JP5137861B2 - 塩化ビニル系樹脂組成物 - Google Patents
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しかし近年、不適切な燃焼温度で焼却することで本来、塩化ビニル樹脂のみを原因とすることではないにもかかわらず、塩化ビニル樹脂が忌避されるという傾向があった。最近では、塩化ビニル樹脂の約60%を塩素が占め、石油由来の比率が他のプラスチックより大幅に少ないこと、外観品質、加工性、耐久性、硬さの自由度、リサイクルの容易さ等の他のプラスチックでは実現できない特性が再び注目され、自動車用途を中心に需要が拡大してきている。
リサイクル自体も他のプラスチックより用途によっては一般化していることや、ゴミ焼却場の焼却温度管理と排ガス処理が完備された現在では、耐久性にも優れる塩化ビニル樹脂は、もはやハロゲンを含むことのみを持って環境負荷が高いと断言できる時代ではなくなっている。
また、植物成分を由来とする可塑剤を使用することも考えられるが、このような可塑剤は、塩化ビニル樹脂との相溶性に劣り、はなはだ実用的に不十分であった。
このため、カーボンニュートラル思想を満足するとともに、かつ機械的物性の優れた塩化ビニル系樹脂組成物の出現が強く望まれていた。
1.(a)成分として、塩化ビニル系樹脂 100質量部、
(b)成分として、(b−1)ひまし油脂肪酸の非グリセリン系エステルおよび(b−2)フタル酸エステル系可塑剤;脂肪族二塩基酸エステル系可塑剤;トリメリット酸エステル系可塑剤;および高分子ポリエステル系可塑剤からなる群から選択される少なくとも1種の可塑剤 30〜150質量部、および
(c)安定剤1〜4質量部
を含有し、
前記(b−1)成分および(b−2)成分の合計量を100質量%とした場合、前記(b−1)成分が80〜30質量%であり、前記(b−2)成分が20〜70質量%である
ことを特徴とする塩化ビニル系樹脂組成物。
2.前記(b−1)成分が、以下の式1(式1中、R1、R2はそれぞれ独立して、R1は炭素数C1〜C4のアルキル基、R2は炭素数C1〜C4のアルキル基を表す)で表されるひまし油脂肪酸の非グリセリン系エステルを主体とすることを特徴とする前記1に記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
4.前記式1中、R1がメチル基であり、R2がブチル基であることを特徴とする前記3に記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
5.前記(b−2)成分が、ジ−2−エチルヘキシルフタレート(DOP)、ジイソノニルフタレート(DINP)またはトリ−2−エチルヘキシルトリメリテート(TOTM)であることを特徴とする前記1〜4のいずれかに記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
6.前記(b−2)成分が、ジ−2−エチルヘキシルフタレート(DOP)であることを特徴とする前記5に記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
7.前記(c)成分が、Ca系安定剤、Ba系安定剤またはZn系安定剤であることを特徴とする前記1〜6のいずれかに記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
(a)塩化ビニル系樹脂
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物の(a)成分は、塩化ビニル系樹脂である。塩化ビニル系樹脂は、塩化ビニルまたは塩化ビニルとこれに共重合可能なコモノマーとの混合物を懸濁重合法、塊状重合法、微細懸濁重合法または乳化重合法等通常の方法によって製造されたものすべてが用いられる。コモノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ラウリン酸ビニル等のビニルエステル類、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート等のアクリル酸エステル類、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート等のメタクリル酸エステル類、ジブチルマレエート、ジエチルマレエート等のマレイン酸エステル類、ジブチルフマレート、ジエチルフマレート等のフマール酸エステル類、ビニルメチルエーテル、ビニルブチルエーテル、ビニルオクチルエーテル等のビニルエーテル類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル類、エチレン、プロピレン、スチレン等のα−オレフィン類、塩化ビニリデン、臭化ビニル等の塩化ビニル以外のハロゲン化ビニリデンまたはハロゲン化ビニル類、ジアリルフタレート、エチレングリコールジメタクリレート等の多官能性単量体が挙げられ、勿論、コモノマーは、上述のものに限定されるものではない。コモノマーは、好ましくは塩化ビニル系樹脂の構成成分中30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下の範囲である。
