JP5121344B2 - 構造体の作製方法 - Google Patents

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Description

本発明は、例えばMEMS技術によって作製されるセンサやアクチュエータなどに用いられる櫛歯構造に代表される梁状構造を有する構造体の作製方法に関するものである。MEMSとは、Micro Electro Mechanical Systemsの略語である。
垂直櫛歯構造体は、VC(Vertical Comb structure)とも呼ばれる。垂直櫛歯構造体は、櫛歯構造体の1対の櫛歯構造部が互いに噛み合うように配置され、いずれか片方の櫛歯構造部が面外方向に変位可能であるように弾性体によって支持されている構造体である。
このような構造体は、MEMS技術と呼ばれる半導体加工を応用した微細加工技術を用いることにより、例えば1本の櫛歯の幅が5μm程度の微細な構造体を作製することが可能である。
MEMS技術によって作製された垂直櫛歯構造体は、例えば光路変換用のマイクロミラーや無線通信機器用の可変コンデンサなどにおいて採用されている。
具体的な一例としては、微小な振動構造体を静電気力で駆動させる静電櫛歯アクチュエータの電極部として用いられている。
垂直櫛歯構造体を用いた静電櫛歯アクチュエータにおいては、櫛歯構造体を初期位置から変位させるために大きな駆動力を発生させる必要がある。
そのために、駆動力を増大させることが可能な櫛歯構造体として、角度付櫛歯構造体とその作製方法が知られている(特許文献1参照)。角度付櫛歯構造体は、AVC(Angular Vertical Comb structure)とも呼ばれる。
特許文献1に記載されているAVC及びその作製方法の概要を図16に示す。
特許文献1に記載されているAVCは図16(a)のような構成となっている。
AVC330は、ねじりバネ332に軸支され、ねじりバネ332を回転中心軸として時計回り又は反時計回りに回転して振動する振動板333の片側に櫛歯構造部331を有している。
また、このねじりバネ332は、シリコンやゲルマニウムなどのような加熱することにより塑性変形させることが可能な材料からなる。
櫛歯構造部331を傾斜させる方法を図16(b)、(c)に示す。
図16(b)のように、ピラー334を有する押し当て型335を、振動板333の櫛歯構造部331を有する側と反対側の上面337に、ピラー334が接触するように、直線矢印338の向きに押し当てて加熱する。
これにより、振動板333は曲線矢印339の向きに回転し、ねじりバネ332は振動板333の回転角度を保つような形状に塑性変形する。
その後、櫛歯構造体を冷却して、型335を取り外すと、図16(c)のように振動板333は傾いたままとなり、振動板333の側面に形成された櫛歯構造部331も振動板333と一緒に傾斜した状態を保っている。
米国特許公報 第7,089,666号
被加工部を変形させるためには、何らかの方法で被加工部に回転運動を生ぜしめる力のモーメントを与えるための外力を印加する必要がある。
特許文献1に記載されているAVCの作製方法では、型335を押し下げることにより、図17に示すように、ピラー334を介して、被加工部である振動板333及びねじりバネ332に外力Fが印加される。
その結果、この外力のうち振動板333に垂直な方向の分力Fqが、振動板333及びねじりバネ332を、ねじりバネ332を中心軸とした回転方向に変形させる力となる。
ねじりバネ332の回転方向の変形角度θが増大すると、振動板333及びねじりバネ332を回転方向に変形させる分力Fqは減少し、回転方向の変形に寄与しない分力Fpは増大する。
すなわち、振動板333及びねじりバネ332の変形角度θが増大すると、被加工部である振動板333及びねじりバネ332を変形させる際の力の伝達効率は低下することがわかる。
また被加工部の材質や寸法、構造によっては、当該被加工部の機械的強度が不足する場合がある。このような機械的強度が不足する被加工部を変形加工する際に、被加工部に効率良く力が伝達されないと、加工時に当該被加工部が座屈する、あるいは破損する場合がある。
本発明は、構造体の一部を塑性変形させて、基板の主面に対して傾斜した傾斜部を有する構造体を作製する際に、被加工部を所望の形状に効率よく塑性変形させ得る構造体の作製方法を提供することを目的とする。
本発明は、面外に傾斜(基板の主面と平行な面に対して所定の角度を有するように交差)した構造部を有する構造体の作製方法として以下のような作製方法を提供するものである。
