JP5129710B2 - トルクセンサ - Google Patents

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Description

本発明は、トーションバーの捻れ角を検出することによりトルクを計測するトルクセンサに関するものである。
トーションバーの捻れ角を検出することによりトルクを計測するトルクセンサとしては、トーションバーの入力軸に、軸方向に延びる磁性体の溝を設けると共に、入力軸を覆うようにトーションバーの出力軸に固定した非磁性導電体の円筒を設けたトルクセンサが知られている(たとえば、特許文献1)。このトルクセンサでは、トーションバーの出力軸に固定した円筒に、トーションバーの捻れに応じて、前記入力軸に設けた溝との重なり具合が変化する窓を設け、当該窓を包囲するように固定的に配置したコイルに生じる自己誘導起電力の大きさを検出する。
また、従来より、金属等の導電体に磁束を印加することにより導電体に生じるうず電流によって、検出コイルにおいて、導電体の大きさや構造に応じた位相変化が生じた磁束が観測されることが知られている(たとえば、特許文献2)。
特開平8-240491号公報 特公昭49-43217号公報
前記特許文献1の技術によれば、トーションバーの捻れを表す量として、トーションバーの捻れの変化に対する変化量が微小な自己誘導起電力の大きさを検出するために、外乱の影響を受けやすいという問題があった。
そこで、このような外乱の影響を廃することのできるトルクセンサとして、本発明者は、先に行った特許出願(特願2007-113770)において、トーションバーの捻れ量に応じて開口面積が変化する窓を通過させた磁束の位相変化より、トーションバーに加わるトルクを検出するトルクセンサを開示した。
しかしながら、その後の研究において、このトルクセンサには、回転速度に依存した誤差が生じることが判明した。
そこで、本発明は、外乱の影響や回転速度に対する依存性を排して、精度良くトルクを検出することのできるトルクセンサを提供することを課題とする。
前記課題達成のために、本発明は、トルクセンサを、トーションバーと、前記トーションバーの一端に固定された、前記トーションバーと同軸状に配置された、非磁性導電体で形成した第1円筒と、前記トーションバーの他端に固定された、前記第1円筒に挿入された形態で、前記トーションバーと同軸状に配置された、非磁性導電体で形成した第2円筒と、測定部とを含めて構成したものである。ただし、前記第1円筒と前記第2円筒とのうちの一方には基準スリットが設けられており、前記第1円筒と前記第2円筒とのうちの前記基準スリットが設けられていない方には、軸方向の位置を異ならせて配置した第1検出用スリットと第2検出用スリットとが設けられており、前記測定部は、前記第2円筒の内周側と前記第1円筒の外周側とのうちの一方側に、前記トーションバーと同軸状に配置した駆動コイルと、前記第2円筒の内周側と前記第1円筒の外周側とのうちの前記駆動コイルが配置されていない方側に、前記トーションバーと同軸状に配置した検出コイルと、前記駆動コイルを交流駆動する駆動回路と、計測回路とを備えたものである。また、前記第1検出用スリットと前記第2検出用スリットとは、各々前記基準スリットと軸方向位置が少なくとも一部重なるように配置され、かつ、前記第1検出用スリットと軸方向位置が重なる基準スリットの部分に対する前記第1検出用スリットの配置と、前記第2検出用スリットと軸方向位置が重なる基準スリットの部分に対する前記第2検出用スリットの配置とは異なっており、前記駆動コイルは、軸方向の位置を異ならせて配置された第1駆動コイルと第2駆動コイルとより構成され、前記検出コイルは、軸方向の位置を異ならせて配置された第1検出コイルと第2検出コイルとより構成され、前記第1駆動コイルと前記第1検出コイルとは軸方向位置が前記第1検出用スリットと少なくとも一部重なるように配置され、前記第2駆動コイルと前記第2検出コイルとは軸方向位置が前記第2検出用スリットと少なくとも一部重なるように配置され、前記計測回路は、前記第1検出コイルに誘起された電圧信号と前記第2検出コイルに誘起された電圧信号の位相差を検出するものである。そして、前記第1駆動コイルと前記第2駆動コイルとは、相互に発生磁束の方向が相互に逆方向となっている。なお、前記基準スリットは、軸方向位置を異ならせて配置した、前記第1検出用スリットと軸方向位置が少なくとも一部重なる第1基準スリットと、前記第2検出用スリットと軸方向位置が少なくとも一部重なる第2基準スリットとに分割して設けるようにしてもよい。
