JP4931224B2 - 二次電池電槽に成形される樹脂組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、二次電池電槽(密閉型二次電池電槽も含む)として成形される、耐熱クリープ特性、耐水蒸気透過性および耐衝撃性に優れた樹脂組成物に関するものである。
鉛蓄電池、ニッケル−カドミウム電池、ニッケル−水素電池などで知られている二次電池(密閉型二次電池も含む)は、自動車等の車両を筆頭に、各種電気製品、産業機器の動力源として幅広く使われ、近年その需要が大きくなってきている。この需要と共に、電池本体の性能も向上し、電池電槽自体の小型軽量化と電気容量のアップが進み、電槽自体もデザインの多様化、薄肉軽量化などの形状的な変化に耐えうる樹脂材料への転換が要求され、さらには電池性能を向上させるために機械的強度、耐水蒸気透過性、耐熱性に優れた樹脂材料が要求されている。
従来、この樹脂製二次電池電槽としては、例えば、ABS樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂が成形性、耐熱性の観点から用いられていたが、これら樹脂類は水蒸気透過性に劣る欠点があり、二次電池の中や、セパレーターに存在する電解液水分が長期間使用中に、二次電池電槽を透過してしまうため電解液濃度の変化が起こり電池性能の低下がおこるという致命的な問題点を残していた。また、これらABS樹脂や変性ポリフェニレンエーテル樹脂は耐薬品性に劣り、自動車オイルなどの薬品に対して耐性に劣るため自動車用途の二次電池電槽においては長期使用できない欠点を有していた。
これら問題点のもとに、結晶性ポリオレフィン樹脂とポリフェニレンエーテル系樹脂を含む樹脂組成物からなる密閉型二次電池電槽が特開平8−195188号公報で提案され、特開平9−120801号公報にはポリフェニレンエーテル樹脂とポリオレフィン樹脂からなるポリマーアロイを用いた密閉型二次電池電槽が提案され、さらに再公表特許WO97/01600号公報には、結晶性ポリオレフィン樹脂とポリフェニレンエーテル樹脂からなり、該ポリフェニレンエーテル樹脂が結晶性ポリプロピレン樹脂中に特定の形態で分散した樹脂組成物が耐熱クリープ性、耐水蒸気透過性に優れるため二次電池電槽として利用できることが提案され、さらに特開2000−58007号公報には、ポリフェニレンエーテル系樹脂と特定の構造の結晶性ポリプロピレンからなる樹脂組成物が密閉型二次電池用電槽として利用できることが提案されている。
また、結晶性ポリプロピレン系樹脂からなる電池電槽用樹脂組成物に関しては特開平6−287364号公報にポリプロピレン系樹脂と特定粒子径を有するタルクからなり成形後の収縮変形量が少ない旨の提案がなされ、特開平8−132468号公報にはポリプロピレン樹脂と微量のタルクからなるポリプロピレン製蓄電池電槽が提案され、特開平11−31483号公報には少なくとも95重量%のポリプロピレンと残量部がプロピレン−エチレン共重合体から成り、結晶化度が55〜65%の組成物で作成した密閉型電気化学式電池電槽の提案がなされ、さらには特開2000−182571号公報にはプロピレンとα−オレフィンブロック共重合体とエチレン・α−オレフィン共重合体を配合した透明性に優れた電池電槽材料が提案されている。
しかしながら、これら上記した樹脂組成物で得られる二次電池電槽は、ポリマーアロイ化の際に加える結晶性ポリプロピレン以外の成分が多く、結晶性ポリプロピレンが有する優れた耐水蒸気透過性を高いレベルで維持するのが困難であった。
本発明の解決課題は、結晶性ポリプロピレン単体が有する高いレベルの耐水蒸気透過性及び耐熱クリープ性を維持させ、成分として高結晶ポリプロピレン系樹脂単体で二次電池電槽を作成した際の欠点である脆さを克服した材料を提供することにある。
本発明らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った。即ち、本発明では、耐水蒸気透過性と耐熱クリープ性の観点から、マトリックスが100重量部のポリプロピレン系樹脂であり10重量部以下の分散相成分を含む樹脂組成物が二次電池電槽として有用であると判断した。さらには、衝撃強度改良の技術的観点より、マトリックスのポリプロピレン系樹脂との界面相を形成する成分が水添ブロック共重合体であり、この界面相内部に分散相成分としてのポリマーを含むモルフォロジーを有する樹脂組成物が有効であることに着眼し、特定の密度およびMFRを有するマトリックス相の結晶性ポリプロピレンに対して、マトリックスのポリプロピレン系樹脂との界面相を形成する水添ブロック共重合体とこの界面相内部に含まれる分散相成分のポリマーを高密度ポリエチレンとすることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明に至った。
