本発明に係る給電装置の好適な実施形態を図面を用いて説明する。本実施形態では、給電装置の一例として、携帯電話に内蔵されるリチウムイオン電池(二次電池に相当:以下、単にリチウム電池と省略)を充電する充電装置について説明する。
<充電装置の全体構成>
図1は、充電装置100により、外部機器である携帯電話50に内蔵されるリチウム電池を充電する。充電装置100は、大きく分けて、燃料ガスである水素ガスを供給する水素発生装置A、この水素発生装置Aから供給される水素ガスにより発電して電気出力を行なう燃料電池FC、燃料電池FCの出力電圧を所定の電圧に変換・昇圧する回路や、その他充電装置100のための制御回路などにより構成される回路部B、充電のための電力を出力する出力部30により構成される。
<水素発生装置の構成>
水素発生装置Aは、反応液の一例である水を収容する反応液収容室10と、この水と反応して水素ガスを発生する水素発生剤(ガス発生剤に相当)が収容されるガス発生剤収容室11と、水をガス発生剤収容室11へと供給するための供給パイプ12と、供給パイプ12の経路途上に設けられたバルブ機構13とを備えている。
反応液収容室10には、実際に水が収容される水収容容器14(反応液収容容器に相当)と、この水収容容器14に対して付勢力を付与するコイルスプリング15(付勢手段に相当)とを備えている。水収容容器14は、蛇腹状に形成されており、図の上下方向に伸縮可能な形状を有している。コイルスプリング15により、水収容容器14を常時圧縮する方向に力が作用しているため、水収容容器14内の水を供給パイプ12を介して排出しようとする排出力が常時作用する。
ただし、バルブ機構13が設けられているため、バルブを開にしたときにのみ、水をガス発生剤収容室11へ供給することが許容される。従って、バルブ機構13の開閉制御を行なうことで、水の供給量を制御することができる。バルブ機構13については、公知の機構を採用することができる。
なお、水収容容器14の構成は上記に限定されるものではなく、種々の変形例が可能である。例えば、水収容容器14をゴム等の弾性体により風船状に形成し、水収容容器自身の弾性収縮力を利用して、水の排出力を付与してもよい。あるいは、水収容容器14内の水に対して圧縮気体(圧縮空気など)による圧縮力を常時作用させるような構成を採用してもよい。
ガス発生剤収容室11に収容される水素発生剤は、水と反応して水素ガスを生成する金属粒子が好ましく、Fe,Al,Mg,Zn,Siなどから選ばれる1種以上の金属の粒子や、これらが部分的に酸化された金属の粒子があげられる。また、酸化反応を促進するための金属触媒などを添加させることで、より低温で水素ガスを発生させることができる。更に、MgH2等の水素化金属を単独又は上記と併用して用いることも可能である。水素発生剤は、ガス発生剤収容室11内に金属粒子のまま充填することも可能であるが、金属粒子を結着させた多孔質体を使用することもできる。
このような水素発生剤を用いることで、水素組成が略100%(水分は除く)の水素ガスを発生させることができる。ガス発生剤収容室11と燃料電池FCとは、水素供給管で連結されており、発生した水素ガス(H2)が燃料電池FCの単位セルUのアノード側空間に供給される。
<燃料電池の構成>
次に、燃料電池FCの好適な実施形態について説明する。水素供給型の燃料電池FCとしては、図2〜図3に示すように、板状の固体高分子電解質1と、その固体高分子電解質1の一方側に配置されたカソード側電極板2と、他方側に配置されたアノード側電極板3と、前記カソード側電極板2に酸素含有ガスを供給する酸素含有ガス供給部と、前記アノード側電極板3に水素ガスを供給する水素ガス流路部とで形成される単位セルの単数又は複数を備えることが好ましい。
本実施形態では、図2〜図3に示すように、アノード側金属板5にエッチングにより水素ガスの流路溝9が形成されて水素ガス流路部が構成され、カソード側金属板4に空気を自然供給するための開口部4cが形成されて酸素含有ガス供給部が構成されている単位セルを用いる例を示す。このように、金属板4,5によってガス供給部が構成されることにより、燃料電池の薄型化・軽量化を図ることができる。
固体高分子電解質1としては、従来の固体高分子膜型電池に用いられるものであれば何れでもよいが、化学的安定性及び導電性の点から、超強酸であるスルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体からなる陽イオン交換膜が好適に用いられる。このような陽イオン交換膜としては、ナフィオン(登録商標)が好適に用いられる。
その他、例えば、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂からなる多孔質膜に上記ナフィオンや他のイオン伝導性物質を含浸させたものや、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂からなる多孔質膜や不織布に上記ナフィオンや他のイオン伝導性物質を担持させたものでもよい。
固体高分子電解質1の厚みは、薄くするほど全体の薄型化に有効であるが、イオン伝導機能、強度、ハンドリング性などを考慮すると、10〜300μmが使用可能であるが、25〜50μmが好ましい。
電極板2,3は、ガス拡散層としての機能を発揮して、燃料ガスや酸化ガス(空気)及び水蒸気の供給・排出を行なうと同時に、集電の機能を発揮するものが使用できる。電極板2,3としては、同一又は異なるものが使用でき、その基材には電極触媒作用を有する触媒を担持させることが好ましい。触媒は、固体高分子電解質1と接する内面2b,3bに少なくとも担持させるのが好ましい。
電極基材としては、例えば、カーボンペーパー、カーボン繊維不織布などの繊維質カーボン、導電性高分子繊維の集合体などの電導性多孔質材が使用できる。一般に、電極板2,3は、このような電導性多孔質材にフッ素樹脂等の撥水性物質を添加して作製されるものであって、触媒を担持させる場合、白金微粒子などの触媒とフッ素樹脂等の撥水性物質とを混合し、これに溶媒を混合して、ペースト状或いはインク状とした後、これを固体高分子電解質膜と対向すべき電極基材の片面に塗布して形成される。
一般に、電極板2,3や固体高分子電解質1は、燃料電池に供給される燃料ガスと酸化ガスに応じた設計がなされる。本発明では、酸化ガスとして空気、純酸素等の酸素含有ガスが用いられると共に、燃料ガスとして水素ガスが用いられる。本発明では、空気が自然供給される側のカソード側電極板2では、酸素と水素イオンの反応が生じて水が生成するため、かかる電極反応に応じた設計をするのが好ましい。
