JP5109769B2 - スイッチング電源装置 - Google Patents
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図4は、電流モード制御(スイッチング素子に流れる電流の大きさを検出し、その検出結果に基づいて制御を行う方式)で力率改善を行う昇圧型のスイッチング電源装置の構成例を示す図である。電流モード制御は、過電流制御などスイッチング素子に流れる電流のピーク値を監視する必要がある場合に適用される制御方式である。図4において、ACはAC電源であり、DBはAC電源の交流電圧を全波整流するダイオードブリッジである。ダイオードブリッジDBでAC電源ACの交流電圧を全波整流して得られる直流電圧Vinを入力とするスイッチング電源は、入力コンデンサCi,インダクタL1,スイッチング素子であるトランジスタQsw,転流素子であるダイオードD1,出力コンデンサCo,電流検出素子である抵抗Rs,フィルタ回路を構成する抵抗RfiltとコンデンサCfilt,出力端子Vout(この端子の電圧もVoutとする)とGND(接地電位)端子,出力電圧Voutを分圧するための分圧抵抗R20とR21,ダイオードブリッジの出力である全波整流後の直流電圧Vinを分圧するための分圧抵抗R30とR31,電源制御IC(集積回路)10,および位相補償回路を構成する抵抗RcompとコンデンサCcomp1,Ccomp2を有している。スイッチング素子QswがオンしているときにインダクタL1に蓄積されたエネルギーを、スイッチング素子QswがオフしているときにインダクタL1からダイオードD1を介して出力コンデンサCoを含む外部に放出することにより昇圧動作を実現している(昇圧型のスイッチング電源装置の動作は周知であるので詳細な説明は省略する)。入力コンデンサCiは、スイッチング素子Qswのスイッチングに伴うリップルを除去するためのものである。
電源制御IC10は、フリップフロップFF1,設定電圧回路V10(その出力である設定電圧もV10とする),入力端子FBに入力される信号と設定電圧V10の差を増幅するエラーアンプOP3,エラーアンプOP3の出力と入力端子MULからの信号が入力される乗算回路1,ドライバ2,過電流を判断する基準信号を出力する過電流保護回路3,後述するスロープ補償を行うために単調増加する信号(スロープ補償信号)を生成してこのスロープ補償信号と電流検出信号とを(重み付け)加算した信号を出力するスロープ補償回路4,フリップフロップFF1を定周期でセットする発振器5,過電流保護回路3から出力される基準信号(電圧信号)と乗算回路1の出力電圧のうち低い方の電圧をスロープ補償回路4の出力電圧と比較するPWMコンパレータCP1を有している。エラーアンプOP3の出力端子は電源制御IC10の端子COMPにも接続され、電源制御IC10の外部には抵抗RcompとコンデンサCcomp1,Ccomp2からなるエラーアンプOP3の位相補償回路が端子COMPに接続されている。スイッチング電源装置はエラーアンプOP3に入力される2つの信号が等しくなるよう動作するから、出力電圧Voutは設定電圧V10に分圧抵抗R20とR21による分圧比の逆数を乗じた値の電圧となる。
電流モード制御ではスイッチング素子Qswのオン時比率(=オン期間/スイッチング周期(=オン期間+オフ期間))が50%以上の場合に、サブハーモニック発振が起きて動作が不安定になることがある。このように動作が不安定となることを改善するためのものとして、スロープ補償がある。
サブハーモニック発振およびスロープ補償について、以下説明する。まず、スイッチング電源装置が安定状態にある、もしくは平衡状態にあるときは、オン期間におけるインダクタL1の電流の増加量とオフ期間における電流の減少量とが等しくなっている。そして、オン時比率が50%以上になっているということは、オン期間(時刻t1〜時刻t2)におけるインダクタL1の電流の増加率(m1)がオフ期間(時刻t2〜時刻t3)におけるインダクタL1の電流の減少率(−m2)の絶対値(m2)より小さい(m1<m2)ということである。ここで、時刻t3におけるインダクタL1の電流の値が時刻t1の値よりずれた場合を考える。時刻t3のインダクタL1の電流の値は、次のスイッチング周期における時刻t1のインダクタL1の電流値となるが、m1<m2であると、あるスイッチング周期における時刻t1の電流の値と次のスイッチング周期における時刻t1の電流の値とのずれが拡大することが示される(例えば、特許文献1参照)。これがサブハーモニック発振である。逆に、m1>m2であれば、時刻t1における電流のずれが周期ごとに減少していくのでサブハーモニック発振を抑えることができる。そこで、本来はm1<m2という関係を逆転させるために、電流検出信号(傾きm1)にスロープ補償回路4により生成されたスロープ補償信号(その傾きまたは時間微分をm3とする)を加算してm1+m3>m2となし、サブハーモニック発振を抑える。これが、スロープ補償である。
