JP5157494B2 - サーマルヘッド及びサーマルプリンタ - Google Patents

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Description

本発明は、発熱素子が配列された突部と記録媒体とを押圧させるとともに、発熱素子を駆動して発熱させることにより、記録媒体に対して画像を形成するサーマルヘッド及びサーマルプリンタに係るものである。そして、詳しくは、サーマルヘッドの耐熱性及び破壊強度の向上を図ることができる技術に関するものである。
従来から、突部に発熱抵抗体(発熱素子)を配列したサーマルヘッドと、サーマルヘッドに対向するように設けられたプラテンローラとを備えるサーマルプリンタが知られている。このようなサーマルプリンタは、サーマルヘッドの突部とプラテンローラ上に搬送された印画紙(記録媒体)とを押圧させて画像を形成するようになっている。なお、突部と印画紙との押圧は、サーマルヘッドを移動させる場合と、プラテンローラを移動させる場合とがある。
ここで、サーマルプリンタには、画像形成方式として昇華方式や感熱方式等があるが、いずれの方式であっても、サーマルヘッドの発熱抵抗体に対して階調レベルに応じた選択的な通電を行い、その際に発生する熱エネルギを利用して画像を形成している。例えば、昇華方式のサーマルプリンタの場合には、インクリボンを介して印画紙にサーマルヘッドの突部を押圧し、発熱抵抗体を駆動して発熱させると、インクリボン上のインクが発熱抵抗体の熱エネルギに比例して印画紙上に昇華され、印画が行われる。
このように、サーマルヘッドは、印画のために発熱抵抗体を発熱させるものであるが、印画の際に発熱抵抗体から発生した熱は、その大半が印画紙とは反対方向に伝達され、放熱されてしまう。そのため、高速に印画しようとすれば、発熱抵抗体を直ちに高温にする必要があるが、そうすると、消費電力が大きくなるという問題がある。特に、家庭用のサーマルプリンタでは、省電力化を図りつつ印画速度を上げることが求められているので、サーマルヘッドの熱効率を改善し、消費電力を下げなければならない。
そこで、サーマルプリンタの消費電力を減らし、高品位な画像や文字を高速で印画するため、サーマルヘッドの熱効率及び応答性を向上させる技術が知られている。すなわち、発熱抵抗体を配列したガラス基板に空隙部を形成し、空隙部内の空気層により、発熱抵抗体から発生した熱がガラス基板側に放熱されにくくして熱効率を向上させるとともに、空隙部によってガラス基板の蓄熱量を少なくして応答性を向上させるようにした技術である(例えば、特許文献1参照)。
特開2007−245675号公報
図9は、上記の特許文献1に開示された従来のサーマルヘッド110を示す縦断面図である。
図9に示すように、サーマルヘッド110は、ヘッド本体部となり、縦断面が略円弧状の突部111aが形成されたガラス基板111上に、発熱抵抗体112と、発熱抵抗体112を発熱させるための電源電極113a及び駆動電極113bと、発熱抵抗体112、電源電極113a、及び駆動電極113bを保護する保護膜114とが順次積層されたものである。そして、電源電極113aと駆動電極113bとの間で発熱抵抗体112が露出した部分が実際に熱エネルギを発生する発熱部112aとなっている。
ここで、発熱部112aは、発熱部112aをインクリボン及び印画紙に押圧できるように、突部111a上に長さL1の矩形状に設けられている。また、突部111aが形成されたガラス基板111には、突部111aと対向する幅W2の凹状の空隙部111bも形成されている。そして、空隙部111bの幅W2は、発熱部112aの長さL1よりも大きく(空隙部幅W2>発熱部長さL1)形成され、空隙部111b内は、空気で満たされるようになっている。さらにまた、ガラス基板111の下側には、空隙部111bの開口面を塞ぐようにして放熱板115が接着剤116で接着されている。
このようなサーマルヘッド110は、ガラス基板111を構成しているガラスよりも熱伝導率が低い空気の特性により、空隙部111bの熱伝導率が低くなる。すなわち、空隙部111bの幅W2が大きい(空隙部幅W2>発熱部長さL1)ので、空隙部111b内の空気量が多くなり、ガラス基板111の突部111a上に設けられた発熱部112aからガラス基板111側への放熱が抑制される。そのため、突部111aに押圧されたインクリボン側に伝達される熱エネルギが大きくなる。その結果、印画の際に、インクリボン上のインクをその昇華温度まで上げるために必要な消費電力が少なくなり、サーマルヘッド110の熱効率が向上する。
