しかしながら、特許文献1、2の電磁連結装置では、積層構造である連結部は、溶接やネジによって連結されていることで、一体となって剛性が高められた状態となってしまい、これにより十分に衝撃騒音を低減することができなくなってしまう問題があった。
この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、簡単な構造で効果的に衝撃騒音を低減することが可能な電磁連結装置を提供するものである。
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の電磁連結装置は、相互に相対的に進退可能に設けられた連結部及び被連結部と、電磁力を作用させることによって前記連結部と前記被連結部とを互いに圧接した連結状態と互いに離間した非連結状態とに切り替える切替手段とを具備し、前記連結部は、前記被連結部との進退方向に、全体として互いに非締結状態且つ平滑な面で接触可能な状態で積層される複数の板状部材を備えることを特徴としている。
ここで、非締結状態とは、前記進退方向に複数積層した板状部材が、各板状部材間に隙間が形成される程度に前記進退方向に互いに独立して進退可能に設けられていることを含む。
この構成によれば、切替手段によって、被連結部と連結部とを、非連結状態から連結状態へ、または、連結状態から非連結状態へ切り替える際に、連結部と被連結部とは相互に相対的に進退し、連結部は被連結部または他の部材に当接することとなる。この際、連結部の複数の板状部材は、少なくとも周縁部が非締結状態であることで、進退方向と直交する方向に互いに拘束力が生じてしまうことを抑え、全体として剛性が低下した状態を保ち続けることができる。このため、被連結部や他の部材に当接する際に発生する衝撃騒音の高周波数成分を特に効果的に抑制することができ、騒音レベルの低減を図ることができる。
また、前記切替手段は、前記連結部を前記進退方向の一方側に付勢する付勢部材と、電磁力を作用させることによって前記連結部の各前記板状部材を前記進退方向の他方側へ吸引することが可能な電磁石とを有し、該電磁石によって前記連結部の各前記板状部材に作用する電磁力は、前記付勢部材による付勢力よりも小に設定されているとともに、全ての各前記板状部材に作用する電磁力の合成力は、前記付勢部材による付勢力よりも大に設定されていることが好ましい。
この構成によれば、連結部を付勢部材によって進退方向の一方側に付勢することによって、被連結部と連結部とを連結状態または非連結状態のいずれか一方の状態に維持させることができる。また、被連結部と連結部とを連結状態または非連結状態の一方の状態から他方の状態に切り替えるには、電磁石によって連結部に電磁力を作用させる。ここで、電磁石によって連結部の各板状部材に作用する電磁力は、前記付勢部材による付勢力よりも小に設定されていることで、一部の板状部材のみが他の板状部材から分離して付勢力に抗して電磁石に吸引されてしまうことを防ぐことができる。そして、全ての各板状部材に作用する電磁力の合成力が付勢部材による付勢力よりも大に設定されていることで、連結部を構成する複数の板状部材は、一体として付勢部材の付勢力に抗して電磁石に吸引され、連結状態または非連結状態の他方の状態に切り替えることができる。このため、効果的に衝撃騒音を低減させつつ、板状部材が電磁力の作用によって分離してバタツキが生じてしまい、あるいは、被連結部と摺接してしまうことを防ぐことができる。
また、前記電磁石によっていずれか一枚を除く他の前記板状部材に作用する電磁力の合成力が前記付勢部材による付勢力よりも小に設定されていることが好ましい。
この構成によれば、付勢部材による付勢力に対して、いずれか一枚を除く他の前記板状部材に作用する電磁力の合成力が小に設定されていることで、電磁力の作用によって、連結部をより確実に分離してしまうことなく一体として吸引することができる。
また、前記連結部の各前記板状部材は、少なくとも該板状部材同士が当接する範囲及び他の部材と当接する範囲で、表面処理により形成した摩擦面を有していることが好ましい。
この構成によれば、連結部が被連結部を含む他の部材と当接した際に、連結部を構成する板状部材が表面処理により形成した摩擦面を有していることで、接触する板状部材と他の部材または板状部材同士の間では、摩擦による熱を効果的に発生させることができる。このため、連結部が他の部材と当接した際の衝撃エネルギーの一部を熱エネルギーに変換させることができ、これにより、より効果的に衝撃騒音を低減させることができる。
また、前記連結部の各前記板状部材には、少なくとも該板状部材同士が当接する範囲及び他の部材と当接する範囲で、該板状部材を形成する材質よりも小さい弾性率の材質からなる表面層が形成されていることが好ましい。
この構成によれば、連結部が被連結部を含む他の部材と当接した際に、連結部を構成する板状部材に弾性率の小さい材質からなる表面層が形成されていることで、接触する板状部材と他の部材または板状部材同士の間で、表面層が弾性的に変形して衝撃を吸収することができ、衝撃騒音を低減させることができる。
また、前記被連結部が、前記連結部と対向して設けられた本体部材と、該本体部材の前記連結部と面する側に該連結部と当接可能に突出して設けられた第一のフェーシング部材とで構成されるとともに、前記被連結部の前記本体部材と前記連結部との互いに面する側の少なくとも一方には、前記第一のフェーシング部材を形成する材質よりも小さい弾性率の材質からなる第二のフェーシング部材が、前記第一のフェーシング部材が前記連結部に当接するよりも先に他方に当接可能に突出して設けられていることが好ましい。
