JP5144854B2 - 蛍光体および蛍光表示装置 - Google Patents

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Description

本発明は、蛍光体およびこれを発光源として備えた蛍光表示装置に関する。
例えば蛍光表示管(Vacuum Fluorescent Display:VFD)等の蛍光表示装置に用いられる低速電子線で励起発光させる赤色発光蛍光体として、従来からZn1-xCdxS(以下、ZnCdSと表記する)系蛍光体が使用されてきた。近年、環境問題からCd(カドミウム)等の有害元素の使用が規制されてきており、ZnCdS系蛍光体もそのような規制の対象となっている。また、硫化物であるZnCdS系蛍光体が電子線照射により分解されると、飛散したS(硫黄)によって電子源である酸化物カソードの電子放出能力が低下させられる問題もある。なお、本願において「低速電子線」は、特に断らない限り、VFDに好適な10〜100(V)程度の電圧で加速されたものをいう。
そこで、CdおよびSを含まない酸化物系低速電子線用赤色蛍光体として、アルカリ土類金属とTi(チタン)の酸化物から成る母体に希土類元素および三族元素を添加したものが提案されている。上記アルカリ土類金属は、例えばMg、Sr、Ca、Baであり、希土類元素は例えばCe、Pr、Eu、Tb、Er、Tm、三族元素は例えばAl、Ga、In、Tlであり、典型的な組成例としては、例えば、SrTiO3:Pr,Alが挙げられる。ここで、「:」の左側の化合物は蛍光体母体と称されるもので、右側の元素(Pr,Al)は母体に添加された賦活材やフラックスなどの成分である。このSrTiO3系の蛍光体は、ZnCdS系蛍光体に比較すると対環境性は好ましいものの、輝度が比較的低くしかも輝度劣化が激しく寿命が短い問題がある。なお、本願において寿命は輝度が初期の半分に低下するまでの時間すなわちハーフライフである。
特開2006−282703号公報 特開昭52−104484号公報 特開平10−077469号公報 特開昭61−293287号公報
これに対して、本願出願人は、先にCa1-xSrxTiO3:Pr,Li蛍光体やCa1-xSrxTiO3:Pr,Zn,Li蛍光体を提案した(例えば、前記特許文献1を参照。)。この蛍光体によれば、従来は高速電子線や紫外線で励起しなければ高輝度を得ることのできなかったCaTiO3系蛍光体をベースとしながら、低速電子線で励起しても前記SrTiO3系蛍光体に比較して高輝度が得られ、且つそのSrTiO3系蛍光体よりも劣化し難い利点がある。
しかしながら、上記Ca1-xSrxTiO3:Pr,Li蛍光体等においても、高輝度を得るためには未だ励起電圧を比較的高くする必要があり、その一方、励起電圧を高くするほど輝度劣化が著しくなる問題があった。例えば、200(cd/m2)以上の輝度を得ようとすると40(V)以上の励起電圧が必要で、その場合の寿命は700時間程度に留まり、未だ輝度と寿命の両立が困難であった。
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであって、その目的は、Cdを含まず且つ励起電圧を高くしても十分な寿命を有する赤色発光の低速電子線用蛍光体、および蛍光表示装置を提供することにある。
斯かる目的を達成するため、第1発明のGd2O3:Eu蛍光体の要旨とするところは、Gd2O3を母体とし、Euが発光中心としてドープされ、且つZnおよびMgの少なくとも一方、Li、およびKがドープされていることにある。
また、第2発明の蛍光表示装置の要旨とするところは、前記第1発明の蛍光体を発光源として備えたことにある。
前記第1発明によれば、Gd2O3:Eu蛍光体は、Gd2O3母体にEuがドープされていることから赤色に発光するが、これにZn(またはMg)、Li、Kが更にドープされていると、理由は定かではないが、40(V)以上の比較的高い電圧で励起しても劣化が生じ難く、しかも、十分に高い輝度が得られる。すなわち、Cdを含まず且つ励起電圧を高くしても十分な寿命を有する赤色発光の低速電子線用蛍光体が得られる。
