JP5111037B2 - 切削加工用機械構造用鋼および機械構造用部品 - Google Patents

切削加工用機械構造用鋼および機械構造用部品 Download PDF

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Description

本発明は、人体に有害であるPbを使用することなく、JIS規格の機械構造用合金鋼と同等のS量レベルで硬質なAl23を含む介在物を富化させずに、良好な被削性を発揮するような機械構造用鋼、およびこうした機械構造用鋼から得られる機械構造用部品に関するものである。
自動車用変速機や差動装置をはじめとする各種歯車伝達装置へ利用される歯車、シャフト、プーリや等速ジョイント等の機械構造用部品は、鍛造等の加工を施した後、切削加工を施すことによって最終形状に仕上げられ、浸炭や浸炭窒化処理(大気中、低圧、真空、プラズマ雰囲気を含む)等の表面硬化処理を施されるのが一般的である。このうち切削加工に要するコストは製作費に占める割合が大きいことから、上記機械構造用部品を構成する鋼材は被削性が良好であることが要求される。
被削性を改善する元素としては、従来から鉛(Pb)が知られており、このPbは被削性改善に極めて有効な元素である。しかしながら、Pbは人体への有害性が指摘され、また溶製時の鉛のヒュームや切削屑等の処理の点で問題も多く、近年ではPbを添加することなく(Pbフリー)、良好な被削性を発揮することが求められている。
Pbを添加することなく良好な被削性を確保する技術として、S含有量を0.06%程度まで増加させる鋼材が知られている(硫黄添加肌焼快削鋼)。しかしながら、こうした快削鋼においては、部品形状にした際、特に歯車の歯元曲げ強度に低下が生じることがある。これは、特に鋼材の圧延方向に対して展伸した多くの硫化物が存在するため、圧延方向に対して垂直な方向での強度低下が生じ易いことに起因している。こうした問題を解消するために、SeやTe等を含有させて硫化物の紡錘状化による強度改善を図ることも行われているが、十分な被削性を得ることは困難である。
Pbフリーで被削性を改善するために、これまでにも様々な技術が提案されており、その主流は鋼材中の介在物の制御を図ることによって、被削性を改善する技術が大半を占めている。こうした技術として例えば特許文献1では、Ca含有硫化物をCa含有量によって区分し、夫々の面積率を規定することによって旋削加工性(工具寿命)を改善した技術が提案されている。しかしながら、多量のCaを含む硫化物の割合が多くなると、個々の硫化物が粗大化し、硫化物減少による被削性劣化が生じることになる。
また特許文献2には、切り屑分断性のばらつきを抑制するために、Ca含有硫化物の個数を規定する技術が提案されている。しかしながら、この技術では実施例に示されるように、有効な硫化物形態を得るための脱酸元素として用いられるAlを0.018%以上含有させる必要があり、鋼材中に存在する酸化物が主に硬質なAl23系酸化物となるので工具寿命が劣化するという問題がある。
一方、工具寿命を改善するための技術として、(1)酸化物を含む二重構造硫化物中のCaO量と硫化物中のCaを規定する技術(特許文献3)、(2)Tiを多量添加しつつCa硫化物とCa系酸化物を共存させる技術(特許文献4)、(3)Ca/Al比を増大させてAl23系の酸化物介在物と硫化物を(Ca,Mn)S系に改質する技術(特許文献5)、(4)CaとAlを所定の比率に制御することによって、酸化物組成をAl23に富む酸化物ではなくCaO−Al23系酸化物に改質した二重構造硫化物における酸化物と硫化物の面積比、および全硫化物の二重構造硫化物の個数比率を規定した技術(特許文献6)、等も提案されている。
上記(1)〜(4)の技術は、いずれもCaO−Al23系やCaO−Al23−SiO2系酸化物にて工具寿命を改善しようとするものであったが、いずれもAl23を含有しており、介在物の形態制御ばらつきによって硬質なAl23系介在物が生じやすく、工具寿命が改善しない鋼材ロットを発生させることがある。
特開2000−34538号公報 特開2000−219936号公報 特開2003−55735号公報 特開2005−272903号公報 特開2005−27300号公報 特開2005−350702号公報