この構成によれば、被連結部と連結部とが連結状態となる際に、連結部は、被連結部の第一のフェーシング部材と圧接することとなる。このため、第一のフェーシング部材の材質に応じて、当該第一のフェーシング部材が弾性的に変形することで、連結部と当接した時の衝撃力を吸収し衝撃騒音を低減させるとともに、効果的に摩擦を生じさせて連結状態を維持させることができる。ここで、連結部と被連結部の第一のフェーシング部材とが圧接する際には、連結部と被連結部との互いに面する側の少なくとも一方に設けられた第二のフェーシング部材が先に他方側に当接することとなる。そして、第二のフェーシング部材の材質は、第一のフェーシング部材の材質よりも弾性率が小さいことから、より柔軟に弾性変形して予め衝撃を吸収しつつ、連結部を被連結部の第一のフェーシング部材に圧接させることとなる。このため、連結部が被連結部に圧接した時の衝撃騒音をより効果的に低減させることができる。
また、前記切替手段によって被連結部に対して連結部が離間した被連結状態となる時に該連結部を当接支持する支持面を具備し、該支持面には凹部が形成されていることが好ましい。
この構成によれば、切替手段によって非連結状態とすることで、連結部は、支持面において、凹部を除く他の部分で当接して梁状に支持されることとなる。このため、連結部は、支持面に当接した際に撓みが生ずることとなり、撓み変形によって衝突エネルギーが吸収され、より効果的に衝撃騒音を低減させることができる。
また、前記連結部の前記板状部材は、湾曲形成された状態で互いに積層されていることが好ましい。
この構成によれば、各板状部材が湾曲形成されていることで、連結部が被連結部や他の部材に当接する際に、連結部の一部がまず当接し、順次変形して接触面積が増えるように当接することとなる。このため、連結部の各板状部材の変形によって衝突エネルギーを吸収することができ、より効果的に衝撃騒音を低減させることができる。
また、前記被連結部も、前記連結部との進退方向に、少なくとも周縁部が非締結状態で積層される複数の板状部材を備えることが好ましい。
この構成によれば、被連結部も複数の板状部材を備えることで、被連結部においても進退方向と直交する方向に互いに拘束力が生じてしまうことを抑え、全体として剛性が低下した状態を保ち続けることができる。このため、連結部が被連結部に当接する際に発生する衝撃騒音をさらに低減させることができる。
また、略板状のプレートと、該プレートと離間して設けられ、該プレートと対向する進退方向に進退可能なアーマチュアと、 前記プレートと前記アーマチュアとの間で前記進退方向に進退可能な前記被連結部であるディスクとを具備し、前記プレート及び前記アーマチュアの内の少なくとも一方が、前記連結部として複数の前記板状部材を備えている電磁ブレーキであることが好ましい。
この構成によれば、切替手段によってプレートまたはアーマチュアをディスクに圧接させた連結状態としてディスクを制動させた状態と、ディスクとの間に隙間を有した非連結状態として、ディスクが回転可能な状態に切り替えることができる。この際、プレート及びアーマチュアの内の少なくとも一方が複数の板状部材を備えていることで、上記のように連結状態と非連結状態とに切り替える際に発生する衝撃騒音を低減させることができる。
また、前記プレート及び前記アーマチャの両方が、前記連結部として複数の前記板状部材を備えていることが好ましい。
この構成によれば、プレート及びアーマチュアの両方が複数の板状部材を備えていることで、より効果的に衝撃騒音を低減させることができる。
また、略板状のハブと、該ハブに対して前記進退方向に進退可能なアーマチュアとを備え、前記被連結部は、該アーマチュアの前記ハブと反対側に設けられ、前記ハブと前記アーマチュアの少なくとも一方が、前記連結部として複数の前記板状部材を備えている電磁クラッチであることが好ましい。
この構成によれば、切替手段により、アーマチュアを被連結部に圧接させた連結状態として被連結部の駆動状態をアーマチュアに伝達可能な状態と、アーマチュアをハブに当接させて被連結部から離間させた非連結状態として被連結部の駆動状態がアーマチュアに伝達されない状態とに切り替えることができる。そして、ハブまたはアーマチュアが連結部として複数の板状部材を備えていることで、ハブまたはアーマチュアが、互いに、または、被連結部若しくは他の部材と当接した際の衝撃騒音を低減させることができる。
また、前記ハブ及び前記アーマチュアの両方が、前記連結部として複数の前記板状部材を備えていることがより好ましい。
この構成によれば、ハブ及びアーマチュアの両方が連結部として板状部材を備えていることで、より効果的に衝撃騒音を低減させることができる。
本発明の電磁連結装置によれば、連結部が、少なくとも周縁部が非締結状態で積層された複数の板状部材を有することで、簡単な構造でありつつ、効果的に衝撃騒音を低減させることができる。
図1及び図2は、この発明に係る実施形態を示していて、電磁連結装置の一例として、無励磁作動型の電磁ブレーキを示している。図1に示すように、この実施形態の電磁ブレーキ1は、回転駆動するシャフト2に同軸上で回転可能に取り付けられた被連結部であるディスク10と、ディスク10に対してシャフト2の回転軸L方向一方側に設けられたプレート20と、他方側に設けられた連結部であるアーマチュア30と、電磁力を作用させることによってアーマチュア30がディスク10に圧接した連結状態と離間した非連結状態とに切り替える切替手段40とを備える。
ディスク10は、シャフト2に外嵌され固定された略筒状の固定部材11と、固定部材11に外装された略環状の本体部材12と、本体部材12の両面に設けられたフェーシング部材13とを有する。固定部材11は、図示しないキーによってシャフト2に固定されている。また、固定部材11の外周面には、回転軸L方向に沿って複数の歯11aが形成されている。一方、本体部材12の内周面には固定部材11の歯11aと対応して回転軸L方向に沿って形成された溝部12aが設けられ、固定部材11の歯11aに回転軸L方向に摺動可能に噛合されている。このため、本体部材12は、固定部材11とともにシャフト2の回転軸L回りに回転可能であるとともに、シャフト2及び固定部材11に対して回転軸L方向に進退可能とされている。
