JP4844521B2 - 熱転写シート、及び熱転写記録材料 - Google Patents

熱転写シート、及び熱転写記録材料 Download PDF

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Description

本発明は、昇華性染料を用いた熱転写シートに関し、さらに詳しくは、被転写体との熱融着や異常転写をおこさずに画像等の転写が行える熱転写シート、およびそれを用いた熱転写記録材料に関するものである。
従来、種々の熱転写記録方法が知られているが、それらの中でも、昇華転写用染料を記録材とし、これをポリエステルフィルム等の基材上に適当なバインダーで担持させた染料層を有する熱転写シートから、昇華染料で染着可能な被転写材、例えば、紙やプラスチックフィルム等に染料受容層を形成した熱転写受像シート上に昇華染料を熱転写し、各種のフルカラー画像を形成する方法が提案されている。この場合には、加熱手段として、プリンターのサーマルヘッドによる加熱によって、3色または4色の多数の加熱量が調整された色ドットを熱転写受像シートの受容層に転移させ、該多色の色ドットにより原稿のフルカラーを再現するものである。このように形成された画像は、使用する色材が染料であることから、非常に鮮明で、かつ透明性に優れているため、得られる画像は中間色の再現性や階調性に優れ、従来のオフセット印刷やグラビア印刷による画像と同様であり、かつフルカラー写真画像に匹敵する高品質画像の形成が可能である。したがって、昇華転写方式は、種々の分野で情報記録手段として利用されている。
マルチメディアに関連した様々なハード及びソフトの発達により、この熱転写方法は、コンピューターグラフィックス、衛星通信による静止画像そしてCD−ROMその他に代表されるデジタル画像及びビデオ等のアナログ画像のフルカラーハードコピーシステムとして、その市場を拡大している。この熱転写方法による受像シートの具体的な用途は、多岐にわたっている。代表的なものとして、印刷の校正刷り、画像の出力、CAD/CAMなどの設計及びデザインなどの出力、CTスキャンや内視鏡カメラなどの各種医療用分析機器、測定機器の出力用途そしてインスタント写真の代替として、また身分証明書やIDカード、クレジットカード、その他カード類の顔写真等の出力、さらに遊園地、ゲームセンター、博物館、水族館等のアミューズメント施設における合成写真、記念写真としての用途等を挙げることができる。
昇華型感熱記録方式に用いられる熱転写シートの染料層において、バインダーは、熱昇華性染料との相溶性、プリンター内での走行性など、要求される機能が多い。そのため、染料層のバインダーとして使用することができる材料は限定されており、例えば特許文献1ではポリビニルアセタール樹脂が用いられている。しかしながら、このような従来の熱転写シートでは、記録時の加熱により熱転写シートと受像シートとが互いに融着して、印画後染料層の一部が受容層側に転写してしまう異常転写が起こったり、印画後染料層と受容層が剥がれなくなってしまうという問題が生じてきた。
最近、熱転写シートの染料層と熱転写受像シートの受容層との熱融着の問題が大きくなってきたのは、プリンターの高速化と、上記のような多様な受像シートが用いられるようになったことが主な背景として挙げられる。
すなわち、近年、熱転写プリンターの印字速度の高速化が進むにしたがって、充分な印画濃度が得られないという問題が出てきている。プリンターを高速化しても、充分な印画濃度を出すために、単位時間当たりにヘッドにかける電圧が増えている。その結果、単位時間当たりに熱転写シートにかかるにエネルギーが増え、染料層の熱融着が起こりやすくなっている。そのため、従来開示されていたようなポリビニルアセタール樹脂のままでは、高速プリンターを用いることが難しく、高エネルギーがかかっても剥離可能な、離型性能が向上した熱転写シートが要求されている。
一方、熱転写方法による受像シートの具体的な用途が多岐にわたるようになってきた中、従来受像シートに用いられてきた受容層とは異なる材料の受容層を使用する要求が出てきている。例えば、各種カード用途においては、従来はポリ塩化ビニル(PVC)が主として受容層として用いられてきたが、環境への配慮から、焼却処理時に塩素や塩化水素などの有害ガスを発生しない材料への代替が求められている。このような代替材料として、例えばポリ乳酸や非結晶性のポリエチレンテレフタレート共重合体等のポリエステルを用いると、受容層がポリ塩化ビニルであった場合には熱融着を起こさなかった染料層であっても、激しく熱融着を起こすようになる。そのため、熱融着を起こしやすい受容層に対しても印画可能で、離型性の良好な熱転写シートが求められている。
熱融着が生じるのを防ぐために、染料層または受容層にシリコーン系の離型剤を添加する方法がある(例えば、特許文献2)。しかしながら、染料層に離型剤を多量に添加すると、背面層へ染料が裏移るなど、熱転写シートの保存安定性が悪化する場合が多い。更に、染料層に離型剤を多量に添加すると、基材と染料層の密着性が低下したり、染料層を基材上に形成する際に、基材が染料層インキをはじき、均一な層形成が困難になり、画像に色むらが発生するという問題点がある。一方、受容層に多量に離型剤を入れると、離型剤が染料の染着を阻害して印字感度が低下し印字濃度が下がってくるという問題や、離型剤が変色して受容シートの白色度を低下させたり、或いは、画像のにじみ・地汚れ等が生じるという問題点がある。
特開昭60−101087号公報 特開平1−200990号公報
したがって、上記の課題を解決すべく、本発明は、印字速度の高速化に対応しながら、印画における熱転写シートの染料層と被転写体との異常転写や熱融着が防止され、且つ、保存安定性が良く、印画の色むらも防止される熱転写シートを提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明は、基材の一方の面に耐熱滑性層を設け、該基材の他方の面に、染料とバインダーとを含有する染料層を設けた熱転写シートにおいて、前記染料層におけるバインダーが、重量平均分子量が40万以上50万以下で、且つ、アセタール化された構造単位が73〜81重量%であり、全アセタール化度に対するブチラール化度の割合(ブチラール化/全アセタール化)が50%以上であるポリビニルアセタール樹脂を主成分として含有することを特徴とする、熱転写シートを提供する。
本発明によれば、染料層におけるバインダーが、重量平均分子量が40万以上50万以下で、且つ、アセタール化された構造単位が73〜81重量%であり、全アセタール化度に対するブチラール化度の割合(ブチラール化/全アセタール化)が50%以上であるポリビニルアセタール樹脂を主成分として含有することにより、プリンターの高速化に対応しながら、印画における熱転写シートの染料層と被転写体との異常転写や熱融着が防止され、且つ、保存安定性が良く、印画の色むらも防止される染料層を得ることができる。
本発明の熱転写シートにおいては、前記ポリビニルアセタール樹脂において、全アセタール化度に対するブチラール化度の割合(ブチラール化/全アセタール化)が70%以上であることが、高エネルギーがかかっても、又は融着しやすい受容層に対しても、剥離可能なように、離型性能が向上する点から好ましい。
また、本発明の熱転写シートにおいては、前記染料層中に、離型剤がバインダーの全固形分100重量部に対して3重量部以下であることが、保存安定性が良く、印画の色むらも防止される点から好ましい。
本発明の熱転写記録材料は、前記本発明に係る熱転写シートと、基材の少なくとも一方の面に染料受容層を備えた熱転写受像シートとからなり、前記熱転写シートの染料層と前記熱転写受像シートの染料受容層とを重ね合わせ、加熱手段により前記染料層中の染料を前記染料受容層に転写可能な熱転写記録材料において、熱転写受像シートの染料受容層がポリエステル、ポリウレタン、及びポリカーボネートよりなる群から選択される1種以上を主成分として含有することを特徴とする。