燃料電池FCに供給する水素ガスは、水素ガスの排出量を少なくして、安定かつ継続して効率良く発電を行う理由から、水素ガスの純度95%以上が好ましく、純度99%以上がより好ましく、純度99.9%以上が更に好ましい。
触媒としては、白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、銀、ニッケル、鉄、銅、コバルト及びモリブデンから選ばれる少なくとも1種の金属か、又はその酸化物が使用でき、これらの触媒をカーボンブラック等に予め担持させたものも使用できる。
電極板2,3の厚みは、薄くするほど全体の薄型化に有効であるが、電極反応、強度、ハンドリング性などを考慮すると、50〜500μmが好ましい。
電極板2,3と固体高分子電解質1とは、予め接着、融着等を行って積層一体化しておいてもよいが、単に積層配置されているだけでもよい。このような積層体は、膜電極接合体(Membrane Electrode Assembly:MEA)として入手することもでき、これを使用してもよい。
本実施形態では、カソード側電極板2の表面にはカソード側金属板4が配置され、アノード側電極板3の表面にはアノード側金属板5が配置される。また、アノード側金属板5には水素ガスの注入口5c及び排出口5dが設けられ、その間に流路溝9が設けられている。
本発明では、酸素含有ガス供給部には、カソード側から外部へ水分の拡散を抑制する拡散抑制機構が設けてあることが好ましい。本実施形態では、カソード側金属板4に、空気中の酸素を自然供給するための開口部4cが設けられており、これが拡散抑制機構として機能する拡散抑制板に相当し、その拡散抑制板を介して空気を自然供給できるように構成してある。
拡散抑制板であるカソード側金属板4には、カソード側電極板2の面積に対して開口率10〜30%で開口部4cを設けることが好ましい。このような開口率とする場合、この開口率の範囲内であれば、開口部4cの個数、形状、大きさ、形成位置などは何れでもよい。なお、上記の開口率の範囲内であれば、カソード側電極板2からの集電も十分行うことができる。カソード側金属板4の開口部4cは、例えば規則的又はランダムに複数の円孔やスリット等を設けることができる。
金属板4,5としては、電極反応に悪影響がないものであれば何れの金属も使用でき、例えばステンレス板、ニッケル、銅、銅合金などが挙げられる。但し、伸び、重量、弾性率、強度、耐腐食性、プレス加工性、エッチング加工性などの観点から、ステンレス板、ニッケルなどが好ましい。金属板4,5には、電極板2,3との接触抵抗を低減するために、金メッキなどの貴金属メッキを施すのが好ましい。
アノード側金属板5に設けられる流路溝9は、電極板3との接触により水素ガス等の流路が形成できるものであれば何れの平面形状や断面形状でもよい。但し、流路密度、積層時の積層密度、屈曲性などを考慮すると、金属板5の一辺に平行な縦溝9aと垂直な横溝9bを主に形成するのが好ましい。本実施形態では、複数本(図示した例では3本)の縦溝9aが横溝9bに直列接続されるようにして、流路密度と流路長のバランスを取っている。
なお、このような金属板5の流路溝9の一部(例えば横溝9b)を電極板3の外面に形成してもよい。電極板3の外面に流路溝を形成する方法としては、加熱プレスや切削などの機械的な方法でもよいが、微細加工を好適に行う上で、レーザ照射によって溝加工を行うことが好ましい。レーザ照射を行う観点からも、電極板2,3の基材としては、繊維質カーボンの集合体が好ましい。
金属板5の流路溝9に連通する注入口5c及び排出口5dは、それぞれ1個又は複数を形成することができる。なお、金属板4,5の厚みは、薄くするほど全体の薄型化に有効であるが、強度、伸び、重量、弾性率、ハンドリング性などを考慮すると、0.1〜1mmが好ましい。
金属板5に流路溝9を形成する方法としては、加工の精度や容易性から、エッチングが好ましい。エッチングによる流路溝9では、幅0.1〜10mm、深さ0.05〜1mmが好ましい。また、流路溝9の断面形状は、略四角形、略台形、略半円形、V字形などが好ましい。
金属板4への開口部4cの形成、金属板4,5の周辺部の薄肉化、金属板5への注入口5c等の形成についても、エッチングを利用するのが好ましい。
エッチングは、例えばドライフィルムレジストなどを用いて、金属表面に所定形状のエッチングレジストを形成した後、金属板4,5の種類に応じたエッチング液を用いて行うことが可能である。また、2種以上の金属の積層板を用いて、金属ごとに選択的にエッチングを行うことで、流路溝9の断面形状をより高精度に制御することができる。
図3に示す実施形態は、金属板4,5のカシメ部(外縁部)をエッチングにより厚みを薄くした例である。このように、カシメ部をエッチングして適切な厚さにすることで、カシメによる封止をより容易に行うことができる。この観点から、カシメ部の厚みとしては、0.05〜0.3mmが好ましい。
本発明では、カソード側電極板2に酸素含有ガスを供給する酸素含有ガス供給部と、アノード側電極板3に水素ガスを供給する水素ガス流路部とが形成されていれば、流路部等の形成構造は何れでもよい。金属板4,5で流路部等を形成する場合には、金属板4,5の周縁は、電気的に絶縁した状態で曲げプレスにより封止することが好ましい。本実施形態では、カシメにより封止されている例を示す。
電気的な絶縁は、絶縁材料6や固体高分子電解質1の周縁部、又はその両者を介在させることで行うことができる。絶縁材料6を用いる場合、その厚みとしては、薄型化の観点から、0.1mm以下が好ましい。なお、絶縁材料をコーティングすることにより、更なる薄型化が可能である(例えば絶縁材料6の厚み1μmも可能)。
絶縁材料6としては、シート状の樹脂、ゴム、熱可塑性エラストマー、セラミックスなどが使用できるが、シール性を高める上で、樹脂、ゴム、熱可塑性エラストマーなどが好ましく、特にポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、フッ素樹脂、ポリイミドが好ましい。絶縁材料6は、金属板4,5の周縁に直接あるいは粘着剤を介して貼着したり、塗布したりして、予め金属板4,5に一体化しておくことも可能である。
