JP5125360B2 - 熱転写シート、及び熱転写記録材料 - Google Patents
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Description
すなわち、近年、熱転写プリンターの印字速度の高速化が進むにしたがって、充分な印画濃度が得られないという問題が出てきている。プリンターを高速化しても、充分な印画濃度を出すために、単位時間当たりにヘッドにかける電圧が増えている。その結果、単位時間当たりに熱転写シートにかかるにエネルギーが増え、染料層の熱融着が起こりやすくなっている。そのため、従来開示されていたようなポリビニルアセタール樹脂のままでは、高速プリンターを用いることが難しく、高エネルギーがかかっても剥離可能な、離型性能が向上した熱転写シートが要求されている。
一方、熱転写方法による受像シートの具体的な用途が多岐にわたるようになってきた中、従来受像シートに用いられてきた受容層とは異なる材料の受容層を使用する要求が出てきている。例えば、各種カード用途においては、従来はポリ塩化ビニル(PVC)が主として受容層として用いられてきたが、環境への配慮から、焼却処理時に塩素や塩化水素などの有害ガスを発生しない材料への代替が求められている。このような代替材料として、例えばポリ乳酸や非結晶性のポリエチレンテレフタレート共重合体等のポリエステルを用いると、受容層がポリ塩化ビニルであった場合には熱融着を起こさなかった染料層であっても、激しく熱融着を起こすようになる。そのため、熱融着を起こしやすい受容層に対しても印画可能で、離型性の良好な熱転写シートが求められている。
本発明の熱転写記録材料は、印字速度の高速化に対応しながら、印画における熱転写シートの染料層と被転写体との異常転写や熱融着が防止され、且つ、基材シートと染料層の密着性や保存安定性が良く、印画濃度に優れ、印画の色むらも防止されるという効果を奏する。
これにより、当該染料層は、熱転写時に染料層と熱転写受像シートの受容層間の離型性が悪いことによる、染料層の一部が受容層側に転写してしまう異常転写や、染料層と受容層が剥がれなくなってしまう熱融着が防止される。高速化のために熱転写の際に高エネルギーをかける場合や、熱融着しやすいポリ乳酸や非結晶性のポリエチレンテレフタレート共重合体などのポリエステルを主成分とした受容層を有する熱転写受像シートを用いる場合であっても、熱転写時の異常転写や熱融着防止に優れる。染料層におけるバインダーが、主成分として重量平均分子量が22万以上のポリビニルアセタール樹脂と、バインダーの全固形分中に1〜15重量%のセルロース系樹脂を含有する場合には、従来染料層や熱転写受像シートの受容層に添加していた離型剤を用いないか、離型剤を用いたとしても少量しか用いなくても済むことが可能になるため、多量に離型剤を添加する場合のデメリットを抑制することが可能になる。従って、従来比較的多量の離型剤を添加することにより熱融着防止を実現していた場合に比べて、本発明の熱転写シートは、保存安定性が向上し、基材と染料層の密着性が向上し、更に、基材上に均一な染料層を形成でき、その結果、画像の色むらが発生しない。
図2は、本発明の熱転写シートの他の実施形態であり、基材1の一方の面に耐熱滑性層3を設け、基材1の他方の面に、基材と染料層の密着性を良好にしたり、熱転写の特性を改良するための下引き層4、染料層2を順次形成した構成である。
(基材)
本発明で用いる熱転写シートの基材1としては、従来公知のある程度の耐熱性と強度を有するものであればいずれのものでも良く、例えば、0.5〜50μm、好ましくは1〜10μm程度の厚さのポリエチレンテレフタレートフィルム、1,4−ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリフェニレンサルフィドフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリサルホンフィルム、アラミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、セロハン、酢酸セルロース等のセルロース誘導体、ポリエチレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ナイロンフィルム、ポリイミドフィルム、アイオノマーフィルム等が挙げられる。
本発明の染料層は、熱移行性染料を後述する特定のバインダーにより担持してなる層である。使用する染料としては、熱により、溶融、拡散もしくは昇華移行する染料である。従来公知の昇華転写型熱転写シートに使用されている染料は、いずれも本発明に使用可能であるが、色相、印字感度、耐光性、保存性、バインダーへの溶解性等を考慮して適宜選択する。
