以下、本発明に係る実施の形態を図1乃至図10に沿って説明する。
[自動変速機の構成]
まず、本発明を適用し得る自動変速機1の概略構成について図1に沿って説明する。図1に示すように、例えばFRタイプ(フロントエンジン、リヤドライブ)の車輌に用いて好適な自動変速機1は、エンジン6(図6参照)に接続し得る自動変速機1の入力軸11を有しており、該入力軸11の軸方向を中心としてトルクコンバータ7と、変速機構2とを備えている。
上記トルクコンバータ7は、自動変速機1の入力軸11に接続されたポンプインペラ7aと、作動流体を介して該ポンプインペラ7aの回転が伝達されるタービンランナ7bとを有しており、該タービンランナ7bは、上記入力軸11と同軸上に配設された上記変速機構2の入力軸12に接続されている。また、該トルクコンバータ7には、ロックアップクラッチ10が備えられており、該ロックアップクラッチ10が後述の油圧制御装置の油圧制御によって係合されると、上記自動変速機1の入力軸11の回転が変速機構2の入力軸12に直接伝達される。
上記変速機構2には、入力軸12(及び中間軸13)上において、プラネタリギヤDPと、プラネタリギヤユニットPUとが備えられている。上記プラネタリギヤDPは、サンギヤS1、キャリヤCR1、及びリングギヤR1を備えており、該キャリヤCR1に、サンギヤS1に噛合するピニオンP1及びリングギヤR1に噛合するピニオンP2を互いに噛合する形で有している、いわゆるダブルピニオンプラネタリギヤである。
また、該プラネタリギヤユニットPUは、4つの回転要素としてサンギヤS2、サンギヤS3、キャリヤCR2(CR3)、及びリングギヤR3(R2)を有し、該キャリヤCR2に、サンギヤS2及びリングギヤR3に噛合するロングピニオンP4と、該ロングピニオンP4及びサンギヤS3に噛合するショートピニオンP3とを互いに噛合する形で有している、いわゆるラビニヨ型プラネタリギヤである。
上記プラネタリギヤDPのサンギヤS1は、例えばミッションケース3に一体的に固定されたオイルポンプボディ3aから延設されたボス部3bに接続されて回転が固定されている。また、上記キャリヤCR1は、上記入力軸12に接続されて、該入力軸12の回転と同回転(以下、「入力回転」という。)になっていると共に、第4クラッチC−4(摩擦係合要素)に接続されている。更に、リングギヤR1は、該固定されたサンギヤS1と該入力回転するキャリヤCR1とにより、入力回転が減速された減速回転になると共に、第1クラッチC−1(摩擦係合要素)及び第3クラッチC−3(摩擦係合要素)に接続されている。
上記プラネタリギヤユニットPUのサンギヤS2は、係止手段としての第1ブレーキB−1(摩擦係合要素)に接続されてミッションケース3に対して固定自在となっていると共に、上記第4クラッチC−4及び上記第3クラッチC−3に接続されて、第4クラッチC−4を介して上記キャリヤCR1の入力回転が、第3クラッチC−3を介して上記リングギヤR1の減速回転が、それぞれ入力自在となっている。また、上記サンギヤS3は、第1クラッチC−1に接続されており、上記リングギヤR1の減速回転が入力自在となっている。
更に、上記キャリヤCR2は、中間軸13を介して入力軸12の回転が入力される第2クラッチC−2(摩擦係合要素)に接続されて、該第2クラッチC−2を介して入力回転が入力自在となっており、また、係止手段としてのワンウェイクラッチF−1及び第2ブレーキB−2(摩擦係合要素)に接続されて、該ワンウェイクラッチF−1を介してミッションケース3に対して一方向の回転が規制されると共に、該第2ブレーキB−2を介して回転が固定自在となっている。そして、上記リングギヤR3は、不図示の駆動車輪に回転を出力する出力軸15に接続されている。
[各変速段の伝達経路]
つづいて、上記構成に基づき、変速機構2の作用について図1、図2及び図3に沿って説明する。なお、図2は、本自動変速機の係合表であり、○はON(係合、係止)、(○)はエンジンブレーキ時のON(係止)を示す。また、図3に示す速度線図において、縦軸はそれぞれの回転要素(各ギヤ)の回転数を示しており、横軸はそれら回転要素のギヤ比に対応して示している。また、該速度線図のプラネタリギヤDPの部分において、横方向最端部(図3中左方側)の縦軸はサンギヤS1に、以降図中右方側へ順に縦軸は、リングギヤR1、キャリヤCR1に対応している。更に、該速度線図のプラネタリギヤユニットPUの部分において、横方向最端部(図3中右方側)の縦軸はサンギヤS3に、以降図中左方側へ順に縦軸はリングギヤR3(R2)、キャリヤCR2(CR3)、サンギヤS2に対応している。
例えばD(ドライブ)レンジであって、前進1速段(1ST)では、図2に示すように、第1クラッチC−1及びワンウェイクラッチF−1が係合される。すると、図1及び図3に示すように、固定されたサンギヤS1と入力回転であるキャリヤCR1によって減速回転するリングギヤR1の回転が、第1クラッチC−1を介してサンギヤS3に入力される。また、キャリヤCR2の回転が一方向(正転回転方向)に規制されて、つまりキャリヤCR2の逆転回転が防止されて固定された状態になる。すると、サンギヤS3に入力された減速回転が、固定されたキャリヤCR2を介してリングギヤR3に出力され、前進1速段としての正転回転が出力軸15から出力される。
なお、エンジンブレーキ時(コースト時)には、第2ブレーキB−2を係止してキャリヤCR2を固定し、該キャリヤCR2の正転回転を防止する形で、上記前進1速段の状態を維持する。また、該前進1速段では、ワンウェイクラッチF−1によりキャリヤCR2の逆転回転を防止し、かつ正転回転を可能にするので、例えば非走行レンジから走行レンジに切換えた際の前進1速段の達成を、ワンウェイクラッチF−1の自動係合により滑らかに行うことができる。
前進2速段(2ND)では、図2に示すように、第1クラッチC−1が係合され、第1ブレーキB−1が係止される。すると、図1及び図3に示すように、固定されたサンギヤS1と入力回転であるキャリヤCR1によって減速回転するリングギヤR1の回転が、第1クラッチC−1を介してサンギヤS3に入力される。また、第1ブレーキB−1の係止によりサンギヤS2の回転が固定される。すると、キャリヤCR2がサンギヤS3よりも低回転の減速回転となり、該サンギヤS3に入力された減速回転が該キャリヤCR2を介してリングギヤR3に出力され、前進2速段としての正転回転が出力軸15から出力される。