本発明の作製方法は、基板の被加工部を塑性変形させて、該基板の主面に対して傾斜した傾斜部を有する構造体を作製する、構造体の作製方法であって、
前記被加工部に前記基板の主面に対して突出する突出部を設ける工程と、
前記突出部に傾斜した押し当て面を有する型を押し当てて力を加えることによって前記被加工部を塑性変形させ、前記突出部が設けられた面と反対の面側に前記被加工部を曲げる工程と、
を含み、
前記被加工部を曲げる工程において、前記型に加えられる力(FF)の向きが、前記傾斜した押し当て面により前記突出部を押す力(F1)の向きと、交差することを特徴とするものである。
本発明によれば、被加工部に印加される外力は、従来法より、被加工部の変形に関与しない分力が減少し、被加工部の変形に関与する分力が増大するので、被加工部を変形させる効率を向上させることが可能となる。
また、被加工部の所望の位置において、塑性変形を発生させ易くすることができ、さらに、それ以外の位置における被加工部の変形、座屈、破損等が発生する可能性を低減させることができる。
本発明の構造体の作製方法の概要を、面外に傾斜する被加工部を有する構造体を一例として、図1(a)及び(b)を用いて以下に説明する。
ここで上記「面外に傾斜」とは、基板の主面に対して0度より大きく90度以下の範囲から選択される所定の角度を有するように、前記被加工部を変形(典型的には曲げ加工)し傾斜させた状態をいう。こうして、基板の主面に対して傾斜した傾斜部を有する構造体を作製する。
また、本発明において基板の「主面(表面(裏面)、上面(下面)ともいう。)」とは、基板を構成する面の中で最も面積の広い面であって、構造体を形成する際に主に加工を施す面である。また、本発明においては、幾何学的に等価な基板の主面と平行な平面も、基板の主面の範疇に入るものとする。
本発明における基板の主面に対して所定の角度をもって傾斜した傾斜部を有する構造体の作製方法は、主に以下の(a)及び(b)の2つの工程を含む。
また、本発明の被加工部を塑性変形させる工程において、型の「押し当て面」とは、構造体の突出部と接触する面をいう。型が曲面である場合には、突出部と接触する部分における、型の接平面を「押し当て面」という。ここで「接平面」とは、3次元空間上の滑らかな曲面上のある点において、曲面とその点を共有し、かつその点における曲面の傾き(全微分値)と同じ傾き(全微分値)を有する平面を意味する。
図1(a)、(b)は以下の工程(a)、(b)のそれぞれに対応している。
(a)単結晶シリコンウエハのような基板2を加工し構造体1を作製する。
工程(a)では、基板2の主面(図1中にS1−S2の一点鎖線で示す)に対して、面外に傾けるべき構造部(以下、被加工部)3を形成するために、基板2の主面と交差する方向に突出した突出部4を設ける。
ここで、基板2の主面とは、基板2のうち主に加工を施される面のことであり、基板2の表面と裏面をさす。
また、被加工部3を塑性変形させ易いように、塑性変形の基点とする位置に特定の加工を施してもよい。例えば凹部5を設けるなど、その部分の機械的強度が周囲よりも弱くなるような加工を施してもよい。
(b)被加工部3に設けられた被加工部の突出部4に、型6の傾斜した押し当て面9を押し当てて力を加えることにより、被加工部3を前記突出部4が設けられた面と反対の面側に曲げ加工を行い、塑性変形させる。型6とは換言すれば、被加工部を曲げるための治具と云うこともできる。
工程(b)において、型6の、被加工部の突出部と接触する押し当て面9の表面形状は、図1(b)のような平面から構成される斜面であってもよいし、その他の形状、例えば後述する図2(b)のような曲面であってもよい。
被加工部3を塑性変形させ易いように、被加工部3の一部、又は、全体を加熱してもよい。
加熱するタイミングは、被加工部3を変形させる前でもよいし、被加工部3を変形させている途中でもよい。
傾斜した押し当て面9を有する型6を用いる構造体の作製方法は、基板の主面と平行な押し当て面を有する型を用いる作製方法と比較して、より効率よく被加工部を変形させ傾斜部を形成することが可能となる。以下にその理由を詳述する。
基板の主面と平行な押し当て面を有する型を用いて被加工部を変形させる直前の様子を図14に示す。
型403に力FFを加えて、型403を図14の上方向に押し上げることにより、被加工部の突出部402の先端にある点Oには外力F0が加わる。
この外力F0は以下の2方向の分力に分解することが可能である。
