JP5145639B2 - 活性エネルギー線硬化性水中油型エマルジョン組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、紫外線、電子線などの活性エネルギー線により硬化する活性エネルギー線硬化性水中油型エマルジョン組成物に関し、より詳細には、硬化膜物性、貯蔵安定性に優れた活性エネルギー線硬化性水中油型エマルジョン組成物に関する。
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、溶剤を含有していないため安全性に優れるほか、硬化性に優れるため生産性、省エネルギーの観点からも特長を有するものとして一般的に認識されている。かかる特性に照らし、各種プラスチックフィルム用オーバーコート剤、木工用塗料、印刷インキなどの各種コーティングや接着剤などの有効成分として採用されている。
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の一つとして、ポリエステルジオールやポリエーテルジオールなどのジオール化合物、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなどの有機ポリイソシアネート化合物およびヒドロキシエチルアクリレートなどの水酸基含有(メタ)アクリレートなどを主原料とし、これらをウレタン化反応させて得られる各種のポリウレタンアクリレートが知られている。
該ポリウレタンアクリレートは一般的に粘度が高いため、特に低粘度化や塗工適性を高めることが要求される場合には、反応性希釈剤を多量に使用したり、有機溶剤を用いるなどの便法が採られている。しかしながら、反応性希釈剤を使用した場合には、得られる組成物の硬化性低下や皮膚刺激性の問題が生じ易く、また有機溶剤を用いる場合には大気汚染や火災の危険性が高くなる。そのため、有機溶剤を含まず、かつ、反応性希釈剤を多量に含まない活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の開発が求められている。
前記問題の解決策として、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の水性化につき種々検討されている。該水性化方法としては、水可溶性の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を用いる方法と、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を水中に乳化分散する方法が一般的である。
活性エネルギー線樹脂組成物を水可溶化する場合には、水に溶解する性能を該樹脂に付与するために該樹脂構造が限定されてしまい、各種用途に広範囲に適用できないという不利がある。
一方、乳化分散する方法としては、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に乳化性を付与する方法と、乳化剤を使用して活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を乳化する方法とがある。前者の方法として、特許文献1には、アミノ化合物で中和されたカルボキシル基およびオキシアルキレン基を有する多官能ウレタンアクリレート、光重合開始剤、ならびに水を含んでなる光硬化性樹脂組成物が記載されている。また特許文献2には、カルボキシル基含有ウレタン(メタ)アクリレートを、水混和率が100重量%以上である水溶性反応性希釈剤の存在下で製造した後、該カルボキシル基をアミン類で中和してアミン塩とし、さらに水を加え、乳化することにより得られる水性活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が開示されている。しかしながら、特許文献1、2記載の発明では、樹脂中に親水性の酸性基を多く含まれるためプラスチックへの密着性が低いといった欠点がある。
後者の方法として、例えば、ポリウレタンアクリレート、エポキシアクリレートから選ばれる硬化性オリゴマーの少なくとも1種を反応性乳化剤の存在下に、水溶媒中に分散させてなる水分散型硬化性樹脂組成物を用いる方法が開示されている(特許文献3参照)。当該組成物は、25℃での保存安定性は比較的優れているものの、より高温(例えば40℃)での保存安定性は不十分である。
特開平11−209448号公報 特開平11−279242号公報 特開2000−159847号公報
