JP5143024B2 - 褐色皮膜組成物およびその調製方法 - Google Patents

褐色皮膜組成物およびその調製方法 Download PDF

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Description

本発明は、褐色着色料としてカラメル(カラメルI、II、IIIまたはIV)を用いて調製される褐色皮膜組成物、特に基剤成分として水溶性セルロース誘導体を用いて調製されるカプセル基剤に適した皮膜組成物であって、カラメルの凝集が抑制された透明度の高い褐色皮膜組成物、およびその調製方法に関する。
また本発明は、皮膜形成成分として水溶性セルロース誘導体、および褐色着色料としてカラメル(カラメルI、II、IIIまたはIV)を用いて調製される褐色皮膜組成物について、カラメルの凝集を抑制する方法に関する。
従来、医薬品、医薬部外品、食品などに使用される硬質カプセルとしては、主にゼラチンカプセルが用いられている。しかし、ゼラチンカプセルは皮膜の水分含量が11%以下に低水分化すると強度が著しく低下し、例えば中に吸湿性の物質を充填した場合には当該物質にカプセル皮膜中の水分が吸い取られる結果、脆弱化して割れやすくなるという欠点がある。例えば、平均分子量が200〜600の低分子量ポリエチレングリコール(以下、「低分子量PEG」ともいう)、グリセリン脂肪酸エステルおよび中鎖脂肪酸トリグリセライドは、優れた溶解性と吸収性を有することから汎用されている賦形剤であるものの、吸湿性を有することから、ゼラチンカプセルを用いて製剤化することは難しいとされている。またゼラチンカプセルは、上記の理由から水分含量を低減できず、15%と水分を比較的多く含むため、水反応性を有する物質や水分に対して不安定な物質は充填できないという問題もある(特許文献1など参照)。
このため、かかるゼラチンカプセルの欠点を解消した非ゼラチン硬質カプセルとして、基剤原料として水溶性セルロース誘導体を用いたカプセルや、水溶性セルロース誘導体にポリビニルアルコールやゲル化剤を組み合わせたカプセルが提案されている(特許文献1〜4など参照)。特に水溶性セルロース誘導体としてヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を用いたカプセル(HPMCカプセル)は、低水分下でも良好な強度を有し、吸湿性や水反応性の高いものも充填可能である点で優れている。
特開平3−279325号公報 特公昭47−4310号公報 特開昭61−100519号公報 特開昭61−266060号公報 特表2001−506692号公報 特表2002−525412号公報 特表2003−505565号公報 特表2003−521551号公報
前述するように水溶性セルロース誘導体は硬質カプセルの基剤として優れているものの、本発明者の実験によると、水溶性セルロース誘導体に褐色着色料としてカラメルを配合すると、水溶性セルロース誘導体との反応でカラメルが経時的に凝集して、カプセル基剤内に斑点が生じたり、またカプセル基剤の透明度が低下するなどといった問題が生じることを見出した。ところで、カラメルは、カプセル基剤の着色料として従来から公知の着色料である(例えば、上記特許文献5〜8等参照)。
本発明は、上記問題を解消するために開発されたものであり、水溶性セルロース誘導体を皮膜形成成分とし、且つカラメル(カラメルI、II、IIIまたはIV)で着色された褐色皮膜組成物、特にカプセル基剤として好適に用いられる皮膜組成物であって、カラメルの凝集が抑制された透明度の高い褐色皮膜組成物を提供することを目的とする。またかかる褐色皮膜組成物の調製方法、特にカラメルの凝集を抑制してなる褐色皮膜組成物の調製方法を提供することを目的とする。さらに、本発明は、皮膜形成成分として水溶性セルロース誘導体および褐色着色料としてカラメル(カラメルI、II、IIIまたはIV)を用いて調製される褐色皮膜組成物について、カラメルの凝集を抑制する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するために日夜鋭意検討していたところ、水溶性セルロース誘導体と褐色着色料としてカラメルを用いて皮膜組成物を調製する際に、pH調整剤を用いて皮膜組成物のpHを所望のpH域に調整することによって、カラメルが凝集するといった問題を解消することができ、透明度の高い褐色の皮膜組成物、特にカプセル基剤として好適な褐色皮膜組成物が調製できることを見出した。
本発明はかかる知見に基づいて完成されたものであり、下記の態様を含むものである。
(1)褐色皮膜組成物
(1-1)水溶性セルロース誘導体、カラメルおよびpH調整剤を含有するフィルムまたはシート状の褐色皮膜組成物。
(1-2)水溶性セルロース誘導体およびカラメルを含む水溶液を固化して形成される皮膜組成物であって、皮膜形成に使用する上記水溶液がpH調整剤を含有するものであることを特徴とする、(1-1)記載の褐色皮膜組成物。
(1-3)上記カラメルが、カラメルI、IIおよびIVからなる群から選択されるいずれか少なくとも1種のカラメルであって、pH調整剤が酸剤であることを特徴とする、(1-1)または(1-2)に記載する褐色皮膜組成物。
(1-4)カラメルが、カラメルI、IIおよびIVからなる群から選択されるいずれか少なくとも1種のカラメルであって、皮膜形成に使用する水溶液が、pH調整剤を含有しない水溶液よりもpHが低くなるようにpH調整剤を含有するものであることを特徴とする、(1-2)に記載する褐色皮膜組成物。
(1-5)皮膜形成に使用する水溶液が、pH7以下、好ましくはpH6.9以下であることを特徴とする、(1-4)に記載する褐色皮膜組成物。
(1-6)上記カラメルがカラメルIIIであって、pH調整剤がアルカリ剤であることを特徴とする、(1-1)または(1-2)に記載する褐色皮膜組成物。
(1-7)カラメルがカラメルIIIであって、皮膜形成に使用する水溶液が、pH調整剤を含有しない水溶液よりもpHが高くなるようにpH調整剤を含有するものであることを特徴とする、(1-2)に記載する褐色皮膜組成物。
(1-8)皮膜形成に使用する水溶液が、pH7.6以上、好ましくはpH7.7以上であることを特徴とする、(1-7)に記載する褐色皮膜組成物。
(1-9)皮膜形成に使用する水溶液が、さらにゲル化剤、および必要に応じてゲル化補助剤を含有するものである、(1-2)に記載する褐色皮膜組成物。
(2)容器およびカプセル製剤
(2-1)(1-1)乃至(1-9)のいずれかに記載する褐色皮膜組成物を少なくとも一部に用いて形成される、食品、医薬品、香粧品、農薬または飼料用の容器。
(2-2)カプセル形態を有する(2-1)に記載する容器。
(2-3)キャップ部とボディ部からなるカプセルであって、当該キャップ部とボディ部のいずれか少なくとも1方が、(1-1)乃至(1-9)のいずれかに記載する褐色皮膜組成物を用いて調製されてなるものである、(2-2)に記載するカプセル形態を有する容器。
(2-4)(2-2)または(2-3)に記載するカプセル形態の容器に内容物が充填されてなるカプセル製剤。
(2-5)内容物が食品、医薬品、香粧品、農薬または飼料である(2-4)に記載するカプセル製剤。
(3)褐色皮膜組成物の調製方法
(3-1)水溶性セルロース誘導体、カラメルおよびpH調整剤を含む水溶液を固化して形成する、褐色皮膜組成物の調製方法。
(3-2)上記カラメルが、カラメルI、IIおよびIVからなる群から選択されるいずれか少なくとも1種のカラメルであって、pH調整剤が酸剤であることを特徴とする、(3-1)に記載する褐色皮膜組成物の調製方法。
