材料としては、具体的にはLi、A、Sからなる硫化物系固体電解質材料(Li−A−S)を挙げることができる。上記硫化物系固体電解質材料Li−A−S中のAは、P、Ge、B、Si、およびIからなる群より選ばれる少なくとも一種である。このような硫化物系固体電解質材料Li−A−Sとしては、具体的にはLi7P3S11、70Li2S−30P2S5、LiGe0.25P0.75S4、80Li2S−20P2S5、Li2S−SiS2等を挙げることができ、イオン伝導度が高いことから、特にLi7P3S11が好ましい。
本発明に用いられる正極層は、必要に応じて、その他の材料を含有していても良い。例えば、導電性を向上させるために、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンファイバー等の導電助剤を含有していても良い。
上記正極層の膜厚としては、特に限定されるものではなく、通常の全固体リチウム二次電池に用いられる正極層の厚さと同様の厚さとすることができる。
上記固体電解質層に用いられる固体電解質材料としては、一般的な全固体リチウム二次電池に用いられるものと同様のものを用いることができる。例えば硫化物系固体電解質、チオリシコン、酸化物系固体電解質、塩化物系固体電解質、フッ化物系固体電解質等を挙げることができる。
上記負極層に用いられる負極材料としては、一般的な全固体リチウム二次電池に用いられる材料と同様のものを使用することができる。例えば、負極としての機能を有する金属箔等の負極材料のみからなるもの、負極活物質と固体電解質材料とを混合して負極用合剤としたもの等を挙げることができる。また、必要に応じて、導電性を向上させるために、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンファイバー等の導電助剤を含有していても良い。
上記全固体リチウム二次電池において、上述した正極層、固体電解質層、および負極層以外の構成、例えば正極集電体、負極集電体および電池ケース等その他の構成について、以下詳細に説明する。
本発明に用いられる正極集電体は、上記正極層の集電を行うものである。上記正極集電体の材料としては、導電性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えばSUS、アルミニウム、ニッケル、鉄、チタン、およびカーボン等を挙げることができ、中でもSUSが好ましい。さらに、上記正極集電体は、緻密質集電体であっても良く、多孔質集電体であっても良い。
本発明に用いられる負極集電体は、上記負極層の集電を行うものである。上記負極集電体の材料としては、導電性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えばSUS、銅、ニッケル、およびカーボン等を挙げることができ、中でもSUSが好ましい。さらに、上記負極集電体は、緻密質集電体であっても良く、多孔質集電体であっても良い。
上述した部材以外のその他の構成、例えば、電池ケース、コイン型電池ケース等の封止に用いられる樹脂等について説明する。
上記電池ケース、上記樹脂等に関しては、特に限定されるものではなく、一般的な全固体リチウム二次電池と同様のものを用いることができる。
具体的には、上記電池ケースとしては、一般的には、金属製のものが用いられ、例えばステンレス製のもの等が挙げられる。また、上記電池ケースの代わりに絶縁リング等を用いても良い。また、上記電池ケースは、集電体の機能を兼ね備えたものであっても良い。具体的には、SUS(ステンレス鋼)製の電池ケースを用意し、その一部を集電体として用いる場合等を挙げることができる。また、上記樹脂としては、吸水率の低い樹脂が好ましく、例えばエポキシ樹脂等が挙げられる。
(1)全固体リチウム二次電池の製造方法
本発明の全固体リチウム二次電池の製造方法としては、上記の全固体リチウム二次電池を得ることができる方法であれば特に限定されるものではない。例えば、まず、固体電解質材料をプレス成形して固体電解質層を形成する固体電解質層形成工程を行う。次に、負極集電体上に負極材料を圧着等して負極層を形成して負極層形成工程を行う。
