JP5124856B2 - 熱延鋼板の製造装置及び熱延鋼板の製造方法 - Google Patents

熱延鋼板の製造装置及び熱延鋼板の製造方法 Download PDF

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本発明は、熱延鋼板の製造装置及び熱延鋼板の製造方法に関し、特に、平坦度に起因する熱延鋼板の品質不良を低減することが可能な、熱延鋼板の製造装置及び熱延鋼板の製造方法に関する。
熱延鋼板は、加熱炉で加熱されたスラブを粗圧延機で粗圧延して粗圧延材とし、搬送テーブルを用いて粗圧延機から仕上圧延機へ所定の搬送パターンで搬送し、仕上圧延機で所定の寸法へと圧延し、所定の条件で冷却する冷却工程を経た後、最終的に巻き取り機にて巻き取られることで製造される。
この際、仕上圧延機出側における鋼板の平坦度(鋼板の平坦形状)が不良であると、冷却工程でさらに鋼板の平坦度が崩れてしまい、冷却工程後の平坦度が不良になるという問題があった。このような平坦度不良を解決するため、これまでに、熱延鋼板の製造方法が提案されてきている。
例えば、特許文献1には、冷却工程後の平坦度がフラットの場合が必ずしも平坦度起因に関する品質不良が最小になるとは限らないことに着目し、少なくともスリ疵、水乗りマーク、コイラエッジ疵に関する品質不良が最小になるように、過去の実績に基づきオフラインもしくはオンラインにて冷却工程後の平坦度の最適目標値を設定すること等を特徴とする熱延鋼板の製造方法が記載されている。また、特許文献1には、冷却工程後の平坦度が設定された目標値となるように、冷却工程前後に平坦度計を設置し、冷却工程における平坦度の変化に応じて仕上圧延機出側の平坦度の目標値を修正し、冷却工程前の平坦度が修正した平坦度の目標値となるように、仕上圧延機内のワークロールベンダー、バックアップロールベンダー、ワークロールシフト、中間ワークロールシフト、ペアクロス等の平坦度変更アクチュエータの設定を変更する技術も記載されている。また、特許文献1には、冷却工程における平坦度の変化は鋼板の幅方向の温度分布と関係するため、平坦度計だけではなく平坦度計直近に設置した幅方向温度計の実績も用いて冷却工程における平坦度の変化をより精度良く推定する工夫についても記載されている。
また、特許文献2には、圧延機出側で板形状を検出し、検出結果に基づき形状制御端を調整して板形状を制御する温間又は冷間圧延において、圧延機出側で板を冷却した後に板幅方向の形状分布及び板温度分布を検出し、検出した板幅方向の板温度分布に基づいて板幅方向の温度分布がほぼ一様となるように板幅方向の冷却媒体散布量分布を調整するとともに、検出した形状分布に基づいて目標板形状となるように圧延機の形状制御端を調整することを特徴とする板の温間又は冷間圧延における形状制御方法が記載されている。
特願2008−50639号 特開平2−255209号公報
特許文献1に開示されている技術では、鋼板の幅方向の温度分布も考慮して、冷却工程後の平坦度を予測している。そのため、鋼板の幅方向の温度分布を考慮せずに冷却工程における平坦度の変化を予測する場合と比較して、冷却工程後の平坦度を精度良く推定できるため、平坦度に起因する品質不良が最小となるように平坦度を制御しながら熱延鋼板を製造できる特徴がある。しかしながら、特許文献1に開示されている技術において、幅方向温度計は、冷却工程における平坦度の変化のばらつきを低減するためではなく、あくまでも冷却工程における平坦度の変化を予測するために利用するだけである。そのため、冷却工程における平坦度の変化の予測が外れた場合には、冷却工程後の平坦度が設定した目標から外れ、平坦度に起因する熱延鋼板の品質不良を充分に低減できない虞があるという問題点があった。
また、特許文献2に開示されている技術によれば、圧延機出側付近における幅方向温度分布をほぼ一様にすることで、圧延機出側付近の幅方向温度分布が平坦度に与える影響を排除することができる。しかし、特許文献2に開示されている技術は、温間又は冷間圧延における形状制御方法であるため、熱延鋼板の製造時に仕上圧延機と巻き取り機との間に配置された冷却装置を用いて行われるような冷却工程を想定していないばかりか、温間又は冷間圧延に比べて熱間圧延での幅方向の温度差は大きいことが知られている。それゆえ、特許文献2に開示されている技術により、仕上圧延工程と冷却工程との間における熱延鋼板の幅方向温度分布をほぼ一様にするのに要する冷却媒体散布量は、温間又は冷間圧延に比べて熱間圧延では多くなってしまい、設備上の制約で幅方向温度分布をほぼ一様にすることが困難である。また、多額の費用をかけて、ほぼ一様にできる設備を設置したとしても、特許文献2で想定していない冷却工程によって平坦度が変化してしまうため、特許文献2に開示されている技術を用いても冷却工程後の熱延鋼板の平坦度を目標どおりに制御できず、平坦度に起因する熱延鋼板の品質不良を低減できない虞があるという問題があった。
そこで、本発明は、平坦度に起因する熱延鋼板の品質不良を低減することが可能な、熱延鋼板の製造装置及び熱延鋼板の製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく、熱延鋼板の製造装置及び熱延鋼板の製造方法について調査した結果、以下の知見を得た。
(1)知見1
鋼板の種類、及び、冷却工程の操業条件がほぼ同様であるものを対象に、鋼板の長手方向位置及び幅方向位置の同一点について、仕上圧延機出側及び巻き取り機直前に配置した平坦度計を用いて平坦度を測定した。結果を図4に示す。図4の縦軸が巻き取り直前の熱延鋼板の平坦度[%]であり、同横軸が仕上圧延機の出側における熱延鋼板の平坦度[%]である。図4より、仕上圧延機出側の平坦度と巻き取り機直前の平坦度との間には、直線で近似可能な関係(傾きをA、切片をBとする)が成立するが、必ずしも原点を通るわけではない。これは、仕上圧延機出側における鋼板の平坦度(=急峻度)がゼロ、すなわち鋼板が平坦(フラット)であっても、冷却工程で鋼板の平坦度が変化し、その結果、巻き取り機直前における鋼板の平坦度が概ねマイナス、すなわち、中伸び傾向となっていることを意味する。
その原因を調査すべく、仕上圧延機出側における鋼板の平坦度が−0.5%〜0.5%であったデータを対象に、仕上圧延機出側に設置した平坦度計の近傍に設置した幅方向温度計の測定値と、巻き取り機直前に設置した平坦度計の測定値との関係を調査した。結果を図5に示す。図5の縦軸が仕上圧延機の出側における熱延鋼板の幅方向温度偏差[℃]であり、同横軸が巻き取り直前の熱延鋼板の平坦度[%]である。図5のBは、図4における直線の切片と対応している。ここで、「幅方向温度偏差」は、鋼板の幅方向中央部に対するエッジ部の温度の低下量(鋼板の幅方向中央部の温度と鋼板の幅方向端部の温度との差)であり、そのエッジ部の位置は平坦度計による平坦度の測定位置とほぼ同一位置にしている。図5より、幅方向温度偏差が大きいほど、巻き取り機直前における鋼板の平坦度がマイナス側に変化している。すなわち、図5より、幅方向温度偏差と冷却工程における平坦度の変化との間には相関があることが判明した。
