JP5109723B2 - 空気入りタイヤ - Google Patents
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Description
そのため、カーカスの枚数を削減したり、あるいは、カーカスの巻上げ部の高さを抑制することがなされている。しかしながら、このようなカーカスの枚数の削減や巻上げ部の高さの短縮化を行うと、空気入りタイヤが縁石などに乗り上げる際にリムと縁石との間に挟まれるカーカスの部分が破断しやすくなり、カーカスの耐破断性を確保する上で不利がある。
また、ビードコアの周りを内側から外側に巻き上げることで巻上げ部を形成する第1のカーカスプライと、第1のカーカスプライの巻上げ部とビードエーペックスの外向き面との間を通りかつビードコアの外向き面のタイヤ軸方向外側で外向きに折り返して畳む折り返し部を形成する第2のカーカスプライとを設け、これによりサイドウォール部において第1のカーカスプライの巻上げ部と第2のカーカスプライとその折り返し部とで3重構造としたタイヤが提案されている(特許文献3参照)。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、軽量化およびカーカスの耐破断性の向上を図りつつ、車両の乗り心地などの一般特性を確保する上で有利な空気入りタイヤを提供することにある。
次に、本発明の第1の実施の形態の空気入りタイヤ10(以下単にタイヤ10という)について図面を参照して説明する。
図1は第1の実施の形態におけるタイヤ10の断面図である。
図1に示すように、タイヤ10は、トレッド部14と、このトレッド部14の両側に連続する左右のショルダー部16と、サイドウォール部18と、ビード部20とを含んで構成されている。
符号12は、ゴムで被覆された有機繊維コードにより形成されたコード層からなる1枚のカーカスを示しており、カーカス12は左右のビード部20間に延在しており、詳細には、カーカス12はトレッド部14から左右のショルダー部16およびサイドウォール部18を経てビード部20に延在している。
カーカス12は、タイヤ10の骨格を形成するものであり、タイヤ10に空気を充填した際に圧力容器としての役目を果たす強度メンバーであり、その内圧によって荷重を支え、走行中の動的負荷に耐える構造を有している。
ベルト22、24は、タイヤ10の周方向に貼り付けられた補強層であって、カーカス12を締め付けてトレッド剛性を高めると共に、衝撃を緩和してトレッド部14に生じた外傷がカーカス12に及ぶのを防止する。
ビードコア20Aは、スチールワイヤからなり、タイヤ10の内圧によって発生するカーカス12のコード張力を支えるものであって、カーカス12、ベルト22、24などと共にタイヤ10の強度部材として機能する。
本体部26は、トレッド部14の両側から左右のショルダー部16およびサイドウォール部18を通りビード部20に至る。
巻上げ部28は、本体部26に接続されビードコア20Aおよびビードフィラー20Bの周りを半径方向外側に巻き上げられている。
折り返し部30は、巻上げ部28の端部から半径方向内側に折り返され、本実施の形態では、折り返し部30はタイヤ10の幅方向の内側(タイヤ中心軸の軸方向の内側)で巻上げ部28に重なっている。
このように巻上げ部28と折り返し部30とが重ね合わされることによりカーカス12の耐破断性が高められる。
ビードコア20Aの内周端から巻上げ部28の外周端までの高さHuは、タイヤ断面高さHの30%以上50%以下であり、かつ、ビードコア20Aの内周端から折り返し部30の内周端までの高さHLは、0mm以上13mm以下であることが、タイヤ10が縁石などに乗り上げる際に、リム2と縁石との間に挟まれるカーカス12の部分の耐破断性を補強する上で好ましい。
なお、ビードコア20Aの内周端から折り返し部30の内周端までの高さHLの13mmという数値はリム2のフランジ高さを考慮したものである。
ビードコア20Aの内周端から巻上げ部28の外周端までの高さHuがタイヤ断面高さHの30%を下回ると、リム2と縁石との間に挟まれるカーカス12の部分の耐破断性を補強する上で不利があり、50%を上回るとカーカス20の軽量化を図る上で不利がある。