また、力率改善を行うスイッチング電源装置において、入力電圧が高いときであってもスロープ補償に起因する力率の低下が少なくて済むようにすることも提案されている(例えば、特許文献2参照)。
スイッチング電源装置が昇圧型コンバータであり、スロープ補償信号の振幅が一定であると、入力電圧が200V系の場合は、100V系より力率が悪化することがある。昇圧型コンバータにおいて、入力電圧をVin、出力電圧をVoutとすると、オン時比率は(Vout−Vin)/Voutで与えられ、100V系のオン時比率の方が大きくなる。すなわち、スイッチング周波数が同じであれば、100V系のオン期間の方が長くなる。一方、インダクタL1に流れる電流の増加率は入力電圧Vinに比例するから、インダクタL1に流れる電流の、1回のオン期間における増分はA=Vin・(Vout−Vin)/Voutに比例するものになり、電流の増分は、出力電圧Voutの値によっては、100V系の方が大きく200V系の方が小さくなる。例えば、Vout=250Vとすると、Vin=100Vに対してはA=60となり、Vin=200Vに対してはA=40となる。このように、入力電圧が高いとインダクタL1に流れる電流の増分が小さくなる状況においてスロープ補償信号の振幅が一定であると、200V系の方が電流検出信号に対するスロープ補償信号の割合が大きくなり、力率が悪化する。
従来の力率改善を行うスイッチング電源装置では、電流モードで動作させる場合、力率改善回路が単にスロープ補償信号を電流検出信号に加えているだけであった。
図5は、図4に示すPWMコンパレータCP1により行われる比較について説明するものである。この比較は、スロープ補償回路4の出力と過電流保護回路3から出力される基準信号Vocpについて行われる。この場合、乗算回路1の出力電圧は基準信号Vocpの電圧より高いものとする。前述のように、PWMコンパレータCP1は基準信号Vocpの電圧と乗算回路1の出力電圧のうちの低い方の電圧をスロープ補償回路4の出力電圧と比較する。したがって、乗算回路1の出力電圧は、以下の説明では無視できる。図5において(a)はスイッチング電源装置への入力電圧Vin(ダイオードブリッジDBの出力電圧に相当)が低い場合、(b)は入力電圧Vinが高い場合((a)の2倍)を示す。図中、細線は単調増加する電流検出信号を示し、太線はスロープ補償回路4の出力である単調増加する電流検出信号と単調増加するスロープ補償信号との加算信号を示す。太線と細線の値の差分がスロープ補償量になる。このような装置では、スイッチング素子Qswがオンしたときに、(a)における電流検出信号のレベルが(b)におけるものと同じだとしても、スロープ補償回路4の出力レベルが基準信号Vocpに達して過電流が検出されたと判断されるときの電流検出信号の値が異なり、同じレベルの基準信号Vocpに対し互いに異なる値の電流が過電流と判断されてしまう。
力率改善回路では商用交流が全波整流された波形の電圧を入力として用いているので入力電圧が一定ではなく、入力電圧が低いときには過電流保護レベル(過電流と判断される正味の電流検出信号)が低くなり、入力電圧が高いときには過電流保護レベルが高くなってしまう。
また、別の観点から説明すると以下のようになる。上述のように、過電流が検出されたと判断されるときの正味の電流検出信号の値は、基準信号Vocpからスロープ補償量を差し引いたものになるから、スロープ補償回路4の出力が基準信号Vocpに達するまでの時間(スイッチング素子Qswがオンしている時間)が長いほどスロープ補償量が大きく、正味の電流検出信号の値は小さくなる。一方、入力電圧が低いときにはオン時比率が大きいので(オン時比率は、例えば昇圧型のスイッチング電源では(1−Vin/Vout)であり、降圧型のスイッチング電源では(Vin/Vout)である。これらの式は、インダクタL1に流れる電流IL1に関し、オン期間での増加分とオフ期間での減少分が等しいことから求められるものであるが、詳細な説明は省略する。)、オン期間が長くなり(スイッチング周期は入力電圧Vinによらず一定である)、入力電圧が高いときにはオン時比率が小さいので、オン期間が短くなる。従って、過電流保護レベル(基準信号Vocp)のレベルが一定であると、入力電圧が低いほどスロープ補償回路4の出力レベルが基準信号Vocpのレベルに達するまでの時間が長くなる確率が高くなる。すなわち、スイッチング素子Qswがオンしている時間が長くなる確率が高くなる。このため、過電流保護にかかる正味の電流検出信号のレベルはより小さくなりやすくなるのである。
