JP5146091B2 - ポリビニルアルコール水溶液の製造方法 - Google Patents

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本発明は、透明性及び均一性に優れるポリビニルアルコール水溶液の製造方法に関するものである。
ポリビニルアルコールは、一般にポリ酢酸ビニルのケン化によって製造されており、液晶表示装置の必須部材である偏光板の原料として、大量に用いられている。偏光板は直線偏光子とも呼ばれ、入射する自然光のうち、ある特定の方向、すなわち透過軸方向に振動する光のみを透過し、いわゆる直線偏光を取り出すことができる性質を有している。このような偏光板には、必要な直線偏光だけを透過し、残りの不要な光を吸収する吸収型と呼ばれるもの、不要な光を反射する反射型と呼ばれるもの、不要な光を散乱する散乱型と呼ばれるものなどが存在するが、液晶表示装置においては、光の利用効率は低いものの、偏光性能が最も高い吸収型の偏光板が広く用いられている。
吸収型の偏光板には、延伸されたポリビニルアルコールに二色性色素が吸着されている偏光子が広く一般的に用いられており、二色性色素としては、ヨウ素や二色性の有機合成染料が用いられる。また、偏光子の耐久性を高める目的で、染色により二色性色素を吸着させた後でホウ酸による架橋処理を施すのが普通である。さらに、二色性色素が吸着したポリビニルアルコールからなる偏光子は、その両面に保護フィルムが貼合されて、液晶表示装置に適用されることが多い。
またポリビニルアルコールは、偏光板以外でも、洗濯用糊、写真印刷紙、接着剤など、非常に多用途に用いられる汎用樹脂であり、他の合成ポリマーにない水溶性という性質を利用して、有機溶剤を使用することなく、水を主溶剤としてさまざまな加工ができる利点を有している。そして、昨今の有機溶剤使用による環境負荷などを考えた場合、種々の製造プロセスを水系で作りこむことは有用である。このような観点から、ポリビニルアルコールは環境に優しい素材であり、今後も多用途での展開が期待され、さまざまな形態への加工をするうえで、中間物質となるポリビニルアルコール水溶液も重要な材料の一つであると言える。
このように、ポリビニルアルコールは各種分野において有用な材料であるが、ここでは主に偏光板に適用する場合を例に、従来技術の問題点を説明する。さて、上述したような偏光板に使用するポリビニルアルコールフィルムは、一般に、ポリビニルアルコールの水溶液をベルトやドラムなどの支持体上にキャストした後、乾燥させて水分を除去する方法により製造されている。
ここで、ポリビニルアルコールは水溶性であるとはいえ、特にケン化度の高いものは常温の水にはほとんど溶解しない難点があり、その溶解には特別の工夫がなされている。例えば、日本合成化学工業株式会社のポリビニルアルコールである「ゴーセノール」のホームページ(非特許文献1)には、「ゴーセノールEGの溶解方法」として、「常温水に徐々に投入し、よく分散させたあと、昇温しさらに攪拌し続けながら80〜90℃で30〜60分保ち溶解します」と説明されている。
このように、ポリビニルアルコールの樹脂粉末を一旦常温の水に混ぜてよく分散させたうえで80℃以上に加温し、さらに攪拌を続けることで、ポリビニルアルコールが均一に溶解した水溶液を得ることができる。しかし、こうして高温で溶解された水溶液を室温付近にまで戻すと、ポリビニルアルコールが再析出したり、ひどい場合にはゲル化したりすることがあった。
ポリビニルアルコールが再析出すると、白い微粉末状のものとして浮遊し、溶液のヘイズ値を上げてしまう。この場合、溶液自体の粘度はさほど変化なく、加工のために配管などを流動させるうえでもさほど支障をきたすことはないが、加工前にフィルターなどによりかかる浮遊物をろ過しようとするときに、目詰まりを起こしたり、固形分濃度が変化してしまったりするなどの問題を生じやすい。一方で、微粉末が発生している溶液からそのままフィルムを作製すると、偏光板化したときに輝点などの欠陥の原因となってしまう。
また、溶液がゲル化することはさらに深刻であり、局所的にゲル状の塊が発生して著しく溶液の粘度を上昇させ、不均一な溶液になってしまう。この状態で加工のために配管の中などを流動させようとすると、このゲル状の塊が配管の途中で詰まってしまい、支障をきたすことも多い。また、このゲル状の塊は透明な場合もあるが、ひどい場合には、液全体が真っ白になってヘイズ値を著しく上昇させてしまう。
