JP5130483B2 - 石炭灰を溶融した高炉スラグの水砕方法 - Google Patents
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Description
一方、石炭灰は、石炭火力発電所から発生し、埋立処理がなされているものがあり、資源リサイクルの観点から、有効利用技術の確立が強く望まれているものである。
例えば、特許文献1には、高炉から排出される溶融スラグに石炭灰を添加した後、この溶融スラグの凝固処理を行って、ガラス化率を30%を超え80%未満とした骨材の製造方法が提案されている。このように、溶融スラグに石炭灰を添加することで、溶融スラグの粘性を低下でき、その結果、溶融スラグ中の溶存ガス量を低減し、生成した気泡の合体排出を促進できるため、含まれる気孔を低減させた骨材を製造できる。
例えば、JIS A 1109(高炉スラグ細骨材)に記される吸水率測定方法に準拠して、対象物の吸水率を測定した場合、吸水率3.5質量%以下のものを、骨材として使用できることが規定されている。しかし、一般には、吸水率が3.5質量%以下を満足する骨材であっても、吸水率のばらつきが小さいものほど、品質が良いとされる場合がある。
図2に示す●印及び△印はともに、石炭灰を吹き込み溶融させた溶融高炉スラグから製造した水砕スラグの吸水率と、石炭灰添加率との関係を示している。なお、石炭灰添加率は、石炭灰添加量(トン)を溶融スラグ量(トン)で除した値である。
図2から明らかなように、水砕スラグの吸水率は、JISで規定された吸水率3.5質量%以下を満足するものであるが、そのばらつきは、石炭灰添加率の大小に相関性が無く、0.6〜1.8質量%の範囲で発生している。このような、吸水率のばらつきは、水砕スラグを骨材として使用するに際して、改善の余地があるといえる場合がある。
前記スラグ鍋に貯留された30トン以上100トン以下の前記溶融高炉スラグを、前記スラグ鍋の上部に形成した高さ200mm以上かつ幅50mm以上1000mm以下の注ぎ口から注ぎ出す。
本発明に係る石炭灰を溶融した高炉スラグの水砕方法において、前記溶融高炉スラグには、前記石炭灰を含む添加物が溶融され、しかも該添加物中の全鉄量が該添加物の11質量%以下であることが好ましい。
また、スラグ鍋の上部に注ぎ口を形成し、その高さを200mm以上とするので、注ぎ口が形成されていない場合、及びその高さが低い場合と比較して、注ぎ口から注ぎ出される溶融高炉スラグの温度を高めることができる。また、注ぎ口の幅を規定することで、例えば、注ぎ口の閉塞等が生じることなく溶融高炉スラグの安定した注ぎ出しが可能になる。
このように、溶融高炉スラグの温度低下を抑制することで、これに起因する吸水率のばらつきを抑制して、良好な品質の骨材を製造でき、しかも資源リサイクルにも寄与できる。
請求項3記載の石炭灰を溶融した高炉スラグの水砕方法は、添加物中の全鉄量を添加物の11質量%以下としているので、溶融高炉スラグに溶融させる添加物、特に従来石炭火力発電所から発生している石炭灰の種類のほとんどを溶融処理でき、資源リサイクルに更に寄与できる。
ここで、図1(A)は本発明の一実施の形態に係る石炭灰を溶融した高炉スラグの水砕方法に使用するスラグ鍋の部分拡大正面図、(B)は同スラグ鍋を傾動させたときのスラグ鍋の部分拡大側断面図、図2は水砕スラグの吸水率と石炭灰添加率との関係を示す説明図、図3は溶融スラグの固相率の温度依存度と全鉄量との関係を示す説明図、図4はスラグの温度とスラグ表面からの距離との関係を示す説明図である。
まず、図1(A)に示す高さHの注ぎ口12が形成されたスラグ鍋11を使用して水砕スラグを製造し、水砕スラグの吸水率と石炭灰(フライアッシュ)添加率との関係を調査した結果を図2に示す。なお、前記したように、図2の縦軸の水砕スラグの吸水率は、JIS A 1109に記される吸水率測定方法に準拠して求めた値であり、横軸の石炭灰添加率は、石炭灰添加量(トン)を溶融スラグ量(トン)で除した値である。
