JP5118268B1 - 高純度シリコンの製造方法および高純度シリコン - Google Patents

高純度シリコンの製造方法および高純度シリコン Download PDF

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Abstract

高純度シリコンの製造方法は、第1シリコン塊(51A)の析出工程と、第1シリコン塊(51A)の分離工程と、純度が第1シリコン塊(51A)よりも低い第2シリコン塊(51B)の析出工程と、第2シリコン塊(51B)の分離工程とを備える。第2シリコン塊(51B)の析出工程では、シリコン融液(5)内で回転冷却体(7)を第1回転数よりも高い第2回転数で回転させる。
【選択図】図1

Description

本発明は、高純度シリコンの製造方法およびその方法により得られた高純度シリコンに関する。
近年、環境問題から、石油などの代替として自然エネルギーの利用が注目されている。太陽電池は大きな発電設備を必要とせず、稼働時に騒音などが出ないこともあり、日本および欧州などで特に積極的に導入されてきている。昨今ではカドミウムテルルなどの化合物半導体材料からなる太陽電池が登場してきたものの、物質自体の安全性およびこれまでの実績などから依然として結晶シリコンを原料として用いた太陽電池(結晶シリコン太陽電池)が大きなシェアを占めている。
結晶シリコン太陽電池に用いられるウェハには、大きく分けて、単結晶と多結晶との2つがある。単結晶シリコンウェハの作製方法としては、一般的には、CZ法またはFZ法により作製されたインゴットをスライスするという方法が用いられている。多結晶シリコンウェハの作製方法としては、一般的には、キャスト法によりシリコン融液から多結晶塊を成長させた後にスライスするという方法が用いられている。ウェハとは形状が異なるが、太陽電池などの基材となるシリコンの作製方法としては、たとえば、シリコン融液から多結晶シリコンを直接成長させるというリボン法(基板を用いる場合、基板を用いない場合、どちらの場合もある)、または真空中または不活性ガス中にシリコン液滴を落下させて球状シリコンを得るという方法などがある。
このように、単結晶シリコンウェハ、多結晶シリコンウェハ、リボン状の多結晶シリコン、および球状シリコンの作製には、ほとんどの場合、シリコン融液が必要である。ここで、種々ある元素の中には酸素または窒素等のように自然界に豊富に単体で存在するものがあるが、シリコンが自然界に単体で存在することは非常にまれであり、シリコンの大部分は酸化物となって自然界に存在する。また、自然界に存在するシリコンにはシリコン以外の元素(不純物)が含まれていることがあり、シリコン中の不純物は太陽電池の特性に悪影響を与えることが多い。従って、シリコンを太陽電池用材料に用いる場合にはシリコンの高純度化が必要であり、シリコンを安価に高純度化する方法が必要とされている。
シリコンを高純度化させる方法として、珪石を還元して得られる純度98%以上の金属シリコンをシラン(SiH4)またはトリクロルシラン(SiHCl3)などのガスに変換し、そのガスをベルジャー炉内で水素還元するという方法がある。このようにして得られたポリシリコンを単結晶成長させることで、LSI等の電子デバイス用のシリコンウェハを製造可能である。
電子デバイス用材料に用いられるシリコンには、純度11Nという非常に高い純度が要求される。そのため、金属シリコンをシランなどのガスに変換する設備への投資およびベルジャー炉の設備投資が膨大となっても、また気相反応を利用するために高純度シリコンの生産性がそれほど高くなくても、金属シリコンをシランなどのガスに変換してベルジャー炉内で水素還元するという方法を採用せざるを得ない。しかし、太陽電池用材料としてのシリコンには、6N程度の純度が要求される。よって、金属シリコンをシランなどのガスに変換してベルジャー炉内で水素還元するという方法により得られたシリコンでは、太陽電池用材料としての品質を十分に満たすが、コストが非常に高くなる。以上のことから、太陽電池用材料としてのシリコンの安価な製造技術の確立が強く求められており、凝固偏析等を利用した冶金学的手法により前述した純度98%程度の金属シリコンを精製する手法が近年注目されている。
ここで、金属シリコン中に不純物として比較的多く含まれるものには、鉄、アルミニウム、またはチタン等がある。鉄は金属シリコン中に100〜5000ppmW程度含まれており、アルミニウムは金属シリコン中に100〜2000ppmW程度含まれており、チタンは金属シリコン中に1〜10ppmW程度含まれている。
鉄、アルミニウムまたはチタンなどの不純物はシリコン中の偏析係数(平衡分配係数)が小さいことで知られている。例えば、シリコン中の鉄の偏析係数値は6.4×10-6であり、シリコン中のアルミニウムの偏析係数値は2.8×10-3であり、シリコン中のチタンの偏析係数値は7.37×10-6であることが報告されている。そのため、凝固偏析を利用して鉄、アルミニウムまたはチタンなどの不純物の除去が可能である。つまり、シリコン融液が凝固する際、偏析係数の小さな不純物(鉄、アルミニウムまたはチタン)がシリコン融液中に分配されて固体中にほとんど取り込まれないため、析出したシリコンにおいて上記不純物の濃度が低下する。一方向凝固法に代表される凝固偏析を利用した精製を2回または3回行うことで、鉄、アルミニウムまたはチタンなどの不純物の濃度を0.1ppmW以下(0.1ppmW以下とは、太陽電池用材料として要求される不純物濃度である)とすることが可能である。凝固偏析による不純物除去の方法については、様々の手法が提案されている。たとえば特許文献1(特公平7−53569号公報(特開昭63−45112号公報))には、溶融ケイ素を不活性ガス雰囲気中において凝固温度を超えた状態で保持してから、溶融ケイ素中で回転冷却体を回転させて当該回転冷却体の外周面に高純度ケイ素を晶出させる方法が記載されている。