(3-3)カラメルが、カラメルI、IIおよびIVからなる群から選択されるいずれか少なくとも1種のカラメルであって、水溶性セルロース誘導体、カラメルおよびpH調整剤を含む水溶液を、そのpHがpH調整剤を含有しない対照の水溶液のpHよりも低くなるように、pH調整剤で調整することを特徴とする、(3-2)に記載する褐色皮膜組成物の調製方法。
(3-4)上記水溶性セルロース誘導体、カラメルおよびpH調整剤を含む水溶液のpHが7以下、好ましくは6.9以下となるように調整することを特徴とする、(3-3)に記載する褐色皮膜組成物の調製方法。
(3-5)上記カラメルがカラメルIIIであって、pH調整剤がアルカリ剤であることを特徴とする、(3-1)に記載する褐色皮膜組成物の調製方法。
(3-6)カラメルが、カラメルI、IIおよびIVからなる群から選択されるいずれか少なくとも1種のカラメルであって、水溶性セルロース誘導体、カラメルおよびpH調整剤を含む水溶液を、そのpHがpH調整剤を含有しない対照の水溶液のpHよりも高くなるように、pH調整剤で調整することを特徴とする、(3-5)に記載する褐色皮膜組成物の調製方法。
(3-7)上記水溶性セルロース誘導体、カラメルおよびpH調整剤を含む水溶液のpHが7.6以上、好ましくは7.7以上となるように調整することを特徴とする、(3-6)に記載する褐色皮膜組成物の調製方法。
(3-8)上記水溶性セルロース誘導体、カラメルおよびpH調整剤を含む水溶液が、さらにゲル化剤、および必要に応じてゲル化補助剤を含有するものである、(3-1)に記載する褐色皮膜組成物の調製方法。
(3-9)皮膜組成物内でのカラメル凝集が抑制されてなる褐色皮膜組成物の調製方法である、(3-1)乃至(3-8)のいずれかに記載する調製方法。
(4)皮膜組成物内でのカラメル凝集物の生成を抑制する方法
(4-1)水溶性セルロース誘導体およびカラメルを含む水溶液を固化して形成される褐色皮膜組成物内でのカラメル凝集物の生成を抑制する方法であって、上記水溶液が、pH調整剤を用いてpH調整されてなることを特徴とする方法。
(4-2)上記カラメルが、カラメルI、IIおよびIVからなる群から選択されるいずれか少なくとも1種であって、pH調整剤が酸剤であることを特徴とする、(4-1)に記載する方法。
(4-3)カラメルが、カラメルI、IIおよびIVからなる群から選択されるいずれか少なくとも1種であって、水溶性セルロース誘導体およびカラメルを含む水溶液が、pH調整剤を配合しない対照の水溶液のpHよりも低くなるように、pH調整剤を用いてpH調整されてなることを特徴とする、(4-1)に記載する方法。
(4-4)上記水溶液のpHが7以下、好ましくは6.9以下に調整されてなることを特徴とする、(4-3)に記載する方法。
(4-5)上記カラメルがカラメルIIIであって、pH調整剤がアルカリ剤であることを特徴とする、(4-1)に記載する方法。
(4-6)カラメルがカラメルIIIであって、水溶性セルロース誘導体およびカラメルを含む水溶液のpHが、pH調整剤を含有しない対照の水溶液のpHよりも高くなるように、pH調整剤を用いてpH調整されてなることを特徴とする、(4-1)に記載する方法。
(4-7)上記水溶液のpHが7.6以上、好ましくは7.7以上に調整されてなることを特徴とする、(4-6)に記載する方法。
(4-8)上記水溶液が、さらにゲル化剤、および必要に応じてゲル化補助剤を含有するものである、(4-1)に記載する方法。
本発明の方法によれば、水溶性セルロース誘導体を用いた皮膜組成物の調製に際して、着色料としてカラメルを用いた場合に生じる皮膜組成物内でのカラメル凝集物の生成が有意に抑制されるため、斑点や濁りなどといったトラブルのない透明度の高い褐色皮膜組成物を調製することができる。当該皮膜組成物は、水溶性セルロース誘導体を基剤成分とするため、低水分下でも良好な強度(耐衝撃強度)を備えており、また平衡水分値が低いため、水分により影響を受けやすい物質(例えば、医薬品や食品など)を収納するための容器、特に硬質カプセル容器として有効に用いることができる。
また本発明の方法によれば、水溶性セルロース誘導体を用いた皮膜組成物、特にカプセル基剤を、着色料としてカラメルを用いて、斑点や濁りなどのトラブルなく透明度の高い褐色に着色することができる。
I.褐色皮膜組成物およびその製造方法
本発明が対象とする褐色皮膜組成物は、皮膜形成成分として水溶性セルロース誘導体、および着色料としてカラメルを含有し、さらにこれにpH調整剤を含有するものである。
本発明で用いられる水溶性セルロース誘導体としては、アルキル基またはヒドロキシアルキル基の少なくとも1つの基で置換されたセルロースエーテルを挙げることができる。ここで上記アルキル基またはヒドロキシアルキル基でいう「アルキル基」としては、炭素数1〜6、好ましくは1〜4の直鎖または分岐状の低級アルキル基、具体的にはメチル基、エチル基、ブチル基およびプロピル基を挙げることができる。水溶性セルロース誘導体として具体的には、メチルセルロースなどの低級アルキルセルロース;ヒドロキシエチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロース等のヒドロキシ低級アルキルセルロース;ならびにヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロース等のヒドロキシ低級アルキルアルキルセルロースなどを挙げることができる。なかでも、ヒドロキシプロピルメチルセルロースは皮膜成型性および低水分下での機械的強度が優れている点で、最適な水溶性セルロース誘導体である。
本発明で使用する水溶性セルロース誘導体は、フィルムまたはシート形成時の溶液が、動粘度40〜40000mm/sになることを妨げないものであることが好ましく、かかる要件を満たした、商業的に入手可能な水溶性セルロース誘導体を広く使用することができる。また、この要件を満たすものであれば、上記の水溶性セルロース誘導体を1種単独で使用するのみならず、2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。ここで商業的に入手可能な水溶性セルロース誘導体は、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が、通常1.5〜4の範囲にある。なお、当該比(Mw/Mn)を算出する場合の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)はいずれもゲルクロマトグラフィー(サイズ排除クロマトグラフィー)で求めることができる。ゲルクロマトグラフィーの原理および手法は、限定されないが、例えば第15改正日本薬局方解説書(東京廣川書店刊行)の一般試験法「液体クロマトグラフ法」を参照することができる。
本発明の褐色皮膜組成物中に含まれる上記水溶性セルロース誘導体の割合は、特に制限されないが、水分を除いた褐色皮膜組成物の重量を100重量%とした場合、通常70〜99重量%、好ましくは75〜99重量%、より好ましくは80〜99重量%、さらに好ましくは85〜99重量%の割合を挙げることができる。
カラメル(Caramel、Caramel color)は、砂糖やぶどう糖などの食用炭水化物を熱処理して得られるものであり、食品、医薬品、化粧品または飼料などを褐色に着色するために広く用いられている食品添加物である。カラメルは、平成8年厚生省告示第120号既存添加物名簿(日本)および既存添加物名簿収載品目リスト(日本)により、表1に記載する4種類(カラメルI、II、III、およびIV)に分類されている。
Figure 0005143024
