つぎに、この発明を図面を参照して具体的に説明する。先ず、この発明で組み付けの対象とする伝動ベルトを構成するエレメントおよびリングの構成を、図1に基づいて説明する。図1において、伝動ベルトBは、例えば、ベルト式無段変速機の駆動側(入力軸)プーリと従動側(出力軸)プーリとに巻き掛けられて、それらのプーリの間で動力を伝達するベルトの例を示している。そして、この発明における多数のエレメントEは、例えば金属製の板片状の部材からなり、その幅方向(図1の(a)のx軸方向)における左右の側面1,2が、テーパ状の傾斜した面として形成された本体(基体)部3を有し、そのテーパ状に傾斜した両側面1,2が、ベルト式無段変速機の駆動側プーリあるいは従動側プーリであるプーリ4のベルト巻き掛け溝(V形溝)4aに摩擦接触してトルクを伝達するようになっている。
本体部3の幅方向における左右の両端部分に、本体部3の一部であって、エレメントEの上下方向(図1のy軸方向)での上方に延びた左右の柱部5,6がそれぞれ形成されている。したがって、本体部3の図1での上側のエッジ部分である上端面3aと、両柱部5,6の本体部3の幅方向における中央を向いた左右の内側面5a,6aとによって、エレメントEの上側すなわち伝動ベルトBの外周側に開口した凹部7が形成されている。
凹部7は、互いに密着して環状に配列されたエレメントEを環状に結束するための帯状の2列(もしくは2条)のリングRを、その内側に挿入して幅方向で2列に並列させた状態で収容するための部分であり、したがって上端面3aが、リングRの内周面を接触させて載せるサドル面3aとなっている。
リングRは、例えば、金属製で環状の薄い帯状体(単リング)を径方向に複数層に重ねたいわゆる積層リングである2列(もしくは2条)の分割リングRa,Rbによって形成されていて、この分割リングRa,Rbにおける各単リング同士の重ね合わせ状態もしくは積層状態は、各単リングの張力や各単リング同士の間の摩擦力等によって保持されている。
左右の柱部5,6の上端部分には、左右の先端部8a,9aがそれぞれ本体部3の幅方向における中央に向かって延びた左右の抜け止め部8,9が、それぞれ両柱部5,6と一体に形成されている。言い換えると、凹部7の開口端(凹部7における伝動ベルトBの外周側の端部)側の両内側面5a,6aに、凹部7の幅方向における中心側に向けた抜け止め部8,9がそれぞれ形成されている。そのため、凹部7の開口幅W1が、凹部7の開口端側で対向する両先端部8a,9aの間の距離W1によって決定されている。そして、凹部7の底部7a(すなわちサドル面(上端面)3a)側では、両先端部8a,9a間の距離(開口幅)W1よりも広い内幅W2となっている。
ここで、前述のように、リングRは、2列の分割リングRa,Rbによって構成されていて、そのため、各分割リングRa,Rbを円周方向の一部において部分的に厚さ方向(もしくは径方向)で互いに重なり合わせることによって、リングRとして、分割リングRaと分割リングRbとが厚さ方向に互いに重なり合った重ね合わせ状態と、分割リングRaと分割リングRbとが互いに重なり合うことなく幅方向に全て並列した並列状態とを同時に設定できるようになっている。
また、リングRは、並列状態でのリングRの全幅(すなわち、分割リングRaの幅と分割リングRbの幅とのほぼ合計)D1が、上記の開口幅W 1 よりも広くなり、かつ内幅W 2 よりも狭くなるように、各分割リングRa,Rbの幅寸法、および凹部7の各部の形状・寸法が設定されて形成されている。さらに、リングRを重ね合わせ状態にすることにより、リングRの全幅を一時的に開口幅W 1 よりも狭くすることができるように、各分割リングRa,Rbの幅寸法、および凹部7の各部の形状・寸法が設定されて形成されている。
したがって、リングRを重ね合わせ状態にすることにより、その重ね合わせ状態の部分を、凹部7の両先端部8a,9aの間、すなわち開口部7bを通過させて凹部7に嵌め込むことができる。そしてリングRの重ね合わせ状態の部分を開口部7bを通過させて凹部7に嵌め込んだ後に、エレメントEをリングRの並列状態の部分まで移動させること、もしくはリングRの凹部7が嵌め込まれた部分を並列状態に戻すことによって、凹部7内でリングRを両抜け止め部8,9の内周側の部分で係止し、凹部7からのリングRの離脱を防止すること、すなわちリングRを凹部7に嵌め込んで係合させることができる。
