以下、本発明の一実施形態に係る複写機1について、図面を参照して説明する。
図1は、複写機1の全体を示した図である。
複写機1は、特許請求の範囲記載の「画像形成装置」の一例である。
複写機1は、ユーザ操作を受け付ける操作パネル15と、画像形成を行なう記録紙Pを積載する給紙装置11と、給紙装置11から記録紙Pが搬入され、搬入される記録紙を搬送する記録紙搬送経路12と、この記録紙搬送経路12の途中に設けられ、搬送される記録紙Pにトナー像を形成する、感光体ドラム等を備える画像形成部13と、同じく記録紙搬送経路12の、画像形成部13よりも下流側に設けられて、トナー像が形成された記録紙Pに熱を与えて、トナー像を記録紙Pへ定着させる定着装置100と、トナー像の定着がこの定着装置100でされた記録紙Pが搬送経路12から排出される排出部14と、これら複写機1の各部の動作を制御する制御部200とを備える。
定着装置100は、特許請求の範囲記載の「定着装置」の一例である。
図2は、定着装置100に関係する構成を中心に示した複写機1のブロック図である。
複写機1は、前述した、定着装置100の動作制御をする制御部200と、商用電源の電力を蓄電し、予め蓄電された電力により商用電源の定格電力に拘わらずに商用電源と共に定着装置100への電力供給をする補助電源装置300とを備える。
ここに、補助電源装置300は、特許請求の範囲の記載における「蓄電装置」の一例である。また、補助電源装置300および定着装置100へ電力を供給する上述の商用電源は、特許請求の範囲記載の「商用電源」の一例を構成する。
補助電源装置300は、大容量キャパシタを直列に接続して構成した蓄電装置や、商用電源から電力を取得し、蓄電装置を充電する充電装置、蓄電装置の電力を定着装置100へ放電させて、定着装置100へ直流電力を供給する放電装置などによって構成される。
定着装置100は、商用電源から取得する電力により発熱する主発熱体110aと、補助電源装置300から取得する電力により発熱する補助発熱体110bと、これらの発熱体110a,110bにより加熱され、搬送経路12により定着装置100へと通紙される記録紙P(図1参照)に定着処理を施す定着ローラ101(図1参照)と、定着ローラ101の温度を検出する温度センサ101tと、定着装置100への記録紙Pの通紙に合わせて定着ローラ101を駆動させる駆動部101dとを備える。
ここに、主発熱体110aおよび補助発熱体110bは、それぞれ、特許請求の範囲に記載した「第一発熱体」および「第二発熱体」の一例である。また、定着ローラ101は、特許請求の範囲に記載した「定着ローラ」の一例である。また、温度センサ101tは、特許請求の範囲に記載した「温度検出手段」の一例である。
ここに、発熱体110a,110bは、たとえば定着ローラ101の内部に設けたハロゲンヒータとして構成される。そして、補助発熱体110bは、通常時には発熱されないが、複写機1が省電力モードから通常の運転モードへ復帰される場合や、複写機1に電源が投入された場合などに、室温等の低い温度になった定着ローラ101へ短い時間に大量の熱を与え、急速に定着装置100の立ち上げをするときに、補助電源装置300により主発熱体110aと共に発熱される。
駆動部101dの少なくとも一部は、前述した搬送経路12の、たとえば記録紙搬送用モータなどの構成物を含んでいてもよい。
温度センサ101tは、たとえば、サーミスタ、赤外線センサ、熱電対などにより構成される。
制御部200は、情報処理回路であり、ここでは、CPU、ROM、RAMによって構成されたコンピュータであるものとする。ここに、CPU、ROM、RAMには、たとえば、パーソナルコンピュータに用いる汎用品を用いる。
制御部200は、ROMに格納したソフトウェアを実行することにより、立ち上げ制御部210と、印字処理制御部220と、エージング動作制御部230と、印字中発熱制御部240との機能ブロックの機能を実現する。また、印字中発熱制御部240の機能には、印字中発熱制御部240の内部に図示した、エージング時間計時部241と、発熱必要時間記憶部242と、発熱実行済み時間計時タイマ243と、補正部242cとの各機能ブロックの機能が含まれ、これらの機能を用いて印字中発熱制御部240の機能は構成される。
図2において、各機能ブロックに接続された破線は、各機能ブロックに入出力される情報ないしデータの流れを示すものである。各機能ブロックから外側へ向かう矢印は、当該機能ブロックの機能により生成された情報ないしデータが、制御部200の他の機能ブロックの機能や、あるいは制御部200以外の複写機1の構成のいずれかへと出力されて、それらによって用いられることを示している。また、各機能ブロックへと外側から入る矢印は、当該機能ブロックの他の機能ブロックの機能等により生成等された情報ないしデータ等が、当該機能ブロックの機能により処理されることを示している。
