JP5140836B2 - 副室式ガスエンジン - Google Patents
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Description
係る副室式ガスエンジンについては大型化する傾向にあり、その大型ガスエンジンについては、高効率化の要請が存在する。そして効率を向上させるために、点火時期を進角して効率の高い領域で運転する必要がある。
そのため、点火時期を進角しても、ノッキングを回避する技術が望まれる。
しかし、係る従来技術(特許文献1)では、水噴射ノズルで燃焼温度を低下させることにより、ガスエンジンの効率まで低下してしまう恐れがある。そのため、高効率化を達成するという上述した要請に応えることが出来ない。
そして、副室(20)内における燃料濃度が薄いため、副室先端(61)から主燃焼室(10)内に噴射される火炎が弱くなり、主燃焼室(10)内に噴射される火炎の燃焼が抑制される。そのため、主燃焼室(10)における燃焼速度が緩やかになり、点火時期を進角しても、ノッキングが発生し難くなるのである。
そして、燃料ガスの噴射開始及び噴射終了を従来技術に比較して早期にするほど、副室先端(61)の近傍領域(中央領域)における燃料ガス濃度が薄くなる(中央リーンとなる)傾向が顕著となる。
図1、図2は、本発明の実施形態に係る副室式ガスエンジン100を示している。
そして、円形の皿状窪み部32は、シリンダ壁11とシリンダヘッドの下端面21とピストン頂部31とで形成される空間(隙間)Sと共に、主燃焼室10を構成している。
副室ハウジング6の副室先端61は、シリンダヘッド2の下端面21よりも、主燃焼室10側に突出している。
副室ハウジング6における副室20の上方の領域には、軽油を噴射するための軽油噴射機構7が設けられている。
図1において、符号F1は、軽油噴射機構7から副室20内に噴射された軽油の噴霧(ジェット)を示している。
軽油噴射機構7から噴射された軽油の噴霧(ジェット)F1は、公知の態様により、副室ハウジング6内で着火して、燃焼する。
8箇所の噴孔62から噴射されるトーチ状の火炎の向きは、斜め下方を向いている。8箇所の噴孔62は、円周方向に等ピッチで配置されている。そして、噴孔62から噴射されるトーチ状の火炎が、シリンダ中心からシリンダ壁11に向かって(或いは、半径方向外方へ向って)、放射状に噴射されるように構成されている。
より詳細には、図1において、トーチ状の火炎の噴射F2が、円形の皿状窪み部32における円形のコーナー部33近傍に衝突するように、副室先端61及び8箇所の噴孔62が構成されている。
シリンダヘッド2の下端面21において、主燃焼室10に対向する部分には、2つの吸気ポート4A、4Bの開口部(バルブシート部)4Ao、4Boが形成されている。吸気ポートの開口部4Ao、4Boは、シリンダ中心点Oに対して、図示の例では凡そ90°となる様に配置されており、間隔を隔てて配置されている。
なお、図1、図2では、排気ポート及び排気ポート開口部は、図示を省略している。
図2における符号4A1、4B1(吸気ポート4A、4Bの左側壁)については、燃料ガスの流れに関連して、後述する。
図2において、吸気ポート4A、4Bの上流側における分岐部4Yで、1本の吸気ポートが2本の吸気ポート4A、4Bに分岐している。
分岐部4Yの近傍には、燃料ガス噴射機構8が設けられている。燃料ガス噴射機構8には、複数の燃料ガス噴射孔81が形成されている。
この燃料ガス噴射孔81から、吸気ポート4A、4Bの下流側(主燃焼室10側)に向かって、燃料ガスが噴射される。そして燃料ガス噴射孔81から噴射された燃料ガスが、2つの吸気ポート4A、4Bを流れる新気(エア)に混合されるように、構成されている。
ここで、吸気ポート4A、4B(図7では断面で示す)とその分岐部に設けられた燃料ガス噴射機構8の形状は、図7で詳細に表示されている。
なお、図2における符号Ffは、燃料ガスの噴射ジェットを示している。
図2における矢印Fsは、主燃焼室10内における燃料ガスと新規(エア)との混合気の流れ(スワール)を示している。
係る「中央リーン」となった場合における燃料ガス濃度分布のシミュレーション結果の一例が、図3で示されている。
識別バンドBは、その右端d1における燃料ガスの濃度が最も薄く、左端d10における燃料ガス濃度が最も濃い。
なお、図3では便宜上10段階に分けて表示しているが、実際には、無段階に濃淡が変化している。