1つ目の分力は、被加工部401が屈曲する点Pを並進方向に押す力、すなわち、点Oと点Pと通る直線A1−A2の方向の分力F0pである。
2つ目の分力は、点Pを中心として被加工部401を回転方向に押す力、すなわち点Oを通り、直線A1−A2に垂直な直線D1−D2の方向の分力F0qである。
それぞれの分力F0p、F0qの大きさは以下の数1及び数2のように表される。
Figure 0005121344
(数1)
Figure 0005121344
(数2)
但し、点Oにおける型403の接平面の垂線B1−B2と直線A1−A2とのなす角をθ0、点Oにおける加工前の被加工部401の垂線C1−C2と直線A1−A2とのなす角をφとした。
角θ0及び角φのとりうる範囲は、図中の時計回り方向(曲線矢印WCの方向)を正の方向として−π/2から+π/2とする。
図14の場合、型403の押し当て面FC1と被加工部の突出部402の下面FC2とがともに平面で且つ互いに平行であるので、直線B1−B2と直線C1−C2は一致しており、θ0とφは同じ角度となる。
数1及び数2から、φが小さくなるほど、すなわち、被加工部の突出部402の位置が点Pに近いほど、被加工部401を並進方向に押す力F0pは増大し、被加工部401を回転方向に押す力F0qは逆に減少することがわかる。
次に、傾斜面FC3を有する型を用いて被加工部401を変形させる直前の様子を図15に示す。
型404に力FFを加えて、型404を図15の上方向に押し上げることにより、被加工部の突出部402の先端にある点Oには外力F1が加わる。
この外力F1は、前述の場合と同様に、被加工部401が屈曲する点Pを並進方向に押す分力F1p、点Pを中心として被加工部401を反時計回り方向に回転させようとする分力F1qに分解することが可能である。
それぞれの分力F1p、F1qの大きさは以下の数3及び数4のように表される。
Figure 0005121344
(数3)
Figure 0005121344
(数4)
但し、点Oにおける型404の接平面FC3への垂線B1−B2と直線A1−A2とのなす角をθ1、点Oか下ろした加工前の被加工部401への垂線C1−C2と直線A1−A2とのなす角をφとした。
また、δは点Oにおける型404の接平面と基準面FC4とのなす角であり、δ=θ1−φが成立する。
上記2つの場合のそれぞれにおいて、被加工部401を傾斜させる効率を比較する。
被加工部401を傾斜させる効率を以下のように定義する。
被加工部401を傾斜させる効率は、被加工部401を反時計回りに回転させようとする力の大きさを、被加工部401を並進方向に押す力の大きさで割った値とする。
被加工部401を時計回りに或いは反時計回りに回転させようとする分力を大きく、それ以外の分力を小さくすることにより、被加工部401を変形させる効率が向上するからである。
この効率は、外力F1が変形のため分力F1qとなる伝達効率とも相関をもつ。
平坦な押し当て面FC1をもつ型403を用いた場合の効率η0は以下の数5のようになる。
Figure 0005121344
(数5)
また、傾斜面FC3を有する型404を用いた場合の効率η1は以下の数6のようになる。
Figure 0005121344
(数6)
数5及び数6より、φ<θ1であればη0<η1となることがわかる。
さらにθ1=φ+δであることから、δ>0であればη0<η1となることが分かる。
δ>0という条件は、被加工部の突出部402と型404とが接触する点において、型404の表面FC3が基準面FC4に対して被加工部401を変形させる向きと反対の向きに傾いていることを表している。換言すれば、図15に示す押し当て面FC3は、基準面FC4に対して図中時計回りに角度δ(>0)だけ回転した面をもち、被加工部401が点Pを中心に受ける力のモーメントは反時計回りとなり、互いに回転方向が逆となっている。
このように、被加工部401を曲げる工程において、型404に加えられる力(FF)の向きが、傾斜した押し当て面FC3により突出部402を押す力(F1)の向きと、角度(δ=θ1―φ>0)をもって交差する。
以上のことから、傾斜した押し当て面FC3を有する型404を用いることにより、平坦な押し当て面FC1を有する型403を用いた場合と比較して、被加工部401を傾斜させるべく変形させる効率を向上させることが可能となる。
本工程において、図3あるいは図4に示すように、被加工部の突出部4と型6とが接触する位置を変えることによって被加工部3、すなわち傾斜部の傾斜角度を変えることができる。尚、上記接触する位置とは、突出部4と型6とを近づけた場合に最初に接触する位置であって、接触後にさらに型6を突出部4に押し当てることによって当該位置は変位する。
