JP2010170732A - 燃料電池システム及び電子機器 - Google Patents

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Abstract

【課題】燃料電池に安定した発電部温度及び発電出力を得られる燃料電池システム及び電子機器を提供する。
【解決手段】燃料電池発電部101への燃料送液時間を制御する送液制御部703と、燃料電池発電部101の発熱部温度Tの変化過程でのピーク値を検出するピーク検出部701を有し、ピーク検出部701で発電部温度Tのピーク値を検出すると、このピーク値とピーク値直前の底値との温度差ΔTを求め、この温度差ΔTが予め設定される温度差下限値TLより小さい場合、送液制御部703により燃料送液時間を増加させ、温度差ΔTが予め設定される温度差上限値THより大きな場合、送液制御部703により燃料送液時間を減少させる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、燃料電池システム及びこの燃料電池システムを電源として用いた電子機器に関する。
携帯電話機や携帯情報端末などの電子機器の小型化は目覚しいものがあり、これら電子機器の小型化とともに、電源として燃料電池を使用することが試みられている。燃料電池は、燃料と空気を供給するのみで発電することができ、燃料のみを交換すれば連続して発電できるという利点を有するため、小型化が実現できれば、小型の電子機器の電源として極めて有効である。
そこで、最近、燃料電池として、直接メタノール型燃料電池(以下、DMFC;Direct Methanol Fuel Cellと称する。)が注目されている。かかるDMFCは、液体燃料の供給方式によって分類され、気体供給型や液体供給型等のアクティブ方式のものと、燃料収容部内の液体燃料を電池内部で気化させて燃料極に供給する内部気化型等のパッシブ方式のものがあり、これらのうち、パッシブ方式のものはDMFCの小型化に対して特に有利である。
従来、このようなパッシブ方式のDMFCとして、特許文献1に開示されるように、例えば燃料極、電解質膜および空気極を有する膜電極接合体(燃料電池セル)を、樹脂製の箱状容器からなる燃料収容部上に配置した構造のものが考えられている。
また、DMFCの燃料電池セルと燃料収容部とを流路を介して接続する構成のものも特許文献2〜4に開示されている。これら特許文献2〜4は、燃料収容部から供給された液体燃料を燃料電池セルに流路を介して供給することによって、流路の形状や径等に基づいて液体燃料の供給量を調整可能としたもので、特に、特許文献3では燃料収容部から流路にポンプで液体燃料を供給している。また、ポンプに代えて、流路に電気浸透流を形成する電界形成手段を用いることも記載されている。さらに特許文献4には電気浸透流ポンプを用いて液体燃料等を供給することが記載されている。
国際公開第2005/112172号パンフレット 特表2005−518646号公報 特開2006−085952号公報 米国特許公開第2006/0029851号公報 特開2006−286321号公報
ところで、このような燃料電池システムを電子機器などの負荷の電源として適用した場合、燃料電池からの出力を安定して負荷に供給できることが重要である。
そこで、従来、特許文献5に開示されるように燃料電池の出力及び温度を検出し、これら出力及び温度に基づいて燃料電池への燃料供給を制御するものが知られている。
ところが、このような従来の制御では、例えば、図10に示すように燃料電池のカソード温度Tkに対する温度閾値Tsを予め設定しておき、カソード温度Tkが温度閾値Ts以下の期間(図示A1、A2期間)では、燃料電池への燃料の送液時間Tonと送液停止時間Toffを所定のデューティ比で繰り返し、カソード温度Tkが温度閾値Tsを超えた期間(図示B1、B2期間)では、燃料電池への燃料送液を停止するようにしている。つまり、温度閾値Tsを基準としてカソード温度Tkが閾値以上か、又は以下かで燃料電池への燃料の送液の有無を決定している。
しかしながら、このような制御によると、燃料電池への燃料供給から実際にカソード温度Tkが上昇するまでにタイムラグがあるため、例えば、周囲温度の低下(環境変動)によりカソード温度Tkが上昇せずに温度閾値Ts以下である状況が続いたような場合(期間A2参照)、この間、燃料電池への燃料の送液時間Tonが繰り返して設定され、燃料電池に対して多量の燃料供給が行われる。このため、後になって燃料電池のカソード温度Tkが異常に高くなることがあり、燃料電池の発電出力Pも大きく変動し、安定した発電出力Pを負荷に供給できないという問題があった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、燃料電池に安定した発電部温度及び発電出力を得られる燃料電池システム及び電子機器を提供することを目的とする。