ここで、「図示の実施形態とは逆の燃料ガス濃度分布を示すガスエンジン(中央リッチのガスエンジン)」は、図示の構成のガスエンジンで説明すれば、副室先端61の近傍領域(主燃焼室の中央領域)で燃料ガス濃度が濃くなり、主燃焼室10の周縁部では燃料ガス濃度が低くなる様に構成されている。
すなわち、図示の実施形態に係るガスエンジンの様に、中央リーンとなる様に構成すれば、点火時期を進角しても、ノッキングが最も抑制出来ることが分かった。
その結果、副室20から火炎が主燃焼室10内に噴射(F2)された際の単位時間当たりの発熱量は、中央リーンのガスエンジンが最も低く、均一濃度のガスエンジン、中央リッチのガスエンジンの順に高かった。
周知の様に、副室20から火炎が主燃焼室10内に噴射された際の単位時間当たりの発熱量が低いほど、ノッキングが抑制される。したがって、係る燃焼実験の結果からも、前記発熱量(副室20から火炎が主燃焼室10内に噴射された際の単位時間当たりの発熱量)が最も低い中央リーンのガスエンジンが、ノッキングが最も抑制出来ることが明らかになった。
副室式ガスエンジン100においては、吸気行程中に、主燃焼室10の混合気が副室20に押し込まれる。
ここで、中央リーンのガスエンジンでは、主燃焼室10において、副室先端61の近傍領域(中央領域)における燃料濃度が薄い。そのため、中央リーンのガスエンジンでは、吸気行程において、副室20内に押し込まれる主燃焼室10内の混合気の燃料濃度が薄くなり、副室20内における燃料濃度も薄くなる。
副室20内における燃料濃度が薄ければ、副室20から主燃焼室10内に噴射される火炎が弱くなり、或いは、主燃焼室10内に噴射される火炎の燃焼が抑制される。その結果、主燃焼室10における燃焼速度が緩やかになり、点火時期を進角しても、ノッキングが発生し難くなるのである。
ここで、図2で示す様に、図示の実施形態では、吸気ポート4A、4Bに配置された燃料噴射機構8から、燃料ガスが噴射され、新気(エア)と混合して主燃焼室10内に流入する。したがって、燃料噴射機構8を設けた位置や、燃料ガス噴射量、燃料ガス噴射圧によって、同一タイミングで燃料噴射機構8から燃料ガスを噴射しても、主燃焼室10に到達するタイミングは異なる。
そして、図4で示す噴射タイミングは、燃料噴射機構8から燃料ガスを噴射するタイミングであり、主燃焼室10に燃料ガスが流入するタイミングではない。
図4は、クランク角度θに対する吸気弁、排気弁のバルブリフト量Li、Lxを示している。そして、図4において、TDCは上死点を示し、BDCは下死点を示している。
一方、図4において「早期供給」と表示されている燃料ガス噴射タイミングは、図示の実施形態における燃料噴射機構8からの燃料ガス噴射タイミングを示している。
図4から明らかな様に、図示の実施形態に係る燃料ガス噴射タイミング「早期供給」(ブロック矢印B)は、「基準条件」と表示(ブロック矢印A)されている噴射タイミングに比較して、燃料噴射の始期Ts及び終期Teが早くなっている。
図4における「早期供給」と表示されている噴射タイミング(図示の実施形態におけるタイミング)で燃料ガスを噴射した場合における主燃焼室10内の燃料ガス濃度分布をシミュレーションした結果(図3)と、「基準条件」と表示されている噴射タイミングで燃料ガスを噴射した場合における主燃焼室内の燃料ガス濃度分布をシミュレーションした結果とを、発明者は比較した。その結果、「早期供給」と表示されている噴射タイミング(図示の実施形態におけるタイミング)のシミュレーション結果の方が、「中央リーン」の傾向が顕著に現れた。
また、図4において、「基準条件」と表示(ブロック矢印A)されている噴射タイミングでは、上死点前10°〜上死点後100°で燃料ガスを噴射している。
これ等の噴射タイミングは、実験例であり、一般的な範囲ではない。例えば、上述した様に、吸気ポート4A、4Bに配置された燃料噴射機構8の位置や、燃料ガス噴射量、燃料ガス噴射圧によって、変動する数値である。
図8において、吸気バルブ5A、5Bが閉じる際に、燃料ガスの噴射開始時期と噴射終了時期とが早期となったため、燃料ガスが主燃焼室10の下方の領域に偏在し、主燃焼室10の上方領域10U(図8において点線で示す領域)がリーンとなっている。
なお図8、図9において、主燃焼室10の微小なドットが多い領域は燃料ガスの濃度が高く、微小なドットが少ない領域は燃料ガス濃度が低い。
タンブル流Ftが弱くても、燃料ガスの噴射時期が早期となるので、圧縮行程においても図9で示すように圧縮行程においても燃焼室10上方は燃料リーンのままである。したがって、副室6の先端61の近傍領域における燃料ガス濃度は低くなり、副室6に流入する燃料ガス濃度も低くなる。
