JP5155227B2 - 内燃機関 - Google Patents

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Description

本発明は、内燃機関においてオイルを冷却する技術に関する。
従来の内燃機関は、主に、シリンダブロックと、シリンダブロックの上部に設けられたシリンダヘッドと、シリンダブロックの下部に設けられたオイルパンと、シリンダヘッドの上部に設けられたヘッドカバーと、を備えている。シリンダヘッドには動弁室が形成されている。動弁室には、燃焼室の吸気および排気を行うための動弁機構が配置されている。シリンダブロックとオイルパンとにより、クランク室が形成されている。オイルパンにはオイルが溜められている。
従来の内燃機関では、オイルパンに溜められたオイルが油圧ポンプにより動弁室へ供給される。動弁室に供給されたオイルは、動弁機構等を潤滑あるいは冷却した後に、シリンダヘッドのアッパーデッキ上を流れて、シリンダヘッドおよびシリンダブロックに設けられた戻し油路を通ってオイルパンに戻る。
また、シリンダヘッドおよびシリンダブロックには、シリンダの外周部を囲むように形成されたウォータージャケットが設けられている。ウォータージャケットへは冷却水ポンプにより冷却水が供給されている。このウォータージャケットに前述の戻し油路を隣接して配置することで、オイルをウォータージャケットにより冷却することができる(例えば、特許文献1参照)。
特開昭61−160510号公報
しかし、従来の構造では、戻し油路を流れるオイルの量や流れ状態によっては、戻し油路を形成する内壁のうちウォータージャケット側の内壁と接触せずにオイルがオイルパンに戻る場合がある。このような流れ状態ではウォータージャケットによるオイルの冷却効率が低下する。
また、オイルを確実に冷却するために、オイルクーラーを別途設けることも考えられるが、製造コストが大幅に増大するため、オイルクーラーの設置は現実的ではない。
本発明の課題は、製造コストの増大を抑制しつつオイルの冷却効果を高めることができる内燃機関を提供することにある。
第1の本発明に係る内燃機関は、本体部と案内部材とを備えている。本体部は、円筒状のシリンダと、シリンダの上側に配置された動弁室と、シリンダの外周部に形成され冷却水が流れるようになっているウォータージャケットと、シリンダの下側に配置されたクランク室と、ウォータージャケットに隣接して配置され動弁室をクランク室に接続する戻り油路と、ウォータージャケットと戻り油路とを仕切る中間壁と、を有している。案内部材は、戻り油路内に配置されており、オイルの少なくとも一部を中間壁に向かって案内するように設けられており、中間壁に向かって下るように傾斜する案内面を有する案内部と、案内部から下側に延び中間壁と向かい合うように配置された対向部と、を有している。
第2の本発明に係る内燃機関は、本体部と案内部材とを備えている。本体部は、円筒状のシリンダと、シリンダの上側に配置された動弁室と、シリンダの外周部に形成され冷却水が流れるようになっているウォータージャケットと、シリンダの下側に配置されたクランク室と、ウォータージャケットに隣接して配置され動弁室をクランク室に接続する戻り油路と、ウォータージャケットと戻り油路とを仕切る中間壁と、を有している。案内部材は、戻り油路内に配置されており、オイルの少なくとも一部を中間壁に向かって案内するように設けられている。本体部は、中間壁からウォータージャケットと反対側に突出する少なくとも1つのフィンを有する。案内部材は、フィンが挿入されフィンの厚みよりも寸法が大きい溝を有している。
第3の本発明に係る内燃機関は、本体部と案内部材とを備えている。本体部は、円筒状のシリンダと、シリンダの上側に配置された動弁室と、シリンダの外周部に形成され冷却水が流れるようになっているウォータージャケットと、シリンダの下側に配置されたクランク室と、ウォータージャケットに隣接して配置され動弁室をクランク室に接続する戻り油路と、ウォータージャケットと戻り油路とを仕切る中間壁と、を有している。案内部材は、戻り油路内に配置されており、オイルの少なくとも一部を中間壁に向かって案内するように設けられている。案内部材の中間壁と反対側には補助流路が確保されている。