本発明で用いられる(b)成分は、以下の(b−1)および(b−2)成分の併用を必須とする。
本発明で用いられる(b−1)ひまし油脂肪酸の非グリセリン系エステルとは、ひまし油(主としてリシノール酸のトリグリセライド)の加水分解により得られる脂肪酸のエステル化物を意味する。ただし本発明では、該脂肪酸のグリセリンエステルは含まないものとする。
上記(b−1)成分は、市販品を用いることができ、例えば伊藤製油(株)製 リックサイザーのシリーズとして市販されている。
なお、前記のようにひまし油から得られる脂肪酸は、一般的に、不飽和脂肪酸類および飽和脂肪酸類の混合物であり、単一的なものではない。したがってこのような場合、本明細書でいう「式1で表されるひまし油脂肪酸の非グリセリン系エステルを主体とする」とは、使用される(b−1)成分中、式1で表されるひまし油脂肪酸の非グリセリン系エステルが最も多く含まれていることを意味する。
本発明で用いられる(b−2)成分は、フタル酸エステル系可塑剤;脂肪族二塩基酸エステル系可塑剤;トリメリット酸エステル系可塑剤;および高分子ポリエステル系可塑剤からなる群から選択される少なくとも1種である。
二塩基酸としては、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、フタル酸等が挙げられる。グリコールとしては、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等が挙げられる。封鎖剤としては、2−エチルヘキサノール等の高級アルコールやラウリン酸等の高級脂肪酸等が挙げられる。例えばアジピン酸−1,3ブタンジオール−2エチルヘキサノール系ポリエステル、セバシン酸−1,6ヘキサンジオール−2エチルヘキサノール系ポリエステル、アジピン酸−プロピレングリコール−椰子油脂肪酸系ポリエステルが挙げられる。
このようなポリエステル系可塑剤としては、三菱化学(株)製D−623、D−625、D−643、D−645、D−653、大日本インキ化学工業(株)製W−2600、W−2300、W−305ELS、W−2365、W−2610、W−2310、W−4000、旭電化工業(株)製PN−1020、P−200、PN−650、PN−260、PN−400、PN−250、PN−446、PN−350、PN−280等が挙げられる。
また、ジイソノニルフタレート(DINP)、トリ−2−エチルヘキシルトリメリテート(TOTM)、ポリエステル系高分子可塑剤の持つ熱老化性・加熱減量を低下させずに非石油由来率あるいは植物度を向上させる組み合わせも好ましい。
(b−1)成分が80質量%を超えると、とくに熱老化後の耐ブリード性が悪化する。逆に30質量%未満では、耐寒性、耐熱老化性が不十分となり、また、非石油由来率が低下する。
(b−1)成分および(b−2)成分の配合割合は、好ましくは耐寒性と耐ブリード性の観点から、(b−1)成分が80〜40質量%であり、(b−2)成分が20〜60質量%である。さらに非石油由来率(あるいは植物度)と耐寒性・加熱減量の観点からより好ましくは、(b−1)成分が80〜50質量%であり、(b−2)成分が20〜50質量%である。とくに非石油由来率(あるいは植物度)と相溶性・耐ブリード性の観点から好ましくは、(b−1)成分が70〜50質量%であり、(b−2)成分が30〜50質量%である。
(b−1)ひまし油脂肪酸の非グリセリン系エステルは、塩化ビニル系樹脂との相溶性に乏しいものであるが、本発明者らの検討によれば、上記特定の(b−2)成分を併用することにより、(b−1)成分の相溶性が高められ耐ブリード性、耐寒性、各種物性のバランスに優れるという新たな見地が見出された。
本発明で使用される(c)安定剤は、塩化ビニル系樹脂組成物で一般的に使用されるものであればよく、とくに制限されない。例えば、(c)安定剤としては、三塩基性硫酸鉛、二塩基性亜リン酸鉛、塩基性亜硫酸鉛、二塩基性フタル酸鉛、鉛白、鉛のラウレートまたはステアレート等の鉛系安定剤;ブチル錫マレート、オクチル錫マレート、ジ−n−アルキル錫メルカプチド、ジ−n−アルキル錫ジラウレート、ジブチル錫ジマレート、ジブチル錫ラウリルメルカプチド、ジ−オクチル錫S,S'−ビス−(イソオクチル−メルカプトアセテート)、ジブチル錫ビス−イソオクチルチオグリコレート、ジ−(n−オクチル)錫マレートポリマー、ジブチル錫メルカプトプロピオナート等の錫系安定剤;カルシウム、カドミウム、バリウムまたは亜鉛のラウレートまたはステアレート等の有機金属塩系安定剤および金属石けん系安定剤;アンチモンメルカプトカルボン酸塩またはエステル塩のようなアンチモン系安定剤;ホスフェート系安定剤;エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油等のエポキシ化油安定剤等が挙げられ、これらは1種単独または2種以上の組み合せで使用される。