また、フェーシング部材13は、略ドーナツ状で、プレート20またはアーマチュア30に当接可能に本体部材12の両面からそれぞれに向かって突出して設けられている。フェーシング部材13は、例えば、ゴムや様々な樹脂などの材質が選択される。また、フェーシング部材13は、一般的に、プレート20やアーマチュア30より剛性の低いものを用いている。また、プレート20やアーマチュア30との間で摩擦を生じさせて、回転軸Lと直交する方向及び回転軸L回りに互いを拘束することが可能な程度の摩擦係数の大きいものであることが好ましい。また、フェーシング部材13の厚さT13は、材質、使用条件によって様々変更可能であるが、フェーシング部材13が設けられた位置における本体部材12の厚さT12に対して厚く設定されていることがより好ましい。
プレート20は、中央に形成された貫通孔20aをシャフト2が貫通した略円板状の部材で、磁性体または金属で形成されている。
アーマチュア30は、中央に形成された貫通孔31aをシャフト2が貫通した略円板状の板状部材31が非締結状態で複数積層して構成されている。本実施形態では、アーマチュア30は、二層の板状部材31で構成されている。
切替手段40は、アーマチュア30に対してディスク10と反対側に設けられた電磁石41と、電磁石41側からディスク10に向かって回転軸L方向にアーマチュア30を付勢する付勢部材であるコイルバネ42とを有する。電磁石41は、中央に形成された貫通孔43aをシャフト2が貫通した略円筒状のヨーク43と、ヨーク43のアーマチュア30と対向する側に形成された略円環状の溝に収容されたコイル44とを有する。
ヨーク43の外周側には、固定用孔43bが設けられていて、回転軸Lと略平行に略軸状の案内部材45が固定されている。案内部材45は、その先端部がヨーク43からプレート20側に向かって突出していて、アーマチュア30の各板状部材31及びプレート20のそれぞれに形成された案内孔31c、20bに挿通されている。また、案内部材45の先端側は、段部45aを有して縮径し、さらに先端側には、雄ネジが形成されてナット45bが螺合されている。案内部材45において、段部45aとナット45bとの間には、バネ部材46が外装されていて、プレート20は、バネ部材46とナット45bとの間で、バネ部材46の付勢によって弾性的に挟み込まれている。このため、プレート20は、ヨーク43と略一定間隔に保持されている一方、アーマチュア30の各板状部材31は、案内部材45に沿って回転軸L方向に進退可能とされている。なお、図1においては、案内部材45は、一つ設けられているように図示されているが、平面的には、周方向に複数設けられている。
また、ヨーク43のアーマチュア30と対向する端面である支持面43cには、外周側に環状に凹部43dが形成されていて、内周側の方が僅かにアーマチュア30に近接するように設定されている。また、コイルバネ42は、ヨーク43の支持面43cに形成された収容穴43dに一端側が収容され、他端側がアーマチュア30に当接しディスク10側に向かって付勢している。なお、図1においては、コイルバネ42は、一つ設けられているように図示されているが、平面的には周方向に複数設けられている。そして、アーマチュア30は、電磁石41のコイル44に電流を流さず無励磁の状態では、電磁力が作用せず、コイルバネ42による付勢力によってディスク10のフェーシング部材13に圧接した状態とすることが可能となっている。一方、図2に示すように、電磁石41のコイル44に電流を流して励磁した状態では、アーマチュア30は、電磁力が作用してコイルバネ42の付勢に抗して吸引されて回転軸L方向に移動することとなり、ディスク10のフェーシング部材13から離間させてヨーク43と当接した状態とすることが可能となっている。ここで、アーマチュア30を構成する各板状部材31の厚さは、電磁石41によって一枚の板状部材31に作用する電磁力が、コイルバネ42による付勢力の合計よりも小さくなるように設定されており、かつ、全ての板状部材31に作用する電磁力の合成力が、コイルバネ42による付勢力の合計よりも大きくなるように設定されている。
次に、この実施形態の作用について、図1及び図2に基づいて説明する。図1に示すように、切替手段40の電磁石41が無励磁の状態では、アーマチュア30は、コイルバネ42によってディスク10に向かって付勢されている。このため、アーマチュア30は、ディスク10のフェーシング部材13に圧接した状態であり、ディスク10は、プレート20とアーマチュア30とによって挟み込まれ、アーマチュア30と連結状態となっている。このため、シャフト2及びディスク10の回転は、フェーシング部材13の材質に応じて生じる摩擦によってプレート20及びアーマチュア30に拘束されて、制動されることとなる。
一方、シャフト2及びディスク10を回転させる場合には、切替手段40において、電磁石41のコイル44に電流を流して励磁させる。これにより磁界が発生し、磁性体で形成されたアーマチュア30の各板状部材31に電磁力が作用して、板状部材31は、コイルバネ42に抗してヨーク43側に吸引されることとなる。ここで、アーマチュア30を構成する各板状部材31の厚さは、各板状部材31に作用する電磁力がコイルバネ42の付勢力の合計よりも小に設定されているから、各板状部材31がコイルバネ42による付勢に抗して他の板状部材31から分離して独立して移動してしまうことがない。そして、全ての板状部材31に作用する電磁力の合成力が、コイルバネ42の付勢力の合計よりも大に設定されているから、板状部材31は一体としてコイルバネ42の付勢力に抗して電磁石41に吸引される。そして、一体となったアーマチュア30の板状部材31は、ディスク10から離間し、案内部材45に案内されて、ヨーク43の支持面43cに当接して非連結状態となる。このため、ディスク10は、プレート20とアーマチュア30との間で隙間を有した状態となり、シャフト2の回転に応じて回転可能な状態となる。