ここで、「本体部」は、ウォータージャケットや戻り油路を形成できる部材であればよく、全体として一体の部材でもよいし、複数の部材から構成されていてもよい。例えば、本体部が、ヘッドカバー、シリンダヘッド、シリンダブロックおよびオイルパンにより形成されている場合が考えられる。また、案内部材は、本体部と一体形成されていてもよく、本体部と別部材であってもよい。さらに、案内部材自体が一体形成されていてもよく、また複数の部材から構成されていてもよい。
また、「上側」および「下側」は、この内燃機関を車両に搭載した場合の上側および下側を意味している。
この内燃機関は、動弁室から流れてくるオイルは、案内部材によりウォータージャケット側の側壁に向かって案内されるため、オイルが中間壁と接触しやすくなり、簡素な構成によりウォータージャケットによるオイルの冷却効率を高めることができる。
以上のように、この内燃機関では、製造コストの増大を抑制しつつオイルの冷却効果を高めることができる。
内燃機関1の断面図(図3のI−I断面図) シリンダヘッド3の上面図 シリンダブロック4の上面図 図3のIII−III断面図 案内部材46およびその周辺の斜視図 案内部材46およびその周辺の平面図 案内部材46の斜視図 (A)案内部材46の側面図、(B)図6のVIIB−VIIB断面図、(C)図6のVIIC−VIIC断面図 (A)〜(C)オイルの流れを示す図 案内部材146およびその周辺の斜視図 案内部材246およびその周辺の斜視図 案内部材346およびその周辺の斜視図 (A)および(B)案内部材446の断面図、(C)案内部材546の断面図
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
<内燃機関の全体構成>
図1〜図3を用いて内燃機関1について説明する。なお、以下の説明では、クランクシャフト17の回転軸Aに平行な方向を「軸方向」と定義する。したがって、図1の紙面に垂直な方向が軸方向と一致し、図2および図3の左右方向が軸方向と一致する。図1において、回転軸Aの左右の位置を基準に右側を「吸気側」、左側を「排気側」と定義する。なお、以下の「上側」および「下側」は、この内燃機関1を車両に搭載した場合の上側および下側を意味している。
図1に示すように、内燃機関1は主に、ヘッドカバー2と、シリンダヘッド3と、シリンダブロック4と、オイルパン5と、動弁機構6と、を備えている。
図1および図2に示すように、シリンダヘッド3はシリンダブロック4の上側に配置されたアッパーデッキ32を有している。シリンダヘッド3にはヘッドカバー2が固定されており、シリンダヘッド3およびヘッドカバー2により、動弁機構6が配置された動弁室34が形成されている。動弁機構6は、燃焼室15(後述)の吸気および排気を切り換えるための機構であり、アッパーデッキ32の上側に配置されている。
図1に示すように、シリンダブロック4およびオイルパン5により、クランクシャフト17が配置されたクランク室10が形成されている。クランク室10はシリンダブロック4の下側に配置されている。オイルパン5にはオイルが溜まっており、クランク室10は油圧ポンプ9と接続されている。油圧ポンプ9は、クランクシャフト17の回転運動を利用して駆動されるようになっており、オイルパン5に溜められたオイルを動弁機構6周辺に供給する。アッパーデッキ32上に流れ込んだオイルは、第1戻り油路P1〜第3戻り油路P3(後述)によりクランク室10に戻るようになっている。
図3に示すように、シリンダブロック4は円筒状の第1シリンダ13a〜第4シリンダ13dを有している。第1シリンダ13a〜第4シリンダ13dは軸方向に等ピッチで配置されている。図1に示すように、第1シリンダ13a〜第4シリンダ13dの内側にはそれぞれピストン14が移動可能に配置されており(図1には第3シリンダ13cのみが示されている)、各ピストン14はコンロッド16を介してクランクシャフト17に連結されている。シリンダヘッド3、第1シリンダ13a〜第4シリンダ13dおよびピストン14により4つの燃焼室15が形成されている。