上記添加成分のうち、ZnおよびMgは、蛍光体の寿命を向上させると共に、輝度向上にも僅かではあるが寄与する傾向がある。また、Liは輝度を向上させるが、寿命を短くする傾向がある。また、Kは輝度を向上させるが、寿命に対する寄与は少ない傾向がある。しかしながら、これら三者を共に添加すると、如何なる作用によるものであるのかは不明であるが、単独で或いはこれらのうち二者を添加した場合に比較して、輝度および寿命の著しい向上が認められた。第1発明はこのような知見に基づいて為されたものである。
また、前記第2発明によれば、上記第1発明のGd2O3:Eu,(Zn,Mg),Li,K蛍光体を発光源として備えることから、高輝度を得るために比較的高い電圧で励起しても長寿命を有する蛍光表示装置が得られる。
因みに、Gd2O3を母体とする蛍光体は従来から種々提案されている(例えば、前記特許文献2〜4を参照。)。しかしながら、これらは何れも高速電子線用すなわち陰極線管に用いられるものであって、蛍光表示管に用いられる低速電子線用のGd2O3系蛍光体は実現されていなかった。
ここで、好適には、前記第1発明の蛍光体は、EuGd2O3に対して4〜11(mol%)の範囲でドープされているものである。このようにすれば、発光中心であるEuの含有量が適度な範囲に定められているので、一層高い輝度を得ることができる。発光中心の数を十分に多くして高輝度を得るためには、4(mol%)以上とすることが好ましい。一方、濃度消光による輝度低下を十分に抑制するためには11(mol%)以下とすることが好ましい。
また、好適には、前記第1発明の蛍光体は、ZnGd2O3に対して1〜11(mol%)の範囲でドープされているものである。このようにすれば、Znが適度な範囲で含まれることから、十分な輝度および寿命を有し且つ低温で合成可能な蛍光体が得られる。Znを添加すればその量の如何に関わらず輝度向上および寿命向上効果を得ることができるが、高い添加効果を得るためには1(mol%)以上が好ましい。また、Znを添加すると、添加量が多くなるほど焼結性が低下し、蛍光体の合成時の焼成温度を高くする必要が生ずる。製造コストを考慮すると1300(℃)以下で焼成できることが好ましく、そのためには、Zn量を11(mol%)以下に留めることが好ましい。
また、好適には、前記第1発明の蛍光体は、MgGd2O3に対して4(mol%)以下の範囲でドープされているものである。このようにすれば、一層高輝度且つ長寿命の蛍光体が得られる。MgもZnと同様な輝度向上、寿命向上効果が認められるが、Znに比較して微量で効果が認められる反面、添加量が多くなると輝度低下および短寿命化が顕著であるため、4(mol%)以下が好ましい。例えば、5(mol%)を超えると、他の添加成分次第ではあるが、添加しない場合すなわちLiおよびKのみが添加された場合に比較して低輝度になる場合がある。
また、好適には、前記第1発明の蛍光体は、KGd2O3に対して2〜7(mol%)の範囲でドープされているものである。このようにすれば、輝度の一層高い蛍光体が得られる。Kの添加効果は、2(mol%)以上としたときに顕著になり、一方、過剰に添加すると寿命低下や輝度低下の傾向が認められ、7(mol%)以下で好ましい効果が得られる。
また、前記第1発明の蛍光体は、VFDで利用される低速電子線でも高輝度を得ることが可能なものであるが、1(kV)以上の高速電子線や紫外線でも励起して発光させ得るものであり、その用途は低速電子線で励起する場合に限られない。すなわち、本発明の蛍光体は、1(kV)〜10(kV)程度の電圧で発生させられた電子線で蛍光体を励起して発光させるFED(Field Emission Display:電界放射ディスプレイ)や、10(kV)程度の電圧で発生させられた電子線で蛍光体を励起発光させるCRT(Cathode Ray Tube:陰極線管)、紫外線で蛍光体を励起発光させるPDP(Plasma Display Panel)等にも好適に用いられ、第2発明の表示装置には、蛍光表示管を始めとして、蛍光体を発光源とするこれらのものも含まれる。なお、Znが添加されると導電性が生ずるため、CRT用等の高速電子線用の場合には、Znを含まないかその含有量を可及的に少なくした組成が好ましい。