中でも、ポリビニルアセタール樹脂を合成するためのアルデヒドとしては、ブチルアルデヒド及び//又はアセトアルデヒドが、高エネルギーがかかっても、又は融着しやすい受容層に対しても、剥離可能なように、離型性能が向上する点から好適に用いられる。
セルロースの水酸基に結合させる官能基としては、本発明の効果を得ながら染料層に対して重視される諸物性に応じて適宜選択されれば良い。本発明においては、結合した官能基が異なる2種類以上のセルロース系樹脂を混合して用いても良い。
本発明に用いられるセルロース系樹脂としては、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、アセチルセルロース及びアセチルセルロースブチレート等が挙げられる。中でも、高エネルギーがかかっても、又は融着しやすい受容層に対しても剥離可能なように、離型性能向上の点に優れることから、エチルセルロースが好ましい。
離型剤は1種又は2種以上混合して使用される。離型剤の添加量は、基材シートとの密着性、均一な層形成、後述する染料層の色相変化防止の点から、離型剤がバインダーの全固形分100重量部に対して3重量部以下であることが好ましい。
本発明に用いられる離型剤としては、リン酸エステルが、少量でも離型性を向上させる効果がありながら、染料層の表面形状に悪影響を与え難い点から好ましい。但し、リン酸エステルは、染料を消色させる場合があるため、組み合わせる染料とリン酸エステルを適宜選択して用いるようにする。
本発明の熱転写シートは基材の一方の面に、サーマルヘッドの熱によるスティッキングや印字しわ等の悪影響を防止するため、耐熱滑性層3を設ける。上記の耐熱滑性層を形成する樹脂としては、従来公知のものであればよく、例えば、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセトアセタール樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエーテル樹脂、ポリブタジエン樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリルポリオール、ポリウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタン又はエポキシのプレポリマー、ニトロセルロース樹脂、セルロースナイトレート樹脂、セルロースアセテートプロピオネート樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂、セルロースアセテートヒドロジエンフタレート樹脂、酢酸セルロース樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂等が挙げられる。
本発明の熱転写シートにおいては、基材と染料層との間に、基材と染料層の密着性を良好にしたり、熱転写の特性を改良することを目的として、下引き層4を設けても良い。
本発明の熱転写シートで形成する下引き層4を構成する樹脂として、好ましいものは、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、アルキド系樹脂、N−ビニルピロリドンのホモポリマー、またはN−ビニルピロリドンと他の成分とのコポリマー等が挙げられる。また、基材もしくは染料層、保護層との接着性、又は環境保存性を向上させるために、下引き層にはメラミン系化合物、イソシアネート系化合物、エポキシ系化合物、オキサゾリン基を含む化合物、キレート化合物などを添加することが好ましい。
更に、本発明の熱転写シートにおける下引き層は、上記樹脂と上記コロイド状無機顔料超微粒子を含有する下引き層であっても良い。
本発明に係る熱転写記録材料は、上記本発明に係る熱転写シートと、基材の少なくとも一方の面に染料受容層を備えた熱転写受像シートとからなり、前記熱転写シートの染料層と前記熱転写受像シートの染料受容層とを重ね合わせ、加熱手段により前記染料層中の染料を前記染料受容層に転写可能な熱転写記録材料において、熱転写受像シートの染料受容層がポリエステル、ポリウレタン、及びポリカーボネートよりなる群から選択される1種以上を主成分として含有することを特徴とする。
また、本発明における熱転写受像シートは、基材11の少なくとも一方の面が染料受容層12を兼ねていても良い。
以下に、本発明の熱転写記録材料で使用する熱転写受像シートにおける構成要素の各層について、説明する。
(基材)