前進3速段(3RD)では、図2に示すように、第1クラッチC−1及び第3クラッチC−3が係合される。すると、図1及び図3に示すように、固定されたサンギヤS1と入力回転であるキャリヤCR1によって減速回転するリングギヤR1の回転が、第1クラッチC−1を介してサンギヤS3に入力される。また、第3クラッチC−3の係合によりリングギヤR1の減速回転がサンギヤS2に入力される。つまり、サンギヤS2及びサンギヤS3にリングギヤR1の減速回転が入力されるため、プラネタリギヤユニットPUが減速回転の直結状態となり、そのまま減速回転がリングギヤR3に出力され、前進3速段としての正転回転が出力軸15から出力される。
前進4速段(4TH)では、図2に示すように、第1クラッチC−1及び第4クラッチC−4が係合される。すると、図1及び図3に示すように、固定されたサンギヤS1と入力回転であるキャリヤCR1によって減速回転するリングギヤR1の回転が、第1クラッチC−1を介してサンギヤS3に入力される。また、第4クラッチC−4の係合によりキャリヤCR1の入力回転がサンギヤS2に入力される。すると、キャリヤCR2がサンギヤS3よりも高回転の減速回転となり、該サンギヤS3に入力された減速回転が該キャリヤCR2を介してリングギヤR3に出力され、前進4速段としての正転回転が出力軸15から出力される。
前進5速段(5TH)では、図2に示すように、第1クラッチC−1及び第2クラッチC−2が係合される。すると、図1及び図3に示すように、固定されたサンギヤS1と入力回転であるキャリヤCR1によって減速回転するリングギヤR1の回転が、第1クラッチC−1を介してサンギヤS3に入力される。また、第2クラッチC−2の係合によりキャリヤCR2に入力回転が入力される。すると、該サンギヤS3に入力された減速回転とキャリヤCR2に入力された入力回転とにより、上記前進4速段より高い減速回転となってリングギヤR3に出力され、前進5速段としての正転回転が出力軸15から出力される。
前進6速段(6TH)では、図2に示すように、第2クラッチC−2及び第4クラッチC−4が係合される。すると、図1及び図3に示すように、第4クラッチC−4の係合によりサンギヤS2にキャリヤCR1の入力回転が入力される。また、第2クラッチC−2の係合によりキャリヤCR2に入力回転が入力される。つまり、サンギヤS2及びキャリヤCR2に入力回転が入力されるため、プラネタリギヤユニットPUが入力回転の直結状態となり、そのまま入力回転がリングギヤR3に出力され、前進6速段(直結段)としての正転回転が出力軸15から出力される。
前進7速段(7TH)では、図2に示すように、第2クラッチC−2及び第3クラッチC−3が係合される。すると、図1及び図3に示すように、固定されたサンギヤS1と入力回転であるキャリヤCR1によって減速回転するリングギヤR1の回転が、第3クラッチC−3を介してサンギヤS2に入力される。また、第2クラッチC−2の係合によりキャリヤCR2に入力回転が入力される。すると、該サンギヤS2に入力された減速回転とキャリヤCR2に入力された入力回転とにより、入力回転より僅かに高い増速回転となってリングギヤR3に出力され、前進7速段(上記直結段よりも増速のオーバードライブ1速段)としての正転回転が出力軸15から出力される。
前進8速段(8TH)では、図2に示すように、第2クラッチC−2が係合され、第1ブレーキB−1が係止される。すると、図1及び図3に示すように、第2クラッチC−2の係合によりキャリヤCR2に入力回転が入力される。また、第1ブレーキB−1の係止によりサンギヤS2の回転が固定される。すると、固定されたサンギヤS2によりキャリヤCR2の入力回転が上記前進7速段より高い増速回転となってリングギヤR3に出力され、前進8速段(上記直結段よりも増速のオーバードライブ2速段)としての正転回転が出力軸15から出力される。
後進段(REV)では、図2に示すように、第4クラッチC−4が係合され、第2ブレーキB−2が係止される。すると、図1及び図3に示すように、第4クラッチC−4の係合によりキャリヤCR1の入力回転がサンギヤS2に入力される。また、第2ブレーキB−2の係止によりキャリヤCR2の回転が固定される。すると、サンギヤS2に入力された入力回転が、固定されたキャリヤCR2を介してリングギヤR3に出力され、後進段としての逆転回転が出力軸15から出力される。
なお、本自動変速機においては、詳しくは後述する油圧制御装置20による油圧制御により、リバースレンジ時に第4クラッチC−4及び第2ブレーキB−2が係合されて、後進段を形成しているが、これは、種々変更が可能で、後進1速段のみ、もしくは、第3クラッチC−3と第2ブレーキB−2を係合(係止)した後進2速段も形成することができる。
また、例えばP(パーキング)レンジ及びN(ニュートラル)レンジでは、第1クラッチC−1、第2クラッチC−2、第3クラッチC−3、及び第4クラッチC−4が解放される。すると、キャリヤCR1とサンギヤS2との間、リングギヤR1とサンギヤS2及びサンギヤS3との間、即ちプラネタリギヤDPとプラネタリギヤユニットPUとの間が切断状態となる。また、入力軸12(中間軸13)とキャリヤCR2との間が切断状態となる。これにより、入力軸12とプラネタリギヤユニットPUとの間の動力伝達が切断状態となり、つまり入力軸12と出力軸15との動力伝達が切断状態となる。
[油圧制御装置の全体構成]
つづいて、本発明に係る自動変速機の油圧制御装置20について、図5を参照して説明する。なお、本実施の形態においては、各バルブにおける実際のスプールは1本であるが、スプール位置の切換え位置或いはコントロール位置を説明するため、図5中に示す右半分の状態を「右半位置」、左半分の状態を「左半位置」という。
油圧制御装置20は、主に各種の元圧となる油圧を調圧・生成するための不図示の、ストレーナ、オイルポンプ、プライマリレギュレータバルブ、セカンダリレギュレータバルブ、ソレノイドモジュレータバルブ、及びリニアソレノイドバルブSLT等を備えている。なお、本実施の形態では、上記オイルポンプ及びプライマリレギュレータバルブを合わせ、ライン圧PLを発生するライン圧発生源5として図示している。
