[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るラッチ機構を備えた駆動力伝達装置及びその周辺部の断面図である。図2は、図1の要部拡大図である。この駆動力伝達装置1は、例えば車両のエンジン等の駆動源の駆動力を断続可能に伝達するために用いられる。なお、ここでラッチ機構とは、一方向から押圧力を断続的に付与することにより、その押圧力が付与される方向に進退移動する対象部材が複数箇所に位置決めされる機構をいう。
駆動力伝達装置1は、同軸上で相対回転可能に配置された第1回転部材11及び第2回転部材12と、第2回転部材12に対して軸方向移動可能かつ相対回転不能に連結された噛み合い部材2と、通電により磁力を発生する電磁コイル3と、電磁コイル3への通電によって作動するラッチ機構10とを備え、ラッチ機構10の作動によって第1回転部材11と第2回転部材12とが駆動力伝達可能に連結される。第1回転部材11及び第2回転部材12は、回転軸線Oを共有してハウジング100に回転可能に支持されている。
ハウジング100は、第1ハウジング部材101及び第2ハウジング部材102からなり、第1ハウジング部材101と第2ハウジング部材102とが複数のボルト103(図1には1つのボルト103のみを示す)によって相互に固定されている。ハウジング100の内部には、各構成部材間の摺動抵抗を低減するための図略の潤滑油が所定の割合で充填されている。なお、以下の説明において、回転軸線Oに平行な方向を軸方向といい、回転軸線Oを中心とする周方向を単に周方向ということがある。
第1回転部材11は、第1ハウジング部材101との間に配置された玉軸受13によって回転可能に支持されている。第1回転部材11は、玉軸受13に支持された軸部111と、軸部111の端部から径方向外方に張り出して形成された張り出し部112と、張り出し部112の外径端部から回転軸線Oに沿って第2回転部材12側に延在する円筒部113と、円筒部113の先端部からさらに径方向外方に張り出して形成された第1噛合部としてのギヤフランジ部114とを一体に有している。ギヤフランジ部114には、周方向に沿って複数のギヤ歯115が形成されている。
第2回転部材12は、第2ハウジング部材102に形成された開口102aから挿入されるシャフト14を挿通させる挿通孔120が形成された円筒状であり、挿通孔120の内面には、シャフト14の外周スプライン嵌合部14aにスプライン嵌合する内周スプライン嵌合部12aが形成されている。第2回転部材12とシャフト14とは、内周スプライン嵌合部12aと外周スプライン嵌合部14aとのスプライン嵌合により相対回転不能であり、かつスナップリング15によって軸方向の相対移動が規制されている。シャフト14の外周面と第2ハウジング部材102の開口102aの内面との間は、シール部材16によって封止されている。
第2回転部材12は、軸方向の一端部が第1回転部材11の円筒部113の内側に配置された玉軸受17によって支持され、軸方向の他端部が第2ハウジング部材102との間に配置された玉軸受18によって支持されている。玉軸受17,18は、第2回転部材12の外周面に嵌合し、第2回転部材12の外周面における玉軸受17と玉軸受18との間には、回転軸線Oに平行に延在する複数の突条からなる外周スプライン嵌合部12bが形成されている。第2回転部材12の外周面とハウジング100の内面との間には、ラッチ機構10とが配置されている。
ラッチ機構10は、電磁コイル3の磁力によって軸方向移動する押圧部材としてのアーマチャ4と、第2回転部材12に外嵌された被係止部材としてのピストンリング5と、第2ハウジング部材102に形成された複数の係止突起19と、噛み合い部材2とピストンリング5との間に配置された転がり軸受6と、噛み合い部材2をピストンリング5側に弾性的に押圧する付勢部材としての弾性部材7と、ピストンリング5と径方向に対向する対向部材としてのヨーク30と、アーマチャ4をヨーク30から離間する方向に付勢する付勢部材としての皿バネ301と、ヨーク30とピストンリング5との間に配置され、ピストンリング5の径方向に圧縮される弾性を有する摺接部材としてのOリング8を備えている。
ピストンリング5は、アーマチャ4及び複数の係止突起19と転がり軸受6との間に配置され、弾性部材7による押圧力を噛み合い部材2から転がり軸受6を介して複数の係止突起19側への軸方向の付勢力として受ける。アーマチャ4は、弾性部材7による押圧力に抗してピストンリング5を転がり軸受6側に押圧する。すなわち、弾性部材7は、ピストンリング5をアーマチャ4による押圧方向とは反対方向に付勢する。
係止突起19は、アーマチャ4と軸方向に対向する第2ハウジング部材102の対向面よりもピストンリング5側に向かって突出した突起として形成されている。本実施の形態では、複数の係止突起19が第2ハウジング部材102に一体に設けられているが、複数の係止突起19は第2ハウジング部材102と別体でもよい。