このようなトルクセンサによれば、前記第1駆動コイルと前記第2駆動コイルとで発生磁束の方向を相互に逆方向とすることにより、計測回路の位相差検出における、トーションバーの回転に依存した誤差の発生を抑制できるようになる。
ここで、このようなトルクセンサは、前記トーションバーを、前記計測回路の接地レベルに電気的に接続することも好ましい。
このようにすることにより、トーションバーの回転に依存した誤差の発生を、より抑制できるようになる。
以上のように、本発明によれば、外乱の影響や回転速度に対する依存性を排して、精度良くトルクを検出することのできるトルクセンサを提供することができる。
以下、本発明の実施形態について説明する。
まず、第1の実施形態について説明する。
図1に、本実施形態に係るトルクセンサの構成を示す。
ここで、図1aはトルクセンサの正面を、図1bはトルクセンサの左側面を、図1cはトルクセンサの右側面を、図1dはトルクセンサの断面を、それぞれ模式的に表している。
図示するように、本トルクセンサは、測定対象のトルクが入力側(図1a、dにおける右方)端と出力側(図1a、dにおける左方)端との間の捻れ方向の力として加えられるトーションバー10と、トーションバー10に当該トーションバー10の入力側で固定された入力側筒21と、トーションバー10に当該トーションバー10の出力側で固定された出力側筒22と、第1駆動コイル31と、第2駆動コイル32と、第1検出コイル41と、第2検出コイル42と、測定回路50とを有している。なお、第1駆動コイル31と第2駆動コイル32とは直列に接続されている。
ここで、出力側筒22は、非磁性導電体を用いて形成されており、トーションバー10の入力側の底面が開放された円筒形状を有する。そして、トーションバー10の出力側の底面の中心部分で、トーションバー10の出力側に固定されている。
次に、入力側筒21は、非磁性導電体を用いて形成されており、同軸入れ子状に間隔をあけて配置された二つの両底面の無い中空の円筒形状部である内筒部と外筒部をトーションバー10の出力側端で連結した形状を有する。そして、入力側筒21の内側の円筒形状部である内筒部がトーションバー10の入力側に固定されている。また、入力側筒21は、出力側筒22の内側に、出力側筒22と同軸入れ子状に配置されるように設けられている。
そして、第1検出コイル41と第2検出コイル42は、出力側筒22が中央孔に挿入された配置となるように、トーションバー10の回転軸と同軸状に巻き回した形態で軸方向に並べて設けられている。
また、第1駆動コイル31は、入力側筒21の内筒部と外筒部の間に、トーションバー10の回転軸と同軸状に巻き回した形態で、第1検出コイル41に、入力側筒21の外筒部と出力側筒22の側壁を介して対面するように配置され、第2駆動コイル32は、入力側筒21の内筒部と外筒部の間に、トーションバー10の回転軸と同軸状に巻き回した形態で、第2検出コイル42に、入力側筒21の外筒部と出力側筒22の側壁を介して対面するように配置されている。
そして、第1駆動コイル31と第2駆動コイル32とは、図1dに示すように巻き方向(したがって発生磁束の方向)が、相互に逆向きとなっている。
なお、第1駆動コイル31と第2駆動コイル32は、トルクセンサの全体すなわち静止系に対して固定的に設けてもよいし、入力側筒21と共に回転するように入力側筒21に対して固定して設けるようにしてもよい。また、第1検出コイル41と第2検出コイル42も、静止系に対して固定的に設けてもよいし、出力側筒22と共に回転するように出力側筒22に対して固定して設けるようにしてもよい。
