しかしながら、特許文献1に開示された技術では、遮光手段としての金属層を設けるため、素子基板の積層構造が複雑化し、製造工程が増加してしまうおそれがあるという技術的問題点がある。更に、素子基板がシリコン基板から形成されているため、仮に入射光がシリコン基板に到達した場合には、シリコン基板による光の反射によって、装置内における他の部位で反射してなる乱反射光や迷光が増加してしまうおそれがある。このような乱反射光や迷光により、トランジスタの誤動作が生じてしまうおそれがあるという技術的問題点がある。
本発明は、例えば上述した問題点に鑑みなされたものであり、トランジスタにおける、光による誤動作の発生を低減可能な電気光学装置、及びそのような電気光学装置を備えた電子機器を提供することを課題とする。
本発明の一実施形態に係る電気光学装置は、石英基板と、該石英基板上に設けられた光反射型の画素電極と、データ線と、前記石英基板上における前記画素電極よりも下層側に且つ前記画素電極と重なるように設けられており、前記画素電極と電気的に接続された高濃度ドレイン領域と、前記データ線と電気的に接続された高濃度ソース領域と、前記高濃度ドレイン領域と前記高濃度ソース領域との間に位置するチャネル領域と、前記高濃度ドレイン領域と前記チャネル領域との間に位置する低濃度ドレイン領域と、前記高濃度ソース領域と前記チャネル領域との間に位置する低濃度ソース領域とを含む半導体層を有するトランジスタと、前記石英基板における前記画素電極が設けられた面とは反対側の面に設けられており、光を吸収し、着色剤によって着色された光硬化樹脂又は熱硬化樹脂からなる光吸収体と、を有し、前記光吸収体は前記石英基板と同一の屈折率を有し、前記データ線は、前記半導体層に沿って形成された本線部と、前記本線部から前記高濃度ソース領域に重なるように形成された延在部とを有し、平面視で、前記チャネル領域は、前記本線部及び前記延在部より前記画素電極の内側に配置され、平面視で、前記低濃度ドレイン領域は、前記低濃度ソース領域より前記画素電極の内側に配置されていることを特徴とする。
また、本発明の一実施形態に係る電気光学装置は、前記光吸収体は、前記透明基板の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有することを特徴とする。
また、本発明の一実施形態に係る電気光学装置は、前記光吸収体は、黒色の樹脂からなることを特徴とする。
また、本発明の一実施形態に係る電子機器は、上記に記載の電気光学装置を備えることを特徴とする。
本発明に係る第1の電気光学装置によれば、例えばガラス、石英等からなる透明基板上に、複数の反射型の画素電極が備えられる。各画素電極は、例えばAl(アルミニウム)膜等の反射膜単独からなったり、或いは、例えばITO(Indium Tin Oxide:インジウム・ティン・オキサイド)等の透明導電膜にAl膜等の反射膜が積層されてなったりする。複数の画素電極は、透明基板上に例えばマトリクス状に配列されている。尚、画素電極は、ストライプ状電極或いはセグメント状電極でもよい。複数の画素電極の各々は、トランジスタを介して例えばデータ線等の配線と電気的に接続されている。当該電気光学装置の動作時には、例えばデータ線から画像信号がトランジスタに供給される。これと共に例えば走査線から走査信号がトランジスタに供給される。画素電極毎に設けられたトランジスタは、走査信号に応じて画像信号を画素電極へ選択的に供給する。これらにより、例えば、画素電極及び対向電極間に挟持された、例えば液晶等の電気光学物質を各画素で駆動することで、複数の画素電極が配列された表示領域における画像表示が行われる。この際、本発明では反射型の画素電極を備えるので、入射光は、対向電極が設けられた対向基板側から入射し、反射型の画素電極によって反射され、対向基板側から出射光として出射する。尚、画素電極と電気的に接続された蓄積容量を形成してもよい。この場合には、蓄積容量によって、画素電極における電位保持特性が向上し、表示の高コントラスト化が可能となる。
本発明では特に、複数のトランジスタは、画素電極よりも下層側に且つ画素電極と重なるように夫々設けられている。言い換えれば、複数のトランジスタは、画素電極が形成された領域内における画素電極よりも下層側に夫々配置されている。即ち、複数のトランジスタは、相隣接する画素電極間の間隙には設けられていない。よって、複数のトランジスタを遮光するために、相隣接する画素電極間に遮光手段を設けなくてもよい。従って、透明基板上における積層構造を単純化することができ、製造プロセスにおける工程数を低減できる。この結果、当該電気光学装置を製造するための製造コストも低減可能である。
