JP5132728B2 - アクチュエータ用圧電部材 - Google Patents

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Description

本発明は、超音波モーター、インクジェットプリンタヘッド等に用いられるチタン酸ジルコン酸鉛系焼結体からなるアクチュエータ用圧電部材に関するものである。
従来、超音波モーターやインクジェットプリンタヘッドには圧電型のアクチュエータが用いられている。この圧電型のアクチュエータの基本原理は、分極処理した圧電セラミックスからなるアクチュエータ用圧電部材の相対する面に電極を形成して電圧を印加すると、圧電セラミックス中の結晶に歪みが発生して変形することを利用したもので、このようなアクチュエータ用圧電部材としてチタン酸ジルコン酸鉛系焼結体が用いられていた。
チタン酸ジルコン酸鉛系焼結体を製造するには、アルコキシド法、蓚酸法、水熱合成法等の化学的方法や仮焼合成法等で合成したチタン酸ジルコン酸鉛系合成粉体を、周知のプレス成形法、テープ成形法等にて成形し、大気雰囲気(酸素濃度が20体積%程度)にて焼成して製作されていた。
しかしながら、PbOを主成分とした鉛系複合材料を大気雰囲気中で焼成すると、PbOが蒸発して圧電諸特性が劣化することが知られている。
その為、大気焼成にて圧電諸特性を劣化させずにチタン酸ジルコン酸鉛系焼結体を得る方法として、特開平11−12031号公報(以下特許文献1という)には、チタン酸ジルコン酸鉛系合成粉体を得る際に、焼成時に蒸発するPbOをあらかじめ過剰に加え、圧電諸特性の劣化を防止することが開示されている。
また、チタン酸ジルコン酸鉛系焼結体をアクチュエータ用圧電部材として用いる場合、圧電定数等の圧電諸特性が高いことは勿論のこと、高細度、高精度の加工性が要求され、ダイシングソーやワイヤーソー等による微細加工においてカケやチッピング等が発生しないような機械的特性に優れたアクチュエータ用圧電部材が望まれていた。そして、ダイシングソーやワイヤーソー等での微細加工によるカケやチッピングの発生を防ぐためには、チタン酸ジルコン酸鉛系焼結体そのものの機械的強度を向上させるとともに、焼結体内部に存在するボイド径やボイド率を小さくすることが必要であった。
その為、緻密化されたチタン酸ジルコン酸鉛系焼結体を得る方法として、熱間静水圧プレス法(HIP法)にて、ボイドを押しつぶすか、あるいは特許第2652425号(以下特許文献2という)に開示されているように、昇温時の酸素濃度を50体積%以上とし、かつ焼成温度時の酸素濃度を昇温時の1/2乃至10体積%にして焼成することが提案されていた。
特開平11−12031号公報 特許第2652425号
ところが、特許文献1に開示されているように、チタン酸ジルコン酸鉛系合成粉体の秤量時にあらかじめ過剰のPbOを加えるようにしても、大気雰囲気での焼成では、PbO
の蒸発を防ぐことが難しく、PbOが焼結体表面から蒸発するため、焼結体表層部と焼結体内部との組成差並びにボイド径やボイド率の差が大きく、均質なチタン酸ジルコン酸鉛系焼結体を得ることができなかった。
その為、得られたチタン酸ジルコン酸鉛系焼結体をアクチュエータ用圧電部材に用いる場合、焼結体表層部を研削加工にて除去する必要があり、高価な原料の無駄が多く、また研削時間が長くなるといった不都合があった。
また、焼結体表層部を研削加工にて除去したとしても、焼結体内部は充分に緻密化されていないため、所定の形状に研削するために、ダイシングソーやワイヤーソー等にて加工を施すと、カケやチッピング等が発生し易く、例えば電極や微細な電極引出線を形成する場合、断線を招く要因となっていた。
しかも、大気雰囲気中での焼成では、大気圧の変化に伴ってPbOの蒸発量が変化し易いため、チタン酸ジルコン酸鉛系焼結体の組成にばらつきが生じ易く、安定した圧電諸特性を持ったアクチュエータ用圧電部材を得ることが難しかった。