そこで一般には、ポリビニルアルコールの水溶液を高温のまま、高温に保たれた支持体上にキャストすることが多い。例えば、特開 2006-233178号公報(特許文献1)には、偏光板などの光学用に有用なポリビニルアルコール系フィルムが開示されており、その実施例には、加圧下で147℃の液温とされた26重量%濃度のポリビニルアルコール水溶液を2軸押出機に供給して脱泡した後、T型スリットダイからダイ出口の樹脂温度95℃で吐出し、表面温度が90℃に保たれたキャストドラムに流延して製膜したことが記載されている。このように高温のポリビニルアルコール水溶液を高温に保たれた支持体上にキャストすることは、加熱のための設備や熱源にコストがかかってしまう。
一方、特開 2000-338329号公報(特許文献2)には、熱可塑性樹脂フィルムの片面に厚さが6〜30μm のポリビニルアルコール樹脂層を塗布によって形成し、そのまま積層状態で延伸した後、そのポリビニルアルコール樹脂層側に透明樹脂フィルムを貼り合わせてから最初の熱可塑性樹脂フィルム層を剥離除去し、次いで表面に現れたポリビニルアルコール樹脂層を染色するか、あるいは、前記の熱可塑性樹脂フィルムの片面にポリビニルアルコール樹脂層が積層され、延伸された状態のまま、当該ポリビニルアルコール樹脂層を染色し、次いでその染色されたポリビニルアルコール樹脂層側に透明樹脂フィルムを貼り合わせてから最初の熱可塑性樹脂フィルム層を剥離除去することにより、透明樹脂フィルム層と染色されたポリビニルアルコール樹脂層(偏光素子層)との二層からなる薄肉の偏光板を製造することが記載されている。
このように、熱可塑性樹脂フィルム上にポリビニルアルコール樹脂層を塗布によって形成する場合、基材となる熱可塑性樹脂フィルムを上記特許文献1に示されるドラム温度である90℃付近に保ってポリビニルアルコール水溶液を塗布しようとすると、基材フィルムの腰が弱くなって、均一な厚さでポリビニルアルコール樹脂の塗布層を形成することが難しくなる。また、100℃近い高温のポリビニルアルコール樹脂水溶液を塗布することは、塗工液からの水分蒸発による濃度変化も懸念されるところである。そこで、このような場合は特に、室温付近(25℃付近)において、高い濃度であってもポリビニルアルコールの再析出やゲル化がなく、透明性と均一性に優れた水溶液とすることが求められる。
日本合成化学工業株式会社,PVOH樹脂「ゴーセノール」Technical Site,特殊銘柄/高純度PVOH,[online],[平成20年5月7日検索],インターネット <URL: http://www.gohsenol.com/doc/spcl/spcl_01/spcl_08.shtml> 特開2006−233178号公報 特開2000−338329号公報
本発明の課題は、ポリビニルアルコールを100℃近い温度で水に溶解させてポリビニルアルコール水溶液を製造する方法において、ポリビニルアルコールの重合度やケン化度が高い場合であっても、また濃度が高い場合であっても、室温付近まで冷却した状態で再析出やゲル化を生じることなく、透明度と均一性に優れた水溶液を与えうる方法を提供することにある。
本発明者らは、かかる課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明によるポリビニルアルコール水溶液の製造方法は、ポリビニルアルコールを80℃以上の温度で水と混合してポリビニルアルコールを水に溶解させる溶解工程、及び得られる80℃以上の所定温度に保たれたポリビニルアルコール水溶液を10〜40℃の間の所定温度まで冷却する冷却工程を備え、この冷却工程は、下式(1)で定義される冷却速度が1℃/分以上となるように行われることを特徴とするものである。
冷却速度=(冷却開始時の溶液温度−冷却終了時の溶液温度)/冷却時間 (1)
この方法は、重合度が1,700以上、ケン化度が99.3モル%以上であるポリビニルアルコールに対して特に有効である。また、ポリビニルアルコールの濃度が5重量%以上の水溶液を製造するのに有効であり、そのため、上記溶解工程においては、ポリビニルアルコールの濃度が5重量%以上となるように水と混合するのが好ましい。また、上記の冷却工程における冷却速度は、2℃/分以上となるようにするのが好ましい。
本発明の方法によれば、重合度が高い、及び/又はケン化度が高いポリビニルアルコールであっても、またポリビニルアルコールの濃度が10重量%前後と高い場合でも、室温付近まで冷却したときに、ポリビニルアルコールの再析出やゲル化がなく、透明性、均一性及び安定性に優れたポリビニルアルコール水溶液を得ることができる。こうして得られる水溶液は、25℃において厚さ10mmで測定したときのヘイズ値が5%以下のものとなりうる。
