JP5134847B2 - 耐アルコール性成形材料及び成形品 - Google Patents

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本発明は、アルコールを収容する容器などの耐アルコール性が要求される成形品のための成形材料、及び、これで成形されたアルコール容器等の成形品に関し、更に詳しくは、アルコールと接触しても、白化、亀裂、変形等の不良現象の発生が少なく耐薬品性に優れ、アルコールに対する耐透過性、アルコール存在下における耐熱性、機械的強度、表面硬度、超音波接着性に優れ、さらには不純物の溶出が少ない成形品を与える耐アルコール性成形材料、及び、これで成形されたアルコール容器等の成形品に関する。
近年、燃料電池などに用いられる各種樹脂成形品として、耐薬品性、耐熱性等に優れたものが要求されるようになっている。ここで、燃料電池とは、イオン伝導体である電解質の両側に電極を備え、一方の電極に酸素や空気などの酸化ガスを供給し、他方の電極に水素や炭化水素などの気体燃料、あるいはアルコールなどの液体燃料を供給し、これらの電極間に電気化学反応を起こさせて、電気と水とを発生させる電池である。
燃料としてメタノールを直接供給する直接型メタノール燃料電池(DMFC)は、電解質として固体高分子電解質膜を用いることができるため、100℃以下で動作できる可能性があり、また、燃料が液体で、輸送、貯蔵が容易であることなどから、小型・可搬用に適していると考えられ、将来の自動車用動力源、モバイル電子機器用電源として有力視されている。DMFCの構造は、例えば、特許文献1に開示されている。
また、燃料電池を携帯用電子機器の電源として使用するための方法が、特許文献2に開示されている。この方法によれば、携帯電子機器の内部に小型のDMFCを組み込み、メタノールを充填した取り替え式のカートリッジから燃料が供給される。
カートリッジを形成する材料としては、特許文献1にはアクリル樹脂が、特許文献2にはポリプロピレン、ポリエチレンが記載されている。さらに、特許文献3にはポリフェニレンエーテル系樹脂とポリオレフィン系樹脂、並びにポリフェニレンエーテル系樹脂とポリスチレン系樹脂からなるアルコール直接型燃料電池用燃料容器またはカートリッジが記載されている。
特開2003−17102号公報 特開2003−92128号公報 特開2005−222845号公報
アルコール容器用成形材料及びこれで成形されたアルコール容器の性能としては、アルコールと容器が接触しても容器に白化、亀裂、変形等の不良現象の発生が少なく耐薬品性に優れ、容器内のアルコールが容器外に漏洩するのを防ぐためにアルコールに対する耐透過性に優れ、使用環境温度が高い場合にも対応できる十分なアルコール存在下における耐熱性が求められる。また、高度な機械的強度と表面硬度、たとえば容器製造工程において、樹脂や金属同士を重ね合わせて超音波振動させ、お互いをすり合わせることで摩擦熱を発生させて、溶け合わせて接着する超音波接着性に優れ、さらには例えばアルコール直接型燃料電池に使用した場合、燃料電池の起電部である膜電極複合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)に影響を及ぼし、燃料電池の発電効率を低下させる恐れのある金属イオン等の不純物の溶出が少ないことが求められる。
しかしながら、特許文献1〜3に開示されている組成物は、上記の耐薬品性、耐透過性、耐熱性、超音波接着性、不純物の溶出の少なさが十分でなく、その使用範囲が限られていた。
本発明は、アルコールと接触しても、白化、亀裂、変形等の不良現象の発生が少なく耐薬品性に優れ、アルコールに対する耐透過性、アルコール存在下における耐熱性、引張強度、曲げ強度等の機械的強度、表面硬度、超音波接着性に優れ、さらには不純物の溶出が少ない耐アルコール性成形材料及び成形品を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、
オレフィン系樹脂(A)と特定のグラフト共重合体(B)とを含有した成形材料が、前述の耐薬品性、耐透過性、耐熱性、引張強度、曲げ強度等の機械的強度、表面硬度、超音波接着性、不純物の溶出の課題を解消した成形品を与えることを発見し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、以下に示される。
1.下記成分(A)70〜98質量%と、下記成分(B)30〜2質量%とを含有する耐アルコール性成形材料。
成分(A):オレフィン系樹脂;
成分(B):ポリプロピレン系樹脂含有グラフト共重合体。
2.更に、上記成分(A)と上記成分(B)の合計100質量部あたり、下記成分(C1)、下記成分(C2)及び下記成分(C3)からなる群より選ばれる少なくとも1種の成分(C)1〜50質量部を含有してなる上記1に記載の耐アルコール性成形材料。
成分(C1):ジエン系(共)重合体の水素添加物及び/又はエチレン−α−オレフィン系ゴム;
成分(C2):繊維状充填剤;
成分(C3):マレイミド系(共)重合体及び/又はα−メチルスチレン系(共)重合体。
3.上記1又は2に記載の耐アルコール性成形材料で成形された成形品
4.アルコール容器である上記3に記載の成形品。
本発明の耐アルコール性成形材料で成形された成形品は、アルコールと接触しても白化、亀裂、変形等の不良現象の発生が少なく耐薬品性に優れ、アルコールに対する耐透過性に優れ、高い環境温度で使用するに十分なアルコール存在下における耐熱性を備える。また引張強度、曲げ強度等の機械的強度及び表面硬度に優れ、容器製造工程における超音波接着性にも優れ、さらには、金属イオン等の不純物の溶出が少ない。したがって、アルコール直接型燃料電池用燃料容器(カートリッジも含む)等のアルコールと接触する条件で使用される成形品の成形材料として極めて有用である。
以下、本発明を詳しく説明する。尚、本明細書において、「(共)重合」とは、単独重合および共重合を意味し、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及び/又はメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味する。