本発明の熱転写シートは、印字速度の高速化に対応しながら、印画における熱転写シートの染料層と被転写体との異常転写や熱融着が防止され、且つ、保存安定性が良く、印画の色むらも防止されるという効果を奏する。
本発明の熱転写記録材料は、印字速度の高速化に対応しながら、印画における熱転写シートの染料層と熱転写受像シートの受容層との異常転写や熱融着が防止され、且つ、保存安定性が良く、印画の色むらも防止されるという効果を奏する。
本発明に係る熱転写シートは、基材の一方の面に耐熱滑性層を設け、該基材の他方の面に、染料とバインダーとを含有する染料層を設けた熱転写シートにおいて、前記染料層におけるバインダーが、重量平均分子量が20万以上で、且つ、全アセタール化度に対するブチラール化度の割合(ブチラール化/全アセタール化)が50%以上であるポリビニルアセタール樹脂を主成分として含有することを特徴とする。
本発明の熱転写シートにおいては、前記染料層におけるバインダーが、重量平均分子量が30万以上で、且つ、全アセタール化度に対するブチラール化度の割合(ブチラール化/全アセタール化)が50%以上であるポリビニルアセタール樹脂を主成分として含有する。
これにより、当該染料層は、熱転写時に染料層と熱転写受像シートの受容層間の離型性が悪いことによる、染料層の一部が受容層側に転写してしまう異常転写や、染料層と受容層が剥がれなくなってしまう熱融着が防止される。特に従来の熱転写シートによれば、高速化のために熱転写の際に高エネルギーをかける場合や、熱融着しやすいポリ乳酸や非結晶性のポリエチレンテレフタレート共重合体などのポリエステルを主成分とした受容層を有する熱転写受像シートを用いる場合にも、熱転写時の異常転写や熱融着防止に優れる。染料層におけるバインダーが、重量平均分子量が30万以上で、且つ、全アセタール化度に対するブチラール化度の割合(ブチラール化/全アセタール化)が50%以上であるポリビニルアセタール樹脂を主成分として含有する場合には、従来染料層や熱転写受像シートの受容層に添加していた離型剤を用いないか、離型剤を用いたとしても少量しか用いなくても済むことが可能になるため、多量に離型剤を添加する場合のデメリットを抑制することが可能になる。従って、従来比較的多量の離型剤を添加することにより熱融着防止を実現していた場合に比べて、本発明の熱転写シートは、保存安定性が向上し、基材上に均一な染料層を形成でき、その結果、画像の色むらが発生しない。
図1は、本発明の熱転写シートの一つの実施形態であり、基材1の一方の面にサーマルヘッドの滑り性を良くし、かつスティッキングを防止する耐熱滑性層3を設け、基材1の他方の面に染料層2を形成した構成である。
図2は、本発明の熱転写シートの他の実施形態であり、基材1の一方の面に耐熱滑性層3を設け、基材1の他方の面に、基材と染料層の密着性を良好にしたり、熱転写の特性を改良するための下引き層4、染料層2を順次形成した構成である。
本発明の熱転写シートは、一方の面に耐熱滑性層を設けた基材の他方の面に、少なくとも染料層を設けたものである。基材の他方の面に設けられる染料層としては、1色の単一層で構成されたものであっても良いし、例えば、イエロー、マゼンタ、及びシアン染料層等の色相の異なる複数の染料層を、同一基材の同一面に面順次に、繰り返し形成されたものであっても良い。更に、本発明の熱転写シートは、転写された染料を保護する機能を付与する熱転写性保護層が、染料層と同一基材の同一面に面順次に、繰り返し形成された態様であっても良い。
以下、本発明の熱転写シートを構成する各層毎に詳述する。
(基材)
本発明で用いる熱転写シートの基材1としては、従来公知のある程度の耐熱性と強度を有するものであればいずれのものでも良く、例えば、0.5〜50μm、好ましくは1〜10μm程度の厚さのポリエチレンテレフタレートフィルム、1,4−ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリフェニレンサルフィドフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリサルホンフィルム、アラミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、セロハン、酢酸セルロース等のセルロース誘導体、ポリエチレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ナイロンフィルム、ポリイミドフィルム、アイオノマーフィルム等が挙げられる。
上記基材において、染料層を形成する面に、接着処理を施すことがよく行なわれている。上記基材のプラスチックフィルムはその上に、染料層や後述する下引き層を形成する際、基材と染料層や下引き層との接着性等が不足しやすいので、接着処理を施すことが好ましい。その接着処理としては、コロナ放電処理、火炎処理、オゾン処理、紫外線処理、放射線処理、粗面化処理、化学薬品処理、プラズマ処理、低温プラズマ処理、プライマー処理、グラフト化処理等公知の樹脂表面改質技術をそのまま適用することができる。また、それらの処理を二種以上、併用することもできる。上記のプライマー処理は、例えばプラスチックフィルムの溶融押出しの成膜時に、未延伸フィルムにプライマー液を塗布し、その後に延伸処理して行なうことができる。接着処理の中でも、コストが高くならずに、容易に入手することができるコロナ放電処理またはプラズマ処理が好ましい。
(染料層)
本発明の染料層は、熱移行性染料を後述する特定のバインダーにより担持してなる層である。使用する染料としては、熱により、溶融、拡散もしくは昇華移行する染料である。従来公知の昇華転写型熱転写シートに使用されている染料は、いずれも本発明に使用可能であるが、色相、印字感度、耐光性、保存性、バインダーへの溶解性等を考慮して適宜選択する。
染料としては、例えばジアリールメタン系、トリアリールメタン系、チアゾール系、メロシアニン、ピラゾロンメチン等のメチン系、インドアニリン、アセトフェノンアゾメチン、ピラゾロアゾメチン、イミダゾルアゾメチン、イミダゾアゾメチン、ピリドンアゾメチンに代表されるアゾメチン系、キサンテン系、オキサジン系、ジシアノスチレン、トリシアノスチレンに代表されるシアノメチレン系、チアジン系、アジン系、アクリジン系、ベンゼンアゾ系、ピリドンアゾ、チオフェンアゾ、イソチアゾールアゾ、ピロールアゾ、ピラールアゾ、イミダゾールアゾ、チアジアゾールアゾ、トリアゾールアゾ、ジズアゾ等のアゾ系、スピロピラン系、インドリノスピロピラン系、フルオラン系、ローダミンラクタム系、ナフトキノン系、アントラキノン系、キノフタロン系等のものが挙げられる。
本発明においては、染料層のバインダーは、重量平均分子量が30万以上で、且つ、全アセタール化度に対するブチラール化度の割合(ブチラール化/全アセタール化)が50%以上であるポリビニルアセタール樹脂を主成分として含有することを特徴とする。ここでバインダー中に主成分として含有するとは、本発明の効果を損なわない限り、上記特定のポリビニルアセタール樹脂の他に、更に他のバインダー樹脂が添加されていても良い旨を表し、上記特定のポリビニルアセタール樹脂が全バインダーの50重量%超過で含まれる意味である。上記特定のポリビニルアセタール樹脂の合計量は、熱転写シートの保存安定性の点から、より好ましくは全バインダーの90重量%以上、より更に好ましくは全バインダーの95重量%以上である。
