JP5123720B2 - 耐熱性に優れた電気電子部品用銅合金板 - Google Patents

耐熱性に優れた電気電子部品用銅合金板 Download PDF

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Description

本発明は、高強度で、かつ、歪み取り焼鈍などの熱処理を行った場合の強度低下が少ない、耐熱性に優れたCu−Fe−P系の銅合金板に関する。本発明の銅合金板は、半導体装置用リードフレームの素材として好適で、半導体装置用リードフレーム以外にも、その他の半導体部品、プリント配線板等の電気・電子部品材料、開閉器部品、ブスバー、端子・コネクタ等の機構部品など様々な電気電子部品用として好適に使用される。ただ、以下の説明では、代表的な用途例として、半導体部品であるリードフレームに使用する場合を中心に説明を進める。
半導体リードフレーム用銅合金としては、従来よりFeとPとを含有する、Cu−Fe−P系の銅合金が一般に用いられている。これらCu−Fe−P系の銅合金としては、例えば、Fe:0.05〜0.15%、P:0.025〜0.040%を含有する銅合金(C19210合金)や、Fe:2.1〜2.6%、P:0.015〜0.15%、Zn:0.05〜0.20%を含有する銅合金(CDA194合金)が例示される。これらのCu−Fe−P系の銅合金は、銅母相中にFe又はFe−P等の金属間化合物を析出させると、銅合金の中でも、強度、導電性および熱伝導性に優れていることから、国際標準合金として汎用されている。
近年、電子機器に用いられる半導体装置の大容量化、小型化、高機能化に伴い、半導体装置に使用されるリードフレームの小断面積化が進み、より一層の強度、導電性、熱伝導性が要求されている。これに伴い、これら半導体装置に使用されるリードフレームに用いられる銅合金板にも、より一層の高強度化、熱伝導性が求められている。
その一方で、これら高強度化したCu−Fe−P系の銅合金板には、歪み取り焼鈍などの熱処理を行った場合でも強度低下を殆ど起こすことのない耐熱性に優れることが要求される。
Cu−Fe−P系の銅合金板を、リードフレーム等への加工を行う際には、スタンピング加工(プレス打ち抜き加工)することによって多ピン形状とするのが一般的である。最近では、前述した如く電気・電子部品の小型化・薄肉軽量化に対応するため、原材料として用いる銅合金板の薄肉化や多ピン化が進んでおり、それに伴って、上記スタンピング後の加工品に歪み応力が残留し易くピンが不揃いになる傾向がある。そこで通常は、スタンピングして得られる多ピン形状の銅合金板に、熱処理(歪取り焼鈍)を施して歪を除去することが行われる。
ところがこの様な熱処理を行うと材料が軟化し易く、熱処理前の機械的強度を維持することができない。また製造工程面からすると、生産性向上の観点から前記熱処理をより高温・短時間で行うことが求められており、高温での熱処理後も高強度を維持し得る耐熱性が強く求められている。
こうした課題に対し、これまでにもFe、P、Zn等の合金元素や、その他Sn、Mg、Ca等の微量添加元素を含有させ、或はそれらの添加量を調整する等の改善策が講じられてきた。また、銅合金の晶出物、析出物の制御も行なわれてきた。しかし、この様な成分調整や晶出物、析出物の制御だけでは、銅合金部品の小型・軽量化や耐熱強度特性などに十分対応しきれないことから、銅合金の組織などを制御する技術が更に提案されている。
例えば、特許文献1では、Cu−Fe−P系の銅合金では無いが、無酸素銅に少量の銀を添加した銅合金を素材として使用し、最終圧延後のX線回折強度比と最終圧延前の結晶粒径を制御することによって、強度の向上を図っている。即ち、熱間圧延の後、冷間圧延と再結晶焼鈍を繰り返し、最終の冷間圧延における加工度と、最終冷間圧延前の再結晶焼鈍後の平均結晶粒径、および最終焼鈍前の冷間圧延加工度をコントロールすることによって、最終圧延後のX線回折強度比と最終圧延前の結晶粒径を制御し、高強度化を図っている。ところが、この文献で推奨する圧延・焼鈍条件を、そのまま、本発明が対象とするCu−Fe−P系の銅合金に適用しても、前記したリードフレーム等に要求される様な高レベルの耐熱性を得ることはできない(特許文献1参照)。
これに対して、Cu−Fe−P系銅合金における耐熱性改善技術も種々提案されている。例えば、特許文献2では、実質的なFeの含有量が0.7%以上と多いCu−Fe−P系銅合金の晶出物、析出物の形態自体を制御することによって、高耐熱性を得ることが提案されている。即ち、組織中に含まれるγ−Fe析出物のX線ピーク面積Xγとα−Fe析出物のX線ピーク面積Xαとの比Xγ/Xαが0.05以上として、高耐熱性を得ることが提案されている(特許文献2参照)。
また、特許文献3では、集合組織の制御によって高耐熱性を得るために、実質的なFeの含有量が0.5%以上と多いCu−Fe−P系銅合金の500℃で1分間焼鈍した後のCube方位の方位密度を50%以下とし、更に平均結晶粒径を30μm以下として、高耐熱性を得ることが提案されている(特許文献3参照)。
更に、特許文献4では、実質的なFeの含有量が2%以上と多いCu−Fe−P系銅合金について、耐熱性の向上目的では無いが、板の加工性やリードフレームへの成形性を、集合組織の制御によって向上させることが開示されている。この加工性とは、冷間圧延における板の波打ちや蛇行、残留応力の不均一、スリッターした条の蛇行、スタンピング加工における曲がりやバリの発生、リード曲げ加工部の肌荒れや割れなどである。また、集合組織は、(200)面と(220)面のX線回折強度比と、Cube方位の方位密度を適正範囲に制御することである。
特開2003−96526号公報 特開2004−91895号公報 特開2005−139501号公報 特開2002−339028号公報