ところで、特許文献1に開示されている技術では、仮に、巻き取り機直前における鋼板の平坦度をゼロにする場合、仕上圧延機出側における鋼板の平坦度の目標を−B/Aに設定することで、巻き取り機直前における鋼板の平坦度を概ねゼロにできる特徴がある。これは、図5に示されるように、仕上圧延機出側における幅方向温度偏差の平均がΔTfであることを前提にして、仕上圧延機出側における鋼板の平坦度の目標を設定することを意味する。したがって、仕上圧延機出側における幅方向温度偏差がΔTfになるように幅方向温度偏差を変更する装置(以下において、「温度変更手段」又は「幅方向温度変更アクチュエータ」ということがある。)を使用することで、冷却工程における鋼板の平坦度の変化のばらつきを小さくすることができ、その結果、図4に示す仕上圧延機出側における鋼板の平坦度と巻き取り機直前における鋼板の平坦度との直線の関係がより明確になることを知見した。なお、特許文献2に開示されている技術では、幅方向温度偏差をゼロにする必要があるため、幅方向温度変更アクチュエータの駆動に要する製造コストが高くなるが、仕上圧延機出側における幅方向温度偏差がΔTfになるように制御する本技術を用いれば、幅方向温度偏差を必ずしもゼロにする必要がないため、幅方向温度変更アクチュエータの駆動に要する製造コストを削減できるメリットもある。
(2)知見2
さらに、図5において仕上圧延機出側における幅方向温度偏差がΔTf近傍である15℃〜20℃に限定して、巻き取り機直前に設置した平坦度計の測定値と、当該平坦度計の近傍に設置した幅方向温度計の測定値から算出した幅方向温度偏差との関係を調査した。結果を図6に示す。図6の縦軸が巻き取り直前の熱延鋼板の幅方向温度偏差[℃]であり、同横軸が巻き取り直前の熱延鋼板の平坦度[%]である。図6のBは、図4における直線の切片と対応している。図6より、仕上圧延機出側の幅方向温度偏差がΔTfとなるように幅方向温度変更アクチュエータを使用するのみならず、巻き取り機直前の幅方向温度偏差をΔTcとなるように使用することで、仕上圧延機出側における鋼板の平坦度と巻き取り機直前における鋼板の平坦度との関係がより一層明確になり、鋼板の平坦度のばらつきを小さくすることができることを知見した。
(3)知見3
図5や図6に結果が示される調査と同様の調査を、様々な鋼板の種類、寸法、及び操業条件に対して行ったところ、特許文献1に記載されているように、鋼板の種類、寸法、及び操業条件に応じて図4に示される直線の傾きAや切片Bの定数が変化することと同様に、図5に示されるΔTfや図6に示されるΔTcも変化し、さらに、仕上圧延機出側における鋼板の平坦度によってもこれら(ΔTfやΔTc)が変化することを知見した。したがって、仕上圧延機出側に設置した平坦度計の測定値も考慮して、製造すべき鋼板のΔTfやΔTcを変更するように幅方向温度変更アクチュエータを使用することで、冷却工程における平坦度のばらつきをより一層低減することができる。
(4)知見4
幅方向温度変更アクチュエータは、鋼板の幅方向中央部の温度を維持しつつ、幅方向端部の特定部分のみを加熱/冷却可能なものであることが好ましく、仕上圧延機入側(すなわち粗圧延機と仕上圧延機との間)、仕上圧延機内、仕上圧延機出側、及び、巻き取り機直前のいずれの場所に設置してもよい。以下に、上記知見を用いた動作制御が可能な幅方向温度変更アクチュエータを例示する。以下に例示する複数の幅方向温度変更アクチュエータは、2以上を組み合わせて使用してもよく、以下に例示する複数の幅方向温度変更アクチュエータの機能を兼ね備えた一の装置を使用してもよい。
1)特公昭60−125号公報に記載された、トランスバース・フラックス・ヒーティング型インダクターや、ロンジテューデイナル・ヒーティング型インダクター等の電気的な端部加熱装置。
2)特開2005−271052号公報に記載された、サイドガイドに設置された幅方向の端部の特定位置を冷却する冷却装置。
3)特開2000−192146号公報に記載された、冷却装置の上下面それぞれに鋼板表面に平行な台形状の遮蔽板を通板方向に移動させることで、幅方向の流量分布を変更することができる冷却装置。
4)特開昭59−197313号公報に記載された、仕上圧延機出側に設置された冷却装置において、上部冷却装置からの注水幅を調整する受水板を幅方向に移動可能に設置したエッジマスキング装置、及び/又は、下部冷却装置から噴射された冷却水の流れを調整する遮蔽板を幅方向に移動可能に設置したエッジマスキング装置。
上記1)〜4)は、鋼板の幅方向中央部の温度を維持しつつ、幅方向端部の温度を変更できる特徴があるが、以下に示す冷却装置では、幅方向端部の温度のみならず、幅方向中央部の温度も変化してしまうため、幅方向中央部の温度を維持するように冷却装置の設定を変更することが必要となる。すなわち、幅方向中央部の温度が所定の温度になるように制御しながら鋼板を製造する場合、以下に示す幅方向温度変更アクチュエータを用いると、幅方向中央部に加えて幅方向端部の温度も変化してしまうため、幅方向温度偏差を所定の値に制御するためには、冷却工程の冷却条件も考慮しながら下記冷却装置を含む幅方向温度変更アクチュエータの動作を制御する必要がある。
5)特開2000−317513号公報に記載された、仕上圧延機出側から巻き取り機までに設置している冷却装置。この冷却装置は、幅方向中央部の温度を所定の温度とすべく、通板方向に多数の冷却スプレー列が鋼板の上下面と向かい合うように設置されており、通常は幅方向の流量特性を固定したまま、各スプレーから噴射される冷却水の流量を個別に変更するか、又は、各スプレーの駆動用のバルブをON/OFFすることで、所定の冷却指示を満足するように使用される。そのため、これらスプレーの一部について、幅方向の流量特性を意図的に変化するように設備改造し、それら複数のスプレーを組み合わせることにより、幅方向端部の温度を幅方向中央部に対して相対的に変更することができる。
6)上記5)のような冷却装置でも、下面からのスプレーを多く使用すると、幅方向の流量特性を意図的に変更せずとも、鋼板に接触することなく鋼板の横を上方へと噴き上げられた冷却水が鋼板の幅方向端部上面へと落下することにより、鋼板の端部が過冷却される。そのため、この特徴を活かすべく、鋼板の上下面へ向けてスプレーから噴射される冷却水流量、又は、鋼板の上下面へ向けて冷却水を噴射するスプレーのON/OFF本数を上下面でそれぞれ個別に変更することにより、幅方向端部の温度を幅方向中央部に対して相対的に変更することができる。
(5)知見5
幅方向温度計は平坦度計の近傍、すなわち、平坦度計から5m程度以内に設置することが好ましいが、設置スペースが狭く、両者が接近せざるを得ない場合がある。そのため、両者の測定視野が重なっても、各機器(幅方向温度計及び平坦度計)から鋼板へと向かう波長が干渉することなく各機器を用いた測定が正常に行えるように、それぞれの機器の測定波長を互いに異なるように設定すべきである。例えば、幅方向温度計の測定波長を0.7μm以上の赤外線とし、平坦度計の測定波長を0.4μm以上0.7μm未満の紫外線とする等により、各機器の測定を正常に行うことが可能になる。なお、各機器の測定を正常に行うことが可能であれば、各機器の具体的な測定波長は特に限定されるものではない。
本発明は、上記知見に基づいて完成されたものである。以下、本発明について説明する。
本発明、粗圧延機と、該粗圧延機の下流側に配置された仕上圧延機と、該仕上圧延機の下流側に配置された巻き取り機とを具備する、熱延鋼板の製造装置を用いて熱延鋼板を製造する方法であって、熱延鋼板の製造装置は、熱延鋼板の幅方向の温度分布を変更可能な温度変更手段、及び、該温度変更手段の動作を制御可能な制御装置を備え、温度変更手段は粗圧延機と巻き取り機との間に配置され、少なくとも、熱延鋼板の平坦度を測定可能な平坦度計、及び、熱延鋼板の幅方向の温度を測定可能な幅方向温度計が、仕上圧延機の出側に備えられ、かつ、熱延鋼板の平坦度を測定可能な平坦度計が、巻き取り機の入側に備えられており、熱延鋼板の平坦度の目標値を定める平坦度特定工程と、平坦度計による測定結果と幅方向温度計による測定結果とに基づいて、熱延鋼板の平坦度と熱延鋼板の幅方向温度との関係を特定する関係特定工程と、平坦度特定工程で定められた平坦度の目標値と関係特定工程で特定された関係とに基づいて、少なくとも、巻き取り機の入側における熱延鋼板の幅方向温度差の目標値を定める温度差特定工程と、少なくとも、巻き取り機の入側における熱延鋼板の幅方向温度差が、温度差特定工程で定められた巻き取り機の入側における幅方向温度差の目標値となるように、温度変更手段の動作を制御する動作制御工程と、を有することを特徴とする、熱延鋼板の製造方法である。