シリコンを太陽電池用材料として使用することを考えれば、シリコン中の不純物のうちその含有量が最も厳格に制御されるべきものは、シリコンの導電型を決定する元素であり、代表的にはリンおよびボロンである。ところが、シリコン中のリンおよびボロンの偏析係数値はそれぞれ0.35および0.8程度と非常に大きいため、凝固偏析を利用した精製方法ではリンおよびボロンを除去するという効果を得にくいと考えられる。
例えば、リンの場合、金属シリコン中のリンの含有量の代表的な値は30〜50ppmWである。このリンの含有量を0.1ppmW以下とするためには、凝固偏析処理を非常に多くの回数行う必要がある。そのため、リン除去を目的として凝固偏析処理を利用することは工業的に困難であると考えられ、凝固偏析とは異なる原理を利用したリン除去方法が種々提案されている。例えば、特許文献2(特開平6−227808号公報)には、非酸化性雰囲気下でシリコンを溶融し、シリコンを溶融している状態下で10Pa以下の減圧雰囲気に保つという方法が記載されている。また、特許文献3(特開平7−315827号公報)には、減圧下において水冷坩堝内に供給された固体原料シリコンに電子ビームを照射して当該固体原料シリコンを溶解する方法が記載されている。特許文献2および3に記載の方法では、リンの蒸気圧がシリコンの蒸気圧よりも高いこと、および真空雰囲気で精製を行なうことによりリンの蒸発速度が速くなるということを利用している。
上記不純物とは異なった性質の不純物として炭素が挙げられる。炭素は、金属シリコンに数十〜数百ppmW含まれている。その理由としては、金属シリコンを製造する工程において還元剤としてコークスまたは木炭を使用して炭素電極を用いたアーク炉内で酸化珪素を還元しているからであり、得られたシリコン融液への炭素の混入が避けられないからである。また、金属シリコンから不純物を除去する工程において炭素が混入する場合がある。たとえば、特許文献2には、リンを除去するために黒鉛製のルツボを用いてシリコン融液を1500℃で1時間保持するという記載がある。ここで、黒鉛は、高純度の炭素である。そのため、黒鉛製のルツボを用いてシリコン融液を1500℃で1時間保持すると、黒鉛がシリコン融液に溶出する。また、シリコン融液への炭素の固溶状態が平衡に達するまでに十分な時間があれば、黒鉛は溶解度に達するまでシリコン融液へ混入する。例えば1500℃においては200ppmW程度の炭素がシリコン融液中に混入する。そして、炭素は、太陽電池用材料となるシリコン結晶に含まれると、シリコンとの化合物(SiC)として存在する場合が多いということが知られている。この析出物(SiC)が太陽電池における接合界面を貫通すると、電流がリークして、太陽電池の品質の低下を招くことがある。そのため、太陽電池用材料としてシリコンを使用する場合、シリコンを精製して炭素を除去する技術が種々提案されている。
たとえば、特許文献4(特開昭64−56312号公報)には、一度凝固させたシリコンを再溶融して、凝固時にシリコンからSiCとして分離した炭素が再びシリコン中に溶け込まないように直ちに濾過するという脱炭処理が記載されている。特許文献4には、この脱炭処理を行なえばシリコン中の炭素濃度が40ppmW以下まで低下すること、およびこの脱炭処理の後に一方向凝固処理を行なえばシリコン中の炭素濃度が10ppmW以下となることが記載されている。
特許文献5(特開平1−176211号公報)には、シリコン融液の表面に不活性ガスを吹き付けるという脱炭処理が記載されており、不活性ガスの吹き付けによりシリコン融液の表面上の一酸化炭素分圧が減少してシリコン融液の脱炭が促進されると記載されている。さらに、特許文献5には、シリコン融液にシリカ(SiO2)を添加すれば、またはシリコン融液を攪拌すれば、脱炭に有効であることも記載されている。特許文献5の実施例には、シリコン融液の表面に不活性ガスを吹き付ければ、シリコン中の炭素濃度が150〜250ppmWから10〜20ppmWまで低下することが記載されている。
特許文献6(特開平2−267110号公報)には、シリコン融液に浸漬したランスから酸化剤を含む不活性ガスを吹き込むという脱炭処理が記載されており、特許文献6の実施例には、この脱炭処理によりシリコン中の炭素濃度が70〜80ppmWから20ppmW程度へ低下することが記載されている。
特許文献7(特開平4−231316号公報)には、珪素化合物を主成分とする物質をフィルター材として充填された濾過容器を用いてシリコンの脱炭を行なうことが記載されており、フィルター材をシリコンの融点以上に加熱保持した状態でシリコン融液を給湯するとともに濾過容器の底部から酸素含有気体を供給する方法が記載されている。特許文献7の実施例には、この脱炭処理を行なえばシリコン中の炭素濃度が2000ppmWから20〜50ppmWまで低下することが記載されている。
特公平7−53569号公報(特開昭63−45112号公報) 特開平6−227808号公報 特開平7−315827号公報 特開昭64−56312号公報 特開平1−176211号公報 特開平2−267110号公報 特開平4−231316号公報
シリコン中の不純物としての炭素の性質として、シリコン融液中への溶解度が低いこと、および溶解度を超える濃度で炭素が混入した場合にはシリコンと高融点化合物を形成して固体として存在しうることなどが挙げられる。そのため、シリコン中の炭素の偏析係数値が0.05と小さいにもかかわらず、凝固偏析による精製法ではシリコン中に高濃度に存在する炭素を有効に除去できない場合がある。その理由は、凝固偏析による精製中に、過飽和となる炭素がSiCという析出物の形態でシリコン融液中に分散しており、凝固偏析現象に従わずに精製塊中に取り込まれてしまうからである。このことがシリコン中の炭素除去を困難にしている最大の原因の1つである。