被加工部の突出部4と型6とが接触する位置を変える方法としては、図3(a)及び(b)に示すように、被加工部の突出部4を塑性変形の基点からの距離を変えて設ける方法を用いることができる。
また、被加工部の突出部4を塑性変形の基点からの距離が同じであっても、被加工部の突出部4と型6とが接触する位置を変えることが可能である。
例えば、図4(a)及び(b)に示すように、型6の傾斜面を図4の左右方向にずらして形成することにより、被加工部の突出部4と型6とが接触する位置を変えることが可能である。
さらに、被加工部3、すなわち傾斜部の傾斜角度を変える別の方法として、図5(a)及び(b)に示すように、被加工部の一対の突出部4の長さを互いに異ならしめる方法を用いても良い。
上記の例では構造体の可動部7から張り出した被加工部3の加工例を示す。
図6(a)及び(b)のように、構造体11の支持部18から張り出した被加工部13も、被加工部の突出部14を設けることにより、上記の例と同様にして加工することが可能である。
本実施形態において突出部の形状は、矩形の形状としているが、本発明の突出部の形状は、当該形状に限定されるものではなく、面取り加工を施した多角形状、あるいは曲面形状とすることもできる。このように突出部の形状を調整することにより塑性変形加工時に引っかかり等を抑制することができる。
以下実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
(実施例1)
本実施例では、基板の主面(該主面と平行な平面も含む)に対して面外方向の一方向側に角度を有する傾斜部を有する構造体の作製方法の一例を説明する。
本実施例の構造体の作製方法を表す工程図を図7に示す。
図7中の番号(a)〜(i)は、工程(a)〜(i)に対応している。
まず、以下の工程(a)〜(g)により、被加工部101、102と被加工部の突出部103、104を形成する。
(a)基板111の半導体層112の表面にマスク層115を形成する。
基板111は、2つの層の間に絶縁材料からなる層が挟まれた構造を有しており、本明細書ではこれらの層を上から順に半導体層、絶縁層、支持層と呼ぶことにする。
基板111としては、例えば単結晶シリコンからなる2つの層(半導体層112、支持層114)の間に二酸化シリコンからなる絶縁層113が挟まれた多層構造を有するSOI基板を用いることが可能である。
(b)半導体層112に凹部116を形成する。
このとき、凹部116の深さは半導体層112の厚さよりも小さくなるようにする。
凹部116の形成方法としては、例えば反応性イオンエッチングなどのエッチング技術を用いるのが好適である。
凹部116の深さはエッチング時間の長さで制御することが可能である。
(c)半導体層112の表面に、マスク層117を形成する。
(d)半導体層112に貫通口118を形成する。
貫通口118の形成方法としては、凹部116の形成方法と同じく、例えば反応性イオンエッチングなどのエッチング技術を用いるのが好適である。
反応性イオンエッチングを用いた場合、エッチングガスとして基板111の絶縁層113とは反応しにくいガスを用いることにより、所定の深さをもった貫通口118を確実に形成することが可能である。
(e)半導体層112をマスクとして絶縁層113に貫通口119を形成する。
例えば基板111としてSOI基板を用いた場合、フッ化水素酸や四フッ化炭素ガスなどのような二酸化シリコンを選択的にエッチングすることが可能なエッチャントあるいはエッチングガスを用いることで絶縁層113のみをエッチングすることが可能である。
(f)支持層114の下面にマスク層120を形成する。
(g)支持層114に貫通口121を形成する。
次に、以下の工程(h)、(i)により、別の基板131を用いて被加工部101、102を傾斜させるための型134を作製する。
型134用の基板131の材料は、後に型134を基板111に押し当てて加熱することを考えると、基板111と同程度あるいはそれ以上の剛性を有し、熱膨張係数が基板111の半導体層112の材料に近い材料であることが望ましい。
例えば、基板111がSOI基板である場合、基板131は半導体層112と同じ単結晶シリコン(単結晶半導体材料)からなる基板を選択するのがよい。
(h)基板131にマスク層132を形成する。
(i)基板131の上面に傾斜面133を形成する。