また、空隙部111bによってガラス基板111の突部111aの厚さが薄くなり、ガラス基板111の蓄熱量が少なくなるため、ガラス基板111内に蓄熱されてしまう熱エネルギを短時間で放熱できるようになる。その結果、インクリボン上のインクを昇華させないとき(発熱部112aを発熱させないとき)に、直ちに発熱部112aの温度が下がるので、サーマルヘッド110の応答性が向上する。
しかし、図9に示すサーマルヘッド110であっても、さらに消費電力を減らし、高速に印画することが求められている。そのためには、より一層の熱効率及び応答性の向上を図る必要があるだけでなく、高温になるサーマルヘッド110の発熱部112aの耐久性及び信頼性に問題が生じないようにしなければならない。また、発熱部112aの直下で、高温にさらされることとなるガラス基板111の突部111aについて、耐熱性や破壊強度を改善する必要もある。
したがって、本発明が解決しようとする課題は、発熱部の極端な温度上昇を低減し、発熱素子の耐久性及び信頼性を確保するとともに、発熱素子が配列されたヘッド本体部の突部の耐熱性や破壊強度の向上を図り、良好な熱効率及び応答性が得られるようにすることで、消費電力を減らし、かつ高速印画を可能とすることである。
本発明は、以下の解決手段により、上述の課題を解決する。
本発明の請求項1に記載の発明は、発熱素子が配列された突部と記録媒体とを押圧させるとともに、前記発熱素子を駆動して発熱させることにより、記録媒体に対して画像を形成するサーマルヘッドであって、前記突部及び前記突部に対向する凹状の空隙部が形成されたヘッド本体部と、前記ヘッド本体部の前記突部側に設けられた熱伝導層と、前記発熱素子の一方の側に設けられた電源電極と、前記発熱素子の他方の側に設けられた駆動電極とを備え、前記熱伝導層は、前記発熱素子との電気的絶縁性を確保する電気絶縁層と、前記発熱素子から発生した熱を拡散させる熱拡散層とを備えると共に、前記電源電極と前記駆動電極との間の前記発熱素子の発熱部には設けられていないことを特徴とする。
本発明の請求項に記載の発明は、発熱素子が配列された突部と記録媒体とを押圧させるとともに、前記発熱素子を駆動して発熱させることにより、記録媒体に対して画像を形成するサーマルヘッドを備えるサーマルプリンタであって、前記サーマルヘッドは、前記突部及び前記突部に対向する凹状の空隙部が形成されたヘッド本体部と、前記ヘッド本体部の前記突部側に設けられた熱伝導層と、前記発熱素子の一方の側に設けられた電源電極と、前記発熱素子の他方の側に設けられた駆動電極とを備え、前記熱伝導層は、前記発熱素子との電気的絶縁性を確保する電気絶縁層と、前記発熱素子から発生した熱を拡散させる熱拡散層とを備えると共に、前記電源電極と前記駆動電極との間の前記発熱素子の発熱部には設けられていないことを特徴とする。
(作用)
上記の請求項1及び請求項に記載の発明は、ヘッド本体部の突部側に設けられた熱伝導層を備えている。そして、熱伝導層は、発熱素子との電気的絶縁性を確保する電気絶縁層と、発熱素子から発生した熱を拡散させる熱拡散層とを備えている。そのため、発熱素子の発熱部に集中する熱分布が熱拡散層によって拡散され、発熱部の極端な温度上昇が低減される。
上記の発明によれば、発熱部に集中する熱分布が拡散され、発熱部の極端な温度上昇が低減されるので、発熱部の耐久性及び信頼性が向上する。また、発熱素子が配列されたヘッド本体部の突部の耐熱性や破壊強度が向上する。そのため、良好な熱効率及び応答性が得られるようになる。その結果、消費電力を減らすことができるだけでなく、高速印画が可能となる。
以下、図面を参照して、本発明の基本的構成例と実施の形態等について説明する。
図1は、基本的構成例のサーマルヘッド10を備えるサーマルプリンタ1を示す概略の側面図である。
また、図2は、基本的構成例のサーマルヘッド10の周辺部を示す斜視図である。