ここに、本発明において、「熱延鋼板の幅方向」とは、粗圧延機や仕上圧延機等によって圧延される熱延鋼板の面において熱延鋼板の進行方向(圧延方向)と直行する方向をいう。さらに、本発明において、「温度変更手段」は、熱延鋼板を加熱又は冷却することにより、熱延鋼板の幅方向における温度分布を変更し得る機器をいう。さらに、本発明において、「少なくとも、熱延鋼板の平坦度を…巻き取り機の入側に備えられる」とは、少なくとも、仕上圧延機の出側に配置された平坦度計及び幅方向温度計並びに巻き取り機の入側に配置された平坦度計が、本発明の熱延鋼板の製造装置に備えられることをいう。さらに、本発明において、「平坦度計が仕上圧延機の出側に備えられ」とは、仕上圧延機を通過した直後の熱延鋼板の平坦度を測定可能なように、平坦度計が配置されることをいう。さらに、本発明において、「幅方向温度計が仕上圧延機の出側に備えられ」とは、仕上圧延機を通過した直後の熱延鋼板の幅方向の温度を測定可能なように、幅方向温度計が配置されることをいう。ここで、「仕上圧延機を通過した直後」とは、仕上最終圧延機から冷却装置までの間であり、圧延機のローラ冷却水や冷却装置の水などの影響がなく、安定して測定できる箇所であればよく、仕上最終圧延機出側から約2〜15mの範囲に設置するのが好ましい。さらに、本発明において、「平坦度計が巻き取り機の入側に備えられる」とは、巻き取り機によって巻き取られる直前の熱延鋼板の平坦度を測定可能なように、平坦度計が配置されることをいう。さらに、本発明において、熱延鋼板を製造する際の「熱間圧延」の温度は、ロールバイト入側で板温度が約800℃〜約1200℃の範囲である。さらに、本発明において、「熱延鋼板の幅方向温度差」とは、熱延鋼板の幅方向中央部の温度と熱延鋼板の幅方向端部の温度との差をいう。
また、上記本発明において、さらに、熱延鋼板の幅方向の温度を測定可能な幅方向温度計が、巻き取り機の入側に備えられることが好ましい。
ここに、本発明において、「幅方向温度計が、巻き取り機の入側に備えられる」とは、巻き取り機によって巻き取られる直前の熱延鋼板の幅方向の温度を測定可能なように、幅方向温度計が配置されることをいう。ここで、「巻き取り機の入側」及び「巻き取られる直前」とは、例えば、仕上圧延機と巻き取り機との間に備えられる冷却装置(以下、本段落において「巻き取り前冷却装置」という。)と巻き取り機との間のことをいう。巻き取り機によって巻き取られる直前の熱延鋼板の幅方向の温度を測定する観点から、「巻き取り機の入側」及び「巻き取られる直前」は、巻き取り機から巻き取り前冷却装置側に30m以下の場所が好ましく、巻き取り機から巻き取り前冷却装置側に6m以上20m以下程度の場所とすることがさらに好ましい。
また、上記本発明において、さらに、熱延鋼板の平坦度を測定可能な平坦度計、及び/又は、熱延鋼板の幅方向の温度を測定可能な幅方向温度計が、仕上圧延機に備えられることが好ましい。
ここに、本発明において、「平坦度計が仕上圧延機に備えられる」とは、仕上圧延機で圧延されている熱延鋼板の平坦度を測定可能なように、仕上圧延機に備えられる複数のロールの間に平坦度計が配置されることをいう。さらに、本発明において、「幅方向温度計が仕上圧延機に備えられる」とは、仕上圧延機で圧延されている熱延鋼板の幅方向の温度を測定可能なように、仕上圧延機に備えられる複数のロールの間に幅方向温度計が配置されることをいう。
また、上記本発明において、さらに、熱延鋼板の幅方向の温度を測定可能な幅方向温度計が、粗圧延機の出側、及び/又は、仕上圧延機の入側に備えられることが好ましい。
ここに、本発明において、「幅方向温度計が粗圧延機の出側に備えられる」とは、粗圧延機で圧延された直後の熱延鋼板の幅方向の温度を測定可能なように、幅方向温度計が配置されることをいう。ここで、「粗圧延機で圧延された直後」とは、粗圧延機のローラ冷却水などの影響がなく安定して測定できる範囲であり、粗圧延機出側から20m以内とするのが好ましい。さらに、本発明において、「幅方向温度計が仕上圧延機の入側に備えられる」とは、仕上圧延機で圧延される直前の熱延鋼板の幅方向の温度を測定可能なように、幅方向温度計が配置されることをいう。ここで、「仕上圧延機で圧延される直前」とは、仕上圧延機のローラ冷却水やデスケーラーなどの影響がなく安定して測定できる範囲であり、仕上圧延機から約30m以内とするのが好ましい。
また、上記本発明において、温度変更手段に、下記(a)〜(h)からなる群より選択される1又は2以上が含まれることが好ましい。
(a)熱延鋼板の幅方向端部を加熱可能な、粗圧延機と仕上圧延機との間に設置された端部加熱装置。
(b)熱延鋼板の幅方向端部を冷却可能な、粗圧延機と仕上圧延機との間に設置された端部冷却装置。
(c)熱延鋼板へ向けて噴射される冷却剤の流量分布を熱延鋼板の幅方向で変更可能な、仕上圧延機に設置された幅方向冷却装置。
(d)熱延鋼板と接触する仕上圧延機のロールへ向けて噴射される冷却剤の流量分布を熱延鋼板の幅方向で変更可能な、仕上圧延機に設置されたロール冷却装置。
(e)熱延鋼板へ向けて噴射された冷却剤が熱延鋼板の幅方向端部表面へ到達することを阻害可能な、仕上圧延機と巻き取り機との間に設置された端部マスキング冷却装置。
(f)熱延鋼板へ向けて噴射される冷却剤の流量分布を熱延鋼板の幅方向で変更可能な、仕上圧延機と巻き取り機との間に設置された幅方向冷却装置。
(g)熱延鋼板へ向けて噴射される冷却剤の、熱延鋼板の幅方向における流量分布が固定され、かつ、冷却剤の噴射/非噴射を冷却装置毎に変更可能な、仕上圧延機と巻き取り機との間に設置された複数の冷却装置。
(h)熱延鋼板の表面及び/又は裏面へ向けて噴射される冷却剤の噴射形態を変更可能な、仕上圧延機と巻き取り機との間に設置された表裏面冷却装置。
ここに、本発明において、「冷却剤」とは、冷却媒体のことをいい、特別な薬剤に限定されるものではなく、冷却媒体であればいずれでも使用可能であり、例えば、単なる水道水や工業用水も用いることができる。さらに、本発明において、「熱延鋼板へ向けて噴射される冷却剤の流量分布を熱延鋼板の幅方向で変更可能」とは、例えば、熱延鋼板の幅方向中央部へ向けて噴射される冷却剤の流量を相対的に多くし、かつ、熱延鋼板の幅方向端部へ向けて噴射される冷却剤の流量を相対的に少なくする等により、熱延鋼板へ向けて噴射される冷却剤の流量を、熱延鋼板の幅方向の位置に応じて変動可能であることをいう。さらに、本発明において、「熱延鋼板と接触する仕上圧延機のロールへ向けて噴射される冷却剤の流量分布を熱延鋼板の幅方向で変更可能」とは、例えば、熱延鋼板の幅方向中央部と接触する仕上圧延機のロール表面へ向けて噴射される冷却剤の流量を相対的に多くし、かつ、熱延鋼板の幅方向端部と接触する仕上圧延機のロール表面へ向けて噴射される冷却剤の流量を相対的に少なくする等により、仕上圧延機のロールへ向けて噴射される冷却剤の流量を、熱延鋼板と接触する仕上圧延機のロールの位置に応じて変動可能であることをいう。
また、上記本発明において、温度変更手段に、上記(e)〜(h)からなる群より選択される1又は2以上の冷却装置が含まれ、該冷却装置に、熱延鋼板の平坦度を測定可能な平坦度計、及び/又は、熱延鋼板の幅方向の温度を測定可能な幅方向温度計が備えられることが好ましい。