傾斜面133の形成方法の一つとしては、エッチングレートが結晶方位に依存する異方性エッチング技術などを用いて基板131の上面に傾斜面を形成することが可能である。
基板131としてその主面が結晶方位<111>に垂直である(100)単結晶シリコンウエハを用いた場合、水酸化カリウム水溶液を用いた異方性エッチングを行うことで、マスク層132の端部近傍から始まる傾斜面が形成される。
このとき、傾斜面は基板の主面に対して約55度傾いた状態で形成される。
最後に、以下の工程(j)〜(l)により、被加工部101、102に仰角をつけ、その後、被加工部の突出部103、104を除去する。
(j)半導体層112の凹部116を加熱し、支持層114の下面及び被加工部の突出部103、104に型134の傾斜面133を押し当てることにより凹部116を曲げて塑性変形させる。
凹部の加熱温度は、例えば基板111としてSOI基板を用いた場合にはシリコンを塑性変形させるために必要な600℃以上に設定するのが好適である。
加熱する方法としては、例えば凹部116の周辺を通るような電流路に電流を流すことで発生するジュール熱により凹部116とその周辺を局所的に加熱する方法を用いることが可能である。
電流路としては融点が十分に高い導体薄膜などを適当な絶縁膜を介して蒸着したものを用いる、あるいは半導体層112が導電性を有する場合は半導体層112そのものを電流路として用いることが可能である。
また、型134を基板111に押し付けた状態を維持したまま適切な加熱炉を用いて基板111及び型134の全体を加熱することにより半導体層112の凹部116を加熱することも可能である。
型134を基板111に押し付けた状態を維持する方法としては、クランプやピンチなどを用いて外部から型134と基板111を挟んでもよいし、接着剤や他の接合手段を用いて型134と基板111を接合してもよい。
特に基板111としてSOI基板を用いた場合、型134の上面に二酸化シリコンの層を形成しておくことで、陽極接合を用いて基板111の下面と型134の上面とを接合することが可能である。
(k)基板111を、例えば室温まで冷却した後、型134を外す。
(l)絶縁層113のうち、絶縁層126以外の部分を除去する。
被加工部の突出部103、104は絶縁層113のみを介して被加工部101、102に固定されているので、この工程により被加工部の突出部103、104は絶縁層113と共に除去される。
絶縁層113を除去する方法としては、例えば基板111としてSOI基板を用いた場合、フッ化水素酸のようなエッチング液や四フッ化炭素のエッチングガスなどのエッチャントを用いた二酸化シリコンの等方性エッチングが適用可能である。
このとき、エッチングの時間を調節することにより、絶縁層126の部分を残し、かつ被加工部の突出部103、104の近傍の絶縁層113を除去することが可能である。
さらに、工程(j)にて基板111と型134とを二酸化シリコン層を介した陽極接合で接合した場合は、工程(k)の型を外す工程と工程(l)の絶縁層113を除去する工程は同時に行うことが可能である。
上記の例では、押し当て面として、傾斜面133を有する型134を用いる作製方法の例を示したが、傾斜面以外の表面形状を有する型、例えば図2(b)のような曲面からなる押し当て面を有する型を用いることも可能である。
曲面を有する型の作製方法を、図8を用いて以下に説明する。
図8中の番号(a1)、(b1)は、工程(a1)、(b1)に対応している。
(a1)基板141にマスク層142を形成する。
(b1)基板141の上面に曲面143を形成する。
曲面143の形成方法の一つとしては、等方性エッチング技術などを用いて基板141の上面を曲面状に切削することにより形成することが可能である。
例えば、基板131として単結晶シリコン基板を用いた場合、六フッ化硫黄やフッ化キセノンなどを用いた等方性エッチングを行うことにより、マスク層142の端部近傍から始まる曲面143を形成することが可能である。
また、単結晶シリコン基板の等方性エッチングに用いるエッチャントとしては、上記のようなガスに限らず、フッ化水素酸と硝酸の混合液などの液体を用いることも可能である。
本実施例の作製方法によって作製された構造体の例を図9に示す。
図9は基板111に水平な基準面に対して上方向に傾斜した複数の可動櫛歯171、172を有するAVCを用いた振動構造体である。
可動櫛歯171と固定櫛歯173の間に例えばパルスや正弦波などの波形で電圧が変化する電圧信号源175を接続することにより振動板177を振動させることが可能である。