図1及び図2に示すように、サーマルプリンタ1は、印画紙2(記録媒体)に対し、インクリボン3上のインクを昇華させて画像を形成する昇華型のものである。すなわち、サーマルヘッド10によって発生した熱エネルギでインクリボン3上のインクを昇華させ、印画紙2上にカラー画像や文字を印画する。
このサーマルプリンタ1は、サーマルヘッド10と、サーマルヘッド10と対向する位置に設けられたプラテンローラ4と、インクリボン3の走行をガイドするリボンガイド5a,5bと、サーマルヘッド10とプラテンローラ4との間に押圧された印画紙2を搬送するキャプスタンローラ6と、キャプスタンローラ6と対向して従動回転するピンチローラ7と、印画後の印画紙2を排紙する排紙ローラ8と、印画紙2をサーマルヘッド10側に向けて逆向きに搬送させる搬送ローラ9とを備えている。また、サーマルヘッド10は、サーマルプリンタ1の筐体側の取付け部材1aにネジで取り付けられている。
ここで、インクリボン3は、長尺の樹脂フィルムからなるものであり、図1に示すように、供給スプール3aと巻取りスプール3bとの間に巻き回された状態で、インクカートリッジに収納されている。そして、樹脂フィルムの一方の面に、Y(イエロ)、M(マゼンタ)、及びC(シアン)の3色のインクと、印画された画像や文字の保存性を向上させるためのラミネートインクとが繰り返し塗布されている。また、インクリボン3は、サーマルヘッド10に対してインクリボン3の供給側と巻取り側とに設けられたリボンガイド5a,5bにより、サーマルヘッド10とプラテンローラ4との間にガイドされる。
このようなサーマルプリンタ1によって印画を行うには、図2に示すように、サーマルヘッド10のヘッド部10aとプラテンローラ4との間で印画紙2及びインクリボン3を押圧する。そして、図1に示す巻取りスプール3bを回転させてインクリボン3を巻取り方向(図1の左方向)に走行させる。また、キャプスタンローラ6及び排紙ローラ8を回転させることにより、キャプスタンローラ6とピンチローラ7との間に挟み込んだ印画紙2を排紙方向(図1の矢印A方向)に搬送する。この状態でサーマルヘッド10からインクリボン3に熱エネルギを加えると、印画紙2と重なり合っているY(イエロ)のインクが昇華され、印画紙2上に転写される。
次に、Y(イエロ)のインクが転写された印画紙2の画像形成部にM(マゼンタ)のインクを転写する。そのため、搬送ローラ9を回転させ、印画紙2をサーマルヘッド10側(図1の矢印B方向)に逆送りし、印画紙2の画像形成開始端がサーマルヘッド10に対向するようになる位置まで戻す。また、インクリボン3のM(マゼンタ)のインクをサーマルヘッド10に対向させる。そして、Y(イエロ)のインクを転写する際と同様に、印画紙2を排紙方向(図1の矢印A方向)に搬送しながらサーマルヘッド10からインクリボン3に熱エネルギを加え、M(マゼンタ)のインクを昇華して、印画紙2上に転写する。さらに、M(マゼンタ)のインクを転写する際と同様にして、C(シアン)のインク及びラミネートインクを印画紙2に順次転写し、カラー画像や文字を印画するとともに、画像等の保存性を向上させた後、排紙ローラ8によって排紙する。
図3は、基本的構成例のサーマルヘッド10の全体を示す斜視図である。
また、図4は、基本的構成例のサーマルヘッド10とプラテンローラ4との間で印画紙2及びインクリボン3を押圧した状態を示す正面図である。
図3に示すように、サーマルヘッド10は、熱エネルギを発生するヘッド部10aに、発生した熱の放熱部材として、放熱板40が接着されている。すなわち、非印画時に、ヘッド部10aの余分な熱を放熱板40に逃がすようになっている。なお、放熱板40の接着剤50(図示せず)には、熱伝導性のあるフィラ等が含有されている。
また、サーマルヘッド10によって画像を形成するため、ヘッド部10aの両端には、一端がヘッド部10aと電気的に接続され、他端が電源と接続された電源用フレキシブル基板61が設けられている。さらにまた、ヘッド部10aの両端の電源用フレキシブル基板61の間には、一端がヘッド部10aと電気的に接続され、他端が制御回路と電気的に接続された駆動用フレキシブル基板62が複数並設されている。そして、電源用フレキシブル基板61及び駆動用フレキシブル基板62は、ヘッド部10aとの間に、導電性粒子を含む絶縁樹脂材料からなるフィルム(例えば、異方性導電性フィルム(ACF:Anisotropic Conductive Film ))を介在させて接続されている。