請求項1記載の発明は、燃料供給により電力を発電する燃料電池発電部を有する燃料電池本体と、前記燃料電池発電部に燃料を送液する燃料送液手段と、前記燃料電池発電部の発熱部温度を検出する温度検出手段と、前記温度検出手段で検出される発熱部温度の変化過程でのピーク値を検出するピーク検出手段と、前記ピーク検出手段で検出される発熱部温度のピーク値に基づいて前記燃料送液手段による燃料送液を制御する制御手段と、を具備したことを特徴としている。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、制御手段は、前記ピーク検出手段で検出される発電部温度のピーク値と該ピーク値直前の底値との温度差を求め、該温度差が予め設定される温度差下限値より小さい場合、前記燃料送液手段による燃料送液の時間を増加し、前記温度差が予め設定される温度差上限値より大きな場合、前記燃料送液手段による燃料送液の時間を減少させるように制御することを特徴としている。
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記制御手段は、前記ピーク検出手段で検出される発電部温度のピーク値が所定の閾値以下の場合、前記燃料送液手段による燃料送液を、前記発熱部温度が前記ピーク値から所定温度低下したところから開始させ、前記発電部温度のピーク値が前記閾値以上の場合、前記燃料送液手段による燃料送液を、前記発熱部温度が前記ピーク値から前記閾値まで低下したところから開始させることを特徴としている。
請求項4記載の発明は、請求項2又は3記載の発明において、前記制御手段は、前記燃料送液手段による燃料送液の時間増加により、該送液時間が予め設定される最大送液時間以上となる場合、前記燃料送液手段による燃料送液時間を前記最大送液時間に設定し、前記燃料送液手段による燃料送液の時間減少により、該送液時間が予め設定される最小送液時間以下になる場合、前記燃料送液手段による燃料送液時間を前記最小送液時間に設定することを特徴としている。
請求項5記載の発明は、請求項2又は3記載の発明において、前記制御手段は、前記ピーク検出手段で検出される発電部温度のピーク値が所定の閾値以上の場合、前記燃料送液の減少時間を変更可能にしたことを特徴としている。
請求項6記載の発明は、請求項1乃至5のいずれか一記載の燃料電池システムを電源として使用した電子機器である。
本発明によれば、燃料電池に安定した発電部温度及び発電出力を得られる燃料電池システム及び電子機器を提供できる。
以下、本発明の実施の形態を図面に従い説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態にかかる燃料電池システムの概略構成を示している。
図1において、1は燃料電池本体(DMFC)で、この燃料電池本体1は、起電部を構成する燃料電池発電部(セル)101、液体燃料を収容する燃料収容部102、燃料収容部102と燃料電池発電部(セル)101を接続する流路103及び燃料収容部102から燃料電池発電部(セル)101に液体燃料を移送するための燃料送液手段としてのポンプ104を有している。
図2は、このような燃料電池本体1をさらに詳細に説明するための断面図である。
この場合、燃料電池発電部101は、アノード触媒層11とアノードガス拡散層12とを有するアノード(燃料極)13と、カソード触媒層14とカソードガス拡散層15とを有するカソード(空気極/酸化剤極)16と、アノード触媒層11とカソード触媒層14とで挟持されたプロトン(水素イオン)伝導性の電解質膜17とから構成される膜電極接合体(Membrane Electrode Assembly:MEA)を有している。
ここで、アノード触媒層11やカソード触媒層14に含有される触媒としては、例えばPt、Ru、Rh、Ir、Os、Pd等の白金族元素の単体、白金族元素を含有する合金等が挙げられる。アノード触媒層11にはメタノールや一酸化炭素等に対して強い耐性を有するPt−RuやPt−Mo等を用いることが好ましい。カソード触媒層14にはPtやPt−Ni等を用いることが好ましい。ただし、触媒はこれらに限定されるものではなく、触媒活性を有する各種の物質を使用することができる。触媒は炭素材料のような導電性担持体を使用した担持触媒、あるいは無担持触媒のいずれであってもよい。
