以下、本発明の一実施形態に係る複写機1について図面を参照して説明する。
図1は、複写機1を示す全体構成図である。
複写機1は、特許請求の範囲の記載内容における「画像形成装置」の一例をなす。
複写機1は、複写を行なう原稿がセットされて、セットされた原稿の画像を読み取る画像読取部100と、記録紙Pが積載される給紙部111と、これら給紙部111がそれぞれ記録紙Pを搬入させる記録紙Pの搬送経路112と、この搬送経路112の途中に設けられ、搬送される記録紙Pに対して上述の画像読取部100により読み取られた画像を形成させる画像形成部113と、同じく搬送経路112の途中で、この画像形成部113よりも下流側に設けられて、記録紙Pに対して、形成された画像の定着処理を行なう定着装置500と、定着装置500により画像の定着がされた記録紙Pが排出される排出部114と、操作パネル115と、これら各構成の動作制御を行なう制御部300とを備える。
定着装置500は、特許請求の範囲の記載内容における「定着装置」の一例である。
なお、以下では、定着装置500や画像形成部113など、搬送経路112の途中に設けられて、画像形成を実行する構成をまとめて画像形成機構500aと呼ぶこととする。
また、この画像形成機構500aへ記録紙Pを順次、通紙させて、画像形成機構500aにより画像が形成された記録紙を排出部114へと出力させる、搬送経路112や給紙部111などにより構成される機構全体を記録紙通紙機構200と呼ぶこととする。
図2は、図1の定着装置500を、図1における記録紙Pの下から上への進行方向を、図2では水平方向に右から左へのA方向として、拡大して示した図である。
定着装置500は、熱ローラ510aと、熱ローラ510aから加熱され、熱ローラ510aと共に、間に通される記録紙をプレスして、記録紙P上のトナー像Iを記録紙Pへ溶着させる圧ローラ510bと、熱ローラ510aの内部に設けられ、熱ローラ510aを加熱する、たとえばハロゲンヒータとして構成された2つの発熱体521,522とを備える。
熱ローラ510aは、特許請求の範囲の記載内容における「定着部」の一例をなす。
発熱体521は、特許請求の範囲の記載内容における「第一発熱体」の一例をなす。また、他方の発熱体522は、特許請求の範囲の記載内容における「第二発熱体」の一例をなす。
定着装置500へ搬送経路112を通じて記録紙Pが順次、通紙されるに際して、圧ローラ510bの温度は次のように変化する。圧ローラ510bは、定着装置500へ記録紙Pが通紙される前に、予め、熱ローラ510aから温められる。そして、定着装置500に記録紙の通紙が開始されると、予め圧ローラ510bに蓄えられていた熱が記録紙Pへ伝達し、圧ローラ510bの温度が一旦下がり、紙と紙の間で、再度、熱ローラ510aから圧ローラ510bへの熱伝導により、圧ローラ510bの温度が上昇する。こうして、圧ローラ510bの温度は、温度低下および上昇を繰り返す。
そして、制御部300は、発熱体521,522および記録紙通紙機構200の動作を制御することにより、上記のような圧ローラ510bの温度低下および温度上昇の繰り返しが安定したものとなるようにさせて、これにより、圧ローラ510bおよび熱ローラ510aの温度を、2つのローラ510a、510bが、間に通過される記録紙Pへ適切に定着処理を実行することができる温度(以下、定着温度)にさせる。
図3は、複写機1の詳細な構成を示すブロック図である。
図3においては、複写機1が有する構成の間に設けられた電力伝送線を実線により示し、各構成の間での制御信号などの情報の伝達線を、破線により区別して示している。
複写機1は、定着装置500、制御部300、および記録紙通紙機構200の他に、補助電源装置400を備える。
図示するように、定着装置500は、主発熱体521および補助発熱体522(図2参照)の2つの発熱体の他に、主発熱体521とAC入力との間に設けられた、主発熱体521の駆動制御を行なう駆動制御回路たるACヒータ駆動回路530を備える。
この実施形態における「AC入力」は、特許請求の範囲の記載内容における「商用電源」の一例をなす。
