JP5131849B2 - 回転多刃工具の切れ刃の精密加工法 - Google Patents
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Description
図1は、X線ミラーのホログラム光学素子の加工モデルを模示するもので、(a)は、回転多刃工具でX線ホログラム光学素子を切削加工している状態を示す斜視図、(b)は、回転多刃工具の中の一つの切れ刃による加工の様子を示す斜視図、(c)は、切れ刃の先端の拡大図、(d)は、光学素子断面の拡大図を示している。
本発明者は単結晶ダイヤモンド切れ刃を用いた回転多刃工具の開発を行っており、その関係で以下においてダイヤモンド切れ刃を例にして記載することがあるが、他の工具についても同様である。
従来、回転台金の外周端面に刃部を有する工具において、刃部に平均粒径の揃った単層の超砥粒を金属メッキにより固着し、固着された各超砥粒の所定基準線に対するばらつきを±5μm以内にした回転多刃工具が知られている(以下、従来技術という。例えば、特許文献1参照。)。
これを解決するためには、次の代表的な3つの方法が考えられる。
1.先に形状加工した切れ刃をサブミクロン精度で刃先を揃えて台座に接着する。
2.台座に切れ刃を取り付けた後、台座ごと高さをピエゾ等で位置を制御する。
3.多刃工具を軸に取付け後に、最外周切れ刃を特定して最外周切れ刃の研磨加工を繰り返して切れ刃高さを揃える。
本発明は、上記「3.」に関するもので、回転多刃工具において、各切れ刃に固有の周期的な溝を付け、加工条痕から最外周切れ刃の特定と目標加工量を定め、加工することを順次繰り返すことにより、回転多刃工具の切れ刃の回転中心からの寸法の差を小さくすることのできる精密加工法を提供することを目的とする。
(1)回転多刃工具の切れ刃の高さの差をサブミクロンに調整することができる。
(2)被加工物の鋸刃状の谷底幅が狭くなりシャープに加工することができる。
(3)複数の切れ刃が実際の加工に寄与するので加工時の振動を抑制することができる。
図4において、(イ)は端面、(ロ)は周面、(ハ)はすくい面、(ニ)は端面切れ刃角、(ホ)は周面切れ刃角、(ヘ)は端面逃げ角、(ト)は周面逃げ角、(チ)は端面稜線、(リ)は周面稜線である。
図4の切れ刃1では、周面(ロ)と端面(イ)の有る場合を示しているが、周面(ロ)だけの工具や端面(イ)のみの工具もある。
切れ刃1の加工は、端面稜線(チ)と周面稜線(リ)までの回転中心からの高さを揃えるために端面(イ)が高い切れ刃の端面(イ)と、周面(ロ)が高い切れ刃の周面(ロ)を研磨加工するものである。
すなわち、一番高い切れ刃の特定を行い、該特定された一番高い切れ刃の目標加工量を求め、一番高い切れ刃を目標加工量+余剰加工量β(以下単に「β」と記す場合がある。)で順次研磨加工を繰り返すことにより切れ刃高さを揃える。
対象とする切れ刃1の端面稜線(チ)と周面稜線(リ)を高精度の直線に研磨加工した後に、レーザー等で端面稜線(チ)および周面稜線(リ)に大小の櫛刃状の溝を周期的に入れる。この場合、溝は、大溝あるいは小溝のみであってもよい。その後、切れ刃高さを、回転多刃工具を装着した軸を回転させずに計測を行い、切れ刃の高さを揃える加工を行う。櫛刃のパターン(周期)は個々の切れ刃ごとに異なったものとする。
1枚の櫛刃だけで加工すると加工面に櫛刃の谷の部分が加工面の盛り上がりとなって残り加工面粗さを悪化させる。複数の櫛刃を周期を変えて設置することにより櫛刃の谷による加工面の悪化を防いでいる。
図5に、切れ刃1の周面稜線(リ)の拡大図を示す。端面稜線(チ)も同様であるが、説明の都合上、周面稜線(リ)を例に説明する。図5に示す櫛刃状の溝は、三角形状の大溝2(ここではレーザー加工による三角形状を例示しているが四角形状等であってもよい。)が1つと小溝3が2つの組み合わせの繰り返しになっている。
図6に1周期の櫛刃の寸法モデルを示す。右側の大溝2の手前までが1周期である。左側の大溝2の左端から該大溝2および小溝3、3の谷底までの距離をA、B、C、周期をDとするとこの切れ刃1には、大溝2と小溝3、3および丘にあたる小切れ刃部4、5、6を持つ。