また、ビードコア20Aの内周端から折り返し部30の内周端までの高さHLが13mmを上回ると、折り返し部30の内周端がリム2のフランジ高さよりも上位に位置するため、カーカス12がリム2と縁石との間に挟まれた場合に荷重が折り返し部30の内周端部分に掛かりやすく耐破断性の向上を図る上で不利がある。
したがって、巻上げ部28および折り返し部30の少なくとも一方の中間伸度が、本体部26の中間伸度より大きい値であってもよいし、巻上げ部28および折り返し部30の双方の中間伸度が、本体部26の中間伸度より大きい値であってもよい。
ここで中間伸度とは、JIS L1017(化学繊維タイヤコード試験方法)の8.7項の「標準時試験」に準じて測定された「一定荷重時伸び率」であり、一定荷重Fは式(1)によって算出される。
F(N)=44×(d2/d1)……(1)
ここに、d1:繊維の種類によって定まる基準繊度(dtex)
d2:試料の表示繊度(dtex)
また、中間伸度の測定にあたっては、加硫後のタイヤから採取するものとし、試料(測定サンプル)を採取する位置はタイヤ断面において中間伸度を大きく設定した部位の概ね中央位置が望ましい。
また、複数ごとのカーカスを有するタイヤでは、当該部品の中間伸度は、当該部位に存在するそれぞれのカーカスの中間伸度を測定し、その値を平均して算出した値とする。詳細に説明すると、2枚以上のカーカスを有するタイヤでは、本体部26に2枚以上のカーカスが存在するため、本体部26の中間伸度は各カーカスの中間伸度の平均値として規定される。巻上げ部28および折り返し部30に2枚以上のカーカスが存在する場合も同様に、巻上げ部28の中間伸度および折り返し部30の中間伸度は、各カーカスの中間伸度の平均値としてそれぞれ規定される。
また、カーカス12に中間伸度の変化を与える方法として、カーカス12に与える撚りを変える方法など従来公知のさまざまな方法が採用可能である。
また、本体部26の中間伸度は、巻上げ部28および折り返し部30の中間伸度の平均値よりも小さいため、本体部26の中間伸度を従来と同じとすることで乗り心地などの一般特性などの性能を維持することができる。
具体的には、巻上げ部28および折り返し部30の中間伸度の平均値をE1(%)とし、本体部26の中間伸度をE2(%)としたとき、中間伸度差E1−E2を1%以上4%以下とすることがカーカス12の耐破断性の向上を図りつつ乗り心地などの一般特性を確保する上で好ましい。
E1−E2が1%を下回ると、有効な耐破断性を確保する上で不利があり、E1−E2が4%を上回ると、乗り心地などの一般特性を確保する上で不利がある。
巻上げ部28と折り返し部30とで有機繊維コードの延在方向を変えると、バイアス効果により当該部分の強度の向上を図る上で有利となりカーカス12の耐破断性の向上を図る上でより有利となる。
また、巻上げ部28および折り返し部30の構成から上記の効果が達成されることから、カーカス12が1枚であっても上記の効果を達成でき、タイヤの軽量化を図る上で有利となる。
次に第2の実施の形態について説明する。
図2は第2の実施の形態におけるタイヤ10の断面図であり、第1の実施の形態と同一または対応する部分、部材には同一の符号を付してその説明を省略する。
第1の実施の形態では、折り返し部30がタイヤ10の幅方向の内側(タイヤ中心軸の軸方向の内側)で巻上げ部28に重なっていたのに対して、第2の実施の形態では、折り返し部30がタイヤ10の幅方向の外側(タイヤ中心軸の軸方向の外側)で巻上げ部28に重なっている点のみが第1の実施の形態と相違している。
このような第2の実施の形態においても第1の実施の形態と同様の効果が奏される。
なお、第1、第2の実施の形態を比較すると、第1の実施の形態では、折り返し部30の内周端が巻上げ部28よりもタイヤ10の幅方向の内側に位置することから、カーカス12がリム2と縁石との間に挟まれた場合に荷重が折り返し部30の内周端部分に掛かりにくく耐久性の向上を図る上で第2の実施の形態に比べて有利である。
また、タイヤ10のリム2への装着方向が規定されている場合、リム2に装着した際に車両の外側に臨むセリアル側に位置する折り返し部30と、リム2に装着した際に車両の内側に臨む反セリアル側に位置する折り返し部30とで、巻上げ部28に重ねる箇所をそれぞれ異ならせてもよい。