補助発熱体522は、補助電源装置400から電力(直流)を取得して発熱する。このため、AC入力の電力により主発熱体521が駆動されている場合に、AC入力の定格電力に近い電力が、AC入力より主発熱体521に取得され、主発熱体521で消費される間でも、この補助発熱体522は、補助電源装置400に予め蓄電された電力によって、別途、同時に発熱させることができる。
補助発熱体522は、複写機1に電源が投入された直後や、省電力モードから通常動作モードへ複写機1が復帰する場合など、定着装置500のローラ510a,510b(図2)の温度が室温などの著しく低い温度となっている場合に、定着装置500を急速に立ち上げさせるために、主発熱体521と共に制御部300が駆動させる。
そして、かかる定着装置500の立ち上げの場合に加えて、この複写機1では、以下で説明する場合にも、補助発熱体522の発熱が行なわれる。
補助電源装置400は、AC入力(商用電源)から電力を取得して、取得された電力を蓄電し、蓄電した電力によって定着装置500の補助発熱体522へ電力供給を行なう。
補助電源装置400は、大容量キャパシタを直列に接続して構成され、電力が蓄電されるキャパシタ装置410と、ダイオードブリッジを介してキャパシタ装置410をAC入力へ接続させ、ダイオードブリッジにより整流された直流電力により、キャパシタ装置410を充電させる充電部411と、キャパシタ装置410を放電させ、キャパシタ装置410に蓄電された電力を補助発熱体522へと供給する放電部412とを備える。
なお、以下では、キャパシタ装置410を充放電させることと、補助電源装置400を充放電をさせることとを、特段の理由がなければ区別せずに呼ぶものとする。
制御部300は、CPU,ROM,RAM等により構成される情報処理装置である。制御部300は、ROMに記憶されたソフトウェアを実行することにより、以下の機能を奏する。
制御部300は、補助電源装置400の充電部411および放電部412へ制御信号を入力して、これらの動作制御をすることによって、キャパシタ装置410へのAC入力からの充電およびキャパシタ装置410から補助発熱体522への放電をそれぞれ制御する。なお、制御部300は、補助電源装置400内部に設けられた制御回路等に制御信号を入力して、充電部411や放電部412を間接的に制御するものであってもよい。
また、制御部300は、ACヒータ駆動回路530へ制御信号を入力して、主発熱体521の動作制御を行なう。
図3には、制御部300の詳細な機能を説明する機能ブロック図を示している。図2では、制御部300の機能ブロックを破線によって示している。
制御部300は、発熱制御部310と、印刷枚数特定部311と、発熱モード記憶部312と、CPM制御部313とを備える。
発熱制御部310は、主発熱体521および補助発熱体522の発熱制御をして、定着装置500のローラ510a,510bの温度を前述の定着温度に維持させる。
発熱制御部310は、特許請求の範囲の記載内容における「発熱制御手段」の一例である。
発熱制御部310は、厚紙ではない、普通紙が印刷に用いられる場合には、主発熱体521の発熱のみをさせる。
そして、厚紙が印刷に用いられる場合には、発熱制御部310は、ローラ510a,510bの熱が厚紙へ大量に奪われてしまうので、かかる大量に奪われた熱の補償のために、主発熱体521と共に補助発熱体522を発熱させる。これにより、発熱制御部310は、厚紙が印刷に用いられる場合には、ローラ510a,510bへの供給熱量を増加させる。
発熱制御部310は、操作パネル115(図1)により、ユーザが、印刷を行なわせる記録紙が厚紙であることを複写機1に示した場合に厚紙印刷モードで動作する。厚紙印刷モードで動作する場合、発熱制御部310は、主発熱体521と共に補助発熱体522を発熱させる。
なお、発熱制御部310は、記録紙の搬送経路112や給紙部111などに設けられた記録紙の厚み等のセンサを用いて、記録紙の厚みや材質などを測定して、予め定められた一定の厚み以上の厚みを記録紙が有する場合などに、厚紙の画像形成がされることを特定するものとすることができる。