また、該油圧制御装置20は、電気的に油圧を制御して供給するための、リニアソレノイドバルブSL1、リニアソレノイドバルブSL2、リニアソレノイドバルブSL3、リニアソレノイドバルブSL4、リニアソレノイドバルブSL5、第1ソレノイドバルブS1(元圧遮断ソレノイドバルブ)、及び第2ソレノイドバルブS2を備えている。さらに、元圧遮断切換えバルブ31及び振分け切換えバルブ32を備えている。なお、本実施の形態において上記リニアソレノイドバルブSL1〜SL5は本発明に係る係合圧制御用ソレノイドバルブを構成している。
なお、本油圧制御装置20における第1ソレノイドバルブS1以外のソレノイドバルブ、即ちリニアソレノイドバルブSL1〜SL5、及び第2ソレノイドバルブS2は、非通電時(以下、「オフ」ともいう。)に入力ポートと出力ポートとを遮断し、通電時(以下、「オン」ともいう。)に連通する、いわゆるノーマルクローズ(N/C)タイプのものが用いられており、反対に第1ソレノイドバルブS1だけにノーマルオープン(N/O)タイプのものが用いられている。
そして、該油圧制御装置20には、上記リニアソレノイドバルブSL1〜SL5によりそれぞれ調圧されて供給される係合圧に基づき、上記第1クラッチC−1を係脱し得る油圧サーボ51、上記第2クラッチC−2を係脱し得る油圧サーボ52、上記第3クラッチC−3を係脱し得る油圧サーボ53、上記第4クラッチC−4を係脱し得る油圧サーボ54、上記第1ブレーキB−1を係脱し得る油圧サーボ61、上記第2ブレーキB−2を係脱し得る油圧サーボ62が備えられて構成されている。
つづいて、上記油圧制御装置20における各種の元圧、即ちライン圧、セカンダリ圧、モジュレータ圧の生成部分について説明する。なお、これらライン圧、セカンダリ圧、モジュレータ圧の生成部分は、一般的な自動変速機の油圧制御装置と同様なものであり、周知のものであるので、簡単に説明する。
オイルポンプ(不図示)は、例えば上記トルクコンバータ7のポンプインペラ7a(図1参照)に回転駆動連結されており、エンジンの回転に連動して駆動され、不図示のオイルパンからストレーナ(不図示)を介してオイルを吸上げる形で油圧を発生させる。また、上記油圧制御装置20には、不図示のリニアソレノイドバルブSLTが備えられており、該リニアソレノイドバルブSLTは、不図示のソレノイドモジュレータバルブにより調圧されたモジュレータ圧を元圧として、スロットル開度に応じた信号圧を調圧出力する。
不図示のプライマリレギュレータバルブは、オイルポンプにより発生された油圧を、そのスプリングの付勢力が負荷されたスプールに入力する上記リニアソレノイドバルブSLTの信号圧に基づき一部排出する形でライン圧PLに調圧する。このライン圧PLは、上述した種々のバルブに供給される。
また、上記プライマリレギュレータバルブにより排出された油圧は、更にセカンダリレギュレータバルブ(不図示)によって、そのスプリングの付勢力が負荷されたスプールに入力する上記リニアソレノイドバルブSLTの信号圧に基づき一部排出する形でセカンダリ圧に調圧される。このセカンダリ圧は、不図示の潤滑油路等に供給されると共に、ロックアップリレーバルブ(不図示)に供給され、ロックアップクラッチ10(図1参照)の制御用の元圧として用いられる。ソレノイドモジュレータバルブ(不図示)は、上記プライマリレギュレータバルブにより調圧されたライン圧PLをそのスプリングの付勢力に基づき、ライン圧PLが所定圧以上となると略々一定となるモジュレータ圧に調圧する。このモジュレータ圧は、上述のリニアソレノイドバルブSLT(不図示)等に元圧として供給される。
[ソレノイド・オールオフフェールに係る機能部分の構成]
ついで、本油圧制御装置20における、ソレノイド・オールオフフェールに係る機能部分について図5に沿って説明する。油圧制御装置20は、運転者のシフトレバー(シフト操作手段)72(図6参照)の操作に基づく制御部70(図6参照)からの電気信号が入力されるように接続されている。
図5に示すように、ノーマルオープン(N/O)タイプの上記第1ソレノイドバルブ(ON/OFFソレノイド)S1は、入力ポートS1aに油路a,a1,a2を介してライン圧PL(元圧)が入力されており、非通電状態(オフ)にあっては、該ライン圧PLを信号圧PS1として出力ポートS1bから元圧遮断切換えバルブ31の制御油室31aに油路bを介して出力し、正常時の通電状態(オン)にあっては、該信号圧PS1を遮断するように構成されている。なお、第1ソレノイドバルブS1とそれらの信号圧とは、上記のように同じ符号S1を用いて説明する。また、リニアソレノイドバルブSL1〜SL5とそれらの係合圧とについても、同じ符号SL1〜SL5を用いて説明する。他のバルブについても同様とする。
上記元圧遮断切換えバルブ31は、1本のスプール31pと、該スプール31pの一端側に縮設されて該スプール31pを図中上方側に付勢するスプリング31sとを有している。また、元圧遮断切換えバルブ31は、スプール31pの一端(図中上方)側に配置されて第1ソレノイドバルブS1の出力ポートS1bからの信号圧PS1が作用する制御油室31aを有している。さらに、元圧遮断切換えバルブ31は、排出ポートEXと、油路a,a1,a3を介してライン圧PLが供給される入力ポート31bと、スプール31pの移動に応じて入力ポート31bに連通し又は遮断される出力ポート31cとを有している。該出力ポート31cは、リニアソレノイドバルブSL1〜SL5のそれぞれの入力ポートSL1a〜SL5aに油路a4〜a10を介して連通している。
また、元圧遮断切換えバルブ31は、スプール31pが、第1ソレノイドバルブS1の出力ポートS1bからの信号圧PS1が制御油室31aに作用しない状態では、スプリング31sの付勢力により図中上方側に移動して左半位置となり、入力ポート31aと出力ポート31cとが連通し、リニアソレノイドバルブSL1〜SL5へライン圧PLが供給される。さらに、元圧遮断切換えバルブ31は、第1ソレノイドバルブS1の出力ポートS1bからの信号圧PS1が制御油室31aに入力される状態では、スプール31pがスプリング31sの付勢力に抗して図中下方側に移動して右半位置となり、入力ポート31aと出力ポート31cとが遮断され、リニアソレノイドバルブSL1〜SL5へのライン圧PLの供給が遮断される。また、本実施の形態においては、上記第1ソレノイドバルブS1及び元圧遮断切換えバルブ31で、元圧遮断手段が構成されている。
