JP5108864B2 - 裏当装置および溶接方法 - Google Patents
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Description
裏当装置では、平板状のトラフベルトを一対のプーリ間で「U」字形に成型し、かつ、移動可能に支持するために、多数の垂直ローラを配置する必要がある。このような裏当装置は、トラフベルトを垂直ローラで支持する構造が複雑で、トラフベルトが損傷し易いという問題点があった。
それによって、従来の裏当装置では、良好な溶接裏ビード形状が得られないという問題点があった。
また、かかる構成によれば、トラフと被溶接鋼板との隙間が所定範囲内であって、エアホースのエア圧力が所定範囲内であることによって、フラックスの被溶接鋼板への押当状態を調整することができる。
また、トラフフレーム昇降用エアホースの膨張でトラフフレームが上昇した際に、支持構造体にストッパが当接することで、その上昇が規制される。
請求項1の発明は、溶接開先部全長に亘り、特に溶接始端部及び溶接終端部付近に充分な量のフラックスを押圧して、片面溶接を行う際に、良好な溶接形状を得ることができる。
また、裏当装置は、トラフと被溶接鋼板との間の隙間にバラツキが生じるのを抑制することができる。さらに、トラフとトラフ内のフラックスを被溶接鋼板に適宜な押圧して、常に、フラックスを適宜な押圧力で被溶接鋼板に押し付けた状態で密着させることができ、溶接不良が発生するのを抑制することができる。
また、請求項1の発明は、昇降装置を備えていることによって、トラフの上昇作業を容易にすることができる。また、トラフと被溶接鋼板との隙間と、その間のエア圧力とを所定範囲内にすることによって、フラックスの被溶接鋼板への密着状態および供給状態を良好にすることができる。その結果、フラックスの密着不良による溶接不良の発生を抑制して、良好な溶接形状を得ることができる。
本発明に係る裏当装置および溶接方法の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、実施形態の説明において、長手方向は被溶接鋼板Eの溶接開先部Mに平行な方向、幅方向は溶接開先部Mに直交する方向とする。
裏当装置10は、裏当部材11を有する。また、裏当装置10は、エアホース22と、支持構造体17と、昇降フレーム24と、1つのフラックス回収手段25とを備えてもよい。
以下、各構成について説明する。
トラフ40は、長手方向に直交する開口幅Dの長さが、50〜200mmの範囲である。トラフ40は、例えば、ある程度の剛性および耐熱性を有する弾性体で構成されている。トラフ40は、例えば、外側が布からなり、内側がゴムからなる消防用ホースのようなものからなる。
固定プレート41b、41bは、トラフ支持フレーム41a、41aの左右内壁の上端部にトラフ40を介在した状態で宛がうように配置される板状保持部材であり、トラフ支持フレーム41a,41aの上部に沿って細長く形成されている。
固定具41c、41cは、その固定プレート41b、41bをトラフ支持フレーム41a、41aに締結するボルト等からなる。
昇降ガイド21は、第3エアホース22c、22cの膨張または収縮によって、第3エアホース22cの中央部側で、支持構造体17のガイド穴27、27にガイドされてスライドし、支持板42を水平状態で昇降させ、トラフフレーム41の傾斜を阻止して、水平な状態を維持させている。
図1に示すように、底板18は、後記する昇降フレーム24の上部に配置された裏当ローラ部24aに支持され、溶接開先部Mに対する裏当部材11の幅方向の位置を調整する。その底板18には、上昇した際の昇降ガイド21のストッパ21cが底板18に当接する。したがって、底板18は、長手方向全長に亘って設ける必要はなく、裏当ローラ部24aに支持される所定の長さを有していればよい。
そして、支持構造体17は、底板18に係合する係合部を備えた駆動機構(図示せず)によって、裏当ローラ部24aの上を幅方向に水平移動する。
図2(b)に示すように、フラックスF(裏当部材11)と被溶接鋼板Eの裏面との隙間Sが第3エアホース22cの最大膨張時の直径の75%を超える場合には、隙間Sが大きすぎて、第1エアホース22aおよび第3エアホース22cの膨張による溶接開先部MへのフラックスFの供給量が少なく、押圧力が弱いため、裏ビード不良、溶落が発生しやすくなる。したがって、隙間Sは、第1エアホース22aおよび第3エアホース22cの最大膨張時の直径の前記75%以下が好ましい。
エア圧力が0.05MPa未満の場合には、溶接開先部MへのフラックスFの押当力が小さいため、裏ビード不良、溶落が発生しやすくなる。エア圧力が0.5MPaを超える場合には、トラフ40の被溶接鋼板Eの裏面への押し付けが過剰となり、被溶接鋼板Eの持ち上がりが発生するため、溶接割れが発生しやすくなる。したがって、エア圧力は前記0.05〜0.5MPaが好ましい。
次に、本発明に係る片面溶接装置1について説明する。