(実施例2)
実施例1において、工程の一部分を変えることにより、複数の被加工部を異なる曲げ角度で加工することが可能である。本実施例ではその方法を3通り説明する。また本実施例では、実施例1と同様に基板の主面と平行な面に対して一方向側に曲げ加工する場合で説明する。
1つ目の方法は、被加工部の突出部103、104を被加工部101、102の曲げ加工の基準点からそれぞれ異なる距離の位置に設ける方法である。
このような被加工部の突出部103,104は、例えば実施例1の工程(f)でマスク層120を形成する領域を変えて工程(g)で貫通口121を形成する領域を変えることによって作製可能である。
なお、支持層114の下面及び被加工部の突出部103、104に型134を押し当てたときの様子は図3(b)のようになる。
2つ目の方法は、被加工部の突出部103、104と型とが初めて接触する位置における型の基準面からの高さが各々異なるような表面形状を有する型135を用いる方法である。
このような型135は、実施例1の工程(h)でマスク層132を形成する領域を変えて傾斜面133を形成する領域を変えることによって作製可能である。
3つ目の方法は、長さの異なる被加工部の突出部103、104を形成する方法である。
長さの異なる被加工部の突出部103、104を形成する方法を、図10を用いて以下に示す。
まず、図10(a2)及び(b2)のように、被加工部の突出部103、104を形成すべき長さと位置に合わせた位置にマスク層151を形成し、支持層114に凹部152を形成する。
凹部152の深さは、支持層114の厚さから形成すべき被加工部の突出部103あるいは104の長さを差し引いた長さに合わせる。
図10(b2)では、被加工部の突出部103の長さが支持層114の厚さと同じ長さに、被加工部の突出部104の長さが支持層114の厚さよりも短い長さになるように凹部152が形成されている。
凹部152を形成する方法については実施例1の工程(b)で行った半導体層の凹部形成の工程と同様にして形成することが可能である。
次に、半導体層112、絶縁層113を加工することにより傾ける前の被加工部101、102を形成する。
半導体層112、絶縁層113の加工については実施例1の工程(a)〜(e)と同様にして行うことが可能である。
次に、図10(c2)及び(d2)のように、支持層114の下面にマスク層153を形成し、貫通口121を形成する。
貫通口121を形成する方法については実施例1の工程(g)と同様にして形成することが可能である。
以降の型134を作る工程、被加工部120、121に仰角をつける工程、被加工部の突出部103、104を除去する工程についてはそれぞれ実施例1の工程(h)〜(l)と同様にして行うことが可能である。
なお、支持層114の下面及び被加工部の突出部103、104に型134を押し当てたときの様子は図3(b)のようになる。
また、図10に示した工程のかわりに、図11に示すような工程によっても長さの異なる被加工部の突出部103、104を形成することが可能である。
まず、図11(a3)及び(b3)のように、基板111にマスク層161を形成し、支持層114に凹部162を形成する。
凹部162の深さは、支持層114の厚さから形成すべき被加工部の突出部103あるいは104の長さを差し引いた長さに合わせる。
次に、半導体層112、絶縁層113を加工することにより傾ける前の被加工部101、102を形成する。
次に、図11(c3)及び(d3)のように、マスク層163を形成し、支持層114に貫通口121を形成する。
(実施例3)
本実施例では、基板の主面と平行な面に対して上下両側の面外方向にわたって各々異なる角度を有する傾斜部としての被加工部を有する構造体の作製方法を説明する。
本実施例の構造体の作製方法を表す工程図を図12(a)〜(o)に示す。
図12中の番号(a)〜(o)は、工程(a)〜(o)に対応する。
まず、以下の工程(a)〜(j)により、傾ける前の被加工部201、202と被加工部の突出部203、204を形成する。
(a)基板211の半導体層212の表面にマスク層215を形成する。
基板211は実施例1で用いた基板111と同じ3層構造(半導体層212、絶縁層213、支持層214)の基板であり、例えばSOI基板などを用いることが可能である。
(b)半導体層212に凹部216を形成する。
凹部216を形成する方法としては、実施例1の工程(b)で用いた方法と同様の方法を用いることが可能である。
凹部216の深さは半導体層212の厚さよりも小さくする。