以下、本発明の実施の形態を詳しく説明する。ポリビニルアルコールは、前述したとおり、酢酸ビニルの重合体であるポリ酢酸ビニルをケン化することにより得られるが、特に偏光板用途においては、そのケン化度は、通常85〜100モル%程度、好ましくは95モル%以上、より好ましくは98モル%以上、さらに好ましくは 99.3モル%以上である。ケン化度が85モル%よりも低いポリビニルアルコールに対して本発明を適用することに何ら支障はないが、ケン化度の低いポリビニルアルコールであれば、本発明で規定する操作を行わなくても、容易に透明な溶液を得ることができるうえに、ケン化度の低いものは往々にして耐水性が悪いなどの問題点を生じやすい。ここでいうケン化度とは、ポリ酢酸ビニルにおけるアセトキシ基(−OCOCH3 )が水酸基(−OH)に変わっている割合を意味し、具体的には、ポリビニルアルコール中のアセトキシ基と水酸基の合計数に対する水酸基の数の百分率で表される。
ポリビニルアルコールの重合度は、一般に 100〜10,000程度であるが、特に偏光板用途において好ましい範囲は、1,700〜4,000である。重合度が100よりも低いポリビニルアルコールに対して本発明を適用することに何ら支障はないが、重合度の低いポリビニルアルコールは往々にして耐水性が悪いなどの問題点を生じやすい。逆に、重合度が 10,000を超えるポリビニルアルコールは、温度を上げても水への溶解が困難である。
本発明に用いられるポリビニルアルコールは、粉末状で入手することが好ましいが、例えばフィルム状で入手したものから、異なる厚さのフィルムとしたり、所定の基材フィルム上に製膜したり、接着剤として水溶液の状態で使用したりする場合には、そのフィルムを細かく裁断してから、水との混合に供すればよい。
上記のような重合度が高くてケン化度も高いポリビニルアルコールとして、粉末状で販売されているものには、例えば、いずれも(株)クラレの製品である “PVA-117”(重合度1,700、ケン化度98〜99モル%)、“PVA-117H”(重合度1,700、ケン化度99.3モル%以上)、“PVA-124”(重合度2,400、ケン化度98〜99モル%) などがある。またフィルム状で販売されているものには、同じく(株)クラレの製品である“クラレビニロン VF-PS #7500”(重合度2,400、ケン化度99.3モル%以上)などがある。
本発明では、以上のようなポリビニルアルコールを、溶解工程において水に溶解させ、80℃以上の温度の水溶液として得た後、冷却工程において室温付近の所定温度まで冷却することにより、ポリビニルアルコールの再析出やゲル化を伴うことなく、透明性と均一性に優れた水溶液を製造する。以下、これらの工程を順に説明していく。
溶解工程では、80℃以上の温度でポリビニルアルコールと水を混合する。この際、ポリビニルアルコールの濃度は、3〜20重量%程度とするのが好ましい。ポリビニルアルコールのより好ましい濃度は、5重量%以上、さらには7重量%以上であり、また15重量%以下、さらには12重量%以下である。ポリビニルアルコールの濃度があまり小さいと、本発明の方法を適用しなくても安定な水溶液を得ることができるし、低濃度の水溶液からはごく薄い塗膜しか得られないので、延伸して偏光板化するのに必要な厚さの塗膜を得ることが困難になったり、乾燥に時間がかかったりするなどの不具合を生じやすい。このような観点から、ポリビニルアルコールの濃度がなるべく高くなるようにするのが好ましい。一方、ポリビニルアルコールの濃度が高すぎると、本発明の方法を適用しても、室温付近において安定して透明状態を保つことができる水溶液を得ることが困難になる。
また、溶解工程においては、目標の濃度よりも若干高めの濃度となるようにポリビニルアルコールを水と混合し、最後の冷却工程が終わった後に水を加えて、目標の濃度にすることも、有用な技術である。
この溶解工程は、先に示した非特許文献1にも記載されるように、常温の水にポリビニルアルコールを徐々に加えていき、攪拌してよく分散させ、膨潤させた後、攪拌を続けながら80℃以上の温度に昇温し、その温度でさらに所定時間攪拌を続けることにより行うのが好ましい。具体的には、この溶解工程は、常温付近の水とポリビニルアルコールを混合してポリビニルアルコールを水で膨潤させる工程、及びその混合物の温度を80℃以上に昇温し、攪拌してポリビニルアルコールを溶解させる工程を含むことが好ましい。別の表現をすれば、この溶解工程は、ポリビニルアルコールを10〜30℃の水と混合し、次いで80℃以上に昇温することにより行うのが好ましい。