しかし、Cu−Fe−P系銅合金の耐熱性の向上を目的としたこれら特許文献2、3の技術や、あるいは目的が異なる特許文献4の技術でも、本発明で意図する高レベルの耐熱性を保障するまでには至らない。
先ず、これら特許文献におけるCu−Fe−P系銅合金の実質的なFeの含有量は、最低でも0.5%を超えて多い。この点で、これら従来の技術は、確かにFeの含有量が多いCu−Fe−P系銅合金の耐熱性向上には有効かもしれない。
しかし、Feの含有量が0.5%を超えて多くなると、導電率やAgメッキ性が低下するという、別の問題が生じる。これに対して、導電率を無理に増加させるために、例えば、上記析出粒子の析出量を増やそうとすると、逆に、析出粒子の成長・粗大化を招き、強度や耐熱性が低下する問題がある。言い換えると、これら特許文献の技術では、Cu−Fe−P系銅合金に要求される高強度化と、耐熱性とを兼備させることができない。
したがって、これらの特許文献の技術を、Feの含有量を0.5%以下と低減した組成によって、高強度化したCu−Fe−P系銅合金にそのまま適用しても、前記したリードフレーム等に要求される様な高レベルの耐熱性を得ることはできない
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、Feの含有量を0.5%以下と低減した組成によっても、高強度化と優れた耐熱性とを両立させたCu−Fe−P系銅合金板を提供することである。
この目的を達成するための本発明電気電子部品用銅合金板の要旨は、Fe:0.01〜0.50%、P:0.01〜0.15%を各々含有し、残部銅および不可避的不純物からなる銅合金板であって、3次元アトムプローブ電界イオン顕微鏡により測定された原子の集合体を含み、この原子の集合体は、少なくともFe原子かP原子かのいずれかを含むとともに、これらFe原子とP原子との互いに隣り合う原子同士の距離が0.90nm以下であって、かつCu原子とFe原子とP原子との合計個数が15個以上、100個未満で構成されるものであり、この原子の集合体を5×104 個/μm3 以上の平均密度で含むこととする。
本発明銅合金板は、高強度を達成するために、更に、質量%で0.005〜5.0%のSnを、あるいは、はんだ及びSnめっきの耐熱剥離性改善のために、更に、質量%で0.005〜3.0%のZnを、各々含有しても良い。
本発明銅合金板は、高強度化の目安として、引張強度が500MPa以上、硬さが150Hv以上であることが好ましい。なお、導電率は板の強度に相関するものであり、本発明でいう高導電率とは、高強度な割りには導電率が比較的高いという意味である。
本発明では、高強度化したCu−Fe−P系銅合金板の耐熱性向上の機構につき、転位論に基づき、高温の熱活性下での転位移動のピン止め力(ピン止め効果)を最大化する方法につき検討した。この結果、これまで注目されていた、微細とは言ってもミクロンオーダーの析出物ではなく、これまでは全く注目されていなかった、更に、それよりも細かい、原子レベルでの原子の集合体(クラスター)を活用することに着想した。この原子の集合体は、超微細な析出物とも言うべきものであるが、原子レベルでの微細さゆえに、一般的に言う析出物のように、はっきりした結晶構造を持っているわけではない。したがって、本発明では、敢えて超微細析出物とは言わず、原子の集合体(クラスター)と称する。
そして、原子数10個分(直径5nm未満)の原子の集合体(クラスター)を、Cu−Fe−P系銅合金中に高密度に分散させることで、高温の熱活性下での転位移動のピン止め力が最大化され、Cu−Fe−P系銅合金板の耐熱性が向上することを理論的に導出した。
本発明者らは、更に、この事実を裏付けるべく、100個未満の原子構造分析が可能な、後述する3次元アトムプローブ電界イオン顕微鏡により、前記原子数10個分程度の原子の集合体(クラスター)の分析を試みた。即ち、耐熱性が優劣相異なる、幾つかのCu−Fe−P系銅合金板につき、互いの前記原子の集合体の存在形態(存在状態)の違いを確かめた。
この結果、本発明が規定する前記原子の集合体の存在状態によって、他の材料条件に互いに差が無い、Cu−Fe−P系銅合金板同士の耐熱性が大きく異なり、本発明が規定する前記原子の集合体が多いほど、耐熱性を向上させることができることを知見した。ここで、前記他の材料条件に差が無いとは、上記耐熱性の優劣が相異なる板の、互いの成分組成は勿論、通常のTEMやSEMなどの組織観察、あるいは抽出残渣法やX線回折などの分析によっても、互いに差が無いことを意味する。
本発明が規定する前記原子の集合体は、100個の原子からなったとしても、その大きさは、せいぜい50Å(オングストローム)程度の微小なものである。したがって、現在、最大の倍率が100万倍程度の透過型電子顕微鏡(TEM)であっても、観察できる限界(検出限界)ギリギリか、限界以下である。また、銅合金板は、強度を増すために、冷間圧延上がりが最終の板製品であることが多く、冷間圧延による転位が多く入った試料では、転位か析出物かは判別しがたい。このため、前記最大倍率のTEMであっても、実際問題として、本発明が規定する前記原子の集合体を観察(検出)できない。
また、例えば、添加元素の固溶量や析出物量を測定するために汎用される抽出残渣法でも、最も小さな目開きサイズ0.1μm のフィルターによって、0.1μm 以下の微細なサイズの析出物か、0.1μm を越える粗大なサイズの析出物かは判別可能である。但し、この抽出残渣法による0.1μm 以下の微細なサイズの析出物といっても、本発明が規定する100個未満の原子からなる原子の集合体か、それより大きな析出物か、あるいは固溶している元素かは、判別できない。
これらの事実は、上記耐熱性の優劣が相異なる板を、これらTEMやSEMなどの組織観察、あるいは抽出残渣法やX線回折などの分析を駆使して行っても、本発明が規定する前記原子の集合体の存在状態の違いまでは、とても検知できないことを意味する。また、前記最大倍率のTEMであっても、あるいは前記抽出残渣法であっても、本発明が規定する前記原子の集合体が存在するか否かさえ識別できないことも意味する。