カシメ構造としては、シール性や製造の容易性、厚み等の観点から図2に示すものが好ましい。つまり、一方の金属板5の外縁部5aを他方の外縁部4aより大きくしておき、絶縁材料6を介在させつつ、一方の金属板5の外縁部5aを他方の金属板4の外縁部4aを挟圧するように折り返したカシメ構造が好ましい。このカシメ構造では、プレス加工等によって、金属板4の外縁部4aに段差を設けておくのが好ましい。このようなカシメ構造自体は金属加工として公知であり、公知のカシメ装置によって、それを形成することができる。
本発明では、以上のような単位セルを1個又は複数個使用して、燃料電池FCを構成することができる。この燃料電池FCでは、電気的には、各々の単位セルは直列に接続されるのが通常であるが、電流値を優先させて並列に接続してもよい。
単位セルを使用する際、金属板5の水素ガスの注入口5c及び排出口5dには、直接、水素ガス供給用のチューブを接合することも可能であるが、燃料電池の薄型化を行う上で、図4に示すように、厚みが小さく、金属板5の表面に平行なパイプ5fを有するチューブジョイント5eを設けるのが好ましい。
図1に示すように、燃料電池FCは4つの単位セルUが直列接続されており、その総出力電圧が回路部Bへと供給される。また、各単位セルUの流路溝9もパイプ16により接続されており、水素ガスの流路も直列接続されている。従って、水素ガスは初段の単位セルU1にまず供給され、以下順番にU2,U3,U4に供給される。
本実施形態では、4つの単位セルUを接続しているが、単位セルUの個数は適宜設定できるものである。
<携帯電話の構成>
図1に示すように、携帯電話50は、充電回路52を介してリチウム電池53等を充電する構成になっており、コネクタ51を介して出力部30からの電力が携帯電話50に供給される。携帯電話50の充電回路52は、ACアダプターのような定電圧・定電流の入力を予定しているため、本発明の充電装置100を接続することによって、充電の前半では、定電流かつ定電圧の充電が行なわれ、後半では定電圧での充電が行なわれる。その際、リチウム電池53等には、充電回路52によって制御された電圧・電流が印加される。
充電回路52としては、リチウム電池53等に応じて、充電電圧を変化させるものが一般的である。
本発明に係る充電装置100は、水素ガスの供給を特に制御する必要がなく、簡易な装置で好適に二次電池を充電することができ、燃料電池への過負荷も生じにくいので、携帯型に構成できるため、特に、携帯電話、ノートPC等のモバイル機器の充電に好適に使用することができる。なお、二次電池は、リチウム電池に限定されるものではなく、他の種類の二次電池であってもよい。
<回路部の構成>
次に、図1における回路部Bの構成を図4により説明する。まず、燃料電池FCの出力電圧を昇圧する直流電圧変換回路として、第1DC−DCコンバータ20と第2DC−DCコンバータ21(以下、DC−DCコンバータを単にコンバータと略す。)を備えている。これらコンバータ20,21は、直流の入力電圧を変換して、電圧のより大きい直流を出力する回路である。本発明において、特に、小型の充電装置100を構成する場合、ステップアップ回路を利用したステップアップコンバータを用いるのが好ましい。
ステップアップ回路の原理は、コイルに対する入力電力のオン−オフによって電流変化を生じさせ、これに応じた電圧の上昇分を、発振回路で継続的に生じさせて出力として取り出すというものである。このため、ステップアップコンバータは、発振回路と電力回路とを備え、必要に応じて、出力電圧調整回路、二次フィルタ、外部クロック同期回路などが追加される。
ステップアップコンバータ用の集積回路(パッケージ)は、各種市販されており、推奨される標準的な回路構成によって、本発明におけるコンバータ20,21を構成することができる。第1コンバータ20は、一般に入力VIN+,VIN−、出力OUT+,OUT−、グランドGNDなどを備えている。第1コンバータ20の入力VIN+,VIN−は燃料電池FCの電極2,3に接続され、出力VOUT+は出力部30の+側端子31の電源V+に、出力VOUT−はグランドされる。
第1コンバータ20からの出力電圧は、充電の対象となる機器や内蔵される電池の種類などによって決定される。例えば3.7V出力のリチウム電池を内蔵する携帯電話50の場合には、5V付近の出力電圧が採用される。一方、第1コンバータ20に対する入力電圧は、燃料電池FCの特性や個数によって決定することができるが、5V付近の出力電圧の場合には、2〜4Vの入力電圧とするのが第1コンバータ20の安定動作や効率の点で好ましい。
第1コンバータ20は、外部機器である携帯電話50へ供給するための電力を出力するものであり、充電状況に応じて出力電圧が変動しうるものである。第2コンバータ21も同じく、燃料電池FCからの出力電圧を昇圧するものであるが、固定された一定の電圧を出力するものである。この第2コンバータ21は、制御用CPU22を駆動するために設けられており、制御用CPU22の安定した動作を保証するために、一定の出力電圧を供給する。
第2コンバータ21は、流すことができる電流は200mA程度までであり、容量が比較的小さなICを使用している。従って、起動電圧が比較的低いところ、例えば、1.3V程度から駆動可能である。すなわち、充電装置100の起動時においては、第1コンバータ20よりも第2コンバータ21のほうが先に駆動するように構成されている。
第2コンバータ21が起動することで、CPU22が駆動し、このCPU22によりバルブ機構13の開閉制御を行うバルブ用コイル23の駆動制御が行なわれる。コイル23は、制御用トランジスタ24と直列に接続されており、トランジスタ24のベース24aにCPU22からの制御信号が出力される。コイル23に対する制御を行うことで、バルブ機構13に対する制御が行われる。
ベース24aに制御信号が出力され、トランジスタ24が導通状態になると、コイル23が駆動され、バルブ機構13を開状態にすることができる。すなわち、反応液収容室10内の水をガス発生剤収容室11へ供給することができる。これにより、水素ガスが発生し、燃料電池FCを発電させることができる。従って、コイル23を駆動するための電力は、第2コンバータ21からの出力電圧により供給される。
なお、充電装置100の使用開始時には燃料電池FCは発電作用を行っていないから、コイル23を駆動することができない。そこで、バルブ機構13の初期動作をさせるための専用電源25が設けられている。この専用電源25として、ボタン電池であるLR41を4つ直列接続したものを使用する。ボタン電池を使用することで装置の小型化を図ることができる。もちろん、上記以外の電池を専用電源として用いてもよい。