一方、熱間静水圧プレス法(HIP法)にて緻密化した場合、全体的に緻密なチタン酸ジルコン酸鉛系焼結体を得ることができるものの、焼結体表層部と焼結体内部とでボイドの分布状態に差があり、焼結体内外において均質な構造を有するチタン酸ジルコン酸鉛系焼結体を得ることは難しいものであった。
その為、熱間静水圧プレス法(HIP法)にて緻密化した焼結体もまたアクチュエータ用圧電部材として用いる場合、研削加工にて焼結体表層部を除去しなければならなかった。
しかも、熱間静水圧プレス法(HIP法)は、外圧を加えながら焼成する方法であるため、焼結体中に残留応力が残り、ダイシングソーやワイヤーソーでの研削加工時に応力が開放され、カケやチッピングが発生する恐れもあった。
その上、熱間静水圧プレス法(HIP法)は、高価な加圧設備を必要とするためにコストがかかり、アクチュエータ用圧電部材が高額なものになってしまうとともに、量産化に適さないといった課題もあった。
これに対し、特許文献2に開示された方法では、焼成時における炉内雰囲気の変化を少なくでき、かつPbOの蒸発を制御することができるため、チタン酸ジルコン酸鉛系焼結体を全体的に緻密化できるものの、この方法においても大きなボイドが焼結体中に残ることがあった。
この理由としては、チタン酸ジルコン酸鉛系粒子間に形成される空孔内の酸素濃度と外気の酸素濃度の勾配が大きくなると、酸素が拡散することにより、チタン酸ジルコン酸鉛系粒子間の隙間を埋めてボイドを追い出すとともに、粒成長を助長し、焼結を促進させ、ボイド径を小さくする傾向があり、ある程度の大きさのボイドは消失し、ボイド率を小さくできるのであるが、粒成長とともに、粒子界面に孤立したボイドがチタン酸ジルコン酸鉛系粒子中に取り込まれてしまうためであると思われる。そして、チタン酸ジルコン酸鉛系粒子中に取り込まれたボイドを取り除くことは、粒子界面に孤立したボイドを取り除くより困難であった。
その為、大きなボイドが存在するチタン酸ジルコン酸鉛系焼結体に研削加工を施すと、欠けやチッピングの原因となるとともに、電極や微細な電極引出線を形成する場合、断線
を招く要因となっていた。
そこで、本発明は上記課題に鑑み、チタン酸ジルコン酸鉛系焼結体からなるアクチュエータ用圧電部材において、前記焼結体の密度が理論密度の98%以上、最大結晶粒子径が10μm以下、最大ボイド径が10μm以下であるとともに、無研磨状態での前記焼結体表面における表面粗度が中心線平均粗さ(Ra)で0.3μm以下であり、前記焼結体表面から100μmまでの深さを焼結体表層部、それ以外を焼結体内部とした時、該焼結体内部におけるボイド率が1.0%以下でかつ焼結体表層部と焼結体内部におけるボイド率の差が1.0%以下であることを特徴とする。
本発明によれば、焼結体の密度が理論密度の98%以上、最大結晶粒子径が10μm以下、最大ボイド径が10μm以下であるとともに、無研磨状態での前記焼結体表面における表面粗度が中心線平均粗さ(Ra)で0.3μm以下であり、前記焼結体表面から100μmまでの深さを焼結体表層部、それ以外を焼結体内部とした時、該焼結体内部におけるボイド率が1.0%以下でかつ焼結体表層部と焼結体内部におけるボイド率の差が1.0%以下であるチタン酸ジルコン酸鉛系焼結体からなるアクチュエータ用圧電部材としたことから、アクチュエータとして重要な圧電定数等の圧電諸定数を向上させることができ、超音波モータやインクジェットプリンタヘッド等の圧電アクチュエータとして用いた時にはその性能を高めることができるとともに、均質な構造を有することから、焼結体表層部を除去する必要がなく、原料の無駄を無くすことができる。また、所望の形状とするために研削加工を施しても欠けやチッピングを生じ難く、無研磨状態での焼結体表面が滑らかであるため、この焼結体表面に直接電極や電極引出線を形成することができる。