また、図1および図3に示すように、シリンダヘッド3およびシリンダブロック4には、第1シリンダ13a〜第4シリンダ13dの外周部を取り囲むようにウォータージャケットWが形成されている。ウォータージャケットWには冷却水ポンプ8が接続されており、冷却水ポンプ8から供給された冷却水がウォータージャケットWを流れるようになっている。ウォータージャケットWから流れ出た冷却水は、ラジエター(図示せず)などの熱交換器で放熱した後、再度ウォータージャケットWに戻る。これらの構成により、第1シリンダ13a〜第4シリンダ13dを冷却することができる。
なお、ヘッドカバー2、シリンダヘッド3、シリンダブロック4およびオイルパン5により、動弁室34、クランク室10、ウォータージャケットWおよび第1戻り油路P1〜第3戻り油路P3を形成する本体部Bが構成されている。
<第1〜第3戻り油路>
図3に示すように、動弁室34に供給されたオイルをクランク室10に戻すために、内燃機関1には、動弁室34をクランク室10に接続する4つの第1戻り油路P1〜第3戻り油路P3が設けられている。図1に示すように、第1戻り油路P1〜第3戻り油路P3はウォータージャケットWに隣接して配置されており、第1戻り油路P1〜第3戻り油路P3内を流れるオイルがウォータージャケットWにより冷却される。なお、図4では、シリンダヘッド3およびシリンダブロック4のみが示されており、他の構成は省略されている。
ここで、第1戻り油路P1〜第3戻り油路P3について詳細に説明する。
第1戻り油路P1〜第3戻り油路P3は、それぞれ複数の油路により構成されている。具体的には図2に示すように、シリンダヘッド3には、第1上側油路33a、第2上側油路33b(第1油路の一例)、第3上側油路33c(第1油路の一例)および第4上側油路33dが形成されている。第1上側油路33a〜第4上側油路33dは動弁室34と連通している。第1上側油路33a〜第3上側油路33cは排気側に配置されており、第4上側油路33dは吸気側に配置されている。アッパーデッキ32の上面は中央付近から吸気側および排気側に下るように傾斜しており、アッパーデッキ32上のオイルが第1上側油路33a〜第4上側油路33dに流れ込みやすくなっている。
一方、図1〜図3に示すように、シリンダブロック4には、第1下側油路43a、第2下側油路43b(第2油路の一例)および第3下側油路43dが形成されている。第1下側油路43a、第2下側油路43bおよび第3下側油路43dはクランク室10と連通している。
第1下側油路43aは、第1シリンダ13aおよび第2シリンダ13bの排気側に配置されており、第1上側油路33aの下側に配置されている。第1上側油路33aは第1上側油路33aと連通しており、第1上側油路33aおよび第1下側油路43aにより第1戻り油路P1が形成されている。
第2下側油路43bは、第2シリンダ13bおよび第3シリンダ13cの排気側に配置されており、第3上側油路の下側に配置されている。第2下側油路43bは第2上側油路33bおよび第3上側油路33cと連通しており、第2上側油路33b、第3上側油路33cおよび第2下側油路43bにより第2戻り油路P2(戻り流路の一例)が形成されている。
さらに、第3下側油路43dは第3シリンダ13cの吸気側に配置されており、第4上側油路33dの下側に配置されている。第3下側油路43dは第4上側油路33dと連通しているため、第4上側油路33dおよび第3下側油路43dにより第3戻り油路P3が形成されている。
図4に示すように、第2戻り油路P2は、第1戻り油路P1および第3戻り油路P3とは異なり、途中の空間が広がった形状を有している。具体的には、第2下側油路43bは拡大部49aと排出部49bとを有している。
拡大部49aは、第2上側油路33b、第3上側油路33cおよび排出部49bよりも流路断面積が大きく設定されている油路である(図3および図4参照)。ここで、流路断面積とは、第2戻り油路P2においてオイルが全体として流れる方向(つまり上下方向)に垂直な断面における面積を意味している。
