以下、本発明の露光装置の実施形態を図面を参照しながら説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されない。
第1実施形態
図1は、本発明の露光装置の第1実施形態を示す概略構成図である。図1において、露光装置EXは、主に、マスクMを支持するマスクステージMSTと、基板Pを支持する基板ステージPSTと、マスクステージMSTに支持されているマスクMを露光光ELで照明する照明光学系ILと、露光光ELで照明されたマスクMのパターンの像を基板ステージPSTに支持されている基板Pに投影露光する投影光学系PLと、露光装置EX全体の動作を統括制御する制御装置CONTと、制御装置CONTに接続され、マスクMのパターンMPの分布情報を含む露光動作に関する各種情報を記憶した記憶装置MRYとを備えている。
本実施形態の露光装置EXは、露光波長を実質的に短くして解像度を向上するとともに焦点深度を実質的に広くするために液浸法を適用した液浸露光装置であって、基板P上に液体1を供給する液体供給機構10と、基板P上の液体1を回収する液体回収機構30とを備えている。本実施形態において、液体1には純水を用いた。露光装置EXは、少なくともマスクMのパターン像を基板P上に転写している間、液体供給機構10から供給した液体1により投影光学系PLの投影領域AR1を含む基板P上の少なくとも一部に液浸領域AR2を形成する。具体的には、露光装置EXは、投影光学系PLの先端部に配置されている光学素子2と基板Pの表面(露光面)との間に液体1を満たし、この投影光学系PLと基板Pとの間の液体1及び投影光学系PLを介してマスクMのパターン像を基板P上に投影して露光する。
ここで、本実施形態では、露光装置EXとしてマスクMと基板Pとを走査方向(所定方向)において互いに異なる向き(逆方向)に同期移動しつつ、マスクMに形成されたパターンMPを基板Pに露光する走査型露光装置(所謂スキャニングステッパ)を使用する場合を例にして説明する。以下の説明において、水平面内においてマスクMと基板Pとの同期移動方向(走査方向、所定方向)をX軸方向、水平面内においてX軸方向と直交する方向をY軸方向(非走査方向)、X軸方向及びY軸方向に垂直で投影光学系PLの光軸AXと一致する方向をZ軸方向とする。また、X軸、Y軸、及びZ軸まわり方向をそれぞれ、θX、θY、及びθZ方向とする。なお、ここで、「基板」とは、半導体ウエハ上にレジストのような感光性材料を塗布したものを含み、「マスク」とは、基板上に縮小投影されるデバイスパターンが形成されたレチクルを含む。
照明光学系ILは、マスクステージMSTに支持されているマスクMを露光光ELで照明するものであり、露光用光源、露光用光源から射出された光束の照度を均一化するオプティカルインテグレータ、オプティカルインテグレータからの露光光ELを集光するコンデンサレンズ、リレーレンズ系、露光光ELによるマスクM上の照明領域(照射領域)IAをスリット状に設定する可変視野絞り等で構成されている。マスクM上の所定の照明領域IAは、照明光学系ILにより均一な照度分布の露光光ELで照明される。照明光学系ILから射出される露光光ELとしては、例えば水銀ランプから射出される紫外域の輝線(g線、h線、i線)及びKrFエキシマレーザ光(波長248nm)等の遠紫外光(DUV光)や、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)及びF2レーザ光(波長157nm)等の真空紫外光(VUV光)等が用いられる。本実施形態では、ArFエキシマレーザ光を用いた。上述したように、本実施形態における液体1は純水を用いたので、露光光ELがArFエキシマレーザ光であっても透過可能である。純水は紫外域の輝線(g線、h線、i線)及びKrFエキシマレーザ光(波長248nm)等の遠紫外光(DUV光)をも透過可能である。
マスクステージMSTは、マスクMを支持するものであって、投影光学系PLの光軸AXに垂直な平面内、即ち、XY平面内で2次元移動可能及びθZ方向に微小回転可能である。マスクステージMSTは、リニアモータ等のマスクステージ駆動装置MSTDにより駆動される。マスクステージ駆動装置MSTDは、制御装置CONTにより制御される。マスクステージMST上には移動鏡50が設けられている。また、移動鏡50に対向する位置にはレーザ干渉計51が設けられている。マスクステージMST上のマスクMの2次元方向の位置、及び回転角はレーザ干渉計51によりリアルタイムで計測され、計測結果は制御装置CONTに出力される。制御装置CONTは、レーザ干渉計51の計測結果に基づいてマスクステージ駆動装置MSTDを駆動することで、マスクステージMSTに支持されているマスクMの位置決めを行う。
投影光学系PLは、マスクMのパターンを所定の投影倍率βで基板Pに投影露光するものであって、基板P側の先端部に設けられた光学素子(レンズ)2を含む複数の光学素子で構成されている。投影光学系PLを構成するこれら光学素子は、鏡筒PKで支持されている。また、投影光学系PLには、この投影光学系PLの結像特性(光学特性)を調整可能な結像特性制御装置3が設けられている。結像特性制御装置3は、投影光学系PLを構成する複数の光学素子の一部を移動可能な光学素子駆動機構を含んで構成されている。光学素子駆動機構は、投影光学系PLを構成する複数の光学素子のうちの特定の光学素子を光軸AX方向(Z方向)に移動したり、光軸AXに対して傾斜させることができる。また、結像特性制御装置3は、光学素子間の空間の圧力を変動させることができる。制御装置CONTを用いて結像特性制御装置3を制御することにより、投影光学系PLの投影倍率やディストーション等の各種収差及び像面位置の投影状態を調整することができる。
本実施形態において、投影光学系PLは、投影倍率βが例えば1/4あるいは1/5の縮小系である。なお、投影光学系PLは等倍系及び拡大系のいずれでもよい。また、本実施形態の投影光学系PLの先端部の光学素子2は、鏡筒PKに対して着脱(交換)可能に設けられている。また、先端部の光学素子2は鏡筒PKより露出しており、液浸領域AR2の液体1は光学素子2にのみ接触する。これにより、金属からなる鏡筒PKの腐蝕等を防止できる。
光学素子2は、蛍石で形成されている。蛍石は純水との親和性が高いので、光学素子2の液体接触面2aの略全面に液体1を密着させることができる。すなわち、本実施形態においては、光学素子2の液体接触面2aとの親和性が高い液体(純水)1を供給している。なお、光学素子2として、水との親和性が高い石英を用いてもよい。また、光学素子2の液体接触面2aに親水化(親液化)処理を施して、液体1との親和性をより高めるようにしてもよい。
また、露光装置EXは、フォーカス検出系4を有している。フォーカス検出系4は、発光部4aと受光部4bとを有しており、発光部4aから液体1を介して基板P表面(露光面)に斜め上方から検出光を投射し、その反射光を受光部4bで受光する。制御装置CONTは、フォーカス検出系4の動作を制御するとともに、受光部4bで受光(検出)した結果に基づいて、所定基準面に対する基板P表面のZ軸方向における位置(フォーカス位置)を検出する。また、基板P表面における複数の各点での各フォーカス位置を求めることにより、フォーカス検出系4は基板Pの傾斜方向の姿勢を求めることもできる。
基板ステージPSTは、基板Pを支持するものであって、基板Pを基板ホルダを介して保持するZステージ52と、Zステージ52を支持するXYステージ53と、XYステージ53を支持するベース54とを備えている。基板ステージPSTは、リニアモータ等の基板ステージ駆動装置PSTDにより駆動される。基板ステージ駆動装置PSTDは制御装置CONTにより制御される。なお、ZステージとXYステージとを一体的に設けてよいことは言うまでもない。基板ステージPSTのXYステージ53を駆動することにより、基板PのXY方向における位置(投影光学系PLの像面と実質的に平行な方向の位置)の制御が行なわれる。
基板ステージPST(Zステージ52)上には、基板ステージPSTとともに投影光学系PLに対して移動する移動鏡55が設けられている。また、移動鏡55に対向する位置にはレーザ干渉計56が設けられている。基板ステージPST上の基板Pの2次元方向の位置及び回転角はレーザ干渉計56によりリアルタイムで計測され、計測結果は制御装置CONTに出力される。制御装置CONTは、レーザ干渉計56の計測結果に基づいて、基板ステージ駆動装置PSTDを介してXYステージ53を駆動することで、基板ステージPSTに支持されている基板PのX軸方向及びY軸方向における位置決めを行う。
また、制御装置CONTは、基板ステージ駆動装置PSTDを介して基板ステージPSTのZステージ52を駆動することにより、Zステージ52に保持されている基板PのZ軸方向における位置(フォーカス位置)、及びθX、θY方向における位置の制御を行う。即ち、Zステージ52は、フォーカス検出系4の検出結果に基づく制御装置CONTからの指令に基づいて動作し、基板Pのフォーカス位置(Z位置)及び傾斜角を制御することによって、基板Pの表面(露光面)と投影光学系PL及び液体1を介して形成される像面とを一致させる。