冶金学的手法による不純物除去プロセスを構築するうえでさらに考慮すべきことは、最終製品として全ての有害な不純物の濃度が低減されたものが得られるよう工程を組み合わせることである。すなわち、ある不純物を除去したのち、他の不純物を除去する次工程で先に除去した不純物を混入させないように不純物除去プロセスを構築しなければならない。特に太陽電池用材料としてシリコンを用いる場合については、様々な元素が太陽電池にとって悪影響を与える(たとえば太陽電池の性能低下)ため、このことは重要である。
従来技術におけるシリコンからの脱炭の原理を大別すると、(1)炭素を析出させ、析出したSiC粒子をフィルタで除去する、(2)酸化剤の添加またはシリコン融液の表面におけるCO濃度の低減により、シリコン中の炭素をCOガスとして気相中に脱離させる、および(3)シリコン融液に溶けている不純物については凝固偏析により除去する、という3つが挙げられる。従来では、これらの3種類の原理を単独で、または組み合わせて、シリコンからの脱炭を行なっている。
特許文献4および7に記載の方法では、上記(1)のフィルタを用いる方法を採用しており、フィルタに用いる材料として、炭化珪素、窒化珪素、または酸化珪素などが挙げられている。しかし、いずれの材料もシリコン融液に対して十分な耐久性を有するとは言えない。また、フィルタが目詰まりを起こすと、濾過によるSiC粒子の除去処理を効率的に行なうことが難しくなるため、頻繁なフィルタの交換が必要となる。よって、高純度シリコンの生産性の低下、または高純度シリコンの生産コストの増加などの不具合が生じる。
特許文献5および6に記載の方法では、上記(2)のCOガスとして炭素を除去する手法を採用している。この手法では、シリコンが大量の炭素を含む場合には脱炭処理が長時間化する。また、酸化剤を添加して脱炭処理を行なう場合には、シリコン自体も酸化されてSiOとして蒸発するので、歩留りが著しく低下することがある。
また、特許文献4〜7に記載の方法では、フィルタまたは炉材から、太陽電池用材料として許容可能な量を超える量の不純物がシリコン融液等に混入する可能性があり、特に金属元素の混入を防ぐことは困難である。そのため、凝固偏析などの次工程が必要となる。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、低コストで高純度シリコンを製造可能な高純度シリコンの製造方法を提供することである。
本発明に係る高純度シリコンの製造方法は、シリコン融液内で回転冷却体を第1回転数で回転させることにより回転冷却体の表面に第1シリコン塊を析出させる工程と、第1シリコン塊が表面に析出された回転冷却体をシリコン融液から引き上げてシリコン融液から引き上げられた回転冷却体の表面から第1シリコン塊を分離する工程と、シリコン融液内で回転冷却体を第1回転数よりも高い第2回転数で回転させることにより回転冷却体の表面に純度が第1シリコン塊よりも低い第2シリコン塊を析出させる工程と、第2シリコン塊が表面に析出された回転冷却体をシリコン融液から引き上げて、シリコン融液から引き上げられた回転冷却体の表面から第2シリコン塊を分離する工程とを備える。
第1シリコン塊を分離する工程において回転冷却体の表面から分離された第1シリコン塊と第2シリコン塊を分離する工程において回転冷却体の表面から分離された第2シリコン塊とを分別して回収する工程をさらに備えることが好ましい。
第1シリコン塊を析出させる工程および第2シリコン塊を析出させる工程は、ルツボ内で行なわれることが好ましい。第1シリコン塊を析出させる工程はルツボ内のシリコン融液の分量が予め定められた基準量以上であるときに行なわれることが好ましく、第2シリコン塊を析出させる工程はルツボ内のシリコン融液の分量が基準量未満であるときに行なわれることが好ましい。
第2シリコン塊を析出させる工程は、ルツボ内に供給されるシリコン融液の累積量が当該シリコン融液における不純物濃度より定められた値に達する前に行なわれることが好ましい。
第1シリコン塊を析出させる工程と第1シリコン塊を分離する工程とを繰り返し行なうことが好ましく、第2シリコン塊を析出させる工程と第2シリコン塊を分離する工程とを繰り返し行なうことが好ましい。
第1回転数は20回転/分以上40回転/分以下であることが好ましく、第2回転数は40回転/分より高いことが好ましい。
本発明に係る高純度シリコンは、本発明に係る高純度シリコンの製造方法により得られる。
本発明に係る高純度シリコンの製造方法では、低コストで高純度シリコンを製造することができる。
本発明の高純度シリコンの製造方法の一例を示すフロー図である。 本発明の高純度シリコンの製造方法の一例を示す断面図である。 本発明の高純度シリコンの製造方法の要部工程の一例を示す断面図である。 本発明の高純度シリコンの製造方法の別の一例を示すフロー図である。
本発明者らは、シリコン融液中で回転冷却体を回転させて回転冷却体の表面にシリコンを析出させるという凝固偏析原理を利用した不純物の除去方法において、ある条件下でこの不純物の除去方法を行なうと非常に有効に炭素を除去できることを見出した。しかし、脱炭の効果は安定して得られず、特に同じルツボを継続して使用し続け、ルツボの累積処理量が多くなると炭素を有効に除去できないことが明らかとなった。そして、さまざまな評価および検討を行って脱炭の効果が安定して得られない原因を特定し、低コストで高純度なシリコンを製造する方法を完成するに至った。以下、本発明を完成させるにあたり本発明者らが検討したことを示す。
本発明者らは、融点における溶解度(40ppmW)を超える炭素を含むシリコンを原料として用い、回転冷却体をこのシリコン融液に浸漬させて回転させ、当該回転冷却体の表面にシリコン(以下では「精製塊」と記すことがある。)を析出させた。精製塊中の炭素を評価すると、精製塊にはSiCの形態で高濃度な炭素が含まれていることが判明した。SiCの形態以外の形態で存在している炭素はシリコン融液中に固溶した形態で存在しているものの、その濃度は凝固点の固相シリコンに対する炭素の溶解度程度であり、10ppmW以下であった。この結果から、本発明者らは、精製塊における炭素濃度を低減させるためにはSiC粒子を取り込むことなく精製塊を析出させることが好ましいと考え、この点に焦点を絞ってさらなる検討を行なった。