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、Pbフリーで且つJIS規格の機械構造用合金鋼と同等のS量レベルであって、硬質のAl23を含む介在物を富化させずに、良好な被削性を発揮するような機械構造用鋼、およびこうした機械構造用鋼から得られる機械構造用部品を提供することにある。
上記目的を達成することのできた本発明の機械構造用鋼とは、C:0.10〜0.30%(質量%の意味、化学成分組成について以下同じ)、Si:0.03〜1.5%、Mn:0.3〜1.8%、P:0.03%以下(0%を含まない)、S:0.03%以下(0%を含まない)、Cr:0.3〜2.5%、Al:0.001〜0.009%、Ca:0.0005〜0.005%、Ti:0.03〜0.10%、N:0.009%以下(0%を含まない)およびO:0.005%以下(0%を含まない)を夫々含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなり、且つ、圧延方向の断面を観察したときに、酸化物系介在物のうち、CaOとTiO2の含有量比率が下記(1)式の関係を満足するTiO2系複合酸化物の個数割合が30%以上である点に要旨を有するものである。
0≦[CaO/TiO2]≦2/3 …(1)
但し、[CaO]および[TiO2]は、夫々CaOおよびTiO2のTiO2系複合酸化物中の含有量(質量%)を示す。
本発明の機械構造用鋼において、前記TiO2系複合酸化物は、主として硫化物に隣接または包含される形態で存在するものとなる。
本発明の機械構造用鋼には、必要によって、更に(a)Cu:0.5%以下(0%を含まない)、(b)Ni:2.0%以下(0%を含まない)、(c)Mo:1.0%以下(0%を含まない)および/またはB:0.005%以下(0%を含まない)、(d)Zr:0.1%以下(0%を含まない)、V:0.1%以下(0%を含まない)およびNb:0.1%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる1種以上、(e)Bi:0.1%以下(0%を含まない)、(f)Se:0.01%以下(0%を含まない)および/またはTe:0.01%以下(0%を含まない)、等を含有させることも有効であり、含有される元素の種類に応じて機械構造用鋼の特性が更に改善される。
また上記本発明の機械構造用鋼は、JIS機械構造用合金鋼と同レベルのS量であるため、機械構造用部品とすることによっても従来のJIS鋼と遜色のない機械的特性を発揮する部品が得られる。
本発明によれば、S、Alを低減しつつこれらの元素およびTi、Caの含有比率を制御して化学成分組成を規定する共に、鋼中酸化物中のCaOとTiO2の含有比率およびこれらTiO2系複合酸化物の個数を規定することによって、良好な被削性(特に旋削工具の逃げ面摩耗)を発揮する機械構造用鋼が実現できた。
本発明者らは、こうした状況の下で、切削時の工具寿命向上を達成すべく、様々な角度から検討した。そして、次のような知見が得られた。
(A)工具寿命が低下するのは、主に工具の摩耗に起因するためであり、その主原因は多量のAl23酸化物、更にはAl23を多量に含む複合酸化物が硬質なためである。
(B)S増量をはじめ、硫化物、酸化物、窒化物等の介在物の増加は強度低下を引き起こすため、機械構造用部品として成立しなくなる。
上記知見に基づいて、上記目的を達成させるための具体的手段について、更に検討した。そのために、まず硫化物を低減することを前提にSの含有量をJIS機械構造用合金鋼の規格である0.03%以下とし、その上で主としてフェロチタンによるTiキルド処理によってAlキルド処理を最小限に抑え、Si脱酸を抑制しつつCaとTiの微量添加(Ca:0.0005〜0.005%、Ti:0.03〜0.10%)に制御することで、酸化物系介在物を、CaOを含有するTiO2系複合酸化物を主体として生成させることが有効であると判明した。
本発明で対象とするTiO2系複合酸化物は、この複合酸化物中に含まれるCaOおよびTiO2の含有量比率が、上記(1)式の関係を満足する必要がある。こうした要件を満足させることによって、酸化物を低融点化させ、軟質化させることで旋削工具の逃げ面摩耗を抑制し、工具寿命を改善することができる。またAl添加量抑制による硬質なAl23系酸化物(例えば、Al23、Al23−SiO2、Al23−CaO、Al23−MgO系等を含む)を低減しているため、更に工具寿命を改善することができる。