ノーマルクローズ(N/C)タイプの上記第2ソレノイドバルブ(ON/OFFソレノイド)S2は、入力ポートS2aに、油路a,a11を介して、ライン圧PLが入力されており、通電状態(オン)にあっては、該ライン圧PLを信号圧PS2として出力ポートS2bから振分け切換えバルブ32の制御油室32aに油路cを介して出力し、非通電状態(オフ)にあっては、該信号圧PS3を遮断するように構成されている。
上記振分け切換えバルブ32は、スプール32pと、該スプール32pを図中上方側に付勢するスプリング32sと、第2ソレノイドバルブS2の出力ポートS2bから出力される信号圧PS2を入力する制御油室32aと、リニアソレノイドバルブSL2の出力ポートSL2bから出力される係合圧PSL2を入力する入力ポート32bと、該入力ポート32bに入力されたリニアソレノイドバルブSL2からの係合圧PSL2をスプール32pの左半位置にあっては油圧サーボ62に油路jを介して出力する出力ポート32cと、上記係合圧PSL2をスプール32pの右半位置にあっては油圧サーボ52に油路iを介して出力する出力ポート32dとを有している。
また、振分け切換えバルブ32のスプール32pは、制御油室32aに信号圧PS2が入力されない状態では、スプリング32sの付勢力により図中上方側に移動して左半位置となり、入力ポート32bと出力ポート32cとが連通し、油圧サーボ62に係合圧PSL2が供給される。さらに、振分け切換えバルブ32のスプール32pは、制御油室32aに第2ソレノイドバルブS2の出力ポートS2bからの信号圧PS2が入力される状態では、スプリング32sの付勢力に抗して図中下方側に移動され右半位置となり、入力ポート32bと出力ポート32dとが連通し、油圧サーボ52に係合圧PSL2が供給される。
また、上記リニアソレノイドバルブSL1は、正常時の元圧遮断切換えバルブ31の出力ポート31cからのライン圧PLを油路a4,a6,a7を介して入力する入力ポートSL1aと、通電された際に該ライン圧PLを調圧して油圧サーボ51に油路eを介して係合圧PSL1として出力する出力ポートSL1bと、主に油圧サーボ51の係合圧PSL1をドレーンするための排出ポート(不図示)とを有している。
上記リニアソレノイドバルブSL2は、正常時の元圧遮断切換えバルブ31の出力ポート31cからのライン圧PLを油路a4,a6,a10を介して入力する入力ポートSL2aと、通電された際に該ライン圧PLを調圧して、振分け切換えバルブ32の入力ポート32bに油路hを介して出力する出力ポートSL2bと、主に油圧サーボ52及び油圧サーボ62の係合圧PSL2をドレーンするための排出ポート(不図示)とを有している。
上記リニアソレノイドバルブSL3は、正常時の元圧遮断切換えバルブ31の出力ポート31cからのライン圧PLを油路a4,a6,a9を介して入力する入力ポートSL3aと、通電された際に該ライン圧PLを調圧して油圧サーボ53に油路gを介して係合圧PSL3として出力する出力ポートSL3bと、主に油圧サーボ53の係合圧PSL3をドレーンするための排出ポート(不図示)とを有している。
上記リニアソレノイドバルブSL4は、正常時の元圧遮断切換えバルブ31の出力ポート31cからのライン圧PLを油路a4,a6,a8を介して入力する入力ポートSL4aと、通電された際に該ライン圧PLを調圧して油圧サーボ54に油路fを介して係合圧PSL4として出力する出力ポートSL4bと、主に油圧サーボ54の係合圧PSL4をドレーンするための排出ポート(不図示)とを有している。
上記リニアソレノイドバルブSL5は、正常時の元圧遮断切換えバルブ31の出力ポート31cからのライン圧PLを油路a4,a5を介して入力する入力ポートSL5aと、通電された際に該ライン圧PLを調圧して油圧サーボ61に油路dを介して係合圧PSL5として出力する出力ポートSL5bと、主に油圧サーボ61の係合圧PSL5をドレーンするための排出ポート(不図示)とを有している。
また、上記油圧サーボ62に係合圧PSL2を供給するための油路jには、該油路jから分岐した油路kを介して、油圧サーボ62に供給される係合圧PSL2を検出するための油圧センサ65が配置されている。
[制御装置の構成]
ついで、本発明に係る自動変速機の制御装置100について、図6を参照して説明する。本自動変速機の制御装置100は、図6に示すように、エンジン6からの信号、自動変速機1の出力軸回転数(車速)センサ71からの信号、シフトレバー72からの信号、油圧センサ65(図5も併せて参照)からの信号を入力する制御部(ECU)70を備えており、該制御部70には元圧遮断指令手段81、ソレノイドバルブ試動手段82、及び故障検出中断手段83を有する故障検出指令手段80、及び故障判断手段85が備えられて構成されている。
上記元圧遮断指令手段81は、制御装置100により故障検出制御が実行された際に、元圧遮断手段の第1ソレノイドバルブS1に指令信号を出力することで、該第1ソレノイドバルブS1に信号圧PS1を出力させ、元圧遮断切換えバルブ31を切り換えてリニアソレノイドバルブSL1〜SL5に供給されるライン圧PLを遮断する。
上記ソレノイドバルブ試動手段82は、制御装置100により故障検出制御が実行された際に、リニアソレノイドバルブSL2に指令信号を出力することで、該リニアソレノイドバルブSL2から油圧サーボ62に係合圧PSL2を出力させる。
上記故障検出中断手段83は、故障検出制御が実行されている際に、シフトレバー72の操作に基づく、非走行レンジ(P,N)から走行レンジ(R,D)への変更指令があった場合に、実行されている故障検出制御を中断させ、元圧遮断手段による遮断を解除すると共に、該走行レンジ(R,D)でのクラッチまたはブレーキの係合を継続させる中断制御を実行する。
上記故障判断手段85は、制御装置100による故障検出制御の実行状態と、油圧センサ65からの検出信号とから第1ソレノイドバルブS1及び元圧遮断切換えバルブ31の故障を判断する。
[各変速段の作用]
以上のような油圧制御装置20における各変速段の作用について、図4及び図5を参照して説明する。また、図4は本自動変速機1に係るソレノイドバルブの作動表であり、○はON(通電)、×はOFF(非通電)を示す。なお、本自動変速機1を搭載する車輌の運転席に配置されたシフトレバー72(図6参照)は、該シフトレバー72の移動方向の上側から下側に向かってP(パーキング)レンジ(非走行レンジ)、R(リバース)レンジ(走行レンジ)、N(ニュートラル)レンジ(非走行レンジ)、D(ドライブ)レンジ(走行レンジ)の順に操作可能である。