かかるカラメル(カラメルI〜IV)は、第7版食品添加物公定書(日本)に従って、下記に説明する確認試験(1)〜(3)を用いて区別することができる。特に弱塩基性陰イオン交換体(DEAEセルロース)を用いた確認試験(1)および強酸性陽イオン交換体(ホスホリルセルロース)を用いた確認試験(2)は、イオン交換セルロースとカラメルが有するコロイド荷電との反応性を利用した確認試験であり、これらのイオン交換セルロースとの反応性により、カラメルI〜IVを明確に区別することができる。
確認試験(1)
あらかじめ測定する吸光度が約0.5となるように、カラメルを量り、0.025mol/l塩酸を加えて正確に100mlとし、必要があれば遠心分離し、その上澄液を用いてA液とする。A液20mlを量り、弱塩基性ジエチルアミノエチル-架橋セルロース陰イオン交換体0.20g(0.7meq/g交換容量)を加えてよく混ぜた後、遠心分離し、上澄液を採り、B液とする。
A液およびB液を0.025mol/l塩酸を対照とし、液層の長さ1cmで波長560nmにおける吸光度(X)および(X)を測定して「(X−X)/X」を求める。
確認試験(2)
カラメル0.20〜0.30gを量り、0.025mol/l塩酸を加えて正確に100mlとし、必要があれば遠心分離し、その上澄液を用いてC液とする。C液40mlを量り、強酸性ホスホリル-架橋セルロース陽イオン交換体2.0g(0.85meq/g交換容量)を加えてよく混ぜた後、遠心分離し、上澄液を採り、D液とする。
C液およびD液を0.025mol/l塩酸を対照とし、液層の長さ1cmで波長560nmにおける吸光度(X)および(X)を測定して「(X−X)/X」を求める。
確認試験(3)
カラメル0.10gを量り、水を加えて正確に100mlとし、必要があれば遠心分離し、その上澄液を用いてE液とする。E液5mlを量り、水を加えて正確に100mlとし、F液とする。
E液を水を対照として液層の長さ1cmで波長560nmにおける吸光度(X)を測定し、またF液を水を対照として液層の長さ1cmで波長280nmにおける吸光度(X)を測定して、「X×20/X」を求める。
具体的には、カラメルIは確認試験(1)の測定値〔(X−X)/X〕として0.75以下、確認試験(2)の測定値〔(X−X)/X〕として0.50以下を示し;カラメルIIは確認試験(1)の測定値として0.50以上、確認試験(3)の測定値〔X×20/X〕として50以上を示し;カラメルIIIは確認試験(1)の測定値として0.50以下、確認試験(2)の測定値として0.50以上を示し;また、カラメルIVは確認試験(1)の測定値として0.50以上、確認試験(3)の測定値として50以下を示す。
なお、これらのカラメルはいずれも商業的に入手することができる。
本発明の褐色皮膜組成物中に含まれる上記カラメルの割合は、特に制限されないが、水分を除いた褐色皮膜組成物の重量を100重量%とした場合、通常15重量%以下の範囲で所望の着色程度に応じて適宜設定することができる。好ましくは13重量%以下、より好ましくは11重量%以下、さらに好ましくは8重量%以下の範囲である。下限も特に限定しないが、カラメル凝集という点から1重量%を挙げることができる。
本発明の褐色皮膜組成物は、上記水溶性セルロース誘導体およびカラメルを含む水溶液を固化してフィルム状またはシート状に形成されてなる組成物であって、当該フィルムまたはシートの形成に使用される上記水溶液のpHが、pH調整剤により調整されてなるものであることを特徴とする。
ここで用いられるpH調整剤は、カラメルが有するコロイド電荷に応じて適宜選択することができる。具体的には、カラメルとして(−)の電荷を有するカラメルI、IIまたはIVを用いる場合はpH調整剤として酸剤が用いられる。また、カラメルとして(+)の電荷を有するカラメルIIIを用いる場合はpH調整剤としてアルカリ剤が用いられる。
酸剤としては、水溶性セルロース誘導体およびカラメルを含む水溶液のpHを、酸性側にシフトさせることができるものであればよい。制限されないが、塩酸、過塩素酸、硫酸、硝酸、リン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸、ホウ酸等の無機酸またはその塩;酢酸、クエン酸、フマル酸、リンゴ酸、フィチン酸、アジピン酸、グルコン酸、コハク酸、乳酸、酒石酸、アスコルビン酸、サリチル酸、安息香酸、オレイン酸、ミリスチン酸、マレイン酸、グルクロン酸、ソルビン酸、デヒドロ酢酸、糖酸、蟻酸、酢酸、酪酸、プロピオン酸などの有機酸またはその塩;両性電解質またはその塩(例えば、アミノ酸類、特にグルタミン酸またはアスパラギン酸などの酸性アミノ酸)を用いることができる。なお、ここで糖酸とは、アルドースからアルデヒド基の形式的酸化によって得られるカルボン酸を意味する。好ましくは食品成分として使用することができる酸剤であり、特にクエン酸などの有機酸を好適に挙げることができる。
かかる酸剤を用いて調整される水溶性セルロース誘導体およびカラメルを含む水溶液は、酸剤等のpH調整剤を含まないこと以外は同一の組成からなる水溶液(対照水溶液)よりもpHが低くなるような割合で酸剤を含んでいればよく、その限りにおいて配合する酸剤の量やpHを特に制限するものではない。例えば、カラメルとしてカラメルIを用いる場合、フィルム形成に使用する水溶液のpHが7以下、好ましくは6.9以下、より好ましくは6.5以下、さらに好ましくは6.3以下、特に好ましくはpH6.3〜4となるような割合を;カラメルとしてカラメルIIを用いる場合、フィルム形成に使用する水溶液のpHが7以下、好ましくは6.8以下、より好ましくは6.5以下、さらに好ましくは6.2以下、特に好ましくはpH6.2〜4となるような割合を;またカラメルとしてカラメルIVを用いる場合、フィルム形成に使用する水溶液のpHが7以下、好ましくは6.5以下、より好ましくは6.2以下、さらに好ましくは6以下、特に好ましくはpH6〜4となるような割合を挙げることができる。
アルカリ剤としては、水溶性セルロース誘導体およびカラメルを含む水溶液のpHを、アルカリ側にシフトさせることができるものであればよい。制限されないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸水素二ナトリウム、アンモニア、グアニジン、イミダゾール、その他、両性電解質またはその塩(例えば、アミノ酸類、特にアルギニン、リシン、ヒスチジンなどの塩基性アミノ酸)などを用いることができる。好ましくは食品成分として使用することができるアルカリ剤であり、特に水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアなどを好適に挙げることができる。
アルカリ剤を用いて調整される水溶性セルロース誘導体およびカラメルを含む水溶液は、アルカリ剤等のpH調整剤を含まないこと以外は同一の組成からなる水溶液よりもpHが高くなるような割合でアルカリ剤を含んでいればよく、その限りにおいて配合するアルカリ剤の量やpHを特に制限するものではない。好ましくはフィルム形成に使用する水溶液のpHが7.6以上、好ましくは7.7以上、特に好ましくはpH7.7〜9となるような割合である。
なお、pH調整剤(酸剤またはアルカリ剤)には、前述するように両性電解質またはその塩が含まれるが、かかる両性電解質として、上記酸性アミノ酸および塩基性アミノ酸に加えて、中性アミノ酸(例えば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、システイン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、プロリン、シスチン、グルタミン、アスパラギンなど)も同様に使用することができる。これらの両性電解質は、水溶性セルロース誘導体およびカラメルを含む水溶液のpHを酸性側にシフトさせる場合には酸剤として、アルカリ側にシフトさせる場合にはアルカリ剤として機能する。