こうした観点から、CaOおよびTiO2の含有量比率は、上記(1)式の関係を満足するように制御する必要があり、(1)式の関係を満足しないときには、硬質の酸化物の含有量が増加して工具摩耗を増加させて工具寿命が劣化する。更に、TiO2系複合酸化物は硫化物生成の核となるため、軟質な硫化物が隣接または覆うことによって、切削工具への直接接触する頻度が低減され、工具摩耗の抑制を促進させる。
本発明の機械構造用鋼では、その化学成分組成も適切に規定する必要があるが、上記したS,Al,TiおよびCaを含め、その基本成分であるC,Si,Mn,P,S,Cr,Al,Ti,Ca,NおよびOにおける範囲限定理由は以下の通りである。
[C:0.10〜0.30%]
Cは、機械構造用部品としての必要な芯部硬さを確保する上で重要な元素であり、こうした効果を発揮させるためには0.10%以上含有させる必要がある。しかしCを過剰に含有させると鋼材の硬さが過度に高くなり過ぎて、被削性(特に、切削加工時の工具寿命)や冷間鍛造性が低下することになる。こうした観点から、C含有量は0.30%以下とする必要がある。尚、C含有量の好ましい下限は、0.13%であり、好ましい上限は0.25%である。
[Si:0.03〜1.5%]
Siは、表面硬化層の軟化抵抗性の向上に大きく寄与する元素である。こうした効果を発揮させるためには、0.03%以上含有させる必要がある。しかしながら、Si含有量が過剰になって1.5%を超えると、機械加工時の被削性や冷間鍛造性が著しく劣化することになる。尚、Si含有量の好ましい下限は0.1%であり、好ましい上限は1.0%である。
[Mn:0.3〜1.8%]
Mnは、脱酸剤として作用し、酸化物系介在物を低減して鋼部材の内部品質を高めると共に、焼入れ性を向上させて鋼部品の芯部硬さや硬化層深さを高め、部品の強度を確保するのに有効な元素である。こうした作用を発揮させるためには、Mn含有量は0.3%以上とする必要があるが、1.8%を超えて過剰になると、Pの粒界への偏析を助長して粒界強度が低下し、疲労強度を低下させることになる。尚、Mn含有量の好ましい下限は0.4%であり、好ましい上限は1.5%である。
[P:0.03%以下(0%を含まない)]
Pは、鋼材中に不可避的に含まれる元素(不純物)であり、熱間加工後の割れを助長するので、できるだけ低減する必要がある。こうした観点から、P含有量の上限は0.03%とした。尚、P含有量の好ましい上限は0.02%であり、より好ましくは0.01%以下とするのがよい。
[S:0.03%以下(0%を含まない)]
Sは、鋼中でMnと反応してMnS系介在物を形成し、鋼部品の衝撃強度の異方性を誘発するので、できるだけ低減することが好ましい。こうした観点から、S含有量は0.03%以下(0%を含まない)とする必要がある。尚、S含有量の好ましい上限は0.02%である。
[Cr:0.3〜2.5%]
Crは、鋼材の焼入れ性を高め、安定した硬化層深さや必要な芯部硬さを与えることによって、歯車などの構造部品としての静的強度および疲労強度を確保する上で重要な元素である。こうした作用を発揮させるためには、Crは0.3%以上含有させる必要がある。しかしながら、Cr含有量が過剰になって2.5%を超えると、旧オーステナイト(γ)粒界に炭化物として偏析するため、疲労強度低下の原因となる。尚、Cr含有量の好ましい下限は0.8%であり、好ましい上限は2.0%である。
[Al:0.001〜0.009%]
Alは溶製時に脱酸剤として有用に作用し、そのためには0.001%以上含有させる必要がある。Al含有量が増加するにつれて、酸化物(Al23)等の非金属介在物が生成し、切削時の工具摩耗を増大させてしまうので、その上限を0.009%とする必要がある。尚、好ましい上限は0.007%であり、より好ましくは0.005%以下とするのが良い。
[Ca:0.0005〜0.005%]
Caは、Tiと低融点複合酸化物を形成し、工具の逃げ面摩耗を抑制する効果を発揮する。こうした効果を有効に発揮させるためには、Ca含有量は0.0005%以上とする必要があるが、0.005%を超えると、粗大なCa酸化物が生成し、Ca含有硫化物も硬くなって、工具寿命を低下させることになる。そのため、Ca含有量は0.005%以下とする必要があり、好ましくは0.003%以下とするのが良い。
