JP5109115B2 - ニッケル基超合金及びその製造方法 - Google Patents

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本発明は、ニッケル基超合金及びその製造方法に関する。より詳しくは結晶粒が微細化したニッケル基超合金及びニッケル基超合金の結晶微細化方法に関する。
ニッケル基超合金は、ニッケル(Ni)を主成分とし、クロム(Cr)、鉄(Fe)、その他の少量のマンガン(Mn)、シリコン(Si)、炭素(C)などからなる、耐熱、耐食合金であり、一般の材料が温度上昇と共に強度が低下するのに対し、約1100℃まで強度がほとんど低下せず、1100℃付近で最大強度を示すという特長を有する。これは、母相であるγ相(Ni固溶体)中にγ′相が整合析出することによる析出硬化や、レニウム(Re)、タングステン(W)、タンタル(Ta)などによる固溶強化によるものである。ニッケル基超合金は、この耐熱合金としての優れた特性から過酷な高温環境で広く使用されており、高温材料として欠かせない材料である。
ニッケル基超合金の1つにインコネル(登録商標)718合金がある。インコネル(登録商標)718合金は、発電用タービンやロケットエンジンなどの高温部材に適用される鋳造用Ni基耐熱合金である。インコネル(登録商標)718合金は凝固収縮が大きいため、精密鋳造を行う際には、凝固収縮による鋳造欠陥の生成を防ぐために、1000℃程度に予熱した鋳型に鋳造することが一般的である。その結果、凝固速度が小さくなり、得られる製品中の結晶粒径は非常に粗大なものになる。
タービンやエンジン部品の組み立てや、部分的な欠陥の補修のために溶接が施されるが、その際に、結晶粒界に析出したラーベス相(Laves相)が溶接時の熱影響部において液膜化することにより、粗大な結晶粒界に沿って微細な割れ(いわゆる溶接割れ)が生じることが問題になっている。図11に、溶接割れを示す。インコネル(登録商標)718合金部材1、2を溶接したとき、溶接部3の近傍の熱影響部4に微小割れ(図示せず)が生じる。この溶接割れを防ぐためには、結晶粒径を微細化することが有効と考えられている。また、結晶粒径を微細化することにより、製品の機械的特性の向上も期待される。
従来の機械的なインコネル(登録商標)718合金の結晶粒微細化技術としては、凝固温度近傍の溶湯を用いる低温鋳造法や鋳造中に外部から振動を付加するKM法があるが、いずれの方法も製品形状が限定される欠点がある。これに対して、添加剤による結晶粒微細化技術は、製品形状の制限を受けないため、有効な添加剤の開発が望まれている。
従来の添加剤による結晶粒微細化技術としては、アルミン酸コバルトを表面に塗布した鋳型を用いるもの、および溶湯中にランタン(La)またはセリウム(Ce)を添加することによるものがある。前者は、製品の表面近傍がわずかに微細化されるが、アルミン酸コバルトが溶湯中に均一に分散するものではないので、製品全体の微細化が得られない欠点がある。後者は、微細化効果が不十分である上に、LaおよびCe共にインコネル(登録商標)718合金に含まれない元素であるため、インコネル(登録商標)718合金の機械的特性に悪影響を及ぼす可能性がある。
非特許文献1、2には、ニッケル基超合金インコネル(登録商標)718の結晶粒微細化技術の例が開示されている。
「(社)日本鋳造工学会 第145回全国講演大会講演概要集」、P.25 「Ni基超合金の結晶粒微細化に及ぼすNi−Nb−C系合金添加の影響」、2004年9月17日発行 「International Conference on Solidification Science and Processing(ICSSP−2004)、2004年11月17発行、P.29
本発明は、上述の点に鑑み、機械的特性に悪影響を及ぼさずに結晶粒径が微細化されたニッケル基超合金及びその製造方法を提供するものである。