ここに、本発明において、「冷却装置に、熱延鋼板の平坦度を測定可能な平坦度計が備えられる」とは、仕上圧延機による仕上圧延工程と巻き取り機による巻き取り工程との間に備えられる冷却工程(以下において単に「冷却工程」ということがある。)で冷却されている熱延鋼板の平坦度を測定可能なように、例えば、仕上圧延機と巻き取り機との間に配置された複数の冷却装置の間等に、平坦度計が配置されることをいう。さらに、本発明において、「冷却装置に、熱延鋼板の幅方向の温度を測定可能な幅方向温度計が備えられる」とは、冷却工程で冷却されている熱延鋼板の幅方向の温度を測定可能なように、例えば、仕上圧延機と巻き取り機との間に配置された複数の冷却装置の間等に、幅方向温度計が配置されることをいう。
また、上記本発明において、さらに、仕上圧延機によって圧延される熱延鋼板の平坦度を変更可能な平坦度変更手段、及び、該平坦度変更手段の動作を制御可能な平坦度制御装置が備えられることが好ましい。
ここに、「平坦度変更手段」としては、仕上圧延機に備えられる、幅方向の板厚分布を変更するワークロールベンダー、バックアップロールベンダー、ワークロールシフト、中間ワークロールシフト、及び、ペアクロス等を例示することができる。
本発明で用いる熱延鋼板の製造装置には、仕上圧延機の出側に平坦度計及び幅方向温度計が備えられ、かつ、巻き取り機の入側に平坦度計が備えられるので、これらの機器による測定結果を用いて温度変更手段の動作を制御することが可能になる。このようにして動作が制御された温度変更手段を用いて熱延鋼板の温度を変更しながら熱延鋼板を製造すると、巻き取り機によって巻き取られる直前の熱延鋼板の平坦度のばらつきを低減することができる。そして、本発明では、平坦度特定工程で定められた平坦度の目標値と、関係特定工程で特定された熱延鋼板の平坦度と幅方向温度との関係に基づいて、少なくとも、熱延鋼板の幅方向温度差の目標値が決定され、少なくとも、巻き取り機によって巻き取られる熱延鋼板の幅方向温度差が決定された目標値となるように温度変更手段の動作が制御される。そのため、本発明によれば、製造コストを低減しながら、平坦度に起因する熱延鋼板の品質不良を低減することが可能な、熱延鋼板の製造方法を提供することができる。
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の図面に示す形態は本発明の例示であり、本発明は図示の形態に限定されるものではない。
1.第1実施形態
図1は、第1実施形態にかかる熱延鋼板の製造装置100(以下において、単に「製造装置100」ということがある。)の形態例を簡略化して示す概念図である。図1において、熱延鋼板10は、紙面の左側から右側へと向かう方向に移動する。図1に示すように、熱延鋼板10を製造する製造装置100は、粗圧延機1、該粗圧延機1の下流側に設置された連続仕上圧延機2、該連続仕上圧延機2の下流側に設置された巻き取り機3、粗圧延機1と巻き取り機3との間に設置された温度変更手段4(以下において、「冷却装置4」ということがある。)、及び、冷却装置4の動作を制御可能な制御装置5、を具備し、さらに、連続仕上圧延機2の出側に配置された平坦度計6及び幅方向温度計7、並びに、巻き取り機7の入側に配置された平坦度計8及び幅方向温度計9を備えている。当該構成に加えて、製造装置100は、連続仕上圧延機2の入側に配置された端部加熱装置11、連続仕上圧延機2の出側に配置された温度計12、巻き取り機3の入側に配置された温度計13、冷却装置4の動作を制御する制御装置14、熱延鋼板の平坦度と幅方向温度との関係を演算し連続仕上圧延機2の出側における熱延鋼板の平坦度の目標値を演算する演算装置15、連続仕上圧延機2の動作を制御する制御装置16、巻き取り機3の入側における熱延鋼板の平坦度の目標値を演算する演算装置17、及び、熱延鋼板を巻き取り機3へと導くサイドガイド18を備えている。
製造装置100において、連続仕上圧延機2は、幅方向の板厚分布を変更するワークロールベンダー、バックアップロールベンダー、ワークロールシフト、中間ワークロールシフト、及び、ペアクロス等の平坦度変更アクチュエータを備えている。また、冷却装置4は、熱延鋼板10の上面及び下面へ冷却水を噴射可能なように構成され、冷却水を噴射する各スプレーのON/OFFを個別に制御可能なように構成されている。また、平坦度計6及び平坦度計8は、熱延鋼板10が鋼板の幅方向へ蛇行した場合であっても当該蛇行に追従可能なように構成され、幅方向の7点の平坦度を同時に測定可能な特徴を有している。また、温度計12及び温度計13は、熱延鋼板10の幅方向中央部の温度を測定する温度計である。また、制御装置14は、巻き取り機3によって巻き取られる熱延鋼板10の幅方向中央部の温度を所定の温度に制御するために、予め指定された冷却装置4の各スプレー(以下において、単に「各スプレー」ということがある。)の使用順序、並びに、温度計12及び温度計13で測定された幅方向中央部の温度に基づいて、各スプレーに対するON/OFF指令を遂次演算し、各スプレーの動作を制御する装置である。
図2は、製造装置100を用いて熱延鋼板10を製造する本発明の熱延鋼板の製造方法(以下において、「第1実施形態にかかる製造方法」ということがある。)に備えられる工程の流れを示すフローチャートである。図2に示すように、第1実施形態にかかる製造方法は、平坦度特定工程(工程S1)と、関係特定工程(工程S2)と、温度差特定工程(工程S3)と、動作制御工程(工程S4)と、を有している。以下、図1及び図2を参照しつつ、本発明について説明を続ける。
製造装置100を用いて熱延鋼板10を製造する際には、まず、これまでの操業において平坦度不良に起因して発生したスリ疵、水乗りマーク、コイラエッジ疵等の品質不良の実績値と、平坦度計8によって測定された平坦度の実績値との関係を、例えば演算装置17に記憶されているデータベースを参照することにより調査し、演算装置17を用いて、注目する品質不良が最小になる巻き取り直前の最適な平坦度(=平坦度の目標値λCaim)を特定する(平坦度特定工程)。なお、優先すべき品質は、鋼種、向け先、及び、下工程等を考慮する必要があるため、熱延鋼板10を製造する作業者が決定しても良く、当該決定を自動化できる環境が存在するのであれば、自動で決定しても良い。製造装置100では、演算装置17を用いて、当該決定を自動的に行う。
次に、これまでの操業により得られた情報(図4に相当する情報)を用いて、連続仕上圧延機2の出側における熱延鋼板10の平坦度(急峻度)λFと、巻き取り機3の入側における熱延鋼板10の平坦度(急峻度)λCとの関係(図4に直線で表される関係)を特定する。当該関係は、下記式(1)のように表すことができる。
λC=A×λF+B 式(1)
ここに、Aは図4に表される直線の傾きであり、Bは図4に表される直線の切片である。なお、係数A及び係数Bは、鋼種、寸法、及び、冷却装置4の操業条件(具体的には、冷却装置4の使用率や冷却水の流量。以下において同じ。)毎に特定される。
なお、ここでは、説明のしやすさを考慮して、上記式(1)を一次式で表現したが、下記式(1)’のように、λCは、λFと定数A1〜Anとからなる関数で表現することも可能である。
λC=f(λF、A1、…、An) 式(1)’
次に、これまでの操業により得られた情報を用いて、巻き取り機3によって巻き取られる熱延鋼板10(以下において、「巻き取り直前の熱延鋼板10」ということがある。)の平坦度と連続仕上圧延機2の出側における熱延鋼板10の幅方向温度偏差との関係(図5に相当する関係)、及び、巻き取り直前の熱延鋼板10の平坦度と巻き取り直前の熱延鋼板10の幅方向温度偏差との関係(図6に相当する関係)を特定する(関係特定工程)。なお、これらの関係を用いて導出されるΔTf(図5参照)及びΔTc(図6参照)は、鋼種、寸法、及び、冷却装置4の操業条件毎に特定される。