また、本実施の形態では、転がり軸受6が針状スラストころ軸受からなる。弾性部材7は、一対の皿バネ71,72を向かい合わせて構成され、噛み合い部材2の第1回転部材11側の位置に配設されている。皿バネ71は噛み合い部材2の軸方向端面に接触し、皿バネ72は、内輪171、外輪172、及び複数の球状の転動体173からなる玉軸受17の内輪171の軸方向端面に接触している。
噛み合い部材2は、第2回転部材12の外周スプライン嵌合部12bにスプライン嵌合する内周スプライン嵌合部21aを有する円筒部21と、円筒部21における第1回転部材11側の端部から径方向外方に張り出して形成された第2噛合部としてのギヤフランジ部22とを一体に有している。噛み合い部材2は、第2回転部材12に対して軸方向移動可能かつ相対回転不能に連結され、噛み合い部材2が第1回転部材11側に移動すると、ギヤフランジ部22が第1回転部材11のギヤフランジ部114に噛み合うように構成されている。
ギヤフランジ部22には、周方向に沿って複数のギヤ歯23が形成され、この複数のギヤ歯23がギヤフランジ部114の複数のギヤ歯115に噛合する。図1では、回転軸線Oよりも上側に、噛み合い部材2のギヤフランジ部22が第1回転部材11のギヤフランジ部114に噛み合っていない状態(非連結状態)を示し、回転軸線Oよりも下側に、噛み合い部材2のギヤフランジ部22が第1回転部材11のギヤフランジ部114に噛み合った状態(連結状態)を示している。
ピストンリング5は、アーマチャ4の軸方向移動に応動し、噛み合い部材2のギヤフランジ部22が第1回転部材11のギヤフランジ部114に噛み合うように、噛み合い部材2を回転軸線Oに沿って軸方向に押圧する。すなわち、噛み合い部材2は、ピストンリング5によって第2回転部材12に対して軸方向に移動し、ギヤフランジ部22が第1回転部材11のギヤフランジ部114に噛み合うことで、第1回転部材11と第2回転部材12とが連結される。ピストンリング5が噛み合い部材2を押圧する際の動作については後述する。
電磁コイル3は、樹脂からなるボビン31に図略のコントローラから供給される電流が流れる巻線32を巻き回してなる。この電磁コイル3は、鉄等の強磁性体からなる環状のヨーク30に保持され、ヨーク30は第2ハウジング部材102に支持されている。ヨーク30には、回転軸線Oに平行となるように配置された円柱状のピン300が嵌合する複数の穴部300aが形成され、この穴部300aにピン300の一端部が挿入されている。また、第2ハウジング部材102には、ピン300の他端部が嵌合する複数の穴部102bが形成されている。
図3は、アーマチャ4を示す斜視図である。アーマチャ4は、中心部に第2回転部材12を挿通させる貫通孔4aが形成された円環板状の本体部40と、本体部40の内周面から内方に突出した押圧突起41とを一体に有している。本体部40は、電磁コイル3及びヨーク30と軸方向に対向して配置され、かつ複数のピン300(図1に示す)を挿通させるピン挿通孔4bが複数箇所(本実施の形態では4箇所)に形成されている。本体部40における電磁コイル3及びヨーク30との対向面40aは、軸方向に対して直交する平坦面として形成されている。
押圧突起41は、貫通孔4aの内側から見た場合に台形状を呈し、電磁コイル3への通電時にピストンリング5に当接する当接面41aを有している。当接面41aは、ピストンリング5の周方向に対して傾斜した傾斜面であり、台形状の下底にあたる端面41bと当接面41aとがなす角は鋭角である。本実施の形態では、6つの押圧突起41が周方向に等間隔に形成されている。
アーマチャ4は、図1に示すように、本体部40とヨーク30との間に配置された皿バネ301によって、ヨーク30から離間する方向に弾性的に押し付けられている。アーマチャ4は、電磁コイル3が非通電であるときには、皿バネ301の押し付け力によって第2ハウジング部材102の受け部102cに当接し、電磁コイル3に通電されると、その磁力によってヨーク30に引き寄せられて対向面40aがヨーク30に当接する。
また、アーマチャ4は、ピン挿通孔4bに挿通された複数のピン300によって第2ハウジング部材102及びヨーク30に対する回転が規制され、電磁コイル3に対して軸方向移動可能かつ相対回転不能である。アーマチャ4は、第2ハウジング部材102の受け部102cに当接した後退位置と、本体部40における対向面40aがヨーク30に当接した前進位置との間を、複数のピン300に案内されて軸方向に進退移動する。皿バネ301は、アーマチャ4を前進位置から後退位置に向かって付勢している。図1では、回転軸線Oよりも上側にアーマチャ4が後退位置にある状態を示し、回転軸線Oよりも下側にアーマチャ4が前進位置にある状態を示している。
図4は、第2ハウジング部材102に設けられた複数の係止突起19及びその周辺部を示す斜視図である。