ここで、ヘッド部10aは、印画紙2(図4参照)の搬送方向に対して直交方向(図3の矢印L方向)に、印画紙2の幅よりも長くなっている。そのため、印画紙2の幅方向両端の余白をなくした縁なしの画像を形成することができる。
しかしながら、ヘッド部10aが印画紙2の幅よりも長いと、図4に示すように、ヘッド部10aの端部において、印画紙2、インクリボン3、及びプラテンローラ4のいずれとも接触しない非接触領域が生ずる。
この非接触領域では、ヘッド部10aの熱エネルギがインクリボン3等に伝達されず、非接触領域の空気層によって放熱されにくいヘッド部10aの空焚き部となる。そのため、ヘッド部10aの温度が空焚き部で局所的に上昇してしまう。特に、高速印画が要求される昨今では、消費電力を増やしてヘッド部10aを高温にしているので、空焚き部の温度上昇も増加傾向にある。すると、ヘッド部10aの耐熱温度を超えてしまい、破壊につながるおそれが生じるので、ヘッド部10aの耐久性及び信頼性が問題となる。なお、図4に示すような非接触領域は、ヘッド部10aの端部だけでなく、印画中等にヘッド部10aの下側に異物が混入等することによっても発生する。
そこで、ヘッド部10aの耐熱性を向上させることにより、ヘッド部10aの局所的な高温化(空焚き部の温度上昇)による破壊強度限界を改善し、耐久性及び信頼性を向上させている。また、ヘッド部10aから発生した熱が放熱されにくくして熱効率を向上し、ヘッド部10aの蓄熱量を少なくして応答性を向上させることで、省電力で高速に印画できるサーマルヘッド10を実現している。
図5は、基本的構成例のサーマルヘッド10を部分的に示す斜視図である。
また、図6は、基本的構成例のサーマルヘッド10を示す縦断面図である。
図5及び図6に示すように、サーマルヘッド10のヘッド部10aは、ガラス基板11(本発明におけるヘッド本体部に相当するもの)と、ガラス基板11上に配列された発熱抵抗体12(本発明における発熱素子に相当するもの)と、この発熱抵抗体12を発熱させるための電源電極13a及び駆動電極13bと、発熱抵抗体12、電源電極13a、及び駆動電極13b上に設けられた熱伝導層70と、熱伝導層70の上に設けられた保護膜30とを備えている。
ヘッド部10aには、発熱抵抗体12から熱エネルギを発生させるため、電源電極13aに、電源用フレキシブル基板61(図3参照)がACF(異方性導電性フィルム)を介して電気的に接続されている。また、駆動電極13bには、駆動用フレキシブル基板62(図5参照)がACF(異方性導電性フィルム)を介して電気的に接続されている。
ここで、ガラス基板11は、ヘッド部10aの本体となるものであり、例えば、軟化点が500℃程度で、熱伝導率が1W/mK程度のガラスで矩形状に形成されている。そして、このガラス基板11には、幅W1の凹状の空隙部11aが形成されている。なお、ガラス基板11は、ガラスに代表される所定の表面性や熱特性等を有する材料から形成されたものであるが、本発明におけるヘッド本体部をガラス基板11とせず、人工水晶や人造ルビー、人造サファイヤ等の合成宝石、人造石、高密度セラミック等からなる支持基板としても良い。
また、ガラス基板11は、発熱抵抗体12が配列された突部20aを有している。この突部20aは、ガラス基板11の幅方向の中央部であって、長さ方向(図5の矢印L方向)に、縦断面が略円弧状に形成されたものである。そのため、インクリボン3(図2参照)と対向する面が略円弧状の突部20aとなり、突部20a上に配列された発熱抵抗体12とインクリボン3との当たりが良くなる。その結果、発熱抵抗体12が発生する熱エネルギをインクリボン3に効率的に伝達できる。
発熱抵抗体12は、熱エネルギを発生するものであり、上記のように、ガラス基板11の突部20a上に配列されている。この発熱抵抗体12は、例えば、Ta(タンタル)−SiO (二酸化ケイ素)、Nb(ニオブ)−SiO (二酸化ケイ素)等、温度が上昇すると抵抗値も上昇する材料(抵抗値の温度依存性が正特性を持った材料)からなっている。そして、電源電極13a及び駆動電極13bの間から露出した発熱抵抗体12の部分が実際に熱エネルギを発生する発熱部12aとなり、突部20a上に長さL1の矩形状に設けられている。また、発熱部12aは、発生する熱エネルギを分散させるため、転写させたいインクのドットサイズよりもやや大きく形成されている。