本発明は、水系活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に関する前記実情に鑑み、非水系の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に比べて遜色のない硬化膜物性を有し、保存安定性に優れた活性エネルギー線硬化性水中油型エマルジョン組成物を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく、用いる反応性乳化剤および乳化方法に着目して鋭意研究を重ねた結果、以下に示す特定の活性エネルギー線硬化性水中油型エマルジョン組成物により、前記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、反応性乳化剤(A)3〜15重量%、有機ポリイソシアネート(b2)とペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート(b1)との反応生成物であるポリウレタン(メタ)アクリレート(B)70〜94重量%、ならびに水酸基含有アクリル酸エステル(c1)、有機ポリイソシアネート類(c2)および一般式(1):H―(OCHCH−OR(式中、Rはメチル基またはエチル基を、nは3〜25の整数を示す。)で表されるポリエチレングリコール類(c3)からなる反応生成物である光重合性乳化助剤(C)3〜15重量%(但し、成分(A)、(B)および(C)の合計が100重量%)を必須成分として含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化性水中油型エマルジョン組成物に関する。
本発明の活性エネルギー線硬化性水中油型エマルジョン組成物は、保存安定性に優れ、さらに非水系の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に比べて遜色のない硬化膜物性を有しており、紙、ガラス、各種プラスチックフィルム用のオーバーコート剤、印刷インキ、木工塗料等の各種用途に適用できる。特に、本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、プラスチック成形物に耐擦傷性、耐薬品性、透明性等の諸性能を付与しうるプラスチック用ハードコーティング剤として有用である。
反応性乳化剤(A)としては、格別限定されず、ラジカル反応性を有するイオン性または非イオン性の各種公知の界面活性剤が使用できる。反応性乳化剤(A)の具体例としては、スチレンスルホン酸塩、イソプレンスルホン酸塩、ポリオキシエチレン−1−(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンノニルプロペニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルプロペニルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアリルグリシジルノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアリルグリシジルノニルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアリルグリシジルアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアリルグリシジルアルキルエーテル硫酸エステル塩、アリルアルキルスルホコハク酸グリセリンエーテル塩、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ビス(ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル)メタクリレート硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルコハク酸等が挙げられ、より具体的には、アクアロンKH−05、KH−05、KH−10、HS−10、HS−20、BC−05、BC−10、BC−20、RN−10、RN−20(第一工業製薬(株)製)、アデカリアソープNE−10、NE−20、NE−30、SE−10N、SR−10、SR−20、ER−10、ER−20、ER−40(旭電化工業(株))、ラテムルS−180、S−180A、PD−104、PD−420、PD−430、PD−450(花王(株)製)、アントックスMS−60、RA−1820、RA−2320(日本乳化剤(株)製)などの市販品を挙げることができる。
本発明に用いられるポリウレタン(メタ)アクリレート(B)は、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート(b1)と、有機ポリイソシアネート化合物(b2)を公知の方法で反応させて得られる。