まず、ルツボ内でシリコンを溶融させる工程に着目した。シリコン融液には当該シリコン融液の保持温度における溶解度の炭素が含まれる。次工程でシリコンを回転冷却体の表面に成長させることを考慮すると、シリコン融液の保持温度はシリコンの融点付近の温度が適切であり、よって、シリコン融液に溶解している炭素濃度は40ppmW程度となる。一方、シリコン融液に溶解していない炭素はSiC粒子として析出する。ここで、SiCの密度は約3.2g/cm3であり、シリコン融液の密度である約2.5g/cm3よりも高い。よって、ルツボにおけるシリコン融液の流れの影響を受けなければ、SiC粒子の大部分はルツボの底部に沈降すると考えられる。実際、脱炭処理終了後にルツボを観察したところ、SiC粒子の大部分がルツボの底部に沈殿していることが判明した。ただ、沈殿物におけるSiC粒子の含有率は約1割程度であり、沈殿物の大部分を占めるシリコン中にSiC粒子がまばらに分散しているにすぎなかった。
次に、回転冷却体をシリコン融液の上部に浸漬させて回転させ、回転冷却体の表面にシリコンを析出させる工程に着目した。前述のようにSiC粒子がルツボの底部に沈降しているのであれば、精製塊にはSiC粒子がほとんど含まれず、よって、精製塊における炭素濃度はシリコン融液に対する炭素の溶解度以下となるはずである。しかし、実際には、精製塊には溶解度を超える炭素が含まれており、沈殿物中のSiC粒子が精製塊内に混入したと考えられる。この理由としては、回転冷却体の回転によりシリコン融液が激しく撹拌されるので沈殿物中のSiC粒子が舞い上がり、舞い上がったSiC粒子を取り込みつつ精製塊が回転冷却体の表面に析出したからであると考えられる。
そこで、本発明者らは、回転冷却体の回転数を制御してルツボの底部に沈降したSiC粒子の舞い上がりの防止を検討した。回転冷却体の回転数は、SiC粒子の舞い上がりを防止するためには低い方が好ましいが、偏析効果を向上させるためには高い方が好ましい。これらを踏まえて、回転冷却体を20〜40rpm(revolution per minute)の回転数で回転させた。また、同一のルツボを使い続けて、回転冷却体の浸漬、回転冷却体の回転、および精製塊の回収を繰り返し行なった。高価なルツボを頻繁に交換するのではなく同一のルツボを使用して出来る限り多くの精製塊を回収することにより、低コストで高純度なシリコンの提供に繋がるからである。なお、回転冷却体の浸漬、回転冷却体の回転、および精製塊の回収を繰り返し行なうと、ルツボ内のシリコン融液の分量は減少する。そこで、ルツボ内のシリコン融液の最低分量を定め、ルツボ内のシリコン融液の分量がその最低分量を下回る前にシリコン融液をルツボ内に適宜供給した。このようにして精製塊を得た。得られた精製塊中の炭素濃度は回転冷却体を40rpmよりも高い回転数で回転させた場合に比べて低下したが、10ppmWよりも大きかった。本発明者らは、この理由として次に示すことを考えた。高濃度の炭素を含むシリコン融液を適宜ルツボに補充することと精製塊を引き上げることとを繰り返すので、過飽和となって析出したSiC粒子がルツボの底部に蓄積され続ける。そして、沈殿物の高さがある臨界量を超えると、回転冷却体の回転数が低くても回転冷却体の回転によるシリコン融液の撹拌の影響を受け、SiC粒子の舞い上がりが起こる。
沈殿物の高さを低減するには沈殿物をルツボ内から除去すれば良い。しかし、沈殿物をルツボ内から除去するために大掛かりな機構を追加することはコストの上昇を招くので、本来の目的である低コストで高純度なシリコンの提供が難しくなる。これまでの検討結果から、回転冷却体の回転数が高い場合には精製塊にSiC粒子が含まれることが判明したので、この現象を積極的に利用して沈殿物をルツボ内から除去するという発想に至った。
なお、上記考察では、シリコン中の不純物として炭素について鋭意検討したが、シリコンに対して炭素と同様の性質を有する元素、別の言い方をするとシリコン融液に溶け残るとシリコンと結合して析出するとともにその析出物がルツボの底部に沈降する元素(たとえば窒素)についても同様のことが言えると考えられる。よって、以下に示す本発明は、シリコンからの脱炭処理に限定されず、たとえば脱窒処理にも適用できる。
以下、本発明の高純度シリコンの製造方法および高純度シリコンについて図面を用いて説明する。なお、本発明の図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表すものである。また、長さ、幅、厚さ、深さなどの寸法関係は図面の明瞭化と簡略化のために適宜変更されており、実際の寸法関係を表すものではない。
<高純度シリコンの製造方法>
図1は、本発明の高純度シリコンの製造方法の一例を示すフロー図である。図2(A)〜(D)は、本発明の高純度シリコンの製造方法の一例を示す断面図である。図3(A)〜(B)は、本発明の高純度シリコンの製造方法の要部工程の一例を示す断面図である。
図1に示す高純度シリコンの製造方法は、第1シリコン塊51Aを回転冷却体7の表面に析出させる工程(以下では「第1シリコン塊51Aの析出工程」と記す)S11と、回転冷却体7をシリコン融液5から引き上げて第1シリコン塊51Aを当該回転冷却体7の表面から分離させる工程(以下では「第1シリコン塊51Aの分離工程」と記す)S12と、第2シリコン塊51Bを回転冷却体7の表面に析出させる工程(以下では「第2シリコン塊51Bの析出工程」と記す)S13と、回転冷却体7をシリコン融液5から引き上げて第2シリコン塊51Bを当該回転冷却体7の表面から分離させる工程(以下では「第2シリコン塊51Bの分離工程」と記す)S14とを備える。
<第1シリコン塊51Aの析出工程>