このようにして、熱延鋼板10の平坦度と幅方向温度偏差との関係を特定したら、これらの関係と平坦度の目標値λCaimとに基づいて、巻き取り直前の熱延鋼板10の幅方向温度偏差の目標値ΔTcaimを特定する(温度差特定工程)。
熱延鋼板10の製造時には、熱延鋼板10を圧延する度に、平坦度計6並びに平坦度計8を用いて熱延鋼板10の長手方向位置及び幅方向位置の同一箇所の急峻度を測定する(すなわち、平坦度計6を用いて平坦度を測定された熱延鋼板の部位と同一箇所の平坦度を、平坦度計8を用いて測定する)。そして、平坦度計6によって測定された平坦度の実績λFact、及び、平坦度計8によって測定された平坦度の実績λCactに基づいて、上記式(1)の係数A及び係数Bを演算装置15にて随時修正する。この修正には、例えば、一般に遂次最小二乗法と呼ばれるありふれた手法を用いることができるが、修正方法は遂次最小二乗法を用いた形態に限定されるものではなく、熱延鋼板10を製造する作業者の判断に基づいて修正する形態等とすることも可能である。また、演算装置15では、係数A及び係数Bのみならず、幅方向温度計7によって測定された幅方向温度、及び、幅方向温度計9によって測定された幅方向温度に基づいて、図5に表されるΔTf及び図6に表されるΔTcも、遂次更新する。
さらに、演算装置15では、熱延鋼板10を連続仕上圧延機2で圧延する前に、これから圧延する熱延鋼板10の鋼種、寸法、及び、予定されている冷却装置4の操業条件の情報に基づいて、過去に修正された係数A及び係数Bの情報を読み込む。加えて、演算装置15では、熱延鋼板10を製造する作業者によって、又は、演算装置15を用いて自動的に決定された、巻き取り直前の熱延鋼板10の平坦度の目標値λCaimに基づいて、連続仕上圧延機2の出側における熱延鋼板10の平坦度の目標値λFaimを算出する。λCaimとλFaimとの関係は、上記式(1)を変形した下記式(2)によって表すことができる。
λFaim=(λCaim−B)/A 式(2)
製造装置100において、制御装置16は、連続仕上圧延機2の出側における熱延鋼板10の平坦度が、演算装置15で設定された目標値λFaimとなるように、連続仕上圧延機2の平坦度変更アクチュエータの操作量を演算し、当該平坦度変更アクチュエータの動作を制御する。制御装置16で平坦度変更アクチュエータの操作量を演算する際の方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法を用いることができる。さらに、演算装置16は、平坦度計6で測定された熱延鋼板10の平坦度が目標値λFaimと異なる場合には、熱延鋼板10を連続仕上圧延機2で圧延している時に、当該情報に基づいて平坦度変更アクチュエータの操作量を修正するフィードバック制御を行うことで、連続仕上圧延機2の出側における熱延鋼板10の平坦度を目標値λFaimへと修正する機能も有している。
製造装置100において、制御装置5が本発明の特徴的な構成要素である。製造装置100における制御装置5は、熱延鋼板10の幅方向端部のみを加熱する端部加熱装置11、及び、熱延鋼板10の幅方向中央部の温度も変更するが幅方向中央部に対して相対的に幅方向端部の温度を変更可能な冷却装置4の操作量を演算することができ、制御装置5は、端部加熱装置11及び冷却装置4に対する動作指令を制御することができる。
制御装置5は、端部加熱装置11及び冷却装置4の操作量を演算し、端部加熱装置11及び冷却装置4の動作制御を実行可能なCPUと、このCPUに対する記憶装置とが設けられている。制御装置5のCPUは、マイクロプロセッサユニット及びその動作に必要な各種周辺回路を組み合わせて構成され、このCPUに対する記憶装置は、例えば、端部加熱措置11及び冷却装置4の操作量演算や動作制御に必要なプログラムや各種データを記憶するROMと、CPUの作業領域として機能するRAM等を組み合わせて構成される。当該構成に加えて、さらに、制御装置5のCPUが、ROMに記憶されたソフトウエアと組み合わされることにより、製造装置100における制御装置5が機能する。
製造装置100において、平坦度計6、幅方向温度計7、平坦度計8、及び、幅方向温度計9から制御装置5へ向けて出力された信号は、制御装置5の入力ポートを介して、入力信号としてCPUへと達する。制御装置5のCPUは、上記入力信号、及び、制御装置5のROMに記憶されたプログラムに基づいて、端部加熱装置11及び冷却装置4の操作量を演算し、制御装置5の出力ポートを介して、端部加熱装置11及び冷却装置4に対する動作指令を出力する。
製造装置100において、制御装置5は、熱延鋼板10が端部加熱装置11及び冷却装置4に到達するまでは、熱延鋼板10の材質、向け先、及び寸法等の操業条件から予め決められている操業テーブルに基づいて、端部加熱装置11の加熱条件(使用有無、加熱位置、加熱量)や、冷却装置4の各スプレーのON/OFFの使用順序を決定する。各スプレーのON/OFFの具体的な指令は、冷却装置4の入側における熱延鋼板10の温度、及び、冷却装置4の出側における熱延鋼板10の目標温度に応じて、制御装置14にて演算される仕組みとなっている。なお、端部加熱装置11の入側までに熱延鋼板10の幅方向の温度を測定可能な幅方向温度計が設置されているか、又は、図示されていない加熱炉内における熱延鋼板10の幅方向温度分布の計算値、若しくは、粗圧延機1の出側における熱延鋼板10の幅方向温度分布の計算値等が取り込めるシステム構成であれば、連続仕上圧延機2の出側における熱延鋼板10の幅方向温度偏差ΔTfの予測値が、連続仕上圧延機2の出側における熱延鋼板10の幅方向温度偏差の目標値ΔTfaimとなるように、端部加熱装置11の加熱条件を演算すべきである。幅方向温度偏差の予測方法は、例えば、『「鉄鋼業における制御」、第65頁〜第66頁、コロナ社』に記載されている差分式の伝熱計算方法等を用いることができる。
熱延鋼板10の先端が連続仕上圧延機2の出側に配置された平坦度計6、幅方向温度計7、及び、温度計12を通過した後は、巻き取り直前の熱延鋼板10の幅方向温度偏差が制御装置5で予め決めた目標値ΔTcaimとなるように、制御装置14によって、冷却装置4に備えられる各スプレーのON/OFF指令が演算される。この演算は、平坦度計6によって測定された熱延鋼板10の平坦度実績λFact、幅方向温度計7によって測定された熱延鋼板10の幅方向温度偏差実績ΔTfact、及び、温度計12によって測定された熱延鋼板10の幅方向中央部の温度実績Tfactに基づいて行われる。演算の概要は以下のとおりである。
まず、制御装置14は、冷却装置4に備えられる各スプレーの初期設定されたON/OFF使用順序、及び、上記Tfactを用いて、巻き取り直前の熱延鋼板10の幅方向中央部の温度Tcを予測計算し、この温度TcがTcaimとなるように、各スプレーに対する指令を算出する。各スプレーに対する指令(以下において、「スプレー指令」ということがある。)の算出式は、下記式(3)のように記述することができる。
X=f(Y、Tfact、Tcaim) 式(3)
ここに、Xはスプレー指令、Yは下記式(4)でも登場する各スプレーのON/OFF使用順序(式(3)においては、初期設定されたON/OFF使用順序も含む。)であり、fは関数である。