更に、仮に何らの対策も施さず、上述した特許文献1に開示されているように、複数の反射型の画素電極及びトランジスタをシリコン基板上に設けた場合には、相隣接する画素電極間の間隙から入射した光がシリコン基板の表面で反射してしまうため、装置内における他の部位で反射してなる乱反射光や迷光が増加してしまうおそれがある。このため、このような乱反射光や迷光がトランジスタに到達してしまい、トランジスタにおける例えば光リーク電流の増加などに起因する誤動作が生じてしまうおそれがある。尚、仮に、相隣接する画素電極間の間隙から入射した光を遮るための遮光膜等の遮光手段をシリコン基板上に形成したとしても、完全に光を遮ることは困難であると共に、遮光手段自体によって乱反射光や迷光を増大させてしまうおそれがある。
しかるに本発明では特に、複数の反射型の画素電極及びトランジスタは、透明基板上に設けられている。よって、透明基板は、相隣接する画素電極間の間隙から入射した光を透過させることができるため、画素電極及びトランジスタが設けられた基板の表面での反射を低減或いは防止できる。言い換えれば、相隣接する画素電極間の間隙から入射する光を、当該電気光学装置内で殆ど或いは全く反射させることなく、殆ど或いは完全にそのまま、透明基板の裏面側に逃がすことができる。従って、装置内における乱反射光や迷光の発生を低減或いは防止できる。このため、乱反射光や迷光がトランジスタに到達してしまうことによるトランジスタにおける誤動作が生じてしまうことを低減或いは防止できる。
以上説明したように、本発明に係る第1の電気光学装置によれば、複数の反射型の画素電極及びトランジスタが透明基板上に設けられるので、乱反射光や迷光によるトランジスタにおける誤動作の発生を低減或いは防止できる。
本発明に係る第2の電気光学装置は上記課題を解決するために、透明基板と、該透明基板上に設けられた複数の反射型の画素電極と、前記透明基板上における前記画素電極よりも下層側に且つ前記画素電極と重なるように夫々設けられており、前記複数の画素電極と電気的に接続された複数のトランジスタと、前記透明基板における前記画素電極が設けられた面とは反対側の面に設けられており、光を吸収する光吸収体とを備える。
本発明に係る第2の電気光学装置によれば、上述した本発明に係る第1の電気光学装置と概ね同様に、複数の画素電極が配列された表示領域おける画像表示が行われる。
本発明では特に、上述した本発明に係る第1の電気光学装置と同様に、複数のトランジスタは、画素電極よりも下層側に且つ画素電極と重なるように夫々設けられている。よって、上述した本発明に係る第1の電気光学装置と同様に、製造プロセスにおける工程数を低減できる。
更に、本発明では特に、上述した本発明に係る第1の電気光学装置と同様に、複数の反射型の画素電極及びトランジスタは、透明基板上に設けられている。よって、上述した本発明に係る第1の電気光学装置と同様に、乱反射光や迷光がトランジスタに到達してしまうことによるトランジスタにおける誤動作が生じてしまうことを低減或いは防止できる。
加えて、本発明では特に、透明基板における画素電極が設けられた面とは反対側の面(即ち裏面)に、光を吸収する光吸収体が備えられる。より具体的には、透明基板の裏面に、例えばアルマイト処理によって黒色にされた平板状のアルミニウム等からなる光吸収体が例えば透明な接着剤によって貼り付けられる。尚、光吸収体は、例えばカーボン(C)又はチタン(Ti)が分散された樹脂や、金属クロム(Cr)、ニッケル(Ni)等の金属材料等から形成してもよい。よって、透明基板を透過する光を、光吸収体によって吸収できる。従って、透明基板を透過した光が、他の部材或いは装置によって反射され当該電気光学装置内に再び入射されることにより、乱反射光や迷光が発生してしまうことを低減或いは防止できる。これにより、乱反射光や迷光がトランジスタに到達してしまうことによるトランジスタにおける誤動作が生じてしまうことを確実に低減或いは防止できる。
以上説明したように、本発明に係る第2の電気光学装置によれば、複数の反射型の画素電極及びトランジスタが透明基板上に設けられると共に、該透明基板における画素電極が設けられた面とは反対側の面に光吸収体が備えられるので、乱反射光や迷光によるトランジスタにおける誤動作の発生を低減或いは防止できる。
本発明に係る第2の電気光学装置の一態様では、前記光吸収体は、前記透明基板の屈折率と同一の屈折率を有する接着剤によって、前記反対側の面に接着される。