また、本発明の蛍光体は、好適には、(a)前記蛍光体母体を構成するための母体原料と、Euを含む第1添加物原料と、ZnおよびMgの少なくとも一方を含む第2添加物原料と、Liを含む第3添加物原料と、Kを含む第4添加物原料とを混合する混合工程と、(b)得られた混合物を1300(℃)以下、好適には1000〜1250(℃)の範囲内、更に好適には、1100〜1200(℃)の範囲内の所定の焼成温度で焼成する焼成工程とを、含む工程により製造される。
このようにすれば、混合工程において、母体原料、第1、第2、第3、第4添加物原料が混合され、焼成工程において、その混合物が1300(℃)以下の温度で焼成される。そのため、励起電圧が高い場合にも長寿命を有し且つ高輝度で発光する蛍光体が得られる。上記焼成雰囲気は、例えば酸化雰囲気すなわち大気中であるが、窒素やアルゴン等の中性雰囲気や真空中で行うこともできる。
また、好適には、前記蛍光体の製造方法は、前記焼成工程に先立って前記混合物を700乃至1000(℃)の範囲内の所定温度で焼成する仮焼工程を含み、前記焼成工程は、その仮焼工程により得られた仮焼物に焼成処理を施すものである。このようにして、添加元素であるEu、Zn、Li、およびK等が母体であるGd2O3に一層均一に拡散すれば、輝度が一層向上し得る。因みに、例えばEuの濃度分布に偏りがあると、高濃度の部分では濃度消光が生じ易くなる一方、低濃度の部分でも発光中心の不足により輝度が低くなるため、全体の発光強度が低下する。すなわち、添加元素の拡散が不十分な場合には、その拡散性を高めることが輝度を向上させるために有効であるから、仮焼工程を実施する利点がある。
以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
図1は、本発明の一実施例の赤色発光蛍光体の製造方法の概略を説明するための工程図である。この図1を参照して本発明の一実施例であるGd2O3:Eu,Zn,Li,K蛍光体の製造方法を説明する。先ず、原料混合工程P1では、この蛍光体の出発原料となる適当な化合物、例えば、Gd2O3すなわち蛍光体母体そのもの、Eu2O3、ZnS、Li2CO3、K2CO3を、製造しようとする蛍光体の組成に応じてそれぞれ秤量し、例えば湿式振動混合、ボールミル、或いは乳鉢等によって十分に混合する。調合例を表1に示す。表1中の濃度(mol%)は、Gd2O3を100(mol%)とした場合の各添加成分の量を表しており、質量(g)欄の調合量は、この濃度が得られるように定めた値である。
Figure 0005144854
次いで、焼成工程P2において、混合した原料(混合物)を、例えば純度99.5(%)以上のアルミナ製坩堝に入れ、例えば電気炉に入れて大気雰囲気下において、950〜1200(℃)の範囲内、例えば1150(℃)程度の最高保持温度で、1〜6時間の範囲内、例えば3時間程度の焼成処理を施す。これにより、前記出発原料から下記の(1)式に示される化学反応により、Gd2O3:Eu,Zn,Li,Kが合成される。粉砕工程P3では、この合成された蛍光体を、例えばアルミナ乳鉢等を用いて平均粒径3(μm)程度の大きさに粉砕する。
Gd2O3+Eu2O3+ZnS+Li2CO3+K2CO3 → Gd2O3:Eu,Zn,Li,K・・・(1)
次いで、水洗工程P4においては、粉砕した蛍光体粉末を水中に分散させることによって水溶性の残留分を溶解する。前記出発原料のうちLi2CO3、K2CO3は水に可溶である一方、合成された蛍光体や他の原料は不溶であるため、未反応のLi2CO3、K2CO3のみが溶解することになる。水溶性成分が残留していると吸湿延いては劣化促進の原因になるため、上記水洗処理は寿命向上のために行うことが好ましい。