第2ハウジング部材102には、第2回転部材12を挿通させる貫通孔102dが形成され、複数の係止突起19は、貫通孔102dの内周面から内方に膨出し、かつ回転軸線Oに沿ってピストンリング5側に突出している。複数の係止突起19は、貫通孔102dの周方向に沿って等間隔に設けられ、その個数はアーマチャ4の押圧突起41の個数と同じである。
係止突起19は、アーマチャ4の押圧突起41における当接面41aと同様に、後述するピストンリング5の軸方向突起51の先端面51aに当接する当接面19aが、ピストンリング5の周方向に対して傾斜した傾斜面として形成されている。また、係止突起19は、ピストンリング5の周方向に対して直交する平坦な第1側面19b及び第2側面19cを有し、第1側面19bと第2側面19cとの間に当接面19aが形成されている。第1側面19bと当接面19aとがなす角は鋭角であり、第2側面19cと当接面19aとがなす角は鈍角である。
図5は、ピストンリング5を示し、(a)はピストンリング5を回転軸線Oに沿って複数の係止突起19側から見た平面図、(b)はピストンリング5の一部を示す斜視図である。
ピストンリング5は、第2回転部材12を挿通させる円筒状の基部50と、基部50から軸方向に突出した複数の軸方向突起51とを有している。本実施の形態では、回転軸線Oに沿った断面における基部50の断面形状が矩形状であり、基部50と一体に12個の軸方向突起51が等間隔に設けられている。それぞれの軸方向突起51の軸方向端面である先端面51aには、被係止部510が形成されている。より具体的には、軸方向突起51の先端面51aは、ピストンリング5の周方向に対して傾斜した第1傾斜面510aと、同じくピストンリング5の周方向に対して第1傾斜面510aと同方向に傾斜した第2傾斜面510bとを含み、第1傾斜面510aと第2傾斜面510bとがピストンリング5の周方向に並んでいる。
第1傾斜面510aと第2傾斜面510bとの間には、回転軸線Oと平行な段差面510cが形成されている。また、軸方向突起51は、ピストンリング5の周方向に対して直交する平坦な第1側面51b及び第2側面51cを有し、第1側面51bが第1傾斜面510aと連続して形成され、第2側面51cが第2傾斜面510bと連続して形成されている。
ピストンリング5の周方向における第1傾斜面510a及び第2傾斜面510bの幅は、第1傾斜面510aの幅の方が第2傾斜面510bの幅よりも広く形成されている。被係止部510は、第1傾斜面510a及び段差面510cによって形成され、ピストンリング5の外周側から見た場合に三角形状をなす窪みとして構成されている。周方向に隣り合う2つの軸方向突起51の間における基部50の軸方向端面50aは、軸方向に対して直交する平坦な面であり、軸方向突起51は、軸方向端面50aに対して垂直に立設されている。基部50における軸方向端面50aとは反対側の面には、軸受6が対向する。基部50の外周面50bは、その全体に亘ってピストンリング5の軸方向に平行であり、段差は形成されていない。
ピストンリング5の被係止部510は、係止突起19によって係止される。より具体的には、係止突起19の当接面19aが被係止部510の先端面51aにおける第1傾斜面510aに面接触することで、ピストンリング5の軸方向移動及び回転が係止突起19によって規制される。ピストンリング5の被係止部510が係止突起19によって係止された状態では、噛み合い部材2のギヤフランジ部22が第1回転部材11のギヤフランジ部114に噛み合い、第1回転部材11と第2回転部材12とが駆動力伝達可能に連結される。
また、軸方向突起51の先端面51aには、電磁コイル3が励磁された際、アーマチャ4の押圧突起41における当接面41aが当接する。より詳細には、押圧突起41における当接面41aは、ピストンリング5の径方向における先端面51aの外周側の一部に当接し、先端面51aの内周側の一部には、係止突起19の当接面19aが当接する。
電磁コイル3が励磁されると、アーマチャ4は、その当接面41aと軸方向突起51の先端面51aとの接触により、ピストンリング5を、基部50が係止突起19から離間する方向に押圧する。
図2に示すように、ヨーク30は、ピストンリング5の基部50と径方向に対向する。より具体的には、ピストンリング5は、ヨーク30の内側に配置され、ヨーク30の内周面30bと基部50の外周面50bとが、ピストンリング5の径方向に向かい合う。
Oリング8は、ヨーク30に保持されて、ピストンリング5が軸方向に移動する際、基部50の外周面50bを摺動する。ヨーク30の内周面30bには、環状の凹溝30aが全周に亘って形成され、この凹溝30aにOリング8が保持されている。Oリング8は、ピストンリング5の径方向に圧縮される弾性体からなる。本実施の形態では、Oリング8が例えばニトリルゴム,スチロールゴム,シリコンゴム,あるいはフッ素ゴム等からなる環状のゴム成形体である。Oリング8の表面は、圧縮に伴う復元力を以って基部50の外周面50bに押し付けられる。
(ラッチ機構10の動作)