一方で、この3次元アトムプローブ電界イオン顕微鏡による分析は、高密度化された磁気記録膜や電子デバイスの分析などに汎用されている。また、鋼材の分野でも組織分析に使用されている。例えば、特開2006−29786号公報では鋼材中の炭素含有微細析出物に含まれる元素の種類や量の分析に使用されている。また、特開2007−254766号公報では鋼材中の硫化物とFeとの界面のC量、N量の分析(原子/nm2 )にも使用されている。
しかし、本発明の銅合金分野では、この3次元アトムプローブ電界イオン顕微鏡が使用された例は皆無に等しい。これは、後述する製造条件の違いにより、前記した従来のCu−Fe−P系銅合金板には、本発明が規定する前記原子の集合体が元々少なくなることにも起因している。即ち、従来において、Cu−Fe−P系銅合金板に対して、例え、この3次元アトムプローブ電界イオン顕微鏡による分析を試みたとしても、元々数が少ない前記原子の集合体を検出できる確率自体がかなり低くなってしまう。
また、本発明のように、耐熱性向上の機構につき、前記した転位論に基づき考察していく技術思想がなければ、銅合金板に対して、3次元アトムプローブ電界イオン顕微鏡による分析を試みる動機付けがそもそもない。従来において、銅合金分野で3次元アトムプローブ電界イオン顕微鏡による分析の使用例や、本発明が規定する前記原子の集合体に関する公知の記載がないのは、このような事情にも起因している。
(3次元アトムプローブ電界イオン顕微鏡)
本発明が規定する100個未満の原子からなる前記原子の集合体は、現時点では、公知の3次元アトムプローブ電界イオン顕微鏡を用いてのみ、測定可能である。3次元アトムプローブ電界イオン顕微鏡(3DAP:3D Atom Probe Field Ion Microscope 、以下3DAPとも略記する)は、電界イオン顕微鏡(FIM)に、飛行時間型質量分析器を取り付けたものである。このような構成により、電界イオン顕微鏡で金属表面の個々の原子を観察し、飛行時間質量分析により、これらの原子を同定することのできる局所分析装置である。また、3DAPは、試料から放出される原子の種類と位置とを同時に分析可能であるため、原子の集合体の構造解析上、非常に有効な手段となる。このため、前記した通り、磁気記録膜や電子デバイスあるいは鋼材の組織分析に使用されている。
3DAPでは、先端を針状に整形した試料に高電圧を印加し、先端に生じる高電界を利用して、この試料先端部分の原子構造を調べる。電界イオン顕微鏡(FIM)においては、まず真空チャンバー内に導入されたイメージングガスが、この試料先端近傍でイオン化し、試料の先端針状部の物質を継続的にイオン化する。これらイオン化した原子は、電界に導かれて、この試料に対向したマイクロチャネルプレートなどの検出器側に、順次移動し、結像する。
この検出器は、位置敏感型検出器であり、個々のイオンの質量分析(原子種である元素の同定)とともに、個々のイオンの検出器に至るまでの飛行時間を測定することによって、その検出された位置(原子構造位置)を同時に決定できるようにしたものである。したがって、3DAPは、前記試料先端の原子の位置及び原子種を同時に測定できるため、前記試料先端の原子構造を、3次元的に再構成、観察できる特長を有する。また、前記電界蒸発は、前記試料の先端面から順次起こっていくため、前記試料先端からの原子の深さ方向分布を原子レベルの分解能で調べることができる。
この3DAPは高電界を利用するため、分析する試料は、金属等の導電性が高いことが必要で、しかも、試料の形状は、一般的には、先端径が100nmφ前後あるいはそれ以下の極細の針状にする必要がある。このため、Cu−Fe−P系銅合金板の板厚中央部から試料を採取して、この試料を精密切削装置で切削および電解研磨して、分析用の前記極細の針状先端部を有する試料を作製する。測定方法としては、例えば、Imago Scientific Instruments社製の「LEAP3000」を用いて、前記先端を針状に成形した銅合金板試料に、10kVオーダーの高パルス電圧を印加し、試料先端から数百万個の原子を継続的にイオン化して行う。測定領域は、前記試料先端径約50nmφの範囲で、試料先端からの深さ100nm程度までとする。イオンは、前記位置敏感型検出器によって検出し、前記パルス電圧を印加されて、前記試料先端から個々のイオンが飛び出してから、検出器に到達するまでの飛行時間から、イオンの質量分析(原子種である元素の同定)を行う。
更に、前記電界蒸発が、前記試料の先端面から順次規則的に起こっていく性質
を利用して、イオンの到達場所を示す、2次元マップに適宜深さ方向の座標を与え、解析ソフトウエア「IVAS」を用いて、3次元マッピング(3次元での原子構造:アトムマップの構築)を行う。これによって、前記試料先端の3次元アトムマップが得られる。
そして、この3次元アトムマップを、更に、包絡分析法(DEA=Data Envelopment Analysis )を用いて解析する。即ち、この3次元アトムマップにおける、FeおよびP原子の隣り合う距離が0.90nm以下で、かつCu原子とFe原子とP原子との合計個数が15個以上、100個未満で構成されるものを、本発明が規定する原子の集合体(クラスター)として、その個数密度を測定、評価する。この原子の集合体密度測定は、前記試料数3個について行い、これらの結果を平均化する。
ここで、前記包絡分析法は「包絡分析法(Data Envelopment Analysis :DEA 法)に関する報告(ISDL Report No.20020202002、渡邉真也、廣安知之、三木光範)などに概要が記載されている通り、公知の手法(ソフトウエア)である。この包絡分析法は、多入力、多出力の多目的問題において、評価対象を効率という側面から評価するものである。即ち、(出力値の総和/入力値の総和)から導き出される効率の評価(重み付け)を行い、より少ない入力値からより多くの出力値を得る、分析や解析の効率化のための手法(ソフトウエア)である。この手法は、1978年にテキサス大学のCharnes らによって提案されて以来、上記3DAPのような金属分析だけではなく、企業、経営、事業の診断や、社会システム分析など、様々な分野で利用されている。