電解質膜17を構成するプロトン伝導性材料としては、例えばスルホン酸基を有するパーフルオロスルホン酸重合体のようなフッ素系樹脂(ナフィオン(商品名、デュポン社製)やフレミオン(商品名、旭硝子社製)等)、スルホン酸基を有する炭化水素系樹脂等の有機系材料、あるいはタングステン酸やリンタングステン酸等の無機系材料が挙げられる。ただし、プロトン伝導性の電解質膜17はこれらに限られるものではない。
アノード触媒層11に積層されるアノードガス拡散層12は、アノード触媒層11に燃料を均一に供給する役割を果たすと同時に、アノード触媒層11の集電体も兼ねている。カソード触媒層14に積層されるカソードガス拡散層15は、カソード触媒層14に酸化剤を均一に供給する役割を果たすと同時に、カソード触媒層14の集電体も兼ねている。アノードガス拡散層12およびカソードガス拡散層15は多孔質基材で構成されている。
アノードガス拡散層12やカソードガス拡散層15には、必要に応じて導電層が積層される。これら導電層としては、例えばAu、Niのような導電性金属材料からなる多孔質層(例えば、メッシュ)、多孔質膜、箔体あるいはステンレス鋼(SUS)などの導電性金属材料に金などの良導電性金属を被覆した複合材等が用いられる。電解質膜17と後述する燃料分配機構105およびカバープレート18との間には、それぞれゴム製のOリング19が介在されており、これらによって燃料電池発電部101からの燃料漏れや酸化剤漏れを防止している。
カバープレート18は酸化剤である空気を取入れるための不図示の開口を有している。カバープレート18とカソード16との間には、必要に応じて保湿層や表面層が配置される。保湿層はカソード触媒層14で生成された水の一部が含浸されて、水の蒸散を抑制すると共に、カソード触媒層14への空気の均一拡散を促進するものである。表面層は空気の取入れ量を調整するものであり、空気の取入れ量に応じて個数や大きさ等が調整された複数の空気導入口を有している。
燃料電池発電部101のアノード(燃料極)13側には、燃料分配機構105が配置されている。燃料分配機構105には配管のような液体燃料の流路103を介して燃料収容部102が接続されている。
燃料収容部102には、燃料電池発電部101に対応した液体燃料が収容されている。液体燃料としては、各種濃度のメタノール水溶液や純メタノール等のメタノール燃料が挙げられる。液体燃料は必ずしもメタノール燃料に限られるものではない。液体燃料は、例えばエタノール水溶液や純エタノール等のエタノール燃料、プロパノール水溶液や純プロパノール等のプロパノール燃料、グリコール水溶液や純グリコール等のグリコール燃料、ジメチルエーテル、ギ酸、その他の液体燃料であってもよい。いずれにしても、燃料収容部102には燃料電池発電部101に応じた液体燃料が収容される。
燃料分配機構105には燃料収容部102から流路103を介して燃料が導入される。流路103は燃料分配機構105や燃料収容部102と独立した配管に限られるものではない。例えば、燃料分配機構105と燃料収容部102とを積層して一体化する場合、これらを繋ぐ燃料の流路であってもよい。燃料分配機構105は流路103を介して燃料収容部102と接続されていればよい。
ここで、燃料分配機構105は図3に示すように、燃料が流路103を介して流入する少なくとも1個の燃料注入口21と、燃料やその気化成分を排出する複数個の燃料排出口22とを有する燃料分配板23を備えている。燃料分配板23の内部には図2に示すように、燃料注入口21から導かれた燃料の通路となる空隙部24が設けられている。複数の燃料排出口22は燃料通路として機能する空隙部24にそれぞれ直接接続されている。
燃料注入口21から燃料分配機構105に導入された燃料は空隙部24に入り、この燃料通路として機能する空隙部24を介して複数の燃料排出口22にそれぞれ導かれる。複数の燃料排出口22には、例えば燃料の気化成分のみを透過し、液体成分は透過させない気液分離体(図示せず)を配置してもよい。これによって、燃料電池発電部101のアノード(燃料極)13には燃料の気化成分が供給される。なお、気液分離体は燃料分配機構105とアノード13との間に気液分離膜等として設置してもよい。燃料の気化成分は複数の燃料排出口22からアノード13の複数個所に向けて排出される。
燃料排出口22は燃料電池発電部101の全体に燃料を供給することが可能なように、燃料分配板23のアノード13と接する面に複数設けられている。燃料排出口22の個数は2個以上であればよいが、燃料電池発電部101の面内における燃料供給量を均一化する上で、0.1〜10個/cm2の燃料排出口22が存在するように形成することが好ましい。