(c)半導体層212の表面に、絶縁層217を形成する。
絶縁層217を形成する方法としては、例えば二酸化シリコンなどの絶縁材料を蒸着することにより形成することが可能である。
(d)絶縁層217の上面にマスク層218を形成する。
(e)絶縁層217に貫通口219を形成する。
貫通口219を形成する方法としては、実施例1の工程(e)で用いた方法と同様の方法を用いることが可能である。
(f)絶縁層217をマスクとして半導体層212に貫通口220を形成する。
貫通口220を形成する方法としては、実施例1の工程(d)で用いた方法と同様の方法を用いることが可能である。
(g)基板211の絶縁層213に貫通口221を形成する。
(h)絶縁層217の上面に基板231を接合する。
基板231としては、3層からなる基板211の支持層214と同じ基板を用いるのが好適である。
例えば、基板211としてSOI基板を用いた場合、基板231は単結晶シリコンからなる基板を用いるのが好適である。
また、基板231として単結晶シリコン基板を用いた場合、接合の方法として陽極接合を用いることが可能である。
(i)基板231の上面にマスク層232を、基板211の支持層214の下面にマスク層222を形成する。
(j)基板231に貫通口233を、支持層214に貫通口223を形成する。
次に、以下の工程(k)、(l)により、被加工部201、202を傾斜させる型244、245を作製する(すなわち、型は2個作製する)。
(k)基板241にマスク層242を形成する。
(l)基板241の上面に傾斜面243を形成する。
傾斜面の形成方法としては、実施例1の工程(l)で用いた方法と同様の方法を用いることが可能である。
最後に、以下の工程(m)〜(o)により、被加工部201、202に角度をつけ、その後被加工部の突出部203、204を除去する。
(m)基板211の半導体層212の凹部216を加熱し、基板211の支持層214の下面及び被加工部の突出部203に型244を押し当てる。
同時に、基板231の上面及び被加工部の突出部204にも型245を上下逆にして押し当てる。
これにより、凹部216を塑性変形させる。
加熱する温度や方法は、実施例1の工程(j)と略同一であるので、説明は省略する。
尚、本実施例では2個の型を用いて支持層214と基板231の両方の側から同時に塑性変形させているが、1個の型を用いて片側ずつ塑性変形させることも可能である。
(n)基板211を、例えば室温まで冷却した後、型244、245を外す。
(o)絶縁層213、217のうち、絶縁層224、234以外の部分を除去する。
被加工部の突出部203、204はそれぞれ絶縁層213、217のみを介して被加工部201、202に固定されているので、この工程により、被加工部の突出部203、204は絶縁層213、217と共に除去される。
絶縁層213、217を除去する方法としては、実施例1の工程(l)と略同一であるので、説明は省略する。
上記の作製方法によって作製された構造体の例を図13に示す(構造を見やすくするために、基板231及び絶縁層217を破線F1−F2を通る鉛直面で切断した図を示す)。
図13は、基板211の主面に水平な面に対して上下両方の方向に傾斜した複数の櫛歯251、253を有するAVCである。
本発明の作製方法を用いることにより、このような複雑な構造体を作製することが可能である。
本発明における構造体の作製方法の、第一の例の概要を示す工程図 本発明における構造体の作製方法の、第二の例の概要を示す工程図 本発明における構造体の作製方法の、第三の例の概要を示す工程図 本発明における構造体の作製方法の、第四の例の概要を示す工程図 本発明における構造体の作製方法の、第五の例の概要を示す工程図 本発明における構造体の作製方法の、第六の例の概要を示す工程図 本発明の第1の実施例における構造体の作製方法を表す工程図 本発明の第1の実施例における構造体の別の作製方法を示す部分的な工程図 本発明の第1の実施例における構造体の作製方法によって作製された構造体の一例を示す図 本発明の第2の実施例における構造体の作製方法を示す部分的な工程図 本発明の第2の実施例における構造体の別の作製方法を示す部分的な工程図 本発明の第3の実施例における構造体の作製方法を示す工程図 本発明の第3の実施例における構造体の作製方法によって作製された構造体の一例を示す図 平坦な型を用いた場合における、被加工部に印加される外力の分力の様子を示す概略図 傾斜面を有する型を用いた場合における、被加工部に印加される外力の分力の様子を示す概略図 特許文献1に記載のAVC及びその作製方法の概略を示す図 特許文献1に記載のAVCにおける、被加工部に印加される外力の分力の様子を示す概略図