この伝動ベルトBを構成する多数のエレメントEは、環状に配列された状態でリングRによって結束され、その状態で駆動側および従動側のそれぞれのプーリ4に巻き掛けられる。したがってプーリ4に巻き掛けられた状態では、各エレメントEが、プーリ4の中心に対して扇状に拡がり、かつ互いに密着する必要があるため、各エレメントEの図1での下側の部分(環状に配列した状態での中心側の部分)が薄肉に形成されている。
すなわち、本体部3の前面3f(図1の(b)における左側の面)での、エレメントEの上下方向におけるサドル面3aの位置から下側の部分が削り落とされた状態で次第に薄肉化されている。したがって、各エレメントEが扇形に拡がって接触する状態、言い換えると、各エレメントEがプーリ4に巻き掛かり円弧状に湾曲して配列されて伝動ベルトBが湾曲するベルト湾曲状態で、その板厚(図1の(b)のz軸方向の寸法)の変化する境界部分で接触する。この境界部分のエッジが、いわゆるロッキングエッジ10となっている。
この種のエレメントEのサドル面3aは、多数のエレメントEを結束しているリングRが接触しているので、伝動ベルトBがトルクを伝達している状態では、その接触圧が大きくなるのに対して、エレメントEが直線状に配列されている状態からプーリ4に巻き掛かって扇状に開く場合には、リングRとサドル面3aとの間に摺動が生じ、それに伴って大きい摩擦力が生じる。このとき、エレメントEの上下方向における上記のサドル面3aとロッキングエッジ10との間の距離が長いと、リングRとサドル面3aとの間の摩擦力によるモーメントが大きくなり、リングRとサドル面3aとの間で一層摺動が生じやすくなる。その結果、伝動ベルトBの運転時における摩擦損失が増大して伝動ベルトBの伝動効率が低下してしまうおそれがある。
そこで、上記のように、エレメントEの上下方向におけるサドル面3aの位置と同じもしくはほぼ同じ位置にロッキングエッジ10を形成することによって、リングRとサドル面3aとの間の摩擦力によるモーメントを可及的に小さくすることができ、その結果、伝動ベルトBの運転時における摩擦損失を低減して伝動ベルトBの伝動効率を向上することができる。
エレメントEの本体部3の幅方向における中央部分には、各エレメントEがプーリ4に巻き掛からず直線状に配列されるベルト直線状態において各エレメントEの相対的な位置を決めるためのボス11とホール12とが形成されている。具体的には、本体部3の前面3fに、外側に凸となる円錐台形のボス11が形成されている。そして、このボス11とは反対側の後面3r(図1の(b)における右側の面)に、隣接するエレメントEにおけるボス11を緩く嵌合(遊嵌)させる有底円筒状のホール12が形成されている。言い換えると、エレメントEの前面3fに、ボス11が形成され、そのエレメントEに隣接する他のエレメントEの前面3fと対向するエレメントEの後面3rに、内側に凹となって前記の他のエレメントEのボス11と嵌り合うホール12が形成されている。
この発明に係る伝動ベルトBにおけるエレメントEは、上記のように、ロッキングエッジ10よりも内周側(図1では下側)にボス11およびホール12が形成され、かつこれらボス11およびホール12が形成されている部分の厚さが薄くなっており、そしてロッキングエッジ10よりも外周側(図1では上側)の部分が厚くなっている。したがって、リングRが直線状に引っ張られている状態でエレメントEが直線状に配列されている状態では、各エレメントEは板厚の厚い部分で相互に接触し、これに対して、リングRが湾曲した状態でそのリングRに即して各エレメントRが扇状に開いたように配列されている状態では、各エレメントEはそれぞれのロッキングエッジ10で互いに接触する。そのため、これらいずれの場合であってもボス11が隣接するエレメントEのホール12に嵌合した状態を維持するために、ボス11はロッキングエッジ10あるいはそれよりも外周側の板厚の厚い部分よりも突出するように形成されている。
このように、ベルト直線状態でこれらのボス11とホール12とが嵌合することによって、その状態におけるエレメントE同士の図1の(a)での左右方向および上下方向の相対位置を決めることができ、例えばベルト式無段変速機にこの伝動ベルトBを使用した場合、プーリに巻き掛かった伝動ベルトBの走行時におけるがたつきを防止して、ベルト式変速機を安定して運転することができる。