[Ti:0.03〜0.10%]
Tiは、新たな低融点酸化物(CaO−TiO2系酸化物)を生成するのに不可欠な合金元素である。Ti含有量が0.03%未満であると、殆どのTiがNと反応して酸化物を構成するTiが消失してしまうことになる。またTiの含有量が過剰になると、鋼材素地への固溶Tiが増大して鋼材硬さが増すため、工具寿命を低下させてしまうことになる。こうした観点から、Tiの含有量は0.l0%以下とする必要があり、好ましくは0.06%以下とするのが良い。
[N:0.009%以下(0%を含まない)]
Nは他の元素と窒化物を形成し、組織微細化に寄与するが、硬質窒化物を生成するため、工具寿命を劣化させることになる。しかも、熱間加工性および延性に悪影響を及ぼすので、0.009%以下に抑える必要があり、好ましくは0.007%以下に抑えるのが良い。
[O:0.005%以下(0%を含まない)]
Oは、鋼材に不可避的に含まれる元素であり、他元素と反応して粗大な酸化物系介在物を生成して鋼材の熱間加工および延性に悪影響を及ぼすので、できるだけ少なくすることが好ましい。こうした観点から、O含有量は0.005%以下に抑制する必要がある。O含有量の好ましい上限は0.003%である。
本発明の機械構造用鋼においては、上記成分の他(残部)は鉄および不可避不純物からなるものであるが、これら以外にも被削性を阻害しない程度の微量成分を含み得るものであり、こうした成分を含むものも本発明の技術的範囲に含まれる。こうした成分としては、例えば、Mg,Ba,Cu,As,Sb,Sn,Ta,Co,Wおよび希土類元素等が挙げられる。
また本発明の機械構造用鋼には、必要によって、更に(a)Cu:0.5%以下(0%を含まない)、(b)Ni:2.0%以下(0%を含まない)、(c)Mo:1.0%以下(0%を含まない)および/またはB:0.005%以下(0%を含まない)、(d)Zr:0.1%以下(0%を含まない)、V:0.1%以下(0%を含まない)およびNb:0.1%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる1種以上、(e)Bi:0.1%以下(0%を含まない)、(f)Se:0.01%以下(0%を含まない)および/またはTe:0.01%以下(0%を含まない)、等を含有させることも有効であるが、これらの範囲限定理由は下記の通りである。
[Cu:0.5%以下(0%を含まない)]
Cuは、耐候性向上に有効な元素であり、こうした効果はその含有量が増加するにつれて増大するが、過剰に含有させると鋼材の熱間加工性および延性を低下させて割れや疵が発生しやすくなるので、0.5%以下とすることが好ましい。尚、Cuを含有させることによる効果をより有効に発揮させるためには、その含有量は0.1%以上とすることが好ましい。またCuを含有させるときには、熱間加工性の低下(熱間加工脆性)の劣化を発生させないという観点から、後述するNiとの同時添加が好ましい。
[Ni:2.0%以下(0%を含まない)]
Niはマトリックス中に固溶し、靭性を増大させる上で有効な元素である。こうした効果は、その含有量が増加するにつれて増大するが、過剰に含有させるとベイナイトやマルテンサイト組織が発達し、靭性の劣化を招くのでその上限は2.0%とすることが好ましい。尚、Niを含有させることによる効果をより有効に発揮させるためには、その含有量は0.1%以上とすることが好ましい。
[Mo:1.0%以下(0%を含まない)および/またはB:0.005%以下(0%を含まない)]
MoおよびBは、鋼材の焼入れ性を向上させるのに有効な元素である。このうち、Moは鋼材の焼入れ性を確保して不完全焼入れ組織の生成を抑制するのに有効に作用する。しかしながら、その含有量が過剰になると、芯部の硬度が必要以上に硬くなって機械加工時における被削性や冷間鍛造性が劣化するので、1.0%以下(より好ましくは0.5%以下)とすることが好ましい。
一方、Bは微量で鋼材の焼入れ性を向上させることに加えて、結晶粒界強化によって衝撃強度を高める作用を発揮する。しかしながら、B含有量が過剰になるとB窒化物が生成しやすくなり、冷間および熱間加工性を劣化させるので、0.005%以下(より好ましくは0.003%以下)とすることが好ましい。