図6(a)〜(d)は、ピストンリング5の被係止部510が係止突起19に係止されない非係止状態(第2状態)から、ピストンリング5の被係止部510が係止突起19に係止された係止状態(第1状態)に切り替わる際のラッチ機構10の動作を示す模式図である。図6(a)〜(d)では、説明の容易化及び明確化のため、ピストンリング5及びアーマチャ4の周方向を図面の上下方向に延びる直線状に示し、複数の係止突起19のうち1つの係止突起19の輪郭を二点鎖線で図示している。また、アーマチャ4の押圧突起41を破線で図示している。
本実施の形態では、ピストンリング5が図面の左方に移動した際に噛み合い部材2のギヤフランジ部22が第1回転部材11のギヤフランジ部114に噛み合い、ピストンリング5が図面の右方に移動した際に噛み合い部材2のギヤフランジ部22が第1回転部材11のギヤフランジ部114から離脱する。以下、図面の左側に向かう方向を噛合方向といい、図面の右側に向かう方向を離脱方向という。
ピストンリング5は、アーマチャ4の進退移動に伴って被係止部510の先端面51aが係止突起19及びアーマチャ4の当接面19a,41aを摺動して回転する。ピストンリング5の被係止部510が係止突起19に係止されない非係止状態では、被係止部510が周方向に隣り合う一対の係止突起19の間に位置する。
非係止状態では、図6(a)に示すように、弾性部材7の押圧力によりピストンリング5の第1傾斜面510aにアーマチャ4における押圧突起41の当接面41aが当接する。前述のように、ピストンリング5の第1傾斜面510a及びアーマチャ4の当接面41aはピストンリング5の周方向に対して傾斜しているので、アーマチャ4の当接面41aがピストンリング5の第1傾斜面510aに当接することにより、ピストンリング5には回転軸線Oを回転軸とする回転力が発生するが、ピストンリング5の回転は、軸方向突起51の第1側面51bが係止突起19の第1側面19bに接触することで規制されている。
図6(b)は、図6(a)に示す非係止状態から、電磁コイル3に通電されてアーマチャ4がヨーク30側に移動し、ピストンリング5がアーマチャ4と共に軸方向に移動して、軸方向突起51の第1側面51bの全体が係止突起19の第1側面19bよりも噛合方向に変位した状態を図示している。この状態では、軸方向突起51の第1側面51bと係止突起19の第1側面19bとの接触によるピストンリング5の回転規制が解除されるので、ピストンリング5が回転し、図6(c)に示すように被係止部510の先端面51a(第1傾斜面510a)がアーマチャ4の当接面41aを摺動する。また、この回転に伴って、ピストンリング5が離脱方向に移動する。
このピストンリング5の回転は、軸方向突起51の段差面510cがアーマチャ4の押圧突起41における端面41bに当接することで規制される。このとき、軸方向突起51の第1の傾斜面510aは、係止突起19の当接面19aに対向する。そして、電磁コイル3への通電が遮断されてアーマチャ4が離脱方向に移動すると、被係止部510の先端面51a(第1傾斜面510a)が係止突起19の当接面19aを摺動して回転し、図6(d)に示すように軸方向突起51の段差面510cが係止突起19の先端部における第1側面19bに当接する。
これにより、ピストンリング5の被係止部510が係止突起19に係止された係止状態となり、噛み合い部材2におけるギヤフランジ部22の複数のギヤ歯23が第1回転部材11におけるギヤフランジ部114の複数のギヤ歯115に噛合して、第1回転部材11と第2回転部材12とが駆動力伝達可能に連結される。
図7(a)〜(d)は、ピストンリング5の被係止部510が係止突起19に係止された係止状態(第1状態)から、ピストンリング5の被係止部510が係止突起19に係止されない非係止状態(第2状態)に切り替わる際のラッチ機構10の動作を示す模式図である。
図7(a)は、図6(d)に示す係止状態から電磁コイル3に通電されてアーマチャ4が噛合方向に移動し、アーマチャ4の当接面41aが係止突起19の当接面19aよりも噛合方向に変位した状態を図示している。この状態では、軸方向突起51の段差面510cと係止突起19の第1側面19bとの接触によるピストンリング5の回転規制が解除され、図7(b)に示すように、被係止部510の先端面51a(第2傾斜面510b)が弾性部材7の押圧力によってアーマチャ4の当接面41a及び係止突起19の当接面19aを摺動し、ピストンリング5が回転する。
被係止部510の先端面51a(第2傾斜面510b)が係止突起19の第2側面19c側の端部まで当接面19aを摺動すると、図7(c)に示すように、先端面51aと当接面19aとの接触状態が解除され、ピストンリング5が弾性部材7の押圧力によって軸方向に移動する。そして、図7(d)に示すように、ピストンリング5の第1傾斜面510aがアーマチャ4における押圧突起41の当接面41aに当接し、ラッチ機構10が第2状態となる。