発熱制御部310は、厚紙印刷モードでの動作時において、連続印刷が行なわれる記録紙枚数が多い場合ほど、大きな電力で補助発熱体522の発熱をさせる。補助電源装置400の放電は、補助発熱体522へと補助電源装置400から単位時間に供給される電力が大きいほど、その電力量に反比例する等して短い時間の間のみ持続する。印刷される記録紙枚数が多く、印刷が長い時間続く場合には、このようにして、発熱制御部310は、小さな電力でではあるものの、長い時間、補助発熱体522の発熱がされるようにする。
発熱制御部310は、印刷中に、補助電源装置400から補助発熱体522へ放電をさせているうちに、補助電源装置400の残り蓄電量がなくなると、補助電源装置400に放電を停止させる制御をし、これ以後は、発熱制御部310は、主発熱体521の発熱のみによりローラ510a,510bの温度を定着温度にさせる制御を行なう。
なお、補助電源装置400には、キャパシタ装置410に残り蓄電量がなくなったことを検知する蓄電量検知手段が設けられている。発熱制御部310には、この蓄電量検知手段の検知結果に基づいて、キャパシタ装置410に残り蓄電量がなくなったことを検出する機能がある。
印刷枚数特定部311は、操作パネル115(図1)へのユーザ操作に基づいて、複写機1が何枚の記録紙を連続印刷するかを特定する。印刷枚数特定部311は、たとえば、画像読取部100(図1)に読み取られた原稿の枚数に、操作パネル115でユーザが指定した印刷部数を掛ける計算をして、印刷枚数を特定する。
操作パネル115は、特許請求の範囲の記載内容における「入力手段」の一例である。ただし、操作パネル115と印刷枚数特定部311の少なくとも一部とにより「入力手段」の一例が構成されると考えても良い。
前述の発熱制御部310は、この印刷枚数特定部311が特定した印刷枚数に基づいて処理を行なう。
CPM制御部313は、記録紙通紙機構200(図1)の動作制御を行なって、画像形成機構500aへ単位時間あたりに供給される記録紙の枚数、すなわち、この複写機1が単位時間当たりに画像形成を行なう記録紙の枚数(CPM:Copy Per Minute)を制御する。
CPM制御部313は、特許請求の範囲の記載内容における「通紙制御手段」の一例である。
CPM制御部313によりCPMが制御されて、搬送経路112に記録紙が順次、通紙される際に、記録紙がある一点を通過した後に、次の記録紙がその一点を通過するまでの時間、あるいはかかる時間を特定する、CPM制御部313により制御される、搬送経路112を記録紙が通紙されるCPMが、特許請求の範囲に記載した「通紙間隔」の一例をなす。
CPM制御部313は、たとえば、給紙部111に設けられている、給紙部111から記録紙の搬送経路112へ記録紙を搬入させる給紙ローラ111r(図1参照)の駆動タイミングを変化させて、CPMの制御を行なう。
発熱モード記憶部312は、記録紙の枚数と、発熱制御部310が補助発熱体522を発熱させる際の発熱モードとの対応を記憶している。発熱制御部310は、画像形成がされる記録紙の枚数を印刷枚数特定部311から取得して、取得された枚数に対応付けてこの発熱モード記憶部312に記憶された発熱モードで補助発熱体522の発熱制御を行なう。
発熱モード記憶部312は、特許請求の範囲の記載内容における「対応関係記憶手段」の一例である。
発熱モード記憶部312は、定着装置500へ連続して通紙される記録紙の枚数が多い場合ほど、小さな電力で補助発熱体522を発熱させるモードを対応させている。このため、発熱制御部310は、前述のように、枚数が多いほど、長い時間、補助発熱体522を発熱させることができる。
図4は、補助発熱体522を駆動する電力と、各駆動電力を補助発熱体522へ補助電源装置400が出力可能な時間の長さとの関係を示している。