ここで、アーマチュア30を構成する複数の板状部材31は、非締結状態であることで、電磁力が作用して一体として吸引された状態でも、回転軸L方向と直交する方向に互いに拘束力が生じてしまうことを抑え、全体として剛性が低下した状態を保ち続けることができる。このため、電磁石41においてヨーク43の支持面43cに当接する際に発生する衝撃騒音の高周波数成分の割合を特に抑制することができ、騒音レベルの低減を効果的に図ることができる。
また、板状部材31の表面31bにはメッキ層が形成され、板状部材31同士及び板状部材31とヨーク43とはメッキ層を介して接触することとなる。そして、メッキ層は、上記のように板状部材31の材質よりも弾性率が小さい材質で形成されていることから、アーマチュア30がヨーク43の支持面43cに当接する際に生じる衝撃エネルギーを効果的に吸収することができる。また、メッキ層は、上記のように板状部材31の材質よりも摩擦係数の大きい材質で形成されていることから、アーマチュア30がヨーク43の支持面43cに当接する際、板状部材31同士、及び板状部材31とヨーク43との間で摩擦による熱を効果的に発生させることができ、衝撃エネルギーの一部を熱エネルギーに変換させることができる。このように、メッキ層により生じる衝撃エネルギーを吸収し、また、熱エネルギーに変換することで、衝撃騒音をより効果的に低減することができる。
また、ヨーク43の支持面43cには凹部43dが形成されており、アーマチュア30は、支持面43cにおいて、凹部43dを除く内周側の範囲で当接し、梁状に電磁石41のヨーク43に支持されることとなる。このため、アーマチュア30は、ヨーク43に当接した際に、当接した部分を支点として、凹部43dと対向する範囲で撓み変形することとなり、これにより衝撃エネルギーが吸収され、より効果的に衝撃騒音を低減させることができる。特に、凹部が外周側に設けられていて、アーマチュア30は、内周側から外周側に向かって片持ち状に支持された状態となることで、撓み量をより大きくすることができ、これにより効果的に衝撃騒音を低減させることができる。なお、凹部43dの深さとしては、微小なものでも良く、アーマチュア30が撓み変形した結果、凹部43dにも当接したとしても少なくとも衝撃エネルギーの一部を吸収することができ、衝撃騒音低減の効果を期待することができる。
また、上記のように、アーマチュア30の各板状部材31は、分離して独立して移動してしまうことがなく、非連結状態において、電磁石41に確実に吸引された状態となる。このため、非連結状態においてディスク10が回転した際に、分離した板状部材31がディスク10と摺接してしまい、これによりトルクロスが発生し、また、摺接音による騒音が発生してしまうことを確実に防ぐことができる。
次に、再び連結状態に戻して、回転しているシャフト2及びディスク10を制動する際には、電磁石41に供給される電流を停止し、無励磁の状態にする。すなわち、アーマチュア30の各板状部材31には電磁力が作用しなくなり、これによりアーマチュア30は、コイルバネ42による付勢によって回転軸L方向にディスク10に向かって移動することとなる。このため、ディスク10は、プレート20とアーマチュア30との間に挟み込まれ、制動されることとなる。
この際にも、アーマチュア30がディスク10に圧接する際に、衝撃音が発生することとなるが、アーマチュア30が非締結状態にある複数の板状部材31で構成され、また、表面31bにメッキ層が形成されていることから、衝撃騒音の低減を図ることができる。また、ディスク10において、プレート20及びアーマチュア30が圧接するフェーシング部材13の厚さが本体部材12の厚さよりも厚く設定されていることで、より効果的に衝撃騒音を低減させることができる。
以上のように、本実施形態の電磁ブレーキ1では、アーマチュア30を複数の板状部材31を非締結状態として積層して構成するだけの簡単な構造で、効果的に電磁石の吸引、釈放時の衝撃騒音の低減を図ることができる。特に、板状部材31の表面31bにメッキ層を形成し、ヨーク43のアーマチュア30が当接する範囲に凹部43dを形成し、あるいは、フェーシング部材13の厚さを本体部材の厚さよりも厚く設定していることで、より効果的に衝撃騒音の低減を図ることができる。また、上記のようにアーマチュア30を板状部材31の積層構造とすることで、各部材厚を薄くすることができる。このため、プレス成形等によってアーマチュア30を製作することが可能となり、製造コストの低減も図ることができる。
本実施形態では、アーマチュア30において、複数の板状部材31は、互いに非締結状態であり、各板状部材31が全体として非締結状態で、各間に隙間が形成される程度に回転軸L方向に互いに独立して進退可能な状態であり、進退する回転軸L方向と直交する方向に互いに拘束力が生じてしまうことを抑え、全体として剛性が低下した状態を保つことができ、これにより騒音レベルの低減を図ることができる。
また、アーマチュア30を構成する複数の板状部材31について、上記のように各部材厚を薄くすることができプレス成形によって製造できることから、互いに重なるように湾曲形成させるものとしても良い。具体的には、例えば各板状部材31を椀状に形成し、凹面となる側がディスク10に向くようにして積層するものとしても良い。このようにすることで、アーマチュア30をディスク10に圧接させて非連結状態から連結状態にさせる際に、ディスク10にはアーマチュア30の外周側から衝突し、各板状部材が順次変形して接触面積が増えるように圧接することとなる。このため、アーマチュア30の変形によって衝突エネルギーを吸収することができ、より効果的に衝撃騒音を低減させることができる。なお、アーマチュア30が電磁石41の支持面43cに当接する際にも、アーマチュア30の中心側から衝突し、板状部材が順次変形して接触面積が増えるように当接することで、同様に衝撃騒音を低減させることができる。
