JP2009242910A - 被削性と強度異方性に優れた機械構造用鋼および機械構造用部品 - Google Patents

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Abstract

【課題】Pbフリーで且つJIS規格の機械構造用合金鋼と同等のS量レベルであって、硬質のAl23を含む介在物を富化させずに、良好な被削性を発揮するような機械構造用鋼、およびこうした機械構造用鋼から得られる機械構造用部品を提供する。
【解決手段】本発明の機械構造用鋼は、化学成分組成を適切に調整し、且つ、圧延方向の断面を観察したときに、酸化物系介在物のうち、CaOとTiO2の含有量比率が下記(1)式の関係を満足するTiO2系複合酸化物の個数割合が30%以上であると共に、硫化物系介在物のうち、前記TiO2系複合酸化物に隣接または包含される介在物が、個数割合で40%以上存在するものである。
0≦[CaO]/[TiO2]≦2/3 …(1)
但し、[CaO]および[TiO2]は、夫々CaOおよびTiO2のTiO2系複合酸化物中の含有量(質量%)を示す。
【選択図】図1

Description

本発明は、人体に有害であるPbを使用することなく、JIS規格の機械構造用合金鋼と同等のS量レベルで硬質なAl23を含む介在物を富化させずに、良好な被削性を発揮すると共に、浸炭処理や浸炭窒化処理等の表面硬化処理を施した後においても強度の異方性が発生しないような機械構造用鋼、およびこうした機械構造用鋼から得られる機械構造用部品に関するものである。
自動車用変速機や差動装置をはじめとする各種歯車伝達装置へ利用される歯車、シャフト、プーリや等速ジョイント等の機械構造用部品は、鍛造等の加工を施した後、切削加工を施すことによって最終形状に仕上げられ、浸炭や浸炭窒化処理(大気中、低圧、真空、プラズマ雰囲気を含む)等の表面硬化処理を施されるのが一般的である。このうち切削加工に要するコストは製作費に占める割合が大きいことから、上記機械構造用部品を構成する鋼材は被削性が良好であることが要求される。
被削性を改善する元素としては、従来から鉛(Pb)が知られており、このPbは被削性改善に極めて有効な元素である。しかしながら、Pbは人体への有害性が指摘され、また溶製時の鉛のヒュームや切削屑等の処理の点で問題も多く、近年ではPbを添加することなく(Pbフリー)、良好な被削性を発揮することが求められている。
Pbを添加することなく良好な被削性を確保する技術として、S含有量を0.06%程度まで増加させる鋼材が知られている(硫黄添加肌焼快削鋼)。しかしながら、こうした快削鋼においては、部品形状にした際、特に歯車の歯元曲げ強度に低下が生じることがある。これは、特に鋼材の圧延方向に対して展伸した多くの硫化物が存在するため、圧延方向に対して垂直な方向(以下、「横目方向」と呼ぶことがある)での強度低下が生じ易いことに起因している。こうした問題を解消するために、SeやTe等を含有させて硫化物の紡錘状化による強度改善を図ることも行われているが、十分な被削性を得ることは困難である。
Pbフリーで被削性を改善するために、これまでにも様々な技術が提案されており、その主流は鋼材中の介在物の制御を図ることによって、被削性を改善する技術が大半を占めている。こうした技術として例えば特許文献1では、Ca含有硫化物をCa含有量によって区分し、夫々の面積率を規定することによって旋削加工性(工具寿命)を改善した技術が提案されている。しかしながら、多量のCaを含む硫化物の割合が多くなると、個々の硫化物が粗大化し、強度異方性が顕著化する上、硫化物減少による被削性劣化が生じることになる。
また特許文献2には、切り屑分断性のばらつきを抑制するために、Ca含有硫化物の個数を規定する技術が提案されている。しかしながら、この技術では実施例に示されるように、有効な硫化物形態を得るための脱酸元素として用いられるAlを0.018%以上含有させる必要があり、鋼材中に存在する酸化物が主に硬質なAl23系酸化物となるので工具寿命が劣化するという問題がある。