本発明における染料層のバインダーとして、重量平均分子量が30万以上で、且つ、全アセタール化度に対するブチラール化度の割合(ブチラール化/全アセタール化)が50%以上であるポリビニルアセタール樹脂を主成分として含有することにより、従来に比べても熱転写時の異常転写や熱融着防止効果が優れるのは、明らかではないが、以下のように推定される。重量平均分子量が30万以上と高い分子量により、バインダーの凝集力が向上して熱転写時等に染料層が凝集破壊しにくくなり、更に、比較的嵩高いブチラール基がポリマーに高い割合で存在することにより、染料層表面の疎水性が適切になり、これらの相乗効果によって、高エネルギーをかけた時の染料層の離型性や、熱融着しやすい素材の受容層に対する染料層の離型性が向上したのではないかと推定される。
ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコールにアルデヒドを反応させてアセタール化することにより得られるものである。本発明に用いられるポリビニルアセタール樹脂としては、下記構造を有するものが挙げられる。
Figure 0004844521
(式(1)中、Rは、置換又は無置換のアルキル基又はアリール基、或いは水素、Xは有機基を表す。式中lとmとnは、各構造単位のモル%を表し、50≦l≦87、10≦m≦50、0≦n≦30の範囲である。)
ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコールにアルデヒドを反応させてアセタール化することにより得られるものであり、上記式(1)中のlがアセタール化された構造単位のモル%を表している。上記式(1)中のRは、用いられたアルデヒドに依存する。例えば、アセトアルデヒドが用いられた場合には、Rはメチル基となり、ブチルアルデヒドが用いられた場合には、Rはプロピル基(−C)となる。従って、全アセタール化度に対するブチラール化度の割合(ブチラール化/全アセタール化)とは、アセタール化された構造単位の全モル数に対して、ブチルアルデヒドが用いられてブチラール化されたRがプロピル基(−C)の構造単位のモル数の割合をいう。
本発明に用いられるポリビニルアセタール樹脂は、全アセタール化度に対するブチラール化度の割合(ブチラール化/全アセタール化)が50%以上であるが、更に70%以上、より更に80%以上、特に好ましくは100%であることが望ましい。特に、全アセタール化度に対するブチラール化度の割合(ブチラール化/全アセタール化)が70%以上の場合は、高エネルギーがかかっても、又は融着しやすい受容層に対しても、剥離可能なように、離型性能が向上する点から好ましい。
ポリビニルアセタール樹脂を合成するためのアルデヒドとしては、ブチルアルデヒドを全アルデヒド中に50モル%以上の割合で用いるが、ブチルアルデヒドの他に混合して用いられるアルデヒドとしては、アセトアルデヒドが、保存安定性及び基材との密着性向上の点から好ましい。アルデヒドとしては、ポリビニルアセタール樹脂の溶剤溶解性の改良や、基材との親和性向上(密着性向上)を目的として、更に他のアルデヒドを混合して用いてもよい。そのようなアルデヒドとしては、例えば、ホルムアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、2−エチルヘキシルアルデヒド、ベンズアルデヒド、1−ナフトアルデヒド、o−トルアルデヒド、p−トルアルデヒド、p−エチルベンズアルデヒド、o−クロロベンズアルデヒド、m−クロロベンズアルデヒド、p−クロロベンズアルデヒド、3−フェニルクロロピオンアルデヒドなどが挙げられる。
ポリビニルアルコール(PVA)をアセタール化する場合、PVAを完全にアセタール化することは困難であり、部分的に水酸基が不可逆的に残存する。また、PVAの製造工程のケン化の際に少量のアセチル基が残存することが多いため、ポリビニルアセタール樹脂には、部分的にアセチル基や水酸基が不可逆的に残存することが一般的である。従って、上記式(1)中には、通常アセチル基が含まれる。
上記式(1)中のlは、50〜87であり、更に70〜87であることが熱転写シートの保存安定性の点から好ましい。
本発明に用いられるポリビニルアセタール樹脂の重量平均分子量は、30万以上であるが、更に好ましくは、40万以上である。一方、重量平均分子量が高すぎると、溶液としての粘度が高く、工業的に扱いが困難になる点からは、重量平均分子量は50万以下であることが好ましい。なおここで、本発明における重量平均分子量とは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定によるポリスチレン換算値である。
染料層のバインダーとしては、本発明の効果を損なわない限り、上記特定のポリビニルアセタール樹脂に、他のバインダー樹脂を混合してもよい。このような他のバインダー樹脂としては、例えば、上記特定のポリビニルアセタール樹脂には該当しないポリビニルアセタール樹脂、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、酢酸セルロース、酪酸セルロース等のセルロース系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド等のビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、フェノキシ樹脂等が挙げられる。
本発明に用いられる熱転写シートの染料層には必要に応じて、上記バインダー樹脂および上記熱移行性染料以外の他の化合物が含まれていても良い。本発明に用いられる他の化合物としては、離型剤を挙げることができる。本発明においては熱転写シートの染料層に用いられるバインダー自体により、熱転写受像シートの受容層と融着し難いという効果が得られるが、離型剤を適宜選択することにより更に熱融着防止効果を向上することができる。但し、離型剤を多く添加すると、染料層を基材上に形成する際に、基材が染料層インキをはじき、均一な層形成が困難になり、画像に色むらが発生するという問題が生じる場合があるので、このような問題が生じない範囲で、且つ、熱融着防止効果が向上する範囲で少量用いることが好ましい。
離型剤は1種又は2種以上混合して使用される。離型剤の添加量は、基材シートとの密着性、均一な層形成、後述する染料層の色相変化防止の点から、離型剤がバインダーの全固形分100重量部に対して3重量部以下であることが好ましい。
離型剤としては、組み合わせる染料により、適宜選択して用いることができる。離型剤としては、例えば、リン酸エステル、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤などが挙げられる。
本発明に用いられる離型剤としては、リン酸エステルが、少量でも離型性を向上させる効果がありながら、染料層の表面形状に悪影響を与え難い点から好ましい。但し、リン酸エステルは、染料を消色させる場合があるため、組み合わせる染料とリン酸エステルを適宜選択して用いるようにする。
リン酸エステルとしては、酸型及び/又は中和型リン酸エステルが好適に用いられる。酸型のリン酸エステルとしては、例えば、下記の構造式(I)、構造式(II)等が挙げられる。
Figure 0004844521
〔式(I)中、Rはアルキル基またはアルキルアリル基であり、nはエチレンオキサイド付加モル数を表す。〕
Figure 0004844521
〔式(II)中、Rはアルキル基またはアルキルアリル基、アルキルフェノール基であり、nはエチレンオキサイド付加モル数であり、AはOHまたは、RO(C24O)nを表す。〕