上記のように、この発明で組み付けの対象とする伝動ベルトBは、複数列(具体例では2列)のリングRと、そのリングRを収容する凹部7を備えた多数のエレメントEとから構成されている。そのため、それら2列のリングRとエレメントEとを組み付けて伝動ベルトBを構成する際には、前述したように、2列のリングRを部分的に重ね合わせ状態にする必要があり、また、2列のリングRの重ね合わせ状態の部分を凹部7に嵌め込んだエレメントEをリングRの周長方向に並列状態の部分まで移動させる必要がある。あるいは、重ね合わせ状態の重なりを解消させて2列のリングを並列状態に移行させる必要がある。
前述したように、2列のリングRの重ね合わせ状態の部分を凹部7に嵌め込んだエレメントEをリングRの周長方向に並列状態の部分まで移動させたり、あるいは、重ね合わせ状態の重なりを解消させて2列のリングを並列状態に移行させる際に、組み付けを行う作業者の個人差や熟練度の差異に起因して、重ね合わせ状態の設定や重ね合わせ状態から並列状態への移行時の作業状態などにばらつきが生じると、エレメントEと2列のリングRとの組み付けが容易でなくなってしまう可能性がある。
そこで、この発明に係る伝動ベルトの組み付け装置は、作業者の個人差や熟練度の違いによる組み付け状態のばらつきを抑制して、容易にかつ安定してエレメントEとリングRとを組み付けることができるように構成されている。具体的には、図2,図3に示すように、この発明に係る伝動ベルトの組み付け装置は、並列状態の2列のリングRを収容してその並列状態を保持する並列状態固定ブロック20と、周長方向の一部分が並列状態に保持されたリングRの他の部分を重ね合わせ状態で収容してその重ね合わせ状態を規定して保持する組み付けガイドブロック30とを備えている。
より具体的には、並列状態固定ブロック20は、図2の(a)あるいは図3の(a)に示すように、2つに分割されたブロック21とブロック22とから構成されている。これらブロック21およびブロック22は、例えば、金属製や樹脂製の所定の剛性を有する部材により形成されていて、ブロック21とブロック22とが互いに脱着可能な構成になっている。そして、それらブロック21とブロック22とを組み合わせて固定することにより、並列状態の2列のリングRを収容可能な空間23が形成されるようになっている。すなわち、並列状態の2列のリングRを収容した状態でのリングRの周長方向に垂直な方向(図2の(a)での紙面方向)の空間23の断面積が、並列状態の2列のリングRの周長方向に垂直な方向の断面積とほぼ同じもしくは若干大きくなるように、各ブロック21,22の形状・寸法が設定されている。
したがって、図2の(a)に示すように、ブロック21とブロック22との間に、並列状態の2列のリングRを挟み込んでブロック21とブロック22とを所定の方法により固定することにより、2列のリングRの移動が規制される、すなわち2列のリングRが並列状態のままで保持されるようになっている。
ブロック21とブロック22とを組み合わせて固定する方法は、設計的に任意の方法や機構を採用することができる。例えば、ねじや楔構造などを利用した締結構造(図示せず)、あるいは、ばねやゴムなどの弾性部材を利用したクランプ機構(図示せず)等を用いて、互いに組み合わせた状態のブロック21とブロック22との両端部(図2,図3での左右端部)を固定することができる。
このように、ブロック21とブロック22とを組み合わせて固定することにより、並列状態の2列のリングRを収容可能な空間23が形成されて、並列状態固定ブロック20が構成される。したがって、これらブロック21とブロック22とから構成される並列状態固定ブロック20は、2列のリングRを並列状態で収容してその並列状態を保持することが可能な機構であり、この発明における並列状態保持機構に相当している。
図2の(b)は、組み付けガイドブロック30の参考例を示す模式図であり、図3の(b)は、その参考例である組み付けガイドブロック30の構成を説明するための他の模式図である。組み付けガイドブロック30は、図2の(b)あるいは図3の(b)に示すように、2つに分割されたブロック31とブロック32とから構成されている。これらブロック31およびブロック32は、前述のブロック21,22と同様に、例えば、金属製や樹脂製の所定の剛性を有する部材により形成されていて、ブロック31とブロック32とが互いに脱着可能な構成になっている。そして、それらブロック31とブロック32とを組み合わせて固定することにより、重ね合わせ状態の2列のリングRを収容してその重ね合わせ状態を規定しかつ保持することができ、さらに、重ね合わせ状態の2列のリングRを収容した状態で周長方向に並列状態の部分へ向けて移動する際、もしくは2列のリングRの重ね合わせを解消して並列状態へ移行する際に、重ね合わせ状態で外周側に重ねられたリングR(図2の(b)の例では分割リングRa)と当接して重ね合わせ状態から並列状態への移行に伴う分割リングRa(もしくはRb)の変移を滑らかに案内することができる空間33が形成されるようになっている。