すなわち本発明は、
[1] (a)プロピレン重合体部分の密度が0.905g/cm3以上、かつMFRが0.1〜であるポリプロピレン系樹脂100重量部のマトリックス相に対して(b)分散相ポリマーが0.5〜10重量部の密度0.940g/cm3以上である高密度ポリエチレンからなる成分であって、(a)成分と(b)成分との界面を形成する界面相が0.5〜5重量部以下のビニル芳香族化合物を主体とする少なくとも2個の重合体ブロックAと共役ジエン化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックBとからなるブロック共重合体を水素添加してなる水添ブロック共重合体(c)であることを特徴とする二次電池電槽に成形される樹脂組成物。
[2] 分散相ポリマーである(b)成分が1〜7重量部であることを特徴とする[1]記載の二次電池電槽に成形される樹脂組成物。
[3] (a)成分と(b)成分との界面を形成する界面相の水添ブロック共重合体(c)の結合したビニル芳香族化合物量が20〜70重量%であることを特徴とする[1]記載の二次電池電槽に成形される樹脂組成物。
[4] (a)成分と(b)成分との界面を形成する界面相の水添ブロック共重合体(c)の結合したビニル芳香族化合物量が20〜70重量%であることを特徴とする[2]記載の二次電池電槽に成形される樹脂組成物。
[5] (a)成分と(b)成分との界面を形成する界面相の水添ブロック共重合体(c)の水素添加する前の共役ジエン化合物の1,2−ビニル結合量と3,4−ビニル結合量の合計量が2〜90%であることを特徴とする[1]記載の二次電池電槽に成形される樹脂組成物。
[6] (a)成分と(b)成分との界面を形成する界面相の水添ブロック共重合体(c)の水素添加する前の共役ジエン化合物の1,2−ビニル結合量と3,4−ビニル結合量の合計量が2〜90%であることを特徴とする[2]記載の二次電池電槽に成形される樹脂組成物。
[7] (a)成分と(b)成分との界面を形成する界面相の水添ブロック共重合体(c)の水素添加する前の共役ジエン化合物がブタジエンであることを特徴とする[5]記載の二次電池電槽に成形される樹脂組成物。
[8] (a)成分と(b)成分との界面を形成する界面相の水添ブロック共重合体(c)の水素添加する前の共役ジエン化合物がブタジエンであることを特徴とする[6]記載の二次電池電槽に成形される樹脂組成物。
[9] [1]記載の樹脂組成物を用いて電極およびセパレーターを直接収納する容器として成形加工された二次電池電槽。
[10] [2]記載の樹脂組成物を用いて電極およびセパレーターを直接収納する容器として成形加工された二次電池電槽。
[11] 二次電池電槽が密閉型二次電池電槽であることを特徴とする[9]記載の二次電池電槽。
[12] 二次電池電槽が密閉型二次電池電槽であることを特徴とする[10]記載の二次電池電槽に関するものである。
以下、本発明について詳細に説明する。本発明で用いられる(a)ポリプロピレン系樹脂は、本発明の効果である耐熱クリープ性、耐水蒸気透過性を発揮させるため、広義に示されるポリプロピレン樹脂の特徴の中から密度およびMFR(メルトフローレート)を特定の範囲に限定したものの中から選ばれる。
一般にポリプロピレン系樹脂は、結晶性プロピレンホモポリマーおよび、重合の第一工程で得られる結晶性プロピレンホモポリマー部分と重合の第二工程以降でプロピレン、エチレンおよび/もしくは少なくとも1つの他のα−オレフィン(例えば、ブテン−1、ヘキセン−1等)を共重合して得られるプロピレン−エチレンランダム共重合体部分を有する結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体が挙げられる。さらにこれら結晶性プロピレンホモポリマーと結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体の混合物の場合もあり、かかる結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体は通常、エチレン含量が1〜30重量%のものである。