本発明に係るニッケル基超合金は、インコネル(登録商標)718合金によるニッケル基超合金に、組織中に面積分率が10%〜40%の初晶NbCを有しNi−0〜55質量%Nb−1〜3質量%C合金(ただしNbは0質量%を含まず)で構成されたNi−Nb−C合金による接種剤が、前記ニッケル基超合金に対して0.3質量%〜3.0質量%添加され、ニッケル基超合金が、接種剤に基いて均一分散されたNbC結晶により微細結晶化された構成とする。
本発明に係るニッケル基超合金の製造方法は、インコネル(登録商標)718合金によるニッケル基超合金溶湯を、1400℃〜1350℃の溶湯温度に保持する工程と、組織中に面積分率が10%〜40%の初晶NbCを有し、Ni−0〜55質量%Nb−1〜3質量%C合金(ただしNbは0質量%を含まず)で構成されたNi−Nb−C合金を接種剤として用い、ニッケル基超合金溶湯に、Ni−Nb−C合金による接種剤を、ニッケル基超合金溶湯に対して0.3質量%〜3.0質量%添加する工程と、所定の時間保持した後、ニッケル基超合金溶湯を冷却し、NbC結晶の均一分散によりニッケル基超合金を微細結晶化する工程とを有する。
本発明のニッケル基超合金では、インコネル(登録商標)718合金によるニッケル基超合金に、ニッケル基超合金の構成元素から構成された初晶NbCを有するNi−Nb−C合金による接種剤が添加されるので、ニッケル基超合金中にNbC結晶が均一に分散されてニッケル基超合金全体が微細結晶化される。また、接種剤がニッケル基超合金の構成元素からなるNi−Nb−C合金で形成されるので、ニッケル基超合金の機械的特性に悪影響を与えない。
本発明のニッケル基超合金の製造方法では、インコネル(登録商標)718合金によるニッケル基超合金溶湯を、所要の溶湯温度に保持し、組織中に初晶NbCを有し、Ni−0〜55質量%Nb−1〜3質量%C合金(ただしNbは0質量%を含まず)で構成されたNi−Nb−C合金を接種剤として用い、ニッケル基超合金溶湯に、Ni−Nb−C合金による接種剤を、ニッケル基超合金溶湯に対して0.3質量%〜3.0質量%添加することにより、ニッケル基超合金溶湯中にNbC結晶が均一に分散され、ニッケル基超合金全体が微細結晶化される。
本発明に係るニッケル基超合金によれば、機械的特性に悪影響を与えずに微細結晶化されたニッケル基超合金を提供することができる。特に、溶接時においても微小割れが生じない耐熱合金材料としてのニッケル基超合金であるインコネル(登録商標)718合金を提供することができる。本発明のニッケル基超合金は、過酷な高温環境で使用する高温材料に適用して好適である。
本発明に係るニッケル基超合金の製造方法によれば、機械的特性に悪影響を与えずに微細結晶化したニッケル基超合金を製造することができる。特に、溶接時においても微小割れが生じない耐熱合金材料としてのインコネル(登録商標)718合金を製造することができる。
以下、本発明の実施の形態を説明する。
本発明の実施の形態に係るニッケル基超合金は、ニッケルを主成分とし少なくともクロム、ニオブ、炭素を含有するインコネル(登録商標)718合金によるニッケル基超合金に、このニッケル基超合金の構成元素から構成された合金による接種剤、すなわちNbC結晶を含むNi−Nb−C合金の接種剤を添加して、NbC結晶を全体に均一に分散して構成される。このインコネル(登録商標)718合金によるニッケル基超合金の製造は、インコネル(登録商標)718合金の構成元素から構成されたNbC結晶を含むNi−Nb−C合金による接種剤を作製する。この作製したNi−Nb−C合金による接種剤は、粉砕して粒径が所要の大きさ、例えば1〜2mm程度の顆粒状にする。そして、所要温度に保持したインコネル(登録商標)718合金によるニッケル基超合金溶湯に、上記の接種剤を所要量添加し、所定の時間保持した後に冷却する。これによって、全体が均一に微細結晶化したニッケル基超合金を製造することができる。