実施の形態のスイッチング電源装置は、図4に示すように交流電圧をダイオードブリッジDBで全波整流して得られた直流電圧をスイッチング素子であるMOSFETによりオン、オフし、所望の直流電圧に変換して出力する昇圧型のコンバータである。このスイッチング電源装置はスロープ補償回路及び過電流保護回路を備え、過電流保護回路の基準信号を上記全波整流した電圧波形と逆相の電圧波形信号で変化させるものである。すなわち、全波整流波形の電圧を図4の分圧抵抗R30,R31により分圧して電圧波形を生成し、この分圧した波形に応じて過電流保護の補正値を決定している。
図1は本発明の実施の形態のスイッチング電源装置の要部を示す回路図である。図1において、1は乗算回路、R1,R2は抵抗である。演算増幅器OP1はボルテージフォロワを構成し、演算増幅器OP2は抵抗R1,R2とともに引き算回路を構成している。また、スイッチング素子であるMOSFETに駆動信号を出力するPWMコンパレータCP1を有している。
端子Tmには上記の分圧された全波整流波形の電圧信号Vmulが入力され、端子Trには定電圧の基準電圧Vrefが入力されている。演算増幅器OP2および抵抗R1,R2で構成される引き算回路により、基準電圧Vrefの値から電圧信号Vmulの値に入力補正倍率を乗じた値を引き算する。これによりスロープ補償の影響をなくすことができる過電流保護に関する基準電圧波形信号(OCP(Over Current Protection:過電流保護)補正値信号)Vocpを得ている。すなわち、上記の交流電圧をダイオードブリッジDBで全波整流した電圧の波形と逆相の波形で変化する電圧信号としてのVocpを得ることができる。また、端子Tsは図示しないスロープ補償回路の出力端子に接続され、スロープ補償信号が加算された電流検出信号が入力されている。
Vocp=((R1+R2)/R1)×Vref−(R2/R1)×Vmul
ここでR1,R2およびVrefの値は、入力補正倍率(R2/R1)が0.00154、Vmul=0のときにVocp=((R1+R2)/R1)×Vref=1.00154Vref≒Vrefで与えられるVocpの値が1.42Vとなるように定めている。
また、商用の交流入力電圧を100Vac(すなわち全波整流された入力電圧Vin(Vdc)の波形は|√2×100sinφ|で示される。)、説明を簡単にするために前述の分圧抵抗R30,R31による分圧比を1(すなわちVmul=Vdc。)とし、出力電圧をDC400V、スイッチングの周波数fswを65KHz(周期は15.38462μs)、スロープ補償信号の傾き(スロープ値)を40mV/μsとすると、上式はVocp=1.42−0.00154×Vdc、デューティ比(オン時比率)は1−Vdc/400、スロープ補償量は0.04(40mV/μs)×オン期間(15.38462μs×オン時比率)となる。そして、OCP補正値信号である基準電圧波形信号Vocpからスロープ補償の影響を除いた正味のOCP値(V)は(Vocp−(スロープ補償量))を計算することにより得ることができる。表1から分かるように、本実施の形態のスイッチング電源装置は、スロープ補償の影響を除去して正味のOCP値を一定にすることができる。
このように、実施の形態では、過電流保護回路の基準信号のレベルを入力交流電圧を全波整流した波形と逆相の波形の信号で変化させる。これにより、スイッチング電源装置を電流モードで動作させる場合に、実質の(正味の)過電流保護レベルが入力電圧により変化するスロープ補償量に影響されることなく一定となり、精度の高い過電流保護が可能になる。
