この特許文献1に開示されたロック機構では、減速度感知手段が引出方向へのロックギヤの回転を規制した状態でスプール及びトーションバーと共にロッキングベースが引出方向へ回転すると(すなわち、ロックギヤに対してロッキングベースが相対的に引出方向に回転すると)、これにパウルが連動してフレームの側壁の内歯に係合する。このため、パウルがフレームの側壁の内歯に係合するには、減速度感知手段が車両の急減速状態を感知してロックギヤの回転を規制した後にある程度スプールが引出方向に回転しなければならない。
本発明は、上記事実を考慮して、引出方向へのスプールの回転が不要か、又は、このようなスプールの回転が極めて小さくても、トーションバー等のエネルギー吸収手段の回転を規制できるウエビング巻取装置を得ることが目的である。
請求項1に記載の本発明に係るウエビング巻取装置は、長尺帯状のウエビングベルトの長手方向基端部が係止され、軸周り一方の巻取方向に回転することで前記ウエビングベルトを基端側から巻き取るスプールと、一端側が前記スプールに一体的に連結されて前記スプールと共に回転すると共に、他端側が保持された状態で一定の大きさ以上の前記スプールの回転力が一端側に伝えられることで変形しつつ前記スプールの回転を許容するエネルギー吸収手段と、車両が急減速状態になった場合又は車両前方の障害物に対する衝突を予知した場合に駆動する駆動手段と、前記駆動手段が駆動することによって前記エネルギー吸収手段の他端側が前記スプールからの回転力で前記巻取方向とは反対の引出方向へ回転することを規制する規制手段と、を備えている。
請求項1に記載の本発明に係るウエビング巻取装置では、スプールから引き出されたウエビングベルトが車両の乗員の身体に掛け回され、これにより、車両の乗員の身体に対するウエビングベルトの装着状態になる。この状態で、例えば、車両が急減速し、その慣性で乗員の身体が車両前方側へ移動しようとして乗員の身体がウエビングベルトを引っ張ると、スプールには巻取方向とは反対の引出方向への回転力が付与される。スプールにはエネルギー吸収手段の一端が連結されているので、スプールに引出方向への回転力が付与されることで、スプールと共にエネルギー吸収手段が回転しようとする。
ここで、車両が急減速になった場合、又は、車両前方の障害物に対して車両が衝突することが予知された場合には駆動手段が作動して、駆動手段から駆動力が出力される。このようにして駆動手段が駆動されると、引出方向へのエネルギー吸収手段の他端側の回転が規制手段によって規制される。これにより、この状態では、エネルギー吸収手段及びスプールは引出方向へ回転できない。
但し、乗員の身体が所定の大きさ以上の力でウエビングベルトを引っ張ることでスプールを介してエネルギー吸収手段の一端側に伝わる回転力が一定の大きさを超えると、規制手段により回転規制された他端側と回転力が伝わった一端側との間でエネルギー吸収手段に変形が生じる。この変形に応じてスプールの引出方向への回転、すなわち、スプールからのウエビングベルトの引き出しが許容され、ウエビングベルトが引き出された分だけ乗員の身体は車両前方側へ移動できる。
ここで、本発明に係るウエビング巻取装置では、駆動手段から駆動力が出力されると規制手段によって引出方向へのエネルギー吸収手段の回転が規制されるので、このようにエネルギー吸収手段の回転規制が開始されるに際して引出方向へのスプールの回転が要求されることはない。このため、エネルギー吸収手段の回転規制が開始されるまでの間のウエビングベルトによる拘束性能を維持できる。
請求項2に記載の本発明に係るウエビング巻取装置は、請求項1に記載の本発明において、
前記駆動手段の駆動力を受けて作動して前記エネルギー吸収手段の他端側に機械的に連結されて、前記エネルギー吸収手段の他端側が前記引出方向へ回転することを規制する駆動手段連動規制機構を含めて前記規制手段を構成している。
請求項2に記載の本発明に係るウエビング巻取装置では、車両が急減速になった場合、又は、車両前方の障害物に対して車両が衝突することが予知された場合に駆動手段が作動して駆動手段から駆動力が出力されると、駆動手段連動規制機構が駆動手段の駆動力を受けて作動する。このように、駆動手段連動規制機構が作動すると、駆動手段連動規制機構がエネルギー吸収手段の他端側に直接又は間接的で且つ機械的に連結される。このように、駆動手段連動規制機構がエネルギー吸収手段の他端側に機械的に連結されることによって、引出方向へのエネルギー吸収手段の他端側の回転が規制される。
請求項3に記載の本発明に係るウエビング巻取装置は、請求項2に記載の本発明において、正転方向への駆動力で前記駆動手段連動規制機構を前記エネルギー吸収手段の他端側へ機械的に連結すると共に、逆転方向への駆動力で前記駆動手段連動規制機構と前記エネルギー吸収手段との機械的な連結を解消するモータを前記駆動手段としている。
請求項3に記載の本発明に係るウエビング巻取装置では、駆動手段としてのモータが作動してモータから正転駆動力が出力されると、駆動手段連動規制機構がエネルギー吸収手段の他端側に直接又は且つ間接的で且つ機械的に連結される。したがって、この状態で一定の大きさを超えた引出方向への回転力がスプールに付与されると、駆動手段連動規制機構に連結された他端側と引出方向への回転力が付与された一端側との間でエネルギー吸収手段に変形が生じる。
これに対し、駆動手段連動規制機構とエネルギー吸収手段の他端側とが機械的に連結された状態で、例えば、結果的に車両急減速状態にならかった場合や車両の衝突が回避された場合にモータが逆転駆動されると、駆動手段連動規制機構とエネルギー吸収手段の他端側との機械的な連結が解消される。このため、上記のように結果的に車両急減速状態にならず、車両が通常の状態に戻れば、通常どおりにウエビングベルトの引き出し等が可能になる。
このように、本発明に係るウエビング巻取装置では、駆動手段連動規制機構とエネルギー吸収手段との機械的な連結とその解消がモータの正転、逆転で行なわれるので、制御が簡単である。
請求項4に記載の本発明に係るウエビング巻取装置は、請求項3に記載の本発明において、前記モータの前記正転方向への駆動力が前記駆動手段連動規制機構及び前記エネルギー吸収手段を介して前記スプールに伝わった際の前記駆動力の向きを前記巻取方向に設定している。