(3DAPによる原子の検出効率)
但し、これら3DAPによる原子の検出効率は、現在のところ、前記イオン化した原子のうちの50%程度が限界であり、残りの原子は検出できない。この3DAPによる原子の検出効率が、将来的に向上するなど、大きく変動すると、本発明が規定する原子の集合体の平均個数密度(個/μm3 )の3DAPによる測定結果が変動してくる可能性がある。したがって、この原子の集合体の平均個数密度の測定に再現性を持たせるためには、3DAPによる原子の検出効率は約50%と略一定にすることが好ましい。
(原子の集合体の定義)
本発明では、請求項で規定する原子の集合体(クラスター)を、少なくともFe原子かP原子かのいずれかを含むとともに、これらFe原子とP原子との互いに隣り合う原子同士の距離が0.90nm以下であって、かつCu原子とFe原子とP原子との合計個数が15個以上、100個未満で構成されるものと定義し、その平均個数密度(個/μm3 )を測定、評価する。ここで、前記した互いに隣り合う原子とは、Fe原子とP原子との異なる原子同士だけではなく、Fe原子同士、P原子同士でも良い。この点、例えばFe原子かP原子のいずれかが検出されずに0個であっても、Fe原子同士かP原子同士かのいずれかが、前記隣り合う距離(0.90nm以下)と、個数(15個以上、100個未満)とを満たせば、本発明で定義する原子の集合体とし、本発明で定義する原子の集合体として平均個数密度にカウントする。
したがって、前記した本発明で規定する原子の集合体(クラスター)とは、よ
り具体的には、Fe原子とP原子の両方か、あるいはFe原子かP原子のいずれかの原子を必ず含む。そして、これらFe原子とP原子との異なる原子同士、Fe原子同士、P原子同士の、互いに隣り合う原子同士の距離が0.90nm以下で、かつCu原子とFe原子とP原子との合計個数が15個以上、100個未満で構成されるものを言う。それゆえ、前記3DAP分析により測定する際に、仮に、前記隣り合う距離内の原子の個数が前記個数密度を満たしていたとしても、この原子の集合体が、Fe原子やP原子をいずれも含まないものであれば、本発明が規定する原子の集合体ではなく、カウントしない。また、これらFe原子とP原子との互いに隣り合う原子同士の距離が、大きく離れすぎた場合には、原子の集合体であるとは言えない。
更に、銅合金の成分組成によっては、当然、Cu原子、Fe原子、P原子以外の、Sn、Znなどの原子(合金元素や不純物由来)が原子の集合体中に含まれ、これらその他の原子が3DAP分析によりカウントされる場合が必然的に生じる。しかし、そのようなSn、Zn、Mn、Si、Mgなどのその他の原子(合金元素や不純物由来)が原子の集合体に含まれるとしても、Cu、FeおよびP原子の総数に比べると少なく、多くても各々せいぜい数個レベルである。それゆえ、このような、その他の原子を集合体中に含む場合でも、前記Fe、P原子の規定距離と、前記Cu、Fe、P原子の規定合計個数の条件を満たすものは、本発明の原子の集合体として、Cu、Fe、P原子のみからなる原子の集合体と同様に機能する。したがって、前記した隣り合う距離内の原子の個数密度を満たす場合は、その他の原子を集合体中に含む場合でも、本発明の原子の集合体としてカウントし、前記した隣り合う距離内の原子の個数密度条件を満たさない場合は、本発明の原子の集合体とはせず、カウントしない。
本発明の原子の集合体としては、Cu―Fe―P、Cu―Fe、Cu―P、Fe―P、Feのみ、Pのみの6種類の組み合わせがある。ただ、実際に、後述する適正条件にて製造した銅合金板を、前記3DAP分析してカウントされる本発明の原子の集合体としては、この内のCu―Fe―Pが大部分で、その他の種類はあまり観察(カウント)されない。このような本発明の原子の集合体は、後述する通り、最終冷間圧延にて生成した原子の集合体の核となる原子空孔に、続く最終低温焼鈍において、Cu、Fe、Pの原子が拡散して閉塞(トラップ)して生成する。
(原子の集合体規定の意義)
本発明では、以上のような定義によって規定され、前記3DAP分析により測定される原子の集合体を、Cu−Fe−P系銅合金板組織中に、5×104 個/μm3 以上の平均密度で含むこととする。これによって、Cu−Fe−P系銅合金板の耐熱性を向上させることができる。即ち、本発明が規定する前記原子の集合体が多いほど、耐熱性を向上させることができる。
これに対して、この原子の集合体が5×104 個/μm3 未満の平均密度では、原子の集合体が少なすぎて、熱活性下での転位移動のピン止め力を最大化できなくなる。このため、Cu−Fe−P系銅合金板の前記耐熱性を向上できなくなる。
ここで、本発明の原子の集合体の、Cu原子とFe原子とP原子との合計個数
を15個以上、100個未満としたのは、この合計個数が15個未満では、サイズが10Å未満となり、小さすぎて、熱活性下での転位移動のピン止め力が小さくなるからである。一方で、この原子の集合体を構成する、Cu原子とFe原子とP原子との合計個数が100個以上では、原子の集合体が粗大すぎて、耐熱性を向上させる、熱活性下での転位移動のピン止め力を最大化する効果が少なくなるからである。
(銅合金板の成分組成)
本発明では、半導体リードフレーム用などとして、引張強度が500MPa以上、硬さが150Hv以上、導電率が50%IACS以上である高強度化と優れた耐熱性とを併せて達成する。このために、Cu−Fe−P系銅合金板として、質量%で、Feの含有量が0.01〜0.50%の範囲、前記Pの含有量が0.01〜0.15%の範囲とした、残部Cuおよび不可避的不純物からなる基本組成とする。