さて、出力側筒22の側壁と入力側筒21の外筒部との、第1駆動コイル31が、第1検出コイル41と対面する箇所と、第2駆動コイル32が、第2検出コイル42と対面する箇所とには、各々複数のスリットが設けられている。
すなわち、図2aに示すように、出力側筒22の側壁には、複数の周方向に並んだスリットである基準スリット61が設けられている。
また、図2bに示すように入力側筒21の外筒部の、第1駆動コイル31が第1検出コイル41と対面する部分には周方向に並んだスリットである第1検出用スリット62が、第2駆動コイル32が第2検出コイル42と対面する部分には周方向に並んだスリットである第2検出用スリット63が設けられている。
そして、図2cに示すように、トルクセンサにおいて、基準スリット61と第1検出用スリット62、基準スリット61と第2検出用スリット63は軸方向位置が少なくとも一部重なり合うように配置されている。また、入力側から出力側を見て時計廻りに進む方向を前方向とし、反時計廻りに進む方向を後方向として、トーションバー10に捻れが生じていない状態では、図2d1に示すように、径方向に見て基準スリット61の後側半分が第1検出用スリット62の前側半分と重なり、基準スリット61の前側半分が第2検出用スリット63の後側半分と重なるように、基準スリット61と第1検出用スリット62と第2検出用スリット63の配置の位相は各々設定されている。
ここで、図2d2は、トーションバー10に捻れが生じていない状態において、第1駆動コイル31と第2駆動コイル32側から、第1検出用スリット62と第2検出用スリット63を介して出力側筒22方向を見たようすを表しており、図示するように、この状態において、基準スリット61と第1検出用スリット62との重なりの量(面積)と、基準スリット61と第2検出用スリット63との重なりの量は等しい。
一方、トーションバー10の捻れが発生すると、基準スリット61と第1検出用スリット62との重なりの量と、基準スリット61と第2検出用スリット63との重なりの量は、大小方向について逆方向に変化する。すなわち、たとえば、トーションバー10に、図2cに矢印で示すような捻れが生じると、図2e1に示すように基準スリット61と第1検出用スリット62との重なりの量は増加し、基準スリット61と第2検出用スリット63との重なりの量は減少し、この状態において駆動コイル31側から、第1検出用スリット62と第2検出用スリット63を介して出力側筒22方向を見たようすは図2e2のようになる。
そして、このような、基準スリット61と第1検出用スリット62との重なりの量と、基準スリット61と第2検出用スリット63との重なりの量との、相互に逆方向の変化に伴って、直列接続した第1駆動コイル31と第2駆動コイル32とを交流信号で駆動したときに、第1検出コイル41、第2検出コイル42で検出される検出信号の位相には、異なる変化が表れる。結果、第1検出コイル41、第2検出コイル42で検出される検出信号の位相には、トーションバー10の捻れ量に応じて異なる変化が表れることになる。
ここで、基準スリット61と第1検出用スリット62との重なりの量、基準スリット61と第2検出用スリット63との重なりの量との、相互に逆方向の変化に伴って、第1検出コイル41、第2検出コイル42で検出される検出信号の位相に異なる変化が表れるのは、次の原理によるものと推定される。
すなわち、直列接続した第1駆動コイル31と第2駆動コイル32とを交流信号で駆動したときに、第1検出コイル41、第2検出コイル42で検出される磁束の成分のうち、出力側22筒の基準スリット61と、入力側筒21の第1検出用スリット62または第2検出用スリット63の双方を通過し出力側筒22と入力側筒21の双方を透過しなかった磁束成分を第1磁束成分、出力側筒22のみを透過した磁束成分を第2磁束成分、入力側筒21のみを透過した磁束成分を第3磁束成分、入力側筒21と出力側筒22の双方を透過した磁束成分を第4磁束成分とする。ここで、以上の第1検出コイル41、第2検出コイル42で検出される第2磁束成分は出力側筒22の透過による位相変化を受けた磁束成分となり、第3磁束成分は入力側筒21の透過による位相変化を受けた磁束成分となり、第4磁束成分は入力側筒21の透過と出力側筒22の透過による位相変化を受けた磁束成分となる。