尚、MoやBによる上記効果を有効に発揮させるためには、Moで0.1%以上、Bで0.0005%以上(より好ましくは0.0008%以上)含有させることが好ましい。
[Zr:0.1%以下(0%を含まない)、V:0.1%以下(0%を含まない)およびNb:0.1%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる1種以上]
Zr,VおよびNbは、いずれも炭素や窒素と活発に反応し、微細な析出物を形成することによって、結晶粒粗大化防止特性を向上できるが、その含有量が過剰になると、硬質な窒化物や炭化物が多量に生成して工具寿命を低下させるので、いずれも0.1%以下(より好ましくは0.05%以下)とすることが好ましい。
[Bi:0.1%以下(0%を含まない)]
Biは、鋼材の被削性を向上させる元素であり、必要によって含有させることも有効である。しかしながら、過剰に含有させると、強度が低下するので、その上限を0.1%とすることが好ましい。尚、その効果を有効に発揮させるための好ましい下限は0.02%であり、より好ましい上限は0.08%である。
[Se:0.01%以下(0%を含まない)および/またはTe:0.01%以下(0%を含まない)]
SeおよびTeは、Mn(S,Se)、Mn(S,Te)等の化合物を形成し、硫化物の展伸抑制に働くことによって圧延方向に直角な方向(C方向)の強度低下を抑えるのに有効な元素である。こうした効果は、その含有量が増加するにつれて増大するが、過剰に含有させてもその効果が飽和するだけであるので、いずれも0.01%以下(より好ましくは0.004%以下)とすることが好ましい。
従来では、不純物のAl含有量が1%程度のフェロシリコンやAl含有物を用いて鋼中の脱酸をしていたので、Al23系酸化物が生成していたが、こうした方法では、本発明で規定する介在物の形態を得ることはできない。上記のようにTiO2系複合酸化物の形態を制御して本発明の機械構造用鋼を製造するには、次のようなプロセスで行えば良い。即ち、本発明では、Tiによるキルド(脱酸処理)を積極的に進めるため、主にフェロチタンによって、溶鋼中のAl濃度が高くならないように制御しながら脱酸処理を行い、Al23系酸化物の生成を抑制しつつ主要元素を添加し、転炉処理を行う。次に、溶鋼処理時に真空脱ガスを行いながら、Caを添加することでフリー酸素(溶存酸素)を制御し、本発明の前記(1)式の関係を満足するようなTiO2系複合酸化物に制御すればよい。更に、この複合酸化物を核として硫化物を生成すれば良い。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
小型溶製炉(150kg規模)を用いてフェロチタンを添加して真空脱ガス処理を行い、下記表1に示す各種化学成分組成の鋼材(鋼種A〜R、X)を溶製した。このとき、通常のAlドロスを添加して真空脱ガス処理を行った鋼材についても溶製した(表1の鋼種S〜W、Y)。
得られた鋳片から、1200℃での熱間鍛造によって直径:80mmの鍛伸材を作成した後、1250℃で溶体化処理、および焼きならしを行い、直径:75mmまで皮削り加工を行った。
得られた展伸材について、鋼中の酸化物系介在物の形態およびその個数を下記の方法で測定すると共に、被削性について下記の基準で評価した。
[鋼中の酸化物系介在物の形態およびその個数の測定]
酸化物系介在物中のCaOとTiO2の含有量比率の測定は、エネルギー分散型電子プルーブマイクロアナライザー(「JXA8100」JEOL社製)にて、鋼材長手方向断面の1/4半径位置を25mm2の視野においてサイズが2μm以上の介在物の定性分析を行い、ZAFによる定量補正法(但し、原子番号効果、吸収効果、蛍光励起効果による補正)を用いてX線スペクトル強度から定量分析と画像解析を行い、全酸化物系介在物に対するTiO2系複合酸化物の個数比率(個数割合)を測定した。また、TiO2系複合酸化物に対してSの定量分析を行い、TiO2系複合酸化物に対するSを含有するTiO2系複合酸化物の個数比率を算出することによって、TiO2系複合酸化物が硫化物に隣接または包含されたものであることを確認した。