一方、工具寿命を改善するための技術として、(1)酸化物を含む二重構造硫化物中のCaO量と硫化物中のCaを規定する技術(特許文献3)、(2)Tiを多量添加しつつCa硫化物とCa系酸化物を共存させる技術(特許文献4)、(3)Ca/Al比を増大させてAl23系の酸化物介在物と硫化物を(Ca,Mn)S系に改質する技術(特許文献5)、(4)CaとAlを所定の比率に制御することによって、酸化物組成をAl23に富む酸化物ではなくCaO−Al23系酸化物に改質した二重構造硫化物における酸化物と硫化物の面積比、および全硫化物の二重構造硫化物の個数比率を規定した技術(特許文献6)、等も提案されている。
上記(1)〜(4)の技術は、いずれもCaO−Al23系やCaO−Al23−SiO2系酸化物にて工具寿命を改善しようとするものであったが、いずれもAl23を含有しており、介在物の形態制御ばらつきによって硬質なAl23系介在物が生じやすく、工具寿命が改善しない鋼材ロットや、横目強度低下を十分に改善できない鋼材ロットを発生させる可能性を多いに含んでいた。
特開2000−34538号公報 特開2000−219936号公報 特開2003−55735号公報 特開2005−272903号公報 特開2005−27300号公報 特開2005−350702号公報
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、Pbフリーで且つJIS規格の機械構造用合金鋼と同等のS量レベルであって、硬質のAl23を含む介在物を富化させずに、良好な被削性を発揮すると共に、機械構造用鋼として不可欠な強度、具体的には強度異方性、特に横目の強度の低下を抑制した機械構造用鋼、およびこうした機械構造用鋼から得られる機械構造用部品を提供することにある。
上記目的を達成することのできた本発明の機械構造用鋼とは、C:0.10〜0.30%(質量%の意味、化学成分組成について以下同じ)、Si:0.03〜1.5%、Mn:0.3〜1.8%、P:0.03%以下(0%を含まない)、S:0.03%以下(0%を含まない)、Cr:0.3〜2.5%、Al:0.001〜0.009%、Ca:0.0005〜0.005%、Ti:0.03〜0.10%、N:0.009%以下(0%を含まない)およびO:0.005%以下(0%を含まない)を夫々含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、且つ、圧延方向の断面を観察したときに、酸化物系介在物のうち、CaOとTiO2の含有量比率が下記(1)式の関係を満足するTiO2系複合酸化物の個数割合が30%以上であると共に、硫化物系介在物のうち、前記TiO2系複合酸化物を隣接または包含する介在物が、個数割合で40%以上存在する点に要旨を有するものである。
0≦[CaO]/[TiO2]≦2/3 …(1)
但し、[CaO]および[TiO2]は、夫々CaOおよびTiO2のTiO2系複合酸化物中の含有量(質量%)を示す。
尚、「TiO2系複合酸化物を隣接または包含する」とは、上記(1)式を満足するTiO2系複合酸化物が硫化物系介在物の端部に存在したり、内部に存在している状態を意味する(後記図2、3参照)。
本発明の機械構造用鋼には、必要によって、更に(a)Cu:0.5%以下(0%を含まない)、(b)Ni:2.0%以下(0%を含まない)、(c)Mo:1.0%以下(0%を含まない)および/またはB:0.005%以下(0%を含まない)、(d)Zr:0.1%以下(0%を含まない)、V:0.1%以下(0%を含まない)およびNb:0.1%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる1種以上、(e)Bi:0.1%以下(0%を含まない)、(f)Se:0.01%以下(0%を含まない)および/またはTe:0.01%以下(0%を含まない)、等を含有させることも有効であり、含有される元素の種類に応じて機械構造用鋼の特性が更に改善される。
また上記本発明の機械構造用鋼は、JIS機械構造用合金鋼と同レベルのS量であるため、機械構造用部品とすることによっても従来のJIS鋼と遜色のない機械的特性を発揮する部品が得られる。
本発明によれば、S、Alを低減しつつこれらの元素およびTi、Caの含有比率を制御して化学成分組成を規定すると共に、鋼中酸化物中のCaOとTiO2の含有比率およびこれらTiO2系複合酸化物の個数を規定すると共に、このTiO2系複合酸化物に隣接または包含される硫化物系介在物の個数を規定することによって、良好な被削性(特に旋削工具の逃げ面摩耗)を発揮すると共に、S増量の副作用であった強度の異方性、特に横目の強度低下をも低減することのできる機械構造用鋼が実現できた。