即ち、●印は、酸化鉄ダスト(全鉄量で8.5質量%以上、ここでは、16〜17質量%)を添加した溶融スラグを、高さHが120mmの注ぎ口から注ぎ出し、水砕して得られた水砕スラグの吸水率である。
また、△印は、酸化鉄ダストが添加されていない溶融スラグを、高さHが300mmの注ぎ口から注ぎ出し、水砕して得られた水砕スラグの吸水率である。
酸化鉄ダストを添加した場合、石炭灰添加後の溶融スラグの固液共存領域(例えば、1300℃以上1350℃未満)の固相率の温度依存性が小さくなるので、固相が晶出する際の気泡排出のコントロールが容易になる。しかし、このような前提があっても、水砕スラグの吸水率が0.6〜1.8質量%の範囲となるように、水砕スラグの気泡体積率がばらついている。
図3において、●印のように、酸化鉄ダストの全鉄量が16〜17質量%の場合、固相率のばらつきが少ない領域、即ち気泡排出が比較的安定した状態で水砕できるが、このような前提があっても、図2に示す水砕スラグの吸水率がばらついている。
以上のことから、前記した水砕条件の1つである酸化鉄ダストの有無は、●印と△印の吸水率のばらつきの差を拡大することにつながるという結果が得られたため、他の水砕条件であるスラグ鍋の注ぎ口の高さが、吸水率のばらつきの差の低減に極めて大きな影響を持つことが分かった。
同様に、注ぎ口の高さHが300mmの場合、図4に示す横軸の260〜290mmの範囲の溶融スラグ10がスラグ鍋11の外へ流出することになる。このとき、流出する溶融スラグの平均温度は1330℃となる。
ここで、前記した図3のT−Fe量が11質量%以下の範囲(石炭灰に酸化鉄ダストを添加することなく、石炭灰に含まれるT−Feの最大値を考慮した範囲)では、縦軸の(固相率変化/スラグ温度変化)が、約1〜1.8に相当する。これに、上記した溶融スラグの平均温度の温度差である15℃を乗ずると、固相率変化が15〜27%となる。
また、前記した図3のT−Fe量が10〜20質量%(石炭灰に酸化鉄ダストを添加する場合)で、●印の平均である16〜17質量%においては、図3の縦軸が0.9程度であり、上記した溶融スラグの平均温度の温度差である15℃を乗ずると、固相率変化が13.5%となる。
従って、前記した図3の吸水率のばらつきの差(●印と△印の吸水率のばらつきの差)は、上記した固相率の差と推定できる。以下にその理由を示す。
溶融スラグの温度低下に伴い、液体の溶融スラグ中に固相が晶出し、溶融スラグに溶存している一酸化炭素ガスや窒素ガスの気泡が、溶融スラグ中に生成するため、溶融スラグの水砕時の気泡原因となる溶存ガス量が低減する。しかし、溶融スラグの温度低下が著しい場合、晶出した固相に、生成した気泡が付着し、逆に水砕スラグ中に気泡として残留する場合があるものと考えられる。このため、水砕時の固相率には最適値があるものと考えられる。
一方、注ぎ口の高さHが300mmの場合は、120mmの場合に比べ、固相の晶出が進まないため、120mmの場合に比べて溶存ガス量の低減は望めないものの、スラグ鍋内の凝固スラグ直下の気泡の集積は少ないものと推定される。このため、注ぎ出される溶融スラグへの気泡の混入は抑制され、図2の△印のように、吸水率のばらつきが小さい水砕スラグが得られるものと推定される。
なお、前記したように、水砕時の溶融スラグの温度差が15℃程度発生すれば、この温度差が吸水率のばらつきに影響するが、逆に15℃程度であれば、溶融スラグの注ぎ出しの温度制御(例えば、保温対策による注ぎ出し温度の向上、バーナー等での加熱による注ぎ出し温度の向上、等)を実施できるのではないかとも考えられる。
しかし、スラグ鍋から溶融スラグを注ぎ出して水砕する場合、多量の水蒸気等が発生するため、このような環境下で、注ぎ出される溶融スラグの温度を測定することは困難である。また、温度測定を伴わない単なるバーナー加熱等の手段を講じれば、逆に溶融スラグの温度のばらつきが大きくなり、その結果、製造した水砕スラグの吸水率を安定する効果が得られない。