該ポリプロピレン系樹脂の製造方法は、通常、三塩化チタン触媒または塩化マグネシウムなどの担体に担持したハロゲン化チタン触媒等とアルキルアルミニウム化合物の存在下に、重合温度0〜100℃の範囲で、重合圧力3〜100気圧の範囲で重合して得られる。この際、重合体の分子量を調整するために水素等の連鎖移動剤を添加することも可能であり、また重合方法としてバッチ式、連続式いずれの方法でも可能で、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の溶媒下での溶液重合、スラリー重合等の方法も選択でき、さらには無溶媒下モノマー中での塊状重合、ガス状モノマー中での気相重合方法などが適用できる。
また、上記した重合触媒の他に得られるポリプロピレンのアイソタクティシティおよび重合活性を高めるため、第三成分として電子供与性化合物を内部ドナー成分または外部ドナー成分として用いることができる。これらの電子供与性化合物としては公知のものが使用でき、例えば、ε−カプロラクトン、メタクリル酸メチル、安息香酸エチル、トルイル酸メチルなどのエステル化合物、亜リン酸トリフェニル、亜リン酸トリブチルなどの亜リン酸エステル、ヘキサメチルホスホリックトリアミドなどのリン酸誘導体などや、アルコキシエステル化合物、芳香族モノカルボン酸エステルおよび/または芳香族アルキルアルコキシシラン、脂肪族炭化水素アルコキシシラン、各種エーテル化合物、各種アルコール類および/または各種フェノール類などが挙げられる。
本発明で供するポリプロピレン系樹脂におけるプロピレン重合体部分の密度は、耐熱クリープ性、耐水蒸気透過性の改良の観点より0.905g/cm3以上であり、より好ましくは、0.905〜0.925g/cm3であり、最も好ましくは、0.905〜0.915g/cm3である。かかる密度が0.905g/cm3未満では得られる電槽材料の剛性が低く、耐熱クリープが悪く、さらには耐水蒸気透過性の面でも好ましくない。
プロピレン重合体部分の密度の測定方法は、JIS K−7112水中置換法によって、容易に求めることができる。またポリプロピレン系樹脂がプロピレンを主成分としたα−オレフィンとの共重合体である場合は、かかる共重合体をヘキサン等の溶媒を用いて共重合成分を抽出し、残ったプロピレン重合体部分の密度を上記のJIS K−7112水中置換法によって、容易に求めることができる。また、樹脂組成物中のプロピレン重合体部分の密度を知るには、熱キシレンにより組成物全体を溶解し、室温まで冷却し、残渣として残った樹脂組成物をクロロホルム等の水添ブロック共重合体の良溶媒を用いて抽出し、残ったポリプロピレン系樹脂から、上記の分離方法によりプロピレン重合体部分を分離し、 JIS K−7112水中置換法によって求めることができる。
また本発明においては、公知となっている結晶核剤を添加し、かかるポリプロピレン系樹脂の密度を高くする事も有効である。結晶核剤としてはポリプロピレン系樹脂の結晶性を向上させるものなら何でも良いが、代表的なものを挙げると、芳香族カルボン酸の金属塩、ソルビトール系誘導体、有機リン酸塩、芳香族アミド化合物等の有機系核剤や、タルク等の無機系核剤を挙げることができる。しかしながら、これらに限定されるものではない。
さらに本発明で供するポリプロピレン系樹脂は、耐熱クリープ性、耐水蒸気透過性の改良の観点よりそのMFR(JIS K−6758に準拠)が0.1〜12であり、好ましくは0.1 〜10、最も好ましくは0.1 〜5である。かかるMFRが0.1未満では電槽材料とした場合の成形加工性が悪く、かかるMFRが12以上では成形加工性は良くなるものの耐熱クリープ性能および耐衝撃性が悪化し好ましくない。これら特徴である結晶性ポリプロピレン系樹脂の密度、MFRが上記したものであれば、どのような製造方法で得られるものであってもかまわない。