立ち上げ制御部210は、主発熱体110aおよび補助発熱体110bの両者を発熱させて、定着装置100を立ち上げさせ、定着装置100における立ち上げ処理を制御する。前述の通り、立ち上げ制御部210が定着装置100を立ち上げさせるのは、複写機1の電源投入時等である。立ち上げ制御部210は、商用電源と、定着装置100の主発熱体110aとの間に設けられたスイッチSwAをオン状態にさせることで主発熱体110aを発熱させることができ、また、補助電源装置300と補助発熱体110bとの間にあるスイッチSwBをオン状態にさせることで補助発熱体110bを発熱させることができる。
なお、この立ち上げ制御部210からスイッチSwA,SwBへの制御信号の流れを示す線をはじめ、図2では、各構成の間の情報、データないし信号の流れを示す線(上述の破線)を、説明の便宜上から適宜、図示を省略するものとしている。
この立ち上げ制御部210以外の制御部200の他の機能ブロックも、発熱体110a,110bの発熱制御を行なうときには、上述の場合と同様、スイッチSwA,SwBを制御することにより制御を行なうことができる。
立ち上げ制御部210は、こうして主発熱体110aおよび補助発熱体110bを発熱させて定着ローラ101を加熱することにより、定着ローラ101の温度を、定着装置100に通紙される記録紙Pの定着処理を実行できる温度(以下、定着可能温度)まで上昇させる。
図3は、複写機1の動作タイミングを示すタイミングチャートである。以下では、このタイミングチャートを参照して、立ち上げ制御部210等、制御部200の各機能ブロックの機能が用いられるタイミングを示しながら、各機能ブロックの機能を説明する。
図3に示す複写機1において、タイミングT1〜T2は、立ち上げ制御部210が定着装置100の立ち上げ処理を行なう期間を示している。タイミングT1までは複写機1は停止しているが(図3(a))、タイミングT1で操作パネル15に入力された指示に基づいて、立ち上げ制御部210は、タイミングT1〜T2で、定着装置100を立ち上げさせる。このため、立ち上げ制御部210は、このタイミングT1〜T2において、図3(b)に示すように、商用電源から定着装置100への電力供給をさせて主発熱体110aを発熱させ、また、図3(c)に示すように、補助電源装置300から定着装置100へも電力供給をさせて、補助発熱体110bも共に発熱させる。
エージング動作制御部230は、特許請求の範囲記載の「エージング動作制御手段」の一例を構成する。
エージング動作制御部230は、立ち上げ制御部210による定着装置100の上述した立ち上げが完了して定着ローラ101が定着可能温度に昇温された後に(タイミングT2)、定着装置100にエージング動作をさせる。
エージング動作制御部230は、このエージング動作において、定着装置100に、主発熱体110aの発熱をさせる。このため、エージング動作制御部230は、定着装置100にエージング動作をさせるに際して、スイッチSwAをオン状態にさせ、図3(b)のタイミングT2〜T3に示したように、商用電源から定着装置100に電力供給をさせる。
また、エージング動作制御部230は、このエージング動作において、主発熱体110aの発熱と同時に、駆動部101dにより定着ローラ101を駆動させる。
なお、図3(b)では、エージング動作制御部230がタイミングT2〜T3に商用電源から定着装置100へ供給させる電力の方が、タイミングT1〜T2で立ち上げ制御部210が商用電源から定着装置100へ供給させる電力より小さいことを示しているが、制御部200の各機能ブロックは、それぞれ、たとえばパルス幅変調方式で、商用電力から定着装置100、および補助電源装置300から定着装置100への供給電力の大きさをそれぞれ制御することができるものとする。
ここで、立ち上げ制御部210が定着装置100の立ち上げをして、定着ローラ101を定着可能温度にさせた後(タイミングT2)、必ずしも、定着ローラ101は全体が一様な温度になっていず、個別の各箇所をみると定着可能温度になっていない箇所があり、つまり温度ムラがある。
かかる温度ムラは、エージング動作制御部230により、主発熱体110aが発熱されると共に駆動部101dにより定着ローラ101が駆動されて定着装置100でエージング動作が実行されているうちに減少する(タイミングT2〜T3)。
定着ローラ101が適切に定着処理をできるまで温度ムラが減少するまでのエージング動作の時間を、エージング所要時間と呼ぶこととする。
以下では、かかるエージング所要時間は、30秒であるものとして説明を行なう。