この基本組成に対し、Zn、Snの一種または二種を、更に下記範囲で含有する態様でも良い。また、その他、溶解原料として銅合金スクラップを使用した際などに、混入しやすい元素もあり、不純物として低減するにこしたことはないが、過度の低減は、銅合金板の製造コストを押し上げる。したがって、前記した諸特性を阻害しない範囲での含有を許容する。なお、合金元素や不純物元素の含有量の表示%は全て質量%の意味である。
(Fe)
Feは、Pとともに、本発明が規定する前記100個未満の原子からなる原子の集合体を形成して、強度や耐熱性を向上させる元素である。Feの含有量が0.01%未満では、後述する最適な本発明製造方法によっても、本発明が規定する前記100個未満の原子からなる原子の集合体の密度が不足し、耐熱性が低下する。このため、Feの含有量は0.01%以上、好ましくは0.05%以上の含有が必要である。但し、0.50%を超えて、より厳しくは0.40%を超えて、Feを過剰に含有させると、Feの酸化物、晶出物、析出物などの化合物が粗大化する。その結果、耐熱性だけでなく強度や曲げ加工性も低下する。また、前記した従来技術のように、導電率やAgメッキ性も低下する。したがって、Feの含有量は0.01〜0.50%の範囲、好ましくは0.05〜0.40%の範囲とする。
(P)
Pは、Feと本発明が規定する前記100個未満の原子からなる原子の集合体を形成して、強度や耐熱性を向上させる元素である。また、それ以外でも、通常、Feなどの他の元素と微細な析出物を形成して、強度や耐熱性を向上させるのに必要な元素である。また、Pは脱酸剤としても作用する。Pの含有量が0.01%未満では、最適な本発明製造方法によっても、本発明が規定する前記100個未満の原子からなる原子の集合体の密度が不足し、耐熱性が低下する。また、これよりも大きなP系の析出物粒子も不足し、耐熱性が低下するため、0.01%以上の含有が必要である。但し、0.15%を超えて過剰に含有させると、P化合物が粗大化し、却って耐熱性が低下するし、強度や熱間加工性も低下する。したがって、Pの含有量は0.01〜0.15%の範囲とする。好ましくは、0.02〜0.14%の範囲とする。
(Zn)
Znは、リードフレームなどに必要な、銅合金のはんだ及びSnめっきの耐熱剥離性を改善する。Znの含有量が0.005%未満の場合は所望の効果が得られない。一方、3.0%を超えるとはんだ濡れ性が低下するだけでなく、導電率の低下も大きくなる。したがって、選択的に含有させる場合のZnの含有量は、用途に要求される導電率とはんだ及びSnめっきの耐熱剥離性とのバランスに応じて(バランスを考慮して)、0.005〜3.0%の範囲から選択する。
(Sn)
Snは、銅合金の強度向上に寄与する。Snの含有量が0.001%未満の場合は高強度化に寄与しない。一方、Snの含有量が多くなると、その効果が飽和し、逆に、導電率の低下を招く。したがって、選択的に含有させる場合のSn含有量は、用途に要求される強度(硬さ)と導電率のバランスに応じて(バランスを考慮して)、0.001〜5.0%の範囲から選択して含有させることとする。
(その他の元素)
Mn、Mg、Caは、溶解原料としてリードフレーム銅合金スクラップを使用した際などに、混入しやすい。これらは、粗大な晶出物や酸化物を生成して、強度や耐熱性を低下させるだけでなく、導電率も低下させる不純物である。しかし、少量の含有が銅合金の熱間加工性の向上に寄与する場合もある。したがって、これらの元素は、総量で1.0%以下の含有は許容する。
また、Zr、Ag、Cr、Cd、Be、Ti、Co、Ni、Au、Ptなども、溶解原料としてリードフレーム銅合金スクラップを使用した際などに、混入しやすい。これらは、粗大な晶出物や酸化物を生成して、強度や耐熱性を低下させるだけでなく、導電率も低下させる不純物である。しかし、少量の含有が銅合金の強度の向上に寄与する場合もある。したがって、これらの元素は、総量で1.0%以下の含有は許容する。
更に、Hf、Th、Li、Na、K、Sr、Pd、W、S、Si、C、Nb、Al、V、Y、Mo、Pb、In、Ga、Ge、As、Sb、Bi、Te、B、ミッシュメタルも、溶解原料としてリードフレーム銅合金スクラップを使用した際などに、混入しやすい。これらは、粗大な晶出物や酸化物を生成して、強度や耐熱性を低下させるだけでなく、導電率も低下させる不純物である。これらの元素は、総量で1.0%以下の含有は許容する。
(銅合金板製造方法)
次に、本発明銅合金板の製造方法について以下に説明する。本発明銅合金板の製造工程自体は、最終の冷間圧延の圧下率や最終の低温焼鈍条件を除き、常法により製造できる。即ち、成分組成を調整した銅合金溶湯の鋳造、鋳塊面削、均熱、熱間圧延、そして冷間圧延と焼鈍の繰り返しにより最終(製品)板を得る。但し、本発明銅合金板が、強度、耐熱性などの必要な特性を得るためには、好ましい製造条件があり、以下に各々説明する。
(原子集合体の形成)
本発明が規定する前記100個未満の原子からなる原子の集合体は、銅合金板の製造工程における、最終の低温焼鈍で生成させる。このため、最終の低温焼鈍で、本発明が規定する前記原子の集合体の密度を満たす銅合金板の組織とするためには、前工程である最終の冷間圧延の圧下率とともに、この最終の冷間圧延から、続く最終の低温焼鈍までの時間を調整する必要がある。
即ち、後述する通り、最終の冷間圧延の圧下率を大きくするとともに、この最終の冷間圧延終了後から最終の低温焼鈍開始までの所要時間について、室温で保持される時間を短くする必要がある。
(好ましい製造条件)
前記した本発明銅合金組成の鋳塊の鋳造の際には、大規模溶解炉であるシャフト炉での高生産性な造塊が可能である。但し、銅合金溶解炉での合金元素の添加完了から鋳造開始までの所要時間を1200秒以内とし、更に、鋳塊の加熱炉より鋳塊を抽出してから熱延終了までの所要時間を1200秒以下と、できるだけ短時間とすることが好ましい。