また、かかる結晶性ポリプロピレン系樹脂は、上記した結晶性ポリプロピレン系樹脂のほかに、該結晶性ポリプロピレン系樹脂とα,β−不飽和カルボン酸またはその誘導体とをラジカル発生剤の存在下、非存在下で溶融状態、溶液状態、スラリー状態で80〜300℃の温度下で反応させることによって得られる公知の変性(該α,β−不飽和カルボン酸またはその誘導体が0.01〜10重量%グラフトまたは付加)結晶性ポリプロピレン系樹脂であってもよく、さらに上記した結晶性ポリプロピレン系樹脂と該変性結晶性ポリプロピレン系樹脂の任意の割合の混合物であってもかまわない。
次に本発明で樹脂成分の分散相を形成する(b)高密度ポリエチレンは、(a)成分のマトリックス相を形成する結晶性ポリプロピレン系樹脂中において界面相を形成する後述の水添ブロック共重合体(c)と併用することにより少量で優れた衝撃強度を付与する働きを示し、結果としてマトリックス成分の結晶性ポリプロピレン系樹脂を多量に配合可能となり、二次電池電槽材料として耐水蒸気透過性と耐熱クリープ性を高いレベルで維持することが可能となる重要な効果を奏するものである。
本発明の樹脂成分の分散相を形成する(b)成分の高密度ポリエチレンは、エチレン単独重合体またはエチレンと、α−オレフィンとの共重合体である。かかるα−オレフィンとしては1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどが挙げられる。このエチレン・α−オレフィン共重合体中におけるα−オレフィン含有量は、10モル%以下、好ましくは0.2〜7モル%である。なお、高密度ポリエチレンは、密度(ASTM D 1505)が0.940g/cm3以上であり、メルトフローレート(MFR:ASTM D 1238、190℃、荷重21.2N)が通常0.01〜50g/10分、好ましくは0.1〜30g/10分、さらに好ましくは0.1〜20g/10分である。このような高密度ポリエチレンは、たとえばチーグラー・ナッタ触媒による低圧法、メタロセン系触媒による低圧法、フィリップス法等の中圧法により製造することができる。
(b)成分として用いる高密度ポリエチレンの好ましい配合量は、0.5〜10重量部であり、好ましくは1〜10重量部、より好ましくは1〜7重量部である。0.5重量部未満では耐衝撃性の改良が顕著でなく、また10重量部を超える場合は耐衝撃性の改良が望めるものの、二次電池電槽材料としての耐水蒸気透過性、耐熱クリープ性が悪化し好ましくない。
次に本発明の分散相の(b)成分である高密度ポリエチレンとマトリックス相の(a)結晶性ポリプロピレン系樹脂との界面相を形成する水添ブロック共重合体(c)は、ビニル芳香族化合物を主体とする少なくとも2個の重合体ブロックAと共役ジエン化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックBとからなるブロック共重合体を水素添加してなる水添ブロック共重合体は、例えば、A−B−A、A−B−A−B、(A−B−)4−Si、A−B−A−B−A等の構造を有するブロック共重合体を水素添加してなる水添ブロック共重合体である。ここで、Aはビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックAを意味し、Bは共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBを意味し、重合体ブロックAにおけるビニル芳香族化合物の含有量は少なくとも70重量%であり、重合体ブロックBにおける共役ジエン化合物の含有量は少なくとも70重量%である。なお、かかる水添ブロック共重合体(c)とは上記構造を有するブロック共重合体中の共役ジエン化合物に由来するオレフィン性不飽和結合を50%以下、好ましくは30%以下、より好ましくは10%以下まで水素添加反応により低減化したブロック共重合体である。
また、これらのビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックA、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBは、それぞれの重合体ブロックにおける分子鎖中の共役ジエン化合物またはビニル芳香族化合物の分布がランダム、テーパード(分子鎖に沿ってモノマー成分が増加または減少するもの)、一部ブロック状またはこれらの任意の組み合わせでもよく、該ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックは2個以上、該共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックは1個以上であり、各重合体ブロックはそれぞれ同一構造であってもよく、異なる構造であってもよい。