印字処理制御部220(図1)は、操作パネル15でのユーザ操作に応じて複写機1に記録紙への印字処理を実行させる。印字処理とは、具体的には、給紙装置11の記録紙Pを搬送経路12に搬入させ、画像形成部13に記録紙Pへトナー像を形成させる処理を、定着装置100にトナー像を記録紙Pへ定着させる処理をそれぞれ実行させて、画像が印字された記録紙Pを搬送経路12に排出部14へ排出させる処理である。
エージング動作制御部230は、定着装置100が立ち上げられた後(タイミングT2以降)、上述したエージング所要時間(30秒)まで完了するまでに、印字処理制御部220がかかる印字処理を開始させると、実行中のエージング動作を中断させ、途中で中止する。
エージング動作制御部230は、立ち上げ制御部210から定着装置100の立ち上げを完了したことを示す立ち上げ完了信号を取得し、また、印字処理制御部220から印字処理を開始させたことを示す印字処理開始信号を取得し、立ち上げ完了信号を取得すると定着装置100のエージング動作を開始させると共に、その後に、印字処理開始信号を取得したときに、エージング動作を停止させる。
印字処理制御部220は、エージング動作制御部230が、定着装置100にエージング動作をさせている途中でも、印字処理を開始させることができる。
図3においては、図3(b)および(c)において、エージング動作の開始からT秒後(T≦30)のタイミングT3で、印字処理制御部220が印字処理を開始させたときの様子を示している。
エージング動作制御部230により定着装置100でエージング動作が開始されてから(タイミングT2)、エージング所要時間(30秒)が経過し、または、印字処理制御部220により印字処理が開始されて、エージング動作がエージング動作制御部230により停止されるまでのこの時間、T秒を、以下、実行エージング時間と呼ぶこととする。
エージング所要時間(30秒)は、特許請求の範囲に記載した「前記エージング動作の完了に必要な予め定められている時間」の一例である。
印字中発熱制御部240は、特許請求の範囲に記載した「発熱制御手段」の一例である
エージング動作制御部230が、エージング動作を中断させた場合、つまり、実行エージング時間T秒が、T<30であるときには、エージング動作が中断した図3(b)のタイミングT3では、定着ローラ101の温度ムラが完全には解消していない。つまり、先述のエージング所要時間(30秒)までエージングが続けば、温度ムラは完全に解消するものの、エージングが中断すると、実行エージング時間(T秒)の分しか温度ムラを解消できていず、実行不能だったエージング動作の時間30−T秒分は、温度ムラが残っており、換言すれば、エージング所要時間(30秒)までエージングすれば完全に解消される温度ムラ全体のうちで、実行不能エージング時間30―T秒分が残っているのだから、割合として、温度ムラ全体を1とすれば、残り温度ムラは、(30−T)/30だけ残っていることとなる。
エージング時間計時部241は、実行エージング時間(図3のタイミングT2〜T3)を計時する。
エージング時間計時部241は、特許請求の範囲に記載した「計時手段」の一例である。エージング時間計時部241により計時される実行エージング時間は、特許請求の範囲に記載した「前記エージング動作の時間」の一例である。
エージング時間計時部241は、立ち上げ制御部210から立ち上げ完了信号を取得し、また、印字処理制御部220から、印字処理開始信号を取得し、立ち上げ制御部210が定着装置100の立ち上げを完了した後に、はじめて印字処理制御部220が印字処理を複写機1に開始させたときに、その際の立ち上げ完了信号を取得してから、印字処理開始信号を取得するまでの時間を特定して、実行エージング時間を計時する。
なお、エージング時間計時部241は、エージング動作制御部230からエージングの開始および終了を示す信号を取得して、実行エージング時間を計時するものとしてもよい。
印字中発熱制御部240は、立ち上げ制御部210により定着装置100が立ち上げられた後に、印字処理制御部220が印字処理を実行開始させるときに、開始の後の初期期間に補助発熱体110bを発熱させる(図3(c)のタイミングT3〜T4)。
印字中発熱制御部240は、エージング動作制御部230がエージング動作を中断させて(T<30)、定着ローラ101に温度ムラが残っていても、印字処理の開始の後の初期期間に補助発熱体110bを発熱させて、定着ローラ101により定着装置100が定着処理を適切に実行できるようにする。
印字中発熱制御部240は、エージング動作がされたにもかかわらず、エージング所要時間(30秒)までエージング動作がされず、印字開始時(タイミングT3)に定着装置100に残ることとなった温度ムラの量に見合った適切な時間だけ、補助発熱体110bを発熱させ、これにより、補助電源装置300の電力を過不足なく用いる。