次に、制御装置5では、上記λfact、上記ΔTfact、及び、上記Xを用いて、巻き取り直前の熱延鋼板10の幅方向温度偏差ΔTcを予測計算し、この幅方向温度偏差ΔTcが上記目標値ΔTcaimとなるように、各スプレーのON/OFF使用順序を算出する。各スプレーのON/OFF使用順序の算出式は、下記式(4)のように記述することができる。
Y=g(λFact、ΔTfact、ΔTcaim、X) 式(4)
ここに、Xは上記式(3)で算出されたスプレー指令であり、gは関数である。
製造装置100を用いた熱延鋼板10の製造時には、上記式(3)で算出されたXを上記式(4)へと代入することによりYを算出し、算出されたYを上記式(3)へ代入することによりXを算出し、算出されたXを上記式(4)へと代入することによりYを算出し、という処理が繰り返され、式(4)を経る直前に式(3)で算出されたXと、式(4)を経た直後に式(3)で算出されたXとが一致するようになるまで収束計算が行われる。このような収束計算を行うことにより、巻き取り直前の熱延鋼板10の幅方向中央部の温度Tcが下記式(5)を満たし、巻き取り直前の熱延鋼板10の幅方向温度偏差ΔTcが下記式(6)を満たすような、スプレー指令X、並びに、各スプレーのON/OFF使用順序Yを算出する。そして、かかる算出結果に基づいて、冷却装置4の動作が制御される(動作制御工程)。
|Tcaim−Tc|<δ1 式(5)
|ΔTcaim−ΔTc|<δ2 式(6)
ここに、δ1及びδ2は収束判定用の定数であり、熱延鋼板10が満たすべき品質等に応じて、任意の値とすることができる。
以上、説明したように、第1実施形態にかかる本発明によれば、連続仕上圧延機2の出側に配置された平坦度計6、幅方向温度計7、及び、温度計12による測定値、並びに、巻き取り機3の入側に配置された、平坦度計8、幅方向温度計9、及び、温度計13による測定値を用いて決定された動作指令に基づいて、連続仕上圧延機2及び冷却装置4を動作させることにより、巻き取り機3によって巻き取られる熱延鋼板10の幅方向中央部の温度、及び、幅方向温度偏差が制御される。このようにして熱延鋼板10の幅方向中央部の温度、及び、幅方向温度偏差が制御されると、熱延鋼板10の平坦度のばらつきを低減することができるので、平坦度に起因する熱延鋼板の品質不良を低減することが可能な、熱延鋼板の製造装置及び熱延鋼板の製造方法を提供することができる。
2.第2実施形態
図3は、第2実施形態にかかる熱延鋼板の製造装置200(以下において、単に「製造装置200」ということがある。)の形態例を簡略化して示す概念図である。図3において、熱延鋼板20は、紙面の左から右へと向かう方向に移動する。図3において、図1と同様の構成を採るものには、図1にて使用した符号と同符号を付し、その説明を適宜省略する。
図3に示すように、熱延鋼板20を製造する製造装置200は、連続仕上圧延機2に熱延鋼板20の幅方向端部を冷却する端部冷却装置19及び熱延鋼板20の幅方向端部を加熱する端部加熱装置21が配置され、冷却装置4に熱延鋼板20の幅方向端部を冷却する端部冷却装置22が配置され、冷却装置4の入側に熱延鋼板20の幅方向端部を加熱する端部加熱装置23が配置された点を除き、製造装置100と同様に構成されている。
端部加熱装置11、端部冷却装置19、及び、端部加熱装置21の動作条件は、熱延鋼板20の先端が平坦度計6、及び、幅方向温度計7を通過するまでは、粗圧延機1の出側における熱延鋼板20の幅方向温度分布の実績値又は予測値に基づいて、伝熱計算等で求めた連続仕上圧延機2の出側における熱延鋼板20の幅方向温度偏差ΔTfの予測値がΔTfaimとなるように、制御装置5によって計算される。製造装置200において、端部加熱装置11、端部冷却装置19、及び、端部加熱装置21の動作は、制御装置5によって制御される。
そして、熱延鋼板20の先端が平坦度計6、及び、幅方向温度計7を通過した後は、ΔTfactがΔTfaimとなるように、端部加熱装置21及び端部冷却装置19の動作条件が制御装置5によって修正される。
製造装置200を用いた熱延鋼板20の製造方法(以下において、「第2実施形態にかかる製造方法」ということがある。)において、冷却装置4の各スプレーのON/OFF使用順序は、上記第1実施形態にかかる製造方法と同様に、巻き取り直前の熱延鋼板20の幅方向温度偏差ΔTcを予測計算し、この幅方向温度偏差ΔTcが目標値ΔTcaimとなるように算出される。ここで、製造装置200を用いた熱延鋼板20の製造方法は、上記第1実施形態にかかる製造方法と同様に、平坦度特定工程と、関係特定工程と、温度差特定工程と、動作制御工程と、を有している。第1実施形態にかかる製造方法と第2実施形態にかかる製造方法との違いは、第2実施形態にかかる製造方法の動作制御工程で冷却装置4の各スプレーのON/OFF使用順序を算出する際に、端部冷却装置22及び端部加熱装置23の制御率(0%の場合は未使用、100%の場合は設備能力の全てを利用する。)を考慮する点である。第2実施形態にかかる製造方法における、各スプレーのON/OFF使用順序(Z)の算出式を式(7)に、当該式(7)で使用される端部加熱装置23の加熱条件の算出式を式(8)に、式(7)で使用される端部冷却装置22の冷却条件の算出式を式(9)に、それぞれ示す。
Z=g1(C1、C2、λFact、ΔTfact、ΔTcaim、X) 式(7)
C1=g2(C3、C4、λFact、ΔTfact、ΔTcaim、X) 式(8)
C2=g3(C3、C4、λFact、ΔTfact、ΔTcaim、X) 式(9)
ここに、C1は端部加熱装置23による加熱条件、C2は端部冷却装置22による冷却条件である。また、C3は端部加熱装置23の制御率、C4は端部冷却装置22の制御率である。端部加熱装置23の制御率C3及び端部冷却装置22の制御率C4は、これらの駆動に要するコストや、冷却装置4による幅方向温度変化量に応じて設定すべき操業パラメータである。
第2実施形態にかかる製造方法の動作制御工程では、まず、巻き取り直前の熱延鋼板20の幅方向温度偏差Tcを予測計算する。次いで、予め指定した端部加熱装置23の制御率、及び、端部冷却装置22の制御率の範囲内で、予測計算された幅方向温度偏差ΔTcが目標値ΔTcaimとなるように、上記式(8)及び上記式(9)により、端部加熱装置23による加熱条件C1及び端部冷却装置22による冷却条件C2を算出する。そして、算出された加熱条件C1及び冷却条件C2も加味して、上記式(7)により、各スプレーのON/OFF使用順序を算出する。なお、上記説明では、上記式(8)及び上記式(9)により、加熱条件C1及び冷却条件C2を算出し、その後、上記式(7)により各スプレーのON/OFF使用順序Zを算出しているが、本発明は当該形態に限定されるものではない。本発明では、加熱条件C1、冷却条件C2、及び、各スプレーのON/OFF使用順序Zを同時に算出すべく、上記式(7)〜(9)を組み合わせることも可能である。
本発明の熱延鋼板の製造方法に関する上記説明では、平坦度特定工程と温度差特定工程との間に関係特定工程が存在する形態を例示したが、本発明の熱延鋼板の製造方法は、当該形態に限定されるものではない。本発明の熱延鋼板の製造方法は、温度差特定工程の前に、平坦度特定工程及び関係特定工程が存在していれば良く、関係特定工程と温度差特定工程との間に平坦度特定工程が存在する形態とすることも可能である。
本発明の熱延鋼板の製造方法において、ΔTfaim及びΔTcaimの値は、特に限定されるものではないが、熱延鋼板の製造コストを低減可能にする等の観点からは、0(ゼロ)以外の値とすることが好ましい。