請求項4に記載の本発明に係るウエビング巻取装置では、駆動手段としてのモータが正転駆動すると、駆動手段連動規制機構とエネルギー吸収手段とが連結される。さらに、モータの正転駆動力は駆動手段連動規制機構及びエネルギー吸収手段を介してスプールに伝わり、スプールを巻取方向に回転させる。
これにより、乗員の身体に装着されたウエビングベルトの僅かな弛み、所謂「スラック」が解消される。このように、本発明に係るウエビング巻取装置では、エネルギー吸収手段が変形させられる前にウエビングベルトにより乗員の身体を充分に拘束しておくことができる。
請求項5に記載の本発明に係るウエビング巻取装置は、請求項3又は請求項4に記載の本発明において、前記エネルギー吸収手段の他端側に一体的に取り付けられた第1回転体と、前記第1回転体に対して同軸的に相対回転可能な第2回転体と、前記モータの駆動力を前記第2回転体に伝達すると共に、前記モータに対して前記第2回転体の回転を伝達不能な駆動力伝達手段と、前記正転方向への前記モータの駆動力が伝わって前記第2回転体が回転した際に前記第2回転体を前記第1回転体に機械的に連結する連結手段と、を含めて前記駆動手段連動規制機構を構成している。
請求項5に記載の本発明に係るウエビング巻取装置では、駆動手段としてのモータが正転駆動すると、この正転駆動力は駆動手段連動規制機構を構成する第2回転体に伝わり、第2回転体を正転方向に回転させる。このように第2回転体が正転方向に回転すると、第2回転体に設けられた連結手段が第2回転体や連結手段と共に駆動手段連動規制機構を構成する第1回転体に連結される。このようにして本発明に係るウエビング巻取装置では規制手段がエネルギー吸収手段の他端側に連結される。
一方で、連結手段が第2回転体を第1回転体に連結していない状態では、第2回転体は第1回転体に対して同軸的に相対回転可能であるので、エネルギー吸収手段に連結されている第1回転体はスプールやエネルギー吸収手段と共に自由に回転できる。したがって、連結手段が第2回転体を第1回転体に連結していない状態では、ウエビングベルトを引き出すことができる。
請求項6に記載の本発明に係るウエビング巻取装置は、請求項5に記載の本発明において、前記モータの駆動力で回転するウオームギヤと、前記ウオームギヤに噛み合って前記ウオームギヤの回転力が伝わることで回転し、前記連結手段による前記第1回転体と前記第2回転体との連結状態では前記ウオームギヤから伝わった回転力を前記第1回転体に伝えるウオームホイールと、を含めて前記駆動手段連動規制機構を構成している。
請求項6に記載の本発明に係るウエビング巻取装置では、モータの駆動力で駆動手段連動規制機構を構成するウオームギヤが回転すると、このウオームギヤの回転力がウオームギヤに噛み合うウオームホイールに伝えられてウオームホイールが回転する。さらに、第1回転体と第2回転体とが連結していれば、ウオームホイールの回転が第1回転体に伝わる。したがって、第1回転体と第2回転体との連結状態でスプールに引出方向への回転力が付与されると、この回転力はウオームホイールに伝わる。
しかしながら、基本的にウオームギヤの回転をウオームホイールに伝えてウオームホイールを回転させることはできるのに対し、ウオームホイールの回転をウオームギヤに伝えてウオームギヤを回転させることはできない。このため、上記のように、スプールに入力された回転力でウオームホイールが回転しようとしても、ウオームギヤがウオームホイールの回転を規制する。
これにより、スプールと共に回転しようとするエネルギー吸収手段の一端側に対し、エネルギー吸収手段の他端側はこの回転に抗するので、実質的にエネルギー吸収手段の他端側が保持された状態になる。
請求項7に記載の本発明に係るウエビング巻取装置は、請求項1に記載の本発明において、前記駆動手段の駆動状態で、前記車両急減速状態又は前記障害物に前記車両が衝突した際の慣性で前記乗員の身体が前記ウエビングベルトを引っ張った際に前記エネルギー吸収手段に付与される前記引出方向への回転力以上の大きさの前記巻取方向への回転力を前記駆動手段が付与する請求項1に記載のエビング巻取装置。
請求項7に記載の本発明に係るウエビング巻取装置では、車両が急減速になった場合、又は、車両前方の障害物に対して車両が衝突することが予知された場合に駆動手段が作動する。駆動手段が作動して駆動手段から駆動力が出力されると、この駆動力が巻取方向への回転力としてエネルギー吸収手段の他端側に付与される。
ここで、上記のようにしてエネルギー吸収手段の他端側に付与された巻取方向への回転力(すなわち、駆動手段から出力された駆動力)は、車両急減速状態又は障害物に車両が衝突した際の慣性で乗員の身体がウエビングベルトを引っ張った際にエネルギー吸収手段に付与される引出方向への回転力以上である。
このため、車両急減速状態又は障害物に車両が衝突した際に、乗員の身体がウエビングベルトを引っ張って、エネルギー吸収手段の一端側に引出方向への回転力を付与しても、この回転力に抗するだけの巻取方向への回転力がエネルギー吸収手段の一端側に付与されるので、エネルギー吸収手段は保持される。
請求項8に記載の本発明に係るウエビング巻取装置は、請求項1に記載の本発明において、前記エネルギー吸収手段の他端側に直接又は間接的で且つ機械的に連結されることで前記エネルギー吸収手段の他端側が前記引出方向へ回転することを規制する規制部材と、前記駆動手段の駆動開始のタイミングに応じた所定のタイミングで駆動を開始して、前記規制部材を前記エネルギー吸収手段の他端側に連結させる規制部材駆動手段と、を含めて規制手段を構成している。
請求項8に記載の本発明に係るウエビング巻取装置では、車両が急減速になった場合、又は、車両前方の障害物に対して車両が衝突することが予知された場合に駆動手段が作動する。駆動手段が作動して駆動手段から駆動力が出力されると、この駆動力が巻取方向への回転力としてエネルギー吸収手段の他端側に付与される。
一方、このように駆動手段が駆動開始されると、この駆動手段の駆動開始のタイミングに応じた所定のタイミングで規制部材駆動手段が駆動する。規制部材駆動手段が駆動すると、この駆動力で規制部材がエネルギー吸収手段の他端側に直接又は間接的で且つ機械的に連結される。これにより、エネルギー吸収手段の他端側においては引出方向への回転が規制される。