基板ステージPST(Zステージ52)上には、基板Pを囲むように、表面が平坦な補助プレート57が設けられている。補助プレート57は、その表面が基板ホルダに保持された基板Pの表面と略同じ高さとなるように設置されている。ここで、基板Pのエッジと補助プレート57との間には1〜2mm程度の隙間があるが、液体1の表面張力によりその隙間に液体1が流れ込むことは殆どなく、基板Pの周縁近傍を露光する場合にも、補助プレート57により投影光学系PLの下に液体1を保持することができる。
液体供給機構10は、基板P上に所定の液体1を供給するものであって、主に、液体1を送出(流出)可能な第1液体供給部11及び第2液体供給部12と、第1液体供給部11に供給管11Aを介して接続されるとともに第1液体供給部11から送出(流出)された液体1を基板P上に供給する供給口を有する第1供給部材13と、第2液体供給部12に供給管12Aを介して接続されるとともに第2液体供給部12から送出(流出)された液体1を基板P上に供給する供給口を有する第2供給部材14とを備えている。第1及び第2供給部材13、14は基板Pの表面に近接して配置されており、基板Pの面方向において互いに異なる位置に設けられている。具体的には、液体供給機構10の第1供給部材13は、投影領域AR1に対して走査方向の一方の側(−X側)に設けられ、第2供給部材14は、第1供給部材13に対向するように、走査方向の他方の側(+X側)に設けられている。
第1及び第2液体供給部11、12は、それぞれ液体1を収容するタンク及び加圧ポンプ等を備えており、供給管11A、12A及び供給部材13、14を介してそれぞれ基板P上に液体1を供給する。また、第1及び第2液体供給部11、12の液体供給動作は、制御装置CONTにより制御される。制御装置CONTは、第1及び第2液体供給部11、12から基板P上に供給する単位時間当たりの液体供給量を、それぞれ独立して制御可能である。また、第1及び第2液体供給部11、12は、それぞれ液体の温度調整機構を備えており、装置が収容されるチャンバ内の温度と略同じ23℃に調整された液体1を基板P上に安定供給することができる。
液体回収機構30は基板P上の液体1を回収するものであって、基板Pの表面に近接して配置された回収口を有する第1、第2回収部材31、32と、この第1及び第2回収部材31、32に回収管33A、34Aを介してそれぞれ接続された第1及び第2液体回収部33、34とを備えている。第1及び第2液体回収部33、34は、例えば、真空ポンプ等の吸引装置及び回収した液体1を収容するタンク等を備えており、基板P上の液体1を第1及び第2回収部材31、32、並びに回収管33A、34Aを介して回収する。第1及び第2液体回収部33、34の液体回収動作は制御装置CONTにより制御される。制御装置CONTは、第1及び第2液体回収部33、34による単位時間当たりの液体回収量を、それぞれ独立して制御可能である。
図2は、液体供給機構10及び液体回収機構30の概略構成を示す平面図である。図2に示すように、投影光学系(PL)の投影領域AR1は、Y軸方向(非走査方向)を長手方向とするスリット状(矩形状)に設定されている。また、液体1が満たされた液浸領域AR2は、投影領域AR1を含むように基板(P)上の一部に形成される。上述したように、液浸領域AR2を形成するために用いられる液体供給機構10の第1供給部材13は投影領域AR1に対して走査方向一方側(−X側)に設けられ、第2供給部材14はその反対側の走査方向他方側(+X側)に設けられている。第1及び第2供給部材13、14は、それぞれY軸方向を長手方向とする平面視直線状に形成されている。また、第1及び第2供給部材13、14の供給口は、それぞれY軸方向を長手方向とするスリット状に形成されており、基板Pの表面を向くように設けられている。液体供給機構10は、第1及び第2供給部材13、14の供給口より、投影領域AR1のX方向両側から液体1を同時に供給する。このように、本実施形態における液体供給機構10では、投影領域AR1に対して異なる複数の方向・位置から基板(P)上に液体1を供給することができる。
液体回収機構30の第1及び第2回収部材31、32は、それぞれ基板Pの表面に向くように円弧状に且つ連続的に形成された回収口を有している。そして、互いに向き合うように配置された第1及び第2回収部材31、32により略円環状の回収口が構成される。第1及び第2回収部材31、32のそれぞれの回収口は、液体供給機構10の第1及び第2供給部材13、14、並びに投影領域AR1を取り囲むように配置されている。また、第1及び第2回収部材31、32のそれぞれの回収口内部には、複数の仕切部材35が設けられている。
第1及び第2供給部材13、14の供給口から基板(P)上に供給された液体1は、投影光学系(PL)の先端部(光学素子2)の下端面と基板(P)との間に濡れ拡がるように供給される。また、投影領域AR1及び第1及び第2供給部材13、14の外側に流出した液体1は、第1及び第2供給部材13、14の外側に配置されている第1及び第2回収部材31、32の回収口より回収される。
図3は、基板ステージPSTの平面図である。基板ステージPST(Zステージ52)の上面の所定位置には光電センサである光センサ20が配置されている。図3に示す例では、光センサ20はZステージ52上の、基板Pを保持する基板ホルダ以外の位置に設けられている。光センサ20は照射される光情報を検出するものであり、具体的には照射される光の光量(照度)を検出する。光センサ20の検出信号は制御装置CONTに出力される。制御装置CONTは、光センサ20の検出結果に基づいて、照射された光の照度及び照度分布を求める。また、この光センサ20を基板ステージPSTを移動させて投影光学系PLの下方に配置することにより、投影光学系PLを通過した露光光ELの照度分布を検出することができる。
光センサ20の受光面(検出領域)の大きさは、投影領域AR1と等しいか、それよりも大きく設定されている。これにより、光センサ20は、マスクMを通り且つ投影光学系PLを通過する全ての露光光ELを受光可能である。この光センサ20は、その受光面のZ軸方向における位置が、投影光学系PLの像面(結像面)のZ軸方向における位置と一致するように設けられている。また、光センサ20には、非走査方向(Y軸方向)に複数の受光面が配置されている。これらの複数の受光面は各々独立に照度計測が可能であるので、これらの複数の受光面で計測された照度の出力値がそのまま露光光ELの非走査方向の照度分布を表すことになる。
基板ステージPSTを移動して、光センサ20と投影光学系PLの投影領域AR1とを位置合わせするとともに、図1に示すように、マスクMをマスクステージMSTに載置し、このマスクMを露光光ELにより所定の照明領域IAで照明することにより、光センサ20にマスクM及び投影光学系PLを通過した露光光ELが照射される。マスクMは遮光部であるクロムパターンMPを有しているので、光センサ20にはマスクMのパターンMPに応じた照度分布で露光光ELが照射される。
光センサ20は、上述したように、照射される露光光ELのY軸方向における照度分布を検出する。制御装置CONTは、光センサ20の検出結果に基づいて、照明領域IA内でのY軸方向におけるマスクMのパターン分布情報を求める。
次に、上述した露光装置EXを用いてマスクMのパターン像を基板Pに露光する方法について、図4のフローチャート図を参照しながら説明する。ここで、本実施形態における露光装置EXは、マスクMと基板PとをX軸方向(走査方向)に移動しながらマスクMのパターン像を基板Pに投影露光する。走査露光時には、投影光学系PLの先端部直下のスリット状(矩形状)の投影領域AR1に、照明領域IAに応じたマスクMの一部のパターン像が投影される。このとき、投影光学系PLに対して、マスクMが−X方向(又は+X方向)に速度Vで移動するのに同期して、基板PがXYステージ53を介して+X方向(又は−X方向)に、速度β・V(βは投影倍率)で移動する。基板P上には複数のショット領域(SA)が設定されており、1つのショット領域(SA)への露光終了後に基板Pがステッピング移動し、基板上の次のショット領域(SA)が走査開始位置に移動する。以下、ステップ・アンド・スキャン方式によって基板Pを移動しながら各ショット領域SAに対する走査露光処理が順次行われる。
デバイス製造のための液浸露光処理に先立って、マスクステージMSTにマスクMを載置しない状態で、以下のようにして露光光ELの照度分布を計測する。制御装置CONTは、照明光学系ILより露光光ELを射出し、投影光学系PLを通過した露光光ELを基板ステージPST上の光センサ20で受光するように照明光学系IL及び基板ステージPSTを制御する。こうして、基板ステージPST上(投影光学系PLの像面側)における露光光ELの照度分布を計測する。これにより、マスクMを介さない投影光学系PLの像面側での露光光ELの照度(基準照度)が求められる。計測した基準照度は記憶装置MRYに記憶される。