そして、図2e1に示すように基準スリット61と第1検出用スリット62との重なりの量が増加すると、第1検出コイル41で検出される第1磁束成分の強度は増加し、第2磁束成分と第3磁束成分の強度は減少し、第4磁束成分の強度は増加する。一方、図2e1に示すように、基準スリット61と第2検出用スリット63との重なりの量が減少すると、第2検出コイル42で検出される第1磁束成分の強度は減少し、第2磁束成分と第3磁束成分の強度は増加し、第4磁束成分の強度は減少する。すなわち、トーションバー10の捻れ量に応じて、第1検出コイル41、第2検出コイル42で検出される各磁束成分の強度は逆方向に変化する。
一方、第1検出コイル41、第2検出コイル42で検出される検出信号は、各磁束成分の合成ベクトルを表すものとなり、この合成ベクトルの位相は、各位相の磁束成分の強度比によって変化する。よって、第1検出コイル41で検出される検出信号の位相には基準スリット61と第1検出用スリット62との重なりの量の変化に応じた変化が、第2検出コイル42で検出される検出信号の位相には基準スリット61と第2検出用スリット63との重なりの量の変化に応じた変化が表れ、結果、第1検出コイル41、第2検出コイル42で検出される検出信号の位相には、トーションバー10の捻れ量に応じて異なる変化が表れることになる。ここで、図3は、1.8mm幅のスリットを設けた2mm厚のアルミニウム板を2枚重ね、スリットの重なり量を変化させながら、10kHzの駆動信号で一方側に設けた駆動コイルを駆動して磁束を印加したときに、他方側に設けた検出コイルで検出された検出信号の駆動信号に対する位相を測定した結果301を表したものである。図より、スリットの重なり量の変化に応じた位相変化が検出信号に表れることが分かる。なお、図中302は、以上の原理に基づいた計算値を表している。
さて、このように、第1検出コイル41、第2検出コイル42で検出される検出信号の位相には、トーションバー10の捻れ量に応じて異なる変化が表れるので、第1検出コイル41、第2検出コイル42で検出される検出信号の位相差を測定すれば、トーションバー10の捻れ量を測定することができ、この捻れ量より、トーションバー10に加えられたトルクを算定することができる。
ここで、このような直列接続した第1駆動コイル31と第2駆動コイル32の駆動と、測定を行うのが測定回路50である。
すなわち、図4aに示すように、測定回路50は、発振回路51と、第1差動増幅器52と、第2差動増幅器53と、位相差検出回路54とを有している。そして、発振回路51は、交流の駆動信号を生成して、直列に接続された第1駆動コイル31と第2駆動コイル32に印加して一次磁束を発生し、第1差動増幅器52は第1検出コイル41に誘起起電力によって生じる検出信号を増幅し、第2差動増幅器53は第2検出コイル42に誘起起電力によって生じる検出信号を増幅する。
そして、位相差検出回路54は、第1差動増幅器52が増幅した第1検出コイル41の検出信号と、第2差動増幅器53が増幅した第2検出コイル42の検出信号との位相差を検出する。そして、この位相差検出回路54が検出した位相差の大きさによって、トーションバー10の捻れ量すなわちトーションバー10に加えられたトルクが表されることになる。
ここで、上述のように、第1駆動コイル31と第2駆動コイル32との発生磁束の方向を相互に逆方向とした意義について説明する。
図5a、bに、第1駆動コイル31と第2駆動コイル32との発生磁束の方向を同じとしたときと、逆方向としたときの比較実験結果を示す。