ブロック31とブロック32とを組み合わせて固定する方法は、前述のブロック21,22と同様に、設計的に任意の方法や機構を採用することができる。例えば、ねじや楔構造などを利用した締結構造(図示せず)、あるいは、ばねやゴムなどの弾性部材を利用したクランプ機構(図示せず)等を用いて、互いに組み合わせた状態のブロック31とブロック32との両端部(図2,図3での左右端部)を固定することができる。
上記のように、互いに組み合わされて固定されることによりこの空間33を形成するブロック31およびブロック32のうち、ブロック31のブロック32に対する対向面31aに、重ね合わせ状態の2列のリングRを収容してその重ね合わせ状態を規定するための重ね合わせ規定部31bと、重ね合わせ状態で外周側に重ねられた分割リングRa(もしくはRb)の外周部と当接し、その分割リングRa(もしくはRb)が重ね合わせ状態を解消する方向(図2の(b)に示す例では左側)に変移する際にガイドとなるガイド面31cとが形成されている。
重ね合わせ規定部31bは、ブロック31の対向面31aを所望する重ね合わせ状態における2列のリングRの外周側の外形にほぼ倣ってくり抜いた形状に形成されている。したがって、この重ね合わせ規定部31bに重ね合わせ状態の2列のリングRを当接させて収容させることにより、2列のリングRの重ね合わせ状態すなわち分割リングRaと分割リングRbとの重ね合わせ量あるいは重ね合わせ位置が、所望する規定した状態に設定される。
また、ガイド面31cは、この図2の(b)あるいは図3の(b)に示す例では、ブロック31の対向面31aに対して内部に凹となる湾曲面により形成されている。図4は、この発明に係る伝動ベルトの組み付け装置による組み付け状態、特にリングと参考例である組み付けガイドブロック30との当接状態を説明するための模式図である。ガイド面31cは、図4の(b)に示すように、重ね合わせ状態で外周側に重ねられた分割リングRa(もしくはRb)の外周面と側面とのコーナ部Rcと当接するようになっていて、重ね合わせ状態での分割リングRa(もしくはRb)がその重ね合わせ状態を解消する方向に変移する場合に、その変移を妨げることなく滑らかにガイドすることができる形状となっている。なお、ガイド面31cは、上記のように分割リングRa(もしくはRb)の変移を妨げることなく滑らかにガイドすることができる形状であれば、内側に凹の湾曲面に限らず、例えば傾斜した平面や、複数の平面と曲面とをなだらかに接続させたような形状であってもよい。
さらに、ガイド面31cは、組み付けガイドブロック30に重ね合わせ状態の2列のリングRを収容した状態で、その重ね合わせ状態を解消して並列状態へ移行させる際に、外周側の分割リングRa(もしくはRb)とエレメントEとが接触しないように、具体的には、外周側の分割リングRa(もしくはRb)とエレメントEの抜け止め部8(もしくは9)とを接触させないようにして、エレメントEを保護する保護部材として機能するように構成されている。
すなわち、図2の(b)および図4に示すように、組み付けガイドブロック30に対して所定の位置にエレメントEを配置した状態で、エレメントEの抜け止め部8(もしくは9)の外形形状よりも、組み付けガイドブロック30の空間33のガイド面31c部分の外形形状の方が大きくなるように、ガイド面31cの形状・寸法が設定されている。言い換えると、組み付けガイドブロック30に対して所定の位置にエレメントEを配置し、図2の(b)および図4に示すように、エレメントEに組み付けガイドブロック30を覆い被せた場合に、組み付けガイドブロック30の空間33のガイド面31c部分の外形から、エレメントEの抜け止め部8(もしくは9)の外形が露出しないように、ガイド面31cの形状・寸法が設定されている。
なお、組み付けガイドブロック30の材料、少なくとも上記のガイド面31cが形成されるブロック31の材料を、リングRの材料よりも硬度や強度が低いものにすること、例えばリングRが鋼製である場合、組み付けガイドブロック30もしくはブロック31を、樹脂やアルミニウム合金などの鋼よりも硬度・強度が低い材料を採用して形成することにより、組み付けガイドブロック30とリングRとが当接することによるリングRの損傷を回避して、伝動ベルトBの耐久性の低下を防止することができる。