図示するように、補助発熱体522を600W、150W、50Wの電力で発熱させ、つまり、補助電源装置400から単位時間当たりに、600W、150W、50Wの電力を補助発熱体522へ供給したとき、供給が持続するのは、それぞれ、60秒、240秒、720秒となる。この駆動持続時間は、電気二重層キャパシタを用いて構成したキャパシタ装置410に蓄電できるエネルギーを36000Jとして、36000÷600=60(秒)などの計算により求められるものである。ただし、かかる駆動持続時間は一例であり、本発明を限定しない。
発熱制御部310は、発熱モード1〜3で動作するときに、それぞれ、補助発熱体522を600W、150W、50Wの駆動電力で駆動させる。このため、発熱制御部310は、発熱モード1〜3で動作するときに、それぞれ、60秒、240秒、720秒の間、補助発熱体522の駆動をさせる。そして、発熱制御部310は、画像形成開始からこれらの駆動持続時間が経過するまでは、補助発熱体522の発熱をさせた後は、補助電源装置400に残り駆動電力がないので、補助発熱体522の駆動電力を0Wとする。
図4に示すように、CPM制御部313は、発熱制御部310が補助発熱体522を600W、150W、50W、0Wの駆動電力で駆動するときに、それぞれ、CPMを、80CPM、60CPM、50CPM、40CPMにさせる。これら、各駆動電力に応じた適切なCPMは、発熱モード記憶部312に記憶されているものとする。ここに、適切なCPMとは、熱ローラ510aを上述の定着温度に維持できるCPMである。
発熱モード記憶部312には、少なくとも、各発熱モードにおける補助発熱体522の駆動電力に対応するCPMが記憶される。このCPMは、特許請求の範囲の請求項3の記載における、「当該枚数の厚紙を前記定着装置へ最短時間で前記通紙制御手段に通紙させる」「前記蓄電装置に残り蓄電電力がある間の前記通紙間隔」の一例である。
また、発熱モード記憶部312には、補助発熱体522の駆動電力が電力0のときに対応するCPMも記憶される。このCPMは、特許請求の範囲の請求項2の記載における、「長い別の通紙間隔」の一例である。
そして、CPM制御部313は、発熱制御部310から補助発熱体522の駆動電力を通知されて、通知される駆動電力に対応する適切なCPMを発熱モード記憶部312から取得して、そのCPMで記録紙通紙機構200を稼動させる。
図5は、発熱制御部310が発熱モード1〜3で発熱制御をするときに、出力する記録紙の枚数ごとに、印刷所要時間がどのようになるかを示した図である。
図5においては、発熱制御部310が発熱モード1〜3で動作するときのグラフを、それぞれ、四角記号を付けた狭いピッチの破線、丸印記号を付けた狭いピッチの一点鎖線、米印記号を付けた広いピッチの破線によりそれぞれ図示している。なお、三角記号を付けた広いピッチの一点鎖線のグラフは、対比のために、仮に、いっさい補助発熱体522を駆動することを行なわずに、つまり、常時、補助発熱体522の駆動電力を0Wとして印刷をする場合の印刷所要時間を示したものである。
図5では、これら発熱モード1〜3および常時、駆動電力を0Wとした4つの場合に付いて、図5では、印刷により出力される記録紙の枚数(横軸)に応じて、その枚数の印刷が完了するまでの時間(縦軸)がどのようになるかを示している。
なお、先に説明した図4および後述の図7においても、この図5で用いた四角記号、丸印記号、米印記号、三角記号を用いているが、それぞれ、この図5と対応した表示をしたものである。
まず、駆動電力を常時0Wとした場合では(三角記号付きのグラフ)、発熱制御部310からCPM制御部313への駆動電力の通知に基づき、CPM制御部313は、常時、CPMを40CPMにさせ、たとえば40枚の出力枚数であれば1分で出力し、80枚の出力枚数であれば2分で出力し、時間が1分ずつ長くなるごとに、40枚ずつ出力される記録紙の枚数は増える。こうして、このときには、以下で説明する発熱モード1〜3の場合と異なり、グラフに折れ曲がりは無く、単調に、時間が長くなるのに伴い、出力される記録紙の枚数は増える。