この態様によれば、透明基板と光吸収体とを互いに貼り合わせる接着剤は、透明基板の屈折率と同一の屈折率を有する。ここで本発明に係る「透明基板の屈折率と同一」とは、透明基板との界面における、屈折率の差に起因した界面反射を実践上殆ど発生しない程度に、透明基板の屈折率と同一に近ければよい趣旨であり、即ち、透明基板の屈折率と文字通りの同一の他、実質的に同一の場合を含む意味である。どの程度が、実質的に同一であるかは、当該電気光学装置に要求される画像品質、装置仕様等に依存して定まるものであり、実践上では、同一である接着剤の屈折率は、透明基板の屈折率に応じて、実験的、経験的、シミュレーション等により定めればよい。よって、透明基板と接着剤との界面(言い換えれば、透明基板における裏面)における光の反射を殆ど或いは完全に無くすことができる。従って、乱反射光や迷光によるトランジスタにおける誤動作の発生を低減或いは防止できる。
本発明に係る第2の電気光学装置の他の態様では、前記光吸収体は、前記透明基板の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有する。
この態様によれば、光吸収体は、例えばガラス、石英等からなる透明基板よりも高い熱伝導率を有する樹脂や金属等から形成される。よって、当該電気光学装置の動作時に発生する熱を、光吸収体を介して、電気光学装置から装置外部に速やかに逃がすことが可能である。即ち、当該電気光学装置の放熱性を高めることが可能である。従って、温度上昇に伴って生じ得る電気光学装置の表示性能の低下を抑制できる。
本発明に係る第2の電気光学装置の他の態様では、前記光吸収体は、前記透明基板の屈折率と同一の屈折率を有する。
この態様によれば、光吸収体は、透明基板の屈折率と同一の屈折率を有する、例えば黒色の樹脂等から形成される。よって、透明基板と光吸収体の界面における光の反射を殆ど或いは完全に無くすことができる。従って、乱反射光や迷光によるトランジスタにおける誤動作の発生を確実に低減或いは防止できる。
上述した光吸収体が透明基板の屈折率と同一の屈折率を有する態様では、前記光吸収体は、黒色の樹脂からなる。
この態様によれば、光吸収体と透明基板とを容易に接着可能であると共に、透明基板と光吸収体の界面における光の反射を殆ど或いは完全に無くしつつ、透明基板の裏面から出射される光を確実に吸収できる。よって、乱反射光や迷光によるトランジスタにおける誤動作の発生を確実に低減或いは防止できる。尚、本発明に係る「黒色」とは、少なくとも可視光を殆ど或いは実践上完全に吸収可能な程度に、黒色に近い色であればよい趣旨であり、即ち、文字通りの黒色の他、実質的に黒色の場合を含む意味である。
本発明に係る第2の電気光学装置の他の態様では、前記透明基板は、サファイア基板からなる。
この態様によれば、サファイア基板からなる透明基板上に単結晶シリコン膜を形成することができ、トランジスタを単結晶シリコン膜から形成可能である。よって、トランジスタを例えばガラス基板上に積層されたポリシリコン膜から形成する場合と比較して、トランジスタの動作スピード等の性能を向上させることが可能である。
本発明の電子機器は上記課題を解決するために、上述した本発明に係る第1又は第2の電気光学装置(但し、各種態様を含む)を具備してなる。
本発明の電子機器によれば、上述した本発明に係る第1又は第2の電気光学装置を具備してなるので、トランジスタにおける誤動作の発生が低減され、信頼性の高い、投射型表示装置、テレビ、携帯電話、電子手帳、ワードプロセッサ、ビューファインダ型又はモニタ直視型のビデオテープレコーダ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルなどの各種電子機器を実現できる。また、本発明の電子機器として、例えば電子ペーパなどの電気泳動装置、電子放出装置(Field Emission Display及びConduction Electron-Emitter Display)、これら電気泳動装置、電子放出装置を用いた表示装置を実現することも可能である。
本発明の作用及び他の利得は次に説明する実施するための最良の形態から明らかにされる。
以下では、本発明の実施形態について図を参照しつつ説明する。以下の実施形態では、本発明の電気光学装置の一例である駆動回路内蔵型のアクティブマトリクス駆動方式の液晶装置を例にとる。
<第1実施形態>
第1実施形態に係る液晶装置について、図1から図5を参照して説明する。
先ず、本実施形態に係る液晶装置の全体構成について、図1及び図2を参照して説明する。ここに図1は、本実施形態に係る液晶装置の構成を示す平面図であり、図2は、図1のH−H´線断面図である。