熱転写受像シート20の基材11は、受容層を保持するという役割を有するとともに、画像形成時に加えられる熱に耐え、取り扱い上支障のない機械的特性を有することが、望ましい。このような基材の材料は特に限定されず、例えば、ポリエステル、ポリアリレート、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、セルロース誘導体、ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ナイロン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル、ポリビニルフルオライド、テトラフルオロエチレン・エチレン、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド等の各種プラスチックフィルムまたはシートが使用でき、特に限定されない。
本発明における熱転写受像シート20の染料受容層12は、基材の少なくとも一方の面に備えているものであり、熱転写シート10から移行してくる昇華性染料を受容し、形成された熱転写画像を維持するためのものである。上述のように、基材が染料受容層を兼ねる場合には、別途設けられないが、基材が染料受容層を兼ねない場合には、基材の少なくとも一方の面に一種類以上の熱可塑性樹脂を含有して設けられる。
また、ポリ乳酸としては、ポリ(L−乳酸)、ポリ(DL−乳酸)、シンジオタクチックポリ(DL−乳酸)、アタクチックポリ(DL−乳酸)等のホモポリマーの他、共重合体であっても良い。ポリ乳酸共重合体としては、前記のようなポリ乳酸に、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、ε−カプロラクトン、11−ウンデカノリド、12−ウンデカノリドなどの中〜大員環ラクトン類、トリメチレンカーボネート(TMC)やメチル置換トリメチレンカーボネートなどの環状カーボネートモノマー及びこれらのオリゴマー、環状エステルオリゴマー、リシノール酸のようなヒドロキシ酸類及びそのエステル類、線状カーボネートオリゴマー、線状エステルオリゴマー、エステル−カーボネートオリゴマー、エーテル−エステルオリゴマー等の、ラクチドと共重合可能でかつ加水分解酵素の作用を受け得る結合を生成するコモノマーを共重合させたものが挙げられる。
離型剤は1種若しくは2種以上のものが使用される。また、離型剤の添加量は、適宜調整されれば良いが、通常、受容層形成用樹脂100重量部に対し、1〜10重量部が好ましい。
重量平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算値である。
また、ポリビニルアセタール樹脂の組成分析は、「高分子ハンドブック」(日本高分子学会編)p.306〜308に記載されている方法に準拠して求めることができる。まず下記の「ブチラール成分試験方法」に準拠して、アセトアルデヒド及びブチルアルデヒドによってアセタール化された部分の重量%を、滴定法によって算出した。また、下記の「ビニルアセテート成分試験方法」に準拠して、ビニルアセテート部分の割合(重量%)を算出し、ビニルアルコール部分は、上記2成分を100%から減することにより算出した。一方ポリビニルアセタール樹脂を、流延法等により厚さ数十μm程度の膜に調製し、その赤外吸収スペクトルから混合アルデヒドのそれぞれのアルデヒドによるアセタール化部分の割合を算出した。
[ブチラール成分試験方法]
試料約0.4gを秤量(Sg)し、200ml容の共栓三角フラスコに入れ、1−ブタノール10mlを添加して溶解する。塩酸ヒドロキシルアミン約7.5gを水約100mlに溶解して調製した1N溶液10mlを振り混ぜながら加え、冷却器を取り付けて沸騰水浴中で1時間加熱する。冷却後滴定用のN/10水酸化ナトリウム溶液の一部約10mlを加え、溶液を振り混ぜながらメタノール10mlを添加する。ブロモフェノールブルーを指示薬として遊離した塩酸をN/10水酸化ナトリウム溶液(力価F)で滴定(本試験Aml、空試験Bml)し、別途求めた純分(P%)とともに次式に代入してブチラール成分の濃度を算出する。
ブチラール成分(%)=100×1.42×(A−B)×F/(P×S)
[ビニルアセテート成分試験方法]
試料約0.4gを秤量(Sg)し、200ml容の共栓三角フラスコ中でエタノール25mlに溶解する。この溶液を振り混ぜながらN/10水酸化ナトリウム溶液5mlを滴下し、冷却器を取り付けて沸騰水浴中で1時間加熱する。冷却後N/10塩酸5mlを滴下して振り混ぜ、30分静置する。フェノールフタレインの0.1%溶液を指示薬として過剰の塩酸をN/10水酸化ナトリウム溶液(力価F)で滴定(本試験Aml、空試験Bml)し、別途求めた純分(P%)とともに次式に代入してビニルアセテート成分の濃度を算出する。
ビニルアセテート成分(%)=100×0.86×(A−B)×F/(P×S)
(実施例1)