請求項9に記載の本発明に係るウエビング巻取装置は、請求項1から請求項7の何れか1項に記載の本発明において、車両の前方で走行する他の車両を含めて前記車両の前方に存在する障害物までの距離が所定値未満に達した場合に前記駆動手段を駆動させる制御手段を備えている。
請求項9に記載の本発明に係るウエビング巻取装置では、車両(自車両)の前方で走行している他の車両を含む車両(自車両)の前方に存在する障害物までの距離が所定値未満になると駆動手段が作動し、駆動手段の駆動力でエネルギー吸収手段と規制手段とが連結される。このため、障害物までの距離が更に縮まって車両が急減速した場合でも、既にエネルギー吸収手段の他端側は保持された状態であるので、この状態で乗員の身体が所定の大きさを超えた力でウエビングベルトを引っ張れば、速やかにエネルギー吸収手段に変形が生じる。
以上説明したように、本発明に係るウエビング巻取装置は、引出方向へのスプールの回転が不要か、又は、このようなスプールの回転が極めて小さくても、トーションバー等のエネルギー吸収手段の回転を規制できる。
<第1の実施の形態の構成>
図1には本発明の第1の実施の形態に係るウエビング巻取装置10の全体構成の概略が正面断面図によって示されている。
図1に示されるように、ウエビング巻取装置10はフレーム12を備えている。フレーム12は平板状の背板14を備えており、背板14がボルト等の図示しない締結手段によって、例えば、車両のセンターピラーの下端部近傍にて車体に固定され、これにより、本ウエビング巻取装置10が車体に取り付けられる。
背板14の幅方向両端からは、略車両前後方向に互いに対向した一対の脚板16、18が互いに平行に延出されている。これらの脚板16、18間には略円筒形状のスプール20が配置されている。
スプール20は軸方向が脚板16、18の対向方向とされており、自らの軸周りに回転可能とされている。また、スプール20には長尺帯状のウエビングベルト22の長手方向基端部が係止されている。
ウエビングベルト22はスプール20がその軸周り一方である巻取方向に回転することでスプール20の外周部に基端側から層状に巻き取られて収納される。さらに、ウエビングベルト22を先端側から引っ張れば、スプール20に巻き取られたウエビングベルト22が引き出され、これに伴い、巻取方向とは反対の引出方向にスプール20が回転する。
また、ウエビング巻取装置10はフォースリミッタ機構30を備えている。フォースリミッタ機構30はスプール20の内側に配置されるエネルギー吸収手段としてのトーションシャフト32を備えている。トーションシャフト32はシャフト本体34を備えている。シャフト本体34は軸方向がスプール20の軸方向に沿った棒状に形成されている。シャフト本体34の脚板16の側の端部には結合部36が形成されている。結合部36は外周部にロレット加工が施されたり、又は、外周形状が非円形に形成されたりしており、これにより、スプール20の中心軸線周りのスプール20に対するトーションシャフト32の相対回転が不能とされている。
これに対して、シャフト本体34の脚板18の側の端部には、結合部38が形成されている。結合部38は外周部にロレット加工が施されたり、又は、外周形状が非円形に形成されたりしている。この結合部38には、スプール20の中心軸線周りの結合部38に対する相対回転が不能な状態でスリーブ40が装着されている。スリーブ40はその少なくとも一部がスプール20の脚板18側の開口端からスプール20内に嵌挿されている。
スプール20に嵌挿された部分でのスリーブ40の外周形状はトーションシャフト32のシャフト本体34及びスプール20の双方に対して同軸な円形とされている。したがって、スリーブ40自体はスプール20の中心軸線周りのスプール20に対する相対回転は可能とされているものの、スリーブ40が結合されたトーションシャフト32はスプール20に対する相対回転が不能であるため、基本的にスリーブ40はスプール20に対して一体的に連結されていることになる。
脚板16の外側(脚板16の脚板18とは反対側)では、脚板16にスプリングケース42が取り付けられている。スプリングケース42には渦巻きばね44が収容されている。渦巻きばね44の渦巻き方向外側の端部はスプリングケース42に係止されている。これに対し、渦巻きばね44の渦巻き方向内側の端部はアダプタ46に係止されている。アダプタ46は脚板16を貫通してフレーム12の外側に突出したトーションシャフト32の一端部に同軸的で且つトーションシャフト32に対するトーションシャフト32の中心軸心周りの相対回転が不能な状態で連結されている。
渦巻きばね44は、トーションシャフト32が引出方向に回転することで巻き締まり、付勢力が増加する。したがって、ウエビングベルト22がスプール20から引き出されることでスプール20が引出方向に回転すると、渦巻きばね44がトーションシャフト32を介してスプール20を巻取方向に付勢する。乗員の身体に対する装着状態が解消されたウエビングベルト22は、この渦巻きばね44の付勢力でスプール20に巻き取られて格納される。
これに対して、脚板18の外側(脚板18の脚板16とは反対側)では、脚板18にロック機構48のハウジング50が取り付けられている。ロック機構48はロックベース52を備えている。ロックベース52はスプール20の側方でスプール20に対して同軸的に配置されている。また、ロックベース52は、トーションシャフト32の中心軸心周りにスリーブ40に対して相対回転不能な状態でスリーブ40に取り付けられている。このため、基本的にスリーブ40はスプール20と共に回転する。
ロックベース52の回転半径方向に沿ったロックベース52の側方には、ロックベース52と共にロック機構48を構成するロックパウル54が配置されている。ロックパウル54はスプール20の中心軸心の向きと同じ向きを軸方向とする軸周りに回動可能とされており、その軸周り一方に回動するとロックベース52の外周部にロックパウル54が接近する。このようにロックベース52の外周部に接近したロックパウル54は、ロックベース52の外周部に形成されたラチェット歯に噛み合うことができる。ロックベース52のラチェット歯にロックパウル54が噛み合った状態では、引出方向へのロックベース52の回転、ひいては、トーションシャフト32及びスプール20の引出方向への回転が規制される。