本発明の耐アルコール性成形材料は、オレフィン系樹脂(A)及び特定のグラフト共重合体(B)を含有してなり、必要に応じて上記成分(C)のうち少なくとも1種を配合してなる。
成分(A)
本発明で使用する成分(A)は、オレフィン系樹脂であり、代表的には、エチレン及び炭素数3〜10のα−オレフィンからなる群より選ばれた少なくとも1種のオレフィン類を構成単量体単位として含有する重合体である。このオレフィン系樹脂としては、X線回折により室温で結晶化度を示すものが好ましく、より好ましくは結晶化度が20%以上であり、融点が40℃以上であることが好ましい。また、このオレフィン系樹脂は、常温下での使用に対する十分な強度と、例えば射出成形等に対する十分な成形性をもつことが好ましい。
上記成分(A)の構成単量体単位であるオレフィン類の例としては、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、3−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1、3−メチルヘキセン−1等があり、好ましくは、エチレン、プロピレン、ブテン−1、3−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1である。また他に、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、1,9−デカジエン等の非共役ジエン等の他の単量体成分を構成単量体単位の一部として使用することができる。
また、上記成分(A)としては、アイオノマー、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、環状オレフィン共重合体、塩素化ポリエチレン、臭素化ポリエチレン等を用いることもできる。
本発明で用いられる上記成分(A)は、単独重合体または共重合体であってよく、該共重合体は、ランダム共重合体またはブロック共重合体のいずれであってもよいが、これらのうちプロピレン単独重合体が特に好ましい。
例えば、上記成分(A)としてのポリプロピレン系樹脂は、230℃、2.16kgの条件で測定したメルトフローレート(MFR)が、0.01〜500g/10分であることが好ましく、より好ましくは0.05〜100g/10分である。
成分(B)
本発明で使用する成分(B)は、ポリプロピレン系樹脂含有グラフト共重合体であり、これは、ポリプロピレン系樹脂(a)の存在下にビニル系単量体(b)を重合して得られるグラフト共重合体である。
ポリプロピレン系樹脂(a)は、プロピレン単独重合体、プロピレンを主成分とし、さらにエチレンまたは炭素数4以上のα―オレフィンをコモノマーとして含有するランダム又はブロック共重合体、並びにこれらの混合物等が挙げられる。これらのうち、プロピレン単独重合体が特に好ましい。
ポリプロピレン系樹脂(a)は、その製造法が限定されるものではないが、通常、チーグラー(ZN)触媒、またはメタロセン触媒を用いて製造される。
チーグラー触媒としては、高活性触媒が好ましく、特に、マグネシウム、チタン、ハロゲン、電子供与体を必須成分とする固体触媒成分と有機アルミニウム化合物を組み合わせた高活性触媒が好ましい。
メタロセン触媒としては、ジルコニウム、ハフニウム、チタンなどの遷移金属にシクロペンタジエニル骨格を有する有機化合物、ハロゲン原子などが配位したメタロセン錯体と、アルモキサン化合物、イオン交換性珪酸塩、有機アルミニウム化合物などを組み合わせた触媒が有効である。
プロピレンと共重合させるコモノマーとしては、エチレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチル−ペンテン−1等が挙げられる。これらコモノマー成分の含有量は、共重合体全体を100質量%として、通常0〜15質量%、好ましくは0〜10質量%である。これらのうち、特に好ましいのは、プロピレンとエチレンおよび/又はブテン−1とのブロック共重合体である。
反応系中の各モノマーの量比は経時的に一定である必要はなく、各モノマーを一定の混合比で供給することも可能であるし、供給するモノマーの混合比を経時的に変化させることも可能である。また、共重合反応比を考慮してモノマーのいずれかを分割添加することもできる。
重合様式は、触媒成分と各モノマーが効率よく接触するならば、あらゆる様式の方法を採用することができる。具体的には、不活性溶媒を用いるスラリー法、不活性溶媒を実質的に用いずプロピレンを溶媒として用いるバルク法、溶液法、実質的に液体溶媒を用いず各モノマーを実質的にガス状に保つ気相法などを採用することができる。
また、溶液重合、回分式重合のいずれを用いてもよい。スラリー重合の場合には、重合溶媒としてヘキサン、ヘプタン、ペンタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン等の飽和脂肪族または芳香族炭化水素を単独で又は混合して用いることができる。
重合条件としては重合温度が通常−78〜160℃、好ましくは0〜150℃であり、そのときの分子量調節剤として補助的に水素を用いることができる。また、重合圧力は通常0〜90kg/cm・G、好ましくは0〜60kg/cm・G、特に好ましくは1〜50kg/cm・Gである。
本発明で用いられるポリプロピレン系樹脂(a)は、230℃、2.16kgの条件で測定したメルトフローレート(MFR)が、通常1〜100g/10分、好ましくは3〜50g/10分、より好ましくは5〜30g/10分、特に好ましくは5〜20g/10分で、GPCで測定した分子量分布(Mw/Mn)が、好ましくは1.2〜10、さらに好ましくは1.5〜8、より好ましくは2〜6であり、融点(Tm)は、好ましくは150〜170℃、より好ましくは155〜167℃である。