厚さ6μmの片面易接着処理済ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(三菱化学ポリエステルフィルム(株)製、ダイヤホイルK203E)の易接着処理面に、下記組成の染料層塗工液をグラビアコーティングにより、乾燥塗布量が1.0g/m2になるように塗布、乾燥して染料層を形成し、実施例1の熱転写シートを作製した。尚、上記基材の他方の面に、予め下記組成の耐熱滑性層用プライマー層組成液を乾燥時0.2g/m2の塗布量になるように塗布および乾燥し、該プライマー層の表面に下記の耐熱滑性層用組成液を乾燥時1.0g/m2になるように塗布、乾燥させた後、60℃で5日間加熱処理を行ない、耐熱滑性層を形成しておいた。
Solvent Blue 63 6.0部
ポリビニルアセタール樹脂1 2.7部
(重量平均分子量40万、全アセタール化度に対する各アセタール化度の割合:ブチラール化/全アセタール化=100%、アセタール化された構造は81wt%、特開平11−349629号公報の調製法により製造)
セルロース系樹脂1(エチルセルロース N−14 ハーキュレス社製、エトキシル含有率48.0〜49.5、トルエン:エタノール=80:20の混合溶液にエチルセルロースを5%溶解したときの粘度12〜16mPa・s) 0.3部
メチルエチルケトン 45.5部
トルエン 45.5部
ポリエステル樹脂 10.0部
(ニチゴーポリエスター LP−035;日本合成化学工業(株)製)
メチルエチルケトン 90.0部
ポリビニルブチラール樹脂 13.6部
(エスレックBX−1 積水化学工業(株)製)
ポリイソシアネート硬化剤 0.6部
(タケネートD218 武田薬品工業(株)製)
リン酸エステル 0.8部
(プライサーフA208N 第一工業製薬(株)製)
メチルエチルケトン 42.5部
トルエン 42.5部
実施例1で作製した熱転写シートにおいて、染料層塗工液を表1に示される組成にした以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜7、及び、比較例1〜6の熱転写シートを作製した。
なお、各染料層塗工液において用いられたポリビニルアセタール樹脂及びセルロース系樹脂はそれぞれ以下の通りである。
ポリビニルアセタール樹脂2:(重量平均分子量40万、全アセタール化度に対する各アセタール化度の割合:ブチラール化/全アセタール化=75%、アセトアセタール化/全アセタール化=25%、アセタール化された構造は80wt%、特開平11−349629号公報の調製法により製造)
ポリビニルアセタール樹脂3:(重量平均分子量40万、全アセタール化度に対する各アセタール化度の割合:ブチラール化/全アセタール化=50%、アセトアセタール化/全アセタール化=50%、アセタール化された構造は73wt%、特開平11−349629号公報の調製法により製造)
ポリビニルアセタール樹脂4:(重量平均分子量30万、全アセタール化度に対する各アセタール化度の割合:ブチラール化/全アセタール化=35%、アセトアセタール化/全アセタール化=65%、アセタール化された構造は88wt%、特開平11−349629号公報の調製法により製造)
ポリビニルアセタール樹脂5:(重量平均分子量22万、全アセタール化度に対する各アセタール化度の割合:アセトアセタール化/全アセタール化=100%、アセタール化された構造は87wt%、特開平11−349629号公報の調製法により製造)
ポリビニルアセタール樹脂6:(重量平均分子量13万、全アセタール化度に対する各アセタール化度の割合:ブチラール化/全アセタール化=100%、アセタール化された構造は73wt%、特開平11−349629号公報の調製法により製造)
ポリビニルアセタール樹脂7:(重量平均分子量20万、全アセタール化度に対する各アセタール化度の割合:ブチラール化/全アセタール化=40%、アセトアセタール化/全アセタール化=60%、アセタール化された構造は86.5wt%、特開平11−349629号公報の調製法により製造)
セルロース系樹脂2:(エチルセルロース N−50 ハーキュレス社製、エトキシル含有率48.0〜49.5、トルエン:エタノール=80:20の混合溶液にエチルセルロースを5%溶解したときの粘度40〜52mPa・s)
1.異常転写及び熱融着の評価
上記の各実施例及び比較例で作製した熱転写シートを、25℃50%RH環境にて、以下の熱転写受像シートと組み合わせて、下記のような印画条件で15段階に異なるエネルギーを与え、15段階の階調を有するシアン染料層の印画物を形成した。
(熱転写受像シート)
(1)大日本印刷(株)製、白色塩化ビニルカード(塩化ビニルからなる基材が染料受容層を兼ねている。)
(2)大日本印刷(株)製、PET−Gカード(テレフタル酸、エチレングリコール、シクロヘキサンジメタノールのポリエチレンテレフタレート共重合体からなるポリエステル基材が、染料受容層を兼ねている。)
サーマルヘッド;KEE−57−12GAN2−STA(京セラ(株)製)
発熱体平均抵抗値;3303(Ω)
主走査方向印字密度;300dpi
副走査方向印字密度;300dpi
印画電圧;18(V)
1ライン周期;3.0(msec.)