初期動作時には、スイッチSWを操作することで、制御回路26を介して、ワンショットリレー28と制御用トランジスタ27を駆動させる。ワンショットリレー28は、一定時間だけONになるように動作するリレーであり、スイッチSWの操作により所定時間ONになる。ワンショットリレー28がONになることで専用電源25の電力がコイル23に供給可能な状態となり、その後、トランジスタ27が所定時間導通することで、コイル23が動作し、バルブ機構13が開状態になる。これらトランジスタ27とワンショットリレー28は、専用電源によりバルブ機構13を駆動するための電源接続手段として機能する。
初期動作におけるバルブ機構13の開時間は、30msec程度であり、第2コンバータ21を立ち上げるのに必要な時間で足りる。所定時間が経過した後は、ワンショットリレー28もトランジスタ27もOFFとなり、以後のバルブ機構13の動作は、第2コンバータ21からの出力電圧により行なわれる。
CPU22は、燃料電池FCの各部の状態をモニターするための入力端子を備えている。検出用アンプ32を介して、ガス流路の最下流に位置する単位セルU4の出力電圧V4が入力される。検出用アンプ33を介して、最終段以外の単位セルU1〜U3の出力電圧V1〜V3を検出する。ここで検出される電圧は、3つの単位セルU1〜U3の総電圧でもよいし、平均値でもよい。燃料電池FCの総電圧(V1+V2+V3+V4)も検出用アンプ34を介してCPU22に入力される。
また、燃料電池FCを流れる電流を検出するための検出用抵抗R1が設けられ、検出用アンプ35を介して、燃料電池FCの出力電流値がCPU22に入力される。
第1コンバータ20の起動電圧を設定するためのアンプ36が設けられており、基準電圧調整部37により、起動電圧が設定される。第2コンバータ21の起動電圧が1.3V程度に設定される場合、第1コンバータ20の起動電圧は2.0V程度になるように設定される。従って、第2コンバータ21が起動した後に、第1コンバータ20が起動するように設定される。
第1コンバータ20からの出力電流を検出するための検出用抵抗R2及び検出用アンプ38(これらは、出力電流検出手段に相当)が設けられ、検出された出力電流値はCPU22に入力される。また、第1コンバータ20からの出力電圧を検出するための検出用アンプ39が設けられ、検出された出力電圧値はCPU22に入力される。
電流値設定D/Aコンバータ40は、CPU22から指令されるデジタル設定電流値をアナログ設定電流値に変換する。差動アンプ41は、検出用アンプ39から出力される出力電流値と、コンバータ40からの設定電流値とが入力され、その差分データを出力して、第1コンバータ20に入力する。これにより、出力電流が設定電流値を超えないような制御が行われる。
D/Aコンバータ40、差動アンプ41及び第1コンバータ20は、出力部30からの出力電流が設定電流値を超えないように制御する電流制御手段として機能する。
また、CPU22は設定電流変更手段としての機能を有し(詳細は後述)、燃料電池FCへの燃料の供給量の変動パターンに、燃料の消費量の変動パターンが近づくように、設定電流値を変化させるものである。図5(a)は、燃料電池FCへの燃料の供給量の変動パターンと消費量の変動パターンとを例示しており、設定電流変更手段によって、上記電流制御手段の設定電流値を変化させることで、消費量の変動パターンが供給量の変動パターンに近づいている。
つまり、本発明では、設定電流値を一定(即ち、燃料の消費量一定)に制御するのではなく、電流制御手段(差動アンプ41の−入力側)の設定電流値を変化させる制御を設定電流変更手段によって行う。その際、設定電流値を変化させる制御を含んでおり、これが供給量の変動パターンに消費量の変動パターンが近づく方向であれば、本発明の設定電流変更手段に相当する。
設定電流変更手段によって電流制御手段の設定電流値を変化させる際、予め決定された変動パターン(コンピュータプログラム)を利用する方法があり、これについては後述する。コンピュータプログラムを用いない方法としては、フィードバック制御及び/又はフィードフォワード制御を利用する方法などが挙げられるが、何れの方法でもよい。好ましくは、供給量の変動パターンに対し、消費量の変動パターンが50〜100%の範囲内に制御される場合であり、70〜100%の範囲内に制御される場合がより好ましい。
予め決定された変動パターンを利用する方法としては、燃料電池への燃料の供給量の変動パターンを予測して、これに対応した電流値の変動パターンを用いる方法(図5(a)の場合)が有効である。その場合、設定電流変更手段は、予め決定された、時間と共に変化する電流値の変動パターンに基づいて、電流制御手段の設定電流値を変化させるものとなる。最も単純なものとしては、タイマー制御によって設定電流値を変化させる場合が挙げられる。
フィードバック制御を行う場合、燃料電池FCからの燃料の排出量を検出する方法、燃料電池FCの内部の圧力を検出する方法、燃料電池FCの最終段の単位セルの電圧を検出する方法などが挙げられる。また、フィードフォワード制御を行う場合、燃料電池FCへの燃料の供給量を検出する方法などが挙げられる。
図1Aは、電流制御手段(回路)の変形例を示す回路図である。電流制御回路70は、出力部30における出力電流が設定電流値を超えないように制御するものであり、トランジスタ(FETを含む)などの電流制御素子71を用いるのが一般的である。トランジスタなどの電流制御素子71を用いる場合、ベース入力電圧などによって電流制御素子71の電流が制御されるが、当該電流が一定値を超えるとベース入力電圧などが低下するようなフィードバック回路(保護回路としても一般的である)を設けることによって、出力電流が所定の電流値を超えないように制御することができる。
このようなフィードバック回路としては、受動部品のみで構成することも可能であるが、トランジスタやオペアンプ等の能動部品を用いることが好ましい。更に、より確実な制御を行う上で、オペアンプを用いた電流制御回路70が好ましい。
一方、本発明における電流制御回路70は、図1Aに示すように、第1コンバータ20の出力の他方と出力部30との間に直列に接続された電流制御素子71を備え、その電流制御素子71に流れる電流に応じて変化する検出電圧と基準となる基準電圧とを比較して、電圧差に応じた入力信号により前記電流制御素子71に流れる電流を設定電流値以下に制御することが好ましい。その際、オペアンプ74を用いて、電圧差に応じた入力信号を増幅することが好ましい。