ビニル系単量体(b)は、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、およびその他の共重合可能な他のビニル系化合物の群から選ばれた少なくとも1種である。このうち、芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、メチルスチレン、ビニルキシレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、モノブロモスチレン、ジブロモスチレン、フルオロスチレン、p−t−ブチルスチレン、エチルスチレン、ビニルナフタレンなどが挙げられ、これらは、1種単独で、または2種以上を混合して用いることができる。中でも好ましいものは、スチレンである。
また、シアン化ビニル化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられるが、好ましくはアクリロニトリルである。
また、その他の共重合可能なビニル系化合物としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、アミルアクリレート、ヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、フェニルアクリレートなどのアクリル酸アルキルエステル;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、アミルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、オクタデシルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレートなどのメタクリル酸アルキルエステル;無水マレイン酸、無水イタコン酸などの不飽和酸無水物;アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和酸;マレイミド、N−メチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミドなどのα,β−不飽和ジカルボン酸のイミド化合物などが挙げられ、好ましくはメチルメタクリレート、N−フェニルマレイミドおよびN−シクロヘキシルマレイミドが挙げられる。これらのその他の共重合可能なビニル系化合物は、1種単独で、または2種以上を混合して使用できる。
成分(B)における成分(a)の含有量は、成分(a)と成分(b)の合計100質量%に対し、好ましくは10〜60質量%、さらに好ましくは20〜50質量%の範囲である。成分(a)の含有量が10〜60質量%である場合、オレフィン系樹脂との相溶性に優れ好ましい。
ビニル系単量体(b)は芳香族ビニル化合物とシアン化ビニル化合物を含有してなることが好ましく、この場合における両者の使用割合(芳香族ビニル化合物/シアン化ビニル化合物)は、両者の合計を100質量%として、好ましくは30/70〜98/2質量%、より好ましくは60/40〜95/5質量%である。
ビニル系単量体(b)の構成単量体成分として、その他の共重合可能な他のビニル系化合物を用いる場合、その使用量は、芳香族ビニル単量体とシアン化ビニル単量体の合計100質量部に対して、好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下、さらに好ましくは20質量部以下である。
本発明で用いるポリプロピレン系樹脂グラフト共重合体(B)の製造方法としては、乳化重合、塊状重合、懸濁重合、溶液重合などの公知の方法を用いることができるが、特に品質の観点から溶液重合が好ましい。また、溶液重合は、回分式重合法と連続式重合法の何れの方法によっても実施できるが、経済性の点からは、連続式重合法が好ましく、品質上の観点からは、回分式重合法が好ましい。
上記成分(B)を溶液重合により製造する際に用いることのできる溶剤としては、例えば芳香族炭化水素を主体とする不活性溶剤が挙げられる。芳香族炭化水素としては、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、イソプロピルベンゼン等が挙げられるが、このうちトルエンが好ましい。また、ケトン類、エステル類、エーテル類、アミド類、ハロゲン化炭化水素などの極性溶剤を溶剤中の30質量%以下用いることは差し支えないが、脂肪族炭化水素との併用は好ましくない。不活性溶剤の使用量はポリプロピレン系樹脂(a)とビニル系単量体(b)成分の合計100質量部に対して、好ましくは50〜200質量部、さらに好ましくは60〜180質量部である。重合温度は、好ましくは80〜140℃、さらに好ましくは90〜135℃、特に好ましくは100〜130℃の範囲である。
グラフト共重合を行う際、上記成分(a)と上記成分(b)の合計を100質量%とした場合に、該成分(a)を10〜60質量%、該成分(b)を90〜40質量%用いることが好ましい。
また、該成分(a)を上記溶媒に予め溶解した後、該成分(b)を添加してグラフト共重合を行うことが好ましい。この時、該成分(a)が、必ず均一に溶解している必要はなく、一部が溶解又は膨潤している状態でもよい場合がある。該成分(a)を上記溶媒に溶解を行う際の前記溶媒の好ましい温度は100℃以上であり、より好ましくは105℃以上であり、さらに好ましくは110〜200℃、特に好ましくは110〜170℃である。この溶解は、上記温度範囲で2〜5時間程度の時間をかけて行うことが好ましい。該成分(a)の溶解性は、反応容器の仕様によって異なるが、通常100℃未満では十分でなく、グラフト率が下がる可能性があり、目的とする性能が得られない可能性がある。
グラフト共重合を行う際の重合時間は、好ましくは1〜10時間、より好ましくは1.5〜8時間、特に好ましくは2〜6時間である。重合時間が短すぎると重合率が上がらず、グラフト率が低くなる可能性があり、長すぎると生産性が低下する可能性がある。
グラフト共重合に際しては、重合開始剤を用いてもよいし、重合開始剤を使用せずに熱重合で重合してもよいが、重合開始剤を用いる方が好ましい。重合開始剤としては、通常公知のものを用いることができるが、グラフト反応に効果的な有機過酸化物を用いることが好ましい。