この比較実験結果は、トーションバー10にトルクを加えることなく回転させたときに、位相差検出回路54が検出した位相差出力を、トーションバー10に加えたトルクとトーションバー10の捻じり角とが比例する範囲内の最大トルクを加えた場合の位相差出力FSに対する比率%で表したものである。なお、図5aと、図5bとは、入力側筒21の外筒部と出力側筒22の側壁との間隔とが異なる場合についてのものである。なお、この比例実験は、第1駆動コイル31と第2駆動コイル32の駆動周波数を20kHzとし、スリット数を15、スリット長を6mm、スリット幅を2mmとし、入力側筒21の材質をアルミニウム合金(A5056)、厚みを2mmとし、出力側筒22の材質をアルミニウム合金(A5056)、厚みを2mmとし、入力側筒21と出力側筒22の間隔を0.5mm、入力側筒21と出力側筒22との間の間隙の中央位置までの回転中心軸からの距離(半径)を50mmとして行った。
図示するように、図5aの菱形印、図5bの三角印で示した第1駆動コイル31と第2駆動コイル32との発生磁束の方向を同じとしたときの位相差出力は、回転速度r/minの変化に依存して変化する。一方、図5a、bの四角印で示した第1駆動コイル31と第2駆動コイル32との発生磁束の方向を逆方向としたときの位相差出力は回転速度r/minによらずにほぼ0近くに維持されている。
したがって、この比較実験結果より、第1駆動コイル31と第2駆動コイル32との発生磁束の方向を逆方向とすることにより、トーションバー10の回転に依存した誤差を抑制できることが分かる。
ここで、このように、第1駆動コイル31と第2駆動コイル32との巻き線の巻き方向を逆方向とすることにより、トーションバー10の回転に依存した誤差を抑制できるのは、トーションバー10の回転による電磁気的影響などの、トーションバー10の回転によって増幅される、第1駆動コイル31と第1検出コイル41を含んで構成される第1の磁気回路と第2駆動コイル32と第2検出コイル42を含んで構成される第2の磁気回路との二つの磁気回路間のアンバランスが、第1駆動コイル31と第2駆動コイル32との発生磁束の方向を逆方向とすることにより解消されることによるものと考えられる。
以上、本発明の実施形態について説明した。
なお、以上で説明してきた実施形態では、第1駆動コイル31と第2駆動コイル32を出力側筒22の外周側に設け、第1検出コイル41と第2検出コイル42を入力側筒21の内筒部と外筒部の間に配置するようにしてもよい。また、基準スリット61を入力側筒21に、第1検出用スリット62と第2検出用スリット63を出力側筒22に設けるように構成してもよい。また、入力側筒21をトーションバーの出力側に、出力側筒22をトーションバーの入力側に固定するようにしてもよい。
また、以上で説明してきた実施形態では、前述のように第1駆動コイル31と第2駆動コイル32の巻き線の巻き方向を逆方向とすることにより、発生磁束の方向を逆方向としたが、これは、図4bに示すように、1駆動コイル31と第2駆動コイル32の巻き線の物理的な巻き方向は同じとしつつ、発振回路51から加える駆動信号の向きを逆とすることにより発生磁束の方向を逆方向とするようにしてもよい。
また、以上の実施形態においては、基準スリット6を、図2f1に示すように、第1検出用スリット62と軸方向位置が少なくとも一部重なる部分と、第2検出用スリット63と軸方向位置が少なくとも一部重なる部分とを分割して、二列に径方向に並んだ形態で設けるようにしてもよい。また、この場合には、基準スリット6の第1検出用スリット62と軸方向位置が少なくとも一部重なる部分と、第2検出用スリット63と軸方向位置が少なくとも一部重なる部分とは、図2f2に示すように径方向にずらして配置するようにしてもよい。
また、以上の実施形態においては、トーションバー10に捻れが生じていない状態のみにおいて、または、トーションバー10の捻れが生じた状態のみにおいて、または、トーションバー10に捻れの如何に関わらずに、第1検出用スリット62と第2検出用スリット63が、径方向に見て基準スリット61と重ならないように構成するようにしてもよい。但し、第1検出用スリット62と第2検出用スリット63の、基準スリット61に対する周方向の配置は異ならせるようにする。