この際のピストンリング5の動きは、回転を伴わない直線的な動きであり、ピストンリング5は、弾性部材7の押圧力を受けてアーマチャ4の押圧突起41に突き当たる。これにより、ピストンリング5が押圧突起41に突き当たる際のピストンリング5の移動速度が高い場合には衝突音が発生し得るが、本実施の形態では、ピストンリング5の軸方向移動がOリング8の摺動抵抗により制動され、この衝突音が抑制される。つまり、Oリング8の表面がピストンリング5の基部50の外周面50bに摺接することにより発生する摩擦力によってピストンリング5の軸方向移動速度が緩和され、衝突音が抑制される。
なお、第2状態において、ピストンリング5の基部50が係止突起19に突き当たるようにラッチ機構10を構成することも可能である。この場合には、基部50の軸方向端面50aが係止突起19の先端部に突き当たることにより衝突音が発生し得るが、この衝突音は、ピストンリング5の軸方向移動がOリング8の摺動抵抗により制動されることにより抑制される。
(第1の実施の形態の作用及び効果)
上記説明した第1の実施の形態によれば、以下に述べる作用及び効果が得られる。
(1)ラッチ機構10が第1状態から第2状態に切り替わる際、ピストンリング5は、その軸方向移動がOリング8によって制動されるので、衝突音が抑制される。これにより、駆動力伝達装置1の作動時における騒音を抑制することが可能となる。
(2)ピストンリング5を制動するための摺接部材として環状のゴム成形体からなるOリング8を用いたので、例えばバネを用いる場合に比較して、ラッチ機構10及び駆動力伝達装置1の構成を簡略化することが可能となる。また、Oリング8は、その表面がピストンリング5の摺動面としての基部50の外周面50bに直接接触して摺接するので、ラッチ機構10及び駆動力伝達装置1の構成をさらに簡略化することが可能となる。
[第2の実施の形態]
図8は、本発明の第2の実施の形態に係るラッチ機構10Aを示す断面図である。第1の実施の形態に係るラッチ機構10では、Oリング8がヨーク30に保持されていたが、本実施の形態では、Oリング8がピストンリング5Aに保持されている。なお、図8において、第1の実施の形態について説明したものと共通する構成要素については、同一の符号を付してその重複した説明を省略する。
ピストンリング5Aは、円筒状の基部50と複数の軸方向突起51とを一体に有し、基部50の外周面50bには、環状の凹溝50cが全周に亘って形成されている。この凹溝50cには、Oリング8が保持されている。Oリング8は、ピストンリング5Aとヨーク30との間で、ピストンリング5Aの径方向に圧縮され、その表面がヨーク30の内周面30bに接触している。
ラッチ機構10Aの動作は、第1の実施の形態において図6及び図7を参照して説明したものと同様であり、ラッチ機構10Aが第1状態から第2状態に切り替わる際のピストンリング5Aの軸方向移動は、Oリング8の表面がヨーク30の内周面30bに摺接することにより発生する摩擦力によって緩和され、衝突音が抑制される。すなわち、この第2の実施の形態によっても、第1の実施の形態と同様の作用及び効果が得られる。
[第3の実施の形態]
図9(a)及び(b)は、本発明の第3の実施の形態に係るラッチ機構10Bを示す断面図である。第1の実施の形態に係るラッチ機構10では、ピストンリング5における基部50の外周面50bがピストンリング5の軸方向に平行であったが、本実施の形態におけるピストンリング5Bは、その基部50の形状が第1の実施の形態に係るピストンリング5と異なっている。なお、本実施の形態に係るラッチ機構10Bの動作は、第1の実施の形態において図6及び図7を参照して説明したものと同様である。
図9(a)は、ピストンリング5Bの被係止部510が係止突起19に係止された第1状態を示し、図9(b)は、ピストンリング5Bの被係止部510が隣り合う一対の係止突起19の間に位置する第2状態を示している。図9(a)及び(b)において、第1の実施の形態について説明したものと共通する構成要素については、同一の符号を付してその重複した説明を省略する。
本実施の形態に係るピストンリング5Bは、基部50の外周面50bにおいてOリング8に摺接する摺接面が、互いに径の異なる2つの摺接部を含んでいる。より具体的には、ピストンリング5Bの基部50が段付き円筒状であり、その外周面50bは、ラッチ機構10Bの第1状態においてOリング8に接触する第1摺接部50b1と、ラッチ機構10Bの第2状態においてOリング8に接触する第2摺接部50b2と、第1摺接部50b1と第2摺接部50b2との間に形成されたテーパ部50b3とを含んでいる。第1摺接部50b1は、第2摺接部50b2よりも被係止部510側に形成されている。
ここで、「摺接面」とは、基部50の外周面50bのうち、ピストンリング5Bの軸方向移動に伴ってOリング8に摺接する領域をいい、この領域には、テーパ部50b3の全体と、第1摺接部50b1及び第2摺接部50b2のそれぞれの少なくとも一部とが含まれる。