次いで、マスクMをマスクステージMSTにロードする。制御装置CONTは、マスクステージMSTにマスクMを載置した状態で、マスクM及び投影光学系PLを通過した投影光学系PLの像面側での露光光ELの照度分布を、光センサ20を用いて求める。図5は、マスクM及び投影光学系PLを介した露光光ELの照度分布を光センサ20で計測している状態を示す模式図である。制御装置CONTは、図5に示すように、基板ステージPSTを移動して、光センサ20と投影光学系PLの投影領域AR1との位置合わせを行う。この状態で、照明光学系ILより露光光ELを射出することにより、光センサ20にはマスクM及び投影光学系PLを通過した露光光ELが照射される。なお、図5においては、マスクM上のパターンエリアPAにおいて、+Y側の略半分のエリアでクロムパターン(遮光部)MPの密度が高くなっており、パターンエリアPA内のX方向のいずれの位置においてもこのような密度分布となっている。このとき、マスクM上での露光光ELの照明領域(照射領域)IAは、マスクM上のパターンエリアPA内でY軸方向に延びたスリット状に設定されており、そのY軸方向の両端部は遮光帯SB上に位置する。マスクM上の照明領域IA内に含まれる部分パターンは、投影光学系PLの投影領域AR1に投影される。光センサ20は、照明領域IA内におけるパターン分布に応じた露光光ELを受光する。制御装置CONTは、光センサ20の検出結果に基づいて、Y軸方向における照度分布、即ち、液浸露光時における液浸領域AR2を形成する液体1に入射する露光光ELのY軸方向における入射エネルギー分布を求める。
更に、制御装置CONTは、照明光学系IL及び基板ステージPSTを制御してマスクM上の照明領域IAに露光光ELを照射しながら、露光光ELに対してマスクMを支持するマスクステージMSTをX軸方向に移動する。これにより、マスクMのパターンエリアPAの全面に順次露光光ELが照射される。このとき、光センサ20(基板ステージPST)は移動しない。マスクM(マスクステージMST)の位置は、レーザ干渉計51により計測される。制御装置CONTは、レーザ干渉計51によって計測された、マスクMのX軸方向における位置の計測結果と、そのときのマスクMの照明領域IAを通過した露光光ELの光センサ20による検出結果に基づいて、マスクMの走査方向(X軸方向)の各位置における露光光ELの照度分布を求めることにより、投影光学系PLを通過した露光光ELの照度分布情報を求める(ステップS1)。
次いで、制御装置CONTは、マスクMを介さずに検出した露光光ELの照度情報(基準照度)と、マスクMを介して検出した露光光ELの照度情報に基づいて、マスクMのパターン分布(パターンの密度分布)を求める(ステップS2)。マスクM及び投影光学系PLを通過した露光光ELの照度分布とマスクMのパターン分布とは対応している。従って、制御装置CONTは、マスクMを介して検出した露光光ELの照度分布から上記基準照度の照度分布に相当する分を差し引くことにより、マスクMのパターン分布を求めることができる。求めたマスクMのパターン分布情報は、記憶装置MRYに記憶される。
次いで、制御装置CONTは、デバイス製造のための液浸露光時に設定されるべき露光量(基板P上での照度)、上記求めたマスクMのパターン分布情報、及び、液浸露光条件に基づいて、液浸露光時における液浸領域AR2の液体1の温度変化情報を推定(算出)する。具体的には、制御装置CONTは、液浸領域AR2における液体温度分布の変化を求める(ステップS3)。ここで、液浸露光条件(パラメータ)は、基板Pの移動速度、比熱等の液体1の材料特性、及び、液体供給機構10からの単位時間当たりの液体供給量(流速)を含む。また、上記パラメータに応じたマスクMのパターン分布と液体温度変化量(分布)との関係は予め記憶装置MRYに記憶されており、制御装置CONTはこの記憶されている関係に基づいて、液体温度分布を推定(算出)する。なお、前記関係は、例えば、予め実験やシミュレーションにより求めることができる。以下の説明では、液体温度変化量及び液体温度分布を含めて「液体温度分布情報」と適宜称する。
なお、上記パラメータとして、液体回収機構30の単位時間あたりの液体回収量を追加してもよい。
次いで、制御装置CONTは、前記求めた液体温度分布情報に基づいて、投影光学系PLと液体1とを介した像面位置変化を含む像特性変化量及び変化分布を求める(ステップS4)。なお、以下の説明では、像特性変化量及び変化分布を含めて「像特性変化情報」と適宜称する。
ここで、図6及び図7を参照しながら、マスクM上のパターンMPの分布に応じて投影光学系PLと基板Pとの間の液体1が温度変化することについて説明する。図6はマスクMのパターンMPを投影光学系PL及び液浸領域AR2の液体1を介して液浸露光している状態を示す模式図、図7は液体の温度分布を示す模式図である。なお、図6では、説明の都合上、液体1の図示が省略されている。図6に示すように、マスクM上のパターンエリアPAの略半分がクロムパターンMPの密度が高い領域になっている場合、高密度領域の方が光の透過率が低いので、基板P上の投影領域AR1の一方の半分に比べて他方の半分に、一層多くの露光光ELが入射する。これにより、マスクMのパターン分布に応じて、投影光学系PLと基板Pとの間の液体1に入射する露光光ELの光量分布(照度分布)が生じるとともに、図7に示すように、液体1に点線で示すようなY軸方向の温度傾斜(温度分布の変化)が生じる。液体1の温度変化は、液体1の屈折率変化を生じさせるため、図7に示す場合には、液体1の温度変化に応じて主にX軸まわりに傾斜したような像面変化が生じる。すなわち、液体の屈折率は液体の温度に依存して変化するので、光が液体に進入しそして通過するときの屈折角もまた温度依存性を示し、その結果、像がゆがむことになる(像はY方向に部分的に縮小または拡大する)。
そこで、制御装置CONTは、マスクM上のパターンの分布、ひいては投影光学系PLと基板Pとの間の液体1に入射する露光光ELの分布に基づいて液体1の温度分布情報を求め、この求めた温度分布情報に基づいて、像特性変化(像面の位置変化等)を予測する。
制御装置CONTは、求めた像特性変化情報に基づいて、この像特性を補正する補正量(補正情報)を求める(ステップS5)。ここで、図8を参照しながら、補正量を求める手順の一例について説明する。なお、以下では説明を簡単にするために、液体1の温度分布の変化により投影光学系PLと液体1とを介して形成される像面位置が変化する場合について説明する。投影光学系PLの投影領域AR1のY軸方向における照度分布が、例えば図8(a)に示すように、露光量(照度)が+Y方向のある位置までは一定であり、その後所定の値まで増大した後、さらにその所定の値で一定である場合、投影光学系PLと液体1とを介して形成される像面もまた同様に、温度分布に応じて図8(b)に示す状態となる。そこで、制御装置CONTは、求めた像特性変化成分(像面位置変化成分)を、図8(c)に示すように、オフセット成分である0次成分、傾斜成分である1次成分、及び、高次成分の複数の成分に分けるとともに、上記各成分についての補正量をそれぞれ求める。補正量は、以下のように露光装置の制御を行うことによって補正することができる。例えば、像面変化の0次成分及び1次成分については、基板ステージPSTの駆動(姿勢)を補正することで、投影光学系PL及び液体1を介して形成される像面と基板Pの表面との位置関係を補正し、高次成分については、投影光学系PLの結像特性制御装置3を駆動することで補正する。本実施形態では、投影領域AR1はY軸方向に延びるスリット状であるため、走査露光中における基板ステージPSTの位置調整は、主にZ軸方向に関する位置調整(フォーカス調整)、及び、θX方向におけるチルト調整(ローリング調整)を行えばよい。もちろん、投影領域AR1のX軸方向の幅が大きい場合には、像面と基板の表面との位置を合致させるために、走査露光中において、θY方向におけるチルト調整(ピッチング調整)が行われる。制御装置CONTは、マスクMの走査方向(X軸方向)の位置に対応させた補正量(補正情報)を記憶装置MRYに記憶する。
投影光学系PL及び液体1を介して形成される像面と基板P表面との位置を合致させるための補正量を求めた後、制御装置CONTは、前記求めた補正量に基づいて、基板Pの姿勢(基板Pの傾き、Z軸方向の位置)を調整しつつ、液浸露光処理を行う(ステップS6)。即ち、図1に示すように、制御装置CONTは、基板搬送系を使って基板Pを基板ステージPSTにロードした後、液体供給機構10を駆動して基板P上に対する液体供給動作を開始する。液浸領域AR2を形成するために液体供給機構10の第1及び第2液体供給部11、12のそれぞれから送出された液体1は、供給管11A、12A並びに第1及び第2供給部材13、14を介して基板P上に供給され、投影光学系PLと基板Pとの間に液浸領域AR2を形成する。このとき、第1及び第2供給部材13、14の供給口は投影領域AR1のX軸方向(走査方向)両側に配置されている。制御装置CONTは、液体供給機構10の供給口より投影領域AR1の両側で基板P上への液体1の供給を同時に行う制御を実行する。これにより、基板P上に供給された液体1は、少なくとも投影領域AR1より広い範囲の液浸領域AR2を基板P上に形成する。
本実施形態において、投影領域AR1の走査方向両側から基板Pに対して液体1を供給する際、制御装置CONTは、液体供給機構10の第1及び第2液体供給部11、12の液体供給動作を制御し、走査方向に関して、投影領域AR1の手前から供給する単位時間当たりの液体供給量を、その反対側で供給する液体供給量よりも多く設定する。例えば、基板Pを+X方向に移動しつつ露光処理する場合、制御装置CONTは、投影領域AR1に対して−X側(即ち、供給口13A)からの液体量を+X側(即ち、供給口14A)からの液体量より多くする。逆に、基板Pを−X方向に移動しつつ露光処理する場合、投影領域AR1に対して+X側からの液体量を−X側からの液体量より多くする。