すなわち、Pレンジにおいては、制御部70(図6参照)の制御で第1ソレノイドバルブS1がオンされて出力ポートS1bから信号圧PS1が出力されず、制御部70の制御で第2ソレノイドバルブS2がオフされて出力ポートS2bから信号圧PS2が出力されない。これにより、元圧遮断切換えバルブ31及び振分け切換えバルブ32は、共に、スプリング31s,32sの付勢力によってスプール31p,32pが左半位置となる。
この際、制御部70の制御で第1ソレノイドバルブS1がオンされることで、元圧遮断切換えバルブ31は、その制御油室31aに出力ポートS1bからの信号圧PS1が作用されず、スプール31pが左半位置となるため、入力ポート31bに作用するライン圧PLは、出力ポート31cからリニアソレノイドバルブSL1〜SL5の全てに向けて出力されるが、これらリニアソレノイドバルブSL1〜SL5は何れもオフ状態であるため、係合圧PSL1〜PSL5は出力されない。
また、シフトレバーがRレンジに操作されると、制御部70の制御で第1ソレノイドバルブS1がオンされて出力ポートS1bから信号圧PS1が出力されず、制御部70の制御で第2ソレノイドバルブS2がオフされて出力ポートS2bから信号圧PS2が出力されない。これにより、元圧遮断切換えバルブ31及び振分け切換えバルブ32は、共に、スプリング31s,32sの付勢力によってスプール31p,32pが左半位置となる。
この際、第1ソレノイドバルブS1がオンされることで、元圧遮断切換えバルブ31は、その制御油室31aに出力ポートS1bからの信号圧PS1が作用されず、スプール31pが左半位置となるため、入力ポート31bに作用するライン圧PLは、出力ポート31cからリニアソレノイドバルブSL1〜SL5の全てに向けて出力される。このとき、リニアソレノイドバルブSL2,SL4がオンするため、出力ポートSL2bから振分け切換えバルブ32の入力ポート32bに係合圧PSL2が出力されるが、第2ソレノイドバルブS2がオフすることで信号圧PS2が振分け切換えバルブ32の制御油室32aに出力されず、スプール32pが左半位置になっていることで、上記係合圧PSL2は、上記入力ポート32bから出力ポート32cを介して油圧サーボ62に供給され、これにより、第2ブレーキB−2が係止される。同時に、上記リニアソレノイドバルブSL4のオン作動により、元圧遮断切換えバルブ31の出力ポート31cからのライン圧PLが、出力ポートSL4bから油圧サーボ54に係合圧PSL4として調圧出力され、第4クラッチC−4が係合される。従って、上記第2ブレーキB−2の係止と相俟って、後進段が達成される。
さらに、シフトレバーがNレンジに操作されると、上記Pレンジのときと同様、制御部70の制御で第1ソレノイドバルブS1がオンされて出力ポートS1bから信号圧PS1が出力されず、制御部70の制御で第2ソレノイドバルブS2がオフされて出力ポートS2bから信号圧PS2が出力されない。これにより、元圧遮断切換えバルブ31及び振分け切換えバルブ32は、共に、スプリング31s,32sの付勢力によってスプール31p,32pが左半位置となる。
この際、制御部70の制御で第1ソレノイドバルブS1がオンされることで、元圧遮断切換えバルブ31は、その制御油室31aに出力ポートS1bからの信号圧PS1が作用されず、スプール31pが左半位置となるため、入力ポート31bに作用するライン圧PLは、出力ポート31cからリニアソレノイドバルブSL1〜SL5の全てに向けて出力されるが、これらリニアソレノイドバルブSL1〜SL5は何れもオフ状態であるため、係合圧PSL1〜PSL5は出力されず、従って、ニュートラル状態が達成される。
そして、シフトレバーがDレンジにある前進レンジ時の前進1速段においては、制御部70の制御で第1ソレノイドバルブS1がオンされて出力ポートS1bから信号圧PS1は出力されず、制御部70の制御で第2ソレノイドバルブS2がオフされて出力ポートS2bから信号圧PS2が出力されない。これにより、元圧遮断切換えバルブ31及び振分け切換えバルブ32は、共に、スプリング31s,32sの付勢力によってスプール31p,32pが左半位置となる。
この際、制御部70の制御で第1ソレノイドバルブS1がオンされることで、元圧遮断切換えバルブ31は、スプール31pが左半位置となるため、入力ポート31bに作用するライン圧PLは、出力ポート31cからリニアソレノイドバルブSL1〜SL5の全てに向けて出力される。ここで、リニアソレノイドバルブSL1がオンするため、その出力ポートSL1bから第1クラッチC−1に係合圧PSL1が供給されて該クラッチC−1が係合し、ワンウェイクラッチF−1の係止と相俟って、前進1速段が達成される。
また、シフトレバーがDレンジにある前進1速段のエンジンブレーキ時においては、制御部70の制御で第1ソレノイドバルブS1がオンされて出力ポートS1bから信号圧PS1は出力されず、制御部70の制御で第2ソレノイドバルブS2がオフされて出力ポートS2bから信号圧PS2が出力されない。これにより、元圧遮断切換えバルブ31及び振分け切換えバルブ32は、共に、スプリング31s,32sの付勢力によってスプール31p,32pが左半位置となる。
この際、前進レンジ時の前進1速段時と同様、第1ソレノイドバルブS1がオンされることで元圧切換えバルブ31が左半位置になり、ライン圧PLがリニアソレノイドバルブSL1〜SL5の全てに向けて出力される状態となり、この状態においてリニアソレノイドバルブSL1,SL2の双方がオンされる。このため、リニアソレノイドバルブSL1にあっては、その出力ポートSL1bから油圧サーボ51に係合圧PSL1を供給して第1クラッチC−1を係合させる。また、リニアソレノイドバルブSL2にあっては、その出力ポートSL2bから振分け切換えバルブ32の入力ポート32bに係合圧PSL2を出力するが、このとき振分け切換えバルブ32は、制御油室32aに信号圧PS2が入力されないことで左半位置になっているため、上記係合圧PSL2は、上記入力ポート32bから出力ポート32cを介して油圧サーボ62に供給されて、第2ブレーキB−2が係止される。これにより、第1クラッチC−1の係合と相俟って、前進1速段のエンジンブレーキが達成される。