有機ポリイソシアネート化合物(b2)としては、各種ポリウレタンアクリレートに使用されている各種公知の芳香族、脂肪族及び脂環族のイソシアネート類であって、該分子内に反応性のイソシアネート基を2個以上有する有機ポリイソシアネート類が該当する。たとえば、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4’−ジベンジルイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、ブタン−1,4−ジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート等や、それらジイソシアネートから得られる3量体、該ジイソシアネート類をトリメチロールプロパンなどの多価アルコールと反応させたプレポリマー、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートなどが挙げられ、これらはいずれも単独使用したり、2種以上を適宜に組み合わせて使用できる。
前記成分の使用割合は特に限定されるものではないが、成分(b1)の水酸基と成分(b2)のイソシアネート基との当量比[(b1)/(b2)]が1以下の場合は該反応生成物の分子末端にイソシアネート基が残る場合がある。一方、該当量比[(b1)/(b2)]が1を超える場合は、成分(b1)が反応性希釈剤として使用しうるため、該当量比の上限が格別に限定されるものではない。
本発明のポリウレタン(メタ)アクリレート(B)の(メタ)アクリル当量は、格別限定されないが、2×10−3〜9×10−3eq/gであることが好ましく、さらに好ましくは5×10−3〜8×10−3eq/gである。ポリウレタン(メタ)アクリレート(B)の(メタ)アクリル当量が2×10−3に満たない場合には硬化膜の耐傷つき性が不十分となる傾向があり、また9×10−3eq/gを超える場合は当該樹脂の設計が困難となる傾向がある。
本発明のポリウレタン(メタ)アクリレート(B)を製造する方法としては、特に限定されないが、前記の成分(b1)、成分(b2)を同時、または分割して仕込み、ウレタン化反応させることにより目的とするポリウレタン(メタ)アクリレート(B)が得られる。反応温度は40〜100℃程度、好ましくは60〜80℃であり、全反応時間は4〜12時間程度である。上記のウレタン化反応に際しては、反応促進のためにオクチル酸第一スズなどの公知のウレタン化触媒を使用するのが好ましい。また、ウレタン化反応に際しては、成分(a1)の重合を防止するため、ハイドロキノン、メトキシフェノール、フェノチアジンなどの重合防止剤を反応系に対して10〜5000ppm程度、好ましくは50〜2000ppm程度を用いたり、エアーシールを行うのがよい。
本発明のポリウレタン(メタ)アクリレート(B)には、硬化後の塗膜物性を調節する目的で、皮膚刺激性やエマルジョン組成物の安定性に悪影響を及ぼさない範囲で、一分子中に一つ以上のエチレン性不飽和結合を有する不飽和単量体を含有させることができる。不飽和単量体の例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリ(繰り返し数1〜3)プロポキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリ(繰り返し数1〜3)エトキシ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールポリ(繰り返し数1〜4)プロポキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールポリ(繰り返し数1〜4)エトキシテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(繰り返し数1〜6)プロポキシヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(繰り返し数1〜6)エトキシヘキサ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらは、いずれも単独使用、または2種以上を適宜に組み合わせて使用できる。
本発明で用いられる光重合性乳化助剤(C)は、水酸基含有アクリル酸エステル(c1)、有機ポリイソシアネート類(c2)、後述する特定のポリエチレングリコール類(c3)からなる反応生成物である。成分(c1)は、該分子中に少なくとも1個の水酸基と少なくとも1個の(メタ)アクリロイル基を有する各種のものが該当する。成分(c1)の具体例としては、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどの2−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシプロピル(メタ)アクリレートなどの2−アラルキルオキシプロピル(メタ)アクリレート類、ペンタエリスリトールトリアクリレートなどが挙げられ、これらはいずれも単独使用または2種以上を適宜に組み合わせて使用できる。成分(c1)の使用量は、格別限定されないが、光重合性乳化助剤(C)中の成分(c1)と成分(c2)との合計量に対し、通常は25〜70重量%程度、好ましくは30〜65重量%である。