中でも、本発明のポイントである環境面および相容性向上による物性バランス向上の観点から見て、Ca、Ba、Zn系安定剤が好ましい。
上限を超えると成形時のプレートアウトおよびブリードの発生、伸びの低下が顕著となる。下限未満では製造時および成形時にヤケが生ずる。
本発明における組成物ではその可塑剤における非石油由来率を向上するため成分(a)100質量部に最大成分(b)可塑剤量150質量部添加時のうち最も多い(成分(b)中の(b−1)80質量%)ところで((b−1)の非石油由来率を80%として計算すると))96質量部が非石油由来とすることができ、この場合(a)と(b)の合計量について非石油由来率は62.4質量%である。
本発明における組成物ではその可塑剤における非石油由来率を向上するため成分(a)100質量部に最大成分(b)可塑剤量150質量部添加時のうち最も少ない(成分(b)中の(b−1)30質量%)ところで((b−1)の非石油由来率を80%として計算すると))36質量部が非石油由来とすることができ、この場合(a)と(b)の合計量について非石油由来率38.4質量%である。
また、成分(a)100質量部に最大成分(b)可塑剤量150質量部添加時のうち最も好ましい下限(成分(b)中の(b−1)50質量%)で60質量部が非石油由来(植物由来)とすることができ、この場合(a)と(b)の合計量について((b−1)の非石油由来率を80%として計算すると))非石油由来率は48.0質量%である。つまり、軟質化に伴い通常24質量%まで低下する非石油由来率を耐寒性の付与・耐熱老化性・加熱減量特性の付与をしながら最低で38質量%に保持することが出来好ましい。
さらには、本発明の組成物の非石油由来率が48〜62質量%の範囲においては耐寒性・耐熱老化性・加熱減量特性等の物性と耐ブリード性とのバランスを高い次元で発現しながら(二酸化炭素削減の観点で)硬質塩化ビニル樹脂組成物の非石油由来率60質量%と同等であり極めて好ましい。
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物の用途としては、例えば玩具、靴底(長靴含む)等が挙げられる。その他、電線被覆等の材料として、電源プラグ等の原料として、車輌用内外装材部品材料として、建築用内外装材部品材料として有効に利用される。また、本発明の塩化ビニル系樹脂組成物は、他の樹脂または金属とをダイス内でまたはダイス外近傍で積層する共押出方法、インサート射出成形法、同時射出成形法等の成形方法を採用して上述の部品を製造してもよい。
(a)成分
(a−1)塩化ビニル樹脂(信越化学工業社製、商品名TK−1300、重合度P=1300)
(a−2)塩化ビニル樹脂(大洋塩ビ社製、商品名TH−1400、重合度P=1400)
(a−3)塩化ビニル樹脂(信越化学工業社製、商品名TK−2500LS、重合度P=2500)
(b−1−1) 上記式1においてR1がメチル基であり、R2がメチル基である化合物を主体とする可塑剤(伊藤製油(株)製 リックサイザーC−101。以下、メチルアセチルリシノレートという)
(b−1−2) 上記式1においてR1がメチル基であり、R2がブチル基である化合物を主体とする可塑剤(伊藤製油(株)製 リックサイザーC−401。以下、ブチルアセチルリシノレートという)
(b−2−1) ジ−2−エチルヘキシルフタレート(DOP)(ジェイ・プラス社製、商品名DOP)
(b−2−2) ジイソノニルフタレート(DINP)(ジェイ・プラス社製、商品名DINP)
(b−2−3) トリ−2−エチルヘキシルトリメリテート(TOTM)(DIC社製、商品名W−700)
(b−2−4) 高分子ポリエステル系可塑剤(アジピン酸系ポリエステル系可塑剤、DIC社製W−2300、数平均分子量2300)
(c−1) Ca−Zn安定剤 (アデカ社製、商品名SC−12)
(c−2) Sn系安定剤 (勝田化工社製、商品名TM−181FSJ)
表1および2に記載の配合割合(質量部)において、各成分をタンブラーで均一に混合し、さらに3.5インチテストロール(2本)により170℃で5分間混練してロールシート成形物を得た。これを鏡面板で挟持して180℃で2分間予熱した後、50kg/cm2の圧力で2分間加圧して130mm×160mm×厚み1mm,2mm,6mmの試料(シート)を得た。厚さ6mmのシートは、硬度の測定試験に、厚さ1mmのシートは、引張試験および熱老化試験に、厚さ2mmのシートは耐寒性試験に使用した。