本発明に係るアクチュエータ用圧電部材は、チタン酸ジルコン酸鉛系焼結体からなり、緻密で均質な構造を有し、かつ無研磨状態での焼結体表面が滑らかであることを特徴とする。
また、本発明において緻密とは、焼結体の密度が理論密度の98%以上を有することを言い、緻密化することで圧電定数等の圧電諸特性をさらに向上させることができるからであり、また、本発明において無研磨状態での焼結体表面が滑らかであるとは、中心線平均粗さ(Ra)で0.3μm以下であることを言い、研削加工などを施さなくても断線を生じることなく電極や電極引出線を直接焼結体表面に形成することができる。
さらに、本発明において均質な構造を有するとは、焼結体中におけるチタン酸ジルコン酸鉛系粒子の最大結晶粒子径が10μm以下でかつ最大ボイド径が10μm以下であるとともに、焼結体表面から100μmまでの深さを焼結体表層部、それ以外を焼結体内部とした時、焼結体内部におけるボイド率が1.0%以下でかつ焼結体表層部と焼結体内部におけるボイド率の差が1.0%以下であることを言う。
ここで、チタン酸ジルコン酸鉛系粒子の最大結晶粒子径を10μm以下としたのは、最大結晶粒子径が10μmを越えると、無研磨状態での焼結体表面を中心線平均粗さ(Ra)で0.3μm以下とすることができず、また、焼結体の4点曲げ強度が大幅に低下して破損し易く、研削加工を施すとカケやチッピングが発生するからである。
また、焼結体中の最大ボイド径を10μm以下としたのは、最大ボイド径が10μmを越えると、研削加工を施した時にこのボイドを起点としてカケやチッピングが発生するからであり、また、このボイドが焼結体表面に存在する時には、電極や微細な電極引出線を
形成する際に断線を引き起こす原因となるからである。
さらに、焼結体内部のボイド率を1.0%以下としたのは、ボイド率が1.0%を越えると、焼結体の密度を理論密度の98%以上とすることができず、研削加工を施した時にカケやチッピングの起点となるボイドが占める比率が多くなってしまうからである。
そして、焼結体表層部と焼結体内部におけるボイド率の差を1.0%以下としたのは、1.0%を越えると、焼結体表層部と焼結体内部での圧電諸特性や研削加工時の研削性が大きくことなるために、均質な構造を有するものとは言い難く、アクチュエータ用圧電部材として用いるには、焼結体表層部を研削加工にて除去する必要があるからである。
その為、前記組成及び構造を満足する本発明のチタン酸ジルコン酸鉛系焼結体からなるアクチュエータ用圧電部材を用いれば、優れた圧電諸特性を有することから、超音波モーターやインクジェットプリンタヘッド等の圧電型アクチュエータとしても好適に用いることができるとともに、所定の形状に形成するにあたり研削加工を施しても欠けやチッピングを生じることがなく、さらには焼結した焼き放し面のままでも滑らかで大きなボイドが存在しないため、直接電極や電極引出線を形成することができ、研磨工程を不要あるいは研磨時間を短くでき、かつ高価な原料無駄を無くすことができる。
ところで、このアクチュエータ用圧電部材を製造するには、一例として、チタン酸ジルコン酸鉛系焼結体を構成する各元素の化合物を秤量し、アルコキシド法、蓚酸法、水熱合成法等の化学的方法や仮焼合成法等で合成して基本組成式がPbZrTiO3 で表されるペロブスカイト組成を有し、前記基本組成式のPbがBa、Sr、Laのうち少なくとも1種以上の元素で一部置換され、且つZrとTiがNb、Zn、Sb、Ni、Mgのうち少なくとも1種以上で一部置換されたチタン酸ジルコン酸鉛系合成粉末を作製する。ここで、チタン酸ジルコン酸鉛系焼結体を構成する各元素の化合物としては、基本成分であるPb、ZrO、TiOに対し、Pbと一部置換する成分として、BaCO、SrCO、Laの少なくとも一種以上を、Zr及びTiと一部置換する成分として、Nb、ZnO、Sb、NiO、MgCOの少なくとも1種以上をそれぞれ添加する。
そして、チタン酸ジルコン酸鉛系合成粉末を回転ミル等にて平均粒径が0.4〜0.7μm、粒度分布の標準偏差が0.2μm以下、BET比表面積が5〜13m/gになるまで粉砕する。