接種剤であるNi−Nb−C合金は、ニッケル基超合金に対して0.3mass%〜3.0mass%(以下、mass%を、質量%という)の割合で添加するのが望ましい。この接種剤の添加量が0.3質量%より少ないと微細結晶化の効果が低減する。3.0質量%より多いとニッケル基超合金の組成が崩れニッケル基超合金としての特性が損なわれる。
ニッケル基超合金としては、上述したように、インコネル(登録商標)718合金を用いる。インコネル(登録商標)718合金を用いた場合、Ni−Nb−C合金の接種剤としては、Ni−0〜55質量%Nb−1〜3質量%C合金(ただしNbは0質量%を含まず)を用いることができる。つまり、Nbの含有率としては、0質量%<Nb≦55質量%である。好ましくは、10質量%≦Nb≦50質量%である。または、組織中に面積分率で少なくとも10%以上のNbC結晶、すなわち初晶NbCを有するNi−Nb−C合金を用いることができる。
Nbが55質量%よりも多く、Cが3質量%よりも多い場合は、アーク溶解による溶解途中でNbCが大量に生成して、融点が上昇するため、Ni、Nb及びCを完全に溶解させることができない。そのため、均一な接種剤を得ることができない。
Cが1質量%より少ない場合には、γ相またはラーベス相(Laves相)との共晶NbCが大量に生成するため、接種剤として機能しない可能性がある。
Nbの含有率を、10質量%≦Nb≦50質量%とするときには、初晶NbCの生成量がより多く、接種剤としての機能を十分に果たし、より確実にインコネル(登録商標)718合金の微細結晶化が図れる。0質量%<Nb≦10質量%の場合においても、Cが1〜3質量%含まれていれば十分な量の初晶NbCが得られる。
因みに、初晶NbCが生成する組成においてNb=60質量%の合金を作製した場合、アーク溶解で完全に溶解させて、均一な接種剤を作製することができなかった。
初晶NbCの面積分率の上限としては、アーク溶解で作製可能なNi−Nb−C合金において、40%程度が限度である。ただし、特殊な方法、例えばメカニカルアロイングやメカニヒュージョンを用いれば、初晶NbCの面積分率が40%以上の接種剤を合成することが可能である。初晶NbCの面積分率が10%より少ないと、接種剤といての機能が薄れる。
本実施の形態のニッケルを主成分とし少なくともクロム、ニオブ、炭素を含有するインコネル(登録商標718合金によるニッケル基超合金の製造は、Ni−Nb−C合金の接種剤を作製する。作製したNi−Nb−C合金は、粉砕して粒径が例えば1〜2mm程度の顆粒状にする。そして、所要温度に保持したニッケル基超合金溶湯に、上記Ni−Nb−C合金による接種剤を添加する。ニッケル基超合金溶湯の温度は、1400℃〜1350℃とするのが望ましい。溶湯温度が1400℃より高温にすると、接種剤が添加後に速やかに溶湯中に溶解してしまい、核として働かなくなる。1350℃より低温にすると、鋳造工程中に凝固してしまい,鋳型に十分に鋳造できない欠点が生じる。また、接種剤であるNi−Nb−C合金の添加量としては、上述したようにニッケル基超合金に対して0.3質量%〜3.0質量%の割合で添加するのが望ましい。
接種剤を添加した後、所定の保持時間を経過して冷却する。この保持時間は、ニッケル基超合金溶湯の保持温度、ニッケル基超合金の組成、Ni−Nb−C合金の組成に応じて異なる。これにより、NbC結晶が均一に分散され、全体が例えば100μm程度に均一に微細結晶化したニッケル基超合金、例えばインコネル(登録商標)合金を製造することができる。接種剤無添加の場合と比較して約10分の1という著しい微細化効果が得られる。
本実施の形態に係るニッケル基超合金によれば、ニッケル基超合金の構成元素からなる合金による接種剤を添加することにより、全体が均一に微細結晶化したニッケル基超合金を提供することができる。したがって、このインコネル(登録商標)718合金によるニッケル基超合金は、溶接時の微小割れが生じることがなく、過酷な高温環境で使用に耐える高温材料に適用して好適である。また、接種剤がニッケル基超合金の構成元素からなる合金で作製されるので、接種剤添加後のニッケル基超合金の機械的特性に悪影響を及ぼすことがない、優位点を有する。