ここで、発熱抵抗体12として、抵抗値の温度依存性が正特性の材料を使用するのは、発熱部12aの異常な温度上昇を自己抑制できるようにするためである。すなわち、従来から一般的に使用されている材料は、温度依存性のないものや少ないものであった。しかしながら、温度依存性が正特性であると、例えば、空炊き部(図4参照)において温度が上昇すると抵抗値も上昇するので、発熱抵抗体12に流れる電流が減少する。そのため、発熱量も減少し、自己抑制的に空炊き部の温度上昇が抑えられることとなる。その結果、温度上昇に起因した抵抗値の永久変化や破壊限界が改善され、耐久性及び信頼性が向上する。
また、発熱抵抗体12への通電初期は、発生した熱が周囲に吸収されてしまうので、急峻な温度上昇を実現できず、先鋭性を欠いた画質となってしまう。そして、この状況は、急峻な温度変化を要求する印画を行う場合も同様である。しかしながら、抵抗値の温度依存性が正特性の材料であれば、通電開始によって温度が上昇すると発熱抵抗体12の抵抗値も上昇し、大きな電力が印加されるようになる。その結果、発熱量が大きくなり、温度上昇の立上り特性が改善される。
電源電極13a及び駆動電極13bは、電源からの電流を発熱抵抗体12に供給するとともに、発熱抵抗体12を駆動して、発熱部12aを発熱させるためのものである。この電源電極13a及び駆動電極13bは、例えば、Al(アルミニウム)、Au(金)、Cu(銅)等の電気伝導性の良い材料からなるもので、図5に示すように、電源電極13aは、すべての発熱抵抗体12と電気的に接続された共通電極であり、駆動電極13bは、発熱抵抗体12ごとに個別に接続された個別電極となっている。
また、電源電極13a(共通電極)は、ガラス基板11の突部20aを挟んで、電源用フレキシブル基板61(図3参照)が貼り合わされた側とは反対側に設けられているが、端部の両側がガラス基板11の短辺に沿って電源用フレキシブル基板61側に導かれ、電源用フレキシブル基板61とACF(異方性導電性フィルム)を介して電気的に接続されている。そのため、電源用フレキシブル基板61を介して電源と接続され、すべての発熱抵抗体12に電流が供給されることとなる。
さらにまた、駆動電極13b(個別電極)は、ガラス基板11の突部20aを挟んで、駆動用フレキシブル基板62(図5参照)が貼り合わされている側に設けられている。そして、発熱抵抗体12の駆動を制御する制御回路と接続された駆動用フレキシブル基板62とACF(異方性導電性フィルム)を介して電気的に接続されている。そのため、制御回路によって選択された発熱抵抗体12に所定時間だけ電流を供給することにより、その発熱抵抗体12の発熱部12aが発熱し、その発熱エネルギによってインクリボン3(図2参照)のインクが昇華し、印画紙2(図2参照)に転写される温度まで上昇する。
さらに、電源電極13a及び駆動電極13bは、絶縁樹脂材料からなるACF(異方性導電性フィルム)を介して電源用フレキシブル基板61(図3参照)及び駆動用フレキシブル基板62(図5参照)と接続されているので、発熱部12aで発生した熱が電源電極13aや駆動電極13bを通して電源用フレキシブル基板61や駆動用フレキシブル基板62側に放熱されることが防止される。そのため、発熱部12aから発生した熱の無駄な放熱が抑えられ、熱効率が向上する。
熱伝導層70は、発熱抵抗体12(発熱部12a)、電源電極13a、及び駆動電極13b上に設けられたものである。そして、熱伝導層70は、図6に示すように、発熱抵抗体12(発熱部12a)、電源電極13a、及び駆動電極13bに接して設けられ、これらとの電気的絶縁性を確保する電気絶縁層71と、電気絶縁層71上に積層され、発熱部12aから発生した熱を拡散させる熱拡散層72とを備えている。
保護膜30は、ヘッド部10aの最も外側に設けられたものである。そして、熱伝導層70を覆うことにより、ヘッド部10aとインクリボン3(図2参照)とが当接した際の摩擦等から発熱部12a等を保護している。この保護膜30には、摺動性や耐摩耗性を有する材料が用いられ、例えば、高温下で高強度であり、耐摩耗性、耐熱性、耐熱衝撃性、及び熱伝導性等に優れたSiAlON(サイアロン)が好適なものである。なお、この材料は、Si(ケイ素)、Al(アルミニウム)、O(酸素)、及びN(窒素)の4つの元素から構成され、Si(ケイ素)原子の一部にAl(アルミニウム)原子が置換し、N(窒素)原子の一部にO(酸素)が置換したSiAlON(サイアロン)という化学式で表されるエンジニアリング・セラミックスである。