[被削性評価]
被削性評価は、切削速度:200m/分、送り:0.25mm/rev、切り込み:1.5mmの乾式条件で超硬旋削加工を行い、逃げ面摩耗量が0.05mmになるまでの時間(分)によって工具寿命を測定した。
これらの結果[酸化物系介在物のうち前記(1)式の要件を満足するTiO2系複合酸化物の個数比率(%)、および被削性評価(工具寿命)]を下記表2に示す。この結果に基づいてTiO2系複合酸化物の個数比率と被削性(工具寿命)の関係を図1に示す。また、硫化物に隣接するTiO2系複合酸化物の形態(試験No.6のもの)を図2(図面代用電子顕微鏡写真)に示す。
これらの結果から、明らかなように、本発明で規定する要件を満足するもの(実験No.1〜18)では、旋削工具寿命がいずれも13分以上となっており、S量が少ないにも拘わらず、被削性が飛躍的に向上していることが分かる。
これに対して、本発明で規定する要件のいずれかを欠くもの(試験No.19〜25では、被削性が劣化していることが分かる。このうち試験No.19〜24のものでは、S含有量が本発明で規定する範囲内であるが、TiO2系複合酸化物が生成していない、若しくは生成量が少ないので、工具寿命が短くなっている。また試験No.25では、JIS SCM420鋼にS量を増加した従来のS添加快削鋼であり、試験No.21のJIS SCM420鋼よりも工具寿命が延びているものの、酸化物をTiO2系複合酸化物に形態制御した試験No.6よりも工具寿命が劣っていることが分かる。
酸化物系介在物に対するTiO2系複合酸化物比率と工具寿命の関係を示すグラフである。 硫化物に隣接するTiO2系複合酸化物の形態(試験No.6のもの)を示す図面代用電子顕微鏡写真である。

Claims (8)

  1. C:0.10〜0.30%(質量%の意味、化学成分組成について以下同じ)、Si:0.03〜1.5%、Mn:0.3〜1.8%、P:0.03%以下(0%を含まない)、S:0.008〜0.028%、Cr:0.3〜2.5%、Al:0.001〜0.009%、Ca:0.0005〜0.005%、Ti:0.03〜0.10%、N:0.009%以下(0%を含まない)およびO:0.005%以下(0%を含まない)を夫々含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなり、且つ、圧延方向の断面を観察したときに、酸化物系介在物のうち、CaOとTiO2の含有量比率が下記(1)式の関係を満足するTiO2系複合酸化物の個数割合が30%以上であると共に、前記TiO 2 系複合酸化物が、主として硫化物に隣接または包含される形態で存在するものであることを特徴とする切削加工用機械構造用鋼。
    0≦[CaO]/[TiO2]≦2/3 …(1)
    但し、[CaO]および[TiO2]は、夫々CaOおよびTiO2のTiO2系複合酸化物中の含有量(質量%)を示す。
  2. 更に、Cu:0.5%以下(0%を含まない)を含有するものである請求項に記載の切削加工用機械構造用鋼。
  3. 更に、Ni:2.0%以下(0%を含まない)を含有するものである請求項1または2に記載の切削加工用機械構造用鋼。
  4. 更に、Mo:1.0%以下(0%を含まない)および/またはB:0.005%以下(0%を含まない)を含有するものである請求項1〜のいずれかに記載の切削加工用機械構造用鋼。
  5. 更に、Zr:0.1%以下(0%を含まない)、V:0.1%以下(0%を含まない)およびNb:0.1%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる1種以上を含有するものである請求項1〜のいずれかに記載の切削加工用機械構造用鋼。
  6. 更に、Bi:0.1%以下(0%を含まない)を含有するものである請求項1〜のいずれかに記載の切削加工用機械構造用鋼。
  7. Se:0.03%以下(0%を含まない)および/またはTe:0.04%以下(0%を含まない)を含有するものである請求項1〜のいずれかに記載の切削加工用機械構造用鋼。
  8. 請求項1〜のいずれかに記載の切削加工用機械構造用鋼からなる機械構造用部品。
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