この重合体ブロックAを構成するビニル芳香族化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−tert−ブチルスチレン、ジフェニルエチレン等のうちから1種または2種以上が選択でき、特にスチレンが好ましい。そして、水添ブロック共重合体(c)のビニル芳香族化合物の含有量は20〜70重量%であり、好ましくは25〜60重量%、より好ましくは30〜50重量%である。
かかるビニル芳香族化合物の量が20重量%以下では二次電池電槽の剛性低下および耐熱クリープ性が悪化し好ましくなく、また70重量%を超える場合は剛性および耐熱クリープ性が向上するものの二次電池電槽としての脆さを克服する上で好ましくない。一方、この重合体ブロックBを構成する共役ジエン化合物としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン等のうちから1種または2種以上が選ばれ、特にブタジエン、イソプレンおよびこれらの組み合わせが好ましい。
また、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBは、そのブロックにおけるミクロ構造を任意に選ぶことができ、例えば、ブタジエンを主体とする重合体ブロックにおいては、1,2−ビニル結合が2〜90%、好ましくは10〜85%、さらに好ましくは35〜85%である。また、イソプレンを主体とする重合体ブロックにおいては、1,2−ビニル結合と3,4−ビニル結合の合計量が2〜90%、さらに好ましくは3〜70%である。
これらの水添ブロック共重合体(c)の分子量は、通常、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用いてポリスチレン換算で測定した数平均分子量が20000〜1000000、好ましくは30000〜300000、より好ましくは30000〜200000である。なお、本発明で供する水添ブロック共重合体(c)は、上記した特徴を有するものであればどのような製造方法で得られるものであってもかまわない。
また、本発明で用いる水添ブロック共重合体(c)は、上記した水添ブロック共重合体のほかに、該水添ブロック共重合体とα,β−不飽和カルボン酸またはその誘導体とをラジカル発生剤の存在下、非存在下で溶融状態、溶液状態、スラリー状態で80〜350℃の温度下で反応させることによって得られる公知の変性(該α,β−不飽和カルボン酸またはその誘導体が0.01〜10重量%グラフトまたは付加)水添ブロック共重合体であってもよく、さらに上記した水添ブロック共重合体と該変性水添ブロック共重合体の任意の割合の混合物であってもかまわない。
上記した(a)成分のポリプロピレン系樹脂と(b−2)成分の高密度ポリエチレンとの界面相として用いる水添ブロック共重合体(c)の好ましい配合量は、好ましくは0.5〜5重量部、より好ましくは1〜5重量部である。0.25重量部未満では耐衝撃性の改良が顕著でなく、また5重量部を超える場合は耐衝撃性の改良が望めるものの、二次電池電槽材料としての耐水蒸気透過性、耐熱クリープ性が悪化し好ましくない。
なお、得られた樹脂組成物の界面相に存在する水添ブロック共重合体の存在、および分散相ポリマーの存在を確認する方法は、透過型電子顕微鏡を用いて容易に確認し測定できる。例えば、四塩化ルテニウム等の重金属化合物を用いてサンプルを酸化染色し、ウルトラミクロトーム等で超薄切片を切り出し、その切片を透過型電子顕微鏡で観察して撮影し、写真(例えば、10000倍またはそれ以上の倍率)として現像し確認することができる。特に本発明で得られる樹脂組成物のマトリックスのポリプロピレン系樹脂の界面相である水添ブロック共重合体はその水添された共役ジエン化合物に起因して、電子顕微鏡によって得た写真では黒く染色された状態で確認される。