このように、ヘッド部10aは、突部20a及び突部20aに対向する幅W1の空隙部11aが形成されたガラス基板11と、突部20a上に長さL1の発熱部12aが設けられた発熱抵抗体12と、発熱抵抗体12を発熱させるための電源電極13a及び駆動電極13bと、電気絶縁層71及び熱拡散層72を備える熱伝導層70と、最も外側に設けられた保護膜30とによって構成されている。そして、このヘッド部10aに放熱板40が接着されてサーマルヘッド10となる。
放熱板40は、Al(アルミニウム)等の金属からなるもので、ガラス基板11の裏面に、空隙部11aの開口面を塞ぐようにして接着される。ガラス基板11と放熱板40との接着は、放熱板40の表面に接着剤50(図6参照)を塗布しておき、上からガラス基板11を押圧しながら熱を加えることによって行う。この接着剤50は、弾性及び熱伝導性を有する材料(例えば、加熱硬化型のシリコーンゴム等)からなり、高硬度で熱伝導性を有するフィラ(例えば、粒状又は線状のAl(酸化アルミニウム)等)が含有されている。
したがって、接着剤50(図6参照)が熱伝導性を有することとなり、発熱抵抗体12に対する通電を止めた際(非印画時)のガラス基板11側の余分な熱を効率的に放熱板40に放熱できる。また、ガラス基板11と放熱板40との熱膨張係数の違いによる剪断力は、接着剤50の厚み(例えば、50μm程度)によって吸収されるので、放熱板40が剥がれることはない。
このような基本的構成例のサーマルヘッド10において、ガラス基板11の突部20aは、発熱抵抗体12の発熱部12aから発生した熱エネルギによって高温にさらされる。また、空焚き部(図4参照)では、突部20aの温度が局所的に上昇する。そして、このような高温状態が続くと、発熱抵抗体12の抵抗値に永久変化が生じたり、ガラス基板11(突部20a)や発熱抵抗体12(発熱部12a)の破壊につながり、サーマルヘッド10の耐久性及び信頼性を損なうこととなる。
しかし、基本的構成例のサーマルヘッド10は、発熱抵抗体12の発熱部12aに接して熱伝導層70が設けられている。そして、熱伝導層70は、発熱抵抗体12(発熱部12a)から発生した熱を拡散させる熱拡散層72を備えている。この熱拡散層72は、例えば、Al(アルミニウム)、Au(金)、Cu(銅)等の熱伝導率の高い金属膜からなり、必要な熱伝導率は、熱伝導層70の厚さによって調整される。そのため、発熱部12aに集中する熱分布が熱拡散層72によって拡散され(熱拡散層72に平行する方向に広がり)、発熱部12aの極端な温度上昇が低減される。
また、熱伝導層70は、発熱抵抗体12(発熱部12a)、電源電極13a、及び駆動電極13bと熱拡散層72(金属膜)との間の電気的な絶縁や、発熱抵抗体12(発熱部12a)等の酸化防止のため、電気絶縁層71を備えている。この電気絶縁層71は、例えば、保護膜30と同様に、SiAlON(サイアロン)が好適なものである。そして、熱伝導層70は、発熱抵抗体12(発熱部12a)等の上側に、電気絶縁層71を下層とし熱拡散層72を上層として設けられている。
このように、基本的構成例のサーマルヘッド10は、熱伝導層70の電気絶縁層71によって発熱抵抗体12(発熱部12a)、電源電極13a、及び駆動電極13bとの電気的絶縁性が確保されるとともに、熱拡散層72によって発熱抵抗体12(発熱部12a)から発生した熱が拡散する。
また、サーマルヘッド10のガラス基板11には、突部20aと対向するように空隙部11aが形成されている。すなわち、空隙部11aは、サーマルヘッド10の長さ方向(図5の矢印L方向)に発熱抵抗体12が配列されている突部20aと対向し、発熱抵抗体12の発熱部12aに向かって凹状に形成されたものである。そのため、ガラスよりも熱伝導率が低いという空気の特性により、空隙部11a内の空気がガラス基板11への放熱を効果的に抑制し、発熱部12aから発生した熱エネルギがガラス基板11に放熱されにくくなる。その結果、インクリボン3(図2参照)側への熱エネルギを多くすることができ、サーマルヘッド10の熱効率が向上する。