このような、銅合金溶解炉での合金元素の添加完了から鋳造開始までの短時間化と、更に、鋳塊の加熱炉より鋳塊を抽出してから熱間圧延終了までの短時間化によって、粗大なFe化合物を抑制するとともに、微細なFe化合物量やFeの固溶量を確保することができる。これら前段の工程の短時間化の結果、銅合金板の、導電率、耐熱性、強度を確保できる。
後段の工程である冷延条件や焼鈍条件により、本発明が規定する前記100個未満の原子からなる原子の集合体の密度や、微細なFe化合物量やFeの固溶量を制御するためには、上記した熱間圧延終了までの前段の工程も重要となる。即ち、上記前段の工程が長時間化すると、微細なFe化合物量やFeの固溶量の絶対量が少なくなっていたり、粗大なFe化合物の生成が多くなる。このような場合には、後段の工程である冷延、焼鈍工程で析出した微細生成物は、この粗大生成物にトラップされてしまい、マトリックス中に独立して存在する微細生成物はますます少なくなる。このため、Feの含有量が少ない本発明では余計に、Fe含有量の割には、十分な強度と優れた耐熱性を得ることができなくなる可能性がある。
ただ、熱間圧延条件自体については、常法に従えばよく、熱間圧延の入り側温度は600〜1000℃程度、終了温度は600〜850℃程度とされる。熱間圧延後は水冷又は放冷する。
その後、熱延板を一次冷間圧延(粗冷間圧延、中延べ冷間圧延)→仕上げ焼鈍(最終冷間圧延前の焼鈍)→最終冷延→最終低温焼鈍を行なって、銅合金薄板を製造する。一次冷間圧延(粗冷間圧延、中延べ冷間圧延)では、冷間圧延と焼鈍とを、板厚に応じて、適宜繰り返されても良い。
(最終冷間圧延)
最終冷間圧延は通常の3〜4回のパス数で行なう。但し、本発明が規定する前記100個未満の原子からなる原子の集合体の密度を満たす、銅合金板の組織とするためには、先ず、最終の冷間圧延の圧下率を60%以上と大きくする。これによって、本発明が規定する前記原子の集合体の核となる原子空孔の数が増加し、後の最終の低温焼鈍で、前記原子の集合体が生成して、本発明が規定する前記原子の集合体の密度を満たす銅合金板の組織とすることができる。
一方、最終の冷間圧延の圧下率が60%未満では、それまでの前記一次冷間圧延の圧下率が、例え60%以上であっても、本発明が規定する前記原子の集合体の核となる原子空孔の数が減少、不足して、最終の低温焼鈍における前記原子の集合体の生成数が減少し、本発明が規定する前記原子の集合体の密度を満たす銅合金板の組織とすることができなくなる。
(最終低温焼鈍までの所要時間)
また、最終低温焼鈍において、銅合金板の組織を、本発明が規定する前記原子の集合体の密度を満たすものとするためには、この最終の冷間圧延終了後(最終パス終了後)から、最終の低温焼鈍(板の昇温)開始までの所要時間を60分以内の短時間とする必要がある。即ち、これら各工程間における、板が室温で保持される所要時間を60分以内の短時間とし、最終の冷間圧延終了後から、最終低温焼鈍開始までの時間をできるだけ短くする必要がある。
この工程間における、板の室温で保持される時間が60分を超えると、最終低温焼鈍までの時間、即ち、板が室温で保持される時間が長くなる。このため、本来のCu原子やFe原子あるいはP原子ではなく、特に拡散の速いH原子やC原子、O原子などにより、前記原子の集合体の核となる原子空孔の閉塞(トラップ)が大きく進む。即ち、このH原子やC原子、O原子などによるトラップは、前記した板の室温での保持時間に比例して進行するため、それぞれの工程での、室温で保持される時間が長くなるほど、本来のCu原子やFe原子やP原子がトラップする、原子の集合体の核となる原子空孔の数が減少していく。
このため、この工程間での所要時間(板が室温で保持される時間)が60分を超えると、例え、最終の低温圧延前の焼鈍における室温までの平均冷却速度を100℃/s以上、最終冷間圧延の圧下率を60%以上としても、本発明が規定する前記原子の集合体の核となる原子空孔の数が減少、不足する。この結果、最終低温焼鈍における前記原子の集合体の生成数が減少し、本発明が規定する前記原子の集合体の密度を満たす銅合金板の組織とすることができなくなる。
この工程間での室温での板の保持時間の短縮は、これを優先して、意識的に行わない限り、他の多数の優先事項や、他のロットや工程との兼ね合いで、必然的に長くなる。したがって、通常の、あるいは従来の製造方法では、これらの工程間での室温での板の保持時間の短縮は、他の多数の優先事項や、他のロットや工程との兼ね合いで、優先されないために、必然的に数時間の単位で長くなる。したがって、通常の、あるいは従来の製造方法では、必然的と言って良いほど、これらそれぞれの工程間での、板の室温で保持される時間が各々60分を超えて長くなる。この結果、最終低温焼鈍における前記原子の集合体の生成数が必然的に減少し、本発明が規定する前記原子の集合体の密度を満たす銅合金板の組織とすることができなくなる。
なお、このような原子空孔へのH原子やC原子、O原子などの拡散、トラップを阻止するためには、液体窒素によって冷却するなどして、銅合金板を、室温ではなく、極低温に保持すれば良い。しかし、このような極低温への冷却は、現在のところ、銅合金板の製造方法としては現実的ではない。したがって、通常の板の製造工程では、板が室温で保持される、この最終冷間圧延終了後から最終の低温焼鈍を開始するまでの所要時間を60分以内の短時間とする。
(最終低温焼鈍)
最終の低温焼鈍において、本発明が規定する前記100個未満の原子からなる原子の集合体を生成させる。最終の低温での焼鈍においては、原子の集合体の核となる原子空孔を、Cu、Fe、Pの各原子の拡散によって閉塞(トラップ)させ、前記原子の集合体を生成させ、本発明が規定する前記原子の集合体の密度を満たす銅合金板の組織とする。この最終の低温焼鈍は、連続焼鈍炉(実体温度200〜500℃で10〜60秒程度)、バッチ焼鈍炉(実体温度100〜400℃で1〜20時間程度)のどちらでも可能である。