一方、ブロック32のブロック31に対する対向面32aに、並列状態の2列のリングRを収容可能な並列リング収容部32bが形成されている。この並列リング収容部32bは、ブロック32の対向面32aを並列状態における2列のリングRの内周側の外形にほぼ倣ってくり抜いた形状に形成されている。言い換えると、ブロック32の対向面32aの並列状態における2列のリングRの幅以上の長さ部分を、リングRの厚さと同等もしくは若干大きい深さでくり抜いた形状に形成されている。
そして、図2の(b)あるいは図3の(b)に示す例では左側のエレメントEの内側面5aに対応する位置に、重ね合わせ状態で外周側に重ねられた分割リングRa(もしくはRb)がその重ね合わせ状態を解消する方向に変移し、並列状態に移行した際に、外周側に位置していた分割リングRa(もしくはRb)の側面(一方の分割リングRb(もしくはRa)と並列状態で対向しない側の側面)と当接する突き合わせ面32cが形成されている。
この突き合わせ面32cは、組み付けガイドブロック30に重ね合わせ状態の2列のリングRを収容した状態で、その重ね合わせ状態を解消して並列状態へ移行させる際に、外周側の分割リングRa(もしくはRb)とエレメントEとが接触しないように、具体的には、外周側の分割リングRa(もしくはRb)とエレメントEの内側面5a(もしくは6a)とが接触しないようにして、エレメントEを保護する保護部材として機能するように構成されている。
すなわち、図2の(b)あるいは図4に示すように、組み付けガイドブロック30に対して所定の位置にエレメントEを配置した状態で、エレメントEの内側面5a(もしくは6a)の外形形状よりも、組み付けガイドブロック30の空間33の突き合わせ面32c部分の外形形状の方が大きくなるように、突き合わせ面32cの形状・寸法が設定されている。言い換えると、組み付けガイドブロック30に対して所定の位置にエレメントEを配置し、図2の(b)あるいは図4に示すように、エレメントEに組み付けガイドブロック30を覆い被せた場合に、組み付けガイドブロック30の空間33の突き合わせ面32c部分の外形から、エレメントEの内側面5a(もしくは6a)の外形が露出しないように、ガイド面31cの形状・寸法が設定されている。
このように、ブロック31およびブロック32に、それぞれ、重ね合わせ規定部31b、ガイド面31c、および、並列リング収容部32b、突き合わせ面32cが形成されている。そのため、それらブロック31とブロック32とを組み合わせて固定することによって、重ね合わせ状態の2列のリングRを収容してその重ね合わせ状態を規定しかつ保持するとともに、重ね合わせ状態の2列のリングRを収容した状態で周長方向に並列状態の部分へ向けて移動する際、もしくは2列のリングRの重ね合わせを解消して並列状態へ移行する際に、重ね合わせ状態で外周側に重ねられたリングR(図2の(b)の例では分割リングRa)と当接して重ね合わせ状態から並列状態への移行に伴う分割リングRa(もしくはRb)の変移を滑らかに案内することが可能な空間33が形成されて、組み付けガイドブロック30が構成される。したがって、これらブロック31とブロック32とから構成される組み付けガイドブロック30が、この発明における組み付けガイド機構に相当している。
なお、前述のブロック31と同様に、少なくとも上記の突き合わせ面32cが形成されるブロック32の材料を、リングRの材料よりも硬度や強度が低いものにすること、例えばリングRが鋼製である場合、ブロック32を、樹脂やアルミニウム合金などの鋼よりも硬度・強度が低い材料を採用して形成することにより、組み付けガイドブロック30とリングRとが当接することによるリングRの損傷を回避して、伝動ベルトBの耐久性の低下を防止することができる。
図5は、この発明に係る伝動ベルトの組み付け装置の一例およびその組み付け装置による組み付け状態を説明するための模式図である。上記の図2ないし図4で示した組み付けガイドブロック30が、並列状態の2列のリングRを収容可能な構成であるのに対して、この図5に示す組み付けガイドブロック30は、完全な並列状態での2列のリングの収容を許容しない構成となっている。