次に、発熱制御部310が発熱モード1で発熱制御をする場合には(四角記号のグラフの場合)、上述の通り、発熱制御部310は印刷開始からはじめの60秒は補助発熱体522を600Wで発熱させ、これにより、この60秒の期間は、発熱制御部310の通知に基づきCPM制御部313がCPMを80CPMにさせ、これによって、図示するように、この60秒(1分)の期間は、時間が長くなるにつれて、1分当たりにして80枚のペースで印刷枚数が単調に増加する。
そして、この60秒を越え、したがって印刷枚数が80枚を超えてからは、補助電源装置400が補助発熱体522への放電を停止し、補助発熱体522は発熱しないようになるので、発熱制御部310が補助電源装置400の蓄電量検知手段からの信号に基づいてこのことを検知して、CPM制御部313へその通知をすることにより、CPM制御部313が、上述の駆動電力が常時0Wのとき(三角印のグラフのとき)と同じ40CPMにCPMを低下させる。CPM制御部313は、こうして、補助電源装置400に残り蓄電電力がなくなると、CPMを低下させる。
これにより、図示するように、60秒を過ぎて以後は、出力される記録紙の枚数が増えるのに伴う印刷所要時間の伸び方が急になる。
同様に、発熱制御部310が発熱モード2で発熱制御をする場合には、発熱制御部310が補助発熱体522を240秒間(4分間)、発熱させ、CPM制御部313は、発熱制御部310が補助発熱体522を発熱させる発熱電力150Wに応じた60CPMで、4分経過まではCPM制御を行ない、その後は、40CPMにする。
また、同様に、発熱制御部310が発熱モード3で発熱制御をする場合には、発熱制御部310が補助発熱体522を720秒間(12分間)、50Wで発熱させ、CPM制御部313は、12分経過まではCPMを50CPMとし、その後、40CPMにする。
そして、図5より分かるように、印刷枚数が0〜115枚のうち、つまり、図5において「追越し」の文字で示している印刷枚数115枚までは、発熱モード1の場合が(四角記号のグラフ)、印刷に要する時間が最も短い。
そして、115枚を境として、それより多い印刷枚数では、この発熱モード1の印刷所要時間は、発熱モード2の印刷所要時間を追い越して多くなってしまうので、最短の印刷所要時間は、発熱モード2での印刷所要時間に代わる。
同様に、図5において他方の「追越し」の文字が示しているように、この発熱モード2の印刷時間は、さらに印刷枚数が増えて、印刷枚数が416枚以上となると、最短ではなくなり、416枚以上の出力枚数では、発熱モード3における印刷時間が最短の印刷時間になる。
以下では、このような、印刷枚数0〜115枚における発熱モード1、印刷枚数101〜415枚における発熱モード2、および印刷枚数が416枚以上のときの発熱モード3のように、印刷所要時間が最短となる発熱モードを、最速発熱モードと呼ぶこととする。
発熱モード記憶部312は、印刷を行なう記録紙の枚数ごとに、かかる最速発熱モードが発熱モード1〜3のうちいずれであるかを対応表データ312d(図5)に記憶している。
図5に示すように、対応表データ312dには、各発熱モードに付き、そのモードでの駆動電力(50W、150Wまたは600W)で補助発熱体522が駆動される場合に適切なCPMが記憶される。CPM制御部313は、発熱制御部310から通知された駆動電力に対応するCPMを発熱モード記憶部312から読み出して、そのCPMを実現するように記録紙通紙機構200の駆動を行なう。なお、補助発熱体522の駆動電力0Wに対応するCPMが40CPMであることも対応表データ312dは記憶しているが、この点については図5では図示を省略している。CPM制御部313は、かかる対応表データ312dに記憶されたCPMを読み出して、上記に説明したようなCPM制御を実行する。
なお、図5では、各発熱モードに付き、そのモードでの駆動電力における補助発熱体522の駆動持続時間も対応表データ312dに含まれているように示しているが、これは必須ではない。駆動電力させ記憶してあれば、駆動電力に基づいて、上述したような計算式により、発熱制御部310は、対応する駆動持続時間を求めることができる。