さらにまた、突部20aの厚さは、空隙部11aによって薄くなっているので、蓄熱量が少ない。そのため、短時間で熱エネルギを放熱できることから、発熱部12aを発熱させないときには、サーマルヘッド10の温度を直ちに下げることができる。その結果、サーマルヘッド10の応答性が向上し、画像や文字がぼやけたりするような不具合が生じることなく、省電力で高速に高品位な画像や文字を印画できるようになる。
さらに、突部20aは、発熱部12aから発生した熱エネルギの蓄熱部となる。そして、この突部20aに蓄熱された熱エネルギにより、印画紙2(図2参照)にインクを転写する際に、省電力で直ちにインクの昇華温度まで温度を上昇させることができるようになる。その結果、サーマルヘッド10の熱効率がより一層向上する。
ここで、空隙部11aの幅W1は、発熱部12aの長さL1よりも小さく(空隙部幅W1<発熱部長さL1)形成されている。これは、空焚き部(図4参照)の局所的な温度上昇を低減するためである。すなわち、図9に示す従来のサーマルヘッド110のように、空隙部幅W2>発熱部長さL1とした場合には、空隙部111b内の空気量が多くなってガラス基板111への放熱が大幅に抑制される。しかしながら、空焚き部では、ガラス基板111への放熱が抑制された分だけ、突部111aの温度が局所的に上昇してしまう。
そこで、基本的構成例のサーマルヘッド10では、ガラス基板11への放熱をある程度まで許すことにより、空焚き部(図4参照)における突部20aの局所的な温度上昇を抑えている。そして、空焚き部の温度は、空隙部11aの幅W1を発熱部12aの長さL1に対し、空隙部幅W1<発熱部長さL1の範囲で調整することにより、所望の温度とすることができる。そのため、熱伝導層70(熱拡散層72)との相乗効果により、サーマルヘッド10の耐久性及び信頼性(突部20aの耐熱性や破壊強度)を向上させることができる。
図7は、本発明の実施形態のサーマルヘッド80を示す縦断面図である。
図7に示すように、本発明の実施形態のサーマルヘッド80は、基本的構成例のサーマルヘッド10と同様に、熱伝導層81の電気絶縁層82によって電源電極13a及び駆動電極13bとの電気的絶縁性を確保するとともに、熱拡散層83によって発熱抵抗体12(発熱部12a)から発生した熱が拡散するようにしたものである。また、空隙部11aの幅W1を発熱部12aの長さL1よりも小さく(空隙部幅W1<発熱部長さL1)することにより、空焚き部(図4参照)の局所的な温度上昇を低減している。
一方、本発明の実施形態のサーマルヘッド80では、基本的構成例のサーマルヘッド10と異なり、発熱抵抗体12の発熱部12aに熱伝導層81(電気絶縁層82及び熱拡散層83)を設けていない。これは、印画に最も寄与する発熱部12aの近傍の熱拡散を抑制するためである。すなわち、発熱部12aの近傍に熱伝導層81を設けないようにすることで、印画に影響する部分の熱分布の広がりによる印画品質の低下を防止している。なお、熱伝導層81の削除範囲を変更することにより、熱拡散効果と印画品質とを調整することができる。
図8は、本発明の比較例のサーマルヘッド90を示す縦断面図である。
図8に示すように、本発明の比較例のサーマルヘッド90は、基本的構成例のサーマルヘッド10と同様に、熱伝導層91の電気絶縁層92によって発熱抵抗体12(発熱部12a)との電気的絶縁性を確保するとともに、熱拡散層93によって発熱抵抗体12(発熱部12a)から発生した熱が拡散するようにしたものである。また、空隙部11aの幅W1を発熱部12aの長さL1よりも小さく(空隙部幅W1<発熱部長さL1)することにより、空焚き部(図4参照)の局所的な温度上昇を低減している。
一方、本発明の比較例のサーマルヘッド90では、基本的構成例のサーマルヘッド10と異なり、熱伝導層91が発熱抵抗体12(発熱部12a)の下側に、電気絶縁層92を上層とし熱拡散層93を下層として設けている。これは、電気絶縁層92による熱拡散層93の電気的な絶縁性を確実にするためである。すなわち、熱伝導層91を発熱抵抗体12(発熱部12a)の下側に配置することで、発熱部12aの近傍の段差(電源電極13a及び駆動電極13bの端部の段差)がない突部20a上に電気絶縁層92を成膜できるので、発熱抵抗体12と熱拡散層93との間に電気絶縁層92を膜付き不良等の欠陥なく形成できる。そのため、熱拡散層93の絶縁不良を確実に回避できる。