燃料分配機構105と燃料収容部102の間を接続する流路103には、ポンプ104が挿入されている。このポンプ104は燃料を循環される循環ポンプではなく、あくまでも燃料収容部102から燃料分配機構105に燃料を移送する燃料供給ポンプである。このようなポンプ104で必要時に燃料を送液することによって、燃料供給量の制御性を高めるものである。この場合、ポンプ104としては、少量の燃料を制御性よく送液することができ、さらに小型軽量化が可能という観点から、ロータリーベーンポンプ、電気浸透流ポンプ、ダイアフラムポンプ、しごきポンプ等を使用することが好ましい。ロータリーベーンポンプはモータで羽を回転させて送液するものである。電気浸透流ポンプは電気浸透流現象を起こすシリカ等の焼結多孔体を用いたものである。ダイアフラムポンプは電磁石や圧電セラミックスによりダイアフラムを駆動して送液するものである。しごきポンプは柔軟性を有する燃料流路の一部を圧迫し、燃料をしごき送るものである。これらのうち、駆動電力や大きさ等の観点から、電気浸透流ポンプや圧電セラミックスを有するダイアフラムポンプを使用することがより好ましい。
ポンプ104には、後述する燃料供給制御回路5が接続され、ポンプ104の駆動が制御される。
このような構成において、燃料収容部102に収容された燃料は、ポンプ104により流路103を移送され、燃料分配機構105に供給される。そして、燃料分配機構105から放出された燃料は、燃料電池発電部101のアノード(燃料極)13に供給される。燃料電池発電部101内において、燃料はアノードガス拡散層12を拡散してアノード触媒層11に供給される。燃料としてメタノール燃料を用いた場合、アノード触媒層11で下記の(1)式に示すメタノールの内部改質反応が生じる。なお、メタノール燃料として純メタノールを使用した場合には、カソード触媒層14で生成した水や電解質膜17中の水をメタノールと反応させて(1)式の内部改質反応を生起させる。あるいは、水を必要としない他の反応機構により内部改質反応を生じさせる。
CH3OH+H2O → CO2+6H++6e- …(1)
この反応で生成した電子(e-)は集電体を経由して外部に導かれ、いわゆる出力として負荷側に供給された後、カソード(空気極)16に導かれる。また、(1)式の内部改質反応で生成したプロトン(H+)は電解質膜17を経てカソード16に導かれる。カソード16には酸化剤として空気が供給される。カソード16に到達した電子(e-)とプロトン(H+)は、カソード触媒層14で空気中の酸素と下記の(2)式にしたがって反応し、この反応に伴って水が生成される。
6e-+6H++(3/2)O2 → 3H2O …(2)
図1に戻って、このように構成された燃料電池本体1は、燃料電池発電部(セル)101に温度検出手段としての温度センサー106が設けられている。この温度センサー106は、燃料電池発電部(セル)101の温度、つまり発熱部温度を検出するもので、例えば、サーミスタや熱電対からなり、図2に示す燃料電池発電部(セル)101のカソード(空気極)16に配置されている。また、温度センサー106は、発熱部温度に対応する検出信号を制御部7に出力する。制御部7については、後述する。
燃料電池本体1には、出力検出部6及び出力調整手段としてDC−DCコンバータ(電圧調整回路)2が接続されている。出力検出部6は、燃料電池発電部(セル)101の出力である出力電圧(出力電流)を検出し、検出信号を制御部7に出力する。
DC−DCコンバータ2は、不図示のスイッチング要素とエネルギー蓄積要素を有し、これらスイッチング要素とエネルギー蓄積要素により燃料電池本体1で発電された電気エネルギーを蓄積/放出させ、燃料電池本体1からの比較的低い出力電圧を十分の電圧まで昇圧して生成される出力を発生する。また、DC−DCコンバータ2は、制御部7の指示により出力(出力電圧)を任意に調整できるようになっている。このDC−DCコンバータ2の出力は、補助電源4に供給される。
なお、ここでは標準的な昇圧型のDC−DCコンバータ2を示したが、昇圧動作が可能なものならば、他の回路方式のものでも実施可能である。
DC−DCコンバータ2の出力端には、補助電源4が接続され、所謂ハイブリッド型燃料電池を構成している。この補助電源4は、DC−DCコンバータ2の出力により充電可能としたもので、電子機器本体3の瞬間的な負荷変動に対して電流を供給し、また、燃料枯渇状態になって前記燃料電池本体1が発電不能に陥った場合に電子機器本体3の駆動電源として用いられる。この補助電源4には、充放電可能な蓄電素子(例えばリチウムイオン二次電池(LIB))や電気二重層コンデンサ)が用いられる。