本発明者らは、上記のような状況の下で、切削時の工具寿命向上と強度の異方性改善を発揮させるべく、様々な角度から検討した。そして、次のような知見が得られた。
(A)工具寿命が低下するのは、主に工具の摩耗に起因するためであり、その主原因は多量のAl23酸化物、更にはAl23を多量に含む複合酸化物が硬質なためである。
(B)S増量をはじめ、硫化物、酸化物、窒化物等の介在物の増加は強度低下を引き起こし、特に強度の異方性、圧延方向に垂直な方向、いわゆる横目の強度低下が生じるのは、S含有量増加による多量の硫化物の存在自体が根本的な原因である。
上記知見に基づいて、上記目的を達成させるための具体的手段について、更に検討した。そのために、まず硫化物を低減することを前提にSの含有量をJIS機械構造用合金鋼の規格である0.03%以下とし、その上で主としてフェロチタンによるTiキルド処理によってAlキルド処理を最小限に抑え、Si脱酸を抑制しつつCaとTiの微量添加(Ca:0.0005〜0.005%、Ti:0.03〜0.10%)に制御することで、酸化物系介在物を、CaOを含有するTiO2系複合酸化物を主体として生成させることが有効であると判明した。
本発明で対象とするTiO2系複合酸化物は、この複合酸化物中に含まれるCaOおよびTiO2の含有量比率が、上記(1)式の関係を満足する必要がある。こうした要件を満足させることによって、酸化物を低融点化させ、軟質化させることで旋削工具の逃げ面摩耗を抑制し、工具寿命を改善することができる。またAl添加量抑制による硬質なAl23系酸化物(例えば、Al23、Al23−SiO2、Al23−CaO、Al23−MgO系等を含む)を低減しているため、更に工具寿命を改善することができる。
こうした観点から、CaOおよびTiO2の含有量比率は、上記(1)式の関係を満足するように制御する必要があり、(1)式の関係を満足しないときには、硬質の酸化物の含有量が増加して工具摩耗を増加させて工具寿命が劣化する。
一方、溶鋼から凝固の段階に生成する硫化物は粗大になる傾向があるため、Ti系複合酸化物を、この凝固の段階で硫化物に隣接または包含する核とすることで、小さな硫化物を生成させると共に、圧延時の展伸抑制に大きく寄与することができる。この比率を、硫化物を含む介在物個数中(個数割合)の40%以上にすることによって、圧延方向に対して垂直な方向である横目の強度を大幅に改善できることが判明したのである。また軟質な硫化物によって、TiO2系複合酸化物を包含することは、酸化物が切削工具への直接接触する頻度の低減が図れるため、工具摩耗を抑制する効果も発揮する。
本発明の機械構造用鋼では、その化学成分組成も適切に規定する必要があるが、上記したS,Al,TiおよびCaを含め、その基本成分であるC,Si,Mn,P,S,Cr,Al,Ti,Ca,NおよびOにおける範囲限定理由は以下の通りである。
[C:0.10〜0.30%]
Cは、機械構造用部品としての必要な芯部硬さを確保する上で重要な元素であり、こうした効果を発揮させるためには0.10%以上含有させる必要がある。しかしCを過剰に含有させると鋼材の硬さが過度に高くなり過ぎて、被削性(特に、切削加工時の工具寿命)や冷間鍛造性が低下することになる。こうした観点から、C含有量は0.30%以下とする必要がある。尚、C含有量の好ましい下限は、0.13%であり、好ましい上限は0.25%である。
[Si:0.03〜1.5%]
Siは、表面硬化層の軟化抵抗性の向上に大きく寄与する元素である。こうした効果を発揮させるためには、0.03%以上含有させる必要がある。しかしながら、Si含有量が過剰になって1.5%を超えると、機械加工時の被削性や冷間鍛造性が著しく劣化することになる。尚、Si含有量の好ましい下限は0.1%であり、好ましい上限は1.0%である。
[Mn:0.3〜1.8%]
Mnは、脱酸剤として作用し、酸化物系介在物を低減して鋼部材の内部品質を高めると共に、焼入れ性を向上させて鋼部品の芯部硬さや硬化層深さを高め、部品の強度を確保するのに有効な元素である。こうした作用を発揮させるためには、Mn含有量は0.3%以上とする必要があるが、1.8%を超えて過剰になると、Pの粒界への偏析を助長して粒界強度が低下し、疲労強度を低下させることになる。尚、Mn含有量の好ましい下限は0.4%であり、好ましい上限は1.5%である。