このうち、好ましくはパーオキシエステル系の有機過酸化物であり、さらに好ましくは10時間半減期温度(T10)が80〜120℃であるパーオキシエステル系化合物であり、特に好ましくはt−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネートである。
重合開始剤の使用量は、上記成分(a)と上記成分(b)の合計100質量部に対して、好ましくは0.01〜5質量部、より好ましくは0.05〜3質量部、さらに好ましくは0.1〜2質量部である。また、連鎖移動剤を用いることもでき、例えば、メルカプタン類、α−メチルスチレンダイマー等を挙げることができる。さらに、必要に応じて酸化防止剤を添加してもよく、その添加方法としては最終製品に混合する方法でもよいし、重合反応前後に添加する方法でもよい。
重合開始剤として、10時間半減期温度(T10)が80〜120℃であるパーオキシエステル系化合物を用いて溶液重合を行う場合、下記式(1)を満たす温度(T)の範囲で重合を行うことが好ましい。
10≦T≦T10+30(℃) ・・・(1)
(式(1)中、T10は前記重合開始剤の10時間半減期温度(℃)である。)
成分(B)のグラフト率は、好ましくは10〜200質量%、より好ましくは15〜150質量%、さらに好ましくは20〜120質量%である。このグラフト率(質量%)は、次式(2)により求められる。
グラフト率(質量%)={(T−S)/S}×100・・・(2)
上記式(2)中、Tは成分(B)1gをアセトン20mlに投入し、振とう機により2時間振とうした後、遠心分離器(回転数;23,000rpm)で60分遠心分離し、不溶分と可溶分とを分離して得られる不溶分の質量(g)であり、Sは該成分(B)1gに含まれるポリプロピレン系樹脂の質量(g)である。
共重合体の極限粘度[η]の測定は下記方法で行った。まず、共重合体をメチルエチルケトンに溶解させ、濃度の異なるものを5点作った。ウベローデ粘度管を用い、30℃で各濃度の還元粘度を測定した結果から、極限粘度[η]を求めた。単位はdl/gである。
また、上記成分(B)のアセトン可溶分の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃)は、好ましくは0.1〜1.2dl/g、さらに好ましくは0.2〜1dl/g、より好ましくは0.2〜0.8dl/gである。
また、該成分(B)は、220℃、10kgの条件で測定したメルトフローレート(MFR)は、好ましくは5g/10分以上、より好ましくは10〜200g/10分である。
また、該成分(B)は、IZOD(アイゾット)衝撃強度が、好ましくは20〜200J/m、より好ましくは90〜200J/mである。
また、該成分(B)は、曲げ弾性率が、好ましくは1400〜3000MPa、より好ましくは1500〜3000MPaである。
尚、ポリプロピレン系樹脂(a)の存在下、ビニル系単量体成分(b)を共重合して得られる本発明のポリプロピレン系樹脂含有グラフト共重合体(B)には、通常ビニル系単量体成分がポリプロピレン系樹脂にグラフトした共重合体と、ビニル系単量体成分がポリプロピレン系樹脂にグラフトしていない未グラフト成分(すなわち、ビニル系単量体同士の単独及び共重合体)が含まれる。
成分(C)
本発明で使用する成分(C)は、上記成分(C1)、上記成分(C2)及び上記成分(C3)からなる群より選ばれる少なくとも1種の成分からなる。
成分(C1)
上記成分(C1)は、成分(C1):ジエン系(共)重合体の水素添加物及び/又はエチレン−α−オレフィン系ゴム
である。
ジエン系(共)重合体の水素添加物(C1−1)としては、例えば、下記の構造を有する共役ジエンブロック共重合体の水素添加物が挙げられる。すなわち、芳香族ビニル化合物単位からなる重合体ブロックA、1,2−ビニル結合含量が25モル%を超える共役ジエン系化合物単位からなる重合体の二重結合部分を95モル%以上水素添加してなる重合体ブロックB、1,2−ビニル結合含量が25モル%以下の共役ジエン系化合物単位からなる重合体の二重結合部分を95モル%以上水素添加してなる重合体ブロックC、および芳香族ビニル化合物単位と共役ジエン系化合物単位の共重合体の二重結合部分を95モル%以上水素添加してなる重合体ブロックDのうち、2種以上を組み合わせたものからなるブロック共重合体である。
上記重合体ブロックAの製造に用いられる芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、メチルスチレン、ビニルキシレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、モノブロモスチレン、ジブロモスチレン、フルオロスチレン、p−t−ブチルスチレン、エチルスチレン、ビニルナフタレンなどが挙げられ、これらは、1種単独で、または2種以上を混合して用いることができる。中でも好ましいものは、スチレンである。ブロック共重合体中の重合体ブロックAの割合は、ブロック共重合体中の0〜65質量%が好ましく、さらに好ましくは10〜40質量%である。重合体ブロックAが65質量%を超えると、耐衝撃性が十分でなくなる可能性がある。
上記重合体ブロックB、CおよびDは、共役ジエン系化合物の重合体を水素添加することにより得られる。上記重合体ブロックB、CおよびDの製造に用いられる共役ジエン系化合物としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、クロロプレンなどが挙げられるが、工業的に利用でき、物性の優れた水添ジエン系ゴム質重合体を得るには、1,3−ブタジエン、イソプレンが好ましい。これらは、1種単独で、または2種以上を混合して用いることができる。上記重合体ブロックDの製造に用いられる芳香族ビニル化合物としては、上記重合体ブロックAの製造に用いられる芳香族ビニル化合物と同様のものが挙げられ、これらは、1種単独で、または2種以上を混合して用いることができる。中でも好ましいものは、スチレンである。