また、この実施形態では、発熱モード1〜3における補助発熱体522の駆動電力が600W、150W、50Wであるものとして説明を行っているが、これらは、説明の便宜上から選んだ一例に過ぎず、他の駆動電力で駆動することがあってもよい。そして、必ずしも、補助発熱体522の駆動電力は3種類である必要もなく、3つよりもさらに多くの発熱モードがあり、3種類より多くの駆動電力での駆動がされてもよい。
また、発熱モード記憶部312は、このように、一定範囲の記録紙の枚数を同じ駆動電力に対応付けるものではなく、一枚ごとに異なる電力に対応付けるものであってもよい。
発熱モード記憶部312は、記録紙の枚数に基づき、駆動電力を求めるための計算式を記憶していてもよく、かかる場合、その計算式のパラメータを記憶しているものとしてもよい。
図6は、複写機1の動作を示すフローチャートである。
ステップS1では、発熱制御部310が、印刷が行なわれる記録紙が厚紙であるか否かを判定する。
ステップSxは、このステップS1で、印刷が行なわれる記録紙が厚紙ではないことが発熱制御部310に判定された場合に(ステップS1:NO)、複写機1が行なう普通紙の通常印刷処理である。
ステップS2では、印刷枚数特定部311が、印刷が行なわれる記録紙の枚数を特定し、特定された印刷枚数が発熱制御部310により取得される。
ステップS3では、発熱制御部310が、先にステップS2で印刷枚数特定部311に特定された印刷枚数に対応付けて発熱モード記憶部312が記憶する発熱モードを特定する。
ステップS4では、複写機1は厚紙印刷を実行する。このときには、発熱制御部310が、ステップS3で特定した発熱モードで補助発熱体522の発熱制御を行ない、この発熱制御部310からの通知に基づいてCPM制御部313がCPM制御をする。前述のとおり、CPM制御部313は、通知された電力に対応させて対応表データ312dに記憶されたCPMでの制御をする。このときの、時間経過に伴う、印刷枚数の伸びは、図5の発熱モード1〜3の0〜60秒、0〜240秒、および0〜720秒のグラフが示す通りとなる。
ステップS5では、印刷完了、または、図4を参照して説明した前述の駆動持続時間の経過とのいずれかを制御部300が検知する。
駆動持続時間が経過する前に印刷が完了したとき、つまり、印刷される記録紙の枚数が少なく、発熱モード1〜3で、それぞれ、60秒以内、240秒以内、720秒以内に印刷が完了する場合には、発熱制御部310は、印刷完了を検知して、検知した時点で、主発熱体521および補助発熱体522の発熱を停止させる。これにより図6の処理は終了する(ステップS5:NO)。なお、このときには、CPM制御部313も、印刷終了を検知して、記録紙通紙機構200の動作を停止させる。
他方、ステップS4の処理がされるうちに、印刷が完了する前に、前述の駆動持続時間が経過した場合、つまり、印刷が完了する前に、キャパシタ装置410に残り蓄電量がなくなったと発熱制御部310に検知された場合には(ステップS5:YES、図5における発熱モード1〜3における60秒、240秒、および720秒)、ステップS6において、発熱制御部310は補助発熱体522の発熱を停止させる制御を行ない、また、CPM制御部313は、この発熱制御部310からの通知を受けて、CPMを40CPMに低下させる。これにより、このステップS6では、CPM制御部313がCPMを40CPMにさせ、また、発熱制御部310が補助発熱体522を停止させた状態で、印刷が完了しなかった残りの枚数の記録紙への印刷を複写機1が実行する。このときの、時間経過に伴う、印刷枚数の伸びは、図5の発熱モード1〜3の60秒以後、240秒以後、および720秒以後のグラフが示す通りとなる。
このような複写機1においては、厚紙への画像形成時における生産性の低下を抑制できる。
厚紙の画像形成時には、厚紙が定着装置500に通紙されることで、ローラ510a、510bの熱が、通紙される厚紙へ大量に奪われる。
図7は、厚紙印刷時にローラ510a、510bの熱が厚紙へ大量に奪われることを説明する図である。
図6のステップSxで、普通紙が印刷されるときには、この図7の二点差線のグラフ(ダイヤ形記号を付したグラフ)で示すように、CPM制御部313が、CPMを80CPMにさせる。このときは、前述のように、発熱制御部310は、主発熱体521の発熱のみでローラ510a、510bの加熱をさせているときである。