すなわち、図5において、ブロック32のブロック31に対する対向面32aに、並列状態の2列のリングRを収容可能な重ね合わせリング収容部32dが形成されている。この重ね合わせリング収容部32dは、空間33内での2列のリングRの並列状態を許容するように構成された前述の並列リング収容部32bに対して、2列のリングRの完全な並列状態を許容しないようにリングRを収容する部分の容積を小さくして、ブロック32の対向面32aをくり抜いた形状に形成されている。言い換えると、ブロック32の対向面32aの並列状態における2列のリングRの幅以下の長さ部分を、リングRの厚さと同等もしくは若干大きい深さでくり抜いた形状に形成されている。
したがって、この図5に示す例において、重ね合わせ状態で外周側に重ねられた分割リングRa(もしくはRb)がその重ね合わせ状態を解消する方向に変移し、並列状態側に移行した際に、外周側に位置していた分割リングRa(もしくはRb)の側面(一方の分割リングRb(もしくはRa)と並列状態で対向しない側の側面)と当接する突き合わせ面32eは、前述の突き合わせ面32cと同様に、組み付けガイドブロック30に重ね合わせ状態の2列のリングRを収容した状態で、その重ね合わせ状態を解消して並列状態側に移行させる際に、外周側の分割リングRa(もしくはRb)とエレメントEとが接触しないように、具体的には、外周側の分割リングRa(もしくはRb)とエレメントEの内側面5a(もしくは6a)とが接触しないようにして、エレメントEを保護する保護部材として機能するように構成されている。
なお、この図5に示す例におけるブロック32の突き合わせ面32e以外の部分の構成、およびブロック31の構成は、前述の図2ないし図4で示した構成と同一である。また、前述のブロック31と同様に、少なくとも上記の突き合わせ面32eが形成されるブロック32の材料を、リングRの材料よりも硬度や強度が低いものにすること、例えばリングRが鋼製である場合、ブロック32を、樹脂やアルミニウム合金などの鋼よりも硬度・強度が低い材料を採用して形成することにより、組み付けガイドブロック30とリングRとが当接することによるリングRの損傷を回避して、伝動ベルトBの耐久性の低下を防止することができる。
このように、この図5に示す例においては、ブロック31およびブロック32に、それぞれ、重ね合わせ規定部31b、ガイド面31c、および、重ね合わせリング収容部32b、突き合わせ面32eが形成されている。そのため、それらブロック31とブロック32とを組み合わせて固定することによって、重ね合わせ状態の2列のリングRを収容してその重ね合わせ状態を規定しかつ保持するとともに、重ね合わせ状態の2列のリングRを収容した状態で周長方向に並列状態の部分へ向けて移動する際、もしくは2列のリングRの重ね合わせを解消して並列状態へ移行する際に、重ね合わせ状態で外周側に重ねられたリングR(図2の(b)の例では分割リングRa)と当接して重ね合わせ状態から並列状態への移行に伴う分割リングRa(もしくはRb)の変移を滑らかに案内することが可能な空間33が形成されて、組み付けガイドブロック30が構成される。
そして、この図5に示す例の構成では、重ね合わせ状態の2列のリングを並列状態へ移行した場合、重ね合わせ状態の重なりが徐々に、滑らかに解除されるが、最終的に完全な並列状態にまでは移行せず、その重なりが僅かに残っている状態で規定される。そのため、その後再び2列のリングRを重ね合わせ状態に設定しようとする際に、完全な並列状態から2列のリングRを重ね合わせ始める場合と比較して、容易に2列のリングRを重ね合わせ状態に移行して設定することができる。
つぎに、この発明に係る伝動ベルトの組み付け装置を用いた組み付け方法を、図面に基づいて説明する。先ず、2列のリングRがその幅方向に並列させられる。すなわち分割リングRaと分割リングRbとが、互いに重なり合うことなく幅方向に2列に並列した並列状態にされる。そして、図6に示すように、並列状態のリングRの周長方向の任意の部分(例えば図6の範囲aで示す部分)に、並列状態固定ブロック20が装着される。具体的には、図2の(a)に示す状態のように、並列状態固定ブロック20のブロック21とブロック22との間の空間23内に、並列状態の2列のリングRの周長方向の一部分が挟み込まれ、その状態でブロック21とブロック22とが組み付けられて固定される。すなわち、並列状態の2列のリングRの周長方向の一部分を並列状態固定ブロック20の空間23内に収容し、2列のリングRを並列状態で保持する、この発明における並列状態保持工程が実行される。