また本発明の褐色皮膜組成物には、上記成分に加えて、ゲル化剤を配合することもできる。ここで用いられるゲル化剤としては、カラギーナン、タマリンド種子多糖、ペクチン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、カードラン、ゼラチン、ファーセレラン、寒天、およびジェランガムなどを例示することができる。これらは1種単独で使用しても、2種以上を任意に組み合わせて使用することもできる。
上記ゲル化剤のなかでもカラギーナンは、ゲル強度が高く、しかも特定イオンとの共存下で少量の使用で優れたゲル化性を示すことから最適なゲル化剤である。
なお、カラギーナンには、一般にカッパ−カラギーナン、イオタ−カラギーナンおよびラムダ−カラギーナンの3種が知られている。本発明では、ゲル化能を有するカッパおよびイオタ−カラギーナンを好適に使用することができる。またペクチンはエステル化度の違いでLMペクチンとHMペクチンとに分類でき、ジェランガムもアシル化の有無によってアシル化ジェランガム(ネイティブジェランガム)と脱アシル化ジェランガムに分類することができるが、本発明ではいずれも区別することなく使用することができる。
本発明の褐色皮膜組成物は、使用するゲル化剤の種類に応じてゲル化補助剤を使用することもできる。ゲル化剤としてカラギーナンを使用する場合に組み合わせて用いることができるゲル化補助剤としては、カッパ−カラギーナンについては水中でカリウムイオン、アンモニウムイオンおよびカルシウムイオンの1種又は2種以上を与えることのできる化合物、例えば塩化カリウム、塩化アンモニウム、酢酸アンモニウム、塩化カルシウムを挙げることができる。またイオタ−カラギーナンについては水中でカルシウムイオンを与えることのできる、例えば塩化カルシウムを挙げることができる。またゲル化剤としてジェランガムを使用する場合に組み合わせて用いることができるゲル化補助剤としては、水中でナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオンおよびマグネシウムイオンの1種又は2種以上を与えることのできる化合物、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、硫酸マグネシウムを挙げることができる。加えて有機酸やその水溶性塩としてクエン酸またはクエン酸ナトリウムを使用することもできる。
水溶性セルロース誘導体としてヒドロキシプロピルメチルセルロースを用いる場合、併用するゲル化剤としてはカラギーナン、また併用するゲル化補助剤としては塩化カリウムを好適に挙げることができる。
なお、本発明の褐色皮膜組成物が上記ゲル化剤を含む場合、その含有量としては0.05〜10重量%、好ましくは0.1〜9.5重量%、より好ましくは0.2〜9重量、さらに好ましくは0.3〜8重量%を挙げることができる。さらに塩化カリウムなどのゲル化補助剤を含む場合、その含有量として2.2重量%以下の範囲、好ましくは0.1〜2.1重量%、より好ましくは0.2〜1.9重量%、さらに好ましくは0.3〜1.6重量%を挙げることができる。
なお、褐色皮膜組成物には、水溶性セルロース誘導体、カラメルおよびpH調整剤といった必須成分に加えて、必要に応じて、可塑剤、金属封鎖剤、不透明化剤、または香料などを配合することもできる。
ここで可塑剤としては、医薬品または食品に使用できるものであれば特に制限されないが、例えば、アジピン酸ジオクチル,アジピン酸ポリエステル,エポキシ化ダイズ油,エポキシヘキサヒドロフタル酸ジエステル,カオリン,クエン酸トリエチル,グリセリン,グリセリン脂肪酸エステル,ゴマ油,ジメチルポリシロキサン・二酸化ケイ素混合物,D-ソルビトール,中鎖脂肪酸トリグリセリド,トウモロコシデンプン由来糖アルコール液,トリアセチン,濃グリセリン,ヒマシ油,フィトステロール,フタル酸ジエチル,フタル酸ジオクチル,フタル酸ジブチル,ブチルフタリルブチルグリコレート,プロピレングリコール,ポリオキシエチレン(105)ポリオキシプロピレン(5)グリコール,ポリソルベート80,平均分子量が1500,400,4000,600または6000のポリエチレングリコール(PEG1500、PEG400、PEG4000、PEG600、PEG6000),ミリスチン酸イソプロピル,綿実油・ダイズ油混合物,モノステアリン酸グリセリン,リノール酸イソプロピルなどを挙げることができる。
なお、上記においてPEGの平均分子量は、日本国厚生労働省が定める「日本薬局方」および「医薬品添加物規格」で規定される下記の試験法に従って測定することができる。
(平均分子量試験)
無水フタル酸42gをとり、新たに蒸留したピリジン300mLを正確に量って入れた1Lの遮光した共栓瓶に加え、強く振り混ぜて溶かした後、16時間以上放置する。この液25mLを正確に量り、約200mLの耐圧共栓瓶に入れ、これに測定するPEG試料約0.8〜12.5gを精密に量って加え、密栓し、これを丈夫な布で包み、あらかじめ98±2℃に加熱した水浴中に入れる。この際、瓶の中の液が水浴の液の中に浸るようにする。98±2℃で30分間保った後、水浴から瓶を取り出し、室温になるまで空気中で放冷する。次に0.5mol/L 水酸化ナトリウム液 50mLを正確に加え、更にフェノールフタレインのピリジン溶液(1→100)5滴を加え、この液につき、0.5mol/L 水酸化ナトリウム液で滴定する。但し、滴定の終点は液が15秒間持続する淡赤色を呈するときとする。同様の方法で空試験を行う。
Figure 0005143024
なお、可塑剤を用いる場合、本発明の褐色皮膜組成物(乾燥最終物)中の含有量として、通常15重量%以下の範囲を挙げることができる。好ましくは13重量%以下、より好ましくは11重量%以下、さらに好ましくは8重量%以下の範囲である。
金属封鎖剤としては、エチレンジアミン四酢酸、酢酸、ホウ酸、クエン酸、グルコン酸、乳酸、リン酸、酒石酸、またはこれらの塩、メタホスフェート、ジヒドロキシエチルグリシン、レシチン、β−シクロデキストリン、またはこれらの組み合わせを挙げることができる。
また不透明化剤および香料としては、医薬品または食品に使用できるものであれば特に制限されない。
本発明の褐色皮膜組成物は、上記成分、特に必須成分として水溶性セルロース誘導体、カラメルおよびpH調整剤を水に溶解して、これをフィルム状またはシート状に伸展(流延)して固化して調製することができる(溶液流延法、キャスト法)。その他、一般のフィルムやシートの慣用の製造方法に従って、カレンダー法、押出法、フラットダイ法、インフレーション法を用いて調製することもできる。
具体的には、例えば約70〜80℃程度に加温した水に水溶性セルロース誘導体を分散させて、次いでこれを冷却(通常35〜60℃、より好ましくは40〜60℃)して水溶性セルロース誘導体を溶解させてゼリー状とした中に、別途カラメルとpH調整剤を溶解して調製した水溶液を添加して均一に混合して、カラメルの種類に応じて前述の通り所望のpHになるように調整した水溶液を、平板の上にフィルムまたはシート状に伸展(流延)して、乾燥固化させる方法を用いることができる。なお、乾燥は溶媒を除去する方法であればよく、自然乾燥、風乾、加熱乾燥のいずれの方法をも使用することができる。
また、前記のpH調整した混合水溶液をゲル化することにより、所望の厚みの褐色皮膜組成物をより容易に得ることができる。この方法は、水溶性セルロース誘導体が60℃以上の温度でゲル化することを利用したものであって、上記混合水溶液を60℃以上に加熱した平板上にフィルムまたはシート状に伸展(流延)して、ゲル化させるとともに乾燥固化させることによって行なうことができる。なお、水溶性セルロース誘導体に加えてゲル化剤およびゲル補助剤を用いる場合は、これらを含有する混合水溶液は冷却によってゲル化するため、冷却した平板の上にフィルムまたはシート状に伸展(流延)するか、伸展後に冷却してゲル化させた後、風乾により乾燥固化する方法を用いることができる。