図1および図3に示すように、拡大部49aはウォータージャケットWの側方(排気側)に配置されている。具体的には、拡大部49aは中間壁41aを挟んでウォータージャケットWと隣接して配置されている。中間壁41aはウォータージャケットWと第2戻り油路P2とを仕切っている。拡大部49aから排出部49bにかけて流路が絞られている部分には、概ね水平方向に延びる板状の底部42bが設けられている。
排出部49bは拡大部49aよりも流路断面積が小さい油路であり、第3上側油路33cの下側に配置されている。排出部49bの流路断面積は第2上側油路33bおよび第3上側油路33cよりも大きく設定されている。排出部49bの上半分程度はウォータージャケットWの側方(排気側)に配置されているため、排出部49bの上半分ではウォータージャケットWによるオイルの冷却が期待できる。
<案内部材およびフィン>
前述のように、第1戻り油路P1〜第3戻り油路P3は、オイルを冷却するためにウォータージャケットWに隣接して配置されている。
しかし、オイルの量や流れ状態によっては、オイルが中間壁41aと接触せずにクランク室10に戻り、ウォータージャケットWによるオイルの冷却を効果的に行えない場合がある。
そこで図3〜図5に示すように、この内燃機関1では、オイルがウォータージャケットW側の中間壁41aに沿って流れるように、第2戻り油路P2に案内部材46が配置されている。さらに、中間壁41aには4枚のフィン48が設けられている。ここで、フィン48および案内部材46について詳細に説明する。
(1)フィン
図4〜図6に示すように、シリンダブロック4は、ウォータージャケットWの中間壁41aから突出する4枚のフィン48が設けられている。フィン48は、上下方向に長い板状の部分であり、軸方向に間隔を空けて第2下側油路43b内に配置されている。フィン48は中間壁41aからウォータージャケットWと反対側に突出している。フィン48は、シリンダブロック4の上面4a(シリンダヘッド3とシリンダブロック4との分割面)よりも下方に配置されている。本実施形態では、シリンダブロック4は鋳造により一体形成されているため、フィン48は中間壁41aと一体形成されている。フィン48により第2戻り油路P2の伝熱面積を増加させることができる。
(2)案内部材
図4および図5に示すように、第2上側油路33bおよび第3上側油路33cから流れてきたオイルを中間壁41aおよびフィン48周辺の空間に案内するために、案内部材46が第2戻り油路P2内に配置されている。案内部材46は、第2下側油路43bの拡大部49aにフィン48を取り囲むように配置されており、底部42b上に案内部材46が配置されている。案内部材46は底部42bあるいは第2下側油路43bの側壁に接着剤などにより固定されている。案内部材46は一体形成された樹脂製の部材である。案内部材46の材質としては、耐熱性が比較的高い樹脂が考えられ、例えばPA66(66ナイロン)、PA6(6ナイロン)、PBT(Polybutylene terephthalate)、PET(Polyethylene terephthalate)およびPP(polypropylene)が挙げられる。
図4〜図8(C)に示すように、案内部材46は主に、ウォータージャケットW側へ下るように傾斜する案内部46fと、案内部46fから中間壁41aに沿って下側に延びる対向部46gと、を有している。
図7〜図8(C)に示すように、案内部46fは第2上側油路33bおよび第3上側油路33cから流れてくるオイルの少なくとも一部をウォータージャケットW側(中間壁41a側)に案内するように配置されている。具体的には、案内部46fは板状の傾斜部46cと側壁部46bとを有している。
傾斜部46cは、ウォータージャケットW側(中間壁41a側)に向かって下るように傾斜する案内面46hを有している。本実施形態では案内面46hは平面である。傾斜部46c上に落下したオイルがウォータージャケットW側に流れやすくなるように、側壁部46bは、傾斜部46cの3方の縁から上側に突出しており、かつ、傾斜部46cのウォータージャケットW側の縁には設けられていない。案内面46hとは異なり側壁部46bの上面はほぼ水平であり、側壁部46bの上面はフィン48の上面よりも高い位置に設定されている(図8(A)〜図8(C)参照)。