また、制御装置CONTは、液体回収機構30の第1及び第2液体回収部33、34を制御し、液体供給機構10による液体1の供給動作と並行して、基板P上の液体回収動作を行う。これにより、第1及び第2供給部材13、14の供給口から供給され投影領域AR1の外側に流れ出る基板P上の液体1は、第1及び第2回収部材33、34の回収口より回収される。このように、液体回収機構30では、投影領域AR1を取り囲むように回収口が設けられているので、基板P上の液体1を回収口から効率的に回収することができる。
そして、制御装置CONTは、記憶装置MRYに記憶されている補正情報とフォーカス検出系4で検出された基板P表面の位置情報検出結果に基づいて、結像特性制御装置3と基板ステージ駆動装置PSTDとを介して基板Pと像面とのZ軸方向の位置及び傾きの関係を制御しつつ液浸露光する。
これにより、マスクMのパターン分布、即ち、投影領域AR1に入射する露光光ELの分布に応じた液体1の温度分布の変化により像面位置が変化する場合にも、投影光学系PLと液体1とを介して形成される像面と基板P表面(露光面)とを略一致させながら、基板P上のショット領域SAを走査露光することができる。これにより、基板P上に所望のパターンを精度良く形成することが可能となる。
以上説明したように、マスクMのパターンMPの分布情報に基づいて基板P上に所望のパターン像が投影されるように、液浸走査露光中の基板Pの位置及び姿勢の調整、並びに結像特性制御装置を用いた投影光学系PLの像面位置の調整などの投影状態の調整を行うことにより、精度良いパターン転写を行うことができる。
なお、上記図6及び図7に示した例では、マスクM上での照明領域IA内のパターン分布がマスクMの移動に伴ってあまり変化しない場合について説明したが、通常はマスクM上での露光光ELの照明領域IA内におけるパターン分布がマスクMの移動に伴って変化する。この場合、そのマスクMの移動に伴って投影領域AR1(液体1)に入射する露光光ELの分布が変化する。この露光光ELの分布の変化に起因して液体1の温度分布が変化するため、像面の位置も液体1の温度分布に応じて変化する。これにより、基板P上に投影されるパターン像が劣化するおそれがある。
しかしながら、本実施形態では、制御装置CONTはマスクMの走査方向(X軸方向)の位置に対応した補正情報が記憶されており、基板Pのショット領域SAの露光中にマスクMの位置(レーザ干渉計51の計測結果)に応じてその補正情報を読み出すようにしているので、正確に基板Pの表面(露光面)を像面に合わせ込むことが可能となる。
本実施形態では、マスクMの非走査方向(Y軸方向)のパターン分布の変化が少ない場合、マスクMの移動に伴う照明領域IA内のパターン分布の変化、即ち、液体1に入射する露光光ELの強度変化のみを考慮するようにしてもよい。この場合、制御装置CONTは、光センサ20で計測した投影領域AR1のY軸方向(長手方向)における照度分布をX軸方向に関して積算した積算値(積算光量分布)を求め、求めた積算値を、マスクMのX軸方向の位置と対応させて求めることによって、マスクMの移動に伴う照明領域IA内のパターン分布の変化を求めることができる。
また、本実施形態においては、液体1の温度変化に起因する像面の変化に応じて基板Pの表面位置を調整したり、結像特性制御装置を用いて投影光学系PLの一部の光学素子を移動させたり光学素子間の空間の圧力を変動することにより、像面位置を調整するようにしているが、基板Pの表面位置の調整と像面位置の調整とのいずれか一方のみを行うようにしてもよい。また、マスクステージMSTでマスクMの位置を移動したり露光光の波長を微調整して像面位置を調整するようにしてもよい。また像面位置の調整は、照明光学系ILの一部の光学部材を動かしたり、交換することによって達成することもできる。さらに露光光ELの光路中の光学部材(投影光学系PL含む)の温度を調整するようにしてもよい。
また、本実施形態において、液体1の温度(分布)変化に起因する像面の変化の補正について説明したが、像面のみならず、倍率やディストーション等の結像特性が液体1の温度分布に基づいて変化する場合についても、マスクMのパターンMPの分布情報(即ち、液体1に入射する露光光ELの分布)に応じて、パターン像の結像特性の調整を行えばよい。結像特性の調整は、像面位置の調整と同様に、投影光学系PLの一部の光学素子を移動したり、光学素子間の空間の圧力を調整することによって達成できる。また、マスクMを移動したり、露光光ELの波長を微調整することによっても達成できる。
また結像特性の調整は、照明光学系ILの一部の光学部材を動かしたり、交換することによって達成することもできる。さらに露光光ELの光路中の光学部材(投影光学系PL含む)の温度を調整するようにしてもよい。
また結像特性の調整として、露光光ELの偏光の状態や波面の状態を調整するようにしてもよい。
本実施形態では、液浸走査露光中に基板P表面と投影光学系PL及び液体1を介した像面との位置を調整する際、フォーカス検出系4で基板P表面位置情報を検出し、このフォーカス検出系4の検出結果に基づいて基板ステージPSTを駆動して基板Pの位置及び姿勢を調整している。ここで、フォーカス検出系4の投光部4aから基板P表面に対して斜め上方から投射される検出光は、液体1中を通過することになるが、液体1の温度変化に応じて屈折率が変化し、基板P表面のフォーカス検出値に誤差が生じる可能性がある。この場合、記憶装置MRYに、液体1の温度(温度変化量)と屈折率(屈折率変化量)との関係を予め記憶しておき、ステップS3で求めた液体1の温度変化情報と前記関係とに基づいて液体1の屈折率を求める。液体1の厚みを考慮した上で、求めた屈折率に基づいてフォーカス検出値を補正する。これにより、液体1の温度が変化した場合でも、基板P表面位置情報を求めることができるので、より正確に基板Pの表面と像面との合わせ込みを行うことができる。なお、記憶装置MRYに記憶された液体1の温度と屈折率との関係に基づいて、フォーカス検出系4の検出値に基づく像面と基板表面との位置関係の調整量を補正するようにしてもよい。
上述したマスクMのパターン分布の計測や、その計測結果に基づく液体温度分布情報及び像特性変化情報を求めることは、少なくともマスクMが変更される毎に行えばよいが、マスクMが変更されない場合でも、定期的に行うようにしてもよい。また、マスクMのパターン分布情報を記憶装置MRYに記憶しておくことにより、所定のマスクMを使用した後、一旦アンロードし、再びそのマスクMを使用する際に、マスクMのパターン分布計測を省略し、記憶装置MRYに記憶させておいたパターン分布情報をそのまま用いることもできる。
また、本実施形態では、マスクMのパターン分布情報を求めているが、光センサ20で計測される照度分布情報をそのまま用いて、液体の温度分布の変化を求めるようにしてもよい。この場合、液体1の温度は、マスクMのパターン密度や露光用光源の出力、液浸領域AR2を形成するための単位時間当たりの液体供給量(あるいは流速)、液体や基板Pの比熱等、種々のパラメータに応じて変化する。記憶装置MRYには、これらパラメータを考慮した照度分布と液体温度変化量との関係がデータテーブルとして予め記憶されていればよい。照度分布と液体温度変化量との関係は、予め実験を行って検証しておいてもよい。また、液浸領域AR2を形成する液体1の種類を変更可能な液浸露光装置の場合には、これら各液体に応じたデータテーブルを記憶装置MRYに予め記憶しておけばよい。
投影光学系PLと基板Pとの間に配置される液体1の温度は、露光光ELの基板P表面における反射光に応じて変化することが考えられる。このような場合、この基板Pの表面の反射率を前記データテーブルのパラメータの1つとしてもよい。
なお、本実施形態では、マスクMをマスクステージMST上に載置した後に、基板ステージPST上に搭載されている光センサ20を使って投影光学系PLを介した露光光ELの分布情報を計測するとともに、その計測結果に基づいてマスクMのパターンMPの分布を計測しているが、例えば、マスクMのパターン分布情報(例えば、マスクの各位置ごとの密度、透過率)を設計値から求め、その値を記憶装置MRYに記憶し、液浸走査露光する際にこの記憶しておいた分布情報を考慮して、液体1の温度変化や温度分布の変化を予測し、その予測結果に基づいて像特性調整や基板位置調整のような投影状態の調整を行うようにしてもよい。
また、図9に示すように、マスクステージMSTとは別の位置に、マスクMのパターン分布を計測するパターン計測装置60を設けるようにしてもよい。図9に示すように、パターン計測装置60は、支持部66に支持されたマスクMの上方に設けられ、マスクMに計測光を照射する投光部61と、マスクMの下方に設けられ、マスクMに照射された計測光に基づきマスクMを透過した光を受光する受光部62とを備えている。マスクMは投光部61及び受光部62に対してX軸方向に相対的に移動しながら投光部61より計測光を照射する。受光部62は投光部61と同期移動しながらマスクMの透過光を受光することにより、マスクMのパターンエリアPA全面における計測光の透過光を受光する。ここで、マスクMと投光部61及び受光部62との相対移動は、投光部61及び受光部62の位置を固定した状態でマスクMを支持部66とともにX軸方向に移動する構成でもよいし、マスクMの位置を固定した状態で投光部61及び受光部62をX軸方向に同期移動する構成でもよいし、マスクMと投光部61及び受光部62との双方をX軸方向に互いに逆向きに移動する構成であってもよい。