[P:0.03%以下(0%を含まない)]
Pは、鋼材中に不可避的に含まれる元素(不純物)であり、熱間加工後の割れを助長するので、できるだけ低減する必要がある。こうした観点から、P含有量の上限は0.03%とした。尚、P含有量の好ましい上限は0.02%であり、より好ましくは0.01%以下とするのがよい。
[S:0.03%以下(0%を含まない)]
Sは、鋼中でMnと反応してMnS系介在物を形成し、鋼部品の衝撃強度の異方性を誘発するので、できるだけ低減することが好ましい。こうした観点から、S含有量は0.03%以下(0%を含まない)とする必要がある。尚、S含有量の好ましい上限は0.02%である。
[Cr:0.3〜2.5%]
Crは、鋼材の焼入れ性を高め、安定した硬化層深さや必要な芯部硬さを与えることによって、歯車などの構造部品としての静的強度および疲労強度を確保する上で重要な元素である。こうした作用を発揮させるためには、Crは0.3%以上含有させる必要がある。しかし、Cr含有量が過剰になって2.5%を超えると、旧オーステナイト(γ)粒界に炭化物として偏析するため、疲労強度低下の原因となる。尚、Cr含有量の好ましい下限は0.8%であり、好ましい上限は2.0%である。
[Al:0.001〜0.009%]
Alは溶製時に脱酸剤として有用に作用し、そのためには0.001%以上含有させる必要がある。Al含有量が増加するにつれて、酸化物(Al23)等の非金属介在物が生成し、切削時の工具摩耗を増大させてしまうので、その上限を0.009%とする必要がある。尚、好ましい上限は0.007%であり、より好ましくは0.005%以下とするのが良い。
[Ca:0.0005〜0.005%]
Caは、Tiと低融点複合酸化物を形成し、切削工具の摩耗を抑制すると共に、鋼材中の硫化物生成時の核となり得るため、硫化物の巨大化抑制や展伸抑制に寄与し、横目の強度を改善する硬化を発揮する。こうした効果を有効に発揮させるためには、Ca含有量は0.0005%以上とする必要があるが、0.005%を超えると、粗大なCa酸化物が生成し、Ca含有硫化物も硬くなって、工具寿命を低下させることになる。そのため、Ca含有量は0.005%以下とする必要があり、好ましくは0.003%以下とするのが良い。
[Ti:0.03〜0.10%]
Tiは、新たな低融点酸化物(CaO−TiO2系酸化物)を生成するのに不可欠な合金元素である。Ti含有量が0.03%未満であると、殆どのTiがNと反応して酸化物を構成するTiが消失してしまうことになる。またTiの含有量が過剰になると、鋼材素地への固溶Tiが増大して鋼材硬さが増すため、工具寿命を低下させてしまうことになる。こうした観点から、Tiの含有量は0.l0%以下とする必要があり、好ましくは0.06%以下とするのが良い。
[N:0.009%以下(0%を含まない)]
Nは他の元素と窒化物を形成し、組織微細化に寄与するが、硬質窒化物を生成するため、工具寿命を劣化させることになる。更に、熱間加工性および延性に悪影響を及ぼすので、0.009%以下に抑える必要があり、好ましくは0.007%以下に抑えるのが良い。
[O:0.005%以下(0%を含まない)]
Oは、鋼材に不可避的に含まれる元素であり、他元素と反応して粗大な酸化物系介在物を生成して鋼材の熱間加工性および延性に悪影響を及ぼすので、できるだけ少なくすることが好ましい。こうした観点から、O含有量は0.005%以下に抑制する必要がある。好ましくは、0.003%以下にするのが良い。
本発明の機械構造用鋼においては、上記成分の他(残部)は鉄および不可避的不純物からなるものであるが、これら以外にも被削性や強度を阻害しない程度の微量成分を含み得るものであり、こうした成分を含むものも本発明の技術的範囲に含まれる。こうした成分としては、例えば、Mg,Ba,As,Sb,Sn,Ta,Co,Wおよび希土類元素等が挙げられる。
また本発明の機械構造用鋼には、必要によって、更に(a)Cu:0.5%以下(0%を含まない)、(b)Ni:2.0%以下(0%を含まない)、(c)Mo:1.0%以下(0%を含まない)および/またはB:0.005%以下(0%を含まない)、(d)Zr:0.1%以下(0%を含まない)、V:0.1%以下(0%を含まない)およびNb:0.1%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる1種以上、(e)Bi:0.1%以下(0%を含まない)、(f)Se:0.01%以下(0%を含まない)および/またはTe:0.01%以下(0%を含まない)、等を含有させることも有効であるが、これらの範囲限定理由は下記の通りである。
