JP5137749B2 - 巻線用絶縁電線およびコイルの製造方法 - Google Patents
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Description
また、近年では、平角エナメル線に更に樹脂層を形成した巻線用絶縁電線によって、モーターやトランスに用いられるコイルを形成することが検討されている。
(1)断面が四角形の導体の外周に、樹脂からなる少なくとも1層の絶縁被覆層を有する巻線用電線であって、
前記導体の平坦部に被覆された前記絶縁被覆層の厚さt[mm]、前記導体のコーナー部の曲率半径R1[mm]、および絶縁被覆層のコーナー部の曲率半径R2[mm]が下記関係式、
0<R2<R1+t/1.5
を満たすことを特徴とする巻線用絶縁電線(但し、R2<R1を満たす巻線用絶縁電線を除く)、
(2)前記導体と前記絶縁被覆層との間にエナメル絶縁層を有することを特徴とする(1)に記載の巻線用絶縁電線、
(3)(1)又は(2)に記載の巻線用絶縁電線が巻線加工されたことを特徴とするコイル、
(4)断面が四角形の導体の外周に、樹脂からなる少なくとも1層の絶縁被覆層を有する巻線用絶縁電線の製造方法であって、
前記導体の平坦部の絶縁被覆層の厚さt[mm]、前記導体のコーナー部の曲率半径R1[mm]、および絶縁被覆層のコーナー部の曲率半径R2[mm]が下記関係式、
0<R2<R1+t/1.5
を満たすように前記絶縁被覆層を押出成形することを特徴とする巻線用絶縁電線の製造方法(但し、R2<R1を満たすように前記絶縁被覆層を押出成形する巻線用絶縁電線の製造方法を除く)、および
(5)断面が四角形の導体の外周に、樹脂からなる少なくとも1層の絶縁被覆層を有する巻線用絶縁電線を用いたコイルの製造方法であって、
前記導体の平坦部の絶縁被覆層の厚さt[mm]、前記導体のコーナー部の曲率半径R1[mm]、および絶縁被覆層のコーナー部の曲率半径R2[mm]が下記関係式、
0<R2<R1+t/1.5
を満たすように前記絶縁被覆層を押出成形して巻線用絶縁電線を製造する工程(但し、R2<R1を満たすように前記絶縁被覆層を押出成形して巻線用絶縁電線を製造する工程を除く)と
前記巻線用絶縁電線を巻線に加工する工程と
を備えることを特徴とする、コイルの製造方法
を提供するものである。
請求項2に係る発明によれば、コーナー部における電界低下の効果がさらに向上することができる。
請求項3に係る発明によれば、導体と押出被覆層との間にエナメル絶縁層を有するため、耐熱性を更に向上させることができる
請求項4に係る発明によれば、上記効果を奏するコイルを提供することができる。
請求項5および6に係る発明によれば、導体の外周に被覆される絶縁被覆層を押出成形によって形成するため、絶縁被覆層のコーナー形状を正確に、かつ小さい曲率半径に成形することができる。
本発明の巻線用絶縁電線からなる巻線は、高占積率のコイルを作製できるため、高性能なモーターやトランスに好適に用いることができる。
図1は、本発明の第1の実施態様の絶縁電線を示す断面図である。
図1の絶縁電線(T1)は、断面が略四角形の導体1の外周に1層の絶縁被覆層2を有するものある。
導体1のコーナー部3の曲率半径R1は概ね0.2〜0.3mmの範囲である。
導体の径(幅)は、特に限定はないが、1〜3mmが好ましい。
また、本発明におけるコーナー部における曲率半径は、断面観察によって測定することができる。
絶縁被覆層2のコーナー部4の曲率半径R2は概ね0.2〜0.4mm、好ましくは0.2〜0.3mmの範囲である。
絶縁被覆層2のコーナー部における曲率半径は、断面観察によって測定することができる。
0<R2<R1+t/1.5(式1)
であるため、コーナー部の電界を小さくできる結果、PDIVやBDVの低下を抑制し絶縁性能を良好に保つことができ、高占積用の巻線として好適に用いることができる。
R2とR1は、R2≦R1の関係にあることがさらに好ましい。
上記のような関係式を有する絶縁電線は、例えば、単軸押出機を用いて押出成形することにより作製することができる。
エナメル層を形成する材料としては、例えばポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド、ポリエーテルイミド、ポリイミドヒダントイン変性ポリエステル、ポリアミド、ホルマール、ポリウレタン、ポリエステル、ポリビニルホルマール、エポキシ、ポリヒダントインが挙げられ、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド、ポリエーテルイミド、ポリイミドヒダントイン変性ポリエステルが特に好ましい。
この場合、押出被覆層の厚さは30〜150μmが好ましく、エナメル層の厚さは10〜50μmが好ましい
図4から、コーナー部と平坦部が隣接した場合、平坦部同士が隣接した場合より空隙や絶縁被覆層に作用する電界の最大値が大きくなることがわかる。