かかる製造においてフィルムまたはシート状への伸展に際して、皮膜の厚さを適宜調整することができる。本発明の皮膜組成物の厚さとしては、通常10μm以上、好ましくは20〜2000μm、より好ましくは50〜500μmを挙げることができる。
皮膜形成に使用する水溶液(皮膜形成水溶液)中に含まれる各成分の濃度は、フィルムまたはシート形成溶液の動粘度(20±0.1℃)が40〜40000mm/sになることを妨げない割合であることが好ましい。当該溶液の動粘度は、好ましくは90〜22000mm/s、より好ましくは350〜22000mm/s、さらに好ましくは5000〜15000mm/sである。なお、本発明で規定する動粘度は、参考実験例1に記載する方法に従って測定することができる。
この限りにおいて特に制限されないが、具体的には、水溶性セルロース誘導体については、1〜60重量%、好ましくは5〜50重量%、より好ましくは10〜30重量%;カラメルについては、0.2〜10重量%、好ましくは0.2〜8重量%、より好ましくは0.3〜8重量%、さらに好ましくは0.3〜5重量%を各々挙げることができる。
また、皮膜形成水溶液のpH調整剤の濃度としては、下記の基準に従って適宜設定調整することができる。すなわち、カラメルとして、カラメルIを用いる場合のpH調整剤(特に酸剤)の配合割合としては、当該pH調整剤を配合しないこと以外は同一の組成からなる皮膜形成水溶液(対照水溶液)よりもpHが低くなるような割合、好ましくはフィルム形成水溶液のpHが7以下、好ましくは6.9以下、より好ましくは6.5以下、さらに好ましくは6.3以下、特に好ましくはpH6.3〜4となるような割合を挙げることができる。また、カラメルとして、カラメルIIまたはIVを用いる場合のpH調整剤(特に酸剤)の配合割合としては、同様に、pH調整剤を配合しないこと以外は同一の組成からなる皮膜形成水溶液(対照水溶液)よりもpHが低くなるような割合、カラメルIIについては、好ましくはフィルム形成水溶液のpHが7以下、好ましくは6.8以下、より好ましくは6.5以下、さらに好ましくは6.2以下、特に好ましくはpH6.2〜4となるような割合;カラメルIVについては、好ましくはフィルム形成水溶液のpHが7以下、好ましくは6.5以下、より好ましくは6.2以下、さらに好ましくは6以下、特に好ましくはpH6〜4となるような割合を挙げることができる。
また、カラメルとして、カラメルIIIを用いる場合のpH調整剤(主にアルカリ剤)の配合割合としては、当該pH調整剤を配合しないこと以外は同一の組成からなる皮膜形成水溶液(対照水溶液)よりもpHが高くなるような割合、好ましくは皮膜形成水溶液のpHが7.6以上、好ましくは7.7以上、特に好ましくはpH7.7〜9となるような割合を挙げることができる。
またゲル化剤を用いる場合、フィルム形成水溶液中のその濃度として0.01〜0.5重量%、好ましくは0.02〜0.45重量%、より好ましくは0.03〜0.4重量%を挙げることができる。また、ゲル化補助剤を用いる場合は、その濃度として0.01〜0.5重量%、好ましくは0.02〜0.45重量%、より好ましくは0.03〜0.4重量%を挙げることができる。
II.容器、特にカプセル容器およびカプセル製剤
上記方法によって調製される本発明の褐色皮膜組成物は、低水分下でも良好な強度(耐衝撃強度)を備えており、また平衡水分値が低いため、水分により影響を受けやすい物質(例えば、医薬品や食品など)を収納するための容器、特に硬質カプセル容器として有効に用いることができる。よって本発明は、上記の褐色皮膜組成物からなるか、またはそれを一部に有する容器、特に硬質カプセル容器を提供するものである。
本発明のカプセル容器は、定法の浸漬法を利用して製造することができる、具体的には前述する成分を含有する皮膜形成水溶液(ここでは、以下「カプセル基剤溶液」または「基剤溶液」という)を浸漬液とし、これにカプセル成型用ピンを浸漬し、次いで引き上げてカプセル成型用ピンの外表面に形成された基剤溶液からなる皮膜を冷却してゲル化させる工程を経て製造することができる。
カプセル基剤溶液中に含まれる上記各成分の濃度は、前述する皮膜形成水溶液の各成分の濃度に従って適宜調整することができる。
カプセル基剤溶液中に含まれる水の量は、制限されないが、カプセル成型用ピンの浸漬時に採用される温度(浸漬液の温度)条件下(30〜80℃、好ましくは40〜60℃)で、カプセル基剤溶液の粘度が100〜20000mPa・s、好ましくは300〜10000mPa・s、さらに好ましくは1000〜50000mPa・sとなるような割合を挙げることができる。通常、水含有量として60〜90重量%、好ましくは70〜85重量%を挙げることができる。
カプセル基剤溶液(浸漬液)の調製方法は、特に制限されない。例えば約70〜80℃程度に加熱した精製水に、必要に応じてゲル化剤やゲル化補助剤を溶解した後、水溶性セルロース誘導体を分散させて、これを所望の浸漬液の温度(通常35〜60℃、より好ましくは40〜60℃)まで冷却して水溶性セルロース誘導体を溶解させてゼリー状にした後、これにカラメルとpH調整剤を配合した水溶液を混合して均一な褐色の溶液を調製する方法;ならびに水溶性セルロース誘導体を約70〜80℃程度の熱水に分散し、これをいったん冷却して水溶性セルロース誘導体を溶解させた後に、必要に応じてゲル化剤やゲル化補助剤を添加し溶解し、再び加温して30〜50℃程度に調製した液にカラメルとpH調整剤を配合した水溶液を混合して均一な褐色の溶液を調製して、所望の浸漬液の温度に調整する方法などを制限なく使用することができる。
本発明のカプセル容器は、かかるカプセル基剤溶液(浸漬液)にカプセル成型用ピンを浸漬した後、これを引き上げ、カプセル成型用ピンに付着した基剤溶液をゲル化させ、その後、ゲル化した皮膜を20〜80℃で乾燥することによって製造される。具体的には、本発明のカプセル容器は下記の工程を経て製造することができる。
(1)水溶性セルロース誘導体、カラメルおよびpH調整剤(また必要に応じてゲル化剤やゲル化補助剤)を含有するカプセル基剤溶液(浸漬液)に、カプセル成型用ピンを浸漬する工程(浸漬工程)、
(2)カプセル基剤溶液からカプセル成型用ピンを引き上げて、当該ピンの外表面に付着したカプセル基剤溶液をゲル化する工程(ゲル化工程)、
(3)カプセル成型用ピンの外表面に被覆形成されたゲル化カプセル基剤を乾燥する工程(乾燥工程)、
(4)乾燥したカプセル基剤をカプセル成型用ピンから脱離する工程(脱離工程)。
なお、必要に応じて上記(4)の工程後に下記の加熱工程を行なってもよい。
(5)上記のゲル化工程(2)後の、乾燥工程(3)の前後若しくは同時に、または脱離工程(4)後に、ゲル化カプセル基剤を50〜150℃で加熱処理する工程(加熱工程)。
カプセル基剤溶液(浸漬液)としてカラギーナンなどのゲル化剤を配合しない溶液を用いる場合、上記ゲル化工程(2)は、水溶性セルロース誘導体それ自体が60℃以上の温度でゲル化することを利用して、60℃以上に加温したカプセル成型用ピンを用いて行なうことができる(熱ゲル法)。具体的には、浸漬工程(1)において、35〜50℃、好ましくは35〜45℃の一定温度に調整したカプセル基剤溶液(浸漬液)に、その液温に応じて60〜150℃、好ましくは60〜120℃、より好ましくは70〜90℃に加温したカプセル成型用ピンを浸漬し、次いでゲル化工程(2)において、カプセル基剤溶液(浸漬液)からカプセル成型用ピンを引き上げて、当該ピンの外表面に付着したカプセル基剤溶液をゲル化する。