図6に示すように、案内部材46は、上側から見た場合に第2上側油路33bの少なくとも一部および第3上側油路33cの少なくとも一部と重なり合うように第2下側油路43b内に配置されている。より詳細には、傾斜部46cは、第2上側油路33bおよび第3上側油路33cから流れてくるオイルを受けられるように、第2上側油路33bおよび第3上側油路33cの下側に配置されている。本実施形態では、上側から見た場合に、案内部46f(傾斜部46cおよび側壁部46b)の範囲内に、第2上側油路33bおよび第3上側油路33cが収まっている。これにより、第2上側油路33bおよび第3上側油路33cから流れてくるオイルのほとんどが案内部46fで受け止めることができ、案内部46fによりウォータージャケットW側にオイルが案内される。
また、対向部46gは、図5および図6に示すように、第1対向部46aと、第1対向部46aの側方に配置された2つの板状の第2対向部46dと、を有している。第1対向部46aは、フィン48を取り囲むように配置されており、フィン48に対して相補的な形状を有している。具体的には、第1対向部46aは中間壁41a側の面に、フィン48が挿入される4本の溝46eを有している。溝46eの軸方向の寸法(幅)は、フィン48の軸方向の寸法(厚み)よりも大きく、第1対向部46aとフィン48との間には隙間が確保されている。さらに、第1対向部46aと中間壁41aとの間にも隙間が確保されている。この結果、第1対向部46aとフィン48との間、あるいは、第1対向部46aと中間壁41aとの間、をオイルが流れる。
第2対向部46dは、中間壁41aと向かい合って配置された板状の部分であり、第1対向部46aの軸方向の側方に配置されている。第2対向部46dと中間壁41aとの間にも隙間が確保されている。
また、案内部材46は、第2戻り油路P2の一部の空間を2つの空間に仕切っている、と言える。具体的には、案内部材46のウォータージャケットW側には第1空間S1が形成されており、案内部材46のウォータージャケットWと反対側には第2空間S2(補助流路の一例)が形成されている。
第1空間S1は、案内部材46とフィン48との間の空間(より詳細には、対向部46gとフィン48との間の空間)、そして案内部材46と中間壁41aとの間の空間(より詳細には、対向部46gと中間壁41aとの間の空間)、を含んでおり、案内部46fにより案内されたオイルが第1空間S1を下方へ流れる。第2空間S2は、案内部材46のウォータージャケットWと反対側に形成された空間である。例えば、案内部46fからオーバーフローしたオイルが第2空間S2を流れる。
<オイルの流れ>
ここで、オイルの流れについて詳細に説明する。
図1に示すように、クランクシャフト17が回転すると、油圧ポンプ9がオイルパン5に溜められたオイルを動弁機構6の上部まで圧送する。供給されたオイルは、動弁機構6の摺動部分を潤滑あるいは冷却し、シリンダヘッド3のアッパーデッキ32上に落下し、第1戻り油路P1〜第3戻り油路P3に流れ込む。
例えば第2戻り油路P2の場合、図9(A)および(B)に示すように、第2上側油路33bあるいは第3上側油路33cに流れ込んだオイルは、第2下側油路43b内(拡大部49a内)に流れ込み、案内部46f上に落下する。このとき、傾斜部46cの案内面46hがウォータージャケットWに向かって傾斜しているため、オイルは案内面46hを伝って中間壁41aに向かって流れ、第1対向部46aとフィン48との間、第1対向部46aと中間壁41aとの間、さらに第2対向部46dと中間壁41aとの間、を下方に流れる。案内部材46と中間壁41aとの間を流れたオイルは、排出部49bを介してクランク室10に戻る。このように、案内部材46により中間壁41aおよびフィン48にオイルを確実に接触させることができるため、オイルの冷却効率を高めることができる。
また、第2戻り油路P2を流れるオイルの量が多い場合は、図9(C)に示すように、オイルが側壁部46bからオーバーフローして、案内部材46のウォータージャケットWと反対側の第2空間S2もオイルが流れる。このため、オイルの量が多い場合であっても、一部のオイルは第1空間S1を流れることで確実に冷却され、残りのオイルも第2空間S2を流れることで確実にクランク室10に戻る。