受光部62の計測結果は制御装置CONTに出力されるとともに、制御装置CONTは受光部62(パターン計測装置60)の計測結果に基づいてマスクMのパターン分布を求める。パターン計測装置60で計測したマスクMのパターン密度に関する情報は記憶装置MRYに記憶される。そして、液浸走査露光する際には、この記憶させておいたパターン分布から求めた補正情報に基づいて像特性調整や基板位置調整(投影状態の調整)が行われる。
また、マスクステージMSTに支持されたマスクM及び投影光学系PLを介して基板ステージPST(投影光学系PLの像面側)に達する露光光ELの照度分布が、マスクMのパターン(パターン分布)と対応しない場合が考えられる。しかしながら、このような場合でも、上述したように基板ステージPST上の光センサ20で計測された照度分布からマスクのパターン分布を求める代わりに液体の温度分布の変化を直接求め、像特性の調整や基板Pの姿勢調整をすることにより、パターンを基板Pに良好に転写できる。
また、本実施形態では、光センサ20として非走査方向に複数の受光面を有するものを用いたが、小さな受光面を有する光センサ20を基板ステージPSTによってX軸方向又はY軸方向又はその両方に動かして、露光光ELの照度分布を求めるようにしてもよい。
第2実施形態
次に、図10を参照しながら本発明の露光装置の第2実施形態について説明する。本実施形態においては、マスクMのパターン分布(投影領域AR1に入射する露光光ELの分布)によって、液浸領域AR2の液体1に温度分布が生じないように、即ち、液体1の温度分布を均一化するように調整することで投影状態を調整する。特に、走査方向(X軸方向)と直交する方向であるY軸方向における温度分布を均一化するように調整する。また、本実施形態では、液体供給機構以外は第1実施形態と同様な構成を有している。ここで、以下の説明において上述した第1実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
図10において、液体供給機構50は、第1液体供給部51と第2液体供給部52とを備えている。第1液体供給部51には、複数の供給管51a、51b、51c、51d、51e、51fの一端部が接続されており、その他端部には、基板Pに近接して、非走査方向(Y軸方向)に沿って配置された複数の供給口53a、53b、53c、53d、53e、53fが設けられている。同様に、第2液体供給部52には、複数の供給管52a、52b、52c、52d、52e、52fの一端部が接続されており、その他端部には、基板Pに近接して、非走査方向(Y軸方向)に沿って配置された複数の供給口54a、54b、54c、54d、54e、54fが設けられている。液体供給機構50の供給口53a〜53f、54a〜54fは、投影領域AR1(の中心)に対して複数の方向に且つ異なる距離を隔てて設けられている。本実施形態における供給口53a〜53f、54a〜54fはそれぞれY軸方向に並んで配置されており、Y軸方向に離れた複数の位置からそれぞれ液体1を供給する。
また、第1及び第2液体供給部51、52は、各供給管51a〜51f、52a〜52fに接続された複数の温度調整機構を備えており、各供給口53a〜53f、54a〜54fからそれぞれ異なる温度の液体1を基板P上に供給可能となっている。即ち、本実施形態における液浸領域AR2を形成するために基板P上に液体1を供給する液体供給機構50は、複数の位置からそれぞれ異なる温度の液体1を供給可能であり、液体1の供給は複数の位置で行われ、液体供給位置、即ち、供給口53a〜53f、54a〜54fのそれぞれの位置に応じて、液体1の温度を異ならせることができる。供給口53a〜53f、54a〜54fは、それぞれ走査方向であるX軸方向に垂直な方向であるY軸方向に離れた複数の位置から、それぞれ異なる温度の液体1を供給可能である。
また、本実施形態においては、液体1の供給は第1液体供給部51と第2液体供給部52との両方で同時に行わずに、基板Pの走査方向に応じて切り換えて使用される。即ち、基板Pを+X方向に移動しながら走査露光を行う場合には、第1液体供給部51を動作させ、供給口53a〜53fからの液体の供給を行い、基板Pを−X方向に移動しながら走査露光を行う場合には、第2液体供給部52を動作させ、供給口54a〜54fから液体1の供給を行う。
液体供給機構50の動作は、制御装置CONTによって制御される。記憶装置MRYは、予めマスクMのパターン分布情報を記憶している。先に説明したように、マスクMのパターン分布によって、投影光学系PLと基板Pとの間の液体1に入射する露光光ELの分布も変化する。本実施形態においては、制御装置CONTは、露光光ELの分布に拘わらずに液体1の温度分布が均一化されるように、マスクMのパターン分布情報に基づいて、液体供給機構50の各供給口53a〜53f(または54a〜54f)から供給される液体の温度を制御する。
例えば、基板Pを+X方向に移動しながら基板P上のショット領域SAを走査露光する場合には、マスクMのパターン分布(液体1に入射する露光光ELの分布)を考慮して、供給口53d、53e、53fからチャンバ内温度と略同じ23℃の液体1を供給し、供給口53a、53b、53cから供給口53d、53e、53fから供給される液体よりも低い温度の液体を供給する。これにより、入射する露光光ELの分布(照度分布)に偏りがある場合(例えば、図8(a)参照)でも、露光光ELが通過する液体1の温度分布を均一化することで投影状態を調整することができるので、マスクMのパターンの像を精度良く基板P上に投影することができる。
次に、図10を参照しながら液浸領域における液体の温度を均一化して投影状態を調整する方法について説明する。まず、液浸露光を行う前に、図4を参照して説明したように、予め液体1に入射する露光光ELの分布を求め(ステップS1)、さらにマスクMのパターン分布(ステップS2)及び液体1の温度分布を求めておく(ステップS3)。この場合、ステップS3では、特に走査方向(X軸方向)と交差する方向であるY軸方向(非走査方向)における液体1の温度分布情報を求める。そして、制御装置CONTは、求めた液体温度分布情報に基づいて、各供給口53a〜53fから供給する液体の温度をそれぞれ調整する。これにより、液浸領域AR2を形成する液体1の、特にY軸方向における温度を均一化するとともに、液体の温度分布に起因するパターン像の劣化を防止できる。
なお、本実施形態においては、基板P上に供給する液体1の温度を調整して、投影光学系PLと基板Pとの間の液体1の温度を均一化するようにしているが、露光光の入射が少ない部分に非露光光(レジストを感光しない赤外線等)を入射してその部分の液体を加熱することで、液浸領域AR2の液体1の温度分布を均一化するようにしてもよい。
なお、本実施形態において、マスクMのパターン分布に応じて基板上に投影される像の調整(投影状態の調整)を行う際、本実施形態における調整方法と、第1実施形態における調整方法とを組み合わせても構わない。例えば、図8を参照して説明した像面位置変化の0次成分に関しては、基板ステージPSTを使って基板P表面の位置を調整することにより補正する。また、像面位置変化の1次成分に関しては、結像特性制御装置3等を用いて投影光学系PLの像特性を調整することにより補正する。さらに、像面位置変化の高次成分については、複数の供給口53a〜53fからそれぞれ供給される液体の温度を調整することにより補正する。
また、本実施形態では、各供給口53a〜53fから供給される液体1の温度を互いに変更することにより、液浸領域AR2の非走査方向における液体温度分布を均一化する構成としたが、例えば、各供給口53a〜53fからそれぞれ単位時間当たりに供給する液体の供給量を変更することによって、液浸領域AR2の非走査方向における液体温度分布を均一化することもできる。この場合、単位時間当たりの液体の供給量が多い箇所ほど液体の温度上昇が抑制され、反対に、単位時間当たりの液体の供給量が少ない箇所ほど液体の温度上昇が促進される。なお、各供給口53a〜53fから供給される液体の供給量に応じて、液浸領域AR2を形成する液体1が基板Pに与える圧力が変化し、基板Pの表面とパターン像の結像面との位置合わせに誤差が生じる場合には、各供給口53a〜53fから供給される液体の供給量に応じて基板Pの表面とパターン像の結像面と位置関係を補正してもよい。
また、本実施形態では、各供給口53a〜53fから供給される液体1の温度を互いに変更することにより、液浸領域AR2の非走査方向における液体温度分布を均一化するようにしているが、パターン像の投影状態を所望の状態に調整するために、液浸領域AR2の非走査方向における液体温度分布が不均一になるように各供給口53a〜53fから供給される液体1の温度を互いに調整することもできる。
また、本実施形態では、投影光学系PLの投影領域AR1に対してX軸方向(走査方向)の片側から液体1の供給を行う構成としたが、投影領域AR1に関してX軸方向(走査方向)の両側から液体1の供給を行うようにしてもよい。また、更にY軸方向(非走査方向)の片側または両側に液体供給口を設け、X軸及びY軸方向から液体1を供給するようにしてもよい。さらに、これらの液体供給口を複数設け、各供給口から異なる温度の液体をそれぞれ供給するようにしてもよい。
第3実施形態