第1摺接部50b1における基部50の外径は、第2摺接部50b2における基部50の外径よりも小さく形成されている。テーパ部50b3における基部50の外径は、第1摺接部50b1側から第2摺接部50b2側に向かって徐々に拡径されている。なお、基部50の外周面50bは、第1摺接部50b1及び第2摺接部50b2においてピストンリング5Bの軸方向に対して平行である。
Oリング8は、第1摺接部50b1と第2摺接部50b2との段差に基づいて、第2摺接部50b2と接触した際に、第1摺接部50b1と接触した際よりも大きく圧縮される。これにより、基部50が第2摺接部50b2においてOリング8から受ける面圧は、基部50が第1摺接部50b1においてOリング8から受ける面圧よりも高くなる。この面圧の違いは、Oリング8がピストンリング5Bの軸方向移動を制動する際の制動力の違いとして作用し、ピストンリング5Bは、Oリング8が第2摺接部50b2を摺動するときに、Oリング8が第1摺接部50b1を摺動するときよりも大きな制動力を受ける。
前述のように、第1摺接部50b1は、第2摺接部50b2よりも被係止部510側に形成されているので、ラッチ機構10Bが第1状態から第2状態に移行する際、ピストンリング5Bの基部50は、まず第1摺接部50b1においてOリング8に摺接し、その後、テーパ部50b3がOリング8に摺接することでOリング8がピストンリング5Bの径方向に圧縮され、その後さらに第2摺接部50b2においてOリング8に摺接する。これにより、ラッチ機構10Bが第1状態から第2状態に移行する際、Oリング8によるピストンリング5Bの制動力は、段階的に増大する。
本実施の形態によれば、特にピストンリング5Bがアーマチャ4の押圧突起41に突き当たる直前に比較的大きな制動力が発生するので、ピストンリング5Bの軸方向の移動速度の低下を抑えながら、衝突音を抑制することができる。つまり、仮に基部50の外周面50bの全体を第2摺接部50b2と同径に形成した場合には、ラッチ機構10Bが第1状態から第2状態に移行する際のピストンリング5Bの軸方向の移動速度が大きく低下して応答性が低下してしまい、また仮に基部50の外周面50bの全体を第1摺接部50b1と同径に形成した場合には、Oリング8による制動力が十分に作用せず、衝突音が発生してしまうが、本実施の形態では、上記構成により、応答性と衝突音の抑制による静粛性とを両立することが可能となる。
なお、本実施の形態では、基部50の外周面50bにおける摺接面が、互いに径の異なる2つの摺接部(第1摺接部50b1及び第2摺接部50b2)を有する場合について説明したが、この摺接面が3つ以上の摺接部を有していてもよい。つまり、基部50の外周面50bにおける摺接面は、互いに径の異なる少なくとも2つの摺接部を含んでいればよい。だだし、それぞれの摺接部の外径は、被係止部510から軸方向に遠ざかるほど大きく形成されていることが望ましい。
[第4の実施の形態]
図10(a)及び(b)は、本発明の第4の実施の形態に係るラッチ機構10Cを示す断面図である。第2の実施の形態では、ピストンリング5Aの基部50の外周面50bに対向するヨーク30の内周面30bが回転軸線Oに平行な面として形成されていたが、本実施の形態では、ヨーク30の内周面30bにおいてOリング8に摺接する摺接面が、互いに径の異なる2つの摺接部を含んでいる。
図10(a)は、ピストンリング5Aの被係止部510が係止突起19に係止された第1状態を示し、図10(b)は、ピストンリング5Aの被係止部510が隣り合う一対の係止突起19の間に位置する第2状態を示している。図10(a)及び(b)において、第1及び第2の実施の形態について説明したものと共通する構成要素については、同一の符号を付してその重複した説明を省略する。
本実施の形態では、ヨーク30の内周面30bが、ラッチ機構10Cの第1状態においてOリング8に接触する第1摺接部30b1と、ラッチ機構10Cの第2状態においてOリング8に接触する第2摺接部30b2と、第1摺接部30b1と第2摺接部30b2との間に形成されたテーパ部30b3とを含んでいる。第2摺接部30b2は、第1摺接部30b1よりも被係止部510側に形成されている。
ここで、「摺接面」とは、ヨーク30の内周面30bのうち、ピストンリング5Aの軸方向移動に伴ってOリング8に摺接する領域をいい、この領域には、テーパ部30b3の全体と、第1摺接部30b1及び第2摺接部30b2のそれぞれの少なくとも一部とが含まれる。
第1摺接部30b1におけるヨーク30の内径は、第2摺接部30b2におけるヨーク30の内径よりも大きく形成されている。テーパ部30b3におけるヨーク30の内径は、第1摺接部30b1側から第2摺接部30b2側に向かって徐々に縮径されている。なお、ヨーク30の内周面30bは、第1摺接部30b1及び第2摺接部30b2においてピストンリング5Aの軸方向に対して平行である。