一方、カプセル基剤溶液(浸漬液)としてカラギーナンなどのゲル化剤を配合した溶液を用いる場合、上記ゲル化工程(2)は、当該溶液が50℃以下の温度でゲル化することを利用して、カプセル製造機周辺の温度を通常35℃以下、好ましくは30℃以下、好ましくは室温下に設定して、カプセル成型用ピンの外表面に付着したカプセル基剤溶液を放冷することによって行うことができる(冷ゲル法)。具体的には、浸漬工程(1)において、35〜60℃、好ましくは40〜60℃の一定温度に調整したカプセル基剤溶液(浸漬液)に、その液温に応じて10〜30℃、好ましくは13〜28℃、より好ましくは15〜25℃に調整したカプセル成型用ピンを浸漬し、次いでゲル化工程(2)において、カプセル基剤溶液(浸漬液)からカプセル成型用ピンを引き上げて、当該ピンの外表面に付着したカプセル基剤溶液をゲル化する。
乾燥工程(3)は室温で行うことができる。通常、室温の空気を送風することによって行なわれる。脱離工程(4)は、カプセル成型用ピン表面に形成された乾燥カプセル基剤をカプセル成型用ピンから抜き出すことによって行われる。
任意工程である加熱工程(5)は、ゲル化工程(2)後、すなわちカプセル基剤溶液がゲル化(固化)した後に行なうことができる。加熱処理の時期は、ゲル化工程(2)後であればどの段階でもよく、乾燥工程(3)の前若しくは後、または加熱と乾燥を同時に行ってもよい。さらに脱離工程(4)後であってもよい。好ましくはゲル化工程(2)後、ゲル化カプセル基剤を室温下での乾燥工程に供し、乾燥後または半乾きの段階で、加熱処理を行う。加熱温度は50〜150℃の範囲であれば特に制限されないが、好ましくは60〜100℃、より好ましくは60〜80℃の範囲である。加熱処理は、通常50〜150℃の空気を送風することによって行うことができる。
斯くして調製されるカプセル基剤は、所定の長さに切断調整された後、ボディ部とキャップ部を一対に嵌合した状態または嵌合しない状態で、カプセル基剤として提供することができる。本発明のカプセル容器は、かかる方法で調製される褐色のカプセル基剤を、ボディ部およびキャップ部の少なくとも一方に有するものである。すなわち、本発明のカプセル容器には、ボディ部またはキャップ部のいずれか一方が上記の褐色カプセル基剤からなるもの、およびボディ部とキャップ部の両方が上記褐色カプセル基剤からなるものが含まれる。
上記の方法によって調製される本発明のカプセル基剤は、水溶性セルロース誘導体を70〜99重量%、好ましくは75〜99重量%、より好ましくは80〜99重量%、さらに好ましくは85〜99重量%の割合で含む。またカラメルの含有割合としては、通常15重量%以下の範囲、好ましくは13重量%以下、より好ましくは11重量%以下、さらに好ましくは8重量%以下の範囲で所望の着色程度に応じて適宜設定することができる。下限も所望の着色ができる0.1重量%以上の範囲であればよいが、カラメル凝集という不都合が生じる量(下限)として好適には1重量%を挙げることができる。
また本発明のカプセル基剤がゲル化剤を含む場合、その含有量としては0.05〜10重量%、好ましくは0.1〜9.5重量%、より好ましくは0.2〜9重量、さらに好ましくは0.3〜8重量%を挙げることができる。さらに塩化カリウムなどのゲル化補助剤を含む場合、その含有量として2.2重量%以下の範囲、好ましくは0.1〜2.1重量%、より好ましくは0.2〜1.9重量%、さらに好ましくは0.3〜1.6重量%を挙げることができる。またさらに本発明のカプセル基剤が可塑剤を含む場合、その含有量としては通常15重量%以下の範囲を挙げることができる。好ましくは13重量%以下、より好ましくは11重量%以下、さらに好ましくは8重量%以下の範囲である。
上記本発明のカプセル基剤からなるカプセル容器は、内部に医薬品、食品、香粧品、農薬または飼料などを充填することによりカプセル製剤として調製することができる。
内部に充填可能な成分としては、本発明のカプセル皮膜を溶解せず、また反応しないものであれば、特に制限されない。例えば、粉末状、顆粒状などの固形物以外にも、液状物やゲル状物を充填することができる。充填可能な液状物としては、例えばステアリルアルコール、セタノール、ポリエチレングリコール(平均分子量600、800、1000、1500、2000、3000、4000、6000、8000および20000等)などのアルコール類;胡麻油、大豆油、落花生油、コーン油、硬化油、パラフィン油、サラシミツロウなどの油脂類;ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、クエン酸トリエチル、トリアセトン、中鎖脂肪酸トリグリセライドなどの脂肪酸およびその誘導体を挙げることができる。通常これらの液状物は、医薬品、食品または香粧品の有効成分または主成分と混合した状態で、上記本発明のカプセル基剤内に充填される。
内部に充填可能な薬物は特に制限されないが、主として、経口投与可能な薬物を挙げることができる。例えば、ビタミン類、解熱剤、鎮痛剤、消炎剤、抗腫瘍剤、強心剤、抗凝固剤、止血剤、骨吸収抑制剤、血管新生抑制剤、抗うつ剤、ベンズイミダゾール誘導体をはじめとするプロトンポンプインヒビター製剤等の抗潰瘍剤、鎮咳去痰剤、抗てんかん剤、抗アレルギー剤、不整脈治療剤、血管拡張剤、降圧利尿剤、糖尿病治療剤、抗結核剤、ホルモン剤、麻薬拮抗剤など制限なく例示することができる。
こうした充填物の、上記本発明のカプセル内への充填は、それ自体公知のカプセル充填機、例えば全自動カプセル充填機やカプセル充填・シール機を挙げることができる。前者の例として、クオリカプス(株)製の全自動カプセル充填機(型式名:LIQFIL super 80/150)を、後者の例としてクオリカプス(株)製のカプセル充填・シール機(型式名:LIQFIL super FS)を挙げることができる。
前述するように、本発明のカプセル容器は皮膜の水分含量が少なくまた平衡水分値も低いため、水への反応性が比較的高い成分(例えば水分で変質しやすい成分)を充填することができ、カプセル製剤として調製することが可能である。かかる成分としては、例えばエステル化合物や酵素を例示することができる。また本発明のカプセル容器は、低水分条件下でも優れた強度(耐衝撃強度)を備えている。このため、水への反応性が高い成分や吸湿性の高い成分を充填した場合は、乾燥条件下で保存することで、内容物の変質を防止することが可能である。また、本発明のカプセル容器は皮膜の吸湿性が低いため、内部に比較的水含有量の高い成分を充填することも可能である。かかる成分としては、酵素やモルヒネの様な水和水を多く含有するものを例示することができる。
III.褐色皮膜組成物内でのカラメル凝集物の生成を抑制する方法
本発明は、水溶性セルロース誘導体およびカラメルを主成分として調製される褐色皮膜組成物について、カラメル凝集物の生成を抑制する方法を提供する。
ここで対象とする水溶性セルロース誘導体およびカラメルの種類およびその配合割合は、上記Iで説明したものを同様に挙げることができる。水溶性セルロース誘導体として、好ましくはヒドロキシプロピルメチルセルロースである。
当該方法は、褐色皮膜組成物の調製に使用する水溶性セルロース誘導体およびカラメルを含有する水溶液(皮膜形成水溶液)にpH調整剤を配合して、当該水溶液のpHを、使用するカラメルの種類に応じて所望の範囲に調整することによって実施することができる。