市販されている上記構造式(I)で示されるリン酸エステルは、例えば第一工業製薬株式会社製プライサーフA−208N等が挙げられる。また、市販されている上記構造式(II)で示されるリン酸エステルは、例えば第一工業製薬株式会社製プライサーフA−208Fや、東邦化学工業株式会社製PHOSPHANOLシリーズ等が挙げられる。その他の構造の酸型のリン酸エステルは、堺化学工業株式会社製(大崎工業株式会社製造)PhoslexAシリーズとして、(Cn2n+1O)2P(O)OH+Cn2n+1OP(O)(OH)2、(Cn2n-1O)2P(O)OH+Cn2n-1OP(O)(OH)2、(C1835O)2P(O)OH+C1835OP(O)(OH)2、(C817O)2P(O)OH等の構造が挙げられる。
また、中和型のリン酸エステルは、PHが7〜9で、例えば、以下の構造式(III)で示されるものがある。
Figure 0004844521
〔式(III)中、Rはアルキル基またはアルキルアリル基であり、nはエチレンオキサイド付加モル数を表す。〕
また、中和型のリン酸エステルとして、例えば、上記の構造式(I)で示される酸型のリン酸エステルと、(H2NC24OH)の基が混在し、両者が化学結合していても、結合していなくてもいずれでも良いものが挙げられる。市販されている中和型のリン酸エステルは、例えば第一工業製薬株式会社製プライサーフM−208F、M−208BM等が挙げられる。
以上のような酸型と中和型のリン酸エステルを混合して染料層に用いることが、染料層の色相変化を防止する点から好ましい。リン酸エステルの酸型と中和型の混合比は、酸型/中和型=80/20〜50/50の範囲が、染料とリン酸エステルとの反応を抑えることができ、染料層の色相変化を防止する点から好ましい。特に、インドアニリン系とメチン系の染料を併用して、濃度向上させる場合に、上記のようなリン酸エステルを適用することが効果的である。
また、染料層にはシランカップリング剤を添加することができる。シランカップリング剤として、例えばγ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシランのようなイソシアネート基を含むもの、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−フェニルアミノプロピルトリメトキシシランのようなアミノ基を含むもの、更にγ−グリシドオキシプロピルトリメトキシシランやβ−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のようにエポキシ基を含むもの等が挙げられる。これらは単独または2種以上の混合物として用いることもできる。
上記のシランカップリング剤は、例えば、加水分解により生じるシラノール基が、薄膜層表面に有する無機酸化物の水酸基と縮合して化学結合し、接着性が向上すると考えられる。また、シランカップリング剤のエポキシ基、アミノ基等は、樹脂バインダーの水酸基やカルボキシル基等と反応して化学結合し、染料層自体の強度を向上し、熱転写時等の染料層の凝集破壊等を防止できる。
本発明の染料層においては、巻き取り保管中に熱転写シートの裏面側の耐熱滑性層へ染料が移行することを防止しながら、発色特性に優れた熱転写シートを実現する点から、染料合計量(D)とバインダー合計量(B)の重量比(D/B)が2〜2.5であることが好ましく、更に2.3〜2.4であることが好ましい。
染料層は、上記染料、バインダーと、その他必要に応じて、上記離型剤やシランカップリング剤のほか、従来公知と同様な各種の添加剤を加えてもよい。その添加剤として、例えば、受像シートとの離型性やインキの塗工適性を向上させるために、ポリエチレンワックス等の有機微粒子や無機微粒子が挙げられる。このような染料層は、通常、適当な溶剤中に上記染料、バインダーと、必要に応じて添加剤を加えて、各成分を溶解または分散させて塗工液を調製し、その後、この塗工液を基材の上に塗布、乾燥させて形成することができる。この塗布方法は、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビア版を用いたリバースロールコーティング法等の公知の手段を用いることができる。このように形成された染料層は、0.2〜6.0g/m、好ましくは0.3〜3.0g/m程度の乾燥時の塗工量である。
(耐熱滑性層)
本発明の熱転写シートは基材の一方の面に、サーマルヘッドの熱によるスティッキングや印字しわ等の悪影響を防止するため、耐熱滑性層3を設ける。上記の耐熱滑性層を形成する樹脂としては、従来公知のものであればよく、例えば、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセトアセタール樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエーテル樹脂、ポリブタジエン樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリルポリオール、ポリウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタン又はエポキシのプレポリマー、ニトロセルロース樹脂、セルロースナイトレート樹脂、セルロースアセテートプロピオネート樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂、セルロースアセテートヒドロジエンフタレート樹脂、酢酸セルロース樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂等が挙げられる。
これらの樹脂からなる耐熱滑性層に添加あるいは上塗りする滑り性付与剤としては、リン酸エステル、金属石鹸、シリコーンオイル、グラファイトパウダー、シリコーン系グラフトポリマー、フッ素系グラフトポリマー、アクリルシリコーングラフトポリマー、アクリルシロキサン、アリールシロキサン等のシリコーン重合体が挙げられるが、好ましくは、ポリオール、例えば、ポリアルコール高分子化合物とポリイソシアネート化合物及びリン酸エステル系化合物からなる層であり、さらに充填剤を添加することがより好ましい。
耐熱滑性層は、基材シートの上に、上記に記載した樹脂、滑り性付与剤、更に充填剤を、適当な溶剤により、溶解又は分散させて、耐熱滑性層塗工液を調整し、これを、例えば、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビア版を用いたリバースロールコーティング法等の形成手段により塗工し、乾燥して形成することができる。耐熱滑性層の塗工量は、固形分で、0.1g/m〜3.0g/mが好ましい。
(下引き層)
本発明の熱転写シートにおいては、基材と染料層との間に、基材と染料層の密着性を良好にしたり、熱転写の特性を改良することを目的として、下引き層4を設けても良い。
本発明の熱転写シートで形成する下引き層4を構成する樹脂として、好ましいものは、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、アルキド系樹脂、N−ビニルピロリドンのホモポリマー、またはN−ビニルピロリドンと他の成分とのコポリマー等が挙げられる。また、基材もしくは染料層、保護層との接着性、又は環境保存性を向上させるために、下引き層にはメラミン系化合物、イソシアネート系化合物、エポキシ系化合物、オキサゾリン基を含む化合物、キレート化合物などを添加することが好ましい。
上記のN−ビニルピロリドンとしては、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニル−3−ピロリドン、N−ビニル−4−ピロリドン等が挙げられ、このビニルピロリドンのホモポリマー(同一モノマー種による単独重合体)、またはこれらの異なるモノマーによる共重合体が挙げられる。このようなポリビニルピロリドン樹脂は、フィッケンチャーの公式のK値で、K−60〜K−120のグレードが使用でき、数平均分子量では、30,000〜280,000程度のものである。下引き層に、このポリビニルピロリドン樹脂を用いることで、転写感度が高まり、転写ムラや保護層転写の箔切れ不良が防止される。上記ポリビニルピロリドン樹脂のK値が60未満(K−15、K−30)のポリビニルピロリドン樹脂を用いると、印画における転写感度の向上の効果が発揮できなくなる場合がある。