上記重合体ブロックB、CおよびDの水素添加率は、95モル%以上であり、好ましくは96モル%以上である。95モル%未満であると、重合中にゲルの発生を招き、安定に重合できない可能性がある。重合体ブロックBの1,2−ビニル結合含量は、25モル%を超え90モル%以下が好ましく、30〜80モル%がさらに好ましい。重合体ブロックBの1,2−ビニル結合含量が25モル%以下であると、ゴム的性質が失われ耐衝撃性が十分でなくなる可能性があり、一方、90モル%を超えると、耐薬品性が十分でなくなる可能性がある。また、重合体ブロックCの1,2−ビニル結合含量は、25%モル以下が好ましく、20モル%以下がさらに好ましい。重合体ブロックCの1,2−ビニル結合含量が25モル%を超えると、耐傷つき性および摺動性が十分に発現しない可能性がある。重合体ブロックDの1,2−ビニル結合含量は、25〜90モル%が好ましく、30〜80モル%がさらに好ましい。重合体ブロックDの1,2−ビニル結合含量が25モル%未満であると、ゴム的性質が失われ耐衝撃性が十分でなくなる可能性があり、一方、90モル%を超えると、耐薬品性が十分に得られない可能性がある。また、重合体ブロックDの芳香族ビニル化合物含量は、25質量%以下が好ましく、20質量%以下がさらに好ましい。重合体ブロックDの芳香族ビニル化合物含量が25質量%を超えると、ゴム的性質が失われ耐衝撃性が十分でなくなく可能性がある。
上記ブロック共重合体の分子構造は、分岐状、放射状またはこれらの組み合わせでもよく、さらにブロック構造としては、ジブロック、トリブロック、もしくはマルチブロック、またはこれらの組み合わせでもよい。例えば、A−(B−A)n 、(A−B)n 、A−(B−C)n 、C−(B−C)n 、(B−C)n 、A−(D−A)n 、(A−D)n 、A−(D−C)n 、C−(D−C)n 、(D−C)n 、A−(B−C−D)n 、(A−B−C−D)n 、(ただし、n=1以上の整数)で表されるブロック共重合体であり、好ましくは、A−B−A、A−B−A−B、A−B−C、A−D−C、C−B−Cの構造を有するブロック共重合体である。
上記成分(C1−1)の重量平均分子量(Mw)は、1万〜100万が好ましく、さらに好ましくは3万〜80万、より好ましくは5万〜50万である。Mwが1万未満では、耐衝撃性が十分でなく、一方、100万を超える高分子量のものでは、成形品外観が十分でなくなる可能性がある。
オレフィン系共重合体(C1−2)は、オレフィン類を主体としてなる共重合体であり、例えば、エチレン−α−オレフィン系ゴムが挙げられる。
エチレン−α−オレフィン系ゴムとしては、例えば、エチレン/α−オレフィン共重合体、エチレン/α−オレフィン/非共役ジエン共重合体が挙げられる。該エチレン−α−オレフィン系ゴムを構成するα−オレフィンとしては、例えば、炭素数3〜20のα−オレフィンが挙げられ、具体的には、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−ヘキサデセン、1−エイコセンなどが挙げられる。これらのα−オレフィンは、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。α−オレフィンの炭素数は、好ましくは3〜20、より好ましくは3〜12、さらに好ましくは3〜8である。炭素数が20を超えると、共重合性が低下し、成形品の表面外観が十分でなくなる可能性がある。エチレン/α−オレフィンの質量比は、好ましくは5〜95/95〜5であり、より好ましくは50〜90/50〜10、さらに好ましくは60〜88/40〜12、特に好ましくは70〜85/30〜15である。α−オレフィンの質量比が95を超えると、耐候性が十分でなく、一方、5未満になるとゴム質重合体のゴム弾性が十分でなくなるため、十分な耐衝撃性が発現しない可能性がある。
非共役ジエンとしては、アルケニルノルボルネン類、環状ジエン類、脂肪族ジエン類が挙げられ、好ましくは5−エチリデン−2−ノルボルネンおよびジシクロペンタジエンである。これらの非共役ジエンは、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。非共役ジエンの、ゴム質重合体全量に対する割合は、好ましくは0〜30質量%、より好ましくは0〜20質量%、さらに好ましくは0〜10質量%である。非共役ジエンの割合が30質量%を超えると、成形外観および耐候性が十分でなくなる可能性がある。尚、成分(a1)における不飽和基量は、ヨウ素価に換算しして4〜40の範囲が好ましい。また、成分(a1)のムーニー粘度(ML1+4、100℃:JIS K6300準拠)は好ましくは5〜80、より好ましくは10〜65、さらに好ましくは15〜45である。ムーニー粘度が80を超えると、流動性が不十分に、ムーニー粘度が5未満になると、得られる成形品の耐衝撃性が不十分となる可能性がある。
該成分(C1)の使用量は、上記成分(A)と上記成分(B)の合計100質量部に対し、好ましくは1〜50質量部、より好ましくは3〜40質量部、さらに好ましくは5〜30質量部である。該成分(C1)が1質量部より少ないと耐衝撃性が十分でない可能性があり、一方、50質量部を超えると、成形品の耐薬品性や表面光沢が十分でなくなる可能性がある。
成分(C2)
上記成分(C2)は、繊維状充填剤であり、例えばガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維等の有機繊維、セラミック系ウィスカー等の無機繊維、金属繊維等が挙げられる。
ガラス繊維に用いられるガラスの組成は、珪酸塩ガラス、ほう酸珪酸ガラス、燐酸塩ガラス等が挙げられる。またガラスの種類としては、Eガラス、Cガラス、Aガラス、Sガラス、Mガラス、ARガラス、Lガラス等が挙げられるが、Eガラス、Cガラスが好ましい。本発明に用いられるガラス繊維には、適当なサイジング剤を用いても構わない。サイジング剤としては、表面処理剤、フィルム形成剤、潤滑剤、界面活性剤、帯電防止剤等が挙げられる。表面処理剤としては、アミン系、シラン系、エポキシ系等のカップリング剤が挙げられる。本発明に用いられるガラス繊維は、ロービングを用いた長繊維タイプでもよく、チョップドストランドであってもよい。