<特徴>
(1)
以上に説明したように、この内燃機関1では、動弁室34から流れてくるオイルが案内部材46により中間壁41aに向かって案内される。より詳細には、ウォータージャケットW側へ下るように傾斜する案内面46hを案内部材46が有しているため、オイルの流れ方向が中間壁41aに向かう方向に変化しやすくなり、この結果、オイルが中間壁41aと接触しやすくなる。このため、第2戻り油路P2に流れ込んだオイルがウォータージャケットWにより冷却されやすくなり、簡素な構成によりオイルの冷却効率を高めることができる。つまり、この内燃機関1では、製造コストの増大を抑制しつつオイルの冷却効率を高めることができる。
(2)
図7に示すように、中間壁41aに沿って案内部46fから下側に延びる対向部46gを案内部材46が有しているため、案内面46hにより中間壁41aに向かって案内されたオイルが、中間壁41aに沿って流れやすくなる。案内部材46がオイルの流れを整える機能を有しているとも言える。このため、第2上側油路33bや第3上側油路33cでのオイルの流れ状態が変化しても、オイルを確実に中間壁41aと接触させることができ、オイルの冷却効率を高めることができる。
(3)
図6に示すように、シリンダブロック4が、中間壁41aからウォータージャケットWと反対側に向かって突出する4本のフィン48を有しているため、ウォータージャケットWとオイルとの間の伝熱面積を増加させることができ、オイルの冷却効率をさらに高めることができる。オイルが案内面46hにより案内される側にフィン48が配置されているため、案内部材46およびフィン48によりオイルの冷却効率が大幅に向上することが期待できる。
(4)
図6に示すように、フィン48が挿入される溝46eを対向部46gが有しており、溝46eの幅がフィン48の厚みよりも大きい。つまり、対向部46gとフィン48との間には隙間が確保されている。このため、オイルがフィン48に沿って流れやすくなり、オイルとフィン48との間の熱伝達が促進される。
(5)
図1および図5に示すように、フィン48がシリンダブロック4の上面4a(シリンダヘッド3およびシリンダブロック4の分割面)よりも下側に配置されているため、シリンダブロック4の上面4aを機械加工する際にフィン48を考慮しなくてもよく、加工時のフィン48の破損やフィン48による加工コストの増大を防止できる。さらに、フィン48とシリンダヘッド3との間の隙間をオイルが流れる油路に利用でき、例えばオイルの量が多い場合にフィン48によりオイルの流れが妨げられにくくなる。
(6)
図6に示すように、上側から見た場合に第2上側油路33bおよび第3上側油路33cと重なり合うように、案内部材46が第2下側油路43bに配置されているため、第2上側油路33bおよび第3上側油路33cを流れるオイルのほとんどが案内部材46上に落下する。このため、案内部材46により中間壁41aに向かってオイルを確実に案内することができる。
(7)
拡大部49aの流路断面積が第1上側油路33aおよび第2上側油路33bの流路断面積よりも大きいため、拡大部49aの側面を形成する中間壁41aの表面積を大きく確保でき、オイルと中間壁41aとの接触面積を大きくすることができる。これにより、オイルの冷却効率を高めることができる。
さらに、拡大部49aの流路断面積が大きい場合、案内部材46を配置する空間を確保するのが容易となり、設計の自由度が高まる。
(8)
案内部材46の中間壁41aと反対側には第2空間S2が確保されているため、第2戻り油路P2に流れ込むオイルの量に応じて、第2空間S2がバッファとして機能する。具体的には図9(A)および(B)に示すように、オイルの量が少ない場合は、第2下側油路43bに流れ込んだオイルのほとんどが、案内部材46により第1空間S1に流れ込み、フィン48や中間壁41aと接触する。
一方、図9(C)に示すように、オイルの量が多い場合は、第2下側油路43bに流れ込んだオイルの一部が案内部材46により第1空間S1に流れ込み、第1空間S1では流れきらない残りのオイルは、案内部46fからオーバーフローして第2空間S2を流れ、排出部49bを介してクランク室10に戻る。