図2(B)および図3(A)に示すように、シリコン融液5中に回転冷却体7を挿入して回転冷却体7を第1回転数で回転させる。シリコン融液5は、図2(A)に示すようにルツボ1内でシリコン原料3を溶融することにより得られたものであっても良いし、ルツボ1とは異なる装置内でシリコン原料3を溶融することにより得られたものであっても良い。
ここで、第1シリコン塊51Aの析出工程S11で用いる部材について順に示すと、ルツボ1はシリコン原料3およびシリコン融液5を保持可能に形成されていることが好ましく、その形状および大きさは図2(A)などに記載の形状および大きさに限定されない。また、ルツボ1の材料は、特に限定されないが、黒鉛、シリカ、石英、炭化ケイ素、アルミナ、またはムライトなどが好適であり、黒鉛、シリカ、石英、または炭化ケイ素などがより好適である。ルツボ1が黒鉛、シリカ、石英、または炭化ケイ素などからなれば、ルツボ1からシリコン融液5への不純物の混入を抑制できる。
シリコン原料3は、炭素などの不純物を含むシリコンであり、純度が99%未満のシリコン(固体)を意味する。また、シリコン原料3の加熱方法は、シリコン原料3をその融点以上に加熱できる方法であれば特に限定されない。
回転冷却体7の材料は特に限定されないが、たとえば黒鉛であることが好ましい。また、回転冷却体7は、設定された回転数で回転可能に構成されていることが好ましく、たとえば回転冷却体7の回転数を制御するモータなどが回転冷却体7に接続されていることが好ましい。さらに、回転冷却体7は、回転冷却体7の表面をシリコンの融点温度よりも低い温度に保持可能に構成されていることが好ましく、たとえば冷媒(液体であっても良いし気体であっても良い)が回転冷却体7の内部を循環可能に構成されていることが好ましい。
回転冷却体7の表面温度がシリコン融液5の温度よりも低いため、シリコン融液5は回転冷却体7の表面で抜熱されて回転冷却体7の表面に析出する。このとき、シリコン融液5では溶けきれなかった炭素がSiCとなってルツボ1の底部に沈降しているが(図3(A)に示す沈殿物9)、回転冷却体7を第1回転数で回転させるので、沈殿物9の舞い上がりを防止でき、よって、沈殿物9中のSiC粒子11(図3(B)参照)がシリコン融液5内に拡散することを防止できる。したがって、SiC粒子11を取り込むことなく第1シリコン塊51Aを回転冷却体7の表面に析出させることができるので、第1シリコン塊51Aは純度に優れる。なお、第1回転数は、20rpm以上40rpm以下であることが好ましい。これにより、均一性の高い高純度の第1シリコン塊51Aが得られる傾向が高くなる。
第1シリコン塊51Aの析出工程S11は、ルツボ1内のシリコン融液5の分量が基準量以上であるときに行なわれることが好ましい。一般に、ルツボ内のシリコン融液の分量に関係なく、シリコン融液における回転冷却体の所定の浸漬深さを確保することが好ましい。そのため、ルツボ1内のシリコン融液5の分量が基準量未満であれば、回転冷却体7をシリコン融液5の下部まで挿入することになり、回転冷却体7の回転に因る沈殿物9の舞い上がりを招くことがある。しかし、ルツボ1内のシリコン融液5の分量が基準量以上であれば、回転冷却体7をシリコン融液5の下部まで挿入しなくてもシリコン融液5における回転冷却体7の浸漬深さを確保でき、よって、回転冷却体7の回転に因る沈殿物9の舞い上がりを抑制できる。したがって、第1シリコン塊51Aの析出時にSiC粒子11が取り込まれることをさらに防止できるので、第1シリコン塊51Aの純度をさらに高めることができる。
なお、基準量とは、回転冷却体7の先端と沈殿物9の表面との最短距離が10mm以上であるときのシリコン融液5の分量であり、好ましくは回転冷却体7の先端と沈殿物9の表面との最短距離が50mm以上であるときのシリコン融液5の分量である。
<第1シリコン塊51Aの分離工程>
図2(C)に示すように第1シリコン塊51Aが析出された回転冷却体7をシリコン融液5から引き上げてから、図2(D)に示すように第1シリコン塊51Aを回転冷却体7の表面から分離させる。これにより、高純度なシリコンを回収することができる。
回転冷却体7をシリコン融液5から引き上げるタイミングは次に示すどちらかの方法にしたがって決定されることが好ましい。シリコン融液5の温度および回転冷却体7の冷却能力などから第1シリコン塊51Aの成長レートが求まる場合には、第1シリコン塊51Aが所望の重量まで成長する時間を算出できるので、算出された時間が経過してから回転冷却体7をシリコン融液5から引き上げれば良い。また、高純度シリコンの製造装置が目視可能な構成である場合には、第1シリコン塊51Aの成長程度を視認できるので、第1シリコン塊51Aが適切な重量(または適切な厚み)まで成長したことを確認してから回転冷却体7をシリコン融液5から引き上げれば良い。なお、高純度シリコンの製造装置がチャンバを備える場合には、シリコン融液5から引き上げた回転冷却体7をゲートバルブの外側まで取出せば、第1シリコン塊51Aを容易に回収できる。
第1シリコン塊51Aを回転冷却体7の表面から分離させる方法は、特に限定されない。しかし、シリコンは容易に脆性破壊されるため、第1シリコン塊51Aに物理的衝撃を与えることで第1シリコン塊51Aを破砕して回転冷却体7の表面から分離させることができる。また、第1シリコン塊51Aを切断して回転冷却体7の表面から分離させても良い。
<第2シリコン塊51Bの析出工程>
図2(B)および図3(B)に示すように、第1シリコン塊51Aが分離された回転冷却体7をシリコン融液5内に挿入して第2回転数で回転させる。
第2回転数は第1回転数よりも高く、40回転/分よりも高いことが好ましく、100回転/分以上であることがさらに好ましい。よって、回転冷却体7を第2回転数で回転させれば、図3(B)に示すように沈殿物9が舞い上がるので、SiC粒子11がシリコン融液5内に分散する。したがって、第2シリコン塊51Bの析出時にSiC粒子11が取り込まれることとなる。これにより、第2シリコン塊51Bの純度は第1シリコン塊51Aの純度よりも低くなる。なお、シリコン融液5の飛散を防止する観点から、第2回転数は300回転/分以下であることが好ましい。