本実施の形態に係るニッケル基超合金の製造方法によれば、上述した機械的特性に悪影響を与えずに、微細結晶化したニッケル基超合金を容易に製造することができる。
次に、本発明の実施例について説明する。本実施例は、ニッケル基超合金としてインコネル(登録商標)718合金を用い、このインコネル(登録商標)718合金のγ相との整合性の良さや、インコネル(登録商標)718合金の組成成分であることなどから、接種剤(添加剤)としてNi−Nb−C合金を用いた。
先ず、NbC結晶を含む接種剤として、インコネル(登録商標)718合金に含まれる合金から構成されるNi−Nb−C合金を作製した。このNi−Nb−C合金の作製には、はじめに、純度99.9質量%以上、本例では純度99.9質量%の純ニッケルペレットと電極黒鉛から、高周波誘導加熱炉を用いて、高周波溶解によりNi−1.5質量%C合金およびNi−3.0質量%C合金を作製した。次に、作製したそれぞれのNi−C合金に純度99.5質量%以上、本例では純度99.5質量%の純ニオブ(Nb)を加えて、アルゴン雰囲気中でアーク溶解することにより、Ni−10〜50質量%Nb−1〜3質量%Cの範囲にある合金(接種剤A〜K)を作製した。
上述の作製したNi−Nb−C合金、すなわち接種剤A〜Kの組成を図1に示す。
接種剤Aは、Ni−10質量%Nb−3.0質量%C合金である。
接種剤Bは、Ni−20質量%Nb−3.0質量%C合金である。
接種剤Cは、Ni−30質量%Nb−3.0質量%C合金である。
接種剤Dは、Ni−10質量%Nb−2.0質量%C合金である。
接種剤Eは、Ni−20質量%Nb−2.0質量%C合金である。
接種剤Fは、Ni−30質量%Nb−2.0質量%C合金である。
接種剤Gは、Ni−40質量%Nb−2.0質量%C合金である。
接種剤Hは、Ni−50質量%Nb−2.0質量%C合金である。
接種剤Iは、Ni−10質量%Nb−1.0質量%C合金である。
接種剤Jは、Ni−20質量%Nb−1.0質量%C合金である。
接種剤Kは、Ni−30質量%Nb−1.0質量%C合金である。
Ni−10質量%Nb−1.0質量%C合金(接種剤I)の組成は、図1の組成「I」に示すように、γ(Ni固溶体)とNbCの共晶線に近く、このため初晶NbCが少なく共晶NbCが多くなる。実際に図2の組織写真Iに示すように、Ni−10質量%Nb−1.0質量%C合金(接種剤I)は、微細なNbC結晶を多く含む合金である。すなわち、比較的細かい共晶NbCが多く、初晶NbCが少量であった。
その他のNi−10〜50質量%Nb−1〜3質量%C合金(接種剤A〜H,J,K)は、図1に示すように、比較的γ(Ni固溶体)とNbCの共晶線から離れた位置にあり、このため初晶NbCを多く含む。実際に、例えば、Ni−10質量%Nb−3.0質量%C合金(接種剤A)、Ni−30質量%Nb−3.0質量%C合金(接種剤C)、Ni−50質量%Nb−2.0質量%C合金(接種剤H)では、図2の組織写真A,C,Hに示すように、粗大なNbC結晶を多く含む合金である。すなわち、比較的大きな初晶NbCが多く、共晶NbCが少量であった。図示しないが、接種剤B,D〜G、J,Kについても同様であった。
作製したNi−Nb−C合金は、粉砕して顆粒状(粒径1〜2mm)にして接種剤とした。
本実施例では、試料にインコネル(登録商標)718合金を用い、接種剤に上記作製したNi−10〜50質量%Nb−1〜3質量%Cの範囲にある合金を用いた。インコネル(登録商標)718合金の組成を表1に示す。
インコネル(登録商標)718合金を電気炉を用いてアルゴン雰囲気において1450℃で完全に溶解した後、1400℃および1350℃に保持した。保持したインコネル(登録商標)718合金溶湯中に、所定量の接種剤を添加し、石英管により所定の時間攪拌、保持した後、電気炉からインコネル(登録商標)718合金を取り出して空冷した。
