JP5116962B2 - フラットケーブル折り目加工方法 - Google Patents
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Description
ところでこのフラットケーブルの場合には、銅撚り線に絶縁被覆を施した断面丸型の絶縁電線と異なり、所望する方向に曲げ難い、という問題がある。
このフラットケーブル折り目加工装置(以下単に折り目加工装置という)は、フラットケーブルの所定位置に、フラットケーブルの幅方向に連続し、フラットケーブルの軸方向に対して、例えば、斜め方向に断面U字状の折り目を付ける装置である。具体的には、プレス機のプレス部に装着されている上側金型と下側金型とで、フラットケーブルの折り目加工領域を挟持して圧力をかけ、折り目を付けるものである。
まず一点目としては、プレスして形成した断面U字状の折り目部分の、特にその両側に形成されているスロープ部において、絶縁被覆の厚さが薄くなって、絶縁性が低下して、絶縁破壊を起こす場合がある。
また二点目としては、内側の平型導体が、やはりスロープ部近傍で薄くなってしまって、耐振動特性の劣化や耐折り曲げ回数の低下を引き起こす場合がある。
図1に示すようにこのプレス機1は、シリンダー2の先に位置決めされた上側金型3と、この上側金型3に対向して下方(プレス機のベース台5側)に配置されている下側金型4とを有している。この例では上側金型3が雄型の金型で、下側金型4の方が雌型の金型で構成されているが、雄型、雌型の各金型の配置は上下逆であってもよい。
尚、図1において、ベース台5の右側にあるフラットケーブル受け台7は、図1に向かって左右方向に移動可能なスライダー11により左右、すなわちフラットケーブル6の長手方向に移動可能になっている。その結果、フラットケーブル6の長手方向における断面U字状の折り目の形成位置が異なるものを加工する場合には、それに対応してフラットケーブル6の先端位置を固定する、前述したフラットケーブル受け台7の位置を調整できるようになっている。
具体的には、いまフラットケーブル6の厚さをTとしたとき、図2に示すように、両金型3、4を組み合わせた際形成される隙間20を以下のように形成する。尚、図2の右半分で説明するが、上側金型3、下側金型4は左右対称であるから、隙間20も左右対称である。よって図の右半分での説明は左半分についても同様に適用されるものとする。
そして断面U字状の隙間20の両端のスロープ部21では、その幅Wはフラットケーブル6の厚さTよりも大きな値になっている。すなわち、T<Wになっている。
なお本実施例では前述した垂直線22の最下点からみて60°〜90°の範囲をスロープ部と称する。
より具体的には、角度0°〜60°の間では、上側金型3の先端部の凸状の曲面を半径Rで、下側金型4の凹部の曲面を半径R+tで形成する。そして60°〜90°の間では、上側金型3の曲面を半径R−△rで形成し、下側金型4の曲面をR+tの半径で形成する。
実際にフラットケーブル6の厚さTが0.3mmであった場合、この実施例ではt=0.3mm、W=0.4mmにした。因みに、図2において上側金型3と下側金型4の曲面の半径R及び△rの値は、R=0.5mm、△r=0.1mmになっている。尚、後述の他の実施例でも、R及び△rは同じ値に固定して説明する。
まずプレス機1にフラットケーブル6を位置決め固定する。より具体的には、フラットケーブル6の先端側が、このフラットケーブル6の先端部両端の絶縁体に穿たれた位置決め穴と、プレス機1のベース台5に設けられているフラットケーブル受け台7に形成されているパイロット穴8、8とを一致させ、これに穴合わせ用のアダプタ9の位置合わせ突起10、10を差し込んでベース台5上に固定される。その上で下側金型4上にフラットケーブル6が載置され、フラットケーブル6の後端側が、フラットケーブル6の幅に相当する溝13がその周方向に形成されている下ドラム12と、この下ドラム12の前記溝13の幅より狭い幅の上ドラム14とで回転可能に挟持される。
しかる後、上側金型3を下降させることで、フラットケーブル6に折り目30(図6参照)が形成される。
しかしながら、前述のように本実施形態では、少なくともフラットケーブル6の一端が自由端に近い状態になっているため、プレス時フラットケーブル6の左端は、図1の右方向に移動可能である。しかも薄肉化の問題が生じ易いスロープ部においては、W>Tの関係となっており、フラットケーブル6と上側金型3や下側金型4との摩擦が抑制される。その結果、プレス時、フラットケーブル6が引っ張り応力を受けるものの、フラットケーブル6の後端部が上側金型3と下側金型4内に引き込まれることでフラットケーブル6のスロープ部21にかかる部分での引っ張り応力が緩和され、絶縁被覆や平型導体の薄肉化を最小限に抑えることができる。
なお、下記の第2〜第5の実施形態は金型の形状に特徴があり、その余の点は、上記第1の実施例と同様であるので、詳細な記載を省略する。
図2に示す実施例では、断面U字状の隙間20のスロープ部21の隙間20の幅WをT<Wにするために、上側金型3側の断面U字状の曲面の半径をR−△rで形成したが、図3に示すように、上側金型3側の曲面を半径Rで形成し、これに対向する下側金型4側の凹状曲面をR+t+△rの半径で形成して、t=0.3mm、W=0.4mmにしてもよい。