また、粗圧延機と巻き取り機との間に温度変更手段が配置されている製造装置を用いる本発明の熱延鋼板の製造方法において、熱延鋼板を圧延する前から予め決まっている操業条件に基づいて、粗圧延機の出側から巻き取り機の直前までに設置した温度変更手段(熱延鋼板の幅方向の温度分布を変更可能な温度変更手段。以下において同じ。)を初期設定するとともに、熱延鋼板の先端が仕上圧延機の出側に設置した幅方向温度計を通過した後は、当該幅方向温度計による測定結果に基づいて、粗圧延機の出側から巻き取り機の直前までに設置されている温度変更手段の動作条件を修正することにより、仕上圧延機の出側における熱延鋼板の幅方向温度偏差が、設定されている仕上圧延機の出側における熱延鋼板の幅方向温度偏差の目標値(以下において、「仕上出側の目標値」ということがある。)になるように、粗圧延機の出側から巻き取り機の直前までに設置されている温度変更手段の動作を制御することが好ましい。かかる形態(以下において、「第1形態」ということがある。)とすることにより、平坦度に起因する熱延鋼板の品質不良を低減することが容易になる。
また、仕上圧延機の出側と巻き取り機との間に温度変更手段が配置されている製造装置を用いる本発明の熱延鋼板の製造方法において、熱延鋼板の先端が仕上圧延機の出側に設置した幅方向温度計を通過した後は、当該幅方向温度計による測定結果に基づいて、幅方向温度計と巻き取り機との間に設置されている温度変更手段の動作条件を修正することにより、巻き取り直前の熱延鋼板の幅方向温度偏差が、設定されている巻き取り機直前の熱延鋼板の幅方向温度偏差の目標値(以下において、「巻き取り直前の目標値」ということがある。)になるように、幅方向温度計と巻き取り機との間に設置されている温度変更手段の動作を制御することが好ましい。かかる形態(以下において、「第2形態」ということがある。)とすることにより、平坦度に起因する熱延鋼板の品質不良を低減することが容易になる。
また、粗圧延機と仕上圧延機の出側との間、及び、仕上圧延機の出側と巻き取り機との間に温度変更手段が配置されている製造装置を用いる本発明の熱延鋼板の製造方法において、熱延鋼板を圧延する前から予め決まっている操業条件に基づいて、粗圧延機の出側から巻き取り機の直前までに設置した温度変更手段を初期設定するとともに、熱延鋼板の先端が仕上圧延機の出側に設置した幅方向温度計を通過した後は、当該幅方向温度計による測定結果に基づいて、粗圧延機と仕上圧延機の出側との間に設置されている温度変更手段の動作条件、及び、仕上圧延機の出側と巻き取り機との間に設置されている温度変更手段の動作条件を修正することにより、仕上圧延機の出側における熱延鋼板の幅方向温度偏差が仕上出側の目標値になるように、粗圧延機と仕上圧延機の出側との間に設置されている温度変更手段の動作を制御し、かつ、巻き取り直前の熱延鋼板の幅方向温度偏差が巻き取り直前の目標値になるように、仕上圧延機の出側と巻き取り機との間に設置されている温度変更手段の動作を制御することが好ましい。かかる形態(以下において、「第3形態」ということがある。)とすることにより、平坦度に起因する熱延鋼板の品質不良を低減することが一層容易になる。
また、上記第1形態〜上記第3形態において、さらに、巻き取り機の入側に設置した平坦度計の近傍に幅方向温度計が設置されている場合、熱延鋼板の先端が、巻き取り機の入側に設置した平坦度計の近傍に設置した幅方向温度計(以下において、「巻き取り機直前の幅方向温度計」ということがある。)を通過した後は、巻き取り機直前の幅方向温度計による測定結果に基づいて、粗圧延機と巻き取り機との間に設置されている温度変更手段の動作条件を修正することにより、仕上圧延機の出側における熱延鋼板の幅方向温度偏差が仕上出側の目標値になるように、及び/又は、巻き取り直前の熱延鋼板の幅方向温度偏差が巻き取り直前の目標値になるように、粗圧延機と巻き取り機との間に設置されている温度変更手段の動作を制御することが好ましい。かかる形態(以下において、「第4形態」ということがある。)とすることにより、平坦度に起因する熱延鋼板の品質不良を低減することが一層容易になる。
また、上記第1形態〜上記第4形態において、さらに、平坦度計による測定結果も考慮して、粗圧延機と巻き取り機との間に設置されている温度変更手段の動作を制御することが好ましい。かかる形態(以下において、「第5形態」ということがある。)とすることにより、平坦度に起因する熱延鋼板の品質不良を低減することが一層容易になる。
また、上記第1形態〜上記第5形態において、さらに、仕上圧延機と巻き取り機との間に冷却装置が設置されている場合、当該冷却装置によって冷却された熱延鋼板の温度変化形態も考慮して、粗圧延機と巻き取り機との間に設置されている温度変更手段の動作を制御することが好ましい。かかる形態とすることにより、平坦度に起因する熱延鋼板の品質不良を低減することが一層容易になる。
また、本発明の熱延鋼板の製造方法において、熱延鋼板の幅方向温度偏差、及び、熱延鋼板の幅方向中央部の温度が、巻き取り直前の熱延鋼板の目標値となるように、粗圧延機と巻き取り機との間に設置されている温度変更手段の動作を制御することが好ましい。かかる形態とすることにより、平坦度に起因する熱延鋼板の品質不良を低減することが一層容易になる。
また、本発明の熱延鋼板の製造方法において、平坦度計の測定視野と幅方向温度計の測定視野とが重なった場合であっても平坦度計による測定及び幅方向温度計による測定が行えるようにする等の観点からは、平坦度計の測定波長と幅方向温度計の測定波長とが互いに異なるように設定することが好ましい。
中炭素材の全製造寸法を対象に、上記第1実施形態にかかる製造方法(以下において、「本発明例の製造方法」ということがある。)と、従来技術である特許文献1の技術による製造方法(以下において、「比較例1の製造方法」ということがある。)と、従来技術である特許文献1の技術と特許文献2の技術とを単に組み合わせた技術による製造方法(以下において、「比較例2の製造方法」ということがある。)と、を実施し、効果を比較した。結果を表1に併せて示す。ここで、「中炭素材」とは、C含有量が0.3〜0.7%の鋼板をいう。また、「全製造寸法」とは、製造している中炭素材の全ての条件を意味する。なお、それぞれの供試材の個数を1000とした。
Figure 0005124856
ここに、「駆動コスト」とは、製造に要した燃料・電力量の総費用のことで、比較例1を1としたときの相対値で表示している。さらに、「幅方向温度偏差」とは、幅方向中央の温度と幅方向端部(板の側面から25〜100mm内側の部位の平均値)の温度との差をいう。さらに、「幅方向温度偏差の平均」とは、前記で定義した温度偏差を対象材全てについて単純に平均処理した値のことをいう。さらに、「品質不良」とは、形状が原因で発生したと考えている品質不良であり、スリ疵、水乗りマーク、コイラエッジ疵を含む総和のことで、比較例1を1としたときの相対値で表示している。
表1より、比較例1の製造方法の結果と比較例2の製造方法の結果とを比較すると、比較例2の製造方法では幅方向温度偏差を低減する手段があるため、比較例1の製造方法では、巻き取り前幅方向温度偏差の平均(以下において、「温度偏差の平均」という。)が20.4℃であったのに対し、比較例2の製造方法では、温度偏差の平均を3.1℃にまで低減できた。さらに、比較例1の製造方法では、巻き取り前幅方向温度偏差の標準偏差(以下において、「温度偏差の標準偏差」という。)が19.3℃であったのに対し、比較例2の製造方法では、温度偏差の標準偏差を10.1℃にまで低減できた。ところが、比較例2の製造方法では、仕上圧延機出側付近における幅方向温度分布がほぼ一様になるように制御するため、仕上圧延機の出側に設置した温度変更手段の駆動コストが増大し、比較例1の製造方法における駆動コストを1としたとき、比較例2の製造方法における駆動コストは1.7となった。また、比較例1の製造方法における、平坦度に起因する熱延鋼板の品質不良を1としたとき、比較例2の製造方法における、平坦度に起因する熱延鋼板の品質不良は1.51となった。これは、比較例1の製造方法において、幅方向温度偏差が平均的に、例えばΔTである状況下で求められた、仕上圧延機の出側における熱延鋼板の平坦度と巻き取り前の熱延鋼板の平坦度との関係(図4に相当する関係)を、比較例2の製造方法では無視して幅方向温度偏差がゼロになるように制御してしまうため、仕上圧延機の出側における熱延鋼板の平坦度と巻き取り前の熱延鋼板の平坦度との関係を崩し、結果として、巻き取り前の平坦度を目標どおりに製造できなかったことが原因である。