図2g1は、トーションバー10の捻れの如何によらず、第1検出用スリット62と第2検出用スリット63が、径方向に見て基準スリット61と重ならないように構成した場合を示しており、この場合には、トーションバー10に捻れに応じて、図2g2に示すように、第1検出用スリット62の基準スリット61に対する周方向の距離と、第2検出用スリット63基準スリット61に対する周方向の距離とに異なった変化が現れる。
したがって、このようにした場合でも、第1検出コイル41で検出される前述した第1磁束成分の強度と第2磁束成分の強度と第3磁束成分の強度との組み合わせと、第2検出コイル42で検出される第1磁束成分の強度と第2磁束成分の強度と第3磁束成分の強度との組み合わせは、トーションバー10に捻れ量に応じて異なったものとなるので、このようにしても測定回路50において、トーションバー10に捻れ量を検出できることになる。
また、以上の実施形態においては、第1駆動コイル31と第2駆動コイル32との発生磁束の方向を相互に逆方向とすると共に、トーションバー10を、測定回路50の接地レベルに接続することも好ましい。
ここで、トーションバー10を測定回路50の接地レベルへの接続は、たとえば、図6aに示すように、トーションバー10の両端側でトーションバー10を回動可能に支持する、潤滑材として導電性グリースが用いたベアリング110を設けて、トーションバー10とベアリングの外輪を導電させると共に、このベアリング110の外輪を測定回路50の接地レベルに接続することにより実現することができる。または、図6bに示すように、トーションバー10に対してスリップリング120を設け、スリップリング120を介してトーションバー10の電位レベルを接地レベルに接続するようにしてもよい。
このように、トーションバー10を測定回路50の接地レベルに接続することにより、図6cの、トーションバー10を測定回路50の接地レベルに接続しなかったときと、トーションバー10を測定回路50の接地レベルに接続したときの比較実験結果を示されるように、トーションバー10の回転に依存した誤差を、さらに抑制することができる。
すなわち、図6cの比較実験結果は、トーションバー10にトルクを加えることなく回転させたときの、位相差検出回路54が検出した位相差出力を、トーションバー10に加えたトルクとトーションバー10の捻じり角とが比例する範囲内の最大トルクを加えた場合の位相差出力FSに対する比率%で表したものであり、図示するように、菱形印で示したトーションバー10を測定回路50の接地レベルに接続しなかったときの位相差出力は、回転速度r/minの変化に依存して比較的大きく変化する。一方、四角印で示したトーションバー10を測定回路50の接地レベルに接続したときの位相差出力は回転速度r/minによらずに、より0近くに維持されている。なお、この比較実験は、第1駆動コイル31と第2駆動コイル32の駆動周波数を20kHzとし、各スリットのスリット数を10、スリット長を6mm、スリット幅を2mmとし、入力側筒21の材質をアルミニウム合金(A5056)、厚みを2mmとし、出力側筒22の材質をアルミニウム合金(A5056)、厚みを2mmとし、入力側筒21と出力側筒22の間隔を0.5mm、入力側筒21と出力側筒22との間の間隙の中央位置までの回転中心軸からの距離(半径)を50mmとして行った。
したがって、この比較実験結果より、トーションバー10を測定回路50の接地レベルに接続することにより、さらにトーションバー10の回転に依存した誤差を抑制できることが分かる。
ここで、このように、トーションバー10を測定回路50の接地レベルに接続することにより、トーションバー10の回転に依存した誤差を抑制できるのは、やはり、トーションバー10の回転による電磁気的影響などの、トーションバー10の回転によって増幅される、第1駆動コイル31と第1検出コイル41を含んで構成される第1の磁気回路と第2駆動コイル32と第2検出コイル42を含んで構成される第2の磁気回路との二つの磁気回路間のアンバランスが、トーションバー10の電位レベルを測定回路50の接地レベルに接続することにより解消されることによるものと考えられる。