成分(c2)としては、該分子内に反応性のイソシアネート基を2個以上有する有機ポリイソシアネート類が該当する。成分(c2)の具体例としては、例えば1,6−ヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなどの各種ジイソシアネート及びこれらのジイソシアネートから得られる3量体、該イソシアネート類をトリメチロールプロパンなどの多価アルコールと反応させたプレポリマー、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートなどが挙げられる。成分(c2)の使用量は、格別限定されないが、得られる組成物中の成分(c1)、(c2)および(c3)の合計量に対し、通常は30〜75%、好ましくは35〜70重量%である。
成分(c3)としては、下記一般式(1):H―(OCHCH−OR(式中、Rはメチル基またはエチル基を、nは3〜25の整数を示す。)で表されるポリエチレングリコール類を用いる。さらに好ましくはnが8〜23のものである。一般式(1)において、nが3未満の場合は、光重合性乳化助剤(C)の親水性が弱まり保存安定性の付与効果が十分ではなく、nが25を超える場合は光重合性補助剤の親水性が高まり過ぎ、得られる硬化膜の耐水性、密着性が低下する傾向にある。また、一般式(1)のRはメチル基またはエチル基であることが好ましい。Rがエチル基より多い炭素数のアルキル基となると、一般式(1)のポリエチレングリコール類により付与される光重合性乳化助剤の親水基末端の疎水性基が高まるため、当該乳化助剤の乳化力が低下し、保存安定性の付与効果が弱まる傾向にある。
成分(c3)の使用量は、特に限定されないが、通常は重量比率で(c3)/{(c1)+(c2)}=0.2〜0.6の条件を満足するのがよい。該比率が0.2に満たない場合には、得られるエマルジョン安定性の向上効果が不十分となる傾向がある。また、0.6を超える場合には、架橋密度の低下により得られる組成物の活性エネルギー線硬化が不十分となる傾向があり、また十分硬化させた場合でも該皮膜の耐水性が低下する傾向がある。
光重合性乳化助剤(C)の製造法については格別限定されないが、例えば次の方法を採用できる。まず、成分(c1)と成分(c2)を前記使用割合で反応させ、遊離イソシアネート基を有するプレポリマーを得た後、該プレポリマーと成分(c3)を前記使用割合で反応させればよい。反応温度は40〜100℃、好ましくは60〜80℃である。上記ウレタン化反応に際しては、オクチル酸第一スズなどの公知のウレタン化触媒を使用するのが好ましい。また、ウレタン化反応に際し、成分(c1)の重合を防止するために、ハイドロキノン、メトキシフェノール、フェノチアジンなどの重合防止剤を反応系に対して10〜5000ppm程度、好ましくは50〜2000ppm使用したり、エアーシールを行うのがよい。
本発明の活性エネルギー線硬化性水中油型エマルジョン組成物における、反応性乳化剤(A)、ポリウレタン(メタ)アクリレート(B)および光重合性乳化助剤(C)の各配合割合は、反応性乳化剤(A)が3〜15重量%、ポリウレタン(メタ)アクリレート(B)が70〜94重量%、光重合性乳化助剤(C)が3〜15重量%(但し、(A)、(B)および(C)の合計が100重量%)であり、好ましくは、反応性乳化剤(A)が5〜10重量%、ポリウレタン(メタ)アクリレート(B)が80〜90重量%、光重合性乳化助剤(C)が5〜10重量%である。反応性乳化剤(A)の配合量が3重量%未満では安定なエマルジョンが得られ難くなり、15重量%を超える場合は得られる硬化皮膜の耐水性が低下したり、プラスチックへの密着性が低下する等の傾向がある。ポリウレタン(メタ)アクリレート(B)が70重量%未満では硬化膜物性、密着性が低下する傾向があり、94重量%を超える場合はエマルジョンの安定性が低下する傾向がある。また光重合性乳化助剤(C)が3重量%未満では安定なエマルジョンが得られ難くなり、15重量%を超える場合は得られる硬化皮膜の耐水性が低下したり、プラスチックへの密着性が低下する等の傾向がある。
本発明のエマルジョン組成物の製造法は、特に制限されないが、例えば、次のような方法を採用できる。攪拌装置を備えた容器内に前記成分(A)、(B)および(C)を前記所定量つ一括して仕込み、次いで攪拌下に水を加えて乳化分散する方法;前記成分(A)および(B)を前記所定量つ一括して仕込み、次いで攪拌下に水を加えて乳化分散した後に成分(C)を加える方法が挙げられる。乳化分散方法は、格別限定されず、例えば強制乳化法、超音波乳化法、転相乳化法などの各種公知の方法を採用できる。転相乳化法の一例を示すと、攪拌装置を有する容器に前記成分(A)、(B)および(C)をそれぞれ所定量仕込み、攪拌下に徐々に水を滴下することにより、油中水滴型エマルジョンから水中油滴型エマルジョンへ転相させる。該系内温度は60℃以下とすることが好ましく、60℃を超える場合には油中水滴型エマルジョンから水中油滴型エマルジョンへの転相が円滑に進行せず、目的とする水中油型エマルジョン組成物が得られ難い。いずれの乳化法においても、水の使用量は格別限定されないが、エマルジョン中の成分(A)〜(C)の合計含有量が低くなるに従い塗工後の水の乾燥に長時間を要することから、該成分の合計濃度が40重量%程度以上となるような使用量とするのがよく、また該成分(A)〜(C)の合計含有量が高くなるに従い得られるエマルジョン組成物の粘度が高くなることから、該成分の合計濃度が70重量%程度以下となるような使用量とするのがよい。