ここで、試料の組織観察および粒径測定方法について述べておく。得られた試料は中央横断面(試料下端より1〜1.5cmの範囲内)で切断し、樹脂埋めして最終的に鏡面研磨しよく乾燥させた後、マクロ腐食およびミクロ腐食をして、組織観察、粒径測定を行った。
(マクロ組織観察)
研磨した試料にマクロ腐食を施し、図3に示すように、観察面を撮影し、組織観察、粒径測定を行う。粒径測定は、観察面の試料組織上に円を描き、その円周の長さを、その円が横切っている結晶粒の数で割ることで平均粒径を求めた。また、試料の内部と外部での冷却速度の違いを考慮して、試料半径rに対して、3/4r,1/2r,1/4rの同心円上の位置で測定を行った。
(ミクロ組織観察)
マクロ腐食での粒径測定が困難な場合(目視で粒径が約1mm以下)、ミクロ腐食して、組織観察および粒径測定を行った。研磨した試料にミクロ腐食を施し、図4に示すように、観察面を光学顕微鏡で観察、撮影し、組織観察、粒径測定を行った。粒径測定は、ミクロ組織写真上に無作為に直線を引き、その直線の長さを、その直線が横切っている結晶粒の数で割ることで平均粒径を求めた。1つの試料につき5視野以上で、1視野につき7本の直線を引いて、粒径測定を行った。
図5に、溶湯温度1400℃で保持したインコネル(登録商標)718合金溶湯に、インコネル(登録商標)718合金に対して0.3質量%の接種剤F、Jを添加し、所定時間保持後に空冷した際の結晶粒径の変化を示す。同図において、■印は3/4r円上の位置での測定、◆印は1/2rの円上の位置での測定、▲印は1/4r円上の位置での測定で、いずれも接種剤Fの場合である。□印は3/4r円上の位置での測定、◇印は1/2rの円上の位置での測定、△印は1/4r円上の位置での測定で、いずれも接種剤Jの場合である。なお、各印は後述の図6、図7においても同じである。
いずれの接種剤1、2も、わずかに結晶粒径は減少するものの、顕著な微細化効果は得られなかった。
図6に、溶湯温度1350℃で保持したインコネル(登録商標)718合金溶湯に、インコネル(登録商標)718合金に対して0.3質量%の接種剤を添加し、所定時間保持後に空冷した際の結晶粒径の変化を示す。保持時間が5secの場合に、結晶粒径が約100μmの等軸晶が試料の全面で観測され、著しい微細化効果が得られた。また、いずれの接種剤F、Jにおいても、微細化効果の差は見られなかった。
図7に、溶湯温度1350℃で保持したインコネル(登録商標)718合金溶湯に、接種剤F、Jの添加量をインコネル(登録商標)718合金に対して0.3〜1.0質量%と変化させて、5sec保持後に空冷した際の結晶粒径の変化を示す。いずれの接種剤F、Jにおいても、添加量が0.3質量%以上の場合において、結晶粒径が約100μmの等軸晶が試料の全面で観察され、著しい微細化効果が得られた。
図8に、溶湯温度1350℃で保持したインコネル(登録商標)718合金溶湯に、接種剤Fをインコネル(登録商標)718合金に対して1.0質量%添加し、所定の時間保持後に空冷した際の結晶粒径の変化を示す。接種剤の量が0.3質量%の場合においては、図6に示したように保持時間が5secの場合においてのみ顕著な微細化効果が得られた。図8に示すように、接種剤Fの量を1.0質量%とした場合においては、保持時間が35secまで、結晶粒径が約100μmの等軸晶が観察され、微細化効果を延長することができた。
本実施例によれば、インコネル(登録商標)718合金溶湯の保持温度1350℃において、Ni−Nb−C合金接種剤を0.3質量%以上添加した場合に微細化効果が認められた。
インコネル(登録商標)718合金溶湯の保持温度1350℃において、Ni−Nb−C合金接種剤を1.0質量%添加した試料では、保持時間35secまで約100μm以下の微細な組織が得られ、無添加試料の粒径の約1/10以下にまで微細化でき、微細効果が長時間持続することが認められた。