図1及び図2において、本実施形態に係る液晶装置100では、素子基板10と対向基板20とが対向配置されている。素子基板10及び対向基板20はそれぞれ、例えばガラス基板、石英基板等の透明基板からなる。尚、素子基板10は、本発明に係る「透明基板」の一例である。素子基板10と対向基板20との間に液晶層50が封入されており、素子基板10と対向基板20とは、画像表示領域10aの周囲に位置するシール領域に設けられたシール材52により相互に接着されている。
図1において、シール材52が配置されたシール領域の内側に並行して、画像表示領域10aの額縁領域を規定する遮光性の額縁遮光膜53が、対向基板20側に設けられている。周辺領域のうち、シール材52が配置されたシール領域の外側に位置する領域には、データ線駆動回路101及び外部回路接続端子102が素子基板10の一辺に沿って設けられている。この一辺に沿ったシール領域よりも内側に、サンプリング回路7が額縁遮光膜53に覆われるようにして設けられている。走査線駆動回路104は、この一辺に隣接する2辺に沿ったシール領域の内側に、額縁遮光膜53に覆われるようにして設けられている。素子基板10上には、対向基板20の4つのコーナー部に対向する領域に、両基板間を上下導通材107で接続するための上下導通端子106が配置されている。これらにより、素子基板10と対向基板20との間で電気的な導通をとることができる。
素子基板10上には、外部回路接続端子102と、データ線駆動回路101、走査線駆動回路104、上下導通端子106等とを電気的に接続するための引回配線90が形成されている。
図2において、素子基板10上には、画素スイッチング用のトランジスタや走査線、データ線等の配線が作り込まれた積層構造が形成される。画像表示領域10aには、画素スイッチング用のトランジスタや走査線、データ線等の配線の上層に、入射光を反射する反射型の画素電極9aがマトリクス状に設けられている。画素電極9a上には、配向膜が形成されている。他方、対向基板20における素子基板10との対向面上に、ITO等の透明材料からなる対向電極21が複数の画素電極9aと対向してほぼ全面に形成されている。対向電極21上には配向膜が形成されている。液晶層50は、例えば一種又は数種類のネマティック液晶を混合した液晶からなり、これら一対の配向膜間で、所定の配向状態をとる。
尚、ここでは図示しないが、素子基板10上には、データ線駆動回路101、走査線駆動回路104の他に、製造途中や出荷時の当該液晶装置の品質、欠陥等を検査するための検査回路、検査用パターン等が形成されていてもよい。
図1及び図2において、本実施形態では、素子基板10における液晶層50に対向しない側には、本発明に係る「光吸収体」の一例としての光吸収体500が設けられている。光吸収体500は、接着剤からなる接着層600を介して、素子基板10に接着されている。尚、接着層600は、本発明に係る「接着剤」の一例である。光吸収体500及び接着層600については、後に詳述する。
次に、本実施形態に係る液晶装置の画素部の電気的な構成について、図3を参照して説明する。ここに図3は、本実施形態に係る液晶装置の画素部の等価回路図である。
図3に示すように、液晶装置100の画像表示領域10aを構成するマトリクス状に形成された複数の画素には、それぞれ、画素電極9aと該画素電極9aをスイッチング制御するためのトランジスタ30とが形成されており、画像信号が供給されるデータ線6aがトランジスタ30のソースに電気的に接続されている。データ線6aに書き込む画像信号VS1、VS2、…、VSnは、この順に線順次に供給しても構わないし、相隣接する複数のデータ線6a同士に対して、グループ毎に供給するようにしてもよい。
また、トランジスタ30のゲートに走査線11aが電気的に接続されており、所定のタイミングで、走査線11aにパルス的に走査信号G1、G2、…、Gmを、この順に線順次で印加するように構成されている。画素電極9aは、トランジスタ30のドレインに電気的に接続されており、スイッチング素子であるトランジスタ30を一定期間だけそのスイッチを閉じることにより、データ線6aから供給される画像信号VS1、VS2、…、VSnを所定のタイミングで書き込む。
画素電極9aを介して液晶に書き込まれた所定レベルの画像信号VS1、VS2、…、VSnは、対向基板20(図2参照)に形成された対向電極21(図2参照)との間で一定期間保持される。液晶は、印加される電圧レベルにより分子集合の配向や秩序が変化することにより、光を変調し、階調表示を可能とする。ノーマリーホワイトモードであれば、各画素の単位で印加された電圧に応じて入射光に対する透過率が減少し、ノーマリーブラックモードであれば、各画素の単位で印加された電圧に応じて入射光に対する透過率が増加され、全体として液晶装置100からは画像信号に応じたコントラストをもつ光が出射する。