[Cu:0.5%以下(0%を含まない)]
Cuは、耐候性向上に有効な元素であり、こうした効果はその含有量が増加するにつれて増大するが、過剰に含有させると鋼材の熱間加工性および延性を低下させて割れや疵が発生しやすくなるので、0.5%以下とすることが好ましい。尚、Cuを含有させることによる効果をより有効に発揮させるためには、その含有量は0.1%以上とすることが好ましい。またCuを含有させるときには、熱間加工性の低下(熱間加工脆性)の劣化を発生させないという観点から、後述するNiとの同時添加が好ましい。
[Ni:2.0%以下(0%を含まない)]
Niはマトリックス中に固溶し、靭性を増大させる上で有効な元素である。こうした効果は、その含有量が増加するにつれて増大するが、過剰に含有させるとベイナイトやマルテンサイト組織が発達し、靭性の劣化を招くのでその上限は2.0%とすることが好ましい。尚、Niを含有させることによる効果をより有効に発揮させるためには、その含有量は0.1%以上とすることが好ましい。
[Mo:1.0%以下(0%を含まない)および/またはB:0.005%以下(0%を含まない)]
MoおよびBは、鋼材の焼入れ性を向上させるのに有効な元素である。このうち、Moは鋼材の焼入れ性を確保して不完全焼入れ組織の生成を抑制するのに有効に作用する。しかしながら、その含有量が過剰になると、芯部の硬度が必要以上に硬くなって機械加工時における被削性や冷間鍛造性が劣化するので、1.0%以下(より好ましくは0.5%以下)とすることが好ましい。
一方、Bは微量で鋼材の焼入れ性を向上させることに加えて、結晶粒界強化によって衝撃強度を高める作用を発揮する。しかしながら、B含有量が過剰になるとB窒化物が生成しやすくなり、冷間および熱間加工性を劣化させるので、0.005%以下(より好ましくは0.003%以下)とすることが好ましい。
尚、MoやBによる上記効果を有効に発揮させるためには、Moで0.1%以上、Bで0.0005%以上(より好ましくは0.0008%以上)含有させることが好ましい。
[Zr:0.1%以下(0%を含まない)、V:0.1%以下(0%を含まない)およびNb:0.1%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる1種以上]
Zr,VおよびNbは、いずれも炭素や窒素と活発に反応し、微細な析出物を形成することによって、結晶粒粗大化防止特性を向上できるが、その含有量が過剰になると、硬質な窒化物や炭化物が多量に生成して工具寿命を低下させるので、いずれも0.1%以下(より好ましくは0.05%以下)とすることが好ましい。
[Bi:0.1%以下(0%を含まない)]
Biは、鋼材の被削性を向上させる元素であり、必要によって含有させることも有効である。しかしながら、過剰に含有させると、強度が低下するので、その上限を0.1%とすることが好ましい。尚、その効果を有効に発揮させるための好ましい下限は0.02%であり、より好ましい上限は0.08%である。
[Se:0.01%以下(0%を含まない)および/またはTe:0.01%以下(0%を含まない)]
SeおよびTeは、Mn(S,Se)、Mn(S,Te)等の化合物を形成し、硫化物の展伸抑制に働くことによって圧延方向に直角な方向(C方向)の強度低下を抑えるのに有効な元素である。こうした効果は、その含有量が増加するにつれて増大するが、過剰に含有させてもその効果が飽和するだけであるので、いずれも0.01%以下(より好ましくは0.004%以下)とすることが好ましい。
従来では、不純物のAl含有量が1%程度のフェロシリコンやAl含有物を用いて鋼中の脱酸をしていたので、Al23系酸化物が生成していたが、こうした方法では、本発明で規定する介在物の形態を得ることはできない。上記のようにTiO2系複合酸化物の形態を制御して本発明の機械構造用鋼を製造するには、次のようなプロセスで行えば良い。即ち、本発明では、Tiによるキルド(脱酸処理)を積極的に進めるため、主に不純物Alが0.01%以下であるフェロチタン添加によって、溶鋼中のAl濃度が高くならないように制御しながら脱酸処理を行い、Al23系酸化物の生成を抑制しつつ処理を行う。次工程の溶鋼処理時に真空脱ガスを行いながら、Ca添加と場合によって更にTi添加することでフリー酸素(溶存酸素)を制御し、本発明の前記(1)式の関係を満足するようなTiO2系複合酸化物に制御すればよい。