したがって、図7の三角記号で示したグラフ(図5から再掲)の、厚紙を、上記と同じく主発熱体521のみの発熱で印刷したときの40CPMと比べれば、印刷を行なう記録紙を厚紙にしたときに、上記に説明した実施形態のように補助発熱体522を発熱させることをしないでいると、CPMを半減させなければならないことがわかる。
なお、このようにCPMを半減させなければならなるのは、たとえば、記録紙が、その重さが普通紙では80g/m2程度であったのが、厚紙では倍の200g/m2などになったときであり、記録紙の熱容量が倍になったとき等である。
ここで、このように、図7の三角記号で示したグラフのときのように、厚紙の印刷時に、補助発熱体522を発熱させず、40CPMで印刷を行なう印刷方法は、従来例に相当する。
これに対して、本実施形態に係る複写機1では、上記の説明のようにして、厚紙印刷時に発熱制御部310が補助発熱体522を発熱させるので、これにより、厚紙にローラ510a、510bの熱が大量に奪われても、奪われた分を補助発熱体522の発熱により補償させて、図7に示した発熱モード1〜3のグラフ(四角記号のグラフと、丸記号のグラフと、米印記号のグラフ:図5から再掲)に示すように、普通紙印刷時(図7のダイヤ形記号のグラフ)に近い速さで印刷をして、高い生産性を実現することができる。
たとえば、発熱モード1の場合には、図4での説明で述べた通り、印刷開始から60秒間は80CPMで印刷することができ、60秒間までの間に印刷が完了する80枚までの印刷であれば、普通紙を印刷する場合と同じ生産性を実現することができる。
複写機1においては、厚紙が定着装置500へ通紙されるに際して発熱制御部310により補助発熱体522が発熱されるのは、補助電源装置400に残り蓄電電力がある間であり(発熱モード1〜3の0〜60秒、0〜240秒、および0〜720秒)、厚紙が順次、定着装置500へ通紙されるうちに残り蓄電電力がなくなると、なくなった後には発熱しない(発熱モード1〜3の60秒以降、240秒以降、および720秒以降)。そこで、補助電源装置400に残り蓄電電力がある間は、補助発熱体522が発熱される発熱電力に応じた適切な通紙間隔(発熱モード1〜3における80CPM,60CPM,50CPMに対応する通紙間隔)で通紙がされると共に、残り蓄電電力がなくなった後には、補助発熱体522が発熱されない場合における定着装置500へ厚紙を通紙させるべき別の適切な通紙間隔(40CPM)で通紙はされるようにしてある。
そして、ここで、同じ枚数の厚紙を定着装置へ通紙させる場合でも、発熱電力が異なれば、蓄電電力がなくなるまでの時間(発熱モード1〜3において60秒、240秒、720秒)および蓄電電力がなくなるまでの間における当該発熱電力に応じた適切な通紙間隔(発熱モード1〜3における80CPM,60CPM,50CPM)が異なり、その枚数の厚紙が通紙され終わるまでに要する時間(図5,7の縦軸)が相違してくる。そこで、通紙がされる厚紙の枚数に応じて、その枚数の厚紙が通紙され終わるまでの時間が最短となる発熱電力(発熱モード1〜3の電力600W、150W、50W)で発熱制御部310による補助発熱体522の発熱はされるようになっており、生産性が低下することを的確に抑制することができる。
以下、他の実施形態について説明する。
(A)記録紙が積載可能な最大枚数が異なる複数の給紙部が複写機に設けられていてもよい。たとえば、手差しトレイに積載される記録紙の給紙をするバイパス給紙装置と、カセットに積載された記録紙の給紙をするカセット給紙装置と、昇降駆動される載置板を備え、この載置板の上にセットされた記録紙の給紙を行なうデッキ給紙装置との3つの給紙装置を備えるものとする。かかる場合、たとえば、厚紙(200g/m2紙)であれば、バイパス給紙装置には50枚、カセット給紙装置には100枚、デッキ給紙装置には750枚が、最大で積載される。そこで、上記の印刷枚数特定部311は、これら50枚、100枚、750枚の最大積載枚数を記憶しており、バイパス給紙装置の記録紙を用いて印刷がされる場合には印刷枚数を50枚と特定し、カセット給紙装置の記録紙を用いる場合には100枚と特定し、デッキ給紙装置の記録紙を用いる場合であれば750枚と特定するものとする。