本発明では、上記成分の他に、本発明の特徴および効果を損なわない範囲で必要に応じて他の付加的成分、例えば、酸化防止剤、金属不活性化剤、難燃剤(有機リン酸エステル系化合物、無機リン系化合物、芳香族ハロゲン系難燃剤、シリコーン系難燃剤など)、フッ素系ポリマー、可塑剤(オイル、低分子量ポリエチレン、エポキシ化大豆油、ポリエチレングリコール、脂肪酸エステル類等)、三酸化アンチモン等の難燃助剤、耐候(光)性改良剤、スリップ剤、無機または有機の充填材や強化材(ガラス繊維、ガラスフレーク、カーボン繊維、ポリアクリロニトリル繊維、ウィスカー、マイカ、タルク、カーボンブラック、酸化チタン、炭酸カルシウム、チタン酸カリウム、ワラストナイト、導電性金属繊維、導電性カーボンブラック等)、各種着色剤、離型剤等を添加してもかまわない。
本発明の樹脂組成物の製造方法は、上記した各成分を用いて、単軸押出機、二軸押出機、ロール、ニーダー、ブラベンダープラストグラフ、バンバリーミキサー等による加熱溶融混練方法が挙げられるが、二軸押出機を用いた溶融混練方法が最も好ましい。この際の溶融混練温度は特に限定されるものではないが、通常180〜300℃の中から任意に選ぶことができる。本発明の二次電池電槽(密閉型二次電池電槽も含む)に成形される樹脂組成物は、特に鉛蓄電池、ニッケル水素電池電槽、リチウムイオン電池電槽に好適に使用できる。成形方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、射出成形、中空成形、押出成形、シート成形、フィルム成形、熱成形、回転成形、積層成形等の成形方法が使用でき、最終的にはシート品、フィルム品、射出成型品として直接電極及び電解質を包んだ構造をとる二次電池電槽として利用できる。
また電槽が2つ以上の部品(本体容器と蓋、2個以上の電槽を連結する等)からなる場合は、これら部品を接着、熱溶着、振動溶着などにより接合する。接着剤としては、例えば、エポキシ樹脂接着剤等が挙げられ、エポキシ樹脂接着剤としては、エポキシ構造を主骨格とする樹脂からなる接着剤であり、主剤と硬化剤からなる二液型が好ましい。
以下、実施例によって、本発明の実施の形態を具体的に説明する。なお、使用した原料は下記の通りである。
(a)成分のポリプロピレン系樹脂
(a−1)密度=0.910g/cm3、メルトフローレート(230℃,21.2N荷重:以下MFRと略)=0.4g/10分、分子量分布(Mw/Mn)=9.6のポリプロピレン樹脂
(a−2)密度=0.906g/cm3、MFR=2.5g/10分、分子量分布(Mw/Mn)=5.9のポリプロピレン樹脂
(a−3)密度=0.910g/cm3、MFR=9.0/10分、分子量分布(Mw/Mn)=10.3のポリプロピレン樹脂
(a−4)密度=0.902g/cm3、MFR=0.5g/10分、分子量分布(Mw/Mn)=6.2のポリプロピレン樹脂
(a−5)密度=0.908g/cm3、MFR=16.3g/10分、分子量分布(Mw/Mn)=6.1のポリプロピレン樹脂
(b)成分のポリエチレン
(b−1)密度=0.957g/cm3、メルトフローレート(190℃,21.2N荷重:以下MFRと略)=0.16g/10分の高密度ポリエチレン
(b−2)密度=0.969g/cm3、MFR=5g/10分の高密度ポリエチレン
(b−3)密度=0.917g/cm3、MFR=0.3g/10分の低密度ポリエチレン
(c)成分の水添ブロック共重合体
(c−1)ポリスチレン−水素添加されたポリブタジエン−ポリスチレンの構造を持ち、結合スチレン量が30%、ポリブタジエン部分のビニル結合量が45%、ポリブタジエン部の水素添加率が99.6 %、数平均分子量が51000の水添ブロック共重合体。
(c−2)ポリスチレン−水素添加されたポリブタジエン−ポリスチレンの構造を持ち、結合スチレン量が40%、ポリブタジエン部分のビニル結合量が38%、ポリブタジエン部の水素添加率が99.1%、数平均分子量が115000の水添ブロック共重合体。なお、物性の評価は次の通りに行った。
(1)耐水蒸気透過性
JIS K7129に準じ、厚さ1mmシートにて40℃の水蒸気透過度試験を実施し、水蒸気透過度〔g/(m2・24Hr)〕を測定した。
(2)Izod衝撃強度
ASTM D256に準じ、厚み3.2mmノッチ付き試験片を23℃にて衝撃強度〔J/m〕測定した。
(3)高温クリープ強さ
クリープ試験機(安田精機製作所(株)製、145−B−PC型)を用いて、幅4mm×厚み1mm×長さ70mmのダンベル片を用いて、チャック間40mm間に応力12.25MPa相当の荷重で、温度80℃の条件で、歪み伸度が20mmに到達する時間を測定した。