図示した例では、電流制御素子71と第1コンバータ20の出力OUT−との間に設けられた抵抗72によって、電流制御素子71に流れる電流に応じて変化する検出電圧が生じ、この検出電圧をオペアンプ74の−側入力に入力する。一方、可変抵抗73を含む一連の定電圧回路によって、基準となる基準電圧を生成させ、これをオペアンプ74の+側入力に入力する。
このときの電圧差に応じた入力信号は、オペアンプ74の増幅機能によって、トランジスタなどの電流制御素子71のベース入力電圧等を大きく変化させる。このため、出力部30の電流と同じになる抵抗72の電流が一定値を超えると、オペアンプ74に入力される電圧差が小さくなり、その出力電圧、即ち電流制御素子71のベース入力電圧等が大きく低下し、電流制御素子71に流れる電流も低下する。これによって、出力部30における出力電流が設定電流値を超えないように制御することができる。
なお、図1Aに示すように、定電圧回路は、抵抗R11に直列接続された定電圧ダイオードDの電圧を、抵抗R12〜R13に直列接続された可変抵抗73で所定の電圧として取り出す構成となっている。また、オペアンプ74には電源供給が必要であり、グランドと第1コンバータ20の出力OUT+とを接続している。
電流制御回路40の可変抵抗43を機械的に変動させる方法もあるが、オペアンプ44に入力する基準電圧を変動させる電子回路を利用するのが好ましい。つまり、設定電流値に対応する基準電圧が、電流制御回路40の回路特性から決定されるため、電子回路を利用することで、装置の小型化、低コスト化などが図れる。
電子回路を利用する場合、例えばプログラム可能なマイコンを利用してシーケンス制御によって、電流値の変動パターンに対応する基準電圧を生成させる方法が有効である。また、フィードバック制御等を行う場合も、制御遅れなどをマッチングさせる観点から、プログラム可能なマイコンを利用して、フィードバック制御を行う際に追加の制御パラメータを付加することが好ましい。
出力部30における出力電流は、その出力電圧と、燃料電池FCの容量(有効面積などで決まる)や電力特性などに応じて決定される。例えば3.7V出力のリチウム二次電池を内蔵する携帯電話を充電する場合で、水素供給型の燃料電池FCの容量が3W程度である場合、出力部30における出力電流が0.6Aを超えない範囲で設定電流値を変化させるのが好ましい。ダイレクトメタノール型などの燃料電池FCの場合、その容量がより小さくなるため、しきい値をより小さい電流値の範囲内に設定するのが好ましい。
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例等について説明する。
[実施例1]
耐食性を有するSUS(50mm×26mm×0.3mm厚)に溝(幅0.8mm、深さ0.2mm、間隔1.6mm、本数21本)、及び周辺カシメ部、ガス導入、排出孔を塩化第二鉄水溶液によるエッチングにより設け、これをアノード側金属板とした。同様に、耐食性を有するSUS(50mm×26mm×0.3mm厚)に貫通孔(0.6mmφ、ピッチ1.5mm、個数357個、接触領域の開口率13%)、及び周辺カシメ部、ガス導入、排出孔を塩化第二鉄水溶液によるエッチングにより設け、これをカソード側金属板とした。そして絶縁シート(50mm×26mm×2mm幅、厚み80μm)をSUSに張り合わせた。
また、薄膜電極組立体(49.3mm×25.3mm)は、下記のようにして作製した。白金触媒は、米国エレクトロケム社製20%白金担持カーボン触媒(EC−20−PTC)を用いた。この白金触媒と、カーボンブラック(アクゾ社ケッチェンブラックEC)、ポリフッ化ビニリデン(カイナー)を、それぞれ75重量%、15重量%、10重量%の割合で混合し、ジメチルホルムアミドを、2.5重量%のポリフッ化ビニリデン溶液となるような割合で、上記白金触媒、カーボンブラック、ポリフッ化ビニリデンの混合物中に加え、乳鉢中で溶解・混合して、触媒ペーストを作製した。カーボンペーパー(東レ製TGP−H−90、厚み370μm)を20mm×43mmに切断し、この上に、上記のようにして作製した触媒ペースト約20mgをスパチュラにて塗布し、80℃の熱風循環式乾燥機中で乾燥した。このようにして4mgの触媒組成物が担持されたカーボンペーパーを作製した。白金担持量は、0.6mg/cm2 である。
上記のようにして作製した白金触媒担持カーボンペーパーと、固体高分子電解質(陽イオン交換膜)としてナフィオンフィルム(デュポン社製ナフィオン112、25.3mm×49.3mm、厚み50μm)を用い、その両面に、金型を用いて、135℃、2MPaの条件にて2分間ホットプレスした。こうして得られた薄膜電極組立体を上記のSUS板2枚の中央で挟み込み、図4に示すようにカシメ合わせることで、外寸50mm×26mm×1.4mm厚という薄型小型のマイクロ燃料電池を得る事ができた。これを単位セルとし、4個の単位セルを直列(ガスおよび電気)に接続して燃料電池を構成した。
上記の燃料電池の初段の単位セルに水素ガス供給手段を接続し、次のようにして水素ガスを供給した。アルミニウム粉末(高純度化学研究所製:平均粒径3μm)と、カーボンブラック(キャボット社製:バルカンXC−72R、平均粒径20nm)と、酸化カルシウム(和光純薬工業A−12112、粉末試薬)とからなる水素発生剤(重量比は1/0.23/0.015)2.8gを反応容器に入れ、吸水紙を介して水を供給し、水素ガスを発生させて、燃料電池に供給した。
更に、上記の燃料電池の出力をステップアップ(DC/DC)コンバータ(MAXIM社製、MAX1708EEE使用)を利用して構成された直流電圧変換回路(出力5.5V)に入力し、その出力の一方に介在する電流制御回路(図1A、オペアンプはNS社製LM7301IM5)によって、出力部からの出力電流が設定電流値を超えないように制御した。その際、設定電流変更手段として、プログラム可能なマイコンを利用してシーケンス制御によって、図5(b)に示す電流値の変動パターンに対応する基準電圧を生成させ、オペアンプに入力して設定電流値を変化させた。そして、出力部には、コネクタを介して、3.7Vのリチウムイオン二次電池(容量800mA・h)を内蔵する携帯電話を接続し、充電回路を介して充電を行った。
その際、燃料電池の電圧、電流、出力電力、および出力部の出力電圧、出力電流(設定電流値)を測定し、その結果を図5(b)に示した。また、充電の際の水素供給量と水素消費量とを図5(a)に示した。