また、前記したN−ビニルピロリドンと他の共重合可能なモノマーとの共重合体も使用できる。そのN−ビニルピロリドン以外の共重合可能なモノマーとしては、例えばスチレン、酢酸ビニル、アクリル酸エステル、アクリロニトリル、無水マレイン酸、塩化(弗化)ビニル、塩化(弗化、シアン化)ビニリデン等のビニルモノマーが挙げられる。そのビニルモノマーとN−ビニルピロリドンとのラジカル共重合によって得られるコポリマーが使用できる。また、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アセタール樹脂、ブチラール樹脂、ホルマール樹脂、フェノキシ樹脂、セルロース樹脂等とポリビニルピロリドンとのブロック共重合体、グラフト共重合体等も使用できる。
また、下引き層には、ポリビニルピロリドン樹脂の他に樹脂を混合させて、接着性を向上させることができる。その樹脂としては、スチレン、酢酸ビニル、アクリル酸エステル、アクリロニトリル、無水マレイン酸、塩化(弗化)ビニル、塩化(弗化、シアン化)ビニリデン等のビニルモノマーより得られるポリマー(コポリマー)、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アセタール樹脂、ブチラール樹脂、ホルマール樹脂、フェノキシ樹脂、セルロース樹脂、ポリビニルアルコール樹脂等が挙げられる。このような樹脂成分は、下引き層全体の固形分に対して、1〜30重量%の割合で添加して使用することが好ましい。この樹脂成分の添加量が少ないと、十分な接着性を発揮できず、またこの樹脂成分の添加量が多すぎると、ポリビニルピロリドンの転写感度向上の効果が十分に発揮できなくなる。
また、本発明の熱転写シートにおける下引き層は、印画時の染料層から下引き層への染料の移行を防止し、受像シートの受容層側への染料拡散を有効に行なうことにより、印画における転写感度が高く、印画濃度を高める点から、コロイド状無機顔料超微粒子からなる下引き層であっても良い。コロイド状無機顔料超微粒子としては、従来公知の化合物が使用できる。例えば、シリカ(コロイダルシリカ)、アルミナ或はアルミナ水和物(アルミナゾル、コロイダルアルミナ、カチオン性アルミニウム酸化物又はその水和物、疑ベーマイト等)、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン等が挙げられる。特に、コロイダルシリカ、アルミナゾルが好ましく用いられる。これらのコロイド状無機顔料超微粒子の大きさは、一次平均粒径で100nm以下、好ましくは50nm以下であり、特に3〜30nmで用いることが好ましく、これにより、下引き層の機能を充分に発揮できる。
また、コロイド状無機顔料超微粒子の形状は、球状、針状、板状、羽毛状や、無定形等、如何なる形状であってもよい。また、水系溶媒にゾル状に分散しやすいように酸性タイプに処理したもの、微粒子電荷をカチオンにしたものや、微粒子を表面処理したもの等使用できる。また、下引き層を塗工する場合の塗工適性を考慮して、下引き層の塗工液として粘度を低めにして流動性をもたせることが好ましい。
更に、本発明の熱転写シートにおける下引き層は、上記樹脂と上記コロイド状無機顔料超微粒子を含有する下引き層であっても良い。
下引き層を形成するには、上記の材料を塗工適性に応じて選択されたアセトン、メチルエチルケトン、トルエン、キシレン、アルコール等の溶剤又は水等に溶解、或いはゾル状に分散させた組成物からなる塗工液を作成し、グラビアコーター、ダイコーター、ロールコーター、ワイヤー等の慣用の塗工手段を用いて基材表面に塗布した後、乾燥、固化させることで形成できる。その乾燥塗工量で、0.01〜5g/m2、好ましくは0.05〜1g/m2である。
本発明の熱転写シートに形成されても良い、転写された染料を保護する機能を付与する熱転写性保護層は、特に限定されず、従来公知の方法、例えば、特開2003−312151号公報に記載された技術を用いて形成することができる。
本発明の熱転写シートには、その他、検知マークやなど熱転写シートに設けられる他の構成が更に設けられていても良い。
次に、本発明に係る熱転写記録材料について説明する。
本発明に係る熱転写記録材料は、上記本発明に係る熱転写シートと、基材の少なくとも一方の面に染料受容層を備えた熱転写受像シートとからなり、前記熱転写シートの染料層と前記熱転写受像シートの染料受容層とを重ね合わせ、加熱手段により前記染料層中の染料を前記染料受容層に転写可能な熱転写記録材料において、熱転写受像シートの染料受容層がポリエステル、ポリウレタン、及びポリカーボネートよりなる群から選択される1種以上を主成分として含有することを特徴とする。
本発明の熱転写記録材料の一つの実施形態を図3に示す。図示した熱転写記録材料30は、熱転写シート10と熱転写受像シート20の組み合わせからなるもので、熱転写シート10は基材シート1の一方の面に染料層2を設け、基材シート1の他方の面に耐熱滑性層3を備えている。また、熱転写受像シート20は、基材11の一方の面に染料受容層12を設けた構成である。図示したものに限らず、本発明における熱転写シートは、基材シートと染料層との間に、必要に応じて易接着層等を設けたり、耐熱滑性層の上に帯電防止層等の層を形成してもよい。
また、本発明における熱転写受像シートは、基材11の少なくとも一方の面が染料受容層12を兼ねていても良い。
本発明の熱転写記録材料は、熱転写シートとして上記本発明に係る熱転写シートを用いることにより、熱転写受像シートの染料受容層が様々な需要から熱融着しやすい材料を主成分として含む場合であっても、印字速度の高速化に対応しながら、印画における熱転写シートの染料層と被転写体との異常転写や熱融着が防止され、且つ、保存安定性が良く、印画の色むらも防止される。
本発明の熱転写記録材料は、熱転写シートと、熱転写受像シートとが一組となって構成されるものである。本発明の熱転写記録材料に用いられる熱転写シートは、上記本発明に係る熱転写シートであるので、ここでの説明は省略する。
以下に、本発明の熱転写記録材料で使用する熱転写受像シートにおける構成要素の各層について、説明する。
(基材)
熱転写受像シート20の基材11は、受容層を保持するという役割を有するとともに、画像形成時に加えられる熱に耐え、取り扱い上支障のない機械的特性を有することが、望ましい。このような基材の材料は特に限定されず、例えば、ポリエステル、ポリアリレート、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、セルロース誘導体、ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ナイロン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル、ポリビニルフルオライド、テトラフルオロエチレン・エチレン、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド等の各種プラスチックフィルムまたはシートが使用でき、特に限定されない。