こうして得られた活性エネルギー線硬化性水中油型エマルジョン組成物は、活性エネルギー線として電子線等により当該組成物を硬化させる場合には光重合開始剤は不要であるが、紫外線により硬化させる場合には、当該組成物固形分100重量部に対して、通常、光重合開始剤1〜15重量部程度を含有することができる。光重合開始剤としては、ダロキュアー1173、イルガキュアー651、イルガキュアー184、イルガキュアー907、イルガキュアー754(チバスペシャリティーケミカルズ社製商品名)、ベンゾフェノン等の各種公知のものを使用できる。また、必要に応じて、上記以外の各種添加剤、例えば、重合禁止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、レベリング剤が挙げられる。場合によっては、顔料、充填剤、ケイ素化合物等を本発明の目的を逸脱しない範囲で目的に応じて含有してもよい。
上記のようにして得られる本発明の活性エネルギー線硬化性水中油型エマルジョン組成物は、優れた硬化膜物性、保存安定性を有するため、従来公知の非水系活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の使用されていた各種用途、例えば紙、ガラス、各種プラスチックフィルム用のオーバーコート剤、印刷インキ、木工塗料、プラスチック成形物に耐擦傷性、耐薬品性、透明性等の諸性能を付与しうるプラスチック用ハードコーティング剤として使用できる。なお、プラスチック成形物としては、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂やポリオレフィン樹脂等の各種のプラスチック成形物があげられる。具体的には、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、スチレン−メチルメタクリレート共重合体、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド、ポリメチルペンテンまたはポリエーテルスルホン等の種々形状の成形物、シート状物が挙げられる。
以下に製造例、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、各例中、部および%はいずれも重量基準である。
製造例1
攪拌機、温度計、還流冷却器を備えたフラスコに、ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体(日本ポリウレタン(株)製、商品名「コロネートHX」)253.2部、ペンタエリスリトールトリアクリレート(大阪有機化学工業(株)製、商品名「ビスコート300」)450.2部、p−メトキシフェノール1.1部を仕込んだ。次いで、攪拌を行いながらオクチル酸第一スズ0.2部を仕込み、系内を75〜80℃まで昇温し、1.5時間保温した後、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(東邦化学工業(株)製、商品名「メトキシPEG#1000」)295.5部を加え、前記ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体中の残余イソシアネート基とポリエチレングリコールモノメチルエーテル中の水酸基とを反応させ、光重合性乳化助剤(C)−1を得た。
製造例2
製造例1で用いたと同様のフラスコに、ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体(前記商品名「コロネートHX」)320.8部、ペンタエリスリトールトリアクリレート(前記商品名「ビスコート300」)570.8部、p−メトキシフェノール1.1部を仕込んだ。次いで、攪拌を行いながらオクチル酸第一スズ0.2部を仕込み、系内を75〜80℃まで昇温し、1.5時間保温した後、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(前記商品名「メトキシPEG#1000」)107.1部、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(東邦化学工業(株)製、商品名メトキシPEG#400)110.4部を加え、前記ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体中の残余イソシアネート基とポリエチレングリコールモノメチルエーテル中の水酸基とを反応させ、光重合性乳化助剤(C)−2を得た。