補助電源4には、燃料供給制御回路5が接続されている。燃料供給制御回路5は、補助電源4を電源としてポンプ104のオンオフ動作を制御するもので、制御部7の指示に基づいてポンプ104による燃料供給量を制御する。
燃料供給制御回路5には、制御部7が接続されている。制御部7は、システム全体を制御するもので、温度ピーク検出部701、パラメータ設定部702、送液制御部703を有している。温度ピーク検出部701は、温度センサー106より検出される燃料電池発電部101の温度である発電部温度Tの変化過程でのピーク値を検出する。この場合、発電部温度Tのピーク値は、例えば、発電部温度Tの上昇を確認しつつ下降に転じた点をピーク値として検出する方法、上昇するの発電部温度Tの微分値が零になった時点をピーク値として検出する方法などが用いられる。パラメータ記憶部702は、各種のパラメータとして初期送液時間td、送液時間可変値ti、最小送液時間tmin、最大送液時間tmax、温度閾値TsTS、温度上限値Tmax、モード切替温度Tm、温度差下限値TL、温度差上限値THなどが記憶されている。送液制御部703は、パラメータ記憶部702に記憶された各パラメータに基づいて燃料送液の開始、送液時間、送液停止時間などを制御する。送液制御部703の詳細は、後述する。
次に、このように構成された実施の形態の作用を図4に示すフローチャートに従い説明する。
ユーザによりシステム起動要求が入力されると、図5に示す立ち上げモードTAとなり、送液制御部703は、燃料供給制御回路5にポンプ104の動作を指示し、燃料電池発電部101への送液時間Tonと停止時間Toffを所定のデューティ比で繰り返す。この場合、燃料電池発電部101の温度が短時間で上昇して異常温度にならないように、最初は、出力検出部6より検出される燃料電池発電部101の出力、つまり発電出力Pの変化を監視し、この発電出力Pが所定値まで立ち上がった後に、温度センサー106で検出される発電部温度Tがモード切替温度Tmに到達するのをまって、定常発電モードTBに移行する。
この定常発電モードTBでは、送液制御部703により図4に示すフローチャートが実行される。まず、ステップ401において、温度センサー106より検出される発電部温度Tが送液可能な温度範囲かを判断する。この場合、送液可能な温度範囲を外れるような場合、例えば、発電部温度Tが図5に示す温度上限値Tmaxを超えるような場合は、この状態を維持し温度の低下を待つ。
燃料電池発電部101の発電部温度Tが送液可能な温度範囲であれば、ステップ402に進み、燃料送液時間Tonを初期送液時間tdに設定する。そして、ステップ403に進み、送液制御部703より燃料供給制御回路5にポンプ104の動作を指示し、燃料電池発電部101への燃料送液を開始する。初期送液時間tdを経過の後、ステップ404で送液停止時間を判定すると、ステップ405に進み、不図示の制御保留タイマーを動作させて燃料送液の停止時間Toffを設定する。その後、ステップ406で、制御保留タイマーの動作終了を判断すると、ステップ407に進む。
ステップ407では、発電部温度Tの前回のピーク判定値をリセットし、ステップ408に進み、温度ピーク検出部701により発電部温度Tの変化過程でのピーク値を検出する。この場合、温度ピーク検出部701は、例えば、発電部温度Tの上昇を確認しながら降下に転じた点をピーク値として検出する。そして、ステップ408で、発電部温度Tのピーク値を検出すると、ステップ409に進み、このときの発電部温度Tが送液可能な温度範囲以下か、つまり温度上限値Tmax以下かを判断する。この場合も、発電部温度Tが図5に示す温度上限値Tmaxを超えるような場合は、この状態を維持し温度低下を待つ。
ステップ409で燃料電池発電部101の温度Tが送液可能な温度範囲(Yes)と判断すると、ステップ410に進み、発電部温度Tが温度閾値Ts以下かを判断する。ここで、温度閾値Ts以下(Yes)であれば、ステップ411に進む。一方、発電部温度Tが温度閾値Ts以上(No)である場合は、パラメータ変更ステップ423に動作に進み、パラメータの設定を変更可能にする。かかるパラメータ変更ステップ423の動作は後述する。