具体的には、カラメルとして、カラメルI、IIまたはIVを用いる場合、pH調整剤として好適には酸剤を用いて、当該pH調整剤を配合しないこと以外は同一の組成からなる皮膜形成水溶液(対照水溶液)よりも低いpHになるように、皮膜形成水溶液のpHを調整する方法を挙げることができる。かかるpHとしては、カラメルとしてカラメルIを使用する場合、好ましくはpH7以下、好ましくはpH6.9以下、より好ましくはpH6.5以下、さらに好ましくはpH6.3以下、特に好ましくはpH6.3〜4を;カラメルとしてカラメルIIを使用する場合、好ましくはpH7以下、好ましくはpH6.8以下、より好ましくはpH6.5以下、さらに好ましくはpH6.2以下、特に好ましくはpH6.2〜4を;カラメルとしてカラメルIVを使用する場合、pH7以下、好ましくはpH6.5以下、より好ましくはpH6.2以下、さらに好ましくはpH6以下、特に好ましくはpH6〜4を挙げることができる。
また、カラメルとして、カラメルIIIを用いる場合、pH調整剤として好適にはアルカリ剤を用いて、当該pH調整剤を配合しないこと以外は同一の組成からなる皮膜形成水溶液(対照水溶液)よりも高いpHになるように、皮膜形成水溶液のpHを調整する方法を挙げることができる。かかるpHとしては、pH7.6以上、好ましくはpH7.7以上、特に好ましくはpH7.7〜9を挙げることができる。
斯くして水溶性セルロース誘導体およびカラメルに加えてpH調整剤を用いることにより、カラメルの凝集が抑制され、その結果、濁りのない透明度の高い褐色皮膜組成物を調製することができる。かかる褐色皮膜組成物の調製方法は、上記IIに記載する通りであり、斯くして得られる褐色皮膜組成物は、IIに記載するようにカプセル基剤を始めとして、各種の医薬品、食品、香粧品、農薬または飼料などの容器として用いることができる。
以下、実験例および実施例を示して本発明を説明するが、本発明はかかる実施例などによって制限されるものではない。なお、特に言及しない限り、下記でいう「%」は重量%を意味する。
参考実験例1
ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)〔重量平均分子量60,000、Mw/Mn=1.9(ゲルクロマトグラフィーにより測定。以下同じ)、信越化学工業(株)製〕を表3に記載する所定濃度(3〜18重量%)になるように広口瓶に量りとり、これに塩化カルシウムを最終濃度2%になるように加え、熱湯を加えて500gとした。
次いで、容器に蓋をして、攪拌機を用いて均一な分散液になるまで毎分350〜450回転で10〜20分間かき混ぜた。これを10℃以下の水浴中で20〜40分間かき混ぜながら溶解させて粘度を測定した。粘度は、20±0.1℃にて、単一円筒形回転粘度計(ブルックフィールド型粘度系LVモデル)を用いた回転粘度計法により、下記条件下で測定した。
Figure 0005143024
(装置の操作)
単一円筒形回転粘度計を作動させ、2分間回転させてから粘度計の測定値を読み取り、2分間停止する。同様の操作を繰り返して、合計3回の測定値(絶対粘度:mPa・s)を平均する。
得られた溶液を減圧脱泡し、12時間室温で放置して各種濃度の澄明なHPMCゼリーを得た。得られた各HPMCゼリーの密度(質量/体積)を20±0.1℃条件にて測定した。これを、薄層クロマトグラフィー用薄層プレート作成装置を利用して、ガラス板上にキャスティングしてHPMCゼリーの薄膜を作成し、次いで60〜100℃で1時間乾燥して厚さ約120μmのフィルムを作成した。
各HPMCゼリーの動粘度(絶対粘度/密度:単位mm2/s)とフィルム形成能(作業性)を評価した結果を表3に併せて示す。




Figure 0005143024
この結果から、フィルム形成能(フィルム形成の作業性)から、フィルム形成時の溶液の粘度は40〜40000mm/sの範囲が好ましいことがわかった。より好ましい粘度は90〜22000mm/sの範囲、さらに好ましくは350〜40000mm/sの範囲、特に好ましくは5000〜15000mm/sの範囲であるといえる。
実験例1
本実験では(−)のコロイド電荷を有するカラメルの例としてカラメルIを用いて、下記の実験を行った。
80℃に加温した精製水800gにヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)(信越化学製)200gを加えて懸濁させた後、減圧下で脱泡し、55℃に冷却してHPMCゼリーを調製した。また、カラメルI(カラメルSF-31、池田糖化製)12gを、表1に示すように、各種濃度のクエン酸水溶液(実施例1〜5)、またはpH1.2水溶液(実施例6)で溶解し、15%のカラメル水溶液を調製した。なお、pH1.2水溶液は、日本薬局方(第13改正)の崩壊試験法で定められている第1液(人工胃液)に相当するものであって、塩化ナトリウム2gと塩酸7mLを水に溶解して1000mLとし、pHを約1.2に調整した水溶液である。
55℃に保温した上記HPMCゼリー(20%HPMC水溶液)をスリーワンモーター(HEIDON社製)で攪拌しながら、この中に各種の15%カラメル水溶液を添加して、均一な褐色ゼリーを調製した。この褐色ゼリーを、上記スリーワンモーターを用いて30rpmで継続的に攪拌しながら、調製直後、調製から2時間後、6時間後、12時間後、24時間後および96時間後に経時的にサンプリングして、各試料を用いて厚さ約100μmのフィルムを作成した。次いで、作成したフィルムを拡大鏡で観察して、褐色の凝集物(カラメルの凝集物)の有無を目視で調べた。
なお、比較実験として、12gのカラメルIを精製水で溶解して調製した15%カラメル水溶液(pH5.8)を、上記と同様に、HPMCゼリー(20%HPMC水溶液)に添加して均一な褐色ゼリーを調製し、これを経時的にサンプリングしてフィルムを作成して、褐色の凝集物(カラメルの凝集物)の有無を調べた。
表4に実験に使用したカラメル水溶液のpH及びカラメル水溶液添加後のHPMCゼリーのpHを、また表5に結果を示す。
Figure 0005143024








Figure 0005143024
表5に示すように精製水で調製したカラメル水溶液を用いて調製したHPMCゼリー(比較例1)は、調製から2時間経過以降、カラメル凝集物の形成が観察されたが、クエン酸水溶液またはpH1.2水溶液で調製したカラメル水溶液を用いて調製したHPMCゼリー(実施例1〜6)、特に0.1%以上の濃度のクエン酸水溶液またはpH1.2水溶液で調製したカラメル水溶液を用いて調製したHPMCゼリー(実施例4〜6)は、調製から長時間経過した後も凝集物の析出は観察されなかった。
実験例2
本実験では(+)のコロイド電荷を有するカラメルの例としてカラメルIIIを用いて、下記の実験を行った。
80℃に加温した精製水800gにヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)(信越化学製)200gを加えて懸濁させた後、減圧下で脱泡し、55℃に冷却してHPMCゼリー(20%HPMC水溶液)を調製した。また、カラメルIII(カラメルLF-141、池田糖化製)の15%水溶液を、10%水酸化ナトリウム水溶液を用いて、pH8以上に調製した。55℃に保温した上記HPMCゼリー(20%HPMC水溶液)をスリーワンモーター(HEIDON社製)で攪拌しながら、この中に上記で調製した15%カラメル水溶液を添加して、均一な褐色ゼリーを調製した(実施例7および8)。
この褐色ゼリーを、上記スリーワンモーターを用いて30rpmで継続的に攪拌しながら、調製直後、調製から2時間後、6時間後、12時間後、24時間後および96時間後に経時的にサンプリングして、各サンプリング試料を用いて厚さ約100μmのフィルムを作成した。次いで、作成したフィルムを拡大鏡で観察して、褐色の凝集物(カラメルの凝集物)の有無を目視で調べた。