(4)ポリプロピレン系樹脂と分散相界面にある界面相の確認
四塩化ルテニウム等の重金属化合物を用いてサンプルを酸化染色し、ウルトラミクロトーム等で超薄切片を切り出し、その切片を透過型電子顕微鏡で観察して撮影し10000倍の写真にてマトリックスのポリプロピレン系樹脂と分散相との界面に存在する界面相に水添ブロック共重合体が存在するか否か確認した。
(実施例1〜10および比較例1〜7)(a)ポリプロピレン系樹脂、(b)ポリエチレンおよび(c)水添ブロック共重合体を表1に示した組成で配合し、210〜250℃に設定したベントポート付き二軸押出機(ZSK−40;WERNER&PFLEIDERER社製、ドイツ国)を用いて溶融混練しペレットとして得た。このペレットを用いて240〜250℃に設定したスクリューインライン型射出成形機に供給し、金型温度60℃の条件でIzod試験用テストピース、クリープ試験用テストピースを射出成形した。これらのテストピースの性能を測定し、その結果を併せて表1に記載した。なお、耐水蒸気透過性用のシートは250℃の加熱プレスにて成形した。
Figure 0004931224

Claims (12)

  1. (a)プロピレン重合体部分の密度が0.905g/cm3以上、かつMFRが0.1〜5であるポリプロピレン系樹脂100重量部のマトリックス相に対して(b)分散相ポリマーが0.5〜10重量部の密度0.940g/cm3以上である高密度ポリエチレンからなる成分であって、(a)成分と(b)成分との界面を形成する界面相が0.5〜5重量部以下のビニル芳香族化合物を主体とする少なくとも2個の重合体ブロックAと共役ジエン化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックBとからなるブロック共重合体を水素添加してなる水添ブロック共重合体(c)であることを特徴とする二次電池電槽に成形される樹脂組成物。
  2. 分散相ポリマーである(b)成分が1〜7重量部であることを特徴とする請求項1記載の二次電池電槽に成形される樹脂組成物。
  3. (a)成分と(b)成分との界面を形成する界面相の水添ブロック共重合体(c)の結合したビニル芳香族化合物量が20〜70重量%であることを特徴とする請求項1記載の二次電池電槽に成形される樹脂組成物。
  4. (a)成分と(b)成分との界面を形成する界面相の水添ブロック共重合体(c)の結合したビニル芳香族化合物量が20〜70重量%であることを特徴とする請求項2記載の二次電池電槽に成形される樹脂組成物。
  5. (a)成分と(b)成分との界面を形成する界面相の水添ブロック共重合体(c)の水素添加する前の共役ジエン化合物の1,2−ビニル結合量と3,4−ビニル結合量の合計量が2〜90%であることを特徴とする請求項1記載の二次電池電槽に成形される樹脂組成物。
  6. (a)成分と(b)成分との界面を形成する界面相の水添ブロック共重合体(c)の水素添加する前の共役ジエン化合物の1,2−ビニル結合量と3,4−ビニル結合量の合計量が2〜90%であることを特徴とする請求項2記載の二次電池電槽に成形される樹脂組成物。
  7. (a)成分と(b)成分との界面を形成する界面相の水添ブロック共重合体(c)の水素添加する前の共役ジエン化合物がブタジエンであることを特徴とする請求項5記載の二次電池電槽に成形される樹脂組成物。
  8. (a)成分と(b)成分との界面を形成する界面相の水添ブロック共重合体(c)の水素添加する前の共役ジエン化合物がブタジエンであることを特徴とする請求項6記載の二次電池電槽に成形される樹脂組成物。
  9. 請求項1記載の樹脂組成物を用いて電極およびセパレーターを直接収納する容器として成形加工された二次電池電槽。
  10. 請求項2記載の樹脂組成物を用いて電極およびセパレーターを直接収納する容器として成形加工された二次電池電槽。
  11. 二次電池電槽が密閉型二次電池電槽であることを特徴とする請求項9記載の二次電池電槽。
  12. 二次電池電槽が密閉型二次電池電槽であることを特徴とする請求項10記載の二次電池電槽。
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