炭素繊維としては、PAN系、ピッチ系等が用いられる。本発明に用いられる炭素繊維の直径は特に指定はないが、0.5ミクロン〜200ミクロンのものが好ましく、1ミクロン〜50ミクロンがより好ましく、5ミクロン〜50ミクロンがさらに好ましい。繊維の長さは特に指定はないが、成形品中で20ミクロン以上であることが好ましい。
本発明に用いられる繊維状充填剤の量は、上記成分(A)と上記成分(B)の合計100質量部に対し、好ましくは1〜50質量部、より好ましくは3〜40質量部、さらに好ましくは5〜30質量部である。この範囲内において、主として、成形品の耐衝撃性が十分となり、熱変形を抑制する効果も十分となる。繊維状充填剤が1質量部より少ないと、得られる成形体の機械的強度が不十分となる可能性があり、一方、50質量部を超えると成形材料の流動性が不十分となる可能性がある。
成分(C3)
上記成分(C3)は、マレイミド系(共)重合体、及び/又は、α−メチルスチレン系(共)重合体である。マレイミド系(共)重合体とは、マレイミド系単量体を構成単位として含む共重合体(以下、「(共)重合体(C3−1)又は成分(C3−1)」ともいう。)である。α−メチルスチレン系(共)重合体とは、α−メチルスチレンを構成単位として含む(共)重合体(以下、「(共)重合体(C3−2)又は成分(C3−2)」ともいう。)である。
上記(共)重合体(C3−1)としては、マレイミド系単位を含む限り特に限定されず、上記ビニル系単量体(b)として例示したマレイミド化合物と、このマレイミド化合物と重合可能な化合物との共重合体であってもよいし、無水マレイン酸と、この無水マレイン酸と重合可能な化合物との共重合体を得た後、後イミド化によって生成したマレイミド系単位を含有した共重合体であってもよい。マレイミド化合物と共重合させる他の化合物としては、α−メチルスチレン を含む芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物等が好ましく、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物がより好ましい。
上記(共)重合体(C3−1)を構成するマレイミド系単位の含有量は、全構成単位に対して、好ましくは10〜55質量%、より好ましくは20〜50質量%、更に好ましくは30〜48質量%である。
上記(共)重合体(C3−1)の製造方法は特に限定されず、公知の重合法、例えば、乳化重合、塊状重合、溶液重合、懸濁重合及びこれらを組み合わせた重合法を用いることができる。
また、上記(共)重合体(C3−1)は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記(共)重合体(C3−1)のガラス転移温度(以下、単に「Tg」ともいう。)は、好ましくは100℃以上、より好ましくは110〜220℃、更に好ましくは120〜200℃である。
また、上記(共)重合体(C3−1)の極限粘度[η]は、メチルエチルケトンを溶媒として、30℃で測定したときに、好ましくは0.1〜1dl/g、より好ましくは0.15〜0.8dl/g、更に好ましくは0.2〜0.8dl/gの各範囲である。
また、上記(共)重合体(C3−2)としては、α−メチルスチレン の単独重合体や、α−メチルスチレン と、このα−メチルスチレン と重合可能な化合物との共重合体等が挙げられる。α−メチルスチレンと共重合される他の化合物としては、α−メチルスチレン 以外の芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物等が挙げられる。
上記(共)重合体(C3−2)を構成するα−メチルスチレン単位の含有量は、全構成単位に対して、好ましくは20〜75質量%、より好ましくは30〜70質量%、更に好ましくは35〜70質量%である。
上記(共)重合体(C3−2)の製造方法は特に限定されず、公知の重合法、例えば、乳化重合、塊状重合、溶液重合、懸濁重合及びこれらを組み合わせた重合法を用いることができる。
また、上記(共)重合体(C3−2)は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記(共)重合体(C3−2)のTgは、好ましくは100℃以上、より好ましくは100〜130℃、更に好ましくは100〜125℃である。
また、上記(共)重合体(C3−2)の極限粘度[η]は、メチルエチルケトンを溶媒として、30℃で測定したときに、好ましくは0.2〜1.5dl/g、より好ましくは0.3〜1.0dl/gの範囲である。
上記成分(C3)としては、上記(共)重合体(C3−1)及び上記(共)重合体(C3−2)を単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよい。
上記成分(C3)の使用量は、上記成分(A)と上記成分(B)の合計100質量部に対し、好ましくは1〜50質量部、より好ましくは5〜40質量部、さらに好ましくは5〜30質量部である。この範囲内において、主として、熱変形を抑制する効果が十分となる。上記成分(C3)が1質量部より少ないと、熱変形を抑制する効果が十分でなく、一方、50質量部を超えると成形性、得られる成形品の外観が十分でなくなる可能性がある。
耐アルコール性成形材料の製造
本発明の耐アルコール性成形材料は、上記成分(A)及び上記成分(B)を含有してなり、必要に応じて上記成分(C)のうち少なくとも1種を配合してなる。該成分(A)と該成分(B)の配合割合(成分(A)/成分(B))は、両者の合計を100質量%として、70〜98/30〜2質量%、好ましくは75〜98/25〜2質量%、より好ましくは75〜95/25〜5質量%である。該成分(A)が70質量%未満の場合は耐薬品性、アルコールに対する耐透過性が十分でなく、98質量%を超える場合は耐衝撃性が十分でなくなる。一方、該成分(B)が2質量%未満の場合は耐衝撃性が十分でなく、30質量%を超える場合は耐薬品性が十分でなくなる。
成分(C)は、必要に応じて配合することができるが、好ましい配合量については、上記のとおりである。