次いで、周長方向の一部分が並列状態にされた2列のリングRの他の部分が、分割リングRaと分割リングRbとをそれらの厚さ方向に互いに重ね合わせた重ね合わせ状態にされる。そして、その2列のリングRの重ね合わせ状態にされた部分(例えば図6の範囲bで示す部分)に、組み付けガイドブロック30が装着される。具体的には、図2の(b)あるいは図4の(a)あるいは図5の(a)に示す状態のように、組み付けガイドブロック30のブロック31とブロック32との間の空間33内に、重ね合わせ状態の2列のリングRが挟み込まれ、ブロック31に形成されている重ね合わせ規定部31bに重ね合わせ状態の2列のリングRの外周部が嵌め込まれ、その状態でブロック31とブロック32とが組み付けられて固定される。すなわち、周長方向の一部分(図6の範囲aの部分)が並列状態にされた2列のリングRの他の部分(図6の範囲bの部分)を重ね合わせ状態にするとともに、2列のリングRの重ね合わせ状態にした部分を組み付けガイドブロック30の空間33内に収容し、その重ね合わせ状態を規定しかつ保持する、この発明における重ね合わせ規定工程が実行される。
前述したように、組み付けガイドブロック30の空間33の内壁部には、2列のリングRの重ね合わせ状態を規定するための重ね合わせ規定部31bが形成されている。したがって、上記のように、組み付けガイドブロック30の空間33内に重ね合わせ状態の2列のリングRを収容する際に、重ね合わせ規定部31bの形状に対応させ、2列のリングRの外周面を当接させて2列のリングRを空間33内に収容させることにより、2列のリングRの重ね合わせ状態を所望する規定した状態にすることができる。
2列のリングRの周長方向の一部分が並列状態に保持されるとともに、他の部分が規定された重ね合わせ状態に保持されると、その2列のリングRの重ね合わせ状態の部分、すなわち重ね合わせ状態の組み付けガイドブロック30が装着されている部分に隣接して、エレメントEが嵌め込まれる。言い換えると、2列のリングRの重ね合わせ状態で組み付けガイドブロック30が装着されている部分が、エレメントEの凹部7内に、そのエレメントEと組み付けガイドブロック30とが隣接するようにして嵌め込まれる。すなわち、規定された重ね合わせ状態の2列のリングRをエレメントEの凹部7内に収容させる、この発明におけるエレメント嵌め込み工程が実行される。
なお、この工程において重ね合わせ状態の2列のリングRに嵌め込まれるエレメントEは、1枚のエレメントEであってもよく、あるいは姿勢を揃えて配列させた状態の複数枚のエレメントEであってもよい。
組み付けガイドブロック30により規定された2列のリングRの重ね合わせ状態の部分に対して1枚もしくは複数枚のエレメントEが嵌め込まれると、その重ね合わせ状態の2列のリングRが組み付けガイドブロック30の空間33内とエレメントEの凹部7内に収容された状態のまま、それら組み付けガイドブロック30とエレメントEとが、2列のリングRの周長方向にその並列状態の部分へ向けて移動させられる。すなわち、凹部7内に規定された重ね合わせ状態の2列のリングRを収容させたエレメントEと共に、その2列のリングRを空間33に収容した組み付けガイドブロック30を、リングRの周長方向にその並列状態の部分へ向けて移動する、この発明におけるエレメント組み付け工程が実行される。
そして、上記のエレメント嵌め込み工程とエレメント組み付け工程とが繰り返し実行されて、所望する組み付け枚数すなわち規定された全数のエレメントEのうち最後の1枚もしくは複数枚のエレメントEの凹部7内に重ね合わせ状態の2列のリングRが収容されると、2列のリングRの重ね合わせ状態にされていた部分が並列状態に移行される。すなわち、全てのエレメントEが嵌め込まれた2列のリングRの重ね合わせ状態を解消して並列状態へ移行させる、この発明における重ね合わせ解消工程が実行される。
前述したように、組み付けガイドブロック30の空間33の内壁面部には、重ね合わせ状態で外周側に重ねられた分割リングRa(もしくはRb)の外周部と当接し、その分割リングRa(もしくはRb)が重ね合わせ状態を解消する方向に変移する際にガイドとなるガイド面31cが形成されている。そのため、上記のように、組み付けガイドブロック30の空間33内に重ね合わせ状態の2列のリングRを収容し、その重ね合わせ状態で外周側の分割リングRa(もしくはRb)が重ね合わせ状態を解消する方向に変移する際に、その外周側の分割リングRa(もしくはRb)の変移を滑らかに案内することができる。