次に、本発明の露光装置EXの第3実施形態について、図11を用いて説明する。本実施形態では、液体供給機構及び液体回収機構を以下のように変更した。図11において、露光装置EXは、X軸方向に垂直な方向であるZ軸方向に2つ並べて設けられた供給管71、72(供給口71A、72A)を有する液体供給機構10と、供給管71、72に対向するようにZ軸方向に2つ並べて設けられた回収管73、74(回収口73A、74A)を有する液体回収機構30とを備えている。液体供給機構10は、各供給口71A、72Aからそれぞれ温度の異なる液体を供給可能である。これにより、液浸領域AR2において、互いに温度の異なる2つの液体層LQ1、LQ2を形成することができる。
上記のような方法で液体を供給することで、例えば、投影光学系PLの先端部の光学素子2に接触する上層の液体層LQ1を形成するための液体1を常時略同じ温度で供給し、露光光ELが照射されて温度上昇しやすい基板P表面に接触する下層の液体層LQ2の液体1の温度を、マスクMのパターン分布(入射される露光光の分布)に応じて変更しつつ供給することができる。上層の液体層LQ1を形成するための液体1を常時略一定の温度に調整することにより、基板Pから発する熱による熱変化が投影光学系PLの先端部の光学素子2に伝達することを抑制できる。また、下層の液体層LQ2を形成するために供給する液体を、上層の液体層LQ1を形成するために供給する液体より温度を低くするようにしてもよい。もちろん、上層の液体層LQ1を形成する液体1の温度をマスクMのパターン分布(入射される露光光の分布)に応じて変更するようにしてもよい。
また、各供給口71A、72Aから供給される液体の温度は、上層の液体層LQ1の液体の温度と下層の液体層LQ2の液体の温度とがほぼ同一になるようにを調整してもよいし、温度差が生じるように調整してもよい。
なお、本実施形態において、供給管及び回収管はZ軸方向にそれぞれ2つ設けられているが、3つ以上の任意の数の供給管及び回収管を、それぞれZ軸方向に並べて配置してもよい。これにより、液体供給機構10は、Z軸方向に離れた複数の位置からそれぞれ異なる温度の液体1を供給可能である。
また図11においては、X軸方向に離れた供給管71、72と回収管73、74の一組のみを示しているが、供給管と回収管の複数組をY軸方向に並べて配置してもよい。
また、本実施形態おいても、各供給口71A、72Aからそれぞれ単位時間当たりに供給する液体の供給量を異ならせることができる。この場合、液体層LQ1の液体と液体層LQ2の液体との温度が同一となるように、あるいは所望の温度差が生じるように供給口71Aと供給口71Bの供給量を異ならせることができる。また、液体層LQ1の液体の流れと液体層LQ2の液体の流れとがほぼ同一の速度となるように、あるいは所望の速度差が生じるように供給口71Aと供給口71Bの供給量を異ならせることもできる。
第4実施形態
次に、本発明の露光装置EXの第4実施形態について、図12を用いて説明する。本実施形態では、以下のような液体の温度計測器(センサ)を設けるとともに、第1及び第2液体供給部を液体回収機構として用いる構成とした。図12に示すように、露光装置EXは、液体の温度を計測するためにY軸方向に離れた複数のセンサ素子81a〜81fを有する温度センサ81、及びセンサ素子82a〜82fを有する温度センサ82を備えている。センサ素子81a〜81fはそれぞれ供給管51a〜51fに設けられている。また、センサ素子82a〜82fはそれぞれ供給管52a〜52fに設けられている。
本実施形態の第1液体供給部51、第2液体供給部52は、それぞれ基板P上の液体1を回収する液体回収機構として機能する。即ち、第1及び第2液体供給部51、52は、供給口及び供給管を介して基板P上の液体1を吸引及び回収することができる。例えば、第1液体供給部51が基板P上に液体1を供給している間、第2液体供給部52は液体回収機構として機能し、基板P上の液体1を回収する。回収された液体1は、供給管(回収管)52a〜52fを通過する際、センサ素子82a〜82fで温度が計測される。つまり、液体回収機構として機能する第2液体供給部52において、Y軸方向に離れた複数の位置に設けられた回収口(供給口)54a〜54eによって基板P上の液体1を回収するとともに、複数のセンサ素子82a〜82fによって複数の位置で回収された液体1の温度をそれぞれ計測することができる。同様に、第2液体供給部52が基板P上に液体1を供給している間、第1液体供給部51は液体回収機構として機能し、基板P上の液体1を回収する。回収された液体1は、供給管(回収管)51a〜51fを流通する際、センサ素子81a〜81fにより温度が計測される。
次に、図12に示した露光装置EXを用いた液浸露光の手順を、図13に示したフローチャート図を参照しながら説明する。まず、マスクMをマスクステージMST上にロードするとともに、基板Pを基板ステージPST上にロードする。次いで、制御装置CONTは液体供給機構50及び液体回収機構30をそれぞれ駆動して、投影光学系PLと基板Pとの間に液浸領域AR2を形成する。次いで、マスクMを露光光ELで照明し、基板Pに対してテスト露光を行う(ステップSB1)。液浸領域AR2の液体1は、露光光ELによりY軸方向を長手方向とするスリット状の投影領域AR1に応じた領域のみ照射されるので、主にY軸方向に温度分布が生じることになる。ここで、基板Pとして、デバイス製造用基板とは別のテスト用基板を用いてもよい。
例えば、基板Pを−X方向に移動しつつ液浸露光するために、第2液体供給部52によって液体が供給されている場合、第1液体供給部51が液体回収機構として機能する。そのため、基板P上の液体1は回収管(供給管)51a〜51fを介して回収される。回収管51a〜51fをそれぞれ流通する液体の温度は、各センサ素子81a〜81fによって計測される。各センサ素子81a〜81fの温度の計測結果は制御装置CONTに出力される。制御装置CONTは、Y軸方向に並んだ複数のセンサ素子81a〜18fのそれぞれの検出結果に基づいて、液体1のY軸方向における温度分布を求める(ステップSB2)。ここで、液体回収機構として機能する第1液体供給部51は、液体温度を計測可能な量の液体を回収するような構成とすることができる。
制御装置CONTは、ステップSB2で求めた液体温度分布に基づいて、投影光学系PLと液体1とを介して基板P上に所望のパターン像が投影されるように、つまり、液浸領域AR2の液体1のY軸方向における温度が均一になるように、第2液体供給部52に接続する各供給口54a〜54fから供給する液体の温度についての補正量を求める(ステップSB3)。
次いで、制御装置CONTは、求めた液体温度の補正量に基づいて、各供給口54a〜54fから基板P上に供給する液体1の温度を調整しつつ、実際のデバイス製造のための液浸露光(以下、本露光という)を行う(ステップSB4)。なお、本露光の際には、第1液体供給部51は、液体回収部として機能しない(機能が解除される)。
一方、基板Pを+X方向に移動しながら露光する際には、第2液体供給部52が液体回収機構として機能し、上述した手順と同様の手順でテスト露光及び本露光が行われる。
なお、本実施の形態では、投影状態の調整方法として、液体1の温度分布を求めた後(ステップSB2)、所望のパターン像が基板P上に投影されるように、供給する液体1の温度を調整したが、上述したように、液体1の単位時間当たりの供給量の調整、基板Pの位置及び姿勢の調整、投影光学系PLの像特性の調整等を行っても構わない。また、これら各種調整を組み合わせて行っても構わない。
また、本実施形態においては、複数のセンサ素子81a〜18fのそれぞれの検出結果に基づいて液浸領域AR2の液体1の温度が均一になるように各供給口から供給される液体温度を調整しているが、テスト露光によって基板P上に形成されたパターンの解析を行った後に、各供給口から供給される液体温度の補正量を決定してもよい。この場合、液浸領域AR2の液体1の温度が不均一となるように、各供給口から供給される液体温度を調整してもよい
第5実施形態
次に、本発明の露光装置EXの第5実施形態について、図14を用いて説明する。本実施形態では、ダミー基板を用いて液体の温度分布を求める構成とした。図14に示すように、ダミー基板DPの表面に複数の温度センサ90が設けられている。ダミー基板DPは、デバイス製造用の基板Pと略同じ大きさ及び形状を有しており、基板Pを保持して移動可能な可動部材である基板ステージPSTに配置可能(保持可能)となっている。ダミー基板DPは、基板ステージPSTに対して脱着可能である。即ち、ダミー基板DP上の温度センサ90も基板ステージPSTに対して脱着可能となる。
温度センサ90は、ダミー基板DPの表面に設けられた複数のセンサ素子91を有している。センサ素子91は、例えば熱電対により構成されている。
ダミー基板DP上には、ショット領域SA(図6参照)に応じた複数のセンサ配置領域SCが設定されている。このセンサ配置領域SCは、それぞれデバイスパターンが露光されるショット領域SAの大きさ(形状)及び配置と略同じに設定されている。本実施形態ではX軸方向及びY軸方向にそれぞれ3箇所ずつ(3×3)、合計9箇所のセンサ配置領域SCが略マトリクス状に設定されている。