上記のハウジング50の内側には、ロック機構48を構成する各種部品が収納されており、車両が急減速状態になった場合やスプール20が急激に引出方向に回転した場合にロック機構48が作動し、引出方向へのスプール20の僅かな回転の後、ロックパウル54をロックベース52の外周部に接近させる。
一方、ハウジング50と脚板18との間ではクラッチハウジング60が脚板18に取り付けられている。クラッチハウジング60の内側には、駆動手段連動規制機構として規制手段を構成する駆動力伝達機構62を構成するクラッチ64が設けられている。クラッチ64は第2回転体として規制手段を構成するウオームホイール66を備えている。図2に示されるように、円板状の底壁68を備えている。底壁68の外周部からは、外周部に外歯が形成された周壁70が底壁68の軸方向一方へ立設され、ウオームホイール66は全体的に浅底の盆状又は軸方向寸法が短い有底筒形状に形成されている。
底壁68の中央には図示しない透孔が形成されており、スプール20に対して同軸的にスリーブ40から突出した軸部74が貫通している。これにより、ウオームホイール66は軸部74に回転自在に支持されている。
ウオームホイール66の内側には第1回転体として規制手段を構成するアダプタ80が配置されている。アダプタ80は軸部74に対する相対回転が不能な状態で軸部74に取り付けられている。アダプタ80の本体部分は軸部74に対して同軸的な円柱形状であるが、アダプタ80の本体部分の外周部からは複数の連結歯82が突出形成されている。これらの連結歯82はアダプタ80の中心軸心周りに一定角度毎に形成されている。これらの連結歯82の先端側は、アダプタ80の本体部分と繋がる部分からアダプタ80の回転半径方向外方に対して巻取方向側へ傾斜しており、このため、連結歯82は部分的にアダプタ80の回転半径方向に沿ってアダプタ80の本体部分の外周部と空隙を介して対向している。
アダプタ80の半径方向に沿ったアダプタ80の側方には連結手段として規制手段を構成する一対のパウル84が設けられている。これらのパウル84はアダプタ80を介して互いに対向するように配置されている。これらのパウル84の各々に対応して底壁68からは支持軸86が突出形成されている。これらの支持軸86は軸方向がスプール20の軸方向と同じ向きとされており、各支持軸86にパウル84が回転自在に支持されている。
このように各支持軸86に支持されたパウル84は、一定の速度以上でウオームホイール66が巻取方向(図2の矢印A1方向)に回転すると、支持軸86周りの一方(図2の矢印B1方向)へ回動し、先端側がアダプタ80の外周部に接近する。このようにしてアダプタ80の外周部に接近したパウル84の先端は図3に示されるように連結歯82に当接するが、この状態で更にウオームホイール66が巻取方向に回転すると、パウル84の先端が連結歯82上を滑り、図4に示されるように、連結歯82の先端側とアダプタ80の本体部分の外周部との間の空隙に入り込む。このようにしてアダプタ80にパウル84が連結された状態でウオームホイール66の巻取方向に回転すると、ウオームホイール66と共に巻取方向に回転するパウル84がアダプタ80を巻取方向に押圧してアダプタ80を巻取方向(図4の矢印C1方向)に回転させる。
また、上記の支持軸86には解除手段としての捩じりコイルばね88が設けられている。捩じりコイルばね88の一端は底壁68に係止されており、他端はパウル84に係止されている。パウル84の先端側がアダプタ80の外周部へ接近する方向へパウル84が回動すると、捩じりコイルばね88は巻き締められ、パウル84の先端側をアダプタ80の外周部から離間させる方向(図4の矢印B2方向)へパウル84を付勢する。
このように、パウル84は捩じりコイルばね88の付勢力でアダプタ80の外周部から離間させる方向へ回動することで、ウオームホイール66とアダプタ80との連結が解消されるが、上記のように、アダプタ80においてパウル84が係合する部分は、アダプタ80の回転半径方向に沿ってアダプタ80の本体部分と連結歯82の一部とが空隙を介して対向している。
このため、この空隙にパウル84の先端が入り込んだ状態では、捩じりコイルばね88の付勢力でパウル84が回動しようとしても連結歯82にパウル84の先端側が干渉されるので、パウル84が回動できない。すなわち、アダプタ80にパウル84が係合した状態では、アダプタ80に対してウオームホイール66が引出方向(図4の矢印A2方向)へ相対回転しない限りアダプタ80との連結を解消する向きへパウル84が回動することはできないようになっている。
一方、図1に示されるように、フレーム12の脚板16と脚板18との間で且つスプール20の下側には駆動手段としてのモータ100が設けられている。モータ100は出力軸102が平面視で略凹形状となるフレーム12の開口方向側、すなわち、背板14からの脚板16、18の延出方向側とされており、その先端側は上記のクラッチハウジング60とは別の図示しないギヤケースに入り込んでいる。
このギヤケースの内部には平歯で且つ外歯のギヤ104が収容されている。ギヤ104は出力軸102に対して同軸的且つ一体的に取り付けられている。ギヤケース内におけるギヤ104の回転半径方向側方にはギヤ104よりも十分に歯数が多い外歯で且つ平歯のギヤ106が配置されている。ギヤ106は回転軸108がギヤ104と同方向とされており、ギヤ104に噛み合っている。
また、ギヤ106にはギヤ106よりも歯数が十分に少ない平歯のギヤ110が同軸的且つ一体的に形成されている。さらに、ギヤケース内におけるギヤ110の回転半径方向側方にはギヤ110よりも十分に歯数が多い平歯のギヤ112が配置されている。ギヤ112は回転軸114がギヤ104〜112と同方向とされており、ギヤ110に噛み合っている。また、ギヤ112の回転軸114はギヤケースを突出して更にクラッチハウジング60内に入り込んでいる。
クラッチハウジング60内ではウオームギヤ116が回転軸114に対して同軸的且つ一体的に設けられている。ウオームギヤ116は上記のウオームホイール66に噛み合っており、モータ100の出力軸102の回転が、ギヤ104〜112を介してウオームギヤ116に伝わり、ウオームギヤ116が回転すると、ウオームギヤ116の回転がウオームホイール66に伝えられて、ウオームホイール66が回転する。