また、絶縁被覆層は、1層以上であればよく、絶縁被覆層を2層または3層積層したものであってもよい。この場合、最外層の絶縁被覆層におけるコーナー部が式1を満たしていればよいが、全ての絶縁被覆層におけるコーナー部が式1を満たしていることが最も望ましい。
無酸素銅からなり、幅2.2mm、コーナーの曲率半径R1が0.3mmの角線の銅線に、ポリフェニレンスルファイド(PPS)からなる絶縁被覆層を押出成形により、表1に示す厚さとコーナー半径R2を有するように被覆し、実施例1〜2および比較例1の絶縁電線を作製した。
実施例1はR2<R1+t/1.5とした場合、実施例2はR2=R1とした場合、比較例1はR2=R1+tとした場合である。これらの絶縁電線のコーナー部と平坦部を隣接させ、下記方法により、空気ギャップの最大電界、絶縁被覆層の最大電界、コロナ放電開始電圧(PDIV)を測定した。また、参考例1として、は実施例1の絶縁電線を平坦部同士を隣接させて、同様に電界およびPDIVを測定した。
表1に、その結果を示す。
実施例1、実施例2および比較例1はコーナー部頂点、参考例1は平坦部において、印加電圧が1kVの電界の最大値を表面電荷法による電界シミュレーションを用いてPPSと空気の比誘電率が各々3.3、1.0の条件により測定した。また、空気ギャップの大きさは1μmである。
・放電開始電圧
部分放電検出器を用いて、常温、常湿の条件下で測定した。
表1から、実施例1では、比較例1に比べ、空気ギャップや絶縁被覆層の最大電界が約10%低減していることがわかる。また、実施例2では、比較例1に比べ、空気ギャップや絶縁被覆層の最大電界が15%以上低減していることがわかる。放電開始電圧も向上している。さらに、実施例2では、参考例1に比べ、絶縁被覆層の最大電界も小さくなっている。
絶縁被覆層の厚さtを50μmに薄くした以外は、実施例1〜2、比較例1と同様に、R2<R1+t/1.5とした場合(実施例3)、R2=R1とした場合(実施例4)、R2=R1+tとした場合(比較例3)の絶縁電線を作製した。これらの絶縁電線のコーナー部と平坦部を隣接させ、実施例1と同様に電界を測定した。また、参考例2として実施例3の絶縁電線を平坦部同士を隣接させて同様に電界を測定した。
表2に、その結果を示す。
導体コーナーR1を0.2mmに小さくした以外は、実施例1〜2、比較例1と同様に、R2<R1+t/1.5とした場合(実施例5)、R2=R1とした場合(実施例6)、R2=R1+tとした場合(比較例3)の絶縁電線を作製した。これらの絶縁電線のコーナー部と平坦部を隣接させ、実施例1と同様に電界を測定した。また、参考例3として実施例5の絶縁電線を平坦部同士を隣接させて同様に電界を測定した。
表3に、その結果を示す。
1 導体
2 絶縁被覆層
3 導体コーナー部
4 絶縁被覆層コーナー部
5 絶縁被覆層
6 エナメル絶縁層
11,12 巻線用絶縁電線
11a、12a 導体
11b、12b 絶縁被覆層
Claims (5)
- 断面が四角形の導体の外周に、樹脂からなる少なくとも1層の絶縁被覆層を有する巻線用絶縁電線であって、
前記導体の平坦部に被覆された前記絶縁被覆層の厚さt[mm]、前記導体のコーナー部の曲率半径R1[mm]、および前記絶縁被覆層のコーナー部の曲率半径R2[mm]が下記関係式、
0<R2<R1+t/1.5
を満たすことを特徴とする巻線用絶縁電線(但し、R2<R1である巻線用絶縁電線を除く)。 - 前記導体と前記絶縁被覆層との間にエナメル絶縁層を有することを特徴とする請求項1に記載の巻線用絶縁電線。
- 請求項1又は2に記載の巻線用絶縁電線が巻線加工されたことを特徴とするコイル。
- 断面が四角形の導体の外周に、樹脂からなる少なくとも1層の絶縁被覆層を有する巻線用絶縁電線の製造方法であって、
前記導体の平坦部の絶縁被覆層の厚さt[mm]、前記導体のコーナー部の曲率半径R1[mm]、および絶縁被覆層のコーナー部の曲率半径R2[mm]が下記関係式、
0<R2<R1+t/1.5
を満たすように前記絶縁被覆層を押出成形することを特徴とする巻線用絶縁電線の製造方法(但し、R2<R1を満たすように前記絶縁被覆層を押出成形する巻線用絶縁電線の製造方法を除く)。 - 断面が四角形の導体の外周に、樹脂からなる少なくとも1層の絶縁被覆層を有する巻線用絶縁電線を用いたコイルの製造方法であって、
前記導体の平坦部の絶縁被覆層の厚さt[mm]、前記導体のコーナー部の曲率半径R1[mm]、および絶縁被覆層のコーナー部の曲率半径R2[mm]が下記関係式、
0<R2<R1+t/1.5
を満たすように前記絶縁被覆層を押出成形して巻線用絶縁電線を製造する工程(但し、R2<R1を満たすように前記絶縁被覆層を押出成形して巻線用絶縁電線を製造する工程を除く)と
前記巻線用絶縁電線を巻線に加工する工程と
を備えることを特徴とする、コイルの製造方法。
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