図1、図5および図7に示すように、片面溶接装置1は、裏当部材11を有する裏当装置10と、架台フレーム104と、搬送および固定手段105と、溶接機30とを備えている。
次に、裏当装置10を備えた片面溶接装置1を用いた溶接方法について、図1〜図7を参照して説明する。
本発明に係る溶接方法は、裏当装置10が設置されている位置に被溶接鋼板Eを移動させて配置し、被溶接鋼板Eの溶接開先部Mに沿って裏当装置10の裏当部材11を押当して溶接作業を行うものである。具体的には、トラフ40を上昇させる第1工程と、第3エアホース22cに圧縮空気を注入することで膨張させてトラフ40の上端を溶接開先部Mの裏面に近接または当接する第2工程と、第1エアホース22aを膨張させトラフ40内のフラックスFを溶接開先部Mの裏面に押圧する第3工程と、片面溶接を行う第4工程を含むものである。以下、各工程について説明する。
(準備工程)
図5に示すフラックス供給手段26から裏当部材11のトラフ40内にフラックスFを供給する。その際、第1エアホース22a、第2エアホース22bおよび第3エアホース22cは、図2(b)に示すように、収縮した状態にある。このため、フラックスFを収納したトラフ40は、下端部がフラックスFの重さでトラフフレーム41から垂れ下がった状態にある。また、トラフフレーム41は、支持板42が側板19、19の上端に載置されて下降した状態にする。
フラックスFを供給するときは、フラックス供給手段26を支持する無端チェーン等(図示せす)を駆動し、フラックス供給手段26をトラフ40の長手方向に沿って走行させながら、ホッパに収容された下敷フラックスF2および裏当フラックスF1を、順次散布して、裏当部材11(トラフ40)にフラックスFを供給する。
具体的には、裏当部材11を搭載した支持構造体17を、この支持構造体17の直下に配置された昇降フレーム24の上部に配置された裏当ローラ部24aの上で幅方向に水平移動させる。
その幅方向の微調整が終了したら、マグネット装置105bを起動させて、被溶接鋼板Eを、磁気によって下方に引き付けて固定する。このとき、各エアホース22は、前記同様、収縮した状態にある。このため、トラフ40およびトラフフレーム41は、下降した状態になっている。
図1に示すように、昇降装置23を駆動させて、フラックスFが保持され被溶接鋼板Eの溶接開先部Mに向かって溶接開先部Mの長さL2以上かつ最小限度の長さL1を有するトラフ40を、被溶接鋼板Eの近傍の所定位置まで上昇させる。
本発明において、所定位置とは、昇降装置23で裏当部材11をトラフ40の上昇端まで上昇させたときに、裏当部材11と被溶接鋼板Eとの隙間Sが、第3エアホース22cの最大膨張時の直径の75%以下となる位置をいう。
図3に示すに示すように、トラフフレーム41の支持板42と昇降装置23上の支持構造体17の天板20との間に配置された2本の第3エアホース22c、22cに、加圧装置(図示せず)によって圧縮空気を注入することで膨張させる。第3エアホース22c、22cの膨張に伴って、昇降ガイド21が、第3エアホース22c、22cの中央部側で、天板20および底板18のガイド穴27、27にガイドされながら上昇して、昇降ガイド21の上端部に固定された支持板42を高さH(図2(b)参照)押し上げて、トラフフレーム41全体が高さH上昇する。
そして、第3エアホース22cの膨張は、昇降ガイド21の下端部に設けられたストッパ21cが、支持構造体17の底板18の下面に当接するまで行う。このとき、支持板42の押し上げによって、支持板42と一体のトラフ支持フレーム41a、41aおよびトラフ40が同時に上昇して、トラフ40の上端が被溶接鋼板Eの溶接開先部Mの裏側に近接または当接する位置まで上昇される。
つまり、トラフ40内に収納したフラックスFの量が多少少なく、トラフ40からの盛り上りが無い場合、トラフ40の上端が溶接開先部Mの裏側に押当する位置まで上昇する。
また、トラフ40内に収納したフラックスFの量が多少多く、トラフ40からの盛り上りが大きい場合には、トラフ40の上端が被溶接鋼板Eの溶接開先部Mの裏側の近接した位置まで上昇させて、裏当フラックスF1が溶接開先部Mの裏側に押し付けた状態になる。
加圧装置(図示せず)によって第1エアホース22aに空気を導入し、第1エアホース22aを膨張させる。トラフ40の下側に配置された第1エアホース22aの膨張によって、フラックスFを収納したトラフ40の下端部が、押し上げられ、フラックスFが被溶接鋼板Eに接触する高さまで完全に押し上げられて、フラックスFが、適宜な押圧力で被溶接鋼板Eの溶接開先部Mの裏側に押し当てられる。
そして、図7に示すように、溶接機30を溶接機ビーム101の上を所定速度で移動させながら、溶接開先部Mの表側から溶接トーチ33によって片面溶接を施して、被溶接鋼板E、Eを溶接する。
なお、溶接機30で溶接した後、裏当フラックスF1は溶接熱により固化する。そして、次の溶接をするために、固化した裏当フラックスF1を除去し、トラフ40内の上層に新しい裏当フラックスF1を補充する