ステップ411では、発電部温度Tのピーク値と、このピーク値直前の底値との差の温度差ΔTを求める。そして、ステップ412で、温度差ΔTが温度差下限値TLより小さいかを判定する。ここで、温度差ΔTが温度差下限値TLより小さくYesならば、ステップ413に進み、燃料送液時間の増加設定を行う。この場合、例えば、図6(a)に示すように温度差ΔTが、ΔT1、ピーク値TP1が温度閾値Ts以下(図5に示すTB1の期間)で、さらにΔT1<温度差下限値TLであれば、送液時間Tonとして初期送液時間tdに送液時間可変値tiを加えたtd+tiを新たな燃料送液時間t1に設定する。そして、次のステップ414で、新たな燃料送液時間t1が最大送液時間tmax以下(No)と判断されると、ステップ403に戻って、これ以降、新たな燃料送液時間t1により上述した動作を繰り返す。この場合の温度差ΔT1のピーク値TP1が温度閾値Ts以下の期間TB1では、発電部温度Tがピーク値TP1から所定温度ΔTP(例えば0.3℃程度)低下したところから、次の燃料送液を開始する。
その後、燃料送液時間t1により燃料送液を行った結果、例えば、図6(b)に示すように温度差ΔTが、ΔT2、ピーク値TP2が温度閾値Ts以上(図5に示すTB2の期間)になったとすると、この場合も、ΔT2<温度差下限値TLであれば、送液時間Tonとして前回の燃料送液時間t1に、さらに送液時間可変値tiを加えたt1+tiを新たな燃料送液時間t2に設定する。そして、ステップ414で、新たな燃料送液時間t2が最大送液時間tmax以下(No)と判断されると、ステップ403に戻って、これ以降、燃料送液時間t2により上述した動作を繰り返す。この場合の温度差ΔT2のピーク値TP2が温度閾値Ts以上の期間TB2では、発電部温度Tがピーク値TP2から温度閾値Tsまで低下したところから次の燃料送液を開始する。
なお、ステップ414で、新たな燃料送液時間t1(t2)が最大送液時間tmax以上(Yes)と判断された場合は、ステップ415に進む。ステップステップ415では、燃料送液時間t1(t2)を強制的に最大送液時間tmaxに設定してステップ403に戻り、最大送液時間tmaxにより燃料送液を行う。
一方、ステップ412において、温度差ΔTが温度差下限値TLより大きい(No)と判断された場合は、ステップ416に進む。このステップ416では、温度差ΔTが温度差上限値THより小さいかを判定する。この場合、例えば、図6(c)に示すように温度差ΔTが、ΔT3、ピーク値TP3が温度閾値Ts以上(図5に示すTB3の期間)で、温度差ΔT3が温度差上限値THより小さい(Yes)場合は、ステップ403に戻って、上述した燃料送液時間t1(t2)により同様な動作を繰り返す。また、温度差ΔT3が温度差上限値THより大きい(No)と判断されると、ステップ417に進み、燃料送液時間の減少設定を行う。この場合、送液時間Tonとして燃料送液時間t1(t2)から送液時間可変値tiを差し引いたt1(t2)−tiを新たな燃料送液時間t3に設定する。そして、次のステップ418で、新たな送液時間t3が最小送液時間tmin以下かが判断され、ここで、最小送液時間tminより大きい(No)と判断されれば、ステップ403に戻って、新たな燃料送液時間t3により上述した動作を繰り返す。この場合の温度差ΔT3のピーク値P3が温度閾値Ts以上の期間TB3では、発電部温度Tがピーク値P3から温度閾値Tsまで低下したところから、次の燃料送液を開始する。
なお、ステップステップ418で、新たな燃料送液時間t3が最小送液時間tmin以下(Yes)と判断された場合は、ステップ419に進み、燃料送液時間を強制的に最小送液時間tminに設定してステップ403に戻り、最小送液時間tminにより次の燃料送液を行う。
ところで、上述したステップ410において、発電部温度Tが温度閾値Ts以上(No)と判断された場合、パラメータ変更ステップ423に進む。このパラメータ変更ステップ423では、まず、ステップ420で、パラメータを変更して燃料送液時間減少の設定を行う。この場合、上述の燃料送液時間t1、t2、t3を数秒、例えば5秒程度強制的に短縮する。そして、ステップ421に進み、短縮した燃料送液時間が最小送液時間tmin以下かを判定する。ここで、短縮した燃料送液時間が最小送液時間tminより大きければ、上述したステップ411以降の動作に進む。また、ステップ421で、短縮した燃料送液時間が最小送液時間tmin以下と判断されると、ステップ422に進み、燃料送液時間を最小送液時間tminに設定して上述したステップ411以降の動作に進む。