尚、本発明の耐アルコール性成形材料は、必要に応じて、繊維状充填剤(C2)以外の充填剤、滑剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、老化防止剤、可塑剤、抗菌剤、着色剤等の各種添加剤を、本発明の目的を損なわない範囲で含有することができる。
さらに、本発明の耐アルコール性成形材料は、必要に応じて、他の樹脂、例えば、ポリエチレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアミド等を、本発明の目的を損なわない範囲で含有することができる。
本発明の耐アルコール性成形材料は、各成分を所定の配合比で、タンブラーミキサーやヘンシェルミキサーなどで混合した後、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール、フィーダールーダー等の混合機を用いて、適当な条件下で溶融混練して製造することができる。好ましい混練機は、二軸押出機である。さらに、それぞれの成分を混練するに際しては、それぞれの成分を一括して混練しても、多段、分割配合して混練してもよい。尚、バンバリーミキサー、ニーダー等で混練した後、押出機によりペレット化することもできる。また、充填材のうち繊維状のものは、混練中での切断を防止するためにサイドフィーダーにより押出機の途中から供給する方が好ましい。溶融混練温度は、通常200〜300℃、好ましくは220〜280℃である。
この様にして得られる本発明の耐アルコール性成形材料は、射出成形、シート押出、真空成形、異形押出、発泡成形、インジェクションプレス、プレス成形、ブロー成形などによって各種成形品に成形することができる。本発明の耐アルコール性成形材料は、アルコールと接触しても、白化、亀裂、変形等の不良現象の発生が少なく耐薬品性に優れ、アルコールに対する耐透過性、アルコール存在下における耐熱性、機械的強度、表面硬度、超音波接着性に優れ、さらには不純物の溶出が少ない成形品を提供するものであり、これらの特性を生かして、OA・家電分野、電気・電子分野、雑貨分野、サニタリー分野、自動車分野などの各種パーツ、ハウジング、シャーシ、トレーなどに使用することができる。そのなかでも、アルコール直接型燃料電池のアルコールを貯蔵する容器(カートリッジも含む)に好適である。
以下、実施例を挙げ、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に何等制約されるものではない。尚、実施例中、部および%は特に断らない限り質量基準である。
(1)評価方法
下記の実施例及び比較例における、各種評価項目の測定方法を以下に示す。
(1−1)物性試験:引張強さ・引張破断伸び
ISO527に準じ、島津製作所製の精密万能試験機「オートグラフAG5000E型」を用いて測定した。測定値の単位は、引張強さがMPa、引張破断伸びが%(歪み)である。
(1−2)物性試験:曲げ強さ・曲げモジュラス
ISO178に準じ、島津製作所製の精密万能試験機「オートグラフAG5000E型」を用いて測定した。測定値の単位は、曲げ強さがMPa、曲げモジュラスがMPaである。
(1−3)物性試験:シャルピー衝撃強さ
ISO179に準じて、室温におけるシャルピー衝撃強さ(Edgewise Impact、ノッチ付き)を測定した。測定条件は、
試験片タイプ : Type 1
ノッチタイプ : Type A
荷重 : 2J
で、単位はKJ/mである。
(1−4)物性試験:ロックウェル硬さ
ISO2039に準じて、室温におけるロックウェル硬さ(硬度スケールは、R−スケール。)を測定した。
(1−5)物性試験:マスメルトフローレート
ISO1133に準じ、測定温度240℃、荷重98Nの条件で測定を行った。測定値の単位は、g/10分である。
(1−6)物性試験:熱変形温度(HDT)
ISO75に準じ、荷重1.80MPaの条件で測定を行った。測定値の単位は℃である。
(1−7)耐メタノール性試験:ガスバリア性(カップ試験)
図1に示すように、直径60mmの金属製円筒状カップ1にメタノール2を10g入れ、カップ1の開口部を、厚さ1mm、直径74mmの円板状試験片3で、カップ内部のメタノールが外部に漏洩しないように密閉した。そして、70℃の恒温槽内に4時間放置した後、これを取り出し、メタノールの減少量(%)を測定した。測定結果は、メタノールの減少量が小さいほど、成形材料のメタノールに対する耐透過性が優れる。
(1−8)耐メタノール性試験:耐熱性(カップ試験)
上記(1−7)のガスバリア性試験において、恒温槽から取り出した時の試験片中央部の上方への変形量(mm)を測定した。測定結果は、試験片中央部の変形量が小さいほど、高温での使用環境下における変形が少なく、耐熱性に優れる。
(1−9)耐メタノール性試験:耐薬品性(1/4楕円法)
165mm×40mm×1.6mmの成形品に1/4楕円法で1%までの歪をかけ、メタノールを塗布し、72時間後の成形品表面状態を観察し、下記基準で評価した。
○;クラックの発生なし
×;クラックの発生あり
(1−10)耐メタノール性試験:浸漬試験
射出成形機により作成した厚さ1.6mmの成形品から、70mm×40mm×1.6mmの試験片を切り出した。次に、500mlビーカー中にメタノール(100%)を150g入れ、メタノールの揮発を防ぐためにアルミ箔でビーカーに蓋をし、ウォーターバス中で70℃に加熱した。その後、ビーカー内温が70℃になったところで、上記試験片を40mmの辺がビーカー底面に接し、試験片底面から3.5cmがメタノールに浸るように、ビーカー壁面に立てかけた。ビーカー内温を70℃に保持しつつ、そこから8時間後に、試験片がメタノールに浸漬された部分の外観の変化と、メタノールに浸漬していない部分の変化も含めた試験片全体での変形(軟化)の発生を目視で評価した。評価は下記基準で行った。
○;外観変化なし、且つ、変形(軟化)発生なし。
×;外観変化あり、及び/または、変形(軟化)発生あり。
(2−1)成分(A)(オレフィン系樹脂)
成分(A−1):ホモタイプポリプロピレン「ノバテック MA4U」(商品名:日本ポリプロ社製)を用いた。