例えば、図6に示すように、2列のリングが組み付けガイドブロック30により規定された重ね合わせ状態の周辺部分すなわち範囲bの部分から、範囲cの部分を経由させて、2列のリングが並列状態固定ブロック20により保持された並列状態の周辺部分すなわち範囲aの部分へ移動させる場合、範囲cの部分では2列のリングRが、範囲bでの規定された重ね合わせ状態から範囲aでの完全な並列状態に徐々に変移している。したがって、組み付けガイドブロック30とエレメントEとが範囲bの部分から範囲cの部分を経由して範囲aの部分へ移動する際には、組み付けガイドブロック30の空間33内およびエレメントEの凹部7内で、重ね合わせ状態で外周側の分割リングRa(もしくはRb)が重ね合わせ状態を解消する方向に相対移動することになる。
したがって、上記のように重ね合わせ状態で外周側の分割リングRa(もしくはRb)が重ね合わせ状態を解消する方向に相対移動する際に、その外周側の分割リングRa(もしくはRb)のコーナ部Rcがガイド面31cに当接しながら相対移動すなわち変移するため、その外周側の分割リングRa(もしくはRb)がガイド面31cの形状に倣って滑らかに変移することになる。
このようにして、最後の1枚もしくは複数枚のエレメントEと2列のリングRとが組み付けられ、2列のリングRの全体が並列状態に戻されると、2列のリングRは、全てのエレメントEの凹部7内で左右の抜け止め部8,9の内周側の部分で係止され、凹部7からの離脱が防止されて、全てのエレメントEとリングRとの組み付けが維持された状態になる。すなわち、伝動ベルトBの組み付けが完了する。
以上のように、この発明に係る伝動ベルトの組み付け装置およびその組み付け装置を用いた組み付け方法によれば、2列のリングRとそれらリングRを収容する凹部7が形成されたエレメントEとを組み付けて伝動ベルトBを構成する場合、組み付け装置の並列状態固定ブロック20によって2列のリングRが並列状態に保持される。そして、それら2列のリングRの周長方向における一部分が並列状態に保持された状態で、他の部分が重ね合わせ状態にされる。その場合、組み付けガイドブロック30によって2列のリングRの重ね合わせ位置あるいは重ね合わせ量などの重ね合わせ状態が規定したとおりに設定されて保持される。すなわち、組み付けガイドブロック30の空間33の内壁部に形成された重ね合わせ規定部31bがいわゆる位置決めゲージのように機能する。そのため、2列のリングRの重ね合わせ状態における重ね合わせ位置あるいは重ね合わせ量などを常に一定に設定することができる。
そして、重ね合わせ状態の2列のリングRが凹部7内に嵌め込まれたエレメントEと共に、組み付けガイドブロック30を2列のリングRの並列状態に保持されている方へ移動させることにより、重ね合わせ状態の2列のリングRが並列状態に滑らかに変移するようにガイドされる。すなわち、重ね合わせ状態において外周側に重ねられていた分割リングRa(もしくはRb)がエレメントEや他方の分割リングRb(もしくはRa)と干渉することなく重なりが解消する方向へ滑らかに変移する。
そのため、2列のリングRの並列状態を維持しつつ、その他の部分を所望する重ね合わせ状態に安定して設定することができ、エレメントEの凹部7に重ね合わせ状態の2列のリングRを容易にかつ確実に嵌め込むことができる。そして、重ね合わせ状態の2列のリングRを凹部7に嵌め込んだエレメントEを2列のリングRの並列状態の部分へ移動させる際、もしくは2列のリングRの重ね合わせ状態を解消して並列状態へ移行する際に、エレメントEとリングRとの干渉を回避もしくは抑制することができる。その結果、エレメントEと2列のリングRとの組み付けを容易に行うことができ、伝動ベルトBの組み付け性もしくは生産性を一層向上させることができる。
なお、この発明は上述した具体例に限定されない。すなわち、上述した具体例では、この発明の伝動ベルトBがベルト式無段変速機に使用されている例を示しているが、この発明の伝動ベルトBは、ベルト式無段変速機に限らず、ベルトとプーリとによって構成される他の巻き掛け伝動装置の伝動ベルトにも適用することができる。
E…エレメント、 R…リング、 B…伝動ベルト、 5a,6a…内側面、 7…凹部、 8,9…抜け止め部、 20…並列状態固定ブロック(並列状態保持機構)、 30…組み付けガイドブロック(組み付けガイド機構)。