図5(b)の結果によると、設定電流値の変化に応じて燃料電池の出力電流が変化し、出力部からの出力も変化している。その際、図5(a)に示すように、水素供給量が変動しているが、これに近づくように水素消費量が変化している。このとき、水素消費量/水素供給量が燃料の利用率となるが、図6に示すように、70%程度の利用率が得られている。このため、水素供給量が変動しても、対応することができ、水素ガスの供給に関する特別な制御を省略することができる。
[比較例1]
実施例1において、設定電流変更手段を設けずに、電流制御回路により出力部の出力電流を一定(0.16A)に制御したこと以外は、実施例1と同様にして燃料電池の発電による充電を行った。その結果、図6に示すように、50%以下の利用率しか得られなかった。
[比較例2]
実施例1において、電流制御回路(設定電流変更手段もなし)を介さずに抵抗を用いて同じ出力電力となるように、DC/DCコンバータの出力によって充電を行ったこと以外は、実施例1と同様にして燃料電池の発電による充電を行った。その結果、充電の初期に燃料電池の出力電流が4Aまで上昇して、燃料電池が過負荷状態となったため、充電を直ちに中止した。
<設定電流変更手段の別実施形態>
次に、設定電流変更手段60の別実施形態について図7の模式図により説明する。この設定電流変更手段60は、CPU22の1つの機能として実現されるものである。ここで説明する制御は、前述のフィードバック制御の一例である。この実施形態では、燃料電池FCは4つの同じ単位セルS1〜S4により構成されている。4つの単位セルS1〜S4は、電気的に直列に接続されており、個々の単位セルS1〜S4の出力電圧がV1〜V4で表わされており、燃料電池FCとしての出力電圧はVt=V1+V2+V3+V4となる。この出力電圧Vtが直流電圧変換回路20への入力電圧となる。なお、燃料電池FCを構成する単位セルの個数については特に制限はなく、4つでなくてもよい。
水素発生装置Aから供給される燃料である水素ガスはパイプ16により各単位セルS1〜S4へ供給される。パイプ16により連結される燃料通路は、直列に連結されており、水素ガスは上流側(初段)の単位セルS1から順番に供給され、下流側の最終段の単位セルS4へと供給される。最終段の単位セルS4へ到達した水素ガスは、パイプ16aから外部に排出される。ただし、排出される水素ガスの量は極力少ない方が好ましい。
次に、設定電流変更手段60の具体的な機能について説明する。第1電圧検知部61は、最終段の単位セルS4の出力電圧V4を検出する。第2電圧検知部62は、最終段以外の単位セルS1〜S3の出力電圧V1〜V3を検出する。ここで検出される電圧は、3つの単位セルS1〜S3の総電圧でもよいし、平均値でもよい。ただし、以下の説明では平均値Va=(Vt−V4)/3として説明する。検出する場合のサンプリング周期は0.5秒に設定されているが、周期の設定については任意に行なうことができる。電圧値記憶部63には、検出された電圧値Va,V4が一時的に記憶される。記憶されるデータは、最新のデータを含めて4つのサンプリング点におけるデータであり、古くなったデータは適宜消去される。
第1電圧変動検出部64は、最終段単位セルS4の出力電圧V4の時間的変動を検出する。具体的には、最新のデータV4(0s)、0.5秒前のデータV4(−0.5s)、1秒前のデータV4(−1s)、1.5秒前のデータV4(−1.5s)の4つのデータに基づいて、時間的変動を検出する。隣接するサンプリング点におけるデータを比較し、減少方向であれば−1、増加方向であれば1、増減がなければ0を変動値として設定する。サンプリング点が4つであるので、変動値は3つ求められ、変動値の総和をフラグ値として求める。フラグ値は−3,−2,−1,0,1,2,3のいずれかをとる。この値を第1フラグレジスタ66aに格納する。第1電圧変動検出部64がこのようなフラグデータを演算する周期も、前述のサンプリング周期と同様に0.5秒となる。なお、サンプリング点をいくつにするかは任意である。
第2電圧変動検出部65は、同様に3つの単位セルS1〜S3の平均の電圧値Vaの時間的変動を検出する。具体的には、最新のデータVa(0s)、0.5秒前のデータVa(−0.5s)、1秒前のデータVa(−1s)、1.5秒前のデータVa(−1.5s)の4つのデータに基づいて、時間的変動を検出する。第1電圧変動検出部64の場合と同様に、変動値の総和がフラグ値として第2フラグレジスタ66bに格納される。
上記において、最終段の単位セルS4とそれ以外の単位セルS1〜S3に分けているのは次の理由による。燃料電池FCの各単位セルS1〜S4には、初段の単位セルS1から順番に水素ガスが供給されていくが、水素ガスの供給不足が最も生じやすいのは最終段にある単位セルS4である。従って、最終段単位セルS4の出力電圧は単独で検出するようにし、時間的変動を監視する。燃料電池への燃料の供給量の変動度合いを精度よく監視するには、最終段の単位セルS4の電圧を監視することが好ましい。最終段以外の単位セルS1〜S3については、水素ガスの供給不足はそれほど生じにくいため、これらの出力電圧の平均値を監視していればよい。
設定値決定部66は、第1・第2電圧の時間的変動の度合いに基づいて、電流制御回路40の設定電流値を決定する。具体的には、第1・第2フラグレジスタ66a,66bに格納されるフラグ値と、関数設定部67に設定されている関数に基づいて、調整値を決定する。これを具体的に、表1,表2,表3も利用しながら説明する。調整値を決める時の制御は次のように行われる。各表は、夫々サンプリング周期で検出された電流値Va(mV),V4(mV),夫々のフラグ値,設定電流(mA),入力電流(mA),FC電流(mA)の推移を表わした測定例である。設定電流は、図1における検出用抵抗R2を流れる出力電流、もしくは、図1Aにおける電流制御素子41のエミッタ・コレクタ間を流れる電流の設定値に相当するものであり、入力電流は、図1Aに示す回路構成において、実際に流れているエミッタ・コレクタ間電流を測定した結果を示すものである。また、表1,2,3におけるFC電流とは、燃料電池FCから直流電圧変換回路20へと流れ込む電流を測定したものである。
(A)まず出力電流が流れていない時は、設定電流値の調整は行われない。