次いで、篩い分け工程P5においては、蛍光体を水に分散させたまま、例えば#300程度の篩を通すことによって粗大粒子を除去し、その後、適当な時間だけ静置して蛍光体粒子を沈降させる。所定の時間の後、上澄み液をピペット等で吸い取って除去する。これにより、上澄み液中に含まれている水溶性残留分(すなわち原料中の可溶成分)が除去される。この処理を水溶性残留分が完全に除去されるように、必要に応じて複数回行う。上澄み液を除去した後、残った蛍光体粒子を、乾燥工程P6において例えば120(℃)程度の温度で5時間程度乾燥し、その後、解砕工程P7において、得られた固形物の凝集をアルミナ製乳鉢等を用いて解砕することにより、Gd2O3:Eu,Zn,Li,K蛍光体粉末が得られる。
次に、上記のように合成した蛍光体の特性を蛍光表示装置の一例である蛍光表示管を用いて評価した結果を説明する。この評価に際しては、蛍光体粉末にその導電性を補うための適量のIn2O3(酸化インジウム)粉末を混合し、更に、有機バインダおよび有機溶剤等から成るビヒクルと混合して蛍光体ペーストを調製する。In2O3の混合量は、蛍光体粉末自体の導電性および蛍光体層に要求される導電性に応じて適宜定められるものであるが、例えば、蛍光体粉末100(重量部)に対して5〜15(重量部)程度、例えば6〜8(重量部)程度である。調製したペーストを、蛍光表示装置において電子の射出方向に配置される表示面上に適当な厚さ寸法で塗布し、蛍光体層を形成して評価した。
図2は、蛍光表示管10を一部を切り欠いて示す斜視図である。図2において、蛍光表示管10は、所定の発光パターンに形成された蛍光体層22を複数個所に備えたガラス、セラミックス、琺瑯などの絶縁体材料製の基板12と、枠状に形成されたガラス製のスペーサ14と、透明なカバー・ガラス板16と、複数本の陽極端子18p、複数本のグリッド端子18g、およびカソード端子18kとを備えたものである。それら基板12およびカバー・ガラス板16がスペーサ14を介して相互にガラス封着されることにより長手平箱状の気密容器が構成され、その内部にそれらの部材により囲まれた真空空間が形成されている。
基板12の表示面20には、種々の形状に形成された多数の前記蛍光体層22が備えられ、各々グリッド電極24および補助グリッド電極26により囲まれている。この補助グリッド電極26は、例えばグリッド電極24と電気的に絶縁され且つ全面共通に設けられている。また、これらグリッド電極24および補助グリッド電極26は、表示面20に設けられたグリッド配線30,32、およびその長辺に沿って設けられた多数の端子パッドを介して前記のグリッド端子18gに接続されている。
また、基板12の両端部には、前記カソード端子18kを備えた一対の端子部材34が固設されており、これに固着されたアンカ36および図示しないサポート間に直熱型カソード(陰極)として機能する細線状の複数本のフィラメント(フィラメント・カソード)38が基板12の長手方向に平行であって基板12の表示面20から離隔した所定の高さ位置となるように張設(すなわち、蛍光体層22の上方に架設)されている。このフィラメント38は、表面に電子放出層として(Ba,Sr,Ca)O等の仕事関数の低いアルカリ土類金属の酸化物固溶体がコーティングされたタングステン(W)ワイヤ等から成るものである。なお、蛍光表示管10には、気密容器内の真空度を高めるためのゲッタや、気密容器が形成された後に排気して内部を真空にするための排気管或いは排気穴等が備えられているが、これらは省略した。
図3は、上記表示面20の一部を拡大して詳細に示す図であり、図4は、その断面の要部を更に拡大して示す図である。表示面20には、例えば厚膜導体から成る陽極配線40が陽極端子18pに接続されるように設けられており、その上には、スルーホール42を適宜備えた厚膜ガラス材料等から成る絶縁体層44が固着されている。絶縁体層44の上には、蛍光体層22よりも若干大きい平面形状のグラファイト等から成る陽極46がスルーホール42を介して陽極配線40と導通する位置に形成されている。蛍光表示管10においては、前記蛍光体層22はこの陽極46上に形成される。また、蛍光体層22の周囲には、例えば厚膜ガラス材料製のリブ状壁48,50が立設されている。前記のグリッド電極24および補助グリッド電極26は、例えば厚膜導体から成るものであって、これらリブ状壁48,50の頂部に設けられている。