なお、比較実験として、12gのカラメルIIIを精製水、0.1%クエン酸水溶液または0.5%クエン酸水溶液で溶解して調製した15%カラメル水溶液を、上記と同様に、HPMCゼリーに添加して均一な褐色ゼリーを調製し(比較例2〜4)、これを経時的にサンプリングしてフィルムを作成して、褐色の凝集物(カラメルの凝集物)の有無を調べた。
表6に実験に使用したカラメル水溶液のpH及びカラメル水溶液添加後のHPMCゼリーのpHを、また表7に結果を示す。
Figure 0005143024
Figure 0005143024
表7に示すように精製水で調製したカラメルIII水溶液を用いて調製したHPMCゼリー(比較例2)は、調製から2時間経過以降、カラメル凝集物の形成が観察されたが、カラメル水溶液のpHを上げ、HPMCゼリーのpHを上げることによって凝集物の形成は顕著に抑制された(実施例7および8)。一方、比較例3および4に示すようにカラメル水溶液のpHを下げると調製直後から凝集物が形成された。
実験例3
約70℃の精製水632gに塩化カリウム4gとカラギーナン4gを溶解し、更に、ヒドロキシプロピルメチルセルロース200gを攪拌しながら分散させた。この分散液を55℃に下げて、攪拌しながらヒドロキシプロピルメチルセルロースを溶解し、これに、0.1%のクエン酸水溶液を用いて調製した各濃度(0.5〜60%)のカラメルI水溶液160g(カラメルIを0.1%クエン酸水溶液で溶解)を攪拌しながら加え、その後、減圧脱泡してカプセル基剤水溶液を調製した。斯くして調製した水溶液(カプセル基剤水溶液)を浸漬液として、浸漬法による慣用のカプセル製造装置に仕込み、浸漬液の温度を50〜52℃に保持しながら、常法に従ってサイズ1号の褐色の硬質カプセルを調製した(実施例9〜18)。
一方、比較例として、0.1%クエン酸水溶液に代えて精製水を用いて調製した各種濃度(0.5〜60%)のカラメルI水溶液を顔料として用いて、上記と同様にして褐色の硬質カプセルを調製した(比較例5〜14)。
斯くして調製した硬質カプセルについて、褐色の凝集物(カラメルの凝集物)の有無を目視で確認し、また下記の方法でカプセル強度を測定した。
(カプセル強度の測定)
耐衝撃試験機(クオリカプス製)を用いて、空カプセル(1検体あたり20個使用)に50gの錘を10cmの高さから自然落下させて、割れたり変形したカプセルの数を数えて、その割合からカプセル強度を評価した。
結果を表8に示す。







Figure 0005143024
表8に示すように、比較例7〜14の硬質カプセルにはカプセル基剤中に黒褐色の凝集物が見られたが、それに対応する実施例11〜18の硬質カプセルは、当該凝集物の発生が顕著に抑制されているのが確認された。また実施例の硬質カプセルは、いずれも褐色透明の光沢性に優れたカプセルであった。
実験例4
約70℃の精製水640gにヒドロキシプロピルメチルセルロース200gを攪拌しながら分散させた。この分散液を25℃に下げて、攪拌しながらヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学製)を溶解し、これに、0.1%のクエン酸水溶液を用いて調製した種々濃度(0.5-60%)のカラメルI(カラメルSF-31、池田糖化製)と40%のメチルセルロースを含有する水溶液160g(カラメルIを0.1%クエン酸水溶液で溶解)を攪拌しながら加え、その後7時間静置して脱泡した。斯くして調製した水溶液(カプセル基剤水溶液)を浸漬液として、浸漬法による慣用のカプセル製造装置に仕込み、浸漬液の温度を39〜41℃に保持した。80℃に加温したカプセルの鋳型に浸漬液を付着させ、60℃で乾燥し、サイズ1号の褐色の硬質カプセルを調製した(実施例19〜28)。
一方、比較例として、0.1%クエン酸水溶液に代えて精製水を用いて調製した種々濃度(0.5-60%)のカラメルIと40%のメチルセルロースを含有する水溶液を顔料として用いて、上記と同様にして褐色の硬質カプセルを調製した(比較例15〜24)。
斯くして調製した硬質カプセルについて、実験例3と同様にして、褐色の凝集物(カラメルの凝集物)の有無を目視で確認し、またカプセル強度を測定した結果を表9に示す。















Figure 0005143024
表9に示すように、比較例17〜24の硬質カプセルにはカプセル基剤中に黒褐色の凝集物が見られたが、それに対応する実施例21〜28の硬質カプセルは、当該凝集物の発生が顕著に抑制されているのが確認された。また実施例の硬質カプセルは、いずれも褐色透明の光沢性に優れたカプセルであった。

Claims (16)

  1. 水溶性セルロース誘導体、カラメルおよびpH調整剤を含有するフィルムまたはシート状の褐色皮膜組成物。
  2. 水溶性セルロース誘導体およびカラメルを含む水溶液を固化して形成される皮膜組成物であって、皮膜形成に使用する上記水溶液がpH調整剤を含有するものであることを特徴とする、請求項1記載の褐色皮膜組成物。
  3. 上記カラメルが、カラメルI、IIおよびIVからなる群から選択されるいずれか少なくとも1種であって、pH調整剤が酸剤であることを特徴とする、請求項1または2に記載する褐色皮膜組成物。
  4. カラメルが、カラメルI、IIおよびIVからなる群から選択されるいずれか少なくとも1種であって、皮膜形成に使用する水溶液が、pH調整剤を含有しない水溶液よりもpHが低くなるようにpH調整剤を含有するものであることを特徴とする、請求項2に記載する褐色皮膜組成物。
  5. 上記カラメルがカラメルIIIであって、pH調整剤がアルカリ剤であることを特徴とする、請求項1または2に記載する褐色皮膜組成物。
  6. カラメルがカラメルIIIであって、皮膜形成に使用する水溶液が、pH調整剤を含有しない水溶液よりもpHが高くなるようにpH調整剤を含有するものであることを特徴とする、請求項2に記載する褐色皮膜組成物。
  7. 請求項1乃至6のいずれかに記載する褐色皮膜組成物を少なくとも一部に用いて形成される、食品、医薬品、香粧品、農薬または飼料用の容器。
  8. カプセルの形態を有する、請求項7に記載する容器。
  9. 請求項8に記載するカプセル形態の容器に内容物が充填されてなるカプセル製剤。
  10. 内容物が食品、医薬品、香粧品、農薬または飼料である請求項9に記載するカプセル製剤。
  11. 水溶性セルロース誘導体、カラメルおよびpH調整剤を含む水溶液を固化して形成する、褐色皮膜組成物の調製方法。
  12. 上記カラメルが、カラメルI、IIおよびIVからなる群から選択されるいずれか少なくとも1種であって、pH調整剤が酸剤であることを特徴とする、請求項11に記載する調製方法。
  13. カラメルが、カラメルI、IIおよびIVからなる群から選択されるいずれか少なくとも1種であって、水溶性セルロース誘導体、カラメルおよびpH調整剤を含む水溶液を、pH調整剤を含有しない水溶液よりもpHが低くなるような割合でpH調整剤を用いて調整することを特徴とする、請求項11に記載する調製方法。
  14. 上記カラメルがカラメルIIIであって、pH調整剤がアルカリ剤であることを特徴とする、請求項11に記載する調製方法。
  15. カラメルがカラメルIIIであって、水溶性セルロース誘導体、カラメルおよびpH調整剤を含む水溶液を、pH調整剤を含有しない水溶液よりもpHが高くなるような割合でpH調整剤を用いて調整することを特徴とする、請求項11に記載する調製方法。
  16. 皮膜組成物内でのカラメル凝集が抑制されてなることを特徴とする、請求項11乃至15のいずれかに記載する調製方法。
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