印字開始温度;35(℃)
印加パルス(階調制御方法);1ライン周期中に、1ライン周期を256に等分割したパルス長をもつ分割パルスの数を0から255個まで可変できるマルチパルス方式のテストプリンターを用い、各分割パルスのDuty比を85%に固定し、ライン周期当たりのパルス数、0から255個を15分割した。これにより、15段階に異なるエネルギーを与えることができる。
異常転写とは、染料層と熱転写受像シートの受容層間の離型性が悪いため、印画後、染料層の一部が受容層側に転写してしまう現象をいう。また、熱融着とは、染料層と熱転写受像シートの受容層間の離型性が悪いため、印画後、染料層と受容層が剥がれなくなってしまう現象をいう。
5:異常転写、熱融着の発生が無い。
4:印画面積の40%未満で異常転写が発生した。
3:印画面積の40%〜60%で異常転写が発生した。
2:印画面積の60%以上で異常転写が発生した。
1:熱融着が発生する。
各実施例及び比較例で作製した熱転写シートのシアン染料層の上にニチバン(株)製のメンディングテープMDLP−12を貼り付け、剥離角180°にてそのテープを剥離し、基材シートと染料層との密着性を評価した。
<評価基準>
○:染料層の取られ無し。
×:染料層がテープに接着し、剥がれる。
各実施例及び比較例で作製した熱転写シートを、40℃湿度90%環境に96時間保存した後、大日本印刷(株)製、白色塩化ビニルカードに印加パルスを0とした以外は上記異常転写評価の印画条件を用いて白ベタ印画を行い、印画物を目視により確認し評価した。
<評価基準>
○:染料の汚れなし。
×:染料の汚れあり。
各実施例及び比較例で作製した熱転写シートの染料層と耐熱滑性層を対向させ、20kg/cm2荷重をかけて、温度40℃、湿度90%RHの環境下で96時間保存した。以下の測色条件で保存前後の耐熱滑性層の色差ΔE*abを求め、耐熱滑性層の染料移行性を評価した。
[測色条件]
分光光度計を用いて、白色基準を絶対値とし、D65光源、観測視野2°、濃度標準をANSI STATUS Aとして、色度値L*、a*、b*を測定する。ΔE*abは以下のように求めた。
ΔE*ab=(保存前後の耐熱滑性層のL*値の差)2 +(保存前後の耐熱滑性層のa*値の差)2 +(保存前後の耐熱滑性層のb*値の差)2
<評価基準>
◎:染料層と対向させて、荷重下で保存する前と後の耐熱滑性層の色差ΔE*abが3.0未満であり、非常に良好である。
○:染料層と対向させて、荷重下で保存する前と後の耐熱滑性層の色差ΔE*abが3.0以上5.0未満であり、良好である。
△:染料層と対向させて、荷重下で保存する前と後の耐熱滑性層の色差ΔE*abが5.0以上6.0未満であり、悪い。
×:染料層と対向させて、荷重下で保存する前と後の耐熱滑性層の色差ΔE*abが6.0以上であり、非常に悪い。
各実施例及び比較例で作製した熱転写シートを用いて、大日本印刷(株)製、白色塩化ビニルカードと組み合わせて、上記異常転写評価の印画条件にて印画を行い、マクベス反射濃度計RD−918にて、最大転写濃度を測定した。
<評価基準>
◎:最大転写濃度が1.7以上
○:最大転写濃度が1.6以上1.7未満
△:最大転写濃度が1.5以上1.6未満
上記の評価結果より、染料層のバインダーとして、主成分として重量平均分子量が22万以上のポリビニルアセタール樹脂と、バインダーの全固形分中に1〜15重量%のセルロース系樹脂の混合物を用いた本発明に係る実施例1〜7の熱転写シートにおいては、印字速度の高速化に対応しながら、印画における熱転写シートの染料層と被転写体との異常転写及び熱融着防止性能が高いことが明らかになった。従来の熱転写シートによれば熱融着しやすかった非結晶性のポリエチレンテレフタレート共重合体の受容層を有する熱転写受像シート(PET−Gカード)に対しても、実施例1〜7の熱転写シートは離型剤を配合していなくても、異常転写及び熱融着防止性能が高かった。