Oリング8は、第1摺接部30b1と第2摺接部30b2との段差に基づいて、第2摺接部30b2と接触した際に、第1摺接部30b1と接触した際よりも大きく圧縮される。これにより、ヨーク30が第2摺接部30b2においてOリング8から受ける面圧は、ヨーク30が第1摺接部30b1においてOリング8から受ける面圧よりも高くなる。この面圧の違いは、Oリング8がピストンリング5Aの軸方向移動を制動する際の制動力の違いとして作用し、ピストンリング5Aは、Oリング8が第2摺接部30b2を摺動するときに、Oリング8が第1摺接部30b1を摺動するときよりも大きな制動力を受ける。
前述のように、第2摺接部30b2は、第1摺接部30b1よりも被係止部510側に形成されているので、ラッチ機構10Bが第1状態から第2状態に移行する際、ピストンリング5Aに保持されたOリング8は、まず第1摺接部30b1においてヨーク30に摺接し、その後、Oリング8がテーパ部30b3を摺接することでピストンリング5Aの径方向に圧縮され、その後さらに第2摺接部30b2においてヨーク30に摺接する。これにより、ラッチ機構10Cが第1状態から第2状態に移行する際、Oリング8によるピストンリング5Aの制動力は、段階的に増大する。
本実施の形態によれば、第3の実施の形態について述べた作用及び効果と同様の作用及び効果が得られる。すなわち、ピストンリング5Aがアーマチャ4の押圧突起41に突き当たる直前に比較的大きな制動力が発生するので、ピストンリング5Aの軸方向の移動速度の低下を抑えながら、衝突音を抑制することができる。
なお、本実施の形態では、ヨーク30の内周面30bにおける摺接面が、互いに径の異なる2つの摺接部(第1摺接部30b1及び第2摺接部30b2)を有する場合について説明したが、この摺接面が3つ以上の摺接部を有していてもよい。つまり、ヨーク30の内周面30bにおける摺接面は、互いに径の異なる少なくとも2つの摺接部を含んでいればよい。だだし、それぞれの摺接部の内径は、被係止部510から軸方向に遠ざかるほど大きく形成されていることが望ましい。
[第5の実施の形態]
図11は、本発明の第5の実施の形態に係るラッチ機構10D及びその周辺部を示す断面図である。図11において、第1の実施の形態について説明したものと共通する構成要素については、同一の符号を付してその重複した説明を省略する。
第1の実施の形態では、アーマチャ4がハウジング100(第2ハウジング部材102)に対して相対回転不能に支持され、複数の係止突起19が第2ハウジング部材102と一体に設けられていたが、本実施の形態では、ラッチ機構10Dを構成するアーマチャ4Dが第2回転部材12Dに相対回転不能かつ軸方向に相対移動可能に連結されており、また複数の係止突起19に替えて複数の係止突起121が第2回転部材12Dと一体に設けられている。ラッチ機構10Dにおけるピストンリング5自体の構成は、図5等を参照して説明した第1の実施の形態と同様である。
図11では、回転軸線Oよりも上側に、噛み合い部材2のギヤフランジ部22が第1回転部材11のギヤフランジ部114に噛み合っていない状態(非連結状態)を示し、回転軸線Oよりも下側に、噛み合い部材2のギヤフランジ部22が第1回転部材11のギヤフランジ部114に噛み合った状態(連結状態)を示している。
複数の係止突起121は、ピストンリング5の基部50の内周面50dに対向する部位における第2回転部材12Dの外周面から径方向外方に突出して形成され、その軸方向の端部には、ピストンリング5の軸方向突起51の先端面51aに当接する当接面121aが形成されている。この当接面121aは、第1の実施の形態における係止突起19の当接面19aと同様に、ピストンリング5の周方向に対して傾斜している。
また、第2回転部材12Dには、係止突起121の外周部に、アーマチャ4Dを第2回転部材12Dに相対回転不能かつ軸方向に相対移動可能に連結するための複数の突部122が形成されている。アーマチャ4Dは、この突部122に噛み合う複数の噛み合い歯42をヨーク30側とは反対側の軸方向端面40bに有し、この軸方向端面40bが噛み合い歯42の間において突部122に当接した後退位置と、ヨーク30との対向面40aがヨーク30に当接した前進位置との間を軸方向に移動可能である。
また、第2回転部材12Dにおける基部50の内周面50dとの対向部には、環状の凹溝12cが全周に亘って形成され、この凹溝12cにOリング8が保持されている。Oリング8は、基部50の内周面50dとの接触によってピストンリング5の径方向に圧縮されている。すなわち、本実施の形態では、第2回転部材12Dが本発明の対向部材に相当する。そして、Oリング8は、基部50の内周面50dとの間に発生する摩擦力によって、ピストンリング5の軸方向移動を制動する。
本実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の作用及び効果が得られる。また、Oリング8をピストンリング5の内側に配置された第2回転部材12Dの凹溝12cに保持するので、Oリング8を容易かつ確実に保持することができる。
[第6の実施の形態]