ここで保持された画像信号がリークするのを防ぐために、画素電極9aと対向電極との間に形成される液晶容量と並列に蓄積容量70が付加されている。蓄積容量70の一方の電極は、画素電極9aと並列してトランジスタ30のドレインに接続され、他方の電極は、定電位となるように、電位固定の容量配線400に接続されている。
次に、上述の動作を実現する画素部の具体的構成について、図4及び図5を参照して説明する。ここに図4は、本実施形態に係る液晶装置の画素部の平面図である。図5は、図4のA−A´線断面図である。尚、図4及び図5においては、各層・各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、該各層・各部材ごとに縮尺を異ならしめてある。
図4及び図5では、図3を参照して上述した画素部の各回路要素が、パターン化され、積層された導電膜として素子基板10上に構築されている。各回路要素は、下から順に、トランジスタ30及び容量配線400等を含む第1層、データ線6a及び蓄積容量70等を含む第2層、画素電極9a等を含む第3層からなる。また、第1層−第2層間には層間絶縁膜41、第2層−第3層間には層間絶縁膜42がそれぞれ設けられ、上述した各要素間が短絡することを防止している。
(第1層の構成―トランジスタ及び容量配線等―)
図5に示すように、第1層は、トランジスタ30及び容量配線400で構成されている。
図4及び図5において、トランジスタ30は、ゲート電極3a、半導体層1a、ゲート電極3aと半導体層1aを絶縁するゲート絶縁膜を含んだ絶縁膜4を備えている。
ゲート電極3aは、図4に示すように、X方向に沿って延びる走査線11aのうち半導体層1aにおけるチャネル領域1a´と重なる部分として形成されている。ゲート電極3a(即ち、走査線11a)は、例えば導電性ポリシリコンから形成されている。尚、ゲート電極3aは、導電性ポリシリコンの他に、チタン(Ti)、クロム(Cr)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)等の高融点金属のうちの少なくとも一つを含む金属単体、合金、金属シリサイド、ポリシリサイド又はこれらの積層体等により形成することができる。
半導体層1aは、例えばポリシリコンからなり、チャネル領域1a´、低濃度ソース領域1b及び低濃度ドレイン領域1c、並びに高濃度ソース領域1d及び高濃度ドレイン領域1eからなる。尚、トランジスタ30は、LDD構造を有することが好ましいが、低濃度ソース領域1b、低濃度ドレイン領域1cに不純物打ち込みを行わないオフセット構造であってもよいし、ゲート電極3aをマスクとして不純物を高濃度に打ち込んで高濃度ソース領域及び高濃度ドレイン領域を形成する自己整合型であってもよい。
尚、本実施形態に係るトランジスタ30は、トップゲート型であるが、ボトムゲート型であってもよい。
容量配線400は、走査線11aと同一膜(即ち、ゲート電極3aと同一膜)、即ち、例えば導電性ポリシリコンから形成されている。容量配線400及び走査線11aは、図4に示したように、それぞれが分断され、X方向に沿って形成されている。
(第2層の構成―データ線及び蓄積容量等―)
第1層の全面には層間絶縁膜41が形成され、更にその上に、第2層として、データ線6a及び蓄積容量70が形成されている。
層間絶縁膜41は、例えばNSG(ノンシリケートガラス)によって形成されている。そのため光を透過することができる。その他、層間絶縁膜41には、PSG(リンシリケートガラス)、BSG(ボロンシリケートガラス)、BPSG(ボロンリンシリケートガラス)等のシリケートガラス、窒化シリコンや酸化シリコン等を用いることができる。層間絶縁膜41の表面は、化学的研磨処理(Chemical Mechanical Polishing:CMP)や研磨処理、スピンコート処理、凹への埋め込み処理等の平坦化処理がなされている。よって、下層側のこれらの要素に起因した凹凸が除去され、層間絶縁層41の表面は平坦化されている。
データ線6aは、アルミニウム等の金属膜から形成されている。尚、データ線6aは、例えば下から順にアルミニウム、窒化チタン及び窒化シリコンの3層膜として形成してもよい。データ線6aは、素子基板10上で平面的に見て、図4のY方向に沿って延びるように配線されると共に、このY方向に沿った本線部からトランジスタ30の高濃度ソース領域1dと重なるように延在する延在部6aaを有する。データ線6aは、延在部6aaにおいて、層間絶縁膜41に開孔されたコンタクトホール81を介して、トランジスタ30の高濃度ソース領域1dと電気的に接続されている。