また、比較例2の染料層は、重量平均分子量が13万のポリビニルアセタール樹脂にセルロース系樹脂を10重量%組み合わせてバインダーとして用いたものであるが、白色塩化ビニルカードに対しても、PET−Gカードに対しても、異常転写が発生した。
比較例3の染料層は、重量平均分子量が20万のポリビニルアセタール樹脂に20重量%のセルロース系樹脂を組み合わせてバインダーとして用いたものであるが、白色塩化ビニルカードに対しては、異常転写及び熱融着が防止されたものの、PET−Gカードに対しては、印画面積の約半分で異常転写が発生した。また、比較例3の染料層は、基材シートとの密着性が悪く、保存安定性も悪かった。
比較例4の染料層は、重量平均分子量が20万のポリビニルアセタール樹脂に50重量%のセルロース系樹脂を組み合わせてバインダーとして用いたものであるが、白色塩化ビニルカードに対しては、異常転写及び熱融着が防止されたものの、PET−Gカードに対しては、異常転写が発生した。また、比較例4の染料層は、基材シートとの密着性が悪く、保存安定性も悪かった。
比較例5の染料層は、重量平均分子量が30万のポリビニルアセタール樹脂に0.5重量%のセルロース系樹脂を組み合わせてバインダーとして用いたものであるが、白色塩化ビニルカードに対しては、異常転写及び熱融着が防止されたものの、PET−Gカードに対しては、印画面積の半分以上で異常転写が発生した。また、比較例5の染料層は、転写濃度が不充分であった。
比較例6の染料層は、重量平均分子量が20万のポリビニルアセタール樹脂に15重量%のセルロース系樹脂を組み合わせてバインダーとして用いたものであるが、白色塩化ビニルカードに対しては、異常転写及び熱融着が防止されたものの、PET−Gカードに対しては、印画面積の約半分で異常転写が発生した。また、比較例6の染料層は、基材シートとの密着性が悪く、保存安定性も悪かった。
2 染料層
3 耐熱滑性層
4 下引き層
10 熱転写シート
11 基材
12 染料受容層
20 熱転写受像シート
30 熱転写記録材料
Claims (5)
- 基材の一方の面に耐熱滑性層を設け、該基材の他方の面に、染料とバインダーとを含有する染料層を設けた熱転写シートにおいて、前記染料層におけるバインダーが、主成分として重量平均分子量が22万以上のポリビニルアセタール樹脂と、バインダーの全固形分中に3〜10重量%のセルロース系樹脂を含有し、前記ポリビニルアセタール樹脂において、全アセタール化度に対するアセトアセタール化度の割合(アセトアセタール化/全アセタール化)が60%以上であることを特徴とする、熱転写シート。
- 前記セルロース系樹脂が、エチルセルロースであることを特徴とする、請求項1に記載の熱転写シート。
- 前記ポリビニルアセタール樹脂がバインダーの全固形分中に90〜97重量%であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の熱転写シート。
- 前記染料層中に、離型剤がバインダーの全固形分100重量部に対して3重量部以下であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載の熱転写シート。
- 請求項1乃至4のいずれかに記載の熱転写シートと、基材の少なくとも一方の面に染料受容層を備えた熱転写受像シートとからなり、前記熱転写シートの染料層と前記熱転写受像シートの染料受容層とを重ね合わせ、加熱手段により前記染料層中の染料を前記染料受容層に転写可能な熱転写記録材料において、熱転写受像シートの染料受容層がポリエステル、ポリウレタン、及びポリカーボネートよりなる群から選択される1種以上を主成分として含有することを特徴とする熱転写記録材料。
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