チタン酸ジルコン酸鉛系合成粉末の平均粒径が0.7μmを越えると、BET比表面積が5m/g未満となり、全エネルギーにしめる表面エネルギーの割合が小さくなるために焼成温度を下げる効果がなく、粒成長を促進されて焼結体中におけるチタン酸ジルコン酸鉛系粒子の最大結晶粒子径が10μmを越え、粒成長によってボイドがチタン酸ジルコン酸鉛系粒子中に取り込まれて最大ボイド径10μm以下、焼結体内部のボイド率1%以下を達成することができず、逆に平均粒径が0.4μm未満では、BET比表面積が13m/g以下となるように粉砕することが難しくなるとともに、メディアの摩耗粉が混入して組成が変わってしまうからである。また、粒度分布の標準偏差が0.2μmを超えると、粒径のバラツキが大きく、粒径の小さなチタン酸ジルコン酸鉛系粒子は、粒径の大きなチタン酸ジルコン酸鉛系粒子に取り込まれて粒成長し易くなり、焼結後におけるチタン酸ジルコン酸鉛系粒子の最大結晶粒子径を10μm以下とすることが難しく、また、ボイドが取り込まれて焼結体中の最大ボイド径10μm以下、焼結体内部のボイド率1%以下を達成することができないからである。
なお、チタン酸ジルコン酸鉛系合成粉末の粉砕にあたっては、回転ミル以外に、振動ミ
ルや他粉砕手法を用いれば良い。そして、合成粉末の粒径を調整するには、ボールやビーズ等のメディア径を適宜選択し、湿式で10〜60Hr時間粉砕すれば良い。
次に、得られたチタン酸ジルコン酸鉛系合成粉末を有機バインダーと混合し、プレス成形法やテープ成形法等周知のセラミック成形手段にて、所定の形状に成形したあと、200℃〜900℃の大気雰囲気中にて有機バインダーを除去し、次いで鉛雰囲気調整用の粉体と共にマグネシア系セラミックス又はジルコニア系セラミックスからなる半密閉容器中に入れる。
ここで、半密閉容器を用いる理由としては、焼成炉内の雰囲気置換段階において、容器内へ酸素が容易に置換され、さらにチタン酸ジルコン酸鉛系粒子間に形成されるボイド内に十分な酸素を供給する必要があるからである。また、半密閉容器をマグネシア系セラミックス又はジルコニア系セラミックスにより形成することで、チタン酸ジルコン酸鉛系焼結体との相互拡散反応を防ぐことができる。そして、焼成炉内に酸素を流入させた状態で、1000℃〜1300℃で焼成すれば良い。
ただし、焼成炉内の容積1リットル当たりに供給する酸素流入量が0.1リットル/分より少なくと、焼結体中におけるチタン酸ジルコン酸鉛系粒子間に形成されるボイド内に十分な酸素を供給することができず、ボイド内の酸素濃度と外気の酸素濃度の勾配が小さくなって酸素拡散が抑制されるため、ボイドを追い出す効果が小さく、逆に、焼成炉内の容積1リットル当たりに供給する酸素流入量が2.0リットル/分より多くなると、炉内の温度が安定しなかったり、炉内の温度が低下するために、焼成ムラを生じることがある。その為、焼成時における酸素流入量は、焼成炉内の容積1リットル当たり0.1〜2.0リットル/分とする。
また、炉内雰囲気の酸素濃度が25体積%未満では、酸素濃度が低すぎるため、PbOの蒸発、分解が著しく、またボイド中の酸素濃度が低いことから、焼結時においてボイド内の酸素拡散が起り難く、ボイドを収縮させることができないために緻密化することができない。その為、ボイドの収縮速度を速めるためには、炉内雰囲気の酸素濃度を、25体積%以上、好ましくは50体積%以上、さらに望ましくは80体積%以上とすることが良い。