図4に示すように、蓄積容量70は、画素毎に、素子基板10上で平面的に見て、画素電極9aと重なるように形成されている。即ち、蓄積容量70は、画素毎に、画素電極9aが形成された領域内に形成されている。蓄積容量70は、下部電極72、誘電体膜75及び上部電極71がこの順に積層されてなる。
下部電極72は、データ線6aと同一膜、即ち、アルミニウム等の金属膜から形成されている。下部電極72は、層間絶縁膜41に開孔されたコンタクトホール83を介して、トランジスタ30の高濃度ドレイン領域1eと電気的に接続されている。更に、下部電極72は、後述する層間絶縁膜42に開孔されたコンタクトホール85を介して、画素電極9aと電気的に接続されている。即ち、画素電極9aとトランジスタ30の高濃度ドレイン領域1eとは、下部電極72を中継して中継接続されている。
誘電体膜75は、誘電率が高いシリコン窒化膜等から形成されている。尚、誘電体膜としては、酸化ハフニュウム(HfO2)、アルミナ(Al2O3)、酸化タンタル(Ta2O5)等の単層膜又は多層膜から形成してもよい。
上部電極71は、アルミニウム等の金属膜から形成されている。尚、上部電極71は、例えば導電性ポリシリコンから形成してもよい。上部電極71は、誘電体膜75及び層間絶縁膜41を貫通して開孔されたコンタクトホール84を介して、容量配線400と電気的に接続されている。
(第3層の構成―画素電極等―)
第2層の全面には層間絶縁膜42が形成され、更にその上に、第3層として画素電極9aが形成されている。層間絶縁膜42は、層間絶縁膜42と同様に、例えばNSGによって形成されている。その他、層間絶縁膜42には、PSG、BSG、BPSG等のシリケートガラス、窒化シリコンや酸化シリコン等を用いることができる。層間絶縁膜42の表面は、層間絶縁膜41と同様にCMP等の平坦化処理がなされている。
図4に示すように、複数の画素電極9a(図4中、破線9a´で輪郭が示されている)は、相隣接する画素電極9a同士が、互いに電気的にショートしないようにするため、格子状の間隙領域Dを隔てて相互に配置されることで、マトリクス状に配置されている。画素電極9aは、例えばアルミニウム等から形成されており、図5中、上方からの入射光を反射する。画素電極9aは、上述したように、下部電極72によって中継され、トランジスタ30の高濃度ドレイン領域1eと電気的に接続されている。
画素電極9aの上側には、ラビング処理等の所定の配向処理が施された配向膜61が設けられている。
図4に示すように、本実施形態では特に、複数のトランジスタ30は、画素電極9aが形成された領域内に配置されており、相隣接する画素電極9a間の格子状の間隙領域Dには設けられていない。よって、複数のトランジスタ30を遮光するために、間隙領域Dに、例えばトランジスタ30よりも上層側に配置された遮光膜等の遮光手段を設けなくてもよい。従って、間隙領域Dに遮光手段を設ける場合と比較して、素子基板10上における積層構造を単純化することができ、製造プロセスにおける工程数を低減できる。この結果、液晶装置100を製造するための製造コストも低減可能である。
以上が、素子基板10側の画素部の構成である。
他方、対向基板20には、その対向面の全面に対向電極21が設けられており、更にその上(図5では対向電極21の下側)に配向膜22が設けられている。対向電極21は、例えばITO膜等の透明導電性膜からなる。
このように構成された素子基板10と対向基板20の間には、液晶層50が設けられている。液晶層50は、図1及び図2を参照して上述したように素子基板10及び対向基板20の周縁部をシール材52により封止して形成した空間に液晶を封入して形成される。液晶層50は、画素電極9aと対向電極21との間に電界が印加されていない状態において、ラビング処理等の配向処理が施された配向膜61及び配向膜22によって、所定の配向状態をとるようになっている。
以上に説明した画素部の構成は、各画素部に共通である。上述の画像表示領域10a(図1参照)には、かかる画素部が周期的に形成されている。
次に、本実施形態の液晶装置の素子基板及び光吸収体について、図5を参照して説明する。
図5において、本実施形態では特に、素子基板10は、上述したように、例えばガラス基板、石英基板等の透明基板からなる。