更に、Al23系酸化物やAl23−CaO系酸化物に比べて、低融点であるTiO2−CaO系複合酸化物は溶鋼中でより低温で晶出するため、溶鋼から凝固段階時で微細に分散させることが可能である。よって、凝固時に生成する一般的に粗大化しやすい硫化物に対して、TiO2−CaO系複合酸化物を硫化物の核とすることによって、TiO2系複合酸化物を隣接または包含した介在物を生成させれば良い。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
小型溶製炉(150kg規模)を用いて不純物Al量が0.01%以下のフェロチタンを添加して真空脱ガス処理を行い、下記表1に示す各種化学成分組成の鋼材(鋼種A〜R)を溶製した。このとき、通常のフェロシリコン(Al含有量が1%程度)を添加して真空脱ガス処理を行った鋼材についても溶製した(表1の鋼種S〜Y)。
得られた鋳片から、1200℃での熱間鍛造によって直径:80mmの鍛伸材を作製した後、1250℃で溶体化処理、および焼きならしを行い、直径:75mmまで皮削り加工を行った。
得られた展伸材について、鋼中の酸化物系介在物の形態およびその個数を下記の方法で測定すると共に、被削性および強度について下記の基準で評価した。
[鋼中の酸化物系介在物の形態およびその個数の測定]
酸化物系介在物中のCaOとTiO2の含有量比率の測定は、エネルギー分散型電子プルーブマイクロアナライザー(「JXA8100」JEOL社製)にて、鋼材長手方向断面の半径方向D/4(D:直径)の位置25mm2の視野において、反射電子像を用いて2μm以上の介在物とサイズを測定し、同介在物の自動定性分析を実施後、CaO,TiO2,SiO2,Al23,MgO,ZrO2,MnOについて、ZAFによる定量補正法(但し、原子番号効果、吸収効果、蛍光励起効果による補正)を用いてX線スペクトル強度から定量分析を行い、酸化物を含む介在物(酸化物系介在物)の個数と、TiO2系複合酸化物[上記(1)式を満足する酸化物]の個数を測定した。この酸化物、複合酸化物の定義は、定量補正誤差も勘案して含有量5質量%以下の酸化物を除外したものである。
加えて、Sについても同X線スペクトル強度からZAFを用いた定量補正法(但し、原子番号効果、吸収効果、蛍光励起効果による補正)による定量分析を行い、S含有介在物(硫化物系介在物)の個数と、そのうちTiO2系複合酸化物を隣接または包含する介在物(この介在物を、「TiO2系複合酸化物含有硫化物」と呼ぶ)の比率(個数割合)を算出した。尚、TiO2系複合酸化物含有硫化物とは、MnS換算で100%のものは硫化物系介在物として区別し、更に酸化物含有介在物でも上記(1)式を満足しないCaO,TiO2が存在した場合や、SiO2,Al23,MgO,ZrO2系酸化物であった場合は、他の酸化物系含有硫化物として区別した。
[被削性評価]
被削性評価は、切削速度:200m/分、送り:0.25mm/rev、切り込み:1.5mmの乾式条件で超硬旋削加工を行い、逃げ面摩耗量が0.05mmになるまでの時間(分)によって工具寿命を測定した。
[強度の評価]
直径:75mmの展伸材から、展伸方向(縦目)、径方向(横目)に沿ってノッチ形状がR10(mm)のシャルピー衝撃試験片を削り出し、930℃浸炭−油焼入れした後、170℃で焼戻し処理を行い、室温(25℃)での夫々の方向のシャルピー衝撃値(吸収エネルギー)を測定した(3回の平均値)。
これらの結果[酸化物系介在物のうち前記(1)式の要件を満足するTiO2系複合酸化物の個数比率(%)、硫化物系介在物のうちTiO2系複合酸化物に隣接または包含する硫化物の個数比率(%)、被削性評価(工具寿命)、およびシャルピー衝撃値]を下記表2に示す。この結果に基づいてTiO2系複合酸化物の個数比率と被削性(工具寿命)の関係を図1に示す。また、TiO2系複合酸化物が硫化物内部に存在する形態(試験No.1のもの)を図2(図面代用電子顕微鏡写真)に、TiO2系複合酸化物が硫化物の端部に存在する形態(試験No.6のもの)を図3(図面代用電子顕微鏡写真)に夫々示す。更に、TiO2系複合酸化物に隣接または包含する硫化物比率と強度異方性(横目シャルピー衝撃値/縦目シャルピー衝撃値=「横目衝撃値/縦目衝撃値」と記す)の関係を図4に示す。