成分(A−2):ブロックタイプポリプロピレン「ノバテック BC6C」(商品名:日本ポリプロ社製)を用いた。
(2−2)成分(B)(ポリプロピレン系樹脂含有グラフト共重合体)
使用原料
ポリプロピレン系樹脂PP−1:ホモタイプポリプロピレン、日本ポリプロ社製「ノバテック MA3」(商品名)MFR(JIS K7210:1999 230℃、2.16kg) 11g/10min。
重合開始剤PO−1:パーオキシエステル系化合物、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、日本油脂社製「パーブチルI」(商品名)、10時間半減期温度(T10)98.7℃。
製造法
リボン型攪拌機翼、助剤連続添加装置、温度計などを装備した容積20リットルのステンレス製オートクレーブに、ポリプロピレン系樹脂として上記PP−1を30部、トルエンを140部仕込み、内温を120℃に昇温してこの温度を保持しながら、オートクレーブ内容物を攪拌回転数100rpmで2時間攪拌して溶解操作を行った。攪拌回転数100rpmで攪拌しながら内温を95℃に降温して、スチレン49部、アクリロニトリル21部、重合開始剤として上記PO−1を0.5部添加して、再び内温を120℃に昇温し、この温度を保持しながら3時間反応を行った。その後、内温を100℃に冷却し、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)−プロピオネート0.2部を添加した後、反応混合物をオートクレーブより抜き出し、水蒸気蒸留を行って未反応単量体と溶媒とを留去した。得られたポリプロピレン系樹脂グラフト共重合体のグラフト率は60%で、極限粘度[η]は0.23dl/gであった。なお、極限粘度[η]はウベローデ粘度計を用いて求めた。
(2−3)成分(C3)(マレイミド系(共)重合体及び/又はα−メチルスチレン系(共)重合体)
成分(C3):ポリイミレックス「PAS−1460」(商品名:日本触媒社製)を用いた。
(2−4)成分(D)(ABS樹脂)
撹拌機を備えた内容積7Lのガラス製フラスコに窒素気流中で、イオン交換水75部、ロジン酸カリウム0.5部、t―ドデシルメルカプタン0.1部、ポリブタジエンラテックス(平均粒子径;3500Å、ゲル含率;85%)40部(固形分)、スチレン15部、アクリロニトリル5部を加え、撹拌しながら昇温した。内温が45℃に達して時点で、ピロリン酸ナトリウム0.2部、硫酸第一鉄7水和物0.01部およびブドウ糖0.2部をイオン交換水20部に溶解した溶液を加えた。その後、クメンハイドロパーオキサイド0.07部を加えて重合を開始した。1時間重合させた後、更にイオン交換水50部、ロジン酸カリウム0.7部、スチレン30部、アクリロニトリル10部、t―ドデシルメルカプタン0.05部およびクメンハイドロパーオキサイド0.01部を3時間かけて連続的に添加し、更に、1時間重合を継続させた後、2,2′―メチレン−ビス(4−エチル−6−t―ブチルフェノール)0.2部を添加し重合を完結させた。反応生成物のラテックスを硫酸水溶液で凝固、水洗した後、乾燥してゴム含有グラフト共重合体を得た。このグラフト共重合体のグラフト率は80%、アセトン可溶分の極限粘度〔η〕は、0.45dl/gであった。なお、極限粘度[η]はウベローデ粘度計を用いて求めた。
実施例1〜2及び比較例1〜2
表1に記載の配合割合で、上記成分(A)〜(D)をヘンシェルミキサーにより混合した後、二軸押出機(日本製鋼所製、TEX44、バレル設定温度220℃)で混練し、ペレット化した。得られたペレットで評価用の各試験片を成形した。そして得られた試験片を用いて、前記の方法で評価した。以上の評価結果を表1に示した。
Figure 0005134847
表1から明らかなように、本発明の実施例1〜2は、アルコールに対する耐薬品性、耐透過性、耐熱性、引張強度、曲げ強度等の機械的強度、表面硬度に優れていることがわかる。
これに対し、比較例1は、(B)成分であるポリプロピレン系樹脂含有グラフト共重合体を含有しないものであるが、耐メタノール試験における変形量が大きく耐熱性に劣り、引っ張り強さ、曲げ強さも弱く、ロックウェル固さも低い。また、比較例2は、(B)成分であるポリプロピレン系樹脂含有グラフト共重合体を含有しないものであるが、耐メタノール試験における耐薬品性、浸漬試験の結果に劣る。
本発明の耐アルコール性成形材料及びこれで成形されたアルコール容器等の成形品は、アルコールと接触しても容器に白化、亀裂、変形等の不良現象の発生が少なく耐薬品性に優れ、アルコールに対する耐透過性、アルコール存在下における耐熱性、機械的強度、表面硬度、超音波接着性に優れ、不純物の溶出が少なく、アルコール型燃料電池用燃料容器(カートリッジも含む)等のアルコールと接触する条件での使用に極めて有用である。
実施例で行った耐メタノール性試験の方法を示す概略縦断面図である。

Claims (4)

  1. 下記成分(A)70〜98質量%と、下記成分(B)30〜2質量%とを含有する耐アルコール性成形材料。
    成分(A):オレフィン系樹脂;
    成分(B):ポリプロピレン系樹脂(a)の存在下に、芳香族ビニル化合物とシアン化ビニル化合物を含有してなるビニル系単量体(b)を重合して得られるポリプロピレン系樹脂含有グラフト共重合体。
  2. 更に、上記成分(A)と上記成分(B)の合計100質量部あたり、下記成分(C1)、下記成分(C2)及び下記成分(C3)からなる群より選ばれる少なくとも1種の成分(C)1〜50質量部を含有してなる請求項1に記載の耐アルコール性成形材料。
    成分(C1):ジエン系(共)重合体の水素添加物及び/又はエチレン−α−オレフィン系ゴム;
    成分(C2):繊維状充填剤;
    成分(C3):マレイミド系(共)重合体及び/又はα−メチルスチレン系(共)重合体。
  3. 請求項1又は2に記載の耐アルコール性成形材料で成形された成形品
  4. アルコール容器である請求項3に記載の成形品。
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