言い換えると、セリアル側に位置する折り返し部30と、反セリアル側に位置する折り返し部30とで、巻上げ部28に対してタイヤ10の幅方向の内側および外側の何れに重なるかを異ならせてもよい。
タイヤ10のパターンエンドのデザインや非対称プロファイルを考慮した場合、上記のようにセリアル側と反セリアル側とで折り返し部30を別の方向に重ねることでタイヤ10全体として適正な剛性を確保する上で有利となる。
次に、タイヤ10の実施例を説明する。
表1は実施例と比較例の試験結果を示す説明図である。
比較例のタイヤは、巻上げ部28を有するが折り返し部30を有さないものである。
実施例1乃至実施例4のタイヤは、何れも、ビードコア20Aの内周端から巻上げ部28の外周端までの高さHuがタイヤ断面高さHの40%であり、かつ、ビードコア20Aの内周端から折り返し部30の内周端までの高さHLが12mmとなっている。
実施例1乃至実施例4は、中間伸度差E1−E2のみが、それぞれ1%、4%、0.5%、5%と異なっている。
試験条件は以下の通りである。
タイヤサイズ:175/65R14
リム:14×5.5JJ
評価車両:排気量1.3L、2WD車
AP:230/230
軸重:2名乗車相当。
乗り心地の感能評価は、比較例のタイヤを100点として行う。
縁石乗り越し性能:時速10km/hから2.5km/hごとに速度を上昇させ、縁石(高さ11cm)を進入角30度で乗り越えたときにタイヤが破損(カーカスの破断など)した速度を比較。
なお、実施例4では、中間伸度差E1−E2を5%とし、前述した中間伸度差E1−E2の好ましい範囲の上限値である4%を上回る数値で設定していることから、乗り心地などの一般特性が90点と比較例に対して劣るもののタイヤが破損する速度は比較例よりも高い速度27.5km/hを確保している。
Claims (9)
- トレッド部からサイドウォール部を通りビード部に至る本体部と、
前記本体部に接続されビードコアの周りを半径方向外側に巻き上げられた巻上げ部と、
前記巻上げ部の端部から半径方向内側に折り返された折り返し部とを有するカーカスを備えた空気入りタイヤであって、
前記巻上げ部および前記折り返し部の中間伸度の平均値が、前記本体部の中間伸度より大きい値である、
ことを特徴とする空気入りタイヤ。 - 前記巻上げ部および前記折り返し部の少なくとも一方の中間伸度が、前記本体部の中間伸度より大きい値である、
ことを特徴とする請求項1記載の空気入りタイヤ。 - 前記巻上げ部および前記折り返し部の双方の中間伸度が、前記本体部の中間伸度より大きい値である、
ことを特徴とする請求項1記載の空気入りタイヤ。 - 前記巻上げ部および前記折り返し部の中間伸度の平均値をE1(%)とし、前記本体部の中間伸度をE2(%)としたとき、中間伸度差E1−E2が1%以上4%以下である、
ことを特徴とする請求項1記載の空気入りタイヤ。 - 前記ビードコアの内周端から前記巻上げ部の外周端までの高さHuは、タイヤ断面高さHの30%以上50%以下であり、かつ、前記ビードコアの内周端から前記折り返し部の内周端までの高さHLは、0mm以上13mm以下である、
ことを特徴とする請求項1記載の空気入りタイヤ。 - 前記カーカスは、ゴムで被覆された有機繊維コードを含んで構成され、
前記巻上げ部に位置する前記有機繊維コードの延在方向と、前記折り返し部に位置する前記有機繊維コードの延在方向とが異なるように、前記巻上げ部に対して前記折り返し部が折り返されている、
ことを特徴とする請求項1記載の空気入りタイヤ。 - 前記折り返し部は前記巻上げ部のタイヤの幅方向の内側に重なっている、
ことを特徴とする請求項1記載の空気入りタイヤ。 - 前記折り返し部は前記巻上げ部のタイヤの幅方向の外側に重なっている、
ことを特徴とする請求項1記載の空気入りタイヤ。 - 前記タイヤがセリアル側と反セリアル側を有している場合に、セリアル側に位置する前記折り返し部と、反セリアル側に位置する前記折り返し部とでは、前記折り返し部が、前記巻上げ部のタイヤの幅方向の内側および外側の異なった箇所に重ねられている、
ことを特徴とする請求項1記載の空気入りタイヤ。
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