これらの結果から、明らかなように、本発明で規定する要件を満足するもの(実験No.1〜18)では、旋削工具寿命がいずれも13分以上となっており、S量が少ないにも拘わらず、被削性が飛躍的に向上していることが分かる。また横目、縦目のシャルピー衝撃値比の0.4以上が得られており、強度異方性が抑制されていることがわかる。
これに対して、本発明で規定する要件のいずれかを欠くもの(試験No.19〜25では、いずれかの特性が劣化していることが分かる。このうち試験No.19〜23のものでは、S含有量が本発明で規定する範囲内であるが、TiO2系複合酸化物が生成していないので、工具寿命が短くなっている。強度の異方性も高く、低位のままである(試験No.25は、S含有量が過剰で、且つTiO2系複合酸化物が生成していないもの)。また試験No.24では、JIS SCM420鋼にS量を増加した従来のS添加快削鋼であり、試験No.21のJIS SCM420鋼よりも工具寿命が延びているものの、酸化物をTiO2系複合酸化物に形態制御した試験No.6よりも工具寿命が劣っていることが分かる。
酸化物系介在物に対するTiO2系複合酸化物比率と工具寿命の関係を示すグラフである。 TiO2系複合酸化物が硫化物内部に存在する形態(試験No.1のもの)を示す図面代用電子顕微鏡写真である。 TiO2系複合酸化物が硫化物端部に存在する形態(試験No.6のもの)を示す図面代用電子顕微鏡写真である。 TiO2系複合酸化物含有硫化物の比率と強度異方性(横目衝撃値/縦目衝撃値)の関係を示したグラフである。

Claims (8)

  1. C:0.10〜0.30%(質量%の意味、化学成分組成について以下同じ)、Si:0.03〜1.5%、Mn:0.3〜1.8%、P:0.03%以下(0%を含まない)、S:0.03%以下(0%を含まない)、Cr:0.3〜2.5%、Al:0.001〜0.009%、Ca:0.0005〜0.005%、Ti:0.03〜0.10%、N:0.009%以下(0%を含まない)およびO:0.005%以下(0%を含まない)を夫々含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、且つ、圧延方向の断面を観察したときに、酸化物系介在物のうち、CaOとTiO2の含有量比率が下記(1)式の関係を満足するTiO2系複合酸化物の個数割合が30%以上であると共に、硫化物系介在物のうち、前記TiO2系複合酸化物を隣接または包含する介在物が、個数割合で40%以上存在することを特徴とする被削性と強度異方性に優れた機械構造用鋼。
    0≦[CaO]/[TiO2]≦2/3 …(1)
    但し、[CaO]および[TiO2]は、夫々CaOおよびTiO2のTiO2系複合酸化物中の含有量(質量%)を示す。
  2. 更に、Cu:0.5%以下(0%を含まない)を含有するものである請求項1に記載の機械構造用鋼。
  3. 更に、Ni:2.0%以下(0%を含まない)を含有するものである請求項1または2に記載の機械構造用鋼。
  4. 更に、Mo:1.0%以下(0%を含まない)および/またはB:0.005%以下(0%を含まない)を含有するものである請求項1〜3のいずれかに記載の機械構造用鋼。
  5. 更に、Zr:0.1%以下(0%を含まない)、V:0.1%以下(0%を含まない)およびNb:0.1%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる1種以上を含有するものである請求項1〜4のいずれかに記載の機械構造用鋼。
  6. 更に、Bi:0.1%以下(0%を含まない)を含有するものである請求項1〜5のいずれかに記載の機械構造用鋼。
  7. 更に、Se:0.01%以下(0%を含まない)および/またはTe:0.01%以下(0%を含まない)を含有するものである請求項1〜6のいずれかに記載の機械構造用鋼。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の機械構造用鋼からなる機械構造用部品。
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