このように構成された蛍光表示管10において、上記フィラメント38から放出された熱電子は、そのフィラメント38に対して正電圧が印加されたグリッド電極24により加速されるので、例えば、グリッド電極24に順次に加速電圧を印加して走査すると共にその走査に同期して所望の蛍光体層22が接続された陽極配線40に正電圧を印加すると、その蛍光体層22に熱電子が衝突してその蛍光体層22が発光させられる。したがって、グリッド電極24の走査の一周期ごとに正電圧を印加する陽極配線40を変更することにより所望の発光表示を得ることができる。
なお、上記図2〜図4では、7セグメントで「8」文字形状が表された蛍光体層22を示したが、蛍光体の評価には、以下のような実験用パターンを形成した蛍光表示管を用いた。評価した特性は、初期輝度および寿命(すなわちハーフライフ)であり、初期輝度の評価用サンプルは、評価対象の複数種類の蛍光体を同一の矩形パターンで一つの管内に形成し、同時に点灯させて、点灯開始から5時間後の輝度を測定した。また、寿命の評価用サンプルは、複数種類の蛍光体の各々を別々の管内に差し渡し寸法が3〜4(mm)程度の多数のドットを矩形に並べたパターンで形成して、連続点灯させて予め定めた時間毎に輝度を測定した。前者は、表示管の製造ばらつきが輝度の相対評価に影響することを排除するためで、後者は、他の蛍光体の影響が寿命に影響することを排除するためである。
下記の表2に、評価した蛍光体の構成および評価結果を示す。表2において、サンプル番号1〜7は比較例で、サンプル番号8が実施例である。添加物量は前記の表1と同様にGd2O3を100(mol%)とした場合の割合である。なお、比較例1〜7は、前記実施例の蛍光体と同様にして合成したものであるが、合成に際して用いた原材料の種類や量はそれぞれの組成に応じて定めた。また、測定に際しては、例えば、フィラメント電圧efを3.5(V)、アノード電圧eb、グリッド電圧ecをそれぞれ50(V)として、デューティ比Duが1/60のダイナミック駆動で駆動した。
Figure 0005144854
上記の表2に示されるように、発光中心であるEu以外の添加物を含まないか、Zn、Li、Kのうちの一種だけが添加された1〜4の組成では、初輝度が極めて低い結果となった。また、Zn、Li、Kのうちの2つだけが添加された5〜7の組成では、80〜95(cd/m2)程度の1〜4に比較すれば高い輝度が得られたものの、十分な輝度ではなく、しかも、寿命が1000時間以下に留まった。これに対して、Zn、Li、Kを全て添加した8の組成では、輝度が120(cd/m2)、ハーフライフが1500時間で、輝度、寿命共に著しい改善が認められた。
要するに、本実施例のGd2O3:Eu,Zn,Li,K蛍光体は、Gd2O3母体にEuがドープされていることから赤色に発光するが、これにZn、Li、Kが更に含まれると、前述したように50(V)程度の比較的高い電圧で励起しても劣化が生じ難く、しかも、十分に高い輝度が得られる。すなわち、Cdを含まず且つ励起電圧を高くしても十分な寿命を有する赤色発光の低速電子線用蛍光体が得られる。
図5は、前記表1に示す組成において、K添加量のみを1〜8(mol%)の範囲で変化させた場合の添加量と輝度との関係を評価した結果を示したものである。この図5に示すように、K添加量が1(mol%)程度では添加効果が殆ど認められず、3(mol%)の添加で前述したように120(cd/m2)の高い初輝度が得られる。しかしながら、添加量がこれよりも多くなると、輝度が低下する傾向が認められ、8(mol%)の添加では80(cd/m2)に留まる。前記表1に示したK添加量は、このような実験結果に基づいて定めたものである。すなわち、この試験結果によれば、Euが5(mol%)、Znが10(mol%)、Liが2(mol%)の場合には、K添加量を2〜7(mol%)の範囲内に定めることが好ましく、2〜6(mol%)程度が更に好ましく、2.5〜5(mol%)程度とすることが特に好ましいと言える。
下記の表3は、Zn添加量を2.0〜10.0(mol%)の範囲内で変更すると共に、それぞれの組成について、1050〜1200(℃)の範囲内の温度で焼成した場合の初輝度を評価した結果をまとめたものである。Euは、前記実施例の組成と同様に5(mol%)としたが、10(mol%)添加した場合もZn添加量が2.0〜3.0(mol%)の範囲で、焼成温度を1100(℃)として評価した。なお、表3に示していない他の条件は、前記表1に示したものと同一とした。