上記のプラスチックフィルムまたはシートやこれらの合成樹脂に白色顔料や充填剤を加えて成膜した白色フィルム、あるいは基材内部にミクロボイドを有するシート、他にコンデンサーペーパー、グラシン紙、硫酸紙、合成紙(ポリオレフィン系、ポリスチレン系)、上質紙、アート紙、コート紙、キャストコート紙、合成樹脂又はエマルジョン含浸紙、合成ゴムラテックス含浸紙、合成樹脂内添紙、セルロース繊維紙等を用いることができる。また、上記の基材の任意の組合わせによる積層体も使用できる。代表的な例として、セルロース繊維紙と合成紙、セルロース繊維紙とプラスチックフィルムとの積層体があげられる。
また、上記の基材の表面及び又は裏面に易接着処理した基材も使用できる。これらの基材の厚みは、通常3〜300μm程度であり、機械的適性等を考慮し、100〜250μmの基材を用いるのが好ましい。また、基材とその上に設ける層との密着性が乏しい場合には、その表面に易接着処理やコロナ放電処理を施すのが好ましい。
熱転写受像シートの基材としてポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニルの共重合体等が用いられる場合には、基材自体が昇華移行染料の受容層としての機能を果たすことができる。従って、本発明において熱転写受像シートの基材として、ポリエステルを用いる場合には、ポリエステル基材自体が本発明の染料受容層を兼ねるものとなり、後述する染料受容層を別途設ける必要がない。
(染料受容層)
本発明における熱転写受像シートの20の染料受容層12は、基材の少なくとも一方の面に備えているものであり、熱転写シート10から移行してくる昇華性染料を受容し、形成された熱転写画像を維持するためのものである。上述のように、基材が染料受容層を兼ねる場合には、別途設けられないが、基材が染料受容層を兼ねない場合には、基材の少なくとも一方の面に一種類以上の熱可塑性樹脂を含有して設けられる。
本発明では、熱転写シートとして、熱融着しにくい染料層を備えた上記本発明に係る熱転写シートを用いるため、染料受容層としては、結晶性のポリエチレンテレフタレート共重合体、ポリ乳酸などのポリエステル;ポリウレタン;2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(略称ビスフェノールA)などの2価のフェノール、又はグリコールに、ホスゲン又は炭酸エステルを反応させてつくるポリカーボネート(ポリ炭酸エステル)を主成分として含有することが可能になる。ここで主成分として含有するとは、主成分として含有するとは、染料受容層中に最も多く含まれる成分が上記ポリエステル、ポリウレタン、及びポリカーボネートよりなる群から選択される1種以上であり、上記ポリエステル、ポリウレタン、及びポリカーボネートよりなる群から選択される1種以上が染料受容層の50重量%超過で含まれる意味である。本発明の効果を損なわない限り、上記特定の樹脂の他に、更に他のバインダー樹脂が添加されていても良い旨を表す。
結晶性のポリエチレンテレフタレート共重合体としては、具体的には例えば、テレフタル酸とエチレングリコールとシクロヘキサンジメタノールの共重合体が挙げられる。
また、ポリ乳酸としては、ポリ(L−乳酸)、ポリ(DL−乳酸)、シンジオタクチックポリ(DL−乳酸)、アタクチックポリ(DL−乳酸)等のホモポリマーの他、共重合体であっても良い。ポリ乳酸共重合体としては、前記のようなポリ乳酸に、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、ε−カプロラクトン、11−ウンデカノリド、12−ウンデカノリドなどの中〜大員環ラクトン類、トリメチレンカーボネート(TMC)やメチル置換トリメチレンカーボネートなどの環状カーボネートモノマー及びこれらのオリゴマー、環状エステルオリゴマー、リシノール酸のようなヒドロキシ酸類及びそのエステル類、線状カーボネートオリゴマー、線状エステルオリゴマー、エステル−カーボネートオリゴマー、エーテル−エステルオリゴマー等の、ラクチドと共重合可能でかつ加水分解酵素の作用を受け得る結合を生成するコモノマーを共重合させたものが挙げられる。
また、染料受容層のバインダー樹脂としては、補助的にポリ塩化ビニル,ポリ塩化ビニリデンなどのハロゲン化ポリマー,ポリ酢酸ビニル,エチレン酢酸ビニル共重合体,塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体,ポリアクリルエステル,ポリスチレン,ポリスチレンアクリルなどのビニル系樹脂、ポリビニルホルマール,ポリビニルブチラール,ポリビニルアセタールなどのアセタール系樹脂、飽和,不飽和の各種ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、セルロースアセテートなどのセルロース系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等を追加して用いても良い。
また、染料受容層には、上記のバインダー樹脂に、離型剤を加えても良い。但し、離型剤が染料の染着を阻害して印字感度が低下し印字濃度が下がってくるという問題や、離型剤が変色して受容シートの白色度を低下させたり、或いは、画像のにじみ・地汚れ等が生じるという問題点が生じないような質的及び量的範囲内で用いるようにする。本発明における受容層で用いられる離型剤としては、従来公知の離型剤、例えば、ポリエチレンワックス、アミドワックス、テフロン(登録商標)パウダー等の固形ワックス、弗素系、リン酸エステル系の界面活性剤、シリコーン等が、何れも使用可能である。特に好ましい離型剤は変性シリコーンであり、具体的には、1)変性シリコーンオイル側鎖型、2)変性シリコーンオイル両末端型、3)変性シリコーンオイル片末端型、4)変性シリコーンオイル側鎖両末端型、5)シリコーングラフトアクリル樹脂、及び、6)メチルフェニルシリコーンオイル等が挙げられる。
変性シリコーンオイルは、反応性シリコーンオイルと非反応性シリコーンオイルとに分けられる。反応性シリコーンオイルとしては、アミノ変性、エポキシ変性、カルボキシル変性、カルビノール変性、メタクリル変性、メルカプト変性、フェノール変性、片末端反応性、異種官能基変性等が挙げられる。非反応性シリコーンオイルとしては、ポリエーテル変性、メチルスチリル変性、アルキル変性、高級脂肪酸エステル変性、親水性特殊変性、高級アルコキシ変性、高級脂肪酸変性、フッ素変性等が挙げられる。上記シリコーンオイルの中でも、被膜形成成分と反応性である基を有する種類の反応性シリコーンオイルは、アセタール系樹脂中残基の水酸基と反応して結合してもよく、適宜硬化剤、触媒などを添加して使用することも可能である。
離型剤は1種若しくは2種以上のものが使用される。また、離型剤の添加量は、適宜調整されれば良いが、通常、受容層形成用樹脂100重量部に対し、1〜10重量部が好ましい。
染料受容層はバインダー樹脂を含有し、また離型剤や硬化剤や触媒を添加でき、その他にも、必要に応じて各種の添加剤を加えることができる。受容層の白色度を向上させ転写画像の鮮明度を更に高める目的で、酸化チタン、酸化亜鉛、カオリン、クレー、炭酸カルシウム、微粉末シリカ等の顔料や充填剤を添加することができる。また、受容層には可塑剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、蛍光増白剤、帯電防止剤など公知の添加剤を必要に応じて加えることができる。
上記にあげたバインダー樹脂と、上記であげた離型剤と必要に応じて添加剤等を任意に添加し、溶剤、希釈剤等で、十分に混練して、受容層塗工液を調整し、これを、上記にあげた基材の上に、例えば、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビア版を用いたリバースロールコーティング法等の形成手段により、塗布し、乾燥して、受容層を形成する。受容層の塗工量は、乾燥時で0.5g/m2〜4.0g/m2であることが好ましい。塗工量が乾燥時で0.5g/m2未満では、染料の定着においてムラが生じたりして、染料受容性が低下し、また塗工量が多すぎても、原材料のムダであり、また乾燥時間が多く必要となり、生産性等が低下する。