以上のことから、スラグ鍋11から注ぎ出される溶融スラグ10の温度を向上するには、溶融スラグ10を保温したり加熱したりすることに比べて、スラグ鍋11の注ぎ口12の高さHを所定の高さ以上にして、溶融スラグ10の温度を高めることが、技術的に最も実現し得る手段であると考えられた。
図1(A)、(B)に示すように、スラグ鍋11に、フライアッシュを溶融させた溶融高炉スラグ10を貯留する。
使用するスラグ鍋11は、30トン以上100トン以下の溶融高炉スラグを貯留できるものであり、その上部には、溶融高炉スラグ10の注ぎ口12が形成されている。
この注ぎ口12は、スラグ鍋11の上方へ向けて開口(切欠き状に形成)しており、正面視して、長方形となっている。なお、注ぎ口は、例えば、正方形、三角形、又は楕円形でもよく、また角形の角部に丸みを形成したものでもよい。また、注ぎ口は、スラグ鍋の上方へ向けて開口した状態に形成しているが、スラグ鍋の高さ方向途中位置に、貫通孔を形成して設けてもよい。更に、注ぎ口は、スラグ鍋の側壁を上方へ延設(増設)し、この延設した側壁に形成してもよい。
水砕スラグの吸水率のばらつき範囲は、前記した図2の結果からも分かるように、1.0質量%程度で一定の改善効果があるものとみなすことができる。この図2においては、注ぎ口の高さを300mmとした場合に、ばらつき範囲を0.6質量%まで低減できることを確認できた。
そこで、1.0質量%以下のばらつき範囲を実現できる注ぎ口の高さを種々検討したところ、注ぎ口の高さHを200mmとした場合でも実現できる結果が得られたため、高さの下限を200mm(好ましくは250mm、更に好ましくは270mm)とした。
これらを勘案すると、注ぎ口の高さHは500mmが上限になると考えられる。しかし、溶融スラグは、約1400℃から固相が晶出し始め、石炭灰を添加する場合は、1370〜1400℃で固相の晶出が始まるため、スラグ温度が図4の縦軸で1400℃以下となるような、横軸の値を選定するとよい。この考え方では、注ぎ口の高さHの上限が1200mmとなる。
このように、注ぎ口12の高さHの上限は、スラグ貯蔵量や側壁強度の観点から決定する。
なお、上記した注ぎ口の高さHは、スラグ鍋を、その軸心を鉛直方向となるように安置した(傾動させない)場合、注ぎ口の底(下端)位置が、スラグ鍋内の溶融スラグ(凝固スラグ)の上面位置と同位置、又はその上面位置よりも上方となるように形成している。
注ぎ口の幅Wが50mm未満の場合、その幅が狭過ぎるため、スラグ鍋内の溶融スラグの表層に形成された凝固スラグの断片が、注ぎ口を閉塞する恐れがある。一方、注ぎ口の幅Wの上限は、水砕設備の水噴射能力にもよるが、一般的な水砕設備では1000mm程度まで対応できる。
以上のことから、注ぎ口12の幅Wを50mm以上1000mm以下としたが、下限を100mm、上限を900mm、更には800mmとすることが好ましい。
スラグ鍋に貯留する溶融スラグ量が30トン未満の場合、スラグ鍋内で凝固したスラグ表面からの放射冷却の影響が大きくなり、またスラグ鍋内のスラグの深さ(図4の横軸)も浅いものとなる。このため、この場合の温度勾配と、図4に示す温度勾配との乖離が大きくなるため、本発明の構成が異なるものとなる。
一方、溶融スラグ量が100トンを超える場合、水砕処理に長時間を要し、スラグ鍋内の温度勾配が大きく変動するため好ましくない。また、スラグ鍋の単位傾動角度変化量に対する溶融スラグの注ぎ出し量の変化量が大きくなるため、これによる注ぎ出し量(kg/分)のコントロールが困難となり、そのばらつきが大きくなるため、実用的でない。
従って、スラグ鍋に30トン以上100トン以下の溶融高炉スラグを貯留したが、下限を40トン、上限を90トン、更には80トンとすることが好ましい。
この石炭灰の溶解場所は、スラグ鍋に貯留された溶融スラグに対して吹き込み撹拌することが好ましいが、溶融スラグをスラグ鍋へ搬送する途中(例えば、樋)で、流れる溶融スラグに吹き込んでもよい。
本発明の重要な作用効果は、溶融スラグの溶存ガス量を減少させることにあるが、減少させ過ぎると、前記したように、逆に凝固した水砕スラグに気泡が混入するという恐れがある。