図3(a)では、立ち上げ制御部210により定着装置100が立ち上げられるのと同時に(タイミングT2)、印字処理制御部220が印字処理を実行開始させると、印字中発熱制御部240が、30秒間、印字の初期に補助発熱体110bを発熱させることを示している。
このときのように、立ち上げ制御部210により定着装置100の立ち上げが完了するのと同時に(タイミングT2)、印字処理制御部220が印字処理を実行開始させて、即座にエージング動作が中断されて、実行エージング時間が0の場合には(T=0秒)、温度ムラが最大の状態で印字処理を開始することとなる(タイミングT2以降)。つまり、温度ムラがすべて残った状態で、印字処理が開始される。
かかる場合に、印字処理が開始されてから(タイミングT2)、補助発熱体110bを発熱させて印字処理をするうちに(タイミングT2以降)、発熱を停止させても、すでに定着ローラ101の温度ムラが解消して、補助発熱体110bが発熱せずとも、以後は定着ローラ101が適切に定着処理をできるようになるまでの時間(タイミングT4までの時間)を、以下、最大発熱必要時間(タイミングT2〜T4)と呼ぶこととする。
かかる最大発熱必要時間は、特許請求の範囲の請求項2にいう、「前記エージング動作が全く行なわれなかった場合における」、第二発熱体の発熱を行なう「予め定められた時間」の一例である。
印字処理制御部220は、実行エージング時間がかかる0秒から、増えるにしたがって、補助発熱体110bを発熱させる時間を、上述の最大発熱必要時間から短くしてゆく。
印字処理制御部220は、最大発熱必要時間のうちで、先述した割合の分、つまり、エージング所要時間(30秒)のうちで、エージングをできなかった時間(実行不能エージング時間:30−T秒)が占める割合の分、つまり、「最大発熱必要時間×{実行不能エージング時間/所要エージング時間}」=「30秒×{(30−T)/30}」=30−T秒だけ補助発熱体110bを発熱させる。
かかる、印字処理制御部220が補助発熱体110bを発熱させる時間(30−T秒)のことを、以下、発熱必要時間と呼ぶ。
なお、実行不能エージング時間(30−T秒)は、特許請求の範囲に記載した「前記計時手段により計時されたエージング動作時間(実行エージング時間)を、前記エージング動作の完了に必要な予め定められている時間(最大発熱必要時間)から差し引いた差引時間」の一例にあたる。そして、実行不能エージング時間と結果的に同じ時間となる、発熱必要時間(30−T秒)は、「前記エージング動作が全く行なわれなかった場合における」、第二発熱体の発熱を行なう「予め定められた時間」(最大発熱必要時間)のうちにおける、「前記第二発熱体を発熱させる」差引時間(実行不能エージング時間)に対応する時間分」の一例である。
こうすれば、エージングにより温度ムラを解消できずに、印字処理が開始される時点で(タイミングT3)、残っている温度ムラの割合{(30−T)/30}の分だけ、最大発熱必要時間のうちで、印字処理制御部220は、補助発熱体110bを発熱させ、残っている温度ムラが補助発熱体110bを発熱させるうちになくなるまで(タイミングT3〜T4)、補助発熱体110bを発熱させ、なくなった後には(タイミングT4以後)、発熱を停止させることができ、補助電源装置300の電力を過不足無く用いることができる。
発熱必要時間記憶部242は、発熱必要時間を記憶する。
印字中発熱制御部240は、エージング時間計時部241により実行エージング時間(T秒)が計時されると(図3のタイミングT3参照)、計時により得られた実行エージング時間(T秒)に基づいて、発熱必要時間(30−T秒)を計算して、計算により得られた発熱必要時間を発熱必要時間記憶部242に記憶させる(図3のタイミングT3)。
ここで、かかる発熱必要時間は、実行エージング時間が増加するほど、その増加分だけ、短くなるものとなっている。一般に、かかる発熱必要時間であれば、エージングにより温度ムラが解消した分だけ、補助発熱体110bの発熱時間を短くできることにより、補助電源装置300の電力の無駄使いを抑制できる。
図3(c)では、タイミングT3〜タイミングT4の間(30−T秒間:発熱必要時間の間)、印字中発熱制御部240が補助電源装置300から定着装置100へ電力供給をさせ、補助発熱体110bを発熱させることを示している。
発熱実行済み時間計時タイマ243は、印字中発熱制御部240が印字処理制御部220から印字処理開始信号を取得してから(タイミングT3)、補助発熱体110bを発熱させている間に(タイミングT3以降)、印字処理開始信号を取得してからの時間を計時し、つまり、印字中発熱制御部240が補助発熱体110bを発熱させている時間を計時する。
以下、かかる、発熱実行済み時間計時タイマ243により計時される、印字中発熱制御部240による補助発熱体110bの発熱が実行済みの時間のことを、発熱実行済み時間と呼ぶ。