本発明の熱転写受像シートは、基材と染料受容層との間に、必要に応じて帯電防止層、クッション層、白色顔料および蛍光増白剤を添加した中間層や易接着層等の層を形成してもよい。
次に、実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に詳述する。尚、文中、部又は%とあるのは、特に断りのない限り重量基準である。また、重量平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算値である。
また、ポリビニルアセタール樹脂の組成分析は、「高分子ハンドブック」(日本高分子学会編)p.306〜308に記載されている方法に準拠して求めることができる。まず下記の「ブチラール成分試験方法」に準拠して、アセトアルデヒド及びブチルアルデヒドによってアセタール化された部分の重量%を、滴定法によって算出した。また、下記の「ビニルアセテート成分試験方法」に準拠して、ビニルアセテート部分の割合(重量%)を算出し、ビニルアルコール部分は、上記2成分を100%から減することにより算出した。一方ポリビニルアセタール樹脂を、流延法等により厚さ数十μm程度の膜に調製し、その赤外吸収スペクトルから混合アルデヒドのそれぞれのアルデヒドによるアセタール化部分の割合を算出した。
[ブチラール成分試験方法]
試料約0.4gを秤量(Sg)し、200ml容の共栓三角フラスコに入れ、1−ブタノール10mlを添加して溶解する。塩酸ヒドロキシルアミン約7.5gを水約100mlに溶解して調製した1N溶液10mlを振り混ぜながら加え、冷却器を取り付けて沸騰水浴中で1時間加熱する。冷却後滴定用のN/10水酸化ナトリウム溶液の一部約10mlを加え、溶液を振り混ぜながらメタノール10mlを添加する。ブロモフェノールブルーを指示薬として遊離した塩酸をN/10水酸化ナトリウム溶液(力価F)で滴定(本試験Aml、空試験Bml)し、別途求めた純分(P%)とともに次式に代入してブチラール成分の濃度を算出する。
ブチラール成分(%)=100×1.42×(A−B)×F/(P×S)
[ビニルアセテート成分試験方法]
試料約0.4gを秤量(Sg)し、200ml容の共栓三角フラスコ中でエタノール25mlに溶解する。この溶液を振り混ぜながらN/10水酸化ナトリウム溶液5mlを滴下し、冷却器を取り付けて沸騰水浴中で1時間加熱する。冷却後N/10塩酸5mlを滴下して振り混ぜ、30分静置する。フェノールフタレインの0.1%溶液を指示薬として過剰の塩酸をN/10水酸化ナトリウム溶液(力価F)で滴定(本試験Aml、空試験Bml)し、別途求めた純分(P%)とともに次式に代入してビニルアセテート成分の濃度を算出する。
ビニルアセテート成分(%)=100×0.86×(A−B)×F/(P×S)
(実施例1)
厚さ6μmの片面易接着処理済ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(三菱化学ポリエステルフィルム(株)製、ダイヤホイルK203E)の易接着処理面に、下記組成の染料層塗工液をグラビアコーティングにより、乾燥塗布量が1.2g/mになるように塗布、乾燥して染料層を形成し、実施例1の熱転写シートを作製した。尚、上記基材の他方の面に、予め下記組成の耐熱滑性層用プライマー層組成液を乾燥時0.2g/m2の塗布量になるように塗布および乾燥し、該プライマー層の表面に下記の耐熱滑性層用組成液を乾燥時1.0g/m2になるように塗布、乾燥させた後、60℃で5日間加熱処理を行ない、耐熱滑性層を形成しておいた。
<染料層塗工液>
Solvent Blue 63 6.0部
ポリビニルアセタール樹脂1 3.0部
(重量平均分子量40万、全アセタール化度に対するブチラール化度の割合(ブチラール化/全アセタール化)100%、アセタール化された構造単位は81wt%、特開平11−349629号公報の調製法により製造)
メチルエチルケトン 45.5部
トルエン 45.5部
<耐熱滑性層用プライマー層組成液>
ポリエステル樹脂 10.0部
(ニチゴーポリエスター LP−035;日本合成化学工業(株)製)
メチルエチルケトン 90.0部
<耐熱滑性層塗工液>
ポリビニルブチラール樹脂 13.6部
(エスレックBX−1 積水化学工業(株)製)
ポリイソシアネート硬化剤 0.6部
(タケネートD218 武田薬品工業(株)製)
リン酸エステル 0.8部
(プライサーフA208N 第一工業製薬(株)製)
メチルエチルケトン 42.5部
トルエン 42.5部
(実施例2〜4、比較例1〜5)
実施例1で作製した熱転写シートにおいて、染料層塗工液を表1に示される組成にした以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜4、及び、比較例1〜5の熱転写シートを作製した。
なお、各染料層塗工液において用いられたポリビニルアセタール樹脂はそれぞれ以下の通りである。
ポリビニルアセタール樹脂2:重量平均分子量40万、全アセタール化度に対するブチラール化度の割合(ブチラール化/ブチラール化+アセトアセタール化)75%、アセタール化された構造単位は80wt%、特開平11−349629号公報の調製法により製造
ポリビニルアセタール樹脂3:重量平均分子量40万、全アセタール化度に対するブチラール化度の割合(ブチラール化/ブチラール化+アセトアセタール化)50%、アセタール化された構造単位は73wt%、特開平11−349629号公報の調製法により製造
ポリビニルアセタール樹脂4:重量平均分子量30万、全アセタール化度に対するブチラール化度の割合(ブチラール化/ブチラール化+アセトアセタール化)35%、アセタール化された構造単位は88wt%、特開平11−349629号公報の調製法により製造
ポリビニルアセタール樹脂5:重量平均分子量22万、全アセタール化度に対するブチラール化度の割合(ブチラール化/ブチラール化+アセトアセタール化)0%、アセタール化された構造単位は87wt%、特開平11−349629号公報の調製法により製造
ポリビニルアセタール樹脂6:重量平均分子量13万、全アセタール化度に対するブチラール化度の割合(ブチラール化/全アセタール化)100%、アセタール化された構造単位は73wt%、特開平11−349629号公報の調製法により製造
ポリビニルアセタール樹脂7:重量平均分子量20万、全アセタール化度に対するブチラール化度の割合(ブチラール化/ブチラール化+アセトアセタール化)40%、アセタール化された構造単位は86.5wt%、特開平11−349629号公報の調製法により製造
リン酸エステル:第一工業製薬(株)製、プライサーフA208N
Figure 0004844521
[評価]
<異常転写及び熱融着の評価>
上記の各実施例及び比較例で作製した熱転写シートを、25℃50%RH環境にて、以下の熱転写受像シートと組み合わせて、下記のような印画条件で15段階に異なるエネルギーを与え、15段階の階調を有する黒色染料層の印画物を形成した。
(熱転写受像シート)
(1)大日本印刷(株)製、白色塩化ビニルカード(塩化ビニルからなる基材が染料受容層を兼ねている。)
(2)大日本印刷(株)製、PET−Gカード(テレフタル酸、エチレングリコール、シクロヘキサンジメタノールのポリエチレンテレフタレート共重合体からなるポリエステル基材が、染料受容層を兼ねている。)
(印画条件)
サーマルヘッド;KEE−57−12GAN2−STA(京セラ(株)製)
発熱体平均抵抗値;3303(Ω)
主走査方向印字密度;300dpi
副走査方向印字密度;300dpi
印画電圧;18(V)
1ライン周期;3.0(msec.)