ここで、石炭灰量を1質量%未満とした場合、石炭灰量が少なくなり過ぎ、溶融スラグの粘度低下が図れなくなり、気泡の除去が促進できず、石炭灰を添加しない高炉スラグの水砕品と同程度の気泡混入状況(スラグの吸水率)となる。
なお、石炭灰の添加量が30質量%を超える場合は、詳細な解析が必要であるが、石炭灰の量が増え過ぎ、石炭灰を添加した溶融スラグの融点低下効果が得にくく、従来の水砕方法では、水砕スラグの製造が困難であると考えられる。
以上のことから、石炭灰量は、石炭灰を溶融する前の溶融スラグ量の1質量%以上30質量%以下としたが、下限を3質量%、更には5質量%とし、上限を27質量%、更には25質量%とすることが好ましい。
なお、添加物中の全鉄量は、添加物の11質量%以下とすることが好ましい。
石炭灰を溶融スラグにより多量に溶解するには、前記したとおり、酸化鉄ダストの添加量を低減する(下限を、0.5質量%、更には1質量%)又は添加しない(0質量%)のが好ましい。
そこで、酸化鉄ダストを添加しない石炭灰を前提とすることより、多量の石炭灰を溶融スラグに溶解できる。
なお、前記したように、石炭灰はまれではあるが、全鉄量が5質量%以上11質量%以下のものがあるが、通常1質量%以上2質量%以下であり、高いもので2質量%を超え5質量%未満程度であるので、上限を5質量%、更には3質量%とすることが好ましい。
そして、スラグ鍋11の溶融スラグ10の貯蔵量を大幅に減少させた後に、その軸心を75°まで傾けて水砕処理を完了する。
これにより、溶融スラグの温度を高めることができるので、従来よりも多孔性を改善して吸水率のばらつきを抑制した水砕スラグ、即ちコンクリートに使用可能な骨材を製造できる。
ここでは、高さHが300mm、幅Wが500mmの注ぎ口が形成されたスラグ鍋を使用し、酸化鉄ダストが添加されていない溶融高炉スラグを水砕した。比較例として、高さHが120mm、幅Wが500mmの注ぎ口が形成されたスラグ鍋を使用し、酸化鉄ダストの一例である焼結粉が添加された溶融高炉スラグを水砕した。この結果は、図2中に△印(実施例)と●印(比較例)で示されている。
なお、比較例については、焼結粉を16〜17質量%添加した。
そして、スラグ鍋を傾動して、溶融高炉スラグの水砕を開始した。なお、水砕処理は、スラグ鍋の軸心を15〜40°の範囲で傾け、スラグ鍋のスラグ貯蔵量を大幅に減少させた後、更に75°まで傾けることで完了した。このとき、水砕開始時のスラグ温度の大まかな把握のため、スラグ鍋内の凝固スラグを割砕し、放射温度計にて溶融スラグの表面温度を測定した。その温度範囲は、1280〜1345℃の範囲であった。
従って、本発明の石炭灰を溶融した高炉スラグの水砕方法を使用することにより、従来よりも多孔性を改善して吸水率のばらつきを抑制した水砕スラグ、即ちコンクリートに使用可能な骨材を製造できることを確認できた。
Claims (3)
- 石炭灰を溶融させた溶融高炉スラグを、スラグ鍋から注ぎ出す際に、注ぎ出される該溶融高炉スラグに対して水を噴射し、水砕スラグを製造する石炭灰を溶融した高炉スラグの水砕方法において、
前記スラグ鍋に貯留された30トン以上100トン以下の前記溶融高炉スラグを、前記スラグ鍋の上部に形成した高さ200mm以上かつ幅50mm以上1000mm以下の注ぎ口から注ぎ出すことを特徴とする石炭灰を溶融した高炉スラグの水砕方法。 - 請求項1記載の石炭灰を溶融した高炉スラグの水砕方法において、前記溶融高炉スラグに溶融させた前記石炭灰量は、前記石炭灰を溶融する前の前記溶融高炉スラグ量の1質量%以上30質量%以下であることを特徴とする石炭灰を溶融した高炉スラグの水砕方法。
- 請求項1及び2のいずれか1項に記載の石炭灰を溶融した高炉スラグの水砕方法において、前記溶融高炉スラグには、前記石炭灰を含む添加物が溶融され、しかも該添加物中の全鉄量が該添加物の11質量%以下であることを特徴とする石炭灰を溶融した高炉スラグの水砕方法。
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