また、本実施形態では、板状部材31の表面31bには、メッキ層を形成するものとしたが、全範囲に形成する必要はなく、少なくとも、隣り合う板状部材31と当接する範囲及びヨーク43など他の部材と当接する範囲にメッキ層が形成されていれば同様の効果を奏する。また、メッキ層を形成する材質としては、板状部材31の材質と比較して、弾性率が小さく、また、摩擦係数を増大させるものとしたが、これに限るものでは無く、いずれか一方でも対応する効果を期待することができる。また、摩擦係数を増大させる手段としては、メッキ層に限るものでは無い。窒化処理、浸炭処理、サンドブラスト処理なども含まれ、板状部材31の表面31bの摩擦係数を増大させる様々な表面処理を適用可能である。
また、本実施形態では、アーマチュア30を構成する板状部材31は二層としたが、これに限るものでは無く、三層以上としても良い。また、三層以上とした場合には、板状部材31の厚さとしては、各板状部材31に作用する電磁力がコイルバネ42の付勢力の合計よりも小さく設定されているだけでなく、さらに、いずれか一枚の板状部材31を除く他の残りの板状部材31に作用する電磁力の合成力がコイルバネ42の付勢力の合計よりも小さく設定されていることが好ましい。このように設定することで、全ての板状部材31に作用する電磁力を合成してのみコイルバネ42の付勢力を上回ることとなり、より確実に一体化した状態を保つことができる。なお、上記において、電磁石41による電磁力と板状部材31との関係は、板状部材31の厚さによって設定するものとして説明したが、これに限るものでは無く、電磁石41のコイル44に供給する電流の大きさによって設定するものとしても良い。
また、複数の板状部材31を、電磁力を作用させることによってコイルバネ42の付勢力に抗してより確実に一体的として進退させる手段として、各板状部材31の表面に透磁性の高い油膜を形成するものとしても良い。具体的には、透磁性の高い油膜を形成する材質としては、磁性流体やMR流体などが挙げられる。このような油膜を形成することで連結部全体の透磁率を向上させて、作用する電磁力によって各板状部材31をより一体的にさせることができる。また、透磁率を向上させる点において、板状部材31同士が接触する面の平滑度を向上させるように表面処理を行うものとしても良い。
図3は、この実施形態の第1の変形例を示している。図3に示すように、この変形例の電磁ブレーキ50では、プレート51も複数の板状部材52による積層構造となっている。プレート51の板状部材52も同様に、互いに非締結状態であり、バネ部材46とナット45bとを挟持手段55として、プレート51は、回転軸L方向に挟持されている。また、板状部材52の表面52aにも同様に、メッキ層が形成されている。
この電磁ブレーキ50では、非連結状態から連結状態となる時に、プレート51もディスク10と圧接し、衝撃音が発生することとなるが、プレート51も複数の板状部材52の積層構造とすることで、衝撃騒音の低減を図ることができ、同様に、メッキ層によってより効果的の衝撃騒音の低減を図ることができる。また、プレート51は、挟持手段55によって弾性的に挟持されていて、これにより板状部材52は、挟持手段55のバネ部材46による付勢に抗して回転軸L方向に独立して進退可能としつつ、より一体的な状態とすることができる。このため、非連結状態において、板状部材52の一つが分離してディスク10と摺接して、摺接音が騒音として発生してしまうことをより確実に防止することができる。
なお、プレート51においても、各板状部材52の少なくとも周縁部52bが非締結状態であることで、衝撃騒音低減の効果を期待することができる。また、上記においては、アーマチュアが積層構造である場合と、アーマチュア及びプレートが積層構造である場合とについて説明したが、プレートのみを積層構造としても当然にプレートについては衝撃騒音低減の効果を期待することができる。
また、上記については、連結部となるアーマチュア及びプレートが積層構造である場合について説明を行ったが、被連結部であるディスクも複数の板状部材で構成されているものとしても良い。図4及び図5は、この実施形態の第2の変形例の電磁連結装置において、被連結部として使用されるディスクの詳細を示したものである。図4及び図5に示すように、この変形例では、被連結部であるディスク60は、二層の板状部材61が積層して構成されていて、各板状部材61において、アーマチュアまたはプレートと当接する面にはフェーシング部材13が設けられている。ここで、各板状部材61には、中心近傍に互いに連通する雌ネジ61aが複数箇所形成されていて、雄ネジ62が螺合されている。これにより、板状部材61同士は、中心側において、雄ネジ62によって一体とされているとともに、その外周側となる周縁部においては非締結状態とされている。このため、各板状部材61は、被連結部として一体的に軸回り回転駆動するとともに、連結状態としてアーマチュア及びプレートが圧接される際には、進退する回転軸L方向と直交する方向に互いに拘束力が生じてしまうことを抑え、全体として剛性が低下した状態を保つことができ、これにより騒音レベルの低減を図ることができる。なお、中心軸側を固定する手段としては、雄ネジ62で螺合するものに限らず、シャフト2とともに回転可能に取り付けられた固定部材に対して各板状部材の中心側が直接固定されているもとしても良い。