印字中発熱制御部240は、この発熱実行済み時間が、上述した、発熱必要時間記憶部242に記憶された発熱必要時間に達すると、補助発熱体110bの発熱を停止させ、補助電源装置300から定着装置100への電力供給を停止させる(図3(c)のタイミングT4)。
図3(b)のタイミングT4以降の部分に示されるように、印字処理制御部220は、こうして印字中発熱制御部240が補助発熱体110bの発熱を停止させた後にも、印字処理が終わらずに、印字処理を続けていることがある。
印字中発熱制御部240は、このように、印字処理が続いていても、印字処理の途中で補助発熱体110bの発熱を停止させ、的確に、補助電源装置300の電力を過不足無く利用できるようにする。
一方、印字中発熱制御部240は、主発熱体110aの方は、印字処理開始信号を印字中発熱制御部240から取得してから(図3(b)のタイミングT3)、印字処理完了信号を印字中発熱制御部240から取得するまで(図3(b)のタイミングT5まで)、継続して発熱させ続ける(図3(b)のタイミングT3〜T4のハッチングを参照)。
印字中発熱制御部240は、こうして印字処理の間、主発熱体110aを発熱させ、この主発熱体110aの発熱電力を変化させることにより、定着ローラ101の温度制御をする。印字中発熱制御部240は、温度センサ101tによる検出温度を取得して、取得された検出温度に基づいてこの温度制御を行なう。印字中発熱制御部240は、このように、主発熱体110aの発熱電力は変化させる一方で、主発熱体110aの発熱(タイミングT3〜T5)とともに、補助発熱体110bを発熱させる間(タイミングT3〜T4)、補助発熱体110bを発熱させる発熱電力を固定電力、つまり、一定値の電力とする。
印字中発熱制御部240は、補助発熱体110bを、このように、固定電力で、上述した発熱必要時間(30−T秒)の間、発熱させる。
発熱必要時間(30−T秒)は、「エージング動作の時間(実行エージング時間)に対応させて予め定められた」発熱時間となっている。かかる発熱必要時間(30−T秒)の間の、上述の固定電力による電力供給で供給される総電力量が、特許請求の範囲記載の「エージング動作の時間(実行エージング時間)に対応させて予め定められた電力量」の一例となる。
印字中発熱制御部240は、主発熱体110aのオンオフのみにより、定着ローラ101を定着可能温度に維持させる。
こうすることで、印字中発熱制御部240は、たとえば、補助発熱体110bの発熱電力の大きさに関知せずとも良くなり、補助発熱体110bの発熱制御を簡単にすることができる。
図4は、印字処理制御部220により定着装置100の立ち上げ(タイミングT1〜T2)がされた後、印字動作1と(タイミングT3〜T5a)、印字動作2(タイミングT6a〜T8a)との複数回の印刷処理が順次、される場合の複写機1の動作を示すタイミングチャートである。
先の図3の場合には、上述の通り、印字中発熱制御部240が補助発熱体110bの発熱を停止させた後に(図3のタイミングT3以降)、印字処理制御部220が印字処理を続け、印字処理がこのように長い場合について説明した。これに対して、図4においては、タイミングT3から印字処理制御部220が実行させる印刷処理(印字動作1)が、S1秒しかなく、発熱必要時間(30−T)秒(図4、最下部の矢印を参照)よりも短い(S1<30−T)。
印字中発熱制御部240は、かかる場合、印字処理終了信号を印字処理制御部220から取得したときに(タイミングT5a)、主発熱体110aの発熱を停止させるのと同時に、補助発熱体110bも発熱停止させる。
そして、印字処理制御部220が次の印字処理を開始させ(図4のタイミングT6a以降、印字動作2)、印字処理制御部220が再度、印字処理開始信号を印字中発熱制御部240に与えるときに、印字中発熱制御部240は主発熱体110aおよび補助発熱体110bの発熱を再開させる(図4のタイミングT6a以降)。
こうして、連続印字ではない一枚の記録紙への印字など、短い時間の印字処理がされると(印字動作1)、その印刷処理の次の印刷処理(印字動作2)でも、印字中発熱制御部240により補助発熱体110bを発熱させることができる。
発熱必要時間記憶部242は、いちど発熱必要時間を記憶すると、以後、印字処理が繰り返される間(印字動作1、印字動作2、…)、継続して、記憶された発熱必要時間を保持し、次に定着装置100の立ち上げがされエージング動作制御部230がエージング動作を実行して印字中発熱制御部240により記憶内容を更新されるまで(先述のタイミングT3の説明を参照)、記憶された発熱必要時間を保持する。