以下に本発明の実施例を説明する。前記した好ましい製造条件により、本発明が規定する前記100個未満の原子からなる超微細析出物の密度が種々異なる銅合金薄板を製造した。そして、これら各銅合金薄板の引張強さ、硬さ、導電率などの特性や、500℃で1分間焼鈍した後の硬度低下量で耐熱性を評価した。これらの結果を表1に示す。
具体的には、表1に示す各化学成分組成(質量%)の銅合金を、それぞれコアレス炉にて溶製した後、半連続鋳造法(鋳造の冷却凝固速度2℃/sec)で造塊して、厚さ70mm×幅200mm×長さ500mmの鋳塊を得た。これら各鋳塊を、共通して、以下の条件にて圧延して銅合金薄板を製造した。即ち、各鋳塊の表面を面削して加熱後、加熱炉で960℃で加熱した後、直ちに熱延終了温度750℃で熱間圧延を行って、厚さ10〜20mmの板とし、650℃以上の温度から水中に急冷した。
この際、溶解炉での合金元素添加完了から鋳造開始までの所要時間は、各例とも共通して1200秒以下とし、加熱炉抽出から熱延終了までの所要時間は、各例とも共通して1200秒以下とした。
この熱延板を、各例とも共通して酸化スケールを除去した後、一次冷間圧延→仕上げ焼鈍→最終冷延→最終低温焼鈍を行なって、銅合金薄板を製造した。即ち、熱延板を一次冷間圧延(粗冷間圧延、中延べ冷間圧延)し、焼鈍炉にて最高到達温度450℃で仕上げ焼鈍を行った。
この後に、圧下率を表2のように種々変えた最終冷間圧延を行った。この最終冷間圧延では、最終的な板厚は、各例とも共通して、リードフレームの薄板化に対応した厚さ0.15mmとした。表2に示す最終冷間圧延の圧下率は、その前工程である、熱間圧延上がり、一次冷間圧延上がりの各板厚で制御し、各例とも最終冷間圧延される(最終冷間圧延前の)板厚を種々変えることによって行った。
そして、この最終冷間圧延の最終パス終了直後から、最終低温焼鈍を開始する(板が加熱開始される)までの時間も、表2のように種々変えた。この最終低温焼鈍は、焼鈍温度(実体温度:板の最高到達温度)のみを、表2に示すような値に種々変えて、その温度で30秒保持した。そして、この最終低温焼鈍によって、前記板厚0.15mmの銅合金製品薄板を得た。
なお、表1に示す各銅合金板組成とも、銅合金板の残部組成はCuであり、前記した各不純物元素について、検出限界以上の量だけ含有する場合には「その他」の欄に記載し、検出できない場合には0と記載した。表1に示すように、比較例22を除き、不純物としてのMn、Mg、Caは共通して総量で1.0%以下(0%を含む)である。また、比較例23を除き、不純物としてのZr、Ag、Cr、Cd、Be、Ti、Co、Ni、Au、Ptは共通して総量で1.0%以下(0%を含む)である。また、更に、不純物としてのHf、Th、Li、Na、K、Sr、Pd、W、S、Si、C、Nb、Al、V、Y、Mo、Pb、In、Ga、Ge、As、Sb、Bi、Te、B、ミッシュメタルも共通して総量で1.0%以下(0%を含む)である。
このようにして得た銅合金板に対して、各例とも、銅合金板の任意の位置の板中央部から供試材を切り出し、各供試材の組織、引張強さ、硬さ、導電率、耐熱性などの諸特性を評価した。これらの結果を表2に各々示す。
(組織の測定)
前記供試材について、前記した3次元アトムプローブ電界イオン顕微鏡と分析解析ソフトとを用いた、前記測定条件方法により、少なくともFe原子かP原子かのいずれかを含むとともに、これらFe原子とP原子との互いに隣り合う原子同士の距離が0.90nm以下であって、かつCu原子とFe原子とP原子との合計個数が15個以上、100個未満で構成される原子の集合体の平均密度(×104 個/μm3 )を求めた。
なお、各例とも共通して、検出した原子の集合体は、Cu、Fe、P原子以外の原子:Sn、Zn、Mn、Mg、Ni、Alなどを集合体中に各々数個(1〜2個)のレベルで含んでいるものもあったが、前記Fe、P原子の規定距離と、前記Cu、Fe、P原子の規定合計個数の条件を満たす原子の集合体は、本発明の原子の集合体としてカウントした。なお、測定は、板の長手方向の任意の箇所から採取した前記供試材3個について行い、前記原子の集合体の平均密度はこれらの平均値とした。
(引張試験)
前記供試材長手方向が板材の圧延方向に対し直角方向となるように、機械加工にてJIS5号引張試験片を作製した。そして、5882型インストロン社製万能試験機により、室温、試験速度10.0mm/min、GL=50mmの条件で、引張り強さを測定した。なお、測定は、板の長手方向の任意の箇所から採取した前記供試材4個について行い、引張り強さはこれらの平均値とした。
(導電率測定)
前記供試材をミーリングにより幅10mm×長さ300mm の短冊状の試験片に加工して、JIS−H0505に規定されている非鉄金属材料導電率測定法に準拠し、ダブルブリッジ式抵抗測定装置により、供試材の電気抵抗を測定した。そして、平均断面積法により供試材の導電率を算出した。測定は、板の長手方向の任意の箇所から採取した前記供試材4個について行い、導電率はそれらの平均値とした。
(硬さ測定)
前記供試材の硬さ測定は、松沢精機社製のマイクロビッカース硬度計(商品名「微小硬度計」)を用いて0.5kgの荷重を加えて行った。測定は、板の長手方向の任意の箇所から採取した前記供試材4個について行い、硬さはそれらの平均値とした。
(耐熱性)
前記供試材の耐熱性は、焼鈍による硬さの低下度合いで評価した。焼鈍後の硬さの測定は、前記供試材を500℃で1分間焼鈍後に水冷し、この供試材の平均硬さを前記した方法で測定して、前記焼鈍前の供試材の平均硬さからの低下量を求めた。この測定と低下量との算出は、前記硬さを測定した供試材4個について各々行い、硬度低下量はこれらの平均値とした。