したがって、このようにすれば、燃料電池発電部101への燃料送液時間を制御する送液制御部703と燃料電池発電部101の発熱部温度Tの変化過程でのピーク値を検出するピーク検出部701を有し、ピーク検出部701で発電部温度Tのピーク値を検出すると、このピーク値とピーク値直前の底値との温度差ΔTを求め、この温度差ΔTが予め設定される温度差下限値TLより小さい場合、送液制御部703により燃料送液時間を増加させ、温度差ΔTが予め設定される温度差上限値THより大きな場合、送液制御部703により燃料送液時間を減少させるように制御する、いわゆるΔT温度ピーク制御を行うようにしたので、例え、発熱部温度Tが温度閾値Ts以下であっても、適切な送液時間を確保して燃料電池発電部101への燃料供給を続けることができ、常に安定した発熱部温度Tと発電出力Pを得られ、変動の少ない安定した発電出力Pを負荷側に供給することができる。
また、発電部温度Tのピーク値が温度閾値Ts以下の場合、燃料電池発電部101への燃料送液を、発熱部温度Tがピーク値から所定温度だけ低下したところから開始させ、発電部温度Tのピーク値が、温度閾値Ts以上の場合、燃料電池発電部101への燃料送液を、発熱部温度Tがピーク値から温度閾値Tsまで低下したところから開始させるようにしたので、例えば、周囲温度が低くて発電部温度Tが温度閾値Ts以下である状態でも、確実に発電出力Pを制御することができる。
さらに、燃料送液時間の増加により送液時間が予め設定される最大送液時間Tmax以上となる場合は、燃料送液時間を最大送液時間Tmaxに設定し、燃料送液の時間減少により、送液時間が予め設定される最小送液時間Tmin以下となる場合は、燃料送液時間を最小送液時間Tminに設定しているので、燃料供給が多過ぎたり、少な過ぎるようなことがなくなり、常に適切な燃料送液を行うことができる。
ちなみに、本願によるΔT温度ピーク制御の場合と従来の閾値温度制御の場合を比較するため、雰囲気変動により周囲温度が大きく変化した場合の発電部温度Tと発電出力Pの関係を実際に調べたところ、図7及び図8に示す結果が得られた。この場合、図7及び図8では、周囲温度を例えば室温25℃から恒温漕を用いた15℃まで急激に低下させ、その後、室温25℃まで再び上昇させた場合の発電部温度Tと発電出力Pの関係を示している。
図7に示す本願のΔT温度ピーク制御の場合、周囲温度が25℃から15℃に低下し、その後、25℃まで上昇させると、発電部温度Tは、周囲温度の低下とともに温度閾値Ts以下まで低下するが、この温度閾値Ts以下の領域でも発電部温度Tの変化過程でのピーク値を検出して燃料電池への燃料送液時間の制御が行われるので、発電出力Pは、発電部温度Tに沿って変化するようになり、急激な出力変動が生じることがない。また、燃料電池発電部101での出力密度PM(mW/cm)も安定した状態で維持される。さらに、発電部温度Tのピーク値に応じて燃料送液時間が適切に制御され、ポンプ104のオン/オフ操作による燃料電池発電部101への燃料供給も比較的時間間隔をおいて行われるので、過剰な燃料供給を抑制でき、省エネルギー化も実現できる。そして、燃費についても調べたところ、0.90Wh/g程度となり、後で述べる従来のものより大幅に改善できた。なお、PHは、燃料電池発電部101の積算電力である。
一方、図8に示す従来の閾値温度制御の場合、発電部温度Tが温度閾値Ts以下の状態では、発電部温度Tを温度閾値Tsに制御するため燃料送液が繰り返し行われるので、過剰な燃料供給により発電出力Pが異常に上昇し大きな出力変動が生じる。また、発電部温度Tが周囲温度の低下とともに温度閾値Ts以下になると、再び発電部温度Tを温度閾値Tsに制御するため燃料送液が繰り返されるため、発電出力Pに変動を生じる。そして、このように発電部温度Tを温度閾値Tsにするため燃料送液が頻繁に行われ、ポンプ104のオン/オフ操作による燃料電池発電部101への燃料供給が短時間のうちに集中して行われるので、燃料消費も大きくなり、省エネルギー化が難しい。この場合も燃費について調べたところ0.73Wh/g程度となり、上述した本願のΔT温度ピーク制御の場合に比べて大幅に低下した。
一方、本願のΔT温度ピーク制御によれば、図9に示すように周囲温度の変化により発電部温度Tが温度閾値Ts以下となって温度閾値Tsを維持できない場合でも、発電部温度Tの変化過程でのピーク値に応じて燃料電池発電部101への燃料送液時間Tonが適切に制御されるので、燃料電池発電部101の発電変化率PAも、常に70%以上に維持でき、効率よく発電出力Pを得られることも確認できた。
本発明は、上記実施の形態に限定されるものでなく、実施段階では、その要旨を変更しない範囲で種々変形することが可能である。例えば、上述した実施の形態では、発電部温度Tの変化過程でのピーク値に基づいて燃料電池発電部101への燃料送液時間を制御するようにしたが、燃料電池発電部101に供給する燃料送液の回数を制御するようにしても良い。