本発明の実施形態に係るトルクセンサの構成を示す図である。 本発明の実施形態に係るトルクセンサの構成を示す図である。 本発明の実施形態に係るスリットの重なり幅と位相変化の関係の例を示す図である。 本発明の実施形態に係るトルクセンサの測定回路の構成を示す図である。 本発明の実施形態に係るトルクセンサの比較実験結果を示す図である。 本発明の実施形態に係るトルクセンサの他の構成例を示す図である。
符号の説明
10…トーションバー、21…入力側筒、22…出力側筒、31…第1駆動コイル、32…第2駆動コイル、41…第1検出コイル、42…第2検出コイル、50…測定回路、51…発振回路、52…第1差動増幅器、53…第2差動増幅器、54…位相差検出回路、61…基準スリット、62…第1検出用スリット、63…第2検出用スリット、110…ベアリング、120…スリップリング。

Claims (3)

  1. トーションバーと、
    前記トーションバーの一端に固定された、前記トーションバーと同軸状に配置された、非磁性導電体で形成した第1円筒と、
    前記トーションバーの他端に固定された、前記第1円筒に挿入された形態で、前記トーションバーと同軸状に配置された、非磁性導電体で形成した第2円筒と、
    測定部とを有し、
    前記第1円筒と前記第2円筒とのうちの一方には基準スリットが設けられており、
    前記第1円筒と前記第2円筒とのうちの前記基準スリットが設けられていない方には、軸方向の位置を異ならせて配置した第1検出用スリットと第2検出用スリットとが設けられており、
    前記測定部は、
    前記第2円筒の内周側と前記第1円筒の外周側とのうちの一方側に、前記トーションバーの回転軸と同軸状に配置した駆動コイルと、
    前記第2円筒の内周側と前記第1円筒の外周側とのうちの前記駆動コイルが配置されていない方側に、前記トーションバーの回転軸と同軸状に配置した検出コイルと、
    前記駆動コイルを交流駆動する駆動回路と、
    計測回路とを有し、
    前記第1検出用スリットと前記第2検出用スリットとは、各々前記基準スリットと軸方向位置が少なくとも一部重なるように配置され、かつ、前記第1検出用スリットと軸方向位置が重なる基準スリットの部分に対する前記第1検出用スリットの周方向の配置と、前記第2検出用スリットと軸方向位置が重なる基準スリットの部分に対する前記第2検出用スリットの周方向の配置とは異なっており、
    前記駆動コイルは、軸方向の位置を異ならせて配置した第1駆動コイルと第2駆動コイルとより構成され、
    前記検出コイルは、軸方向の位置を異ならせて配置した第1検出コイルと第2検出コイルとより構成され、
    前記第1駆動コイルと前記第1検出コイルとは軸方向位置が前記第1検出用スリットと少なくとも一部重なるように配置され、前記第2駆動コイルと前記第2検出コイルとは軸方向位置が前記第2検出用スリットと少なくとも一部重なるように配置され、
    前記計測回路は、前記第1検出コイルに誘起された電圧信号と前記第2検出コイルに誘起された電圧信号の位相差を検出し、
    前記第1駆動コイルと前記第2駆動コイルとは、相互に発生磁束の方向が相互に逆方向となっていることを特徴とするトルクセンサ。
  2. 請求項1記載のトルクセンサであって、
    前記基準スリットは、軸方向位置を異ならせて配置した、前記第1検出用スリットと軸方向位置が少なくとも一部重なる第1基準スリットと、前記第2検出用スリットと軸方向位置が少なくとも一部重なる第2基準スリットとより構成されていることを特徴とするトルクセンサ。
  3. 請求項1または2記載のトルクセンサであって、
    前記トーションバーは、前記計測回路の接地レベルに電気的に接続していることを特徴とするトルクセンサ。
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