第2シリコン塊51Bの析出工程S13を行なうタイミングは特に限定されないが、ルツボ1内のシリコン融液5の分量または沈殿物9の量などに応じて決定されることが好ましい。より好ましくはルツボ1内のシリコン融液5の分量が基準量未満となってから第2シリコン塊51Bの析出工程S13を実行することである。これにより、シリコン融液5中のSiC粒子11の密度が高くなるので、第2シリコン塊51Bに取り込まれるSiC粒子11の量を稼ぐことができる。よって、次工程である第2シリコン塊51Bの分離工程S14を行なうことにより、SiC粒子11を効率良く回収することができる。
なお、第1シリコン塊51Aの析出工程S11を行なう前に第2シリコン塊51Bの析出工程S13を行なっても良い。これにより、第1シリコン塊51Aの析出工程S11を行なう際におけるルツボ1内の沈殿物9の量が低減される。よって、第2シリコン塊51Bの析出工程S13を事前に行なわない場合よりも、第1シリコン塊51Aの析出時にSiC粒子11が取り込まれることを防止できる。
<第2シリコン塊51Bの分離工程>
上記<第1シリコン塊51Aの分離工程>と同じく、図2(C)に示すように第2シリコン塊51Bが析出された回転冷却体7をシリコン融液5から引き上げてから、図2(D)に示すように第2シリコン塊51Bを回転冷却体7の表面から分離させる。これにより、SiC粒子11(つまりシリコンにとっての不純物)をルツボ1の外へ取り出すことができる。このように回転冷却体7の回転数を高くするだけでSiC粒子11をルツボ1の外へ取り出すことができるため、SiC粒子11をルツボ1の外へ取り出すための設備を別途設ける必要がなく、よって、高純度シリコンを安価に製造することができる。
なお、第2シリコン塊51Bが析出された回転冷却体7をシリコン融液5から引き上げるタイミング、および第2シリコン塊51Bを回転冷却体7の表面から分離させる方法は、上記<第1シリコン塊51Aの分離工程>で示したとおりである。
以上をまとめると、図1に示す高純度シリコンの製造方法では、回転冷却体7を第1回転数で回転させることによりSiC粒子11を取り込むことなく第1シリコン塊51Aを回転冷却体7に析出させることができるとともに、回転冷却体7を第1回転数よりも高い第2回転数で回転させることによりルツボ1の底部に溜まった沈殿物9を第2シリコン塊51Bに取り込ませて回収することができる。このように回転冷却体7の回転数を制御するだけで特別な設備を必要とせず高純度なシリコンを効率的に回収することができるため、高純度シリコンを低コストで製造することができる。
なお、本発明に係る高純度シリコンの製造方法は、図1に示す高純度シリコンの製造方法に限定されない。たとえば、回転冷却体7の表面から分離された第1シリコン塊51Aおよび第2シリコン塊51Bをそれぞれ別々に回収することが好ましい。これにより、第1シリコン塊51Aのみを用いて例えば太陽電池用基板を作製することができるため、変換効率に優れた太陽電池の提供を実現できる。
また、第1シリコン塊51Aの析出工程S11と第1シリコン塊51Aの分離工程S12とを繰り返し行なっても良いし、第2シリコン塊51Bの析出工程S13と第2シリコン塊51Bの分離工程S14とを繰り返し行なっても良い。以下、図4を用いて具体的に示す。図4は、本発明の高純度シリコンの製造方法の別の一例を示すフロー図である。
図4に示す高純度シリコンの製造方法では、まず第1シリコン塊51Aの析出工程S11と第1シリコン塊51Aの分離工程S12とを繰り返し行う。これにより、第1シリコン塊51Aの回収量を稼ぐことができるので、高純度シリコンの量産が可能となる。
第1シリコン塊51Aの析出工程S11と第1シリコン塊51Aの分離工程S12とを繰り返し行うにつれて、ルツボ1内のシリコン融液5の分量が減少する。ルツボ1内のシリコン融液5の分量が基準量を下回れば、上記<第1シリコン塊51Aの析出工程>で示したように回転冷却体7をシリコン融液5の下部にまで挿入することとなるので沈殿物9の舞い上がりを招く。そのため、シリコン原料3およびシリコン融液5の少なくとも一方をルツボ1に補充する(工程S21)。これにより、ルツボ1内のシリコン融液5の分量が基準量以上となるので、沈殿物9の舞い上がりを防止でき、よって、高純度な第1シリコン塊51Aが得られる。
第1シリコン塊51Aの析出工程S11と第1シリコン塊51Aの分離工程S12とを繰り返し行なった後にシリコン原料3およびシリコン融液5の少なくとも一方をルツボ1に補充する工程S21を行なうという一連のサイクルを繰り返し行なうことが好ましい。これにより、第1シリコン塊51Aの回収量をさらに稼ぐことができる。しかし、この一連のサイクルを繰り返し行なうと、沈殿物9の高さが高くなる。ここで、沈殿物9の高さHは下記式1で表わされる
H=(A×C×M)/(S×ρ):式1
式1において、Aは、シリコン融液5中の炭素とシリコンとが化合したことにより炭素単体よりも質量が増えることを考慮するための定数である。Cは、シリコン原料3における炭素濃度である。Mは、ルツボ1に供給されたシリコン原料の累積投入量である。Sは、ルツボ1の底面積である。ρは、沈殿物9の嵩密度である。
シリコン原料3およびシリコン融液5の少なくとも一方をルツボ1に補充してもルツボ1内のシリコン融液5の分量が基準量以上とならないほど沈殿物9の高さHが高くなると、第2シリコン塊51Bの析出工程S13および第2シリコン塊51Bの分離工程S14を順に行なう。そして、第2シリコン塊51Bの析出工程S13および第2シリコン塊51Bの分離工程S14を繰り返し行なえば、第2シリコン塊51Bの回収量(つまりSiC粒子11の回収量)を稼ぐことができる。よって、その後に上記一連のサイクルを再び行なえば、第2シリコン塊51Bの析出工程S13および第2シリコン塊51Bの分離工程S14を頻繁に行なうことなく第1シリコン塊51Aを回収できるため、第1シリコン塊51Aの回収効率の向上に貢献する。