一方、モータ100はドライバ122を介してバッテリー124に電気的に接続されており、モータ100はドライバ122を介して順方向の電流が流されることで正転駆動し、出力軸102を正転させ、逆方向の電流が流されることで逆転駆動し、出力軸102を逆転させる。また、ドライバ122は制御手段としてのECU126に電気的に接続されており、ECU126からのモータ駆動制御信号に基づいてモータ100に駆動電流が流される。
ECU126は車両に設けられた検出手段としての前方監視装置128に接続されている。前方監視装置128からは監視信号が出力され、この監視信号がECU126に入力される。前方監視装置128は車両前方で走行する他の車両を含む車両前方の障害物までの距離が一定の距離以上の場合と一定の距離未満の場合とでレベルの異なる監視信号を出力する。
<第1の実施の形態の作用、効果>
(本ウエビング巻取装置10の作用、効果)
次に、本ウエビング巻取装置10の動作の説明を通して、本ウエビング巻取装置10の作用並びに効果について説明する。
本ウエビング巻取装置10では、スプール20から引き出されたウエビングベルト22が乗員の身体に装着された状態で、走行している車両の前方の障害物までの距離が一定値未満になったことを前方監視装置128が検出し、このときの検出信号がECU126に入力されると、ECU126から出力されたモータ駆動制御信号に基づきドライバ122がモータ100に正転駆動電流を流す。これにより、モータ100が駆動して出力軸102が正転回転すると、出力軸102の正転回転がギヤ104〜112を介してウオームギヤ116に伝わり、ウオームギヤ116を正転回転させる。
さらに、ウオームギヤ116の回転はウオームギヤ116に噛み合うウオームホイール66に伝わりウオームホイール66を巻取方向(図2の矢印A1方向)に回転させる。ウオームホイール66が巻取方向に回転すると、クラッチ64のパウル84が支持軸86周りに図2の矢印B1方向に回動し、これにより、パウル84の先端がアダプタ80の外周部に接近する。このようにしてパウル84の先端がアダプタ80の外周部に接近すると、図3に示されるように、連結歯82にパウル84の先端が接する。
この状態で更にウオームホイール66が更に巻取方向に回転すると、連結歯82上をパウル84の先端が滑り、図4に示されるように連結歯82の先端側とアダプタ80の本体部分の外周部との間の空隙に入り込む。これにより、ウオームホイール66がパウル84を介してアダプタ80に連結される。この状態では、ウオームホイール66の巻取方向に回転すると、ウオームホイール66と共に巻取方向に回転するパウル84がアダプタ80を巻取方向に押圧してアダプタ80を巻取方向(図2の矢印C1方向)に回転させる。
アダプタ80はスリーブ40の軸部74に相対回転が不能な状態で取り付けられ、スリーブ40はトーションシャフト32の他端の結合部38に相対回転不能な状態で取り付けられている。さらに、トーションシャフト32の一端の結合部36はスプール20に対して相対回転不能な状態でスプール20に連結されている。このため、上記のようにアダプタ80を巻取方向に回転させると、スプール20が巻取方向に回転し、これにより、乗員の身体に装着されているウエビングベルト22の弛み、所謂「スラック」が解消される。これにより、乗員の身体がウエビングベルト22により強固に拘束される。
この状態で、例えば、乗員のステアリング操作等により車両前方に障害物が存在しなくなったり、又は、乗員のブレーキ操作等により走行している車両前方の障害物までの距離が遠くなったりして、結果的に走行している車両の前方の障害物までの距離が一定値以上に切り替わったことを前方監視装置128が検出すると、このときにECU126から出力されたモータ駆動制御信号に基づきドライバ122がモータ100に逆転駆動電流を流す。
モータ100が逆転駆動すると、モータ100が正転駆動した場合とは反対に出力軸102、ギヤ104〜112、及びウオームギヤ116が回転し、これにより、ウオームホイール66が引出方向(図4の矢印A2方向)に回転する。ウオームホイール66と共にパウル84が引出方向(図4の矢印B2方向)に回転すると、連結歯82の先端側とアダプタ80の本体部分の外周部との間の空隙からパウル84の先端が抜け出る。これにより、連結歯82の先端側からの干渉が解消されたパウル84は捩じりコイルばね88の付勢力でアダプタ80の外周部から離間する向きに支持軸86周りに回動する。このようにパウル84が回動することでアダプタ80とパウル84との連結、ひいては、アダプタ80とウオームホイール66との連結が解消される。
一方、アダプタ80とウオームホイール66との連結状態で車両が急減速すると乗員の身体が車両前方側へ慣性移動しようとする。車両前方側へ移動しようとする乗員の身体は、乗員の身体に装着されているウエビングベルト22を急激に引っ張る。ウエビングベルト22が急激に引っ張られることでスプール20には引出方向への回転力が入力される。スプール20に入力された引出方向の回転力はトーションシャフト32、スリーブ40、アダプタ80、及びパウル84を介してウオームホイール66に入力される。
ここで、ウオームホイール66とウオームギヤ116とで構成される回転力の伝達機構は、ウオームギヤ116の回転力をウオームホイール66へ伝えてウオームホイール66を回転させることはできるが、ウオームホイール66の回転力をウオームギヤ116へ伝えてウオームギヤ116を回転させることはできない。このため、アダプタ80とウオームホイール66との連結状態で乗員の身体がウエビングベルト22を引っ張ってもスプール20を引出方向へ回転させることはできないので、スプール20からウエビングベルト22を引き出すことはできず、結果的に乗員の身体は車両前方側へ慣性移動することはできない。
このように、アダプタ80とウオームホイール66との連結状態では、トーションシャフト32の他端部(結合部38)が、スリーブ40、アダプタ80、パウル84、ウオームホイール66を介してウオームギヤ116に保持されて回転が規制されることになる。