溶解工程において、ポリビニルアルコールを溶解させるときの加熱温度は80℃以上であるが、その上限は、水の沸点である100℃までで十分である。このときの温度は、好ましくは85℃以上、とりわけ85〜95℃の範囲である。このときの温度が80℃を下回ると、ポリビニルアルコールが十分に溶解しないことが多く、均一な溶液を得ることができない。
この溶解工程においては、先にも述べたとおり、ポリビニルアルコールと水の混合物を80℃以上の温度に保って所定時間攪拌し、ポリビニルアルコールを水に溶解させることになるが、その保持時間は、ポリビニルアルコールが完全に水に溶解する時間であればよい。ポリビニルアルコールと水の混合物の量にもよるが、通常は、3時間以上であり、好ましくは5〜24時間程度である。
溶解工程においてポリビニルアルコールを完全に水に溶解させた後は、80℃以上の所定温度に保たれているポリビニルアルコール水溶液を冷却工程に付して、10〜40℃の間の所定温度まで冷却する。そしてこの冷却工程においては、前記式(1)で定義される冷却速度が1℃/分以上となるように急冷する。このとき、冷却後の温度が40℃を上回る、すなわち40℃を超える温度で冷却を止めると、そこから室温まで徐冷されてしまうため、ゲル化や再析出が起こるなどの不具合を生じやすい。一方、10℃を下回る温度まで冷却してしまうと、ポリビニルアルコールの水に対する溶解度が足りなくなり、ポリビニルアルコールの再析出が起こる不具合を生じやすい。この冷却工程における冷却後の水溶液温度は、室温付近、特に10〜30℃の範囲の所定温度とするのが、より好ましい。
また、この冷却工程においては、上記のとおり、前記式(1)で定義される冷却速度が1℃/分以上となるように急冷するのであるが、このときの冷却速度が1℃/分を下回ると、ポリビニルアルコール水溶液がゲル化してしまい、透明で均一な溶液を得ることができなくなる。このときの冷却速度は、2℃/分以上となるようにするのがより好ましい。冷却速度の上限は特に限定されないが、冷却速度をあまり大きくしようとすると、冷却のための設備や冷媒にコストがかかるので、一般には10℃/分程度までで十分である。
このときの冷却速度は前記式(1)で定義されるものであり、その式(1)において、「冷却開始時の溶液温度」とは、溶解工程において80℃以上の所定温度に保たれているポリビニルアルコール水溶液の冷却を開始するときの温度であり、通常は、上記溶解工程の最終段階において保たれている80℃以上の所定温度がこれに該当する。また、「冷却終了時の溶液温度」とは、冷却を終了してポリビニルアルコール水溶液が10〜40℃、好ましくは10〜30℃の間の所定温度になったときの当該所定温度を意味する。「冷却時間」とは、冷却開始から冷却終了までに要する時間である。
例えば、溶解工程において90℃のポリビニルアルコール水溶液を調製し、それを25℃まで冷却する場合(温度差65℃)、冷却速度が1℃/分以上とは、90℃のポリビニルアルコール水溶液の温度を65分以内に25℃まで下げることを意味し、冷却速度が2℃/分以上とは、90℃のポリビニルアルコール水溶液の温度を 32.5分以内に25℃まで下げることを意味する。
このときの冷却方法としては、例えば、ポリビニルアルコール水溶液が入っているタンクを、冷媒が収容されたタンクに漬け、外側の冷却用タンクに冷媒の供給を続けながら強制的に冷却する方法、ポリビニルアルコール水溶液が入っているタンクの周囲に冷却用の配管を巡らせ、その配管に冷媒を流しながら強制的に冷却する方法、ポリビニルアルコール水溶液が入っているタンクの中に冷却用の配管を施しておき、そこに冷媒を流しながら強制的に冷却する方法など、冷却のための熱交換に用いられる一般的な方法を採用することができる。冷媒としては、氷水、鹹水(塩水)などが挙げられるが、工業的には鹹水が好ましい。
また冷却工程における冷却速度は、冷却開始から冷却終了まで一定であってもよいし、変化していてもよいが、少なくとも、途中で温度がほぼ一定に保たれる状態や温度が一時的に上がる状態がないように冷却するのが好ましい。すなわち、時間変化に伴って連続的に温度が下がるようにしておくことが好ましい。
こうして大きい冷却速度で急冷することにより、ポリビニルアルコールの再析出やゲル化がなく、透明性と均一性に優れたポリビニルアルコール水溶液を安定して得ることができる。この水溶液は、先にも述べたとおり、25℃において厚さ10mmで測定したときのヘイズ値が5%以下のものとすることができる。また、この水溶液の粘度は、ポリビニルアルコールの濃度によって異なるが、概ね2Pa・sec以下とすることができる。