そして、副室6内における燃料の濃度も薄くなり、副室先端61から主燃焼室10内に噴射される火炎も弱くなるので、主燃焼室10内に噴射される火炎の燃焼が抑制される。その結果、主燃焼室10における燃焼速度が緩やかになり、点火時期を進角しても、ノッキングが発生し難くなる。
そのように構成すれば、中央リーンとなる傾向が顕著となる。
換言すれば、図示の実施形態に係るガスエンジンは、高スワールとなる様に構成されている。
ここで、「高スワール」は「スワールが強い」ことであり、スワール比が大きい(スワール比が1.0以上である)ことを意味している。スワール比は、エンジンの回転数に対するスワールの数で示される。
図示の実施形態では、少なくともスワール比が1.0以上、好ましくはスワール比が2.0以上となる様に構成されている。
係るシミュレーション結果から、スワール比が高いほど、中央リーンの傾向が強くなり、ノッキングを抑制することが分かった。
より詳細には、図示の実施形態において、吸気弁4A、4Bのシート位置において、シリンダヘッド2側から見て6時〜9時の領域α(図6)に燃料ガスが流れる様にするには、図10において、燃料ガス噴射口81から噴射される燃料ガスが、断面で示す吸気ポート4A、4Bの左側壁上方の領域AU(図10において点線で示す領域)に向かうように構成すれば良い。
また、反時計方向のスワールが発生する場合に、シリンダヘッド2側から見て3時〜6時の領域βに燃料ガスが流れる様に燃料ガスを噴射した場合も同様に、スワールにより燃料ガスは主燃焼室10の周辺部に供給され、主燃焼室10の中央部分にはさほど供給されない。
そのため、噴射領域α(時計回りのスワールの場合)或いは領域β(反時計回りのスワールの場合)に燃料ガスが流れる様に、燃料噴射機構8から燃料ガスを噴射すれば、主燃焼室10における燃料ガスの濃度分布が、中央リーンの状態となる。
図11においても、図8、図9と同様に、主燃焼室10の微小なドットが多い領域は燃料ガスの濃度が高く、微小なドットが少ない領域は燃料ガス濃度が低い。
図11から明らかなように、主燃焼室10における燃料ガスの濃度分布は中央リーンの状態となっており、副室6の先端61の近傍領域における燃料ガス濃度は低い。そのため、副室6に流入する燃料ガス濃度も低くなり、副室6内における燃料の濃度も薄くなる。そして、副室先端61から主燃焼室10内に噴射される火炎も弱くなり、主燃焼室10内に噴射される火炎の燃焼が抑制される。その結果、主燃焼室10における燃焼速度が緩やかになり、点火時期を進角しても、ノッキングが発生し難くなる。
その様にスワールを発生させることに加えて、さらに、図4において「早期供給」と表示(ブロック矢印B)されている様に、噴射タイミング(図示の実施形態におけるタイミング)として、上死点前50°〜上死点後65°で燃料ガスを噴射した場合に、主燃焼室10内の燃料ガス濃度分布をシミュレーションした結果が図3である。
換言すれば、図3は、スワールを発生させ、且つ、燃料ガスの「早期供給」(図4の矢印B)行なった場合における燃料ガス濃度分布のシミュレーション結果を示している。
2・・・シリンダヘッド
3・・・ピストン
4A、4B・・・吸気ポート
5A、5B・・・吸気弁
6・・・副室ハウジング
7・・・軽油噴射機構
8・・・燃料ガス噴射機構
10・・・主燃焼室
11・・・シリンダ壁
20・・・副燃焼室/副室
61・・・副室先端
100・・・副室式ガスエンジン
Claims (1)
- 主燃焼室(10)と、副室(20)と、主燃焼室(10)に連通して燃料ガス及び空気を供給する吸気ポート(4A、4B)とを有し、副室(20)内で二次燃料を燃焼させ、主燃焼室(10)に突出した副室先端(61)からトーチ状の火炎(F2)を噴射して主燃焼室(10)内の燃料ガスと空気との混合気を燃焼させる副室式ガスエンジンにおいて、吸気ポート(4A、4B)に燃料ガス噴射機構(8)が配置されており、前記燃料ガス噴射機構(8)は上死点前50°〜上死点前65°で燃料ガスを噴射し、そして燃料噴射の終期が吸気ポート(4A、4B)と主燃焼室(10)とを連通し遮断する吸気弁(5A、5B)の閉鎖されるタイミングよりも早く、吸気行程で主燃焼室(10)における副室先端(61)の近傍領域の燃料ガス濃度が主燃焼室(10)の周縁部よりも薄くなる様に構成されていることを特徴とする副室式ガスエンジン。
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