この状態で、乗員の身体がウエビングベルト22を引っ張ることによりスプール20を介してトーションシャフト32の一端部(結合部36)に付与される引出方向への回転力が、トーションシャフト32のシャフト本体34の機械的強度を上回ると、トーションシャフト32の一端部(結合部36)が他端部(結合部38)に対して引出方向への回転するようにシャフト本体34に捩じり変形が生じる。このシャフト本体34に捩じり変形分だけスプール20は引出方向への回転が許容される。この引出方向へスプール20の回転分だけスプール20からウエビングベルト22が引き出され、スプール20から引き出されたウエビングベルト22の長さ分だけ乗員の身体は車両前方側へ移動できると共に、シャフト本体34にて生じた捩じり変形でエネルギーが吸収される。
ここで、上記のように、モータ100の駆動力でウオームホイール66が引出方向に回転させられてパウル84がアダプタ80の連結歯82に係合した状態では、スプール20が引出方向に回転しなくてもトーションシャフト32の他端部は保持されて回転が規制される。このため、トーションシャフト32のシャフト本体34に捩じり変形が生じるまでスプール20からウエビングベルト22が引き出されることはなく、ウエビングベルト22による乗員の身体の拘束性能を維持できる。
しかも、上記のように、ウオームギヤ116とウオームホイール66とによる回転力の伝達機構がモータ100の回転力をスプール20に伝えてスラックを解消すると共にトーションシャフト32の他端部の回転を規制するので構成が簡単であり、更には、モータ100を逆転駆動するだけでウオームホイール66とアダプタ80との連結を解消して、通常どおりにスプール20が回転できるようになるので制御が簡単である。
<第2の実施の形態の構成>
次に本発明のその他の実施の形態について説明する。なお、以下の各実施の形態を説明するにあたり、前記第1の実施の形態を含めて説明している実施の形態よりも前出の実施の形態と基本的に同一の部位に関しては、同一の符号を付与してその詳細な説明を省略する。
図5には本発明の第2の実施の形態に係るウエビング巻取装置170の構成が正面断面図により示されている。この図に示されるように、ウエビング巻取装置170はクラッチ64を備えておらず代わりにクラッチ172を備えている。クラッチ172はウオームホイール66を備えておらず代わりにクラッチギヤ174を備えている。クラッチギヤ174はウオームホイール66における周壁70に代わる周壁176を備えている。周壁176は周壁70とは異なり、外周部が外歯で且つ平歯のギヤとされている。この周壁176もまたウオームホイール66と同様に内側にアダプタ80の連結歯82に対してパウル84が接離する方向へ回動可能に設けられている(すなわち、クラッチギヤ174は周壁176が平歯のギヤであることを除き、基本的にクラッチハウジング60を同じ構成である)。
また、ウエビング巻取装置170は駆動力伝達機構62を備えておらず、代わりに駆動力伝達機構180を備えている。駆動力伝達機構180は出力軸102に一体的に設けられたギヤ104〜112を備えている。但し、前記第1の実施の形態におけるギヤ104〜ギヤ112は、その軸方向がスプール20の軸方向に対して略直交しした向きに沿っていたが、駆動力伝達機構180ではギヤ104〜112の軸方向がスプール20の軸方向と同じ向きとされている。
また、駆動力伝達機構180は回転軸114にウオームギヤ116が設けられておらず、代わりにギヤ112よりも歯数が少ない外歯で且つ平歯のギヤ182が回転軸114に対して同軸的且つ一体的に取り付けられている。このギヤ182は、クラッチギヤ174の周壁176に形成された外歯に噛み合っている。これにより、駆動力伝達機構180を介してモータ100の駆動力をクラッチギヤ174に伝えてクラッチギヤ174を回転させることができる。
さらに、ウエビング巻取装置170はECU126を備えておらず、代わりに制御手段としてのECU190を備えている。ECU190はドライバ122に接続されており、ECU190は出力したモータ駆動制御信号に基づきドライバ122がモータ100に駆動電流を流す点においてECU190はECU126と同じである。但し、本実施の形態におけるECU190は、モータ駆動制御信号に基づいてドライバ122がモータ100に流す電流の大きさが異なり、車両が急減速状態になって乗員が車両前方側へ慣性移動し、これにより、乗員の身体にウエビングベルト22が引っ張った際の引出方向へのスプール20の回転力に抗しうる駆動力をモータ100が出力するようにECU190はモータ駆動制御信号を出力する。
<第2の実施の形態の作用、効果>
次に、本ウエビング巻取装置170の動作の説明を通して、本ウエビング巻取装置170の作用並びに効果について説明する。
本ウエビング巻取装置170では、スプール20から引き出されたウエビングベルト22が乗員の身体に装着された状態で、走行している車両の前方の障害物までの距離が一定値未満になったことを前方監視装置128が検出し、このときの検出信号がECU190に入力されると、ECU190から出力されたモータ駆動制御信号に基づきドライバ122がモータ100に正転駆動電流を流す。
モータ100が駆動して出力軸102が正転回転すると、出力軸102の正転回転がギヤ104〜112及びギヤ182を介してクラッチギヤ174に伝わりクラッチギヤ174を正転回転させる。クラッチギヤ174が正転回転することで前記第1の実施の形態と同様にアダプタ80の連結歯82にパウル84の先端が噛み合い、クラッチギヤ174の正転回転をスリーブ40及びトーションシャフト32を介してスプール20を巻取方向に回転させる。これにより、上述した「スラック」が解消され乗員の身体がウエビングベルト22により強固に拘束される。
さらに、この状態で、乗員が急制動操作を行なったり、又は、障害物に車両が衝突したりすることで車両が急減速すると、乗員の身体は略車両前方側へ慣性移動しようとする。この乗員の慣性移動で乗員の身体がウエビングベルト22を急激に引っ張ると、ウエビングベルト22はフォースリミッタ機構30を急激に引出方向へ回転させる。ここで、ECU190からのモータ駆動制御信号に基づき正転駆動しているECU190から出力される正転駆動力は、このような車両前方側へ慣性移動する乗員の身体にウエビングベルト22が急激に引っ張った際の引出方向へのスプール20の回転力に抗しうる大きさとされている。