インコネル(登録商標)718合金溶湯の保持温度1350℃でNi−Nb−C合金接種剤を1.0質量%添加した場合においても、保持時間60secでは、粒径が急増しており、接種剤由来のNbCが溶湯中に溶解してしまったものと考えられる。このことから接種剤中のNbCが初晶γの核として働いていることが示唆された。
図9の組織写真I、A、C、Hに、各種接種剤の添加後のインコネル(登録商標)718合金の代表的なマクロ組織を示す。接種剤Iを除いた各種接種剤A、C、Hを添加したインコネル(登録商標)718合金は、組織写真A、C、Hで示すように、結晶粒が微細化されているのがわかる。接種剤Iを添加した場合には、接種しない場合とほぼ同じ結晶粒径であった。このことから、接種剤中の初晶NbCが初晶γの核として働いていることが示唆された。
なお、接種剤Iの組成でも、アーク溶解での合金の冷却方法を工夫することにより、有効な接種剤を作成することができる。また、アーク溶解の装置を改良することにより、接種剤Iを用いて微細結晶化したインコネル(登録商標)718合金を得ることができる。
画像解析により測定した接種剤(A〜K)中の初晶NbCの面積分率と接種後のインコネル(登録商標)718合金の結晶粒径の関係を調べた結果を図10に示す。これより、接種剤中の初晶NbCの面積分率が10%以上であれば、微細化効果が得られると考えられる。
液相面上に表した接種剤の組成図である。 各種接種剤の組織写真である。 マクロ組織の粒径測定法の説明図である。 ミクロ組織の粒径測定法の説明図である。 溶湯温度1400℃で保持したインコネル(登録商標)718合金溶湯に、0.3質量%の接種剤F、Jを添加した場合の結晶粒径の変化を示すグラフである。 溶湯温度1350℃で保持したインコネル(登録商標)718合金溶湯に、0.3質量%の接種剤F、Jを添加した場合の結晶粒径の変化を示すグラフである。 溶湯温度1350℃で保持したインコネル(登録商標)718合金溶湯に、接種剤F、Jの添加量を0.3〜1.0質量%と変化させた場合の結晶粒径の変化を示すグラフである。 溶湯温度1350℃で保持したインコネル(登録商標)718合金溶湯に、接種剤Fを1.0質量%添加した場合の結晶粒径の変化を示すグラフである。 I,A、C、H 各種接種剤の添加後のインコネル(登録商標)718合金の代表的なマクロ組織を示す組織写真である。 接種剤中の初晶NbCの面積分率と接種後のインコネル(登録商標)718合金の結晶粒径の関係を示すグラフである。 ニッケル基超合金であるインコネル(登録商標)718合金を溶接したときの、溶接割れの説明に供する斜視図である。
1、2・・インコネル(登録商標)718合金、3・・溶接部、4・・熱影響部

Claims (2)

  1. インコネル(登録商標)718合金によるニッケル基超合金に、組織中に面積分率が10%〜40%の初晶NbCを有しNi−0〜55質量%Nb−1〜3質量%C合金(ただしNbは0質量%を含まず)で構成されたNi−Nb−C合金による接種剤が、前記ニッケル基超合金に対して0.3質量%〜3.0質量%添加され、
    前記ニッケル基超合金が、前記接種剤に基いて均一分散されたNbC結晶により微細結晶化されて成る
    ことを特徴とするニッケル基超合金。
  2. インコネル(登録商標)718合金によるニッケル基超合金溶湯を、1400℃〜1350℃の溶湯温度に保持する工程と、
    組織中に面積分率が10%〜40%の初晶NbCを有し、Ni−0〜55質量%Nb−1〜3質量%C合金(ただしNbは0質量%を含まず)で構成されたNi−Nb−C合金を接種剤として用い、前記ニッケル基超合金溶湯に、前記Ni−Nb−C合金による接種剤を、前記ニッケル基超合金溶湯に対して0.3質量%〜3.0質量%添加する工程と、
    所定の時間保持した後、前記ニッケル基超合金溶湯を冷却し、NbC結晶の均一分散によりニッケル基超合金を微細結晶化する工程と
    を有することを特徴とするニッケル基超合金の製造方法。
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