発熱実行済み時間計時タイマ243は、発熱実行済み時間が、まだ発熱必要時間に到達しないとき(S1<30−T)に印字処理が終了した場合(タイミングT5a)、次に印字処理が開始されるまで(タイミングT6a)、時間の計時を一時停止する。そして、次に印字処理が開始されるときに(タイミングT6a以降)、計時を再開する。これにより、発熱実行済み時間計時タイマ243は、図4の場合のように、印字処理制御部220が複数回、印字処理(印字動作1、印字動作2、…)させる際に、印字中発熱制御部240が補助発熱体110bを発熱させた時間の累積時間(累積発熱実行済み時間)を記憶する。
印字中発熱制御部240は、発熱実行済み時間計時タイマ243が記憶する累積発熱実行済み時間が、発熱必要時間記憶部242に記憶された発熱必要時間を越えるまで、複数回の印字処理にわたり(印字動作1、印字動作2…)、印字処理がされる間は継続して、補助発熱体110bを発熱させる(図4における補助電源の電力供給を示すハッチングを参照)。
図4のタイミングT7aは、印字処理制御部220がさせる印字動作2の印字処理がS2秒続いた後のタイミングである。なお、この印字動作2の印字処理は、図示するように、このタイミングT7aの後の、タイミングT8aで終了する。
このタイミングT7aにおいて、発熱実行済み時間計時タイマ243は、S1+S2秒を累積発熱実行済み時間として記憶している。
かかるタイミングT7aは、累積発熱実行済み時間(S1+S2)秒が、発熱必要時間記憶部242に記憶された発熱必要時間(30−T)秒に達したタイミングを示したものである。
印字中発熱制御部240は、こうして、累積発熱実行済み時間(S1+S2)秒が、発熱必要時間(30−T)秒に達した場合に、補助発熱体110bの発熱を停止させる(タイミングT7a)。
印字中発熱制御部240は、このように、2回目以降の印字処理の途中にも、累積発熱実行済み時間(S1+S2)秒が、発熱必要時間(30−T)秒に達すれば、印字処理の途中であっても、補助発熱体110bの発熱を停止させる。
最後に、補正部242c(図2)の機能について説明する。
補正部242cは、上述した発熱必要時間記憶部242に記憶された発熱必要時間に、所定の追加時間(たとえば10秒)を追加する追加補正を行なう。
補助発熱体110bの発熱が停止されると(図3のタイミングT4、図4のタイミングT7a参照)、その後の印字処理において(図3のタイミングT4以降、図4のタイミングT7a以降)、印字中発熱制御部240による定着ローラ101の前述の温度制御での制御目標温度より、定着ローラ101の温度が低下する、定着ローラ101の温度低下状態が生じることがある。
かかる温度低下状態は、たとえば、何らかの理由により、商用電源が主発熱体110aへ供給する供給電圧の電圧レベルが低下している場合や、複写機1の動作保障温度よりも低い室温等の環境で複写機1が動作されている等により、定着ローラ101の周囲温度が低い場合や、補助電源装置300のキャパシタ装置が劣化して補助電源装置300の出力が低下している場合などに生じる。
補正部242cは、かかる温度低下状態を検知する機能を有する。補正部242cは、たとえば、印字中発熱制御部240による定着ローラ101の前述の温度制御での制御目標温度よりも予め定められた許容低下幅より大きく、定着ローラ101の温度が低下した場合に、かかる温度低下状態を検知するものとする。
補正部242cは、温度低下状態を検知した場合に、発熱必要時間記憶部242に記憶された発熱必要時間に、所定の追加時間(たとえば10秒)を追加する追加補正を行なう。
かかる追加補正が行なわれることで、商用電源の電圧レベル低下等のイレギュラーな場合に、救済措置をとって、複写機1に適切な動作をさせることができる。この点については、図5のステップSb1、Sb2bを参照して、後で詳しく説明する。
図5は、複写機1の動作を示すフローチャートである。
ステップS1では、複写機が省電力モードから通常の運転モードに復帰する等するときに、立ち上げ制御部210が、定着装置100を立ち上げる(図3、図4のタイミングT1〜T2)。
ステップS2では、立ち上げ制御部210によるステップS1での立ち上げ処理が完了した後に(図3、図4のタイミングT2)、エージング動作制御部230が、定着装置100にエージング動作を行なわせる(図3、図4のタイミングT2〜T3)。
前述の通り、ステップS2でエージング動作制御部230が定着装置100にさせるこのエージング動作は、印字処理制御部220が印字処理を開始し、または、エージング所要時間が経過すると、終了する。
エージング時間計時部241は、このステップS2で、エージング動作制御部230がエージング動作を停止したときに、実行エージング時間T秒(図3、図4参照)を特定する。
ステップS3では、印字中発熱制御部240が、エージング時間計時部241により特定された実行エージング時間T秒に基づいて、発熱必要時間30−T秒を計算し、計算により求めて発熱必要時間(30−T秒)を、発熱必要時間記憶部242に記憶させる(図3、図4のタイミングT3)。