製造例3
製造例1で用いたと同様のフラスコに、ペンタエリスリトールトリアクリレート(前記商品名「ビスコート300」)731.4部、イソホロンジイソシアネート267.1部およびp−メトキシフェノール9.7部を仕込み、次いで攪拌下にオクチル酸第一スズ1.5部を仕込み、系内を75〜80℃まで昇温し、3時間保温することにより、アクリル当量が7.4×10−3eq/gのポリウレタンアクリレート(B)を得た。なお、ウレタン化反応の終点確認は、イソシアネート基の消滅をIR測定して行った。
実施例1
温度計、還流冷却装置および攪拌機を備えたフラスコに、製造例3で得たポリウレタンアクリレート(B)500部、ペンタエリスリトールトリアクリレート(前記商品名「ビスコート300」)400部、製造例1で得た光重合性乳化助剤(C)−1を50部、および反応性乳化剤(花王(株)製、商品名「ラテムルPD−430」)50部を加え、攪拌しながら40℃まで昇温した。次いで40℃に保温しながら、攪拌下で脱イオン水1000部を攪拌下に滴下し、固形分50%のエマルジョンを得た。
実施例2
実施例1で用いたと同様のフラスコに、製造例3で得たポリウレタンアクリレート(B)240部、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(荒川化学工業(株)製、商品名「ビームセット710」)560部、製造例1で得た光重合性乳化助剤(C)−1を100部、および反応性乳化剤(前記商品名「ラテムルPD−430」)100部を加え、攪拌しながら40℃まで昇温した。次いで40℃に保温しながら、攪拌下で脱イオン水1000部を攪拌下に滴下し、固形分50%のエマルジョンを得た。
実施例3
実施例1で用いたと同様のフラスコに、製造例3で得たポリウレタンアクリレート(B)616部、トリメチロールプロパンテトラアクリレート(荒川化学工業(株)製、商品名「ビームセット730」)264部、製造例2で得た光重合性乳化助剤(C)−2を50部、および反応性乳化剤(花王(株)製、商品名「ラテムルPD−420」)70部を加え、攪拌しながら40℃まで昇温した。次いで40℃に保温しながら、攪拌下で脱イオン水1000部を攪拌下に滴下し、固形分50%のエマルジョンを得た。
実施例4
実施例1で用いたと同様のフラスコに、製造例3で得たポリウレタンアクリレート(B)340部、ペンタエリスリトールトリアクリレート(前記商品名「ビスコート300」)510部、製造例2で得た光重合性乳化助剤(C)−2を100部、および反応性乳化剤(旭電化工業(株)製、商品名「アデカリアソープER−40」、固形分60%)83.3部を加え、攪拌しながら40℃まで昇温した。次いで40℃に保温しながら、攪拌下で脱イオン水983.7部を攪拌下に滴下し、固形分50%のエマルジョンを得た。
比較例1
実施例1で用いたのと同様のフラスコに、製造例3で得たポリウレタンアクリレート(B)500部、ペンタエリスリトールトリアクリレート(前記商品名「ビスコート300」)400部、および反応性乳化剤(前記商品名「ラテムルPD−430」)100部を加え、攪拌しながら40℃まで昇温した。次いで40℃に保温しながら、攪拌下で脱イオン水1000部を攪拌下に滴下し、固形分50%のエマルジョンを得た。
比較例2
実施例1で用いたのと同様のフラスコに、製造例3で得たポリウレタンアクリレート(B)500部、ペンタエリスリトールトリアクリレート(前記商品名「ビスコート300」)400部、および製造例1で得た光重合性乳化助剤(C)−1を100部加え、攪拌しながら40℃まで昇温した。次いで40℃に保温しながら、攪拌下で脱イオン水1000部を攪拌下に滴下したが、攪拌を停止したと同時にエマルジョンの分離が観察された。
比較例3
実施例1で用いたと同様のフラスコに、製造例3で得たポリウレタンアクリレート(B)428部、ペンタエリスリトールトリアクリレート(前記商品名「ビスコート300」)342部、製造例1で得た光重合性乳化助剤(C)−1を50部、および反応性乳化剤(花王(株)製、商品名「ラテムルPD−430」)180部を加え、攪拌しながら40℃まで昇温した。次いで40℃に保温しながら、攪拌下で脱イオン水1000部を攪拌下に滴下し、固形分50%のエマルジョンを得た。
比較例4
実施例1で用いたと同様のフラスコに、製造例3で得たポリウレタンアクリレート(B)428部、ペンタエリスリトールトリアクリレート(前記商品名「ビスコート300」)342部、製造例1で得た光重合性乳化助剤(C)−1を180部、および反応性乳化剤(花王(株)製、商品名「ラテムルPD−430」)50部を加え、攪拌しながら40℃まで昇温した。次いで40℃に保温しながら、攪拌下で脱イオン水1000部を攪拌下に滴下し、固形分50%のエマルジョンを得た。