(B)最終段の単位セルS4の現在の電圧値V4(0s)が480mV以下になった場合には、設定電流値が80mAになるように制御する。これは過小電圧に落ちた時の緊急措置として行われるものである。
(C)Vaが安定傾向の時(フラグ値が−1,0,1の時)かつV4も安定傾向(フラグ値が−1,0,1の時)は、設定電流値を関数Aを用いて上げるように制御する。関数については後述する。関数Aによる制御は表中「U」の判定で表示されている。
(D)V4が低下傾向の時(フラグ値が−2、−3の時)かつ隣接するサンプリング点間のV4の電圧差が−3(mV)よりも大きな時は、設定電流値を関数Bを用いて下げるように制御する。関数Bによる制御は表中「D」の判定で表わされている。
(E)隣接するサンプリング点間のV4の電圧差が−3(mV)以下の時、すなわち、最終段単位セルV4の電圧が急激に低下した時は、設定電流値を関数Cを用いて下げるように制御する。関数Cによる制御は表中「L」の判定で示されている。
(F)以上のいずれの条件にも当てはまらない時は、設定電流値に対する調整は行われない。表中、判定の欄が空欄になっている場合に相当する。
次に、関数A,B,Cの構成をそれぞれ表4,表5,表6に示す。
関数Aは表4に示すように、現在の設定電流値の大きさに対応して調整値が決定されるように関数が決められている。設定電流値の大きさを5段階に分け、設定電流値が小さいほど調整値が大きくなるようにしている。これは燃料電池FCの立ち上げ時など、電圧値が定常状態になるように増えていく段階でできるだけ早く定常状態になるようにするためである。
表1のNo.5におけるデータをみると、現在電圧値はVa=658,V4=693である。Vaのフラグ値については、No.2→No.3が増加(+1)、No.3→No.4が減少(−1)、No.4→No.5が増加で(+1)であるから、フラグ値=1−1+1=1となる。V4のフラグ値については、No.2→No.3が増加(+1)、No.3→No.4が増減なし(0)、No.4→No.5が減少で(−1)であるから、フラグ値=1+0−1=0となる。従って、Va,V4も共に安定傾向にあり(判定U)、前述の条件(C)を満たすので関数Aによる制御が行なわれる。そして、No.5の直前における設定電流値は338mAであるから、表4から調整値は3mAの増加となる。従って、No.5の時点における設定電流値は、338mAから341mAへと変更されることになる。
関数Bは表5に示されており、関数Aと同様に現在の設定電流値の大きさに対応して調整値が決定されるように関数が決められている。設定電流値の大きさを5段階に分け、設定電流値が小さいほど調整値が大きくなるようにしている。この理由は、直流電圧変換回路20の効率に対応させるためである。
表2のNo.5におけるデータをみると、Vaのフラグ値が0でV4のフラグ値が−2となっておりV4が低下傾向にある。また、現時点のV4=672で直前のV4=673に対して−1mVの差であり−3mVよりも大きい(判定D)。従って、前述の条件(D)を満たすので関数Bによる制御が行なわれる。そして、No.5の直前における設定電流値は401mAであるから、表5から調整値は2mAの減少となる。従って、No.5の時点における設定電流値は、401mAから399mAへと変更されることになる。
関数Cは表6に示されており、現時点における最終段単位セルS4の電圧値V4と直前のサンプリング点の電圧値の電圧差の大きさに対応して調整値が決定されるように関数が決められている。電圧差が大きいほど調整値が大きくなるように関数が決められている。これは電圧の低下の度合いが大きいほど、設定電流値も大きく下げるようにして、最終段の単位セルS4に対する過負荷を抑制するためである。
表3のNo.4におけるデータをみると、電圧値V4=611mVであり、直前の電圧値V4=623mVに対して12mV低下(3mV以上の低下)している(判定L)。従って、前述の条件(E)を満たすので関数Cによる制御が行なわれる。表6において電圧差が12mVの場合の調整値は15mAである。直前の設定電流値は453mAであり、調整後は437mAとなる。
本実施形態において、各関数A,B,Cはテーブル(ルックアップテーブル)の形で提供されるが、本発明としては、これに限定されるものではなく、例えば、関数式を用いて演算するようにしてもよい。
表1,2,3において実際の設定電流値の変化に対応して、入力電流も同じような傾向で変化していることがわかる。なお、電圧値の最大調整値は500mA、電流の最大調整値は80mA、単位セルの最小電圧値は480mVとなるように制御される。
図8は、図7の構成によるフィードバック制御を行なった場合の、水素ガスの瞬時消費量と燃料電池出力の時間的推移を示すグラフである。このグラフによれば、出力に対応した水素ガスの消費が行なわれており、無駄に水素ガスを排出させないような結果が得られている。また、図9は水素消費量と出力容量の時間的推移を示すグラフである。このグラフからも出力容量の変化に対応して水素ガスの消費量が変化していることがわかる。さらに、水素発生総量1200mlに対して水素消費量は1150mlとなっており、消費率は95%とかなり高くなっていることが確認された。従って、水素ガスを無駄にすることなく有効に消費されていることが分かる。
<バルブ機構の制御>
次に、バルブ機構13の制御に関し図7等により説明する。バルブ機構13の開閉制御は、予め設定された制御プログラム81に基づいてバルブ制御手段69により行われる。バルブ機構13に対する制御は、図4に示すように、コイル23に対する導通・非導通を制御することで行われる。具体的には、間歇的にパルス信号をトランジスタ24のベース24aに出力することで、コイル23を間歇的に導通させることができる。コイル23による電磁作用によりバルブ機構13を開閉させることができる。コイル23が導通している間だけバルブ機構13が開き、水がガス発生剤収容室11に供給される。
バルブ機構13が開くと、図1で説明したように、コイルスプリング15の排出力により水を決められた量、供給させることができる。すなわち、開時間が一定であれば、コイルスプリング15の付勢力により水の供給量が決定されることになる。しかし、コイルスプリング15の付勢力は一定ではなく、徐々に変化する。水が徐々に排出されていくと、水収容容器14は付勢力により徐々に圧縮されていき、コイルスプリング15の長さも変化するので、付勢力も徐々に変化する(弱くなる)。