センサ素子91は、各センサ配置領域SCにそれぞれ平面視マトリクス状に複数配置されている。本実施形態において、センサ素子91は、1箇所のセンサ配置領域SCに、X軸方向及びY軸方向にそれぞれ5個ずつ(5×5)、合計25個設けられている。即ち、ダミー基板DP上の温度センサ90は、少なくとも基板P(ダミー基板DP)の非走査方向(Y軸方向)に離れた複数のセンサ素子91を有している。
温度センサ90のセンサ素子91の検出部(プローブ)は、ダミー基板DPの表面に露出しており、液浸領域AR2の液体1の温度を検出することができる。この温度センサ90を備えたダミー基板DPを基板ステージPSTで保持することにより、液浸領域AR2の液体1の温度を計測する温度センサ90を投影光学系PLの像面付近に移動可能に配置することができる。
また、投影光学系PLの投影領域AR1を含むショット領域SAに配置されるセンサ素子91は、投影光学系PLの投影領域AR1及びその近傍に配置されることになる。センサ素子91が投影領域AR1に関して非走査方向(Y軸方向)に複数配置されていることにより、投影領域AR1の少なくとも非走査方向(Y軸方向)における温度分布を計測することができる。
また、各センサ配置領域SCには、センサ素子91(温度センサ90)の温度検出信号を制御装置CONTに送る信号伝達線(ケーブル)93が接続されている。信号伝達線の一端部は、各センサ配置領域SCのセンサ素子91(温度センサ90)に接続され、他端部は、ダミー基板DP外部(基板ステージPST外部)の制御装置CONTに接続されている。信号伝達線93は、ダミー基板DPに埋設されており、ダミー基板DPの端部から出た信号伝達線93が制御装置CONTに接続されている。
また、ダミー基板DPの表面に設けられた各センサ配置領域SCは、互いに異なる光反射率を有するような表面処理されている。具体的には、各センサ配置領域SCのそれぞれに対して互いに異なる光反射率を有する材料膜がコーティングされている。これにより、各センサ配置領域SCに配置されたセンサ素子91(温度センサ90)は、投影光学系PL及び液体1を介して露光光ELが照射された際、互いに異なる光反射条件の下で、液体1の温度を計測することができる。
また、ダミー基板DP上には、各センサ配置領域SC毎にセンサ配置領域SCを所定位置に対して位置合わせするためのアライメントマーク94が設けられている。アライメントマーク94は、不図示のアライメント系によって検出される。アライメント系はアライメントマーク94の位置の検出結果に基づいて、センサ配置領域SCに配置された温度センサ90(センサ素子91)に対する投影光学系PLの投影領域AR1の位置情報を求める。次いで、アライメントマーク94を用いて、各センサ配置領域SCのセンサ素子91と投影光学系PLの投影領域AR1とを位置合わせする。具体的には、投影光学系PLの投影領域AR1内にセンサ配置領域SCにおいてマトリクス状に配置されたセンサ素子91のうちの非走査方向(Y軸方向)に並んだセンサ素子91が配置されるように、即ち、複数のセンサ素子91のY軸方向の並び方向と投影光学系PLの投影領域AR1の長手方向とが一致するように、位置合わせ処理が行われる。
次に、図14に示した温度センサ90で液浸領域AR2の液体1の温度を計測する手順について説明する。デバイス製造のための液浸露光処理を行う前に、まず、マスクMをマスクステージMSTにロードするとともに、上述した温度センサ90を備えたダミー基板DPを基板ステージPSTにロードする。次いで、制御装置CONTは、上述したアライメントマーク94の位置を検出し、投影光学系PLの投影領域AR1とセンサ配置領域SCの温度センサ90との位置関係を求め、投影領域AR1の長手方向(Y軸方向)とセンサ素子91のY軸方向に関する並び方向とを一致させる。次いで、制御装置CONTは、液体供給機構50及び液体回収機構30をそれぞれ駆動して投影光学系PLと基板Pとの間に液浸領域AR2を形成するとともに、マスクMを露光光ELで照明する。マスクM及び投影光学系PLを通過した露光光ELが液体1に照射されることにより、液体1にその露光光ELの照度分布に起因する温度分布が生じる。制御装置CONTは、デバイス製造の際の動作と同様に、マスクMを支持したマスクステージMSTと、ダミー基板DPを支持した基板ステージPSTとをX軸方向に走査移動しつつ、基板ステージPST上に配置された温度センサ90を用いて液浸領域AR2の液体1の温度分布を計測する。ショット領域SA(投影領域AR1)のY軸方向の温度分布、ひいてはマスクMのY軸方向のパターン分布は、Y軸方向に並んだ各センサ素子91の検出結果に基づいて計測される。一方、ショット領域SAのX軸方向の温度分布、ひいてはマスクMのX軸方向のパターン分布は、投影領域AR1に対してX軸方向に走査移動するセンサ配置領域SCにX軸方向に設けられた複数のセンサ素子91の各検出結果に基づいて計測される。これにより、1つのショット領域SAに対するXY方向における液体1の温度分布を計測することができる。
このとき、制御装置CONTは、ダミー基板DP上に複数設定された各センサ配置領域SCについて温度分布計測を行う。センサ配置領域SCは光反射率がそれぞれ異なるように設定されているため、例えば、デバイス製造時に光反射率(具体的にはフォトレジストの種類)が異なる基板Pを使用する際、各基板Pに応じた光反射条件における液体温度分布情報を計測することができる。
制御装置CONTは、ダミー基板DP上に設けられた温度センサ90を用いて計測された液体1の温度情報(温度分布情報)に基づいて、投影光学系PLと液体1とを介して基板P上に所望のパターン像が投影されるように、上述したような各種の動作を実行することができる。例えば、結像特性制御装置3の駆動を補正する補正量を求めたり、走査露光時における基板ステージPSTの移動(姿勢)を補正する補正量を求める。また、上記の第2実施形態のように、液浸領域AR2の液体1の温度が均一になるように、各供給口54a〜54f(53a〜53f)(図10参照)から供給する液体の温度を補正する補正量を求める。これらの求めた補正量は、記憶装置MRYに記憶される。
制御装置CONTが上記補正量を求める処理をしている間、ダミー基板DPが基板ステージPSTからアンロードされるとともに、デバイス製造用の基板Pが基板ステージPSTにロードされる。次いで、制御装置CONTは、求めた補正量に基づいて、液浸領域AR2を形成するために供給する液体1の温度を調整したり、投影光学系PLの像特性を調整したり、あるいは基板ステージPSTの移動(姿勢)を調整することにより、投影光学系PLと液体1との介して形成される像面と基板P表目のとの位置関係を調整しつつ、基板Pに対して液浸走査露光を行う。
図15は、温度センサ90を備えるダミー基板DPの別実施例である。図15において、ダミー基板DP上に温度センサ90の温度検出信号を記憶する記憶素子95が設けられている。具体的には、記憶素子95はダミー基板DPに埋設されている。
図15に示したダミー基板DPを用いて液浸領域AR2の液体1の温度を検出する場合、ダミー基板DPが基板ステージPSTに保持された状態で液浸領域AR2の液体1の温度が検出され、その検出結果は記憶素子95に記憶される。次いで、このテスト露光を行った後、ダミー基板DPを基板ステージPSTからアンロードし、記憶素子95に記憶されている温度検出結果を抽出する(読み出す)。制御装置CONTは、デバイス製造のための液浸露光処理を行う際に、抽出した液体の温度情報に基づいて、上記実施形態と同様に、投影光学系PLの像特性を調整するための補正量を求めたり、あるいは液浸領域AR2を形成する液体1の温度を調整するための補正量を求める。ダミー基板DPに対して記憶素子95を脱着可能に設けておき、液体1の温度を検出後、この記憶素子95をダミー基板DPから取り外して、記憶素子95に記憶されている液体温度の検出結果を抽出するようにしてもよい。
以上説明したように、移動可能な基板ステージPST上に温度センサ90を設けた基板を配置することにより、露光光ELに対して走査移動しながら液体温度計測ができるので、デバイス製造のためのショット領域SAに応じた液浸領域AR2の液体温度分布を計測することができる。また、デバイス製造用の基板Pと略同一形状のダミー基板DPに温度センサ90を設けたことにより、投影光学系PLとダミー基板DPとの間に液浸領域AR2を良好に形成した状態で、即ち、デバイス製造時の液浸露光条件と略同一の条件で温度計測することができる。さらに、この計測結果に基づいて、液浸露光時における液体1の温度調整を精度良く行うことができる。
また、液浸領域AR2の温度分布は、上述したように、主に露光光ELの照射に起因して生じるが、例えば、露光装置周囲(液浸領域周囲)の温度環境によっても生じることも考えられる。この場合、本実施形態のように、温度センサ90で液体温度を直接計測することにより、露光装置周囲の温度環境が変動しても液浸領域AR2の液体温度分布を精度良く計測することができる。
なお、本実施形態において、液浸領域AR2の液体1の温度を検出する温度センサ90は、基板ステージPSTに対して脱着可能なダミー基板DP上に設けたが、直接、基板ステージPSTの所定の位置に設けてもよい。また、基板ステージPSTの所定の位置に対して脱着可能に設けてもよい。あるいは、基板ステージPST上の所定の領域内において、この温度センサ90を移動可能に設けてもよい。あるいは、投影光学系PLの先端部の光学素子2近傍に、液浸領域AR2の液体温度を検出する温度センサを設けてもよい。