前記実施例および比較例における各エマルジョン組成物の組成を表1に示す。
Figure 0005145639
表1中、
PD430:花王(株)製、商品名「ラテムルPD−430」
PD420:花王(株)製、商品名「ラテムルPD−420」
ER40: 旭電化工業(株)製、商品名「アデカリアソープER−40」
VC300:大阪有機化学工業(株)製、商品名「ビスコート300」
BS710:荒川化学工業(株)製、商品名「ビームセット710」
BS730:荒川化学工業(株)製、商品名「ビームセット730」
含有率(%):固形分換算
を示す。
(保存安定性試験)
実施例、比較例で得られたエマルジョンを40℃で1か月間放置した後、エマルジョンの外観を目視観察した。結果を表1に示す。
○:エマルジョン分離なし
△:若干の分離が見られる
×:エマルジョン分離
併せて粘度、粒子径も測定し、その変化を比較した。粘度は、B型粘度計を使用し、25℃、30rpmで測定した。粒子径は、島津製作所製のレーザー回折式粒度分布測定装置(商品名「SALD−2000」)を使用して測定した。
(硬化膜物性の試験)
ワニスの調製:実施例、比較例で得られたエマルジョンをビーカーに100部を量りとり、光重合開始剤(チバスペシャリティーケミカルズ社製、商品名「イルガキュア754」)を固形分に対し5%加え、混合、溶解しワニスを調製し、以下の試験を行った。結果を表2に示す。
耐傷つき性:各ワニスをガラス板上にバーコーター#9で塗布し、80℃の、80℃の循風乾燥機中で2分間乾燥し、その後、高圧水銀灯80W/cm(1灯)、照射距離10cm、ベルトスピード10m/分の条件で3回照射(照射線量180mJ/cm2)した塗膜を300gのおもりの底に10mm×10mmの範囲に付けたスチールウールで50回擦り、外観を観察し、以下の基準で評価した。
○:変化無し
△:細かいキズ有り
×:大きなキズ有
密着性:各ワニスをアクリル板上にバーコーター#9で塗布し、80℃の、80℃の循風乾燥機中で2分間乾燥し、その後、高圧水銀灯80W/cm(1灯)、照射距離10cm、ベルトスピード10m/分の条件で3回照射(照射線量180mJ/cm2)した塗膜をクロスカットし、セロハンテープ剥離試験を行い、試験片の状態を以下の基準で評価した。
○:剥離せず、欠けも生じない
△:欠けがわずかに見られる
×:組成物硬化被膜完全剥離、大部分剥離
耐水性:各ワニスをアクリル板上にバーコーター#9で塗布し、80℃の、80℃の循風乾燥機中で2分間乾燥し、その後、高圧水銀灯80W/cm(1灯)、照射距離10cm、ベルトスピード10m/分の条件で3回照射(照射線量180mJ/cm2)した塗膜を50℃の温水中に1週間浸漬した後、外観変化を観察した。
○:変化なし
△:やや白濁
×:白濁
Figure 0005145639
表2中、−とは測定しなかったことを意味する。
表2に示すように光重合性乳化助剤(C)を使用しない場合(比較例1)は粘度、粒子径の変化が大きく40℃での保存安定性が劣っていることが確認できた。反応性乳化剤(A)を使用しない場合(比較例2)にはエマルジョンを得ることができなかった。反応性乳化剤(A)の使用量が多い場合(比較例3)、光重合性乳化助剤(C)の使用量が多い場合(比較例4)には耐傷つき性、密着性の低下が確認された。

Claims (3)

  1. 反応性乳化剤(A)3〜15重量%、有機ポリイソシアネート(b2)とペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート(b1)との反応生成物であるポリウレタン(メタ)アクリレート(B)70〜94重量%、ならびに水酸基含有アクリル酸エステル(c1)、有機ポリイソシアネート類(c2)および一般式(1):H―(OCHCH−OR(式中、Rはメチル基またはエチル基を、nは3〜25の整数を示す。)で表されるポリエチレングリコール類(c3)からなる反応生成物である光重合性乳化助剤(C)3〜15重量%(但し、成分(A)、(B)および(C)の合計が100重量%)を必須成分として含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化性水中油型エマルジョン組成物。
  2. ポリウレタン(メタ)アクリレート(B)の(メタ)アクリル当量が2×10−3〜9×10−3eq/gである請求項1に記載の活性エネルギー線硬化性水中油型エマルジョン組成物。
  3. 反応性乳化剤(A)、ポリウレタン(メタ)アクリレート(B)および光重合性乳化助剤(C)の合計含有量が当該組成物中で40〜70重量%である請求項1または2に記載の活性エネルギー線硬化性水中油型エマルジョン組成物。
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