図12(a)及び(b)は、本発明の第6の実施の形態に係るラッチ機構10Eを示す断面図である。第5の実施の形態では、ピストンリング5の基部50の内周面50dが回転軸線Oに平行な面として形成されていたが、本実施の形態では、ラッチ機構10Eを構成するピストンリング5Eの基部50の内周面50dにおいてOリング8に摺接する摺接面が、互いに径の異なる2つの摺接部を含んでいる。
図12(a)は、ラッチ機構10Eを構成するピストンリング5Eの被係止部510が係止突起121に係止された第1状態を示し、図12(b)は、ピストンリング5Eの被係止部510が隣り合う一対の係止突起121の間に位置する第2状態を示している。図12(a)及び(b)において、第5の実施の形態について説明したものと共通する構成要素については、同一の符号を付してその重複した説明を省略する。
本実施の形態では、ピストンリング5Eの基部50の内周面50dが、ラッチ機構10Eの第1状態においてOリング8に接触する第1摺接部50d1と、ラッチ機構10Eの第2状態においてOリング8に接触する第2摺接部50d2と、第1摺接部50d1と第2摺接部50d2との間に形成されたテーパ部50d3とを含んでいる。第1摺接部50d1は、第2摺接部50d2よりも被係止部510側に形成されている。
ここで、「摺接面」とは、基部50の内周面50dのうち、ピストンリング5Eの軸方向移動に伴ってOリング8に摺接する領域をいい、この領域には、テーパ部50d3の全体と、第1摺接部50d1及び第2摺接部50d2のそれぞれの少なくとも一部とが含まれる。
第1摺接部50d1における基部50の内径は、第2摺接部50d2における基部50の内径よりも大きく形成されている。テーパ部50d3における基部50の内径は、第1摺接部50d1側から第2摺接部50d2側に向かって徐々に縮径されている。なお、基部50の内周面50dは、第1摺接部50d1及び第2摺接部50d2においてピストンリング5Eの軸方向に対して平行である。
Oリング8は、第1摺接部50d1と第2摺接部50d2との段差に基づいて、第2摺接部50d2と接触した際に、第1摺接部50d1と接触した際よりも大きく圧縮される。これにより、ピストンリング5Eが第2摺接部50d2においてOリング8から受ける面圧は、ピストンリング5Eが第1摺接部50d1においてOリング8から受ける面圧よりも高くなる。この面圧の違いは、Oリング8がピストンリング5Eの軸方向移動を制動する際の制動力の違いとして作用し、ピストンリング5Eは、Oリング8が第2摺接部50d2を摺動するときに、Oリング8が第1摺接部50d1を摺動するときよりも大きな制動力を受ける。
第2摺接部50d2は、第1摺接部50d1よりも被係止部510から遠い位置に形成されているので、ラッチ機構10Eが第1状態から第2状態に移行する際、Oリング8は、まず第1摺接部50d1においてピストンリング5Eの基部50に摺接し、その後、Oリング8がテーパ部50d3を摺接することでピストンリング5Eの径方向に圧縮され、その後さらに第2摺接部50d2において基部50に摺接する。これにより、ラッチ機構10Eが第1状態から第2状態に移行する際、Oリング8によるピストンリング5Eの制動力は、段階的に増大する。
本実施の形態によれば、第3及び第4の実施の形態について述べた作用及び効果と同様の作用及び効果が得られる。すなわち、ピストンリング5Eがアーマチャ4Dの押圧突起41に突き当たる直前に比較的大きな制動力が発生するので、ピストンリング5Eの軸方向の移動速度の低下を抑えながら、衝突音を抑制することができる。
なお、本実施の形態では、基部50の内周面50dにおける摺接面が、互いに径の異なる2つの摺接部(第1摺接部50d1及び第2摺接部50d2)を有する場合について説明したが、この摺接面が3つ以上の摺接部を有していてもよい。つまり、基部50の内周面50dにおける摺接面は、互いに径の異なる少なくとも2つの摺接部を含んでいればよい。だだし、それぞれの摺接部の内径は、被係止部510から軸方向に遠ざかるほど小さく形成されていることが望ましい。
(付記)
以上、本発明を第1乃至第6の実施の形態に基づいて説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。例えば、上記実施の形態では、ラッチ機構10,10A〜10Eを車両のエンジン等の駆動源の駆動力を断続可能に伝達する駆動力伝達装置1に適用した場合について説明したが、これらのラッチ機構10,10A〜10Eの用途に限定はなく、例えば回転部材を車体に対して固定する電磁ブレーキに適用することも可能である。またさらに、車載装置に限らず、工作機械や各種の器具に本発明を適用することも可能である。
また、上記実施の形態では、押圧部材として、電磁コイル3によって軸方向に移動するアーマチャ4,4Dを用いた場合について説明したが、押圧部材としては、これに限らず、モータやソレノイド等のアクチュエータによって発生する押圧力をピストンリング5,5A,5B,5Eに付与することができるものであればよい。