これに対し、本発明例の製造方法の結果と比較例1の製造方法の結果とを比較すると、本発明例の製造方法では幅方向温度偏差がΔT(>0)となるように冷却装置を駆動したため、温度偏差の平均(19.6℃)及び駆動コスト(1.1)を比較例1の製造方法と同程度に維持しながら、温度偏差の標準偏差を9.4℃にまで低減することができ、さらに、平坦度に起因する熱延鋼板の品質不良を0.65にまで低減することができた。すなわち、本発明例の製造方法によれば、仕上圧延機の出側における熱延鋼板の平坦度と巻き取り前の熱延鋼板の平坦度との関係のばらつきを低減できたことによって、巻き取り前の熱延鋼板の平坦度を目標どおりに製造できる頻度が向上し、その結果、平坦度に起因する熱延鋼板の品質不良を低減できたと言える。以上より、本発明によれば、装置の駆動コストの増大を抑制しながら、平坦度に起因する熱延鋼板の品質不良を低減することが可能になることが確認された。
熱延鋼板の製造装置100の形態例を簡略化して示す概念図である。 本発明の熱延鋼板の製造方法に備えられる工程の流れを示すフローチャートである。 熱延鋼板の製造装置200の形態例を簡略化して示す概念図である。 仕上圧延機の出側における熱延鋼板の平坦度と巻き取り直前の熱延鋼板の平坦度との関係を示す図である。 巻き取り直前の熱延鋼板の平坦度と仕上圧延機の出側における熱延鋼板の幅方向温度偏差との関係を示す図である。 巻き取り直前の熱延鋼板の平坦度と巻き取り直前の熱延鋼板の幅方向温度偏差との関係を示す図である。
符号の説明
1…粗圧延機
2…連続仕上圧延機
3…巻き取り機
4…冷却装置(温度変更手段)
5…制御装置
6…平坦度計
7…幅方向温度計
8…平坦度計
9…幅方向温度計
10…熱延鋼板
11…端部加熱装置
12…温度計
13…温度計
14…制御装置
15…演算装置
16…制御装置
17…演算装置
18…サイドガイド
19…端部冷却装置
20…熱延鋼板
21…端部加熱装置
22…端部冷却装置
23…端部加熱装置
100…熱延鋼板の製造装置
200…熱延鋼板の製造装置

Claims (7)

  1. 粗圧延機と、該粗圧延機の下流側に設置された仕上圧延機と、該仕上圧延機の下流側に設置された巻き取り機とを具備する、熱延鋼板の製造装置を用いて熱延鋼板を製造する方法であって、
    前記熱延鋼板の製造装置は、熱延鋼板の幅方向の温度分布を変更可能な温度変更手段、及び、該温度変更手段の動作を制御可能な制御装置を備え
    前記温度変更手段は、前記粗圧延機と前記巻き取り機との間に配置され、
    少なくとも、前記熱延鋼板の平坦度を測定可能な平坦度計、及び、前記熱延鋼板の幅方向の温度を測定可能な幅方向温度計が、前記仕上圧延機の出側に備えられ、かつ、前記熱延鋼板の平坦度を測定可能な平坦度計が、前記巻き取り機の入側に備えられており、
    前記熱延鋼板の平坦度の目標値を定める、平坦度特定工程と、
    前記平坦度計による測定結果と前記幅方向温度計による測定結果とに基づいて、前記熱延鋼板の平坦度と前記熱延鋼板の幅方向温度との関係を特定する、関係特定工程と、
    前記平坦度特定工程で定められた前記平坦度の目標値と、前記関係特定工程で特定された前記関係と、に基づいて、少なくとも、前記巻き取り機の入側における前記熱延鋼板の幅方向温度差の目標値を定める、温度差特定工程と、
    少なくとも、前記巻き取り機の入側における前記熱延鋼板の幅方向温度差が、前記温度差特定工程で定められた前記巻き取り機の入側における前記幅方向温度差の目標値となるように、前記温度変更手段の動作を制御する、動作制御工程と、を有することを特徴とする、熱延鋼板の製造方法
  2. さらに、前記熱延鋼板の幅方向の温度を測定可能な幅方向温度計が、前記巻き取り機の入側に備えられることを特徴とする、請求項1に記載の熱延鋼板の製造方法
  3. さらに、前記熱延鋼板の平坦度を測定可能な平坦度計、及び/又は、前記熱延鋼板の幅方向の温度を測定可能な幅方向温度計が、前記仕上圧延機に備えられることを特徴とする、請求項1又は2に記載の熱延鋼板の製造方法
  4. さらに、前記熱延鋼板の幅方向の温度を測定可能な幅方向温度計が、前記粗圧延機の出側、及び/又は、前記仕上圧延機の入側に備えられることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱延鋼板の製造方法
  5. 前記温度変更手段に、下記(a)〜(h)からなる群より選択される1又は2以上が含まれることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱延鋼板の製造方法
    (a)前記熱延鋼板の幅方向端部を加熱可能な、前記粗圧延機と前記仕上圧延機との間に設置された端部加熱装置。
    (b)前記熱延鋼板の幅方向端部を冷却可能な、前記粗圧延機と前記仕上圧延機との間に設置された端部冷却装置。
    (c)前記熱延鋼板へ向けて噴射される冷却剤の流量分布を前記熱延鋼板の幅方向で変更可能な、前記仕上圧延機に設置された幅方向冷却装置。
    (d)前記熱延鋼板と接触する前記仕上圧延機のロールへ向けて噴射される冷却剤の流量分布を前記熱延鋼板の幅方向で変更可能な、前記仕上圧延機に設置されたロール冷却装置。
    (e)前記熱延鋼板へ向けて噴射された冷却剤が前記熱延鋼板の幅方向端部表面へ到達することを阻害可能な、前記仕上圧延機と前記巻き取り機との間に設置された端部マスキング冷却装置。
    (f)前記熱延鋼板へ向けて噴射される冷却剤の流量分布を前記熱延鋼板の幅方向で変更可能な、前記仕上圧延機と前記巻き取り機との間に設置された幅方向冷却装置。
    (g)前記熱延鋼板へ向けて噴射される冷却剤の、前記熱延鋼板の幅方向における流量分布が固定され、かつ、前記冷却剤の噴射/非噴射を冷却装置毎に変更可能な、前記仕上圧延機と前記巻き取り機との間に設置された複数の冷却装置。
    (h)前記熱延鋼板の表面及び/又は裏面へ向けて噴射される冷却剤の噴射形態を変更可能な、前記仕上圧延機と前記巻き取り機との間に設置された表裏面冷却装置。
  6. 前記温度変更手段に、前記(e)〜(h)からなる群より選択される1又は2以上の冷却装置が含まれ、該冷却装置に、前記熱延鋼板の平坦度を測定可能な平坦度計、及び/又は、前記熱延鋼板の幅方向の温度を測定可能な幅方向温度計が備えられることを特徴とする、請求項5に記載の熱延鋼板の製造方法
  7. さらに、前記仕上圧延機によって圧延される前記熱延鋼板の平坦度を変更可能な平坦度変更手段、及び、該平坦度変更手段の動作を制御可能な平坦度制御装置が備えられることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の熱延鋼板の製造方法
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