図6及び図7は、この実施形態の第3の変形例のディスクを示している。図6及び図7に示すように、この変形例の被連結部であるディスク65は、板状部材66同士が当接する面66aに放射状に互いに噛み合うように凹凸が形成されている。このようにすることで、ディスク65の板状部材66同士は、互いの凹凸面が噛み合うことで、軸回りに一体的に回転するとともに、連結部であるアーマチュア及びプレートと圧接する際には、進退する回転軸L方向と直交する方向に互いに拘束力が生じてしまうことを抑え、全体として剛性が低下した状態を保つことができ、これにより騒音レベルの低減を図ることができる。
なお、上記第3の変形例及び第4の変形例いずれにおいても、板状部材同士が接触する面に粘着材や両面テープ等により粘着層を設け、板状部材同士の一体性を向上させるものとしても良い。
以上、上記実施形態及び各変形例によって、電磁連結装置の一例として、無励磁作動型の電磁ブレーキを例に挙げたがこれに限るものでは無い。電磁石を励磁した際にアーマチュア及びプレートとディスクとを連結状態にさせる励磁作動型の電磁ブレーキにも適用可能である。
(第2の実施形態)
図8及び図9は、この発明に係る第2の実施形態を示していて、電磁連結装置の一例として、励磁作動型の電磁クラッチを示している。図8に示すように、この実施形態の電磁クラッチ100は、被連結部であるディスク110と、ディスク110と対向配置されたハブ120と、ディスク110とハブ120との間に介装された連結部であるアーマチュア130と、アーマチュア130がディスク110に圧接した連結状態と離間した非連結状態とに切り替える切替手段140とを備える。
ディスク110は、主動側に接続されて回転駆動する第一のシャフト102に取り付けられた略筒状で、フランジ部111aを有する本体部材111と、フランジ部111aのハブ120側の面に取り付けられたフェーシング部材112とを有する。ディスク110は、本体部材111においてフランジ部111aの中心部から反ハブ120側に突出する筒部111bが第一のシャフト102に外嵌して固定されており、これにより第一のシャフト102の回転軸Lと同軸上で回転することが可能となっている。
フェーシング部材112は、略ドーナツ状で、アーマチュア130に当接可能に本体部材111からアーマチュア130に向かって突出して設けられている。なお、フェーシング部材112の詳細については、第1の実施形態のフェーシング部材と同様であるので省略する。
また、ハブ120は、従動側に接続されて回転軸Lと同軸で回転可能な第二のシャフト103に取り付けられた略筒状の部材で、アーマチュア130と対向してフランジ部120aを有している。フランジ部120aのアーマチュア130と対向する端面である支持面120bには、外周側に環状に凹部120cが形成されていて、内周側の方が僅かにアーマチュア130に近接するように設定されている。
また、アーマチュア130は、磁性体で形成された略円板状の板状部材131、132が非締結状態で複数積層して構成されている。本実施形態では、アーマチュア130は、二層の板状部材131、132で構成されている。また、各板状部材131、132は、鉄などの磁性体で形成されていて、表面131a、132aにはメッキ層が形成されている。メッキ層を形成する材質としては、第1の実施形態同様に、板状部材131自体の材質と比較して、弾性率が小さいものが好ましく、また、摩擦係数が大きいものが好ましい。
切替手段140は、ディスク110のフランジ部111aの反ハブ120側に設けられた電磁石141と、アーマチュア130とハブ120との間に設けられた付勢部材である板バネ142とを有する。電磁石141は、略円筒状のヨーク143と、コイル144とを有し、軸受145によって、ディスク110の筒部111bに対して回転軸L回りに回転可能に外装されている。また、板バネ142は、回転軸Lを中心として放射状に複数設けられている。各板バネ142は、一端がリベット142aによってハブ120に固定されているとともに、他端がリベット142bによってアーマチュア130に固定されている。ここで、アーマチュア130を構成する板状部材131、132の内、ハブ120側の板状部材131には、板バネ142と対応する位置で貫通孔131bが形成されており、板バネ142は、反ハブ120側の板状部材132に固定されている。そして、板バネ142は、ハブ120に対してアーマチュア130を引き付けるように付勢している。
このため、アーマチュア130は、電磁石141のコイル144に電流を流さず無励磁の状態では、電磁力が作用せず、板バネ142による付勢力によってハブ120のフランジ部120aに当接した状態とすることが可能となっている。一方、図9に示すように、電磁石141のコイル144に電流を流して励磁した状態では、アーマチュア130は、電磁力が作用して板バネ142の付勢に抗して吸引されて回転軸L方向に移動することとなり、ハブ120から離間させてディスク110のフェーシング部材112に圧接した状態とすることが可能となっている。ここで、第1の実施形態同様に、アーマチュア130を構成する各板状部材131、132の厚さは、電磁石141によっていずれか一枚の板状部材131、132に作用する電磁力が、板バネ142による付勢力の合計よりも小さくなるように設定されており、かつ、全ての板状部材131、132に作用する電磁力の合成力が、板バネ142による付勢力の合計よりも大きくなるように設定されている。
次に、この実施形態の作用について、図8及び図9に基づいて説明する。図8に示すように、切替手段140の電磁石141が無励磁の状態では、アーマチュア130は、板バネ142の付勢によりハブ120に当接した状態にあり、すなわち、ディスク110と離間して非連結状態となっている。このため、第一のシャフト102及びディスク110の回転は、アーマチュア130、ハブ120、及び、第二のシャフト103に伝達されない。