このように、案内部材46の中間壁41a側およびその反対側に空間(流路)を確保することで、第2戻り油路P2本来の油路としての機能を妨げることなく、オイルの冷却効率を高めることができる。特に、このような構成を採用することで、オイルの量に関係なく、安定したオイルの冷却効率を実現できる。
<他の実施形態>
本発明の具体的な構成は、前述の実施形態に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更および修正が可能である。
なお、前述の構成と実質的に同じ機能を有する構成については、同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
(A)
フィン48の形状や数量は前述の実施形態に限定されない。例えば、伝熱面積が増えるのであれば、フィン48が他の形状を有していてもよい。また、第2下側油路43bには少なくとも1枚のフィン48が設けられていればよいし、フィン48が全く設けられていない場合も考えられる。フィン48が設けられていない場合に、前述の案内部材46を用いてもよい。
この場合、案内部材としては、例えば図10に示す案内部材146が考えられる。この案内部材146は、案内部46fと、中間壁41aに対向するように配置された平板状の対向部146gと、を有している。対向部146gと中間壁41aとの間に第1空間S1が形成されている。フィン48が設けられていないため、案内部材146は前述の溝46eを有していない。
また、フィン48が全く設けられていない場合であっても、前述の案内部材46を第2下側油路43bに配置してもよい。この場合、中間壁41aと案内部材46との間の流路断面積を大きく確保でき、オイルの冷却効率を確保しつつ第2戻り油路P2の排出容量に余裕を持たせることができる。
さらに、案内部材46が側壁部46bを有していない場合や、あるいは第2対向部46dを有していない場合、さらに対向部46gを有していない場合も考えられる。つまり、最もシンプルな案内部材としては、図11に示すような案内部材246が考えられる。この案内部材246は、例えば第2下側油路43bの側壁に固定されている。
(B)
案内部材46がシリンダブロック4と一体形成されていてもよい。例えば図12に示すように、案内部材146と概ね同じ形状の案内部材346がシリンダブロック4と一体形成されていてもよい。この案内部材346は、ウォータージャケットW側に向かって傾斜する傾斜部346cと、傾斜部346cから中間壁41aに沿って下方に延びる対向部346gと、を有している。このような構成であっても、前述の実施形態と同様に、オイルの冷却効率を高めることができる。
また、案内部材46はシリンダブロック4に固定されていなくてもよく、案内部材46が単に底部42bの上に載せられていてもよい。
(C)
案内面46hは平面でなくてもよく、中間壁41aに向かって下るように傾斜していれば、図13(A)および(B)に示すように、案内面446hが湾曲している案内部材446も考えられる。さらに、図13(C)に示すように、案内面546hの一部に傾斜する面が含まれていればよい。
(D)
案内部材46は第2上側油路33bおよび第3上側油路33cのうち少なくとも一方の概ね下側に配置されていればよい。具体的には、上側から見た場合に第2上側油路33bの少なくとも一部または第3上側油路33cの少なくとも一部と重なり合うように、案内部材46が第2下側油路43b内に配置されていればよい。オイルが少しでも案内部46fにより中間壁41a側に案内される構成であれば、オイルの冷却効率を高めることができる。
(E)
内燃機関の構成は前述の構成に限定されない。ウォータージャケットWおよび第2戻り油路P2を有している内燃機関であれば、本発明は適用可能である。
また、本体部Bは、ウォータージャケットWや第2戻り油路P2を形成する部材であればよく、一部または全部が一体形成されていてもよいし、前述の実施形態よりも細かい部材に分かれていてもよい。
(F)
なお、前述の案内部材46は樹脂製であるが、金属あるいはその他の材料で形成されていてもよい。
本発明に係る内燃機関であれば、オイルの冷却効率を高めることができるため、本発明は内燃機関の分野において有用である。