このため、この状態では乗員の身体がウエビングベルト22を引っ張ってもスプール20を引出方向へ回転させることはできないので、スプール20からウエビングベルト22を引き出すことはできず、結果的に乗員の身体は車両前方側へ慣性移動することはできない。このように、この状態ではトーションシャフト32の他端部(結合部38)が、モータ100の駆動力を受けたクラッチ172に保持されて回転が規制されることになる。
この状態で、乗員の身体がウエビングベルト22を引っ張ることによりスプール20を介してトーションシャフト32の一端部(結合部36)に付与される引出方向への回転力が、トーションシャフト32のシャフト本体34の機械的強度を上回ると、トーションシャフト32の一端部(結合部36)が他端部(結合部38)に対して引出方向への回転するようにシャフト本体34に捩じり変形が生じる。このシャフト本体34に捩じり変形分だけスプール20は引出方向への回転が許容される。この引出方向へスプール20の回転分だけスプール20からウエビングベルト22が引き出され、スプール20から引き出されたウエビングベルト22の長さ分だけ乗員の身体は車両前方側へ移動できると共に、シャフト本体34にて生じた捩じり変形でエネルギーが吸収される。
ここで、上記のように、モータ100の正転駆動力を受けたクラッチ172は、モータ100の駆動力に基づく回転力でトーションシャフト32の他端部が引出方向へ回転することを規制するので、トーションシャフト32のシャフト本体34に捩じり変形が生じるまでスプール20からウエビングベルト22が引き出されることはなく、ウエビングベルト22による乗員の身体の拘束性能を維持できる。
しかも、上記のように、駆動力伝達機構180がモータ100の回転力をスプール20に伝えてスラックを解消すると共にトーションシャフト32の他端部の回転を規制するので構成が簡単であり、更には、モータ100を逆転駆動するだけでウオームホイール66とアダプタ80との連結を解消して、通常どおりにスプール20が回転できるようになるので制御が簡単である。
<第3の実施の形態の構成>
次に本発明の第3の実施の形態について説明する。
図6には本実施の形態に係るウエビング巻取装置210の構成が正面断面図により示されている。この図に示されるように、ウエビング巻取装置210はクラッチ172を備えておらず代わりにクラッチ212を備えている。クラッチ212はクラッチギヤ174を備えておらず代わりにクラッチギヤ214を備えている。クラッチギヤ214は基本的にクラッチギヤ174と同じ構成であるが、脚板18とは反対側の面にラチェットプレート216が同軸的且つ一体的に設けられている点でクラッチギヤ174とは構成が異なる。
図7に示されるように、ラチェットプレート216はロックベース52と同様に外周部にラチェット歯218が形成された板状部材で、ラチェットプレート216の回転半径方向側方には規制部材として規制手段を構成するパウル222が設けられている。パウル222は軸方向がフォースリミッタ機構30の軸方向と同方向とされたシャフト224に回動自在に支持されている。シャフト224に支持された部分を境とするパウル222の一方の側は噛合部226とされており、パウル222がシャフト224周りの一方へ回動すると、その先端側がラチェットプレート216の外周部へ接近して、ラチェットプレート216のラチェット歯218に噛み合う。
噛合部226がラチェットプレート216のラチェット歯218に噛み合った状態では、引出方向へのラチェットプレート216の回転が規制されるが、ラチェットプレート216が巻取方向へ回転した場合にはラチェット歯218の斜面に噛合部226が押し上げられて更に引出方向側で隣り合うラチェット歯218に噛合部226が再び噛み合うので、巻取方向側へのラチェットプレート216の回転は規制されない。
これに対して、シャフト224に支持された部分を境とするパウル222の他方の側は連結部228とされている。この連結部228にはワイヤロッド230の先端が連結されている。ワイヤロッド230の基端側には、規制部材駆動手段として規制手段を構成するソレノイドユニット240のハウジング242が設けられている。ハウジング242の内部には通電されることで周囲に磁界を形成するソレノイドが収容されている。また、ハウジング242には金属により棒状に形成されたプランジャ244が設けられている。プランジャ244はその長手方向中間部よりも基端側がハウジング242に収容されており、ハウジング242内のソレノイドが通電されてソレノイドの周囲に磁界が形成されると、この磁力によりプランジャ244が吸引されてハウジング242の内部に引き込まれる構成になっている。
また、プランジャ244のハウジング242から突出した部分の中間部にはフランジ246が形成されている。フランジ246とハウジング242との間には圧縮コイルスプリング248が設けられており、プランジャ244はハウジング242から抜け出る方向へ圧縮コイルスプリング248により付勢されている。このプランジャ244の先端部に上記のワイヤロッド230の基端部が係止されている。
圧縮コイルスプリング248により付勢力でプランジャ244が長手方向中間部よりも先端側がハウジング242から抜け出た状態では、図7の仮想線(二点鎖線)で示されるように、パウル222の噛合部226はラチェットプレート216から離間している。この状態でハウジング242内のソレノイドが通電されて、ソレノイドの周囲に形成された磁界の磁力が圧縮コイルスプリング248の付勢力に抗してプランジャ244をハウジング242に引き込むと、ワイヤロッド230が引っ張られてパウル222がシャフト224周りの一方へ回動して噛合部226の先端側がラチェットプレート216のラチェット歯218に噛み合う。
一方、図6に示されるように、本ウエビング巻取装置210はドライバ262を備えている。ドライバ262は電気的にソレノイドユニット240とバッテリー124との間に介在している。また、ドライバ262はECU126に電気的に接続されており、モータ100を正転駆動させるためのモータ駆動制御信号がECU126から出力されるモータ駆動制御信号と略同じタイミングでECU126から出力されるソレノイド駆動制御信号がドライバ262に入力されると、ドライバ262はハウジング242内のソレノイドを通電状態にする。