ここで、仮に何らの対策も施さず、上述した特許文献1に開示されているように、素子基板10がシリコン基板からなる場合には、相隣接する画素電極9a間の間隙領域Dから入射した光がシリコン基板の表面で反射してしまうため、液晶装置内における他の部位で反射してなる乱反射光や迷光が増加してしまうおそれがある。このため、このような乱反射光や迷光がトランジスタ30に到達してしまい、トランジスタ30における誤動作が生じてしまうおそれがある。
しかるに本実施形態では特に、素子基板10は、透明基板からなるので、相隣接する画素電極9a間の間隙領域Dから入射した光(例えば、図5中、矢印P1)を透過させることができる。よって、素子基板10の表面での反射を低減できる。つまり、間隙領域Dから入射する光を、液晶装置100内で殆ど反射させることなく、殆どそのまま、素子基板10の裏面(図5中、下面)側に逃がすことができる。従って、液晶装置100内における乱反射光や迷光の発生を低減できる。このため、乱反射光や迷光がトランジスタ30に到達してしまうことによるトランジスタ30における誤動作が生じてしまうことを低減できる。
更に、本実施形態では特に、光吸収体500が、透明な接着剤からなる接着層600によって、素子基板10の裏面に接着されている。
光吸収体500は、アルマイト処理によって黒色にされたアルミニウムからなる平板として形成されている。光吸収体500は、素子基板10とほぼ同じ平面形状を有しており、素子基板10と互いに重なるように配置されている。尚、光吸収体500は、Cr、Ni等の金属材料等から形成してもよい。よって、素子基板10及び接着層600を透過する光を、光吸収体500によって吸収できる。従って、素子基板10を透過した光が、他の部材或いは装置によって反射され液晶装置100内に再び入射されることにより、乱反射光や迷光が発生してしまうことを低減或いは防止できる。
加えて、光吸収体500は、上述の如きアルミニウムからなる平板として形成されているので、例えばガラス基板、石英基板等からなる素子基板10よりも高い熱伝導率を有している。よって、液晶装置100の動作時に発生する熱を、光吸収体500を介して、液晶装置100から装置外部に速やかに逃がすことが可能である。即ち、液晶装置100の放熱性を高めることが可能である。従って、温度上昇に伴って生じ得る液晶装置100の表示性能の低下を抑制できる。
本実施形態では特に、接着層600は、素子基板10の屈折率と実質的に同一の屈折率を有する、紫外線硬化樹脂からなる透明な接着剤から形成されている。尚、接着剤としては、紫外線硬化樹脂の代わりにその他の波長の光に感応する光硬化性樹脂、又は熱硬化性樹脂を用いることもできる。よって、素子基板10と接着層600との界面B1における、素子基板10と接着層600との屈折率の差に起因して生じ得る光の反射を殆ど或いは完全に無くすことができる。よって、乱反射光や迷光によるトランジスタ30における誤動作の発生を低減或いは防止できる。
以上説明したように、本実施形態に係る液晶装置100によれば、素子基板10が透明基板からなると共に、素子基板10における裏面側に光吸収体500が備えられているので、乱反射光や迷光によるトランジスタ30における誤動作の発生を低減或いは防止できる。更に、本実施形態では特に、素子基板10と光吸収体500とを接着する接着層600の屈折率は、素子基板10の屈折率と実質的に同一であるので、素子基板10の裏面における反射を低減或いは防止できる。
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係る液晶装置について、図6を参照して説明する。ここに図6は、第2実施形態における図5と同趣旨の断面図である。尚、図6において、図1から図5に示した第1実施形態に係る構成要素と同様の構成要素に同一の参照符合を付し、それらの説明は適宜省略する。
図6に示すように、第2実施形態に係る液晶装置200は、上述した第1実施形態における素子基板10に代えて素子基板12を備える点、上述した第1実施形態におけるトランジスタ30に代えてトランジスタ32を備える点、及び上述した第1実施形態における光吸収体500に代えて光吸収体520を備える点で、上述した第1実施形態に係る液晶装置100と異なり、その他の点については、上述した第1実施形態に係る液晶装置100と概ね同様に構成されている。
本実施形態では特に、素子基板12は、サファイア基板からなる。よって、素子基板12は、上述した第1実施形態における素子基板10と同様に、相隣接する画素電極9a間の間隙領域Dから入射した光(図6中、矢印P1)を透過させることができる。従って、素子基板12の表面での反射を低減できる。更に、素子基板12上に単結晶シリコン膜からなる半導体層を形成することが可能となる。即ち、本実施形態では特に、素子基板12がサファイア基板からなるため、トランジスタ32を構成する半導体層2aは、単結晶シリコン膜から形成されている。よって、仮に半導体層2aをポリシリコン膜から形成する場合と比較して、トランジスタ32の動作スピード等の性能を向上させることができる。