一方、第一のシャフト102の回転を第二のシャフト103に伝達させるには、切替手段140において、電磁石141のコイル144に電流を流して励磁させる。これにより磁界が発生し、磁性体で形成されたアーマチュア130の各板状部材131、132に電磁力が作用して、図9に示すように、板状部材131、132は、板バネ142に抗してヨーク143側に吸引されることとなる。ここで、アーマチュア130を構成する各板状部材131、132の厚さは、各板状部材131、132に作用する電磁力が板バネ142の付勢力の合計よりも小に設定されているから、一方の板状部材132が板バネ142による付勢に抗して他方の板状部材131から分離して独立して移動してしまうことがない。そして、全ての板状部材131、132に作用する電磁力の合成力が、板バネ142の付勢力の合計よりも大に設定されているから、板状部材131、132は一体として板バネ142の付勢力に抗して電磁石141に吸引される。そして、一体となったアーマチュア130の板状部材131、132は、ハブ120から離間し、ディスク110のフェーシング部材112に圧接して連結状態となる。このため、第一のシャフト102の回転は、ディスク110からアーマチュア130、ハブ120を介して第二のシャフト103に伝達され、第二のシャフト103は回転軸L回りに回転することとなる。
ここで、アーマチュア130を構成する複数の板状部材131、132は、非締結状態であることで、電磁力が作用して一体として吸引された状態でも、回転軸L方向と直交する方向に互いに拘束力が生じてしまうことを抑え、全体として剛性が低下した状態を保ち続けることができる。このため、ディスク110のフェーシング部材112に圧接する際に発生する衝撃騒音の高周波成分を特に抑制することができ、騒音レベルの低減を効果的に図ることができる。
また、板状部材131、132の表面131a、132aにはメッキ層が形成され、板状部材131、132同士及び板状部材132とディスク110のフェーシング部材112とはメッキ層を介して接触することとなる。そして、メッキ層は、上記のように板状部材131、132の材質よりも弾性率が小さい材質で形成されていることから、アーマチュア130がディスク110のフェーシング部材112に圧接する際に生じる衝撃エネルギーを効果的に吸収することができる。また、メッキ層は、上記のように板状部材131、132の材質よりも摩擦係数の大きい材質で形成されていることから、アーマチュア130がディスク110のフェーシング部材112に圧接する際、板状部材131、132同士、及び板状部材132とフェーシング部材112との間で摩擦による熱を効果的に発生させることができ、衝撃エネルギーの一部を熱エネルギーに変換させることができる。このように、メッキ層により生じる衝撃エネルギーを吸収し、また、熱エネルギーに変換することで、衝撃騒音をより効果的に低減することができる。
また、ディスク110において、アーマチュア130が接触するフェーシング部材112の厚さが本体部材111の厚さよりも厚く設定されていることで、より効果的に衝撃騒音を低減させることができる。
また、上記のように、アーマチュア130の各板状部材131、132は、分離して独立して移動してしまうことがなく、連結状態において、電磁石141に確実に吸引された状態となる。このため、連結状態となった際に、一方の板状部材131が分離して他方の板状部材132とハブ120との間でバタつくことにより、騒音が発生してしまうことを確実に防ぐことができる。
次に、再び非連結状態に戻して、第一のシャフト102から第二のシャフト103への動力の伝達を解除する際には、電磁石141に供給される電流を停止し、無励磁の状態にする。すなわち、アーマチュア130の各板状部材131、132には電磁力が作用しなくなり、これによりアーマチュア130は、板バネ142による付勢によって回転軸L方向にハブ120に向かって移動し、ハブ120のフランジ部120aに当接することとなる。このため、アーマチュア130は、ディスク110と離間し、第一のシャフト102からの回転が伝達しなくなる。
この際にも、アーマチュア130がハブ120に当接する際に、衝撃音が発生することとなるが、アーマチュア130が非締結状態にある複数の板状部材131、132で構成され、また、表面131a、132aにメッキ層が形成されていることから、衝撃騒音の低減を図ることができる。
さらに、ハブ120において、フランジ部120aの支持面120bに凹部120cが形成されており、アーマチュア130は、支持面120bにおいて、凹部120cを除く内周側の範囲で当接し、梁状にハブ120のフランジ部120aに支持されることとなる。このため、アーマチュア130は、ハブ120に当接した際に、当接した部分を支点として、凹部120cと対向する範囲で撓み変形することとなり、これにより衝撃エネルギーが吸収され、より効果的に衝撃騒音を低減させることができる。特に、凹部が外周側に設けられていて、アーマチュア130は、内周側から外周側に向かって片持ち状に支持された状態となることで、撓み量をより大きくすることができ、これにより効果的に衝撃騒音を低減させることができる。なお、第1の実施形態同様に、凹部120cの深さとしては、微小なものとしても衝撃騒音低減の効果を期待することができる。
以上のように、本実施形態の電磁クラッチ100では、連結部であるアーマチュア130を複数の板状部材131、132を非締結状態として積層して構成するだけの簡単な構造で、効果的に電磁石の吸引、釈放時の衝撃騒音の低減を図ることができる。特に、板状部材131、132の表面131a、132aにメッキ層を形成し、ハブ120のアーマチュア130が当接する範囲に凹部120cを形成し、あるいは、フェーシング部材112の厚さを本体部材の厚さよりも厚く設定していることで、より効果的に衝撃騒音の低減を図ることができる。