尚、角度0°〜60°の間では、図2のものと同様に、上側金型3の先端部の凸状の曲面を半径Rで、下側金型4の凹部の曲面を半径R+tで形成してある。
この実施例でも、角度0°〜60°の間では、上側金型3の先端部の凸状の曲面を半径Rで、下側金型4の凹部の曲面を半径R+tで形成する。そして60°〜90°の間では、上側金型3の曲面の半径をR−(△r/2)で形成し、下側金型4の曲面の半径をR+t+(△r/2)で形成する。そして結果的には、t=0.3mm、W=0.4mmにしている。
具体的には、上側金型3の60°〜90°に対応する部分は垂直線22に平行なストレート部23(長さLに相当する部分)とし、下側金型4側の凹状の曲面を半径R+tで形成した。その結果、スロープ部21においてはt=0.3mm、Wは0.4mm以上に形成されている。
尚、角度0°〜60°の間では、図2のものと同様に、上側金型3の先端部の凸状の曲面は半径Rで、下側金型4の凹部の曲面は半径R+tで形成されている。
本発明のフラットケーブル折り目加工方法は、これらいずれの場合についても適用できることはいうまでもない。
因みに、フラットケーブル6としては、平型導体の厚さ0.15mm、絶縁被覆(絶縁フィルム)の厚さは上下それぞれ0.09mm、そしてフラットケーブル6全体の厚さTが0.3mmのものを用い、本発明にあっては、t=0.3mm、W=0.4mmの上側金型3と下側金型4とを使用した。各評価に供したサンプル数は、n=5である。
これに対し、実施例1で製造したフラットケーブル6における平型導体の厚さはスロープ部において0.15mm、絶縁被覆の厚さは0.09mmとなっていた。
それから実施例2で製造したフラットケーブル6における平型導体の厚さはスロープ部において0.15mm、絶縁被覆の厚さは0.09mmとなっていた。
このようにいずれの実施例の場合でも、平型導体の厚さ、絶縁被覆の厚さは加工を施す前後で変化していない(すなわち比較例の場合よりも厚くなっている)ことが分かる。
各々のサンプルに最大5kVまでの電圧を印加して、絶縁被覆の破壊状況を評価した。その結果を図8に示す。図8に示すように、比較例のものでは、基準電圧、すなわちこの種のフラットケーブル6に求められている基準電圧1.0kV以上を下回る場合もあったが、本発明の実施例1、実施例2に対応する上側金型3、下側金型4でプレスしたものでは、いずれのサンプルも5.0kVの値の電圧を引火しても、絶縁被覆の破壊には至らなかった。
図9に示すように、1回のサイクルで20〜200Hzの周波数で振動の変化を与えながらフラットケーブルに振動を与え、抵抗値の変化で評価を行なった結果、本発明の実施例1、実施例2についてはサイクル数を1000回まで上げてみたが、いずれも基準値である0.2mΩ以下の値を示した。一方、比較例のものでは振動のサイクルが300回を越えるあたりからこの基準値を超えてしまった。
尚、前記評価では、本発明に使用する図2、図3に示す上側金型3、下側金型4の組み合わせについてのみ説明しているが、図4及び図5に示す各金型3、4の組み合わせによっても同様の評価が得られている。
以上のように、本発明のフラットケーブル折り目加工方法によれば、加工された断面U字状の折り目において、絶縁特性の低下を引き起こす絶縁被覆の薄肉化や、耐振動特性の劣化、あるいは耐折り曲げ回数の低下を引き起こす平型導体の薄肉化を確実に防止できるフラットケーブル折り目加工方法を提供することができる。
3 上側金型
4 下側金型
6 フラットケーブル
7 フラットケーブル受け台
8 パイロット穴
9 アダプタ
10 位置合わせ突起
12 下ドラム
13 溝
14 上ドラム
20 隙間
21 スロープ部
22 垂直線
Claims (2)
- 少なくとも1条の平型導体と該平型導体を被覆してなる絶縁被覆とを有するフラットケーブルを、その長手方向所定位置で上側金型と下側金型とで挟持して、前記フラットケーブルの幅方向にその断面両側にスロープ部が形成されてなる断面U字状の折り目を形成するフラットケーブル折り目加工方法であって、
前記上側金型と前記下側金型を組み合わせた際形成されるフラットケーブル加工領域となる断面U字状の隙間のうち、前記スロープ部に対応する部分に、前記フラットケーブルの厚みTよりも大きな幅Wを持たせると共に、
前記フラットケーブルを前記上側金型と前記下側金型とで挟持した際、前記フラットケーブル長手方向の少なくとも一端を、前記フラットケーブルの折り目の形成部分に引き込み可能にしておくことを特徴とするフラットケーブル折り目加工方法。 - 前記フラットケーブルの長手方向の少なくとも一端を、フラットケーブルの表裏から回転可能なローラーで挟持することで仮位置決めし、その上で前記フラットケーブルを前記上側金型と前記下側金型とで挟持して、前記フラットケーブルに断面U字状の折り目を形成することを特徴とする請求項1記載のフラットケーブル折り目加工方法。
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