尚、半導体層2aは、チャネル領域2a´、低濃度ソース領域2b及び低濃度ドレイン領域2c、並びに高濃度ソース領域2d及び高濃度ドレイン領域2eからなる。トランジスタ32は、低濃度ソース領域1b、低濃度ドレイン領域1cに不純物打ち込みを行わないオフセット構造であってもよいし、ゲート電極3aをマスクとして不純物を高濃度に打ち込んで高濃度ソース領域及び高濃度ドレイン領域を形成する自己整合型であってもよい。
更に、本実施形態では特に、光吸収体520は、素子基板12と実質的に同一の屈折率を有する、黒色の樹脂からなる。黒色の樹脂としては、着色剤(即ち、顔料又は染料)によって着色された、光硬化樹脂或いは熱硬化樹脂を用いることができる。よって、光吸収体520は、その素子基板12と接する部分が接着剤として機能することで、素子基板12に容易に接着可能であると共に、素子基板12の裏面から出射される光を確実に吸収できる。更に、光吸収体520は、素子基板12と実質的に同一の屈折率を有するので、素子基板12と光吸収体520の界面B2における光の反射を殆ど或いは完全に無くすことができる。言い換えれば、光吸収体520は、第1実施形態における光吸収体500及び接着層600の両方の機能を有している。
<電子機器>
次に、上述した電気光学装置である反射型の液晶装置を電子機器に適用する場合について説明する。ここでは、本発明に係る電子機器として、投射型液晶プロジェクタと例にとる。ここに、図7は、本実施形態に係る投射型液晶プロジェクタの図式的断面図である。
図7において、液晶プロジェクタ1100は、夫々RGB用の液晶ライトバルブ100R、100G及び100Bの3枚を用いた複板式カラープロジェクタとして構築されている。液晶ライトバルブ100R、100G及び100Bの各々は、上述した反射型の液晶装置が使用されている。
図7に示すように、液晶プロジェクタ1100では、メタルハライドランプ等の白色光源のランプユニット1102から投射光が発せられると、2枚のミラー1106、2枚のダイクロイックミラー1108及び3つの偏光ビームスプリッター(PBS)1113によって、RGBの3原色に対応する光成分R、G及びBに分けられ、各色に対応する液晶ライトバルブ100R、100G及び100Bに夫々導かれる。尚、この際、光路における光損失を防ぐために、光路の途中にレンズを適宜設けてもよい。そして、液晶ライトバルブ100R、100G及び100Bにより夫々変調された3原色に対応する光成分は、クロスプリズム1112により合成された後、投射レンズ1114を介してスクリーン1120にカラー映像として投射される。
尚、液晶パネル1110R、1110B及び1110Gには、ダイクロイックミラー1108及び偏光ビームスプリッター1113によって、R、G、Bの各原色に対応する光が入射するので、カラーフィルタを設ける必要はない。
尚、図7を参照して説明した電子機器の他にも、モバイル型のパーソナルコンピュータや、携帯電話、液晶テレビ、ビューファインダ型、モニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた装置等が挙げられる。そして、これらの各種電子機器に適用可能なのは言うまでもない。
また本発明は、上述の実施形態で説明した液晶装置以外にも、プラズマディスプレイ(PDP)、電界放出型ディスプレイ(FED、SED)、有機ELディスプレイ、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)、電気泳動装置等にも適用可能である。
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う電気光学装置、及び該電気光学装置を備えてなる電子機器もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
6a…データ線、9a…画素電極、10…素子基板、10a…画像表示領域、11a…走査線、20…対向基板、21…対向電極、30…トランジスタ、50…液晶層、52…シール材、53…額縁遮光膜、70…蓄積容量、71…上部電極、72…下部電極、75…誘電体膜、101…データ線駆動回路、102…外部回路接続端子、104…走査線駆動回路、106…上下導通端子、400…容量配線、500…光吸収体、600…接着層