以上のように、チタン酸ジルコン酸鉛系合成粉体の平均粒径、粒度分布の標準偏差、BET比表面積を前述したように制御するとともに、焼成過程で生成されたボイド中に酸素を供給して拡散させることで、ボイドを小さくしたり、消失させることができるため、チタン酸ジルコン酸鉛系焼結体中における最大ボイド径を10μm以下、焼結体内部におけるボイド率を1.0%以下、さらに焼結体表層部と焼結体内部におけるボイド率の差を1.0%以下とすることができるとともに、焼結体の密度を理論密度の98%以上に緻密化することができるため、アクチュエータとして重要な圧電定数等の圧電諸特性を向上させることができるとともに、所望の形状とするために研削加工を施しても欠けやチッピングを生じることがない。しかも、無研磨状態での焼結体表面の表面粗度を中心線平均粗さ(Ra)で0.3μm以下の滑らかな面とすることができるため、直接電極や電極引出線を形成することができ、製作工程を減らせるとともに、高価な原料無駄を防ぐことができるといった効果を有するアクチュエータ用圧電部材を形成することができる。
以下、本発明に係るアクチュエータ用圧電部材の一例について説明する。
出発原料に、Pb、SrCO、ZrO、TiO、Nb、ZnOの粉末を用い、各粉末を所定量秤量し、ボールミルにて20時間湿式混合したあと、脱水乾燥
し、しかるのち900℃で3時間仮焼してチタン酸ジルコン酸鉛系合成粉体を得た。そして、得られた合成粉体、直径0.5〜10mmのジルコニアボール、イオン交換水を1:5:2の割合で容器に投入し、回転ミルにて20〜60時間粉砕することで、平均粒径、粒径の標準偏差、BET比表面積を表1に示すように異ならせた。
次に、得られた合成粉体に有機バインダーを添加混練し、乾燥、造粒して顆粒を作製したあと、得られた顆粒を1.2t/cmの圧力で一軸加圧成型して成形体を形成したあと、300℃の大気雰囲気中にて有機バインダーを除去し、しかるのち鉛雰囲気調整用の粉体と共にジルコニアセラミックス、マグネシアセラミックス、アルミナセラミックスからなる半密閉容器中に入れ、焼成炉内に供給する酸素流入量及び酸素濃度を表1のように調整して1100℃で焼成することにより、表2に示す試料A〜Oのチタン酸ジルコン酸鉛系焼結体からなるアクチュエータ用圧電部材を得た。
また、従来例として、表1の試料Pに示す平均粒径、粒径の標準偏差、BET比表面積を有するチタン酸ジルコン酸鉛系合成粉体を用い、除去処理した成形体を大気雰囲気下、1000℃で焼成し、得られたチタン酸ジルコン酸鉛系焼結体を、鉛雰囲気調整用の粉体と共にマグネシアセラミックスからなる半密閉容器中に入れたまま加圧・加熱室に入れ、20体積%の酸素を含んだアルゴンガスを充填し、2000kgf/cmの圧力で、1100℃で焼結することにより、表2に示す試料Pのチタン酸ジルコン酸鉛系焼結体からなるアクチュエータ用圧電部材を得た。
そして、得られたチタン酸ジルコン酸鉛系焼結体について、焼結体の相対密度、最大結晶粒子径、最大ボイド径、無研磨状態での焼結体表面における表面粗度、焼結体内部におけるボイド率、焼結体表層部と焼結体内部におけるボイド率の差、焼結体の4点曲げ強度及び圧電定数(d15)、並びに研削加工を施した時の欠け等の有無について調べた。
なお、焼結体の最大ボイド径、焼結体内部のボイド率、焼結体内外におけるボイド率の差の測定については、焼結体に鏡面加工(ダイヤモンド砥粒0〜1μm仕上げ)を施し、ニレコ製LUZEXーFS画像解析装置を用いて、顕微鏡倍率200倍、測定ポイント10ヶ所、測定面積10.0×10μm条件にて画像解析して測定した。
チタン酸ジルコン酸鉛系粒子の最大結晶粒子径については、塩酸にてケミカルエッチングを行ない、金属顕微鏡にて200倍の視野で300μm×300μmの範囲を10ヶ所測定し、その最大径を最大結晶粒子径とした。
無研磨状態での焼結体表面の表面粗度は、JIS B 0601に準拠して測定し、次に電極を形成した時の断線の有無を確認するために、スパッタリングによって、30μmの線幅、0.1μm厚みを有する金属膜を形成し、この金属膜に通電して断線がなかったものを○、断線していたものを×として評価した。
4点曲げ強度については、JIS R1601−1995に準拠し、圧電定数(d15
)については、EMAS−6005に準じて行った。