以下、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、これは本発明の一例を示すだけであり、本発明は以下の例によって限定されるものではない。
[実施例1]
室温(25℃)の水を1.35kg入れた2リットル容量の容器に、ケン化度が99.3モル%で重合度が 1,700のポリビニルアルコール〔(株)クラレ製の“PVA-117H”〕を0.15kg 加えた(固形分濃度10重量%)。そして、プロペラ翼を有するメカニカルスターラ〔新東科学(株)製の“HEIDON スリーワンモータ BL1200”〕を用いて 1,000rpm の回転速度で内容物を3時間攪拌し、ポリビニルアルコールを膨潤させた。その後攪拌を続けながら90℃まで昇温し、その温度を保ったまま引き続き10時間攪拌して、ポリビニルアルコールを溶解させた。温度は、上記の容器を加熱装置付きの水浴(ウォーターバス)に浸漬することにより調節した。溶解後、ポリビニルアルコール水溶液の攪拌を続けながら、水浴中に氷を入れ続けて冷却し、水溶液の温度が25℃になったところで冷却を止めた。90℃から25℃になるまで約30分を要した。したがってこのときの冷却速度は、約2℃/分〔≒(90℃−25℃)/30分〕と計算される。
得られたポリビニルアルコール水溶液は透明であり、この溶液を内部厚みが10mmのホウケイ酸ガラスセルに入れ、ヘイズメーター〔日本電色工業(株)製の“NDH 2000”〕を用いて25℃におけるヘイズ値を測定したところ、3%であった。また、B型粘度計〔東機産業(株)社製の“TVB-10”〕のM3ローターを用いて、回転数60rpm で粘度を測定したところ、この水溶液の粘度は1.1Pa・sec(1,100cP)であった。
[比較例1]
ポリビニルアルコールの溶解までは実施例1と同様に行い、その後、水浴の加熱を中止し、容器を水浴に漬けたまま自然冷却したところ、水溶液温度が90℃から25℃になるまで約2時間を要した。したがってこのときの冷却速度は、約 0.5℃/分〔≒(90℃−25℃)/120分〕と計算される。冷却後の溶液はゲル化し、白濁していた。このゲル状溶液につき、実施例1と同じ方法でヘイズと粘度を測定したところ、ヘイズは76%であり、粘度は2Pa・sec(2,000cP)(測定限界)を超えていた。
[比較例2]
ポリビニルアルコールの溶解までは実施例1と同様に行い、その後、実施例1と同様、水浴中に氷を入れ続けて、容器内のポリビニルアルコール水溶液の温度が5℃になるまで冷却した。冷却後の溶液自体は透明であったものの、白い粉末が浮遊しており、ポリビニルアルコールが再析出していた。
本発明によれば、高い濃度であっても、室温付近において再析出やゲル化がなく、透明性と均一性に優れた安定なポリビニルアルコール水溶液が得られる。したがって本発明の方法は、室温付近において高い濃度のポリビニルアルコール水溶液を扱うことが望まれる分野において有用であり、例えば、基材フィルム上にポリビニルアルコールの塗布膜を形成し、基材フィルムごと延伸して染色し、偏光板を製造する方法において、ポリビニルアルコールの塗布膜を所定厚みで安定的に形成するのに、有利に用いることができる。

Claims (4)

  1. ポリビニルアルコールを80℃以上の温度で水と混合してポリビニルアルコールを水に溶解させる溶解工程、及び
    得られる80℃以上の所定温度に保たれたポリビニルアルコール水溶液を10〜40℃の間の所定温度まで冷却する冷却工程を備え、
    該冷却工程は、下式(1):
    冷却速度=(冷却開始時の溶液温度−冷却終了時の溶液温度)/冷却時間 (1)
    で定義される冷却速度が1℃/分以上となるように行われることを特徴とする、ポリビニルアルコール水溶液の製造方法。
  2. ポリビニルアルコールは、重合度が1,700以上、ケン化度が99.3モル%以上であり、溶解工程において5重量%以上の濃度となるように水と混合する請求項1に記載の方法。
  3. 溶解工程は、ポリビニルアルコールを10〜30℃の水と混合し、次いで80℃以上に昇温することにより行われる請求項1又は2に記載の方法。
  4. 冷却工程は、前記冷却速度が2℃/分以上となるように行われる請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
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