さらに、シフトレバーがDレンジにある前進2速段においては、制御部70の制御で第1ソレノイドバルブS1がオンされて出力ポートS1bから信号圧PS1が出力されず、制御部70の制御で第2ソレノイドバルブS2がオンされて出力ポートS2bから信号圧PS2が出力される。これにより、元圧遮断切換えバルブ31は、スプリング31sの付勢力によってスプール31pが左半位置とされ、振分け切換えバルブ32は、スプリング32sの付勢力に抗してスプール32pが移動される右半位置とされる。
この際、制御部70の制御で第1ソレノイドバルブS1がオンされることで、元圧切換えバルブ31は、その制御油室31aに出力ポートS1bからの信号圧PS1が作用されず、スプール31pが左半位置となるため、入力ポート31bに作用するライン圧PLは、出力ポート31cからリニアソレノイドバルブSL1〜SL5の全てに向けて出力される。ここで、リニアソレノイドバルブSL1,SL5がオンされるため、リニアソレノイドバルブSL1にあっては、その出力ポートSL1bから油圧サーボ51に係合圧PSL1が供給されて第1クラッチC−1が係合し、またリニアソレノイドバルブSL5にあっては、その出力ポートSL5bから油圧サーボ61に係合圧PSL5が供給されて第1ブレーキB−1が係止され、これにより、前進2速段が達成される。
また、シフトレバーがDレンジにある前進3速段においては、上記前進2速段のときと同様、第1及び第2ソレノイドバルブS1,S2がそれぞれオンされた状態となり、これにより、元圧遮断切換えバルブ31のスプール31pは左半位置とされ、振分け切換えバルブ32のスプール32pは右半位置とされる。
この際、制御部70の制御で第1ソレノイドバルブS1がオンされることで、上述と同様、ライン圧PLがリニアソレノイドバルブSL1〜SL5の全てに向けて出力されるが、ここで、リニアソレノイドバルブSL1,SL3がオンされるため、リニアソレノイドバルブSL1にあっては、その出力ポートSL1bから油圧サーボ51に係合圧PSL1が供給されて第1クラッチC−1が係合し、またリニアソレノイドバルブSL3にあっては、その出力ポートSL3bから油圧サーボ53に係合圧PSL3が供給されて第3クラッチC−3が係止され、これにより、前進3速段が達成される。
さらに、シフトレバーがDレンジにある前進4速段においては、上述と同様、第1及び第2ソレノイドバルブS1,S2がそれぞれオンされた状態となり、これにより、元圧遮断切換えバルブ31のスプール31pは左半位置とされ、振分け切換えバルブ32のスプール32pは右半位置とされる。
この際、第1ソレノイドバルブS1がオンされることで、ライン圧PLがリニアソレノイドバルブSL1〜SL5の全てに向けて出力されるが、ここで、リニアソレノイドバルブSL1,SL4がオンされるため、リニアソレノイドバルブSL1にあっては、その出力ポートSL1bから油圧サーボ51に係合圧PSL1が供給されて第1クラッチC−1が係合し、またリニアソレノイドバルブSL4にあっては、その出力ポートSL4bから油圧サーボ54に係合圧PSL4が供給されて第4クラッチC−4が係止され、これにより、前進4速段が達成される。
また、シフトレバーがDレンジにある前進5速段においては、上述と同様、第1及び第2ソレノイドバルブS1,S2がそれぞれオンされた状態となり、これにより、元圧遮断切換えバルブ31のスプール31pは左半位置とされ、振分け切換えバルブ32のスプール32pは右半位置とされる。
この際、第1ソレノイドバルブS1がオンされることで、ライン圧PLがリニアソレノイドバルブSL1〜SL5の全てに向けて出力されるが、ここで、リニアソレノイドバルブSL1,SL2がオンされるため、リニアソレノイドバルブSL1にあっては、その出力ポートSL1bから油圧サーボ51に係合圧PSL1が供給されて第1クラッチC−1が係合する。また、リニアソレノイドバルブSL2にあっては、その出力ポートSL2bから振分け切換えバルブ32の入力ポート32bに係合圧PSL2を出力するが、このとき振分け切換えバルブ32は、制御油室32aに信号圧PS2が入力されることで右半位置になっているため、上記係合圧PSL2は、上記入力ポート32bから出力ポート32dを介して油圧サーボ52に供給されて、第2クラッチC−2が係合される。これにより、上記第1クラッチC−1の係合と相俟って、前進5速段が達成される。
さらに、シフトレバーがDレンジにある前進6速段においては、上述と同様、第1及び第2ソレノイドバルブS1,S2がそれぞれオンされた状態となり、これにより、元圧遮断切換えバルブ31のスプール31pは左半位置とされ、振分け切換えバルブ32のスプール32pは右半位置とされる。
この際、第1ソレノイドバルブS1がオンされることで、上述と同様、ライン圧PLがリニアソレノイドバルブSL1〜SL5の全てに向けて出力されるが、ここで、リニアソレノイドバルブSL2,SL4がオンされるため、リニアソレノイドバルブSL4にあっては、その出力ポートSL4bから油圧サーボ54に係合圧PSL4を供給し、これにより、第4クラッチC−4が係合される。また、リニアソレノイドバルブSL2にあっては、その出力ポートSL2bから振分け切換えバルブ32の入力ポート32bに係合圧PSL2を出力するが、このとき振分け切換えバルブ32は、制御油室32aに信号圧PS2が入力されることで右半位置になっているため、上記係合圧PSL2は、上記入力ポート32bから出力ポート32dを介して油圧サーボ52に供給されて、第2クラッチC−2が係合される。これにより、上記第4クラッチC−4の係合と相俟って、前進6速段が達成される。
また、シフトレバーがDレンジにある前進7速段においては、上述と同様、第1及び第2ソレノイドバルブS1,S2がそれぞれオンされた状態となり、これにより、元圧遮断切換えバルブ31のスプール31pは左半位置とされ、振分け切換えバルブ32のスプール32pは右半位置とされる。
この際、第1ソレノイドバルブS1がオンされることで、上述と同様、ライン圧PLがリニアソレノイドバルブSL1〜SL5の全てに向けて出力されるが、ここで、リニアソレノイドバルブSL2,SL3がオンされるため、リニアソレノイドバルブSL3にあっては、その出力ポートSL3bから油圧サーボ53に係合圧PSL3が供給されて、第3クラッチC−3が係合される。また、リニアソレノイドバルブSL2にあっては、その出力ポートSL2bから振分け切換えバルブ32の入力ポート32bに係合圧PSL2を出力するが、上記前進6速段の場合と同様に、該係合圧PSL2が入力ポート32bから出力ポート32dを介して油圧サーボ52に供給されて、第2クラッチC−2が係合される。従って、上記第3クラッチC−3の係合と相俟って、前進7速段が達成される。