本実施形態でも、アーマチュア130において、複数の板状部材131、132は、各板状部材131が全体として非締結状態で、各間に隙間が形成される程度に回転軸L方向に互いに独立して進退可能な状態である。
また、本実施形態でも、板状部材131、132の表面131a、132aのメッキ層は、少なくとも、隣り合う板状部材131、132同士で当接する範囲、及び、ディスク110やハブ120など板状部材以外の他の部材と当接する範囲で形成されていれば同様の効果を奏する。また、メッキ層を形成する材質としては、板状部材131、132の材質と比較して、弾性率が小さいか、または、摩擦係数を増大させているか、いずれか一方でも良い。また、摩擦係数を増大させる手段としては、窒化処理、浸炭処理、サンドブラスト処理なども含まれる。
また、本実施形態でも、アーマチュア130を構成する板状部材は、三層以上としても良く、その場合には、板状部材の厚さとしては、各板状部材に作用する電磁力が板バネ142の付勢力の合計よりも小さく設定されているだけでなく、さらに、いずれか一枚の板状部材を除く他の残りの板状部材に作用する電磁力の合成力が板バネ142の付勢力の合計よりも小さく設定されていることが好ましい。また、電磁石141による電磁力と板状部材との関係は、電磁石141のコイル144に供給する電流の大きさによって設定するものとしても良い。
図10は、この実施形態の変形例を示している。図10に示すように、この変形例の電磁クラッチ150では、ハブ151も連結部として複数の板状部材152、153による積層構造となっている。なお、ディスク110側の板状部材152によって、アーマチュア130と当接する支持面120bを形成し、また、もう一方の反ディスク110側の板状部材153とによって凹部120cを形成している。また、反ディスク110側の板状部材153は、第二のシャフト103に外嵌固定される筒状の本体部分と一体となっている。ハブ151の板状部材152、153も同様に、互いに非締結状態であり、表面152a、153aにも同様に、メッキ層が形成されている。
この電磁クラッチ150では、連結状態から非連結状態となる時に、アーマチュア130とハブ151とが当接し、衝撃音が発生することとなるが、ハブ151も複数の板状部材152、153の積層構造とすることで、衝撃騒音の低減を図ることができ、同様に、メッキ層によってより効果的に衝撃騒音の低減を図ることができる。
なお、ハブ151においても、一方の板状部材152の少なくとも周縁部152bが他方の板状部材153と非締結状態であることで、衝撃騒音低減の効果を期待することができる。また、上記においては、連結部としてアーマチュアが積層構造である場合と、アーマチュア及びハブが積層構造である場合とについて説明したが、ハブのみを積層構造としても当然にハブについては衝撃騒音低減の効果を期待することができる。
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。図11及び図12は、本発明の第3の実施形態を示したものである。この実施形態において、前述した実施形態で用いた部材と共通の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
図11に示すように、この実施形態の電磁クラッチ60では、ディスク110のフランジ部111aにおいて、ハブ120側の面には、第一のフェーシング部材112(第3の実施形態におけるフェーシング部材)が設けられているとともに、第二のフェーシング部材61が突出して設けられている。第二のフェーシング部材61は、略円環状に形成されていて、第一のフェーシング部材112の内周側で突出して設けられている。第二のフェーシング部材61は、電磁石141を励磁状態として非連結状態から連結状態に切り替えた場合において、第一のフェーシング部材112がアーマチュア130と当接するよりも先にアーマチュア130に当接可能に突出して設けられている。また、第二のフェーシング部材61を形成する材質は、第一のフェーシング部材112を形成する材質よりも小さい弾性率を有している。
本実施形態の電磁クラッチ60によれば、電磁石141を励磁状態として非連結状態から連結状態に切り替えると、アーマチュア130は、電磁石141の電磁力によって回転軸L方向ディスク110側に移動することとなり、ディスク110の第一のフェーシング部材112に圧接することとなる。この際、ディスク110の第一のフェーシング部材112がアーマチュア130と圧接するよりも先に、第二のフェーシング部材61がアーマチュア130に当接することとなる。そして、第二のフェーシング部材61の材質が第一のフェーシング部材112の材質よりも小さい弾性率を有していることから、第二のフェーシング部材61がより柔軟に弾性変形して予め衝撃を吸収しつつ、アーマチュア130をディスク110の第一のフェーシング部材112に圧接させることとなる。このため、アーマチュア130がディスク110に圧接した時の衝撃騒音をより効果的に低減させることができる。
なお、本実施形態では、第二のフェーシング部材61は、円環状に形成されているものとしたが、これに限るものでは無く、第一のフェーシング部材112と回転軸L方向に重ならない位置で、様々な形状で設けることが可能である。また、第二のフェーシング部材61はディスク110に設けられているものとしたが、これに限るものでは無く、アーマチュア130側に設けられていて、ディスク110の本体部材111と当接可能とするものとしても良い。
以上、各実施形態では、電磁連結装置の一例として、励磁作動型の電磁クラッチを例に挙げたがこれに限るものでは無い。電磁石を無励磁とした際に連結部と被連結部とを連結状態にさせる無励磁作動型の電磁クラッチにも適用可能である。
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。