さらに、上記実施の形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示されている複数の構成要件における適宜な組み合わせにより種々の発明が抽出できる。例えば、実施の形態に示されている全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題を解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出できる。
さらに燃料電池発電部へ供給される液体燃料の気化成分においても、全て液体燃料の気化成分を供給してもよいが、一部が液体状態で供給される場合であっても本発明を適用することができる。
本発明の第1の実施の形態にかかる燃料電池システムの概略構成を示す図。 第1の実施の形態の燃料電池本体を詳細に説明するための断面図。 第1の実施の形態の燃料電池本体に用いられる燃料分配機構の斜視図。 第1の実施の形態の動作を説明するフローチャート。 第1の実施の形態での立ち上げモードと定常発電モードでの発電部温度の温度と出力の関係を説明する図。 第1の実施の形態での送液時間の制御を説明する図。 第1の実施の形態でのΔT温度ピーク制御の実施データを示す図。 従来の閾値温度制御の実施データを示す図。 第1の実施の形態の発電部温度と発電力変化の関係を示す図。 従来の燃料電池システムの閾値温度制御を説明するための図。
1…燃料電池本体、101…燃料電池発電部
102…燃料収容部、103…流路
104…ポンプ、1041…ポンプ異常検出部、105…燃料分配機構
106…温度センサー、2…DC/DCコンバータ、3…電子機器本体
4…補助電源、5…燃料供給制御回路、6…出力検出部、
7…制御部、701…温度ピーク検出部、702…パラメータ設定部、
703…送液制御部、11…アノード触媒層、12…アノードガス拡散層
13…アノード、14…カソード触媒層
15…カソードガス拡散層、16…カソード
17…電解質膜、18…カバープレート
19…Oリング、21…燃料注入口
22…燃料排出口、23…燃料分配板
24…空隙部

Claims (6)

  1. 燃料供給により電力を発電する燃料電池発電部を有する燃料電池本体と、
    前記燃料電池発電部に燃料を送液する燃料送液手段と、
    前記燃料電池発電部の発熱部温度を検出する温度検出手段と、
    前記温度検出手段で検出される発熱部温度の変化過程でのピーク値を検出するピーク検出手段と、
    前記ピーク検出手段で検出される発熱部温度のピーク値に基づいて前記燃料送液手段による燃料送液を制御する制御手段と、
    を具備したことを特徴とする燃料電池システム。
  2. 制御手段は、前記ピーク検出手段で検出される発電部温度のピーク値と該ピーク値直前の底値との温度差を求め、該温度差が予め設定される温度差下限値より小さい場合、前記燃料送液手段による燃料送液の時間を増加し、前記温度差が予め設定される温度差上限値より大きな場合、前記燃料送液手段による燃料送液の時間を減少させるように制御することを特徴とする請求項1記載の燃料電池システム。
  3. 前記制御手段は、前記ピーク検出手段で検出される発電部温度のピーク値が所定の閾値以下の場合、前記燃料送液手段による燃料送液を、前記発熱部温度が前記ピーク値から所定温度低下したところから開始させ、前記発電部温度のピーク値が前記閾値以上の場合、前記燃料送液手段による燃料送液を、前記発熱部温度が前記ピーク値から前記閾値まで低下したところから開始させることを特徴とする請求項2記載の燃料電池システム。
  4. 前記制御手段は、前記燃料送液手段による燃料送液の時間増加により、該送液時間が予め設定される最大送液時間以上となる場合、前記燃料送液手段による燃料送液時間を前記最大送液時間に設定し、前記燃料送液手段による燃料送液の時間減少により、該送液時間が予め設定される最小送液時間以下になる場合、前記燃料送液手段による燃料送液時間を前記最小送液時間に設定することを特徴とする請求項2又は3記載の燃料電池システム。
  5. 前記制御手段は、前記ピーク検出手段で検出される発電部温度のピーク値が所定の閾値以上の場合、前記燃料送液の減少時間を変更可能にしたことを特徴とする請求項2又は3記載の燃料電池システム。
  6. 請求項1乃至5のいずれか一記載の燃料電池システムを電源として使用した電子機器。
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