なお、図4に示す高純度シリコンの製造方法において第2シリコン塊51Bの析出工程S13を行なうタイミングは、ルツボ1に供給されるシリコン融液5の累積量Mがシリコン融液5における不純物濃度(炭素濃度Cであることが好ましい)より定めた値に達する前であっても良い。これにより、さらに高純度な第1シリコン塊51Aが得られやすいという効果が得られる。
このように図4に示す高純度シリコンの製造方法では、上記一連のサイクルを繰り返し行なった後に、第2シリコン塊51Bの析出工程S13および第2シリコン塊51Bの分離工程S14を順に行ない、その後に、上記一連のサイクルを繰り返し行なう。そのため、ルツボ1を交換することなく高純度な第1シリコン塊51Aの回収とSiC粒子11の回収とを繰り返し行なうことができる。よって、ルツボ1を交換する手間を省くことが出来るので、高純度シリコンの製造効率が向上する。また、ルツボ1を複数個用意する必要がないため、この点においても高純度シリコンの製造コストを低く抑えることができる。
なお、本発明の高純度シリコンの製造方法を行なう装置は図2(A)などに限定されない。処理温度などによって不活性ガス中で本発明の高純度シリコンの製造方法を行なうことが好ましい場合には、ルツボ1またはルツボ1を加熱するための加熱機構(図示せず)はチャンバ(図示せず)内に設けられていることが好ましい。この場合、回転冷却体7はゲートバルブ(図示せず)を介してルツボ1内に挿入可能である。
<高純度シリコン>
本発明の高純度シリコンは、たとえば図1に示す方法にしたがって得られた第1シリコン塊51Aであっても良く、上記何れかの方法にしたがって得られた第1シリコン塊51Aであっても良い。これにより、太陽電池用材料として利用可能な程度の純度(たとえば6N)を有するシリコンが得られる。
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
以下実施例1および比較例1〜4では、図2(A)〜(D)に記載の装置を用いて、炭素濃度が250ppmWのシリコンを原料に用いて、シリコン原料3を精製した。具体的には、ルツボ1としては、内径が540mmであり、シリコンの最大充填量が400kgである(深さが690mmである)黒鉛製ルツボ1を用いた。回転冷却体7としては、黒鉛製であり、内部に窒素を毎分6000L流すことにより冷却可能な回転冷却体7を用いた。また、シリコン融液5への回転冷却体7の浸漬深さを300mmとし、シリコン融液5の温度を(融点+10℃程度)とした。そして、得られるシリコン塊の重量がおおむね15kg程度となるように精製条件を調整した。
<実施例1>
実施例1では、回転冷却体を第1回転数で回転させることにより回転冷却体に第1シリコン塊51Aを析出させ、回転冷却体を第2回転数(第1回転数よりも高い回転数)で回転させることにより回転冷却体に第2シリコン塊51Bを析出させた。第1回転数を30rpmとし、ルツボ1内のシリコン融液5の基準量を220kgと定めた。すなわち、最大湯量400kgから180kgの第1シリコン塊51Aを引き上げるまで、第1シリコン塊51Aの析出工程と第1シリコン塊51Aの分離工程とを繰り返してそれぞれ12回行なった。その後、シリコン原料3をルツボ1に補充してルツボ1内のシリコン融液の量を400kgとしてから、第1シリコン塊51Aの析出工程と第1シリコン塊51Aの分離工程とを行なった。このように、{(シリコン原料3をルツボ1に供給または補充する工程)+12×(第1シリコン塊51Aの析出工程+第1シリコン塊51Aの分離工程)}を1サイクルとして、このサイクルを23回行なった。
その後、ルツボ1内のシリコン融液5の量が220kgとなれば、回転冷却体7の回転数を第2回転数(150rpm)に上げて第2シリコン塊51Bの析出工程と第2シリコン塊51Bの分離工程とを繰り返してそれぞれ15回行なった。ここで、第2シリコン塊51Bの析出工程および第2シリコン塊51Bの分離工程を1回行なうと、第2シリコン塊51Bの回収量が10kgであり、よって、合計150kgの第2シリコン塊51Bを回収した。ルツボ1内のシリコン融液5の量が70kgとなったので、330kgのシリコン原料3をルツボ1に補充してルツボ1内のシリコン融液5の量を400kgとし、第1シリコン塊51Aの析出工程と第1シリコン塊51Aの分離工程とを行なった。そして、{(シリコン原料3をルツボ1に補充する工程)+12×(第1シリコン塊51Aの析出工程+第1シリコン塊51Aの分離工程)}を1サイクルとして、このサイクルを15回行なった。高純度シリコン製造装置の稼働が1ヶ月経過したところで、その装置の稼動を停止した。最終的には、7300kgのシリコン原料3を使用して、約6800kgの第1シリコン塊51Aと150kgの第2シリコン塊51Bとを得た。
<比較例1>
第1回転数を150rpmとしたこと、および回転冷却体7を第2回転数で回転させることによりシリコン塊を析出させなかったことを除いては上記実施例1の方法にしたがって、シリコン原料3を精製した。上記実施例1と同様に高純度シリコン製造装置を約1ヶ月稼動し、{(シリコン原料3をルツボ1に供給または補充する工程)+12×(第1シリコン塊51Aの析出工程+第1シリコン塊51Aの分離工程)}を1サイクルとして、このサイクルを38回行なった。これにより、7100kgのシリコン原料3を使用して、約6800kgのシリコン塊を得た。
<比較例2>
第1回転数を80rpmとしたこと、および回転冷却体7を第2回転数で回転させることによりシリコン塊を析出させなかったことを除いては上記実施例1の方法にしたがって、シリコン原料3を精製した。上記実施例1と同様に高純度シリコン製造装置を約1ヶ月稼動し、{(シリコン原料3をルツボ1に供給または補充する工程)+12×(第1シリコン塊51Aの析出工程+第1シリコン塊51Aの分離工程)}を1サイクルとして、このサイクルを38回行なった。これにより、7100kgのシリコン原料3を使用して、約6800kgのシリコン塊を得た。