また、上述の各実施形態においては、主に投影状態を調整するために、各供給口から供給される液体の温度を調整しているが、他の目的のために各供給口から供給される液体の温度を調整しても構わない。例えば、基板Pの所望の温度分布となるように各供給口から供給される液体の温度を調整するようにしてもよい。
上述したように、上記実施形態における液体1は純水を用いた。純水は、半導体製造工場等で容易に大量に入手できるとともに、基板P上のフォトレジストや光学素子(レンズ)等に対する悪影響がない利点がある。また、純水は環境に対する悪影響がないとともに、不純物の含有量が極めて低いため、基板Pの表面及び投影光学系PLの先端面に設けられている光学素子の表面を洗浄する作用も期待できる。
そして、波長が193nm程度の露光光ELに対する純水(水)の屈折率nは略1.44程度と言われており、露光光ELの光源としてArFエキシマレーザ光(波長193nm)を用いた場合、基板P上では1/n、即ち、約134nm程度に短波長化されて高い解像度が得られる。更に、焦点深度は空気中に比べて約n倍、即ち、約1.44倍程度に拡大されるため、空気中で使用する場合と同程度の焦点深度が確保できればよい場合には、投影光学系PLの開口数をより増加させることができ、この点でも解像度が向上する。
本実施形態では、投影光学系PLの先端に光学素子2が取り付けられており、このレンズにより投影光学系PLの光学特性、例えば収差(球面収差、コマ収差等)の調整を行うことができる。なお、投影光学系PLの先端に取り付ける光学素子としては、投影光学系PLの光学特性の調整に用いる光学プレートであってもよい。あるいは露光光ELを透過可能な平行平面板であってもよい。液体1と接触する光学素子を、レンズより安価な平行平面板とすることにより、露光装置EXの運搬、組立、調整時等において投影光学系PLの透過率、基板P上での露光光ELの照度、及び照度分布の均一性を低下させる物質(例えばシリコン系有機物等)がその平行平面板に付着しても、液体1を供給する直前にその平行平面板を交換するだけでよく、液体1と接触する光学素子をレンズとする場合に比べてその交換コストが低くなるという利点がある。即ち、露光光ELの照射によりレジストから発生する飛散粒子、または液体1中の不純物の付着などに起因して液体1に接触する光学素子の表面が汚れるため、その光学素子を定期的に交換する必要があるが、この光学素子を安価な平行平面板とすることにより、レンズに比べて交換部品のコストが低く、且つ交換に要する時間を短くすることができ、メンテナンスコスト(ランニングコスト)の上昇やスループットの低下を抑えることができる。
なお、液体1の流れによって生じる投影光学系PLの先端の光学素子と基板Pとの間の圧力が大きい場合には、その光学素子を交換可能とするのではなく、その圧力によって光学素子が動かないように堅固に固定してもよい。
なお、本実施形態では、投影光学系PLと基板P表面との間は液体1で満たされている構成であるが、例えば基板Pの表面に平行平面板からなるカバーガラスを取り付けた状態で液体1を満たす構成であってもよい。
なお、本実施形態の液体1は水であるが、水以外の液体であってもよい、例えば、露光光ELの光源がF2レーザである場合、このF2レーザ光は水を透過しないので、液体1としてはF2レーザ光を透過可能な例えばフッ素系オイル等のフッ素系流体であってもよい。また、液体1としては、その他にも、露光光ELに対する透過性があってできるだけ屈折率が高く、投影光学系PLや基板P表面に塗布されているフォトレジストに対して安定なもの(例えばセダー油)を用いることも可能である。この場合も、用いる液体1の極性に応じて表面処理が行われる。
なお、上記各実施形態の基板Pとしては、半導体デバイス製造用の半導体ウエハのみならず、ディスプレイデバイス用のガラス基板や、薄膜磁気ヘッド用のセラミックウエハ、あるいは露光装置で用いられるマスクまたはレチクルの原版(合成石英、シリコンウエハ)等が適用される。
露光装置EXとしては、マスクMと基板Pとを同期移動してマスクMのパターンを走査露光するステップ・アンド・スキャン方式の走査型露光装置(スキャニングステッパ)の他に、マスクMと基板Pとを静止した状態でマスクMのパターンを一括露光し、基板Pを順次ステップ移動させるステップ・アンド・リピート方式の投影露光装置(ステッパ)にも適用することができる。また、本発明は基板P上で少なくとも2つのパターンを部分的に重ねて転写するステップ・アンド・スティッチ方式の露光装置にも適用できる。
また、本発明は、ツインステージ型の露光装置にも適用できる。ツインステージ型の露光装置の構造及び露光動作は、例えば特開平10−163099号及び特開平10−214783号(対応米国特許6,341,007、6,400,441、6,549,269及び6,590,634)、特表2000−505958号(対応米国特許5,969,441)あるいは米国特許6,208,407に開示されており、本国際出願で指定または選択された国の法令で許容される限りにおいて、それらの開示を援用して本文の記載の一部とする。
露光装置EXの種類としては、基板Pに半導体素子パターンを露光する半導体素子製造用の露光装置に限られず、液晶表示素子製造用又はディスプレイ製造用の露光装置や、薄膜磁気ヘッド、撮像素子(CCD)あるいはレチクル又はマスクなどを製造するための露光装置等にも広く適用できる。
基板ステージPSTやマスクステージMSTにリニアモータを用いる場合は、エアベアリングを用いたエア浮上型およびローレンツ力またはリアクタンス力を用いた磁気浮上型のどちらを用いてもよい。また、各ステージPST、MSTは、ガイドに沿って移動するタイプでもよく、ガイドを設けないガイドレスタイプであってもよい。ステージにリニアモータを用いた例は、米国特許5,623,853及び5,528,118に開示されており、それらの開示を、本国際出願で指定または選択された国の法令で許容される限りにおいて、本文の記載の一部として援用する。
各ステージPST、MSTの駆動機構としては、二次元に磁石を配置した磁石ユニットと、二次元にコイルを配置した電機子ユニットとを対向させ電磁力により各ステージPST、MSTを駆動する平面モータを用いてもよい。この場合、磁石ユニットと電機子ユニットとのいずれか一方をステージPST、MSTに接続し、磁石ユニットと電機子ユニットとの他方をステージPST、MSTの移動面側に設ければよい。
基板ステージPSTの移動により発生する反力は、投影光学系PLに伝わらないように、フレーム部材を用いて機械的に床(大地)に逃がしてもよい。この反力の処理方法は、例えば、米国特許5,528,118(特開平8−166475号公報)に詳細に開示されており、これらの開示を、本国際出願で指定または選択された国の法令で許容される限りにおいて、本文の記載の一部として援用する。
マスクステージMSTの移動により発生する反力は、投影光学系PLに伝わらないように、フレーム部材を用いて機械的に床(大地)に逃がしてもよい。この反力の処理方法は、例えば、米国特許5,874,820(特開平8−330224号公報)に詳細に開示されており、本国際出願で指定または選択された国の法令で許容される限りにおいて、本文の記載の一部とする。
以上のように、本願実施形態の露光装置EXは、本願特許請求の範囲に挙げられた各構成要素を含む各種サブシステムを、所定の機械的精度、電気的精度、光学的精度を保つように、組み立てることで製造される。これら各種精度を確保するために、この組み立ての前後には、各種光学系については光学的精度を達成するための調整、各種機械系については機械的精度を達成するための調整、各種電気系については電気的精度を達成するための調整が行われる。各種サブシステムから露光装置への組み立て工程は、各種サブシステム相互の、機械的接続、電気回路の配線接続、気圧回路の配管接続等が含まれる。この各種サブシステムから露光装置への組み立て工程の前に、各サブシステム個々の組み立て工程があることはいうまでもない。各種サブシステムの露光装置への組み立て工程が終了したら、総合調整が行われ、露光装置全体としての各種精度が確保される。なお、露光装置の製造は温度及びクリーン度等が管理されたクリーンルームで行うことが望ましい。
半導体デバイス等のマイクロデバイスは、図16に示すように、マイクロデバイスの機能・性能設計を行うステップ201、この設計ステップに基づいたマスク(レチクル)を製作するステップ202、デバイスの基材である基板を製造するステップ203、前述した実施形態の露光装置EXによりマスクのパターンを基板に露光する露光処理ステップ204、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程を含む)205、検査ステップ206等を経て製造される。
1…液体、3…結像特性制御装置(調整手段)、10…液体供給機構、30…液体回収機構、50…液体供給機構(調整手段)、51…第1液体供給部(調整手段、液体回収機構)、52…第2液体供給部(調整手段、液体回収機構)、81a〜81f…温度センサ、82a〜82f…温度センサ、90…温度センサ、91…センサ素子、AR1…投影領域、AR2…液浸領域、CONT…制御装置(調整手段)、DP…ダミー基板、EX…露光装置、IA…照明領域(照射領域)、M…マスク、MP…マスクパターン、MST…マスクステージ(調整手段)、P…基板、PL…投影光学系、PST…基板ステージ(可動部材、調整手段)