図2は実施の形態のスイッチング電源装置の制御回路の全体構成を示すブロック図である。この制御回路はIC(集積回路)化されている。エラーアンプ(誤差増幅器)OP3の出力は乗算回路1を介してPWMコンパレータCP1に入力され、PWMコンパレータCP1の出力はフリップフロップFF1のリセット端子Rに入力される。フリップフロップFF1のQ出力はアンドゲートAG1を経てドライバ2に伝達され、ドライバ2から図示しない外部のMOSFETに駆動信号が出力される。PWMコンパレータCP1には過電流保護回路(OCP)3及びスロープ補償回路4の出力信号が入力される。フリップフロップFF1のセット端子Sには発振器5の出力が入力される。過電流保護回路(OCP)3は、図1に示す回路のうち、乗算回路1とPWMコンパレータCP1を除いた部分である。制御回路はまた、ブラウンアウト回路6、UVLO7、各部に駆動電圧や基準電圧を供給する電源部8を有している。ブラウンアウト回路6およびUVLO7は本発明とは直接関係しないため詳細な説明は省略するが、いずれもIC(集積回路)化された制御回路へ供給される電源電圧が低下したときの誤動作を防止するための回路である。CP2,CP3は演算増幅器からなるコンパレータ、R3,R4はスロープ補償信号の時間に対する傾き(スロープ値)を決めるための抵抗である。
上記構成の制御回路は、例えば昇圧型の力率改善コンバータを制御するためのものであり、スイッチング動作と力率改善動作が基本動作となっている。なお、本発明は昇圧型のスイッチング電源に限定されるものではなく、例えば降圧型のスイッチング電源にも適用することができる。COMP端子には図4に示すようにコンデンサなどの位相補償回路が接続されており、定常状態ではエラーアンプOP3の出力はほぼ直流電圧となる。この電圧は乗算回路1に入力されるが、乗算回路1にはまた交流入力電圧の(分圧された)全波整流波形の電圧が入力されており、乗算回路1からは2つの入力電圧の積である、正弦波の交流入力電圧を全波整流した波形に比例した電圧信号が出力される。そして、この正弦波を全波整流した波形の信号はPWMコンパレータCP1にインダクタ電流の基準として入力される。その結果、インダクタL1に流れるインダクタ電流の平均値波形は交流入力電圧と同相の全波整流された正弦波となる。さらに、インダクタ電流のスイッチングによるリップルが図4に示すコンデンサCiによって取り除かれることによりAC(交流)電源からスイッチング電源装置に流れ込む電流もほぼ正弦波状波形になり、力率を改善することができる。
上記のスロープ補償回路4は、上述のように電流検出信号に一定の傾きもつスロープ補償信号を加算することでサブハーモニック発振を抑制するものである。定電流源I1からの定電流の大きさが前述のスロープ補償信号の傾き(スロープ値)を決めるものである。この定電流は、内部電源の電圧値を前述の抵抗R11,R12および図2に示す端子SLOPEに接続される図示されない外部抵抗により抵抗分割した分圧値をもとに生成されている。
2 ドライバ
3 過電流保護回路
4 スロープ補償回路
5 発振器
6 ブラウンアウト回路
7 UVLO
8 電源部
10 電源制御IC
CP1 PWMコンパレータ
L1 インダクタ
OP1,OP2,OP4 演算増幅器
OP3 エラーアンプ
Q1 MOSFET
Qsw スイッチング素子
Vdc 商用の交流入力電圧が全波整流されたもので、本発明の実施の形態のスイッチング電源装置への入力信号またはその波形
Vmul 分圧された全波整流波形の信号
Vocp OCP補正値(スロープ補償の影響をなくすことができる過電流保護に関する基準電圧波形信号)
Claims (3)
- 交流電圧を全波整流して得られた直流電圧をスイッチング素子によりオン、オフし、所望の直流電圧に変換して出力するスイッチング電源装置において、
前記スイッチング素子に流れる電流を検出する電流検出手段と、
単調増加するスロープ補償信号を生成するスロープ補償回路と、
電流検出手段の出力である電流検出信号と前記スロープ補償信号との和信号を基準信号と比較する、もしくは前記電流検出信号を前記基準信号から前記スロープ補償信号を差し引いた差信号と比較することにより過電流を検出する過電流保護回路と、
を備え、
前記過電流保護回路の前記基準信号を、前記交流電圧を全波整流した波形と逆相の波形信号で変化させることを特徴とするスイッチング電源装置。 - 前記全波整流した波形として、前記交流電圧を全波整流して得られた電圧波形を分圧抵抗により分圧した波形を用いることを特徴とする請求項1記載のスイッチング電源装置。
- 前記単調増加する補償信号の傾きと前記スイッチング素子がオンしてからの経過時間との積であるスロープ補償量に応じて過電流保護の補正値を決定することを特徴とする請求項1記載のスイッチング電源装置。
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