上記の説明における各給紙装置は、それぞれ、特許請求の範囲の記載内容における「積載装置」の一例である。また、印刷枚数特定部311ないしは印刷枚数特定部311が有する記憶部により、「最大枚数記憶手段」の一例が構成される。
なお、印刷枚数特定部311は、他にも印刷枚数の特定を種々の手法により行なうものとすることができ、たとえば、複写機1の外部のパーソナルコンピュータ等から取得された印刷ジョブの印刷が複写機1で行なわれる場合には、当該ジョブ内のデータに基づいて印刷が行なわれる記録紙の枚数を印刷枚数特定部311は特定するものとしてもよい。
なお、上記の例では、互いにタイプが異なった複数種類の給紙装置を例に取り上げて説明を行なったが、上段のカセット給紙装置および下段のカセット給紙装置の2つの給紙装置など同種の2以上の給紙装置に対して上述の技術を適用することも可能である。
(B)CPM制御部313は、厚紙印刷がされる際に、CPMを常に、一定の80CPMとし、つまり、普通紙が印刷される場合のCPMを維持するものとしてもよい。このようにすれば、発熱制御部310により補助発熱体522を発熱させて定着処理の不良はなるべく回避させつつ、普通紙が印刷される場合の印刷速度を維持させて、生産性が低下することを回避させることができる。
(C)発熱制御部310は、上記実施形態のように、印刷が行なわれる記録紙の枚数に応じて、補助発熱体522を発熱させる電力を変化させなければならないことはなく、枚数に拘わらず、一定の発熱電力で補助発熱体522の発熱をさせるものとしてもよい。
(D)複写機1は、たとえば図6の処理が完了した場合など、画像形成が完了した場合、補助電源装置400の充電を開始するものとしてもよい。充電は、必ずしも複写機1がスリープモードや省電力モード、待機モード等のときに限らず、画像形成と画像形成の間に行なっても良く、図6のステップS4が実行された後、なるべく迅速に充電は行なわれることが好ましい。
(E)複写機1では、ステップS4において、厚紙印刷を実行する場合には、常に、キャパシタ装置410が満充電であるものとしてもよい。あるいは、複写機1は、ステップS4およびステップS5を、キャパシタ装置410が満充電であるときのみ実行するものとして、満充電でなければ、これらステップS4およびステップS5の処理をスキップして、ステップS6の処理に移り、すべての印刷を補助発熱体522が停止した状態でこのステップS6において実行するものとしてもよい。また、あるいは、キャパシタ装置410の蓄電量ごとに対応表データ312dを発熱モード記憶部312は記憶するものとし、ステップS4で発熱制御部310は、そのときのキャパシタ装置410の残り蓄電電力を検知して、検知された残り蓄電電力に対応する対応表データ312dの記憶内容に基づいて、ステップS4の処理を行なうものとしてもよい。
(F)上述の説明では、補助電源装置410に残り蓄電電力をなくなったことを検知する機能が、発熱制御部310の機能の一部に含まれるものとして説明を行なったが、かかる構成に限定されることはなく、発熱制御部310と独立して、補助電源装置410の蓄電量検知手段からの検知信号に基づく等して、補助電源装置410に残り蓄電電力がなくなったことを検出する放電不能状態検出部が、制御部300に実現されているものとしてもよい。
ステップS5では、この放電不能状態検出部が、補助電源装置410に残り蓄電電力がなくなったことを検出する。そして、印刷完了前に、補助電源装置410に残り蓄電電力がなくなったとこの放電不能状態検出部に検出されたときに(ステップS5:YES)、ステップS6において、発熱制御部310およびCPM制御部313は、この放電不能状態検出部から、キャパシタ装置410に残り蓄電量がなくなったことが通知されることにより、それぞれの処理を実行開始するものとしてもよい。