さらに、シフトレバーがDレンジにある前進8速段においては、上述と同様、第1及び第2ソレノイドバルブS1,S2がそれぞれオンされた状態となり、これにより、元圧遮断切換えバルブ31のスプール31pは左半位置とされ、振分け切換えバルブ32のスプール32pは右半位置とされる。
この際、第1ソレノイドバルブS1がオンされることで、上述と同様、ライン圧PLがリニアソレノイドバルブSL1〜SL5の全てに向けて出力されるが、ここで、リニアソレノイドバルブSL2,SL5がオンされるため、リニアソレノイドバルブSL5にあっては、その出力ポートSL5bから油圧サーボ61に係合圧PSL5が供給されて、第1ブレーキB−1が係止される。また、リニアソレノイドバルブSL2にあっては、その出力ポートSL2bから振分け切換えバルブ32の入力ポート32bに係合圧PSL2を出力するが、上記前進6速段の場合と同様に、該係合圧PSL2が入力ポート32bから出力ポート32dを介して油圧サーボ52に供給されて、第2クラッチC−2が係合される。従って、上記第1ブレーキB−1の係止と相俟って、前進8速段が達成される。
[ソレノイドバルブ・オールオフフェール時の作用]
ついで、ソレノイド・オールオフフェール時について図4及び図5に沿って説明する。本自動変速機の油圧制御装置20にあっては、ソレノイドバルブ、各種切換えバルブ、各種コントロールバルブ等における故障を検出した際に、制御部70の制御で、全てのソレノイドバルブをオフにするソレノイド・オールオフフェールモードに移行する。なお、例えば断線・ショート等が生じた場合にあっても、同様にソレノイドがオールオフとなるので、本明細書中にあっては、これらの状態も含め、ソレノイド・オールオフフェールモードとする。
例えば車輌が前進レンジで走行中に、何らかの原因によって、ソレノイド・オールオフフェールモードとされると、全てのソレノイドバルブがオフされる(故障時となる)。この際、全てのソレノイドバルブがオフされることにより、ノーマルオープンタイプの第1ソレノイドバルブS1だけ信号圧PS1を出力する状態となり、他のソレノイドバルブは信号圧ないし係合圧の出力を停止する。
また、元圧遮断切換えバルブ31にあっては、オフしている第1ソレノイドバルブS1の信号圧PS1が制御油室31aに入力され、スプリング31sの付勢力に抗して、スプール31pが右半位置に切換わるため、入力ポート31bと出力ポート31cとは遮断され、リニアソレノイドバルブSL1〜SL5の全てに向けて出力されていたライン圧PLが遮断される。
これにより、例えばノーマルクローズタイプのソレノイドバルブがオン状態で油圧を出力したまま故障してしまう、いわゆるオンフェールを生じてしまった場合にも、リニアソレノイドバルブSL1〜SL5の全てに向けて出力されていたライン圧PLが遮断され、係合圧PSL1〜PSL5は出力されず、ニュートラル状態が達成される。
[ソレノイドバルブ・オールオフフェール時の作用]
次に、本発明の要部となる故障検出制御について、図7ないし図10に沿って説明する。本実施の形態に係る故障検出制御は、故障のない正常時にはまったく動作することがないように構成されたフェールセーフバルブが、フェール時に初めて動作しようとする場合に、作動できる状態であるかを検出し、ガレージシフトを禁止する等の措置をとることにより、ソレノイドの出力故障による正常時に係合している摩擦係合要素に加え解放されているはずの摩擦係合要素も同時に係合されてしまうことを防止するための制御である。
例えばイグニッション(エンジン)がオンされると、図7に示すように、本自動変速機の制御装置100による故障検出制御が開始される(S1)。制御装置100による故障検出制御が開始されると、まず出力軸回転数センサ71(図6参照)により、車速がV=0km/hであるかどうかを判定する(S2)。ここで、出力軸回転数センサ71による検出結果がV=0km/hであることを判定すると(S2のYes)、ステップS3に進む。一方、車速がV=0km/hであることが判定されなかった場合は、再び車速の判定が繰り返される(S2のNo)。
ステップS3において、シフトレバー72(図6参照)の操作状態に基づいて、シフト位置がPレンジまたはNレンジ(即ち、非走行レンジ)であるかどうかを判定する。ここで、シフトレバー72の操作状態に基づくシフト位置がPレンジまたはNレンジあると判定された場合には(S3のYes)、ステップS4に進む。一方、シフト位置がPレンジまたはNレンジであると判定されなかった場合には(S3のNo)、ステップS2に戻る。
ステップS4において、シフトレバー72の操作状態に基づいて、ガレージシフト(即ち、走行レンジ(RレンジまたはDレンジ)へのシフト操作)の実施指令が行われたかどうかを判定する。ここで、ガレージシフトの実施指令が行われず、シフト位置がPレンジまたはNレンジのままとされていることが判定されると(S4のYes)、ステップS5に進む。
ステップS5において、シフト位置がPレンジまたはNレンジであることが判定されると、制御装置100は、リニアソレノイドバルブSL2の係合圧PSL2を出力し、ステップS6に進む。この際、振分け切換えバルブ32のスプール32pは、上述のように左半位置とされているので、係合圧PSL2は油圧サーボ62に向けて出力される。
ステップS6において、制御装置100は、油圧センサ65(SW)(図5及び図6参照)の出力信号に基づき、係合圧PSL2(B2圧)を検出し、ステップS7に進む。
ステップS7において、制御装置100は、第1ソレノイドバルブS1の信号圧PS1を出力し、ステップS8に進む。この際、第1ソレノイドバルブS1から出力された信号圧PS1によって元圧遮断切換えバルブ31のスプール31pは、スプリング31sの付勢力に抗して移動し、左半位置から右半位置に切換わる。