次に、正極集電体上に、上記Li含有硫酸塩被覆酸化物系正極活物質と硫化物系固体電解質材料とを混合して得られた上記正極形成用材料を設置した後プレス成形して正極層を形成する正極層形成工程を行う。次に、上記固体電解質層上に、上記負極層を設置し、さらに、上記固体電解質層を上記負極層と挟持するように上記正極層を設置する。さらに、これを例えばコイン型の電池ケース中に設置した後、樹脂パッキンにより封止することにより電池セルを形成する電池セル形成工程を行うことにより、上述した所望の全固体リチウム二次電池を得る方法等を挙げることができる。
なお、上記固体電解質層形成工程、上記負極層形成工程、上記正極形成用材料形成工程、上記正極層形成工程、上記電池セル形成工程は、上述した所望の全固体リチウム二次電池を得ることができれば、各工程を同時に行ったり、各工程の順番を変更したりするなどしても良い。また、上述した所望の全固体リチウム二次電池を得ることができれば、上述した工程以外のその他工程を有していても良い。
本発明の全固体リチウム二次電池の用途としては、特に限定されるものではないが、例えば、自動車用の全固体リチウム二次電池等として、用いることができる。
本発明の全固体リチウム二次電池の形状は、コイン型、ラミネート型、円筒型、角型等を挙げることができ、中でも角型、ラミネート型が好ましく、特にラミネート型が好ましい。
(Li含有硫酸塩被覆酸化物系正極活物質形成)
Li2SO4を水に溶解させて、Li2SO4水溶液を調製した。次に、Li2SO4水溶液を、転動流動層を用いたコート装置により、酸化物系正極活物質(LiCoO2)表面に、Li2SO4の量が酸化物系正極活物質の量の0.29wt%となるように塗布し、給気温度75℃の温風で乾燥させて、粉末を得た。次に、この粉末を大気中、500℃で、10時間熱処理することにより、Li含有硫酸塩被覆酸化物系正極活物質(Li2SO4被覆LiCoO2)を得た。
(電池セル形成)
Li含有硫酸塩被覆酸化物系正極活物質形成で得られたLi含有硫酸塩被覆酸化物系正極活物質と特開2005−228570号公報に記載された方法と同様の方法で形成した硫化物系固体電解質Li7P3S11とを、重量比でLi含有硫酸塩被覆酸化物系正極活物質:硫化物系固体電解質Li7P3S11=7:3となるように混合し正極用形成用材料とした。
この正極形成用材料を、成形冶具中に挿入して、プレス成形して、正極層を形成した。
次に、硫化物系固体電解質Li7P3S11粉末を、成形冶具中に挿入して、プレス成形して、硫化物系固体電解質層を形成した。
次に、硫化物系固体電解質層を正極層と、In箔負極層とで挟持して電池セルとした。
Li2SO4の量を、酸化物系正極活物質の量の1.2wt%とした以外は、実施例1と同様にして電池セルを形成した。
Li2SO4による被覆を行わず、LiCoO2を用いて正極層を形成した以外は、実施例1と同様にして電池セルを形成した。
(SEM写真観察)
実施例1および比較例と同様の方法で形成したLi含有硫酸塩被覆酸化物系正極活物質をSEMにより観察した。得られたSEM写真を図2(実施例1)および図3(比較例)に示す。
XPSを用いて、実施例1、実施例2および比較例と同様の方法で形成したLi含有硫酸塩被覆酸化物系正極活物質の表面の元素分析を行った。図4に、実施例2のS(硫黄)元素量を100とした場合のS元素比をLi2SO4の量に対してプロットしたグラフを示す。
実施例1、実施例2および比較例で得られた電池セルを用いて、充電し、インピーダンス測定により、正極活物質/硫化物系固体電解質材料間の界面抵抗を求めた。実施例1、実施例2、および比較例の界面抵抗をLi含有硫酸塩のコート厚に対してプロットしたグラフを図5に示す。なお、Li含有硫酸塩のコート厚は、酸化物系正極活物質の比表面積、Li含有硫酸塩の量、およびLi含有硫酸塩の密度から導出した。
2 … 固体電解質層
3 … 負極層
4 … 正極集電体
5 … 負極集電体
6 … 電池ケース
Claims (2)
- 正極層、固体電解質層、および負極層を有する全固体リチウム二次電池であって、前記正極層が、酸化物系正極活物質表面にLi含有硫酸塩が形成されたLi含有硫酸塩被覆酸化物系正極活物質と、硫化物系固体電解質材料とを含有することを特徴とする全固体リチウム二次電池。
- 前記Li含有硫酸塩がLi2SO4であることを特徴とする請求項1に記載の全固体リチウム二次電池。
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