ステップS4では、印字中発熱制御部240が、発熱実行済み時間計時タイマをリセットする(図3、図4のタイミングT3)。
以上の準備の後に、ステップS5より後の処理で、複写機1は、印字処理を実行する。
複写機1は、この複写機1がスリープモードにされる等で、印字処理がされなくなり、次に印字処理がされるときには再び定着装置100の立ち上げ(ステップS1)がされるというときまで(ステップS5:YES)、ステップS6以降の処理を繰り返しループ実行して(ステップS5:NO)、印字処理を実行する。
ステップS6では、印字中発熱制御部240が、印字処理制御部220からの印字処理開始信号、印字処理終了信号に基づいて、印字処理が実行中か否かを判定する。
ここで、印字中発熱制御部240は、印字処理制御部220が印字処理を開始して、エージング動作制御部230がエージング動作を停止させて、ステップS2の処理が終了した直後に、このステップS6を実行する際には(実行エージング時間T秒<エージング所要時間30秒のとき)、もちろんのこと印字処理中であることを判定する(ステップS6:YES)。
ステップS7では、印字中発熱制御部240が、発熱実行済み時間計時タイマが計時する発熱実行済み時間が、発熱必要時間記憶部242が記憶する発熱必要時間を越えたか否かを判定する。
ステップSa1では、印字中発熱制御部240が、発熱実行済み時間が発熱必要時間より短いときに(ステップS7:YES)、補助発熱体110bを発熱させる。
ステップSa2では、こうして補助発熱体110bが発熱する状態で、印字処理制御部220が印字処理を実行する(図3のタイミングT3〜T4、図4のタイミングT3〜T5a,T6a〜T7a)。
ステップSa3では、発熱実行済み時間計時タイマ243が、時間経過に応じて、その記憶内容を更新する。
こうして、印字中発熱制御部240は、印字処理制御部220が印字処理を開始して、エージング動作制御部230がエージング動作を中断させてステップS2の処理が終了して、ステップS5:NO、ステップS6:YES、ステップS7:YES、ステップSa1、ステップSa2と処理がすすみ、制御部200の制御により、補助発熱体110bが発熱された状態で印字処理がされる。
以下、複写機1は、ステップS5:NO、ステップS6:YES、ステップS7:YES、ステップSa1〜Sa3の動作を繰り返して、印字中発熱制御部240が補助発熱体110bを発熱させた状態で(ステップSa1)、印字処理制御部220が印字処理(ステップSa2)を行ない(図3のタイミングT3〜T4)、発熱実行済み時間計時タイマ243が計時する発熱実行済み時間を先に進める。
こうして、ステップS5:NO、ステップS6:YES、ステップS7:YES、ステップSa1〜Sa3の処理を繰り返しているうちに、発熱実行済み時間が発熱必要時間を超えると(ステップS7:NO、図3のタイミングT4)、印字中発熱制御部240は、補助発熱体110bを発熱させること(ステップSa1)を行なわないようになる。
そして、こうして補助発熱体110bの発熱が停止された場合(ステップS7:NO)、ステップSb1で、補正部242cが、停止の後に定着ローラ101が温度低下状態にならないか否かを検知する。
ステップSb2aでは、温度低下状態が生じない場合に(ステップSb1:NO)、印字処理制御部220が、印字処理の残りを実行して、この印字処理を完了させる(図3のタイミングT4〜T5、図4のタイミングT7a〜T8a)。
なお、ステップSb1では、印字処理制御部220が印字処理をある程度、進め、印字処理が進むうちに、定着ローラ101が温度低下状態にならないかどうかを、補正部242cが監視し、ある程度の時間、温度低下状態にならなければ、NOを判定して、ステップSb2aの処理を印字処理制御部220に実行させることとしてもよい。
なお、図4に示した場合のように、発熱実行済み時間が発熱必要時間を超える前に(ステップS7:YES)、印字処理が完了することもある(ステップS6:NO、図4のタイミングT5a)。この場合、複写機1は、ユーザが次の印字処理を印字処理制御部220に実行させるまで待機し(タイミングT5a〜T6a、ステップS5:NO、ステップS6:NO)、次に実行させるときに、再び、印字中発熱制御部240が補助発熱体110bを発熱した状態で(ステップS7:YES、ステップSa1)、印字処理制御部220が印字処理を実行する(ステップSa2、図4のタイミングT6a〜T7a)。そして、印字処理を繰り返すうちに、発熱実行済み時間が発熱必要時間を超えると(図4のタイミングT7a、ステップS7:NO)、印字中発熱制御部240が、補助発熱体110bの発熱を停止させる。