Figure 0005144854
上記の表3に示されるように、Zn量が2.0(mol%)の場合には、1050(℃)でも92.4(cd/m2)の十分に高い輝度が得られたが、Zn量が多くなると低温で焼成すると輝度が極めて低くなる傾向が認められた。Zn量が多くなり過ぎると焼結性が低下し、その結果、輝度が低下するものと考えられる。Zn量が3.0〜5.0(mol%)のときの最適焼成温度は1150(℃)と考えられ、8.0(mol%)以上のときの最適焼成温度は1200(℃)以上であると考えられる。
また、表3に示す評価結果の範囲では、Zn量が5.0(mol%)程度の場合を上限として、それよりも多くすると輝度が低下する傾向が認められた。但し、上述したようにZn量が多くなると最適焼成温度が高くなるため、試験範囲は最適温度よりも低温に留まっている可能性もある。
なお、評価は、In2O3量を蛍光体100(重量部)に対して15(重量部)として行ったが、Zn量を10.0(mol%)として1200(℃)で焼成したサンプルについては、In2O3量を8(重量部)にした蛍光体層も評価した結果、120(cd/m2)の高い輝度が得られることが確かめられた。前述したようにIn2O3は蛍光体層の導電性を補う目的で添加されるものであるが、多くなるとIn2O3が蛍光体の発光を吸収するなど却って輝度向上の妨げとなる。
また、上記表3に示す蛍光体についてもそれぞれ寿命を評価したが、In2O3量を8(重量部)とした上記サンプルのハーフライフが1500時間以下であった他は、全て2000時間以上の長寿命を有することが確かめられた。上記表3に示した評価結果によれば、Zn量が2(mol%)以下、或いは10(mol%)以上でも十分に高い輝度および十分に長い寿命が得られるものと考えられる。すなわち、Euが5(mol%)または10(mol%)、Liが2(mol%)、Kが3(mol%)の場合には、Zn量を1〜11(mol%)の範囲内に定めることが好ましく、2〜10(mol%)程度が更に好ましいと言える。また、Eu添加量が5(mol%)および10(mol%)の評価結果によれば、これらの添加量よりも更に少ない4(mol%)や更に多い11(mol%)の添加量であっても十分に高い輝度および長寿命が得られることが明らかである。したがって、好ましい添加量は4〜11(mol%)の範囲内であり、5〜10(mol%)の範囲内が一層好ましいと考えられる。
また、下記の表4は、前記表1に示される組成において、Znに代えてMg或いはInをそれぞれに示す量だけ添加した組成を評価した結果をまとめたものである。Eu、Li、Kの添加量は全て表1の場合と同一とした。また、合成時の焼成条件は、1200(℃)で3時間保持するものとした。合成時の出発原料としては、Mg源にMgS、In源にIn2S3を用いた。
Figure 0005144854
上記の表4に示されるように、Znに代えてMgを添加した場合には、Mg量が3(mol%)以下であれば、初輝度105(cd/m2)の十分に高い輝度と、1600時間以上の十分に長いハーフライフとを得ることができることが確かめられた。Mg量が5(mol%)では初輝度が56.7(cd/m2)に留まると共に、寿命も1600時間以下に留まり、また8(mol%)まで増量すると、輝度が34.1(cd/m2)と著しく低下し、寿命も700時間以下に著しく低下するが、この傾向から推定して、4(mol%)程度でも十分な輝度および寿命が得られるものと考えられる。したがって、この評価結果によれば、添加量を4(mol%)以下、好適には3(mol%)以下に留める必要があるが、Znに代えてMgを用いることも有用である。
一方、Znに代えてInを用いた評価結果では、3〜8(mol%)の全範囲で30(cd/m2)程度以下の低輝度に留まった。したがって、Inは本実施例の蛍光体の構成材料としては不適当であるものと考えられる。