1 内燃機関
2 ヘッドカバー
3 シリンダヘッド
32 アッパーデッキ
33a 第1上側油路
33b 第2上側油路(第1油路の一例)
33c 第3上側油路(第1油路の一例)
33d 第4上側油路
4 シリンダブロック
41a 中間壁
42b 底部
43a 第1下側油路
43b 第2下側油路(第2油路の一例)
43d 第3下側油路
46 案内部材
46a 第1対向部
46b 側壁部
46c 傾斜部
46d 第2対向部
46e 溝
46f 案内部
46g 対向部
46h 案内面
49a 拡大部
49b 排出部
5 オイルパン
6 動弁機構
P1 第1戻り油路
P2 第2戻り油路(戻り油路の一例)
P3 第3戻り油路
S1 第1空間
S2 第2空間(流路の一例)

Claims (7)

  1. 円筒状のシリンダと、前記シリンダの上側に配置された動弁室と、前記シリンダの外周部に形成され冷却水が流れるようになっているウォータージャケットと、前記シリンダの下側に配置されたクランク室と、前記ウォータージャケットに隣接して配置され前記動弁室を前記クランク室に接続する戻り油路と、前記ウォータージャケットと前記戻り油路とを仕切る中間壁と、を有する本体部と、
    前記戻り油路内に配置され、前記オイルの少なくとも一部を前記中間壁に向かって案内するように設けられた案内部材と、
    を備え、
    前記案内部材は、前記中間壁に向かって下るように傾斜する案内面を有する案内部と、前記案内部から下側に延び前記中間壁と向かい合うように配置された対向部と、を有している、内燃機関。
  2. 円筒状のシリンダと、前記シリンダの上側に配置された動弁室と、前記シリンダの外周部に形成され冷却水が流れるようになっているウォータージャケットと、前記シリンダの下側に配置されたクランク室と、前記ウォータージャケットに隣接して配置され前記動弁室を前記クランク室に接続する戻り油路と、前記ウォータージャケットと前記戻り油路とを仕切る中間壁と、を有する本体部と、
    前記戻り油路内に配置され、前記オイルの少なくとも一部を前記中間壁に向かって案内するように設けられた案内部材と、
    を備え、
    前記本体部は、前記中間壁から前記ウォータージャケットと反対側に突出する少なくとも1つのフィンを有し、
    前記案内部材は、前記フィンが挿入され前記フィンの厚みよりも寸法が大きい溝を有している、
    内燃機関。
  3. 円筒状のシリンダと、前記シリンダの上側に配置された動弁室と、前記シリンダの外周部に形成され冷却水が流れるようになっているウォータージャケットと、前記シリンダの下側に配置されたクランク室と、前記ウォータージャケットに隣接して配置され前記動弁室を前記クランク室に接続する戻り油路と、前記ウォータージャケットと前記戻り油路とを仕切る中間壁と、を有する本体部と、
    前記戻り油路内に配置され、前記オイルの少なくとも一部を前記中間壁に向かって案内するように設けられた案内部材と、
    を備え、
    前記案内部材の前記中間壁と反対側には補助流路が確保されている、
    内燃機関。
  4. 前記フィンは、前記本体部の分割面よりも下側に配置されている、
    請求項に記載の内燃機関。
  5. 前記戻り油路は、前記案内部材よりも上側に配置され前記動弁室と連通する第1油路を有しており、
    前記案内部材は、上側から見た場合に前記第1油路の少なくとも一部と重なり合うように配置されている、
    請求項1からのいずれかに記載の内燃機関。
  6. 前記戻り油路は、前記第1油路と連通し前記第1油路の下側に配置された第2油路を有しており、
    前記案内部材は、前記第2油路内に配置されている、
    請求項に記載の内燃機関。
  7. 前記第2油路は、前記第1油路と連通し前記第1油路よりも流路断面積が大きい拡大部と、前記拡大部を前記クランク室に接続し前記拡大部よりも流路断面積が小さい排出部と、を有しており、
    前記案内部材は、前記拡大部内に配置されている、
    請求項に記載の内燃機関。
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