符号の説明
1、11 構造体
2、12、111、131、141、211、231、241 基板
3、13、101、102、201、202、401 被加工部
4、14、103、104、203、204、402 被加工部の突出部
6、16、134、144、244、245、335、403、404 型
7 可動部
8、18 支持部
337 上面
338、339、WC 矢印
F1 外力
9、FC1、FC3 押し当て面
Fiq 分力
FC4 基準面

Claims (13)

  1. 基板の被加工部を塑性変形させて、該基板の主面に対して傾斜した傾斜部を有する構造体を作製する、構造体の作製方法であって、
    前記被加工部に前記基板の主面に対して突出する突出部を設ける工程と、
    前記突出部に傾斜した押し当て面を有する型を押し当てて力を加えることによって前記被加工部を塑性変形させ、前記突出部が設けられた面と反対の面側に前記被加工部を曲げる工程と、
    を含み、
    前記被加工部を曲げる工程において、前記型に加えられる力(FF)の向きが、前記傾斜した押し当て面により前記突出部を押す力(F1)の向きと、交差することを特徴とする構造体の作製方法。
  2. 前記型の前記突出部に押し当てる傾斜面は前記基板の主面に平行な面に対して前記被加工部を塑性変形させる向きと反対の向きの角度を有する平面から構成される傾斜面であることを特徴とする請求項1に記載の構造体の作製方法。
  3. 前記型の前記突出部に押し当てる傾斜面は、前記型の前記突出部と接触する部分における面が常に前記基板の主面に平行な面に対して前記被加工部を塑性変形させる向きと反対の向きの角度を有する曲面であることを特徴とする請求項1に記載の構造体の作製方法。
  4. 前記構造体が、複数の前記被加工部を有し、
    該複数の被加工部に設けられた前記突出部が、前記基板の主面と平行な面に対して一方向側に設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の構造体の作製方法。
  5. 前記構造体が、複数の前記被加工部を有し、
    該複数の被加工部に設けられた前記突出部の少なくとも1つが、他の前記突出部と前記基板の主面と平行な面に対して互いに反対の向きに設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の構造体の作製方法。
  6. 前記複数の被加工部に設けられた前記突出部の長さが互いに異なることを特徴とする請求項4乃至5のいずれかに記載の構造体の作製方法。
  7. 前記複数の被加工部に設けられた互いに異なる前記突出部と、前記型と、がそれぞれ接触する位置から前記基板の主面に平行な基準面に引いた垂線の長さが各々の前記被加工部を塑性変形させる角度に対応した長さとなる表面形状を有していることを特徴とする請求項6に記載の構造体の作製方法。
  8. 前記被加工部に設けられた前記互いに異なる突出部の各々が、前記被加工部を塑性変形させる基点となる位置からの距離が各々の前記被加工部を塑性変形させる角度に対応した距離となる位置に設けられていることを特徴とする請求項6に記載の構造体の作製方法。
  9. 前記複数の被加工部に設けられた前記突出部の各々が、塑性変形する各々の被加工部の角度に対応した長さを有することを特徴とする請求項4乃至5のいずれかに記載の構造体の作製方法。
  10. 前記被加工部に凹部を設ける工程を含むことを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の構造体の作製方法。
  11. 前記被加工部の少なくとも一部を加熱する工程を含むことを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の構造体の作製方法。
  12. 前記基板が、少なくとも2つの半導体層を含み、
    かつ、前記半導体層の間に少なくとも1つの絶縁材料からなる絶縁層を有する多層構造を有する基板であることを特徴とする
    請求項1乃至11のいずれかに記載の構造体の作製方法。
  13. 前記型が単結晶半導体材料からなることを特徴とする請求項1乃至12のいずれかに記載の構造体の作製方法。
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