<第3の実施の形態の作用、効果>
次に、本ウエビング巻取装置210の動作の説明を通して、本ウエビング巻取装置210の作用並びに効果について説明する。
本ウエビング巻取装置210では、スプール20から引き出されたウエビングベルト22が乗員の身体に装着された状態で、走行している車両の前方の障害物までの距離が一定値未満になったことを前方監視装置128が検出し、このときの検出信号がECU126に入力されると、ECU126から出力されたモータ駆動制御信号に基づきドライバ122がモータ100に正転駆動電流を流す。
モータ100が駆動して出力軸102が正転回転すると、出力軸102の正転回転がギヤ104〜112及びギヤ182を介してクラッチギヤ214に伝わりクラッチギヤ214を正転回転させる。クラッチギヤ214が正転回転することで前記第1の実施の形態と同様にアダプタ80の連結歯82にパウル84の先端が噛み合い、クラッチギヤ214の正転回転をスリーブ40及びトーションシャフト32を介してスプール20を巻取方向に回転させる。これにより、上述した「スラック」が解消され乗員の身体がウエビングベルト22により強固に拘束される。
一方で、上記のように、ECU126からモータ駆動制御信号から出力されると、この出力タイミングとほぼ同じタイミングでECU126からソレノイド駆動制御信号から出力される。ECU126から出力されたソレノイド駆動制御信号がドライバ262に入力されると、ドライバ262はハウジング242内のソレノイドを通電状態にする。
これにより、ソレノイドの周囲に磁界が形成されると、その磁力でプランジャ244が圧縮コイルスプリング248の付勢力に抗してハウジング242に引き込まれる。プランジャ244がハウジング242に引き込まれると、プランジャ244の先端に連結されたワイヤロッド230がパウル222の連結部228を引っ張り、シャフト224周りの一方へパウル222を回動させる。このようにパウル222が回動すると噛合部226の先端側がラチェットプレート216のラチェット歯218に噛み合う。
このように、噛合部226の先端側がラチェットプレート216のラチェット歯218に噛み合った状態では、ラチェットプレート216の巻取方向への回転は可能であるが引出方向への回転は規制される。ラチェットプレート216はクラッチギヤ214に対して同軸的且つ一体的に設けられているので、ラチェットプレート216の引出方向への回転が規制されることでクラッチギヤ214の引出方向への回転も規制される。
さらに、クラッチギヤ214が正転回転した状態では、クラッチギヤ214内のパウル84と及びアダプタ80の連結歯82とが噛み合うので、引出方向へのクラッチギヤ214の回転が規制されることで、トーションシャフト32、更にはスプール20の引出方向への回転が規制される。このため、噛合部226がラチェットプレート216のラチェット歯218に噛み合った状態では、車両急減速時の慣性で乗員がウエビングベルト22を引っ張っても、スプール20が引出方向へ回転できないので、スプール20からウエビングベルト22を引き出すことができず、結果的に乗員の身体は車両前方側へ慣性移動することはできない。
この状態で、乗員の身体がウエビングベルト22を引っ張ることによりスプール20を介してトーションシャフト32の一端部(結合部36)に付与される引出方向への回転力が、トーションシャフト32のシャフト本体34の機械的強度を上回ると、トーションシャフト32の一端部(結合部36)が他端部(結合部38)に対して引出方向への回転するようにシャフト本体34に捩じり変形が生じる。このシャフト本体34に捩じり変形分だけスプール20は引出方向への回転が許容される。この引出方向へスプール20の回転分だけスプール20からウエビングベルト22が引き出され、スプール20から引き出されたウエビングベルト22の長さ分だけ乗員の身体は車両前方側へ移動できると共に、シャフト本体34にて生じた捩じり変形でエネルギーが吸収される。
このように本実施の形態は、その構成こそ異なるものの、モータ100が正転駆動を開始した後には、トーションシャフト32の他端側における引出方向への回転を規制する点では前記第1の実施の形態と同じである。このため、トーションシャフト32のシャフト本体34に捩じり変形が生じるまでスプール20からウエビングベルト22が引き出されることはなく、ウエビングベルト22による乗員の身体の拘束性能を維持できるという前記第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
しかも、ハウジング242内のソレノイドに対する通電を解除するだけで、ラチェットプレート216の回転規制が解除されるので、制御も容易であり、構成も簡単である。
なお、本実施の形態では、モータ100の正転駆動開始のタイミングでソレノイドユニット240のソレノイドを通電状態にする構成であったが、ソレノイドユニット240のソレノイドを通電開始のタイミングは必ずしもモータ100の正転駆動開始のタイミングと同じでなくてもよい。
また、本実施の形態では、上記のように、ソレノイドユニット240のソレノイドを通電状態にすることで形成された磁力でパウル222のシャフト224をラチェットプレート216のラチェット歯218に噛合させる構成であったが、パウル222はモータ100に連動してシャフト224がラチェット歯218に噛み合うことができればよい。このため、シャフト224をラチェット歯218に噛み合わせる方向へパウル222を回動させるための構成はソレノイドユニット240でなくてもよく、モータ等の他の駆動手段を用いてもよいし、更に言えば、モータ100の正転駆動力を間接的に受けてパウル222を回動させる構成であってもよい。
また、本実施の形態では、ロックベース52やロックパウル54とは別にパウル222やラチェットプレート216を設けた構成であったが、ソレノイドユニット240を用いてロックベース52に噛み合う方向へロックパウル54を回動させる構成としても本実施の形態と同様の効果を得ることができる。