図7に、8枚の切れ刃により構成されている回転多刃工具を想定して、周面稜線(リ)の稜線拡大図を表すところの8枚の櫛刃モデルを示す。図7は、次の周期の大溝3を含む1周期+αの切れ刃モデルを示すものであって、大溝2、小溝3および丘4、5、6の寸法の組み合わせを変えている。
櫛刃加工の周期例の一つの方法として、2進数のみので周期を変更する方法、あるいは、全体の周期を変更する方法がある。また、これらの方法を複合して採用しても良いし、どちらか一方を採用しても良い。図8の例では2進数と全体の周期を複合して採用している。
図9に、櫛刃を設けた回転多刃工具を用いて無酸素銅など形状転写製の良い試料7を切削加工した時の加工面のモデルを示す。加工面8には回転多刃工具の多くの切れ刃が関与している。加工面の一番低い谷の幅が最外周切れ刃による加工面になっている。
図10の加工面8の形状から最外周切れ刃の目標加工量Eを求める。目標加工量Eは加工面8の一番低い面と高い山までの高さの差として求められる。
図10では、回転中心からの距離は測定器の分解能が十分に高く、同一の高さの切れ刃は存在しない事を前提としている。
万一、2つの切れ刃の中心からの距離が測定器の分解能以上に同一の場合、2つの大溝の周期の最小公倍数から2枚の外周切れ刃の同定は可能になる。この場合2枚の最外周切れ刃の加工量を変化させて加工して切れ刃高さを変化させる必要がある。
高さを揃える目的と一見矛盾している様に思えるが、2枚以上の切れ刃が測定器の分解能以上に高さが揃った場合や、2枚の切れ刃で最小公倍数で求められない場合は、全ての切れ刃の加工量を変えて加工する。加工量は加工工程の目標精度の範囲内にする。例えば0,0.1,0.2,0.3,…μmこのようにして櫛刃高さが揃い最外周切れ刃の特定不能を回避する。
最外周切れ刃を目標加工量Eよりβ程度多く研磨加工する。β程度多く加工する目的は、(1)切れ刃高さが揃うことを防止するため、(2)切れ刃の高さを早く収束させるためである。βの値は作業者が任意に決める。また各加工で一定である必要はない。
加工と最外周切れ刃の特定を繰り返し、徐々に切れ刃の高さの差を少なくすることで切れ刃高さを高精度に揃える事を目指す。
表1に、櫛刃による加工精度の向上モデルを示す。
単結晶ダイヤモンドの研磨は砥粒径分布の大きい方で示すと4、2、0.5、0.1μmの4工程で仕上げている。表1では、各工程で目標とする全ての切れ刃の高さの差を目標精度として表している。本手法では4μmの粗加工では加工能率が良いが寸法の制御が困難なのに対して、0.1μmの極微粒による仕上げ加工では寸法制御は容易であるが加工能率は非常に悪い。なるべく若い工程で切れ刃群の回転中心からの距離の差を小さくして次の工程に移るのが好ましい。
最外周切れ刃が特定され加工するとき、切れ刃と目標加工量の+βの数値を記録しておき全ての切れ刃を加工した後は、次の工程に進む。βを記録することで切れ刃の高さの差を推定できる。目指す精度まで加工して加工は終了する。
実用では10nmまでの精度を必要としない場合が多い。
2 大溝
3 小溝
4 切れ刃の丘
5 切れ刃の丘
6 切れ刃の丘
7 試料
8 加工面
10 櫛刃
11 櫛刃
12 櫛刃
14 加工面の山
15 加工面の谷
16 加工面の山
17 加工面の谷
18 加工面の山
19 加工面の谷
Claims (1)
- 回転多刃工具の各切れ刃の周面稜線または端面稜線に各切れ刃によってパターンの異なる櫛刃状の溝を形成し、この回転多刃工具を用いて試料を切削加工し、加工面の一番低い谷の幅のパターンから最外周切れ刃を特定し、該特定された最外周切れ刃に対して加工面の一番低い谷と一番高い山との差分に、任意の余剰加工量βを加えた分だけ加工するという作業を順次繰り返すことにより切れ刃高さを高精度に揃えることを特徴とする回転多刃工具の切れ刃の精密加工法。
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