表1から明らかな通り、発明例1〜14は、本発明組成内の銅合金であり、最終の冷間圧延の圧下率を60%以上とし、この最終の冷間圧延後から最終の低温焼鈍までの所要時間(室温で保持される時間)を60分以内として製造されている。また、前記した他の好ましい製造条件も満たしている。また、表1に示す、発明例10〜14が含む不純物元素も各々前記した通り許容量以下である。
このため、これら発明例は、3次元アトムプローブ電界イオン顕微鏡により測定された、前記原子の集合体を本発明の規定範囲内である5×104 個/μm3 以上の平均密度で含む。
また、これら発明例は、この他、組成範囲が適切で上記した好ましい条件内で製造されているために、粗大なFeの酸化物、晶出物、析出物などのFe化合物が抑制され、前記原子の集合体以外の、比較的微細なFe化合物などの量や、Feの固溶量を確保できているものと推考される。
この結果、発明例は、引張強さが500MPa以上、硬さが150Hv以上の高強度であって、500℃で1分間焼鈍した後の硬度低下量が30Hv以下である優れた耐熱性を有する。
これに対して、比較例18〜23は、製造方法は好ましい条件内で製造されているにもかかわらず、本発明組成から外れた銅合金を用いている。このため、これら比較例は、本発明の原子の集合体の平均密度などの組織が外れ、また、例え、この組織が範囲内であっても、導電率、強度、耐熱性のいずれかが、発明例に比して著しく劣る。
比較例18はFeの含有量が下限を低めに外れている。このため、原子の集合体の平均密度などの組織が本発明範囲から外れ、強度や耐熱性が低い。これに対して、比較例19はFeの含有量が上限を高めに外れている。このため、本発明の原子の集合体の平均密度などの組織は本発明範囲内であるものの、やはり強度や耐熱性が低い。
比較例20はPの含有量が下限を低めに外れている。このため、原子の集合体の平均密度などの組織が本発明範囲から外れ、強度や耐熱性が低い。これに対して、比較例21はPの含有量が上限を高めに外れている。このため、本発明の原子の集合体の平均密度などの組織は本発明範囲内であるものの、やはり強度や耐熱性が低い。
比較例22、23は不純物元素の含有量が前記した許容量よりも多すぎる例である。比較例22はMgの含有量が1.2%と多すぎる。このため、熱間圧延中に割れを生じて、特性評価ができなかった。比較例23の銅合金はNiの含有量が2.0%と多すぎる。このため、本発明の原子の集合体の平均密度などの組織は本発明範囲内であるものの、耐熱性が低い。
更に、表1の比較例15〜17は、通常あるいは従来の製造方法を模擬している。即ち、これら比較例は、本発明組成内の銅合金であり、他の製造条件も発明例と同じく好ましい範囲内である。ただ、前記発明例と異なり、表1に示すように、最終の冷間圧延の圧下率が低過ぎるか、最終の低温焼鈍までの各工程間の所要時間が長過ぎる。これによって、これら以外の条件が同じ前記発明例1、2よりも、本発明の原子の集合体の平均密度が本発明範囲を外れて小さ過ぎる。この結果、これら比較例は、共通して、発明例1,2よりも強度や耐熱性が著しく低い。
これら比較例15〜17は、前記した通り、本発明銅合金組成であり、他の製造条件も、最終冷間圧延圧下率か、最終低温焼鈍までの所要時間以外の、他の大部分の製造条件は、発明例1、2と同じく好ましい範囲で製造されている。このため、発明例1、2と同じく、粗大なFeの酸化物、晶出物、析出物などのFe化合物が抑制され、比較的微細なFe化合物などの量や、Feの固溶量を確保できているものと推考される。しかし、これらの、通常あるいは従来の製造方法の技術レベルを模擬する比較例は、最終冷間圧延圧下率か、最終低温焼鈍までの所要時間のみが最適範囲を外れて製造されている。このため、本発明の原子の集合体の平均密度のみが本発明範囲を外れて小さ過ぎるようになり、しかも、発明例1、5よりも強度や耐熱性が著しく低い。
したがって、以上の結果から、耐熱性を満たし、他の端子・コネクタとしての要求特性にも優れたCu−Fe−P系銅合金板を得るための、特に、本発明の原子の集合体の平均密度の組織規定の意義と、これらの組織を得るための製造条件の意義が裏付けられる。と同時に、通常あるいは従来の製造方法によって製造された銅合金板の技術レベルとの差異も裏付けられる。
Figure 0005123720
以上説明したように、本発明によれば、高強度化させた上で、耐熱性にも優れ、これら特性を両立(兼備)させたCu−Fe−P系銅合金板を提供することができる。この結果、小型化及び軽量化した電気電子部品用として、半導体装置用リードフレーム以外にも、リードフレーム、コネクタ、端子、スイッチ、リレーなどの、高強度化と耐熱性とが要求される用途に適用することができる。

Claims (4)

  1. Fe:0.01〜0.50%、P:0.01〜0.15%を各々含有し、残部銅および不可避的不純物からなる銅合金板であって、3次元アトムプローブ電界イオン顕微鏡により測定された原子の集合体を含み、この原子の集合体は、少なくともFe原子かP原子かのいずれかを含むとともに、これらFe原子とP原子との互いに隣り合う原子同士の距離が0.90nm以下であって、かつCu原子とFe原子とP原子との合計個数が15個以上、100個未満で構成されるものであり、この原子の集合体を5×104 個/μm3 以上の平均密度で含むことを特徴とする耐熱性に優れた電気電子部品用銅合金板。
  2. 前記銅合金板が、更に、質量%で、Sn:0.005〜5.0%を含有する請求項1に記載の電気電子部品用銅合金板。
  3. 前記銅合金板が、更に、質量%で、Zn:0.005〜3.0%を含有する請求項1または2に記載の電気電子部品用銅合金板。
  4. 前記銅合金板の引張強度が500MPa以上、硬さが150Hv以上である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電気電子部品用銅合金板。
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