従って、開時間を一定にしていたとしても、水の供給量は一定ではないため、これを一定であると仮定して制御を行うと、所望の水素ガスが発生しないことになる。そこで、上記コイルスプリング15による付勢力の変化を考慮して、制御プログラムが組み込まれている。例えば、コイル23の導通時間が徐々に長くなるように設定したり、コイル23を駆動する間隔を徐々に短くするように設定される。
バルブ開閉検知部68は、現在バルブが開いている状態か否かを検知する機能を有する。バルブ制御手段69の機能は、同じCPU22により実現される機能であり、バルブ機構13が開閉されているか否かも認識可能である。そして、バルブ機構13が開状態のときは、設定電流変更手段60による変更制御を行わないようにする。
コイル23を駆動するときには、瞬間的に大きな電流が流れる。これに起因する電圧降下を第1・第2電圧検知部61,62により検出すると、設定電流値を変更しなくてもよいにもかかわらず、設定電流値を変更してしまう可能性があり、必要以上に水素ガスを発生させてしまうことになる可能性がある。そこで、バルブ機構13が開状態のときは、設定電流変更手段60による設定電流値の変更は行なわないように制御される。
また、バルブ制御手段69は、出力電流入力部80から入力される出力電流データ及び設定電流変更手段60により設定されている電流値データに基づいて、バルブ機構13の開閉タイミングを変更可能に制御される。すなわち、本来は、制御プログラム81によりバルブ機構13の開閉タイミングが制御されるが、出力電流データ等により変更可能に構成されている。ちなみに、出力電流データについては、差動アンプ38を介してCPU22に取り込まれるデータである。
ここで前述の電流値の設定は、出力部30に容量のほとんどないリチウム電池53が接続されたことを想定している。実際に、充電しようとする場合、接続されるリチウム電池53の容量はほとんどない場合が多いと考えられるが、実際には、ほとんど充電完了した状態のリチウム電池53が接続される場合や、半分程度充電された状態のリチウム電池53が接続される可能性がある。
例えば、ほとんど充電された状態のリチウム電池53が接続されると、要求される出力電流は充電開始直後からほとんど必要ない状態である。かかる状態において、設定電流値を増加させても、出力電流は増加しない。通常の充電動作の場合は、設定電流値を変更すると、これに近づくように出力電流が変更されていく。
従って、設定電流値に出力電流が近づかない状態が所定時間以上継続する場合は、通常の状態ではないものと判断することができる。例えば、ほとんど充電が完了した状態のリチウム電池53が接続されたのか、半分程度充電されたリチウム電池53が接続されたのかを判断することができる。これは、設定電流値と出力電流の差の大きさや、上記所定時間の長さなどに基づいて、判断することができる。
かかる場合は、バルブ機構13によりバルブの開閉タイミングを変更する。例えば、出力電流が必要のない状態であれば、開時間を短くするか、バルブ開の間隔を広げるなどの修正を行なうことができる。これにより、無駄に水素ガスが発生することを抑制し、水素ガスの利用効率を高めることができる。
[他の実施形態]
(1)前述の実施形態では、水素供給型の燃料電池を用いる例を示したが、本発明に用いられる燃料電池FCとしては、燃料により発電可能な燃料電池FCであれば何れでもよく、例えばメタノール改質型、ダイレクトメタノール型、炭化水素供給型などが挙げられる。その他の燃料を用いる燃料電池も各種知られており、それらを何れも採用できる。
(2)前述の実施形態では、カソード側電極板の面積に対して一定の開口率で開口部を設けた拡散抑制板(金属板)をカソード側電極板の表面に配置して、酸素含有ガス供給部を形成する例を示したが、酸素含有ガス供給部を、アノード側と同様に酸素含有ガスの流路溝によって構成してもよい。その場合、アノード側金属板と同様に、エッチングやプレス加工により、空気等の酸素含有ガスの流路溝、注入口、排出口を形成し、アノード側金属板と同様に、カソード側金属板の注入口から空気等を供給しつつ発電を行うことができる。その際、カソード側から外部へ水分の拡散を抑制する方法としては、例えば水分を含有する酸素含有ガスを供給する方法が挙げられる。
(3)前述の実施形態では、金属板をカソード側電極板とアノード側電極板との表面に配置して、酸素含有ガス供給部と水素ガス流路部とを形成する例を示したが、金属板の代わりに、その他の材料や、従来から使用されている各種セパレータを用いることも可能である。
また、前述の実施形態では、エッチングによりアノード側金属板に流路溝を形成する例を示したが、本発明では、プレス加工、切削などの機械的な方法により、アノード側金属板に流路溝を形成してもよい。
(4)前述の実施形態では、水素ガス供給手段である水素ガス発生セルが充電装置内に一体的に構成されている例を示したが、水素ガス発生セル等を充電装置に対して、着脱自在に装着できるように構成してもよい。その場合、水素ガス供給管に対して、連結可能な配管を水素ガス発生セルが備える。
(5)前述の実施形態では、携帯電話に充電を行う例を示したが、ノートPC、PDA等のモバイル機器の充電にも使用することが可能である。その場合でも、充電に要求される電圧(例えば12V)を出力部から出力できるように、直流電圧変換回路の出力電圧が設定される。また、制御される電流のしきい値は、充電の効率などを考慮して、更に高い電流値の範囲内(例えば0.8A以下)に設定してもよい。
このように、携帯電話と比較して大きな消費電力を有するモバイル機器の場合、燃料電池の出力電圧をより大きくする方が効率が良く、直列に接続する燃料電池の数を増加させることで対応できる。
(6)前述の実施形態では、充電回路を介して二次電池の充電を行う場合の例を示したが、本発明の充電装置では、出力電流が設定値を超えないように制御されるため、これを用いて二次電池等を直接充電することも可能である。その場合、例えば、二次電池のフル充電後の出力電圧に対して、100〜120%の電圧を直流電圧変換回路の出力電圧として設定すればよい。また、出力電流のしきい値は、300〜500mA以下に設定すればよい。
(7)本実施形態では、電流制御手段として機能するD/Aコンバータ40と差動アンプ41が第1コンバータ20の出力側と出力部30と間に介在している構成を説明したが、これらがすべて第1コンバータ20に組み込まれていてもよい。
(8)本発明に係る給電装置の一例として充電装置として使用する例を説明したが、充電装置ではなく、機器を駆動する電源装置そのものとしても使用可能である。