印字開始温度;35(℃)
印加パルス(階調制御方法);1ライン周期中に、1ライン周期を256に等分割したパルス長をもつ分割パルスの数を0から255個まで可変できるマルチパルス方式のテストプリンターを用い、各分割パルスのDuty比を85%に固定し、ライン周期当たりのパルス数、0から255個を15分割した。これにより、15段階に異なるエネルギーを与えることができる。
異常転写、熱融着の評価基準は、以下のとおりである。なお、異常転写とは、染料層と熱転写受像シートの受容層間の離型性が悪いため、印画後、染料層の一部が受容層側に転写してしまう現象をいう。また、熱融着とは、染料層と熱転写受像シートの受容層間の離型性が悪いため、印画後、染料層と受容層が剥がれなくなってしまう現象をいう。
5:異常転写、熱融着の発生が無い。
4:印画面積の40%未満で異常転写が発生した。
3:印画面積の40%〜60%で異常転写が発生した。
2:印画面積の60%以上で異常転写が発生した。
1:熱融着が発生する。
2.基材シートとの密着性評価
各実施例及び比較例で作製した熱転写シートのシアン染料層の上にニチバン(株)製のメンディングテープMDLP−12を貼り付け、剥離角180°にてそのテープを剥離し、基材シートと染料層との密着性を評価した。
<評価基準>
○:染料層の取られ無し。
×:染料層がテープに接着し、剥がれる。
3.熱転写シートの保存安定性
各実施例及び比較例で作製した熱転写シートを、40℃湿度90%環境に96時間保存した後、大日本印刷(株)製、白色塩化ビニルカードに印加パルスを0とした以外は上記異常転写評価の印画条件を用いて白ベタ印画を行い、印画物を目視により確認し評価した。
<評価基準>
○:染料の汚れなし。
×:染料の汚れあり。
4.耐熱滑性層への染料移行性
各実施例及び比較例で作製した熱転写シートの染料層と耐熱滑性層を対向させ、20kg/cm荷重をかけて、温度40℃、湿度90%RHの環境下で96時間保存した。以下の測色条件で保存前後の耐熱滑性層の色差ΔE*abを求め、耐熱滑性層の染料移行性を評価した。
[測色条件]
分光光度計を用いて、白色基準を絶対値とし、D65光源、観測視野2°、濃度標準をANSI STATUS Aとして、色度値L、a、bを測定する。ΔE*abは以下のように求めた。
ΔE*ab=(保存前後の耐熱滑性層のL値の差) +(保存前後の耐熱滑性層のa値の差) +(保存前後の耐熱滑性層のb値の差)
<評価基準>
○:染料層と対向させて、荷重下で保存する前と後の耐熱滑性層の色差ΔE*abが5.0未満であり、良好である。
△:染料層と対向させて、荷重下で保存する前と後の耐熱滑性層の色差ΔE*abが5.0以上6.0未満であり、悪い。
×:染料層と対向させて、荷重下で保存する前と後の耐熱滑性層の色差ΔE*abが6.0以上であり、非常に悪い。
5.転写濃度
各実施例及び比較例で作製した熱転写シートを用いて、大日本印刷(株)製、白色塩化ビニルカードと組み合わせて、上記異常転写評価の印画条件にて印画を行い、マクベス反射濃度計RD−918にて、最大転写濃度を測定した。
<評価基準>
◎:最大転写濃度が1.7以上
○:最大転写濃度が1.6以上1.7未満
△:最大転写濃度が1.5以上1.6未満
上記の各評価の結果は、表1に併せて示した。
上記の評価結果より、染料層のバインダーを上記特定のポリビニルアセタール樹脂を主成分として含有させた本発明に係る実施例1〜4の熱転写シートにおいては、印字速度の高速化に対応しながら、印画における熱転写シートの染料層と被転写体との異常転写及び熱融着防止性能が高いことが明らかになった。従来の熱転写シートによれば熱融着しやすかった非結晶性のポリエチレンテレフタレート共重合体の受容層を有する熱転写受像シート(PET−Gカード)に対しても、実施例1〜3の熱転写シートは離型剤を配合していなくても、異常転写及び熱融着防止性能が高かった。実施例4の熱転写シートは、実施例3の熱転写シートにおいて少量(ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して3重量部)の離型剤を加えたものであるが、基材フィルムとの密着性や保存安定性を損なうことなく、均一な塗膜が形成され、更に異常転写防止性能が向上することが明らかになった。
また、実施例1〜4の熱転写シートにおいては、基材シートとの密着性や保存安定性が良好で、印画濃度に優れ、印画の色むらも観測されなかった。実施例の中でも、ブチラール化度が70%以上であるポリビニルアセタール樹脂を用いると、転写濃度が高くなる傾向が明らかになった。
比較例1の染料層は、分子量が30万、全アセタール化度に対するブチラール化度の割合(ブチラール化/ブチラール化+アセトアセタール化)35%のポリビニルアセタール樹脂をバインダーとして用いたものであるが、白色塩化ビニルカードにおいては、異常転写及び熱融着が防止されたものの、PET−Gカードに対しては、印画面積の殆どで異常転写が発生した。
また、比較例2の染料層は、分子量が20万程度、全アセタール化度に対するブチラール化度の割合(ブチラール化/ブチラール化+アセトアセタール化)0%のポリビニルアセタール樹脂をバインダーとして用いたものであるが、白色塩化ビニルカードに対しては、異常転写及び熱融着が防止されたものの、PET−Gカードに対しては、熱融着が発生して染料層と受容層が剥がれなくなってしまった。
比較例3の染料層は、分子量が13万、全アセタール化度に対するブチラール化度の割合(ブチラール化/ブチラール化+アセトアセタール化)100%のポリビニルアセタール樹脂をバインダーとして用いたものであるが、白色塩化ビニルカードに対しても、PET−Gカードに対しても、印画面積の約半分で異常転写が発生した。
また、比較例4の染料層は、分子量が20万、全アセタール化度に対するブチラール化度の割合(ブチラール化/ブチラール化+アセトアセタール化)40%のポリビニルアセタール樹脂をバインダーとして用いたものであるが、白色塩化ビニルカードに対しては、異常転写及び熱融着が防止されたものの、PET−Gカードに対しては、熱融着が発生して染料層と受容層が剥がれなくなってしまった。
比較例5の染料層は、比較例4の染料層において、PET−Gカードに対する異常転写評価がある程度向上する量(ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して10重量部)の離型剤を加えたものである。比較例4では熱融着が発生していたのに対し、印画面積の40%〜60%で異常転写が発生した状態に向上したものの、ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して10重量部もの離型剤を加えると、基材フィルムとの密着性が悪化し、更に保存安定性が悪化してしまうことが明らかになった。
本発明の熱転写シートである一つの実施形態を示す概略断面図である。 本発明の熱転写シートである他の一つの実施形態を示す概略断面図である。 本発明の熱転写記録材料である一つの実施形態を示す概略断面図である。
符号の説明
1 基材
2 染料層
3 耐熱滑性層
4 下引き層
10 熱転写シート
11 基材
12 染料受容層
20 熱転写受像シート
30 熱転写記録材料

Claims (4)

  1. 基材の一方の面に耐熱滑性層を設け、該基材の他方の面に、染料とバインダーとを含有する染料層を設けた熱転写シートにおいて、前記染料層におけるバインダーが、重量平均分子量が40万以上50万以下で、且つ、アセタール化された構造単位が73〜81重量%であり、全アセタール化度に対するブチラール化度の割合(ブチラール化/全アセタール化)が50%以上であるポリビニルアセタール樹脂を主成分として含有することを特徴とする、熱転写シート。
  2. 前記ポリビニルアセタール樹脂において、全アセタール化度に対するブチラール化度の割合(ブチラール化/全アセタール化)が70%以上であることを特徴とする、請求項1に記載する熱転写シート。
  3. 前記染料層中に、離型剤がバインダーの全固形分100重量部に対して3重量部以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載する熱転写シート。
  4. 請求項1乃至3のいずれかに記載の熱転写シートと、基材の少なくとも一方の面に染料受容層を備えた熱転写受像シートとからなり、前記熱転写シートの染料層と前記熱転写受像シートの染料受容層とを重ね合わせ、加熱手段により前記染料層中の染料を前記染料受容層に転写可能な熱転写記録材料において、熱転写受像シートの染料受容層がポリエステル、ポリウレタン、及びポリカーボネートよりなる群から選択される1種以上を主成分として含有することを特徴とする熱転写記録材料。
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