さらに、研削加工による欠けやチッピングの有無を確認するため、厚み100μmのダイヤモンドブレードを用いて、200μmピッチでダイシングを行い、幅100μm、深さ350μmの溝を300本形成し、カケやチッピングの発生が見られないものを○、カケやチッピングが発生したものを×として評価した。それぞれの条件及び結果は表1及び表2に示す通りである。
Figure 0005132728
Figure 0005132728
この結果、従来例である試料Pは、緻密化されているものの、最大ボイド径が10μmを超え、また焼結体表層部と焼結体内部におけるポイド率の差が1%を超えているため、アクチュエータ用圧電部材として用いるには焼結体表層部を研削する必要があり、さらに研削加工を施すと欠けやチッピングが発生した。
また、焼成時に半密閉容器の材質としてアルミナセラミックスを用いた試料G,Lでは、チタン酸ジルコン酸鉛系焼結体との反応が見られ、この焼結体をアクチュエータ用圧電部材として用いるには焼結体表層部を研削加工にて除去する必要があった。
一方、試料Aは、表1に見られるように、チタン酸ジルコン酸鉛系合成粉体の平均粒径が0.7μmより大きく、粒子の標準偏差が0.2を超え、さらにBET比表面積が5m/g未満であるため、焼結体とした時には焼結体内部のボイド率が1%を超え、焼結体の密度が理論密度の98%未満と緻密化が不十分であった。その為、圧電定数(d15)が600pm/V未満と低く、また、研削加工を施すと欠けやチッピングが発生した。しかも焼結体表層部と焼結体内部におけるボイド率の差も1%を超え大きいため、アクチュエータ用圧電部材として用いるには焼結体表層部を研削する必要があった。その上、無研磨状態での焼結体表面が粗いため、その表面上に微少幅の金属膜を形成すると断線した。
また、試料Dは、焼成時の酸素濃度が低いため、焼結体とした時には焼結体内部のボイド率が1%を超え、焼結体の密度が理論密度の98%未満と緻密化が不十分であった。その為、圧電定数(d15)が600pm/V未満と低く、また、研削加工を施すと欠けやチッピングが発生した。しかも焼結体表層部と焼結体内部におけるボイド率の差も1%を超え大きいため、アクチュエータ用圧電部材として用いるには焼結体表層部を研削する必要があった。
これに対し、試料B,C,E,F,H〜K,M〜Oは、いずれもチタン酸ジルコン酸鉛系合成粉体の平均粒径が0.4〜0.7μm、粒子の標準偏差が0.2以下、BET比表面積が5〜13m/gの範囲にあり、焼成時にはマグネシアセラミックス又はジルコニアセラミックスの半密閉容器を用いて焼成炉内の酸素濃度を25体積%以上としてあることから、焼結体とした時には、焼結体内部のボイド率を10%以下、焼結体の密度を理論密度の98%以上と充分に緻密化することができ、600pm/V以上の高い圧電定数(d15)を得ることができるとともに、焼結体中の最大ボイド径を10μm以下とできるため、研削加工を施しても欠けやチッピングを生じることがなかった。しかも、最大結晶粒子径が10μm以下で、無研磨状態での焼結体表面を中心線平均粗さ(Ra)で0.3μm以下とできるため、無研磨状態での焼結体表面に直接金属膜を被覆しても断線は見られないというように優れていた。

Claims (1)

  1. チタン酸ジルコン酸鉛系焼結体からなるアクチュエータ用圧電部材において、前記焼結体の密度が理論密度の98%以上、最大結晶粒子径が10μm以下、最大ボイド径が10μm以下であるとともに、無研磨状態での前記焼結体表面における表面粗度が中心線平均粗さ(Ra)で0.3μm以下であり、前記焼結体表面から100μmまでの深さを焼結体表層部、それ以外を焼結体内部とした時、該焼結体内部におけるボイド率が1.0%以下でかつ焼結体表層部と焼結体内部におけるボイド率の差が1.0%以下であることを特徴とするアクチュエータ用圧電部材。
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