ステップS8において、油圧センサ65の出力信号に基づく、係合圧PSL2がオフ状態となるかどうかを判定する。ここで、係合圧PSL2がオフ状態となったことが判定されると(S8のYes)、元圧遮断切換えバルブ31の出力ポート31cから出力されるライン圧PLが出力されなくなったので、第1ソレノイドバルブS1及び元圧遮断切換えバルブ31(即ち、元圧遮断手段)が正常に動作することを判定して(S9)、故障検出制御を終了する(S10)。一方、係合圧PSL2がオフ状態となったことが判定されなかった場合には(S8のNo)、元圧遮断切換えバルブ31の出力ポート31cから出力されるライン圧PLが出力されているので、第1ソレノイドバルブS1及び元圧遮断切換えバルブ31のうち少なくとも一方が故障した異常状態を判定して(S11)、ガレージシフトを禁止する措置を行い(S12)、故障検出制御を終了する(S13)。
また、図8に示すように、故障検出制御は、係合圧PSL2と時間の関係に表すこともできる。この場合、上記ステップS5が符号Aで示す線となり、ステップS8のYesが符号Cで示す線となる。さらに、ステップS8のNoが符号Bで示す線となっている。
また、制御装置100による故障検出制御においては、リニアソレノイドバルブSL2の係合圧PSL2を出力し、第1ソレノイドバルブS1の信号圧PS1を出力する前にガレージシフト指令が行われた場合、故障検出中断手段83により、中断制御を実行する。該中断制御は、図9に示すように、故障検出制御を中断し、ガレージシフト(Dレンジ)を実行する。詳しくは、リニアソレノイドバルブSL2の係合圧PSL2を出力した状態(符号D)から、係合圧PSL2のドレーン(符号F)を行わずに、係合圧PSL2を維持したまま(符合E)、リニアソレノイドバルブSL1の係合圧PSL1を出力し(符号G)、前進1速段を形成する。なお、ガレージシフトがRレンジにて行われた場合は、リニアソレノイドバルブSL1の係合圧PSL1の代わりにリニアソレノイドバルブSL4の係合圧PSL4を出力することで後進段を形成することができる。そして、上記中断制御においては、次回非走行レンジ(PレンジまたはNレンジ)に変更された際に、故障検出制御を実行させる。
さらに、制御装置100による故障検出制御においては、リニアソレノイドバルブSL2の係合圧PSL2を出力し、第1ソレノイドバルブS1の信号圧PS1を出力し、故障検出制御が終了する前にガレージシフト指令が行われた場合にも、故障検出中断手段83により、中断制御が実行される。この場合の中断制御は、図10に示すように、リニアソレノイドバルブSL2の係合圧PSL2を出力し(符号H)、係合圧PSL2のドレーン(符号J)を中断して再度係合圧PSL2を出力する(符号I)。そして、リニアソレノイドバルブSL1の係合圧PSL1を出力し(符号K)、前進1速段を形成する。なお、ガレージシフトがRレンジにて行われた場合は、リニアソレノイドバルブSL1の係合圧PSL1の代わりにリニアソレノイドバルブSL4の係合圧PSL4を出力することで後進段を形成することができる。
以上のように本発明に係る自動変速機の制御装置100によると、正常時におけるPレンジまたはNレンジ(非走行レンジ)にて、第1ソレノイドバルブS1及び元圧遮断切換えバルブ31(元圧遮断手段)にライン圧PLを遮断するように指令すると共に、油圧センサ65により係合圧が検出される油圧サーボ62に係合圧PSL2を供給するリニアソレノイドバルブSL2に該係合圧PSL2を出力させる故障検出制御を実行する故障検出指令手段80と、故障検出指令手段80の故障検出制御の実行状態と油圧センサ65の検出結果とから第1ソレノイドバルブS1及び元圧遮断切換えバルブ31(元圧遮断手段)の故障を判断する故障判断手段85を備えたので、フェールセーフバルブの故障を事前に検出できるようにすることができる。これにより、フェールセーフバルブの故障を検出した場合に、ガレージシフトを禁止する等の措置をとることにより、リニアソレノイドの出力故障による正常時に係合している摩擦係合要素に加え解放されているはずの摩擦係合要素も同時に係合されてしまうことを防止することができ、車輌が危険な状態となることを未然に防ぐことができる。
また、油圧センサ65により係合圧が検出される油圧サーボは、前進1速段及び後進段にて係合可能なB−2ブレーキの油圧サーボ62なので、例えば故障検出制御を中断し、前進1速段または後進段を形成する際にも、係合圧を検出する油圧サーボ62の係合圧PSL2をドレーンする必要がなく、この油圧サーボ62から係合圧PSL2をドレーンする時間を省くことができる。これにより、例えば故障検出制御中にガレージシフト指令を検出した場合にも、故障検出制御の影響を与えることなく円滑にガレージシフトを行うことができる。
また、故障検出制御中に、シフトレバー72によりPレンジまたはNレンジ(非走行レンジ)からRレンジまたはDレンジ(走行レンジ)に変更する指令があった際には、故障検出制御を中断し、第1ソレノイドバルブS1及び元圧遮断切換えバルブ31(元圧遮断手段)による遮断を解除すると共に、リニアソレノイドバルブSL2により前進1速段及び後進段にて係合可能なブレーキB−2の油圧サーボ62の係合を継続させる中断制御を実行する故障検出中断手段83を備えているので、故障検出制御を中断することができ、シフトレバー72によりPレンジまたはNレンジ(非走行レンジ)からRレンジまたはDレンジ(走行レンジ)に変更する指令があった際にも、故障検出制御の影響を与えることなく、RレンジまたはDレンジに変更することができる。
また、故障検出中断手段83により故障検出制御を中断した場合には、次回PレンジまたはNレンジ(非走行レンジ)に変更された際に故障検出制御を実行するので、故障検出制御を行うタイミングを逃してしまうことを低減することができ、つまり、フェールセーフバルブの故障の検出を行うタイミングを増加させ、安全性を高めることができる。
また、元圧遮断手段は、正常時と故障時とで信号圧PS1の出力状態を変更する第1ソレノイドバルブS1と、第1ソレノイドバルブS1の信号圧PS1の入力状態に基づき正常時に元圧供給油路を通過する状態から故障発生時に該元圧供給油路を遮断する状態に切換えられる元圧遮断切換えバルブ31とで構成されているので、故障検出制御によって、例えば元圧遮断切換えバルブ31のバルブスティック等を故障として検出するだけでなく、例えば第1ソレノイドバルブS1のオンフェール等があった場合にも故障として検出することができる。
なお、以上説明した本実施の形態においては、シフト操作手段をシフトレバーであるように説明したが、これに限らず、ボタン操作等によってシフト操作できるように構成したものであっても本発明を適用することができる。