このように、サーマルヘッド10、サーマルヘッド80、及びサーマルヘッド90は、熱伝導層70(熱伝導層81、熱伝導層91)を備えている。そのため、発熱部12aに集中する熱分布が拡散され、発熱部12aの極端な温度上昇が低減されるので、発熱部12aの耐久性及び信頼性、突部20aの耐熱性や破壊強度が向上する。その結果、熱効率及び応答性が良好であり、高品位な画像や文字を省電力で高速に印画できるようになる。
基本的構成例のサーマルヘッドを備えるサーマルプリンタを示す概略の側面図である。 基本的構成例のサーマルヘッドの周辺部を示す斜視図である。 基本的構成例のサーマルヘッドの全体を示す斜視図である。 基本的構成例のサーマルヘッドとプラテンローラとの間で印画紙及びインクリボンを押圧した状態を示す正面図である。 基本的構成例のサーマルヘッドを部分的に示す斜視図である。 基本的構成例のサーマルヘッドを示す縦断面図である。 本発明の実施形態のサーマルヘッドを示す縦断面図である。 本発明の比較例のサーマルヘッドを示す縦断面図である。 従来のサーマルヘッドを示す縦断面図である。
符号の説明
1 サーマルプリンタ
2 印画紙(記録媒体)
10,80,90 サーマルヘッド
11 ガラス基板(ヘッド本体部)
11a 空隙部
12 発熱抵抗体(発熱素子)
12a 発熱部
13a 電源電極
13b 駆動電極
20a 突部
70,81,91 熱伝導層
71,82,92 電気絶縁層
72,83,93 熱拡散層

Claims (5)

  1. 発熱素子が配列された突部と記録媒体とを押圧させるとともに、前記発熱素子を駆動して発熱させることにより、記録媒体に対して画像を形成するサーマルヘッドであって、
    前記突部及び前記突部に対向する凹状の空隙部が形成されたヘッド本体部と、
    前記ヘッド本体部の前記突部側に設けられた熱伝導層と、
    前記発熱素子の一方の側に設けられた電源電極と、
    前記発熱素子の他方の側に設けられた駆動電極と
    を備え、
    前記熱伝導層は、
    前記発熱素子との電気的絶縁性を確保する電気絶縁層と、
    前記発熱素子から発生した熱を拡散させる熱拡散層と
    を備えると共に、前記電源電極と前記駆動電極との間の前記発熱素子の発熱部には設けられていない
    ことを特徴とするサーマルヘッド。
  2. 請求項1に記載のサーマルヘッドにおいて、
    前記熱伝導層は、前記発熱素子の上側に、前記電気絶縁層を下層とし前記熱拡散層を上層として設けられている
    ことを特徴とするサーマルヘッド。
  3. 請求項1に記載のサーマルヘッドにおいて、
    前記熱伝導層は、前記発熱素子の下側に、前記電気絶縁層を上層とし前記熱拡散層を下層として設けられている
    ことを特徴とするサーマルヘッド。
  4. 請求項1に記載のサーマルヘッドにおいて、
    前記発熱素子の一方の側に設けられた電源電極と、
    前記発熱素子の他方の側に設けられた駆動電極と
    を備え、
    前記空隙部の幅W1は、前記電源電極と前記駆動電極との間の前記発熱素子の発熱部の長さL1よりも小さい
    ことを特徴とするサーマルヘッド。
  5. 発熱素子が配列された突部と記録媒体とを押圧させるとともに、前記発熱素子を駆動して発熱させることにより、記録媒体に対して画像を形成するサーマルヘッドを備えるサーマルプリンタであって、
    前記サーマルヘッドは、
    前記突部及び前記突部に対向する凹状の空隙部が形成されたヘッド本体部と、
    前記ヘッド本体部の前記突部側に設けられた熱伝導層と、
    前記発熱素子の一方の側に設けられた電源電極と、
    前記発熱素子の他方の側に設けられた駆動電極と
    を備え、
    前記熱伝導層は、
    前記発熱素子との電気的絶縁性を確保する電気絶縁層と、
    前記発熱素子から発生した熱を拡散させる熱拡散層と
    を備えると共に、前記電源電極と前記駆動電極との間の前記発熱素子の発熱部には設けられていない
    ことを特徴とするサーマルプリンタ。
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