図6は、上記表4のMgを添加した蛍光体の寿命を、前記表1のZnを添加した蛍光体の寿命と比較して示したものである。Zn添加組成ではIn2O3の添加量を8(重量部)、Mg添加組成ではIn2O3の添加量を15(重量部)とした。Mgを3(mol%)添加したものは、Znを10(mol%)添加したものと同様な傾向を示している。すなわち、初輝度はZn添加が120(cd/m2)、Mg(3mol%)添加が105(cd/m2)で、Zn添加の方がやや高いが、1000時間程度で何れも70(cd/m2)程度まで低下し、その後はMg添加の方がやや高輝度に逆転する。
なお、Mgを5(mol%)添加したもの、8(mol%)添加したものも図6に参考までに示した。添加量が多くなるほど低下度合いが著しくなるが、これらは何れも初輝度が低いため実用に供し得る組成ではない。
図7は、上記図6に示した評価結果を相対輝度の変化に書き換えたものである。蛍光体の寿命は一般に輝度が初輝度の50(%)に低下するハーフライフで評価されることから、図7には相対輝度50(%)を破線で示した。Zn添加のものは1400時間程度で寿命に至るが、Mg添加のものは、3(mol%)添加で2700時間、5(mol%)添加で1800時間の寿命を有する。8(mol%)添加のものは初輝度が低く且つ低下も著しく、800時間の寿命に過ぎない。
上記評価結果によれば、前記表1に示す組成でZnに代えてMgを添加した蛍光体は、Zn添加のものよりも長寿命が期待できる。特に、3(mol%)添加の場合には、評価した範囲でもZn添加と遜色ない輝度が得られ、2倍程度の長寿命であるから、寿命を重視する用途ではZn添加組成よりも、Mgを3〜4(mol%)添加した組成が好ましいと考えられる。
以上、本発明を図面を参照して詳細に説明したが、本発明は更に別の態様でも実施でき、その主旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得るものである。
本発明の一実施例の蛍光体の製造方法を説明する工程図である。 本発明の蛍光表示装置の一例である蛍光表示管の全体構成をカバー・ガラスの一部を切り欠いて示す図である。 図2の蛍光表示管の表示面の一部を拡大して蛍光体層を示す平面図である。 図2の蛍光表示管の断面の要部を拡大して構成を説明する図である。 本発明の一実施例の蛍光体を合成するに際して添加されるK量と輝度との関係を表した図である。 本発明の一実施例およびZnをMgに置き換えた他の実施例の蛍光体の輝度変化を評価した結果を表した図である。 図6の評価結果を縦軸を相対輝度で表した図である。
符号の説明
10:蛍光表示管、12:基板、14:スペーサ、16:カバー・ガラス板、18p:陽極端子、18g:グリッド端子、18k:カソード端子、20:表示面、22:蛍光体層、24:グリッド電極、26:補助グリッド電極、30,32:グリッド配線、34:端子部材、36:アンカ、38:フィラメント、40:陽極配線、42:スルーホール、44:絶縁体層、46:陽極、48,50:リブ状壁

Claims (6)

  1. Gd2O3を母体とし、Euが発光中心としてドープされ、且つZnおよびMgの少なくとも一方、Li、およびKがドープされていることを特徴とするGd2O3:Eu蛍光体。
  2. EuGd2O3に対して4〜11(mol%)の範囲でドープされているものである請求項1に記載のGd2O3:Eu蛍光体。
  3. ZnGd2O3に対して1〜11(mol%)の範囲でドープされているものである請求項1に記載のGd2O3:Eu蛍光体。
  4. MgGd2O3に対して4(mol%)以下の範囲でドープされているものである請求項1に記載のGd2O3:Eu蛍光体。
  5. KGd2O3に対して2〜7(mol%)の範囲でドープされているものである請求項1に記載のGd2O3:Eu蛍光体。
  6. 前記請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載された蛍光体を発光源として備えたことを特徴とする蛍光表示装置。
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