<比較例3>
第1回転数を50rpmとしたこと、および回転冷却体7を第2回転数で回転させることによりシリコン塊を析出させなかったことを除いては上記実施例1の方法にしたがって、シリコン原料3を精製した。上記実施例1と同様に高純度シリコン製造装置を約1ヶ月稼動し、{(シリコン原料3をルツボ1に供給または補充する工程)+12×(第1シリコン塊51Aの析出工程+第1シリコン塊51Aの分離工程)}を1サイクルとして、このサイクルを38回行なった。これにより、7100kgのシリコン原料3を使用して、約6800kgのシリコン塊を得た。
<比較例4>
第1回転数を30rpmとしたこと、および回転冷却体7を第2回転数で回転させることによりシリコン塊を析出させなかったことを除いては上記実施例1の方法にしたがって、シリコン原料3を精製した。上記実施例1と同様に高純度シリコン製造装置を約1ヶ月稼動し、{(シリコン原料3をルツボ1に供給または補充する工程)+12×(第1シリコン塊51Aの析出工程+第1シリコン塊51Aの分離工程)}を1サイクルとして、このサイクルを38回行なった。これにより、7100kgのシリコン原料3を使用して、約6800kgのシリコン塊を得た。
<結果>
実施例1および比較例1〜4によって得られたシリコン塊における炭素濃度を測定して選別した。炭素の混入形態によらずシリコン塊に含まれる炭素を全て検出するために、燃焼法にてシリコン塊における炭素濃度を測定した。そして、シリコン塊における炭素濃度が30ppmW以下の場合を良品とし、シリコン塊における炭素濃度が30ppmWを超える場合を不良品とした。その結果を表1に示す。
Figure 0005118268
表1に示すように、実施例1では、1〜23サイクルでの良品の割合が95.8%と非常に良好であった。なお、第2シリコン塊51Bの分離工程で回収された第2シリコン塊51Bのそれぞれの炭素濃度は9000ppmW以上であり、表1では「不良品」に計上している。また、24〜38サイクルにおいても良好な結果が得られ、実施例1での良品の割合は96.6%であった。
比較例1では、不良品の割合が高かった。また、1〜23サイクルでの不良品の割合に比べて、24〜38サイクルでの不良品の割合は非常に高かった。その結果、比較例1での良品の割合は58.8%に留まった。
比較例2〜3においても、比較例1と同じく、不良品の割合が高く、1〜23サイクルでの不良品の割合に比べて24〜38サイクルでの不良品の割合が非常に高かった。
比較例4では、1〜23サイクルでの良品の割合は99.3%であり、非常に良好であった。比較例4では、回転冷却体7の回転数が上記実施例1における第1回転数と同じであるため、回転冷却体7を高速で回転させたことに因る不良品の発生を防止できるからである。しかし、24〜38サイクルでは不良品の割合は高く、比較例4での良品の割合は86.4%に留まった。
以上をまとめると、実施例1では、高純度なシリコン塊(第1シリコン塊51A)を歩留り良く製造することができた。
また、比較例4では、38サイクル終了後の良品の割合を高くするためにはルツボの交換が必要である。1つのルツボから出来るだけ多くの第1シリコン塊を製造するという意味でも、実施例1での方法が好ましいと考えられる。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 ルツボ、3 シリコン原料、5 シリコン融液、7 回転冷却体、9 沈殿物、11 SiC粒子、51A 第1シリコン塊、51B 第2シリコン塊。

Claims (6)

  1. シリコン融液内で回転冷却体を20回転/分以上40回転/分以下の第1回転数で回転させることにより、前記回転冷却体の表面に第1シリコン塊を析出させる工程と、
    前記第1シリコン塊が表面に析出された回転冷却体を前記シリコン融液から引き上げて、前記シリコン融液から引き上げられた回転冷却体の表面から前記第1シリコン塊を分離する工程と、
    前記シリコン融液内で前記回転冷却体を40回転/分より高い第2回転数で回転させることにより、前記回転冷却体の表面に、炭素濃度および窒素濃度の少なくとも一方が前記第1シリコン塊よりも高い第2シリコン塊を析出させる工程と、
    前記第2シリコン塊が表面に析出された回転冷却体を前記シリコン融液から引き上げて、前記シリコン融液から引き上げられた回転冷却体の表面から前記第2シリコン塊を分離する工程とを備えた高純度シリコンの製造方法。
  2. 前記第1シリコン塊を分離する工程において前記回転冷却体の表面から分離された前記第1シリコン塊と前記第2シリコン塊を分離する工程において前記回転冷却体の表面から分離された前記第2シリコン塊とを分別して回収する工程をさらに備える請求項1に記載の高純度シリコンの製造方法。
  3. 前記第1シリコン塊を析出させる工程は、ルツボ内で行なわれ、前記ルツボ内の前記シリコン融液の分量が予め定められた基準量以上であるときに行なわれ、
    前記第2シリコン塊を析出させる工程は、前記ルツボ内で行なわれ、前記ルツボ内の前記シリコン融液の分量が前記基準量未満であるときに行なわれる請求項1または2に記載の高純度シリコンの製造方法。
  4. 前記第2シリコン塊を析出させる工程は、前記ルツボ内に供給されるシリコン融液の累積量が当該シリコン融液における不純物濃度より定められた値に達する前に行なわれる請求項1〜3のいずれかに記載の高純度シリコンの製造方法。
  5. 前記第1シリコン塊を析出させる工程と前記第1シリコン塊を分離する工程とを繰り返し行なう請求項1〜4のいずれかに記載の高純度シリコンの製造方法。
  6. 前記第2シリコン塊を析出させる工程と前記第2シリコン塊を分離する工程とを繰り返し行なう請求項1〜5のいずれかに記載の高純度シリコンの製造方法。
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