硬度
JIS K7215に基づき、試験温度23℃、相対湿度50%の恒温室にて試料調整をした後、デュロメーターA硬度計で荷重15秒後の値を測定した。
引張試験
JIS K6723に基づき、上記シートをダンベル2号形で打ち抜き、25mmの標線を記入して試験片とした。試験温度23℃、相対湿度50%の恒温室にて試料調整をした後、引張試験機を用いて、引張速度=200mm/分で測定した。
JIS K6723に基づき、定法通り評価した。
JIS K6723に基づき、試料を温度条件100℃のギアオーブン中に120時間放置し熱老化させた。その後、該試料を取出し、上記引張試験に供し、引張強度、伸び、100%モジュラスを測定した。また、初期特性に対する引張り強度残率および伸び残率を調べた。さらに、熱老化後の加熱減量を評価した。
なお、加熱減量は、熱老化前の試料の質量と熱老化後の試料の質量を測定し、次の計算式により求めた。
(熱老化前の試料の質量−熱老化後の試料の質量)/(熱老化前の試料の質量) × 100(%)
前記熱老化性の試験を行なった後の、試料表面のブリード状態を調べた。
◎:ブリードが見られない
○:若干の曇りがある
△:若干のベタツキがある
×:べたつきがある
[{((a)成分の質量×0.6)+((b−1)成分の質量×0.8)}/((a)成分の質量+(b)成分の質量)] × 100(%)として求めた。
実施例1〜14の本発明の塩化ビニル系樹脂組成物は、塩化ビニル系樹脂に、可塑剤としてひまし油脂肪酸の非グリセリン系エステルと他の特定の可塑剤とを特定量でもって配合し、かつ安定剤を特定量で配合しているので、非石油由来率が高く、カーボンニュートラル思想に基づく環境対応型であり、各種物性に優れる。とくに、耐寒性、熱老化性、耐ブリード性に優れる。
これに対し、比較例1の塩化ビニル系樹脂組成物は、(b−1)成分と(b−2)成分との配合割合が本発明で規定する範囲外である((b−1)成分が少なすぎる)ので、耐寒性、加熱減量が劣っている。
比較例2の塩化ビニル系樹脂組成物は、(b−1)成分と(b−2)成分との配合割合が本発明で規定する範囲外である((b−1)成分が多すぎる)ので、耐ブリード性が劣っている。
比較例3の塩化ビニル系樹脂組成物は、(c)安定剤を加えていないので、成形時、製造時に焼けが発生した(成形品表面にブツが発生した)。
比較例4の塩化ビニル系樹脂組成物は、(c)安定剤の配合割合が本発明で規定する範囲外である(安定剤が多すぎる)ので、成形時、製造時にプレートアウトが発生した。
比較例5の塩化ビニル系樹脂組成物は、(b−1)成分を加えていないので、本発明の実施例に比べ、耐寒性および加熱減量に劣る結果となった。
Claims (7)
- (a)成分として、塩化ビニル系樹脂 100質量部、
(b)成分として、(b−1)ひまし油脂肪酸の非グリセリン系エステルおよび(b−2)フタル酸エステル系可塑剤;脂肪族二塩基酸エステル系可塑剤;トリメリット酸エステル系可塑剤;および高分子ポリエステル系可塑剤からなる群から選択される少なくとも1種の可塑剤 30〜150質量部、および
(c)安定剤1〜4質量部
を含有し、
前記(b−1)成分および(b−2)成分の合計量を100質量%とした場合、前記(b−1)成分が80〜30質量%であり、前記(b−2)成分が20〜70質量%である
ことを特徴とする塩化ビニル系樹脂組成物。 - 前記式1中、R1がメチル基であり、R2がメチル基、エチル基またはブチル基であることを特徴とする請求項2に記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
- 前記式1中、R1がメチル基であり、R2がブチル基であることを特徴とする請求項3に記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
- 前記(b−2)成分が、ジ−2−エチルヘキシルフタレート(DOP)、ジイソノニルフタレート(DINP)、トリ−2−エチルヘキシルトリメリテート(TOTM)または高分子ポリエステル系可塑剤であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
- 前記(b−2)成分が、ジ−2−エチルヘキシルフタレート(DOP)であることを特徴とする請求項5に記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
- 前記(c)成分が、Ca系安定剤、Ba系安定剤またはZn系安定剤であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
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