最後に、発熱実行済み時間が発熱必要時間を超えて(ステップS7:NO)、印字中発熱制御部240が補助発熱体110bの発熱が停止させたときに(図3のタイミングT4、図4のタイミングT7a)、補正部242cにより定着ローラ101の温度低下状態が検知された場合(ステップSb1:YES)の複写機1の処理(ステップSb2b)について説明する。
ステップSb2bでは、補正部242cが、定着ローラ101の温度低下状態が生じ、これが検知された場合に(ステップSb1:YES)、発熱必要時間記憶部242に記憶された発熱必要時間に、上述した追加時間τ=10(秒)を加える。
これにより、発熱必要時間がおよそ追加時間分(10秒)だけ、発熱実行済み時間よりも大きな値となり、このことを印字中発熱制御部240がステップS7で検知して(YES判定)、印字中発熱制御部240が補助発熱体110bの発熱を再び行なうようになり(ステップSa1)、その状態で、印字処理制御部220が印字処理をさせる(ステップSa2)。これにより、図3のタイミングT4や、図4のタイミングT7aの印字中発熱制御部240が補助発熱体110bの発熱を停止させるタイミングが、その追加時間分だけ、印刷処理の終了タイミングT5やT8aの側へと移動して、遅くなる。
なお、こうして補正部242cが追加時間を発熱必要時間に加え(ステップSb2b)、追加時間が加えられた発熱必要時間を、再び発熱実行済み時間が越えるときに(ステップS7:NO)、再び定着ローラ101で温度低下状態が生じると(ステップSb1:YES)、補正部242cは、再度、追加時間τ=10(秒)を発熱必要時間記憶部242に記憶された発熱必要時間に追加させて(ステップSb2b)、さらに、図3のタイミングT4や、図4のタイミングT7aのタイミングを、追加時間分だけ遅らせ、補助発熱体110bを長く発熱させる。
こうして、補正部242cは、印字中発熱制御部240が補助発熱体110bの発熱を停止させて(ステップS7:NO)、温度低下状態が生じる限り、繰り返し追加時間を発熱必要時間に追加して、補助発熱体110bの発熱停止タイミングを順次、遅らせる。
なお、こうして、補助発熱体110bの発熱停止タイミングを遅らせるうちに、補助電源装置300の残り蓄電電力がなくなった場合、印字処理制御部220が、定着装置100に記録紙Pが通紙される間隔が長くなるように、搬送経路12に給紙装置11から記録紙Pを搬入させて画像形成をする間隔を長くさせるものとしてもよい。こうすれば、単位時間当たりに画像形成をできる記録紙の枚数は低下し、つまり、複写機1の生産性は低下するが、補助電源装置300の電力切れにより定着処理の品質が低下することを抑制できる。
この複写機1では、補正部242cにより、補助電源装置300に残り電力がある間は、発熱必要時間に追加時間を追加して、定着ローラ101の温度の落ち込みを回避させることにより、かる生産性の低下が生じることを抑制できる。
なお、補正部242cは、補助発熱体110bの発熱が停止したときに、単にこのように追加時間の追加を行なうだけであるので、常に温度低下状態の発生を監視してリアルタイム処理により発熱体110a,110bの温度制御を行なう等の複雑な処理をする必要はなく、簡単な制御により、生産性の低下や、定着品質の劣化抑制をできる。
以下、他の実施形態について説明する。
(A)補正部242cは、補助電源装置300の蓄電量を検知して、検知された蓄電予め量が予め定められた許容電力量より少ない場合には、追加時間τを発熱必要時間記憶部242に追加させないものとしてもよい。また、補正部242cは、ステップSb2bにおいて追加時間τの追加をできる回数が予め定められた回数までに制限されていてもよい。この制限回数までの追加がされると、上述した許容電力量まで補助電源装置300の蓄電量が低下するように、その制限回数を設定するものとしてもよい。
なお、ステップSb2bにおける追加処理は、完全に省略して、発熱必要時間記憶部242の発熱必要時間は、ステップS3で記憶された値から変化されないものとしてもよい。
(B)印字中発熱制御部240は、補助発熱体110bを発熱させる電力を変化させることがあってもよい。
(C)印字中発熱制御部240は、定着装置100が立ち上げられてから、はじめての印字処理のときにのみ(図4のタイミングT3〜T5a)、補助発熱体110bを発熱させるものとしてもよく、2度目以降の印字処理では(図4のタイミングT6a〜T8a等)、ステップS6でYESを判定した直後に、すぐにステップSb2aの処理に移るものとしてもよい。
(D)エージング所要時間と、最大発熱必要時間とは上述の説明では、同じ30秒であるものとして説明を行なったが、異なっていてもよい。この場合にも、上述の場合と同様、実行エージング時間(T秒)に対して、発熱必要時間を「最大発熱必要時間×(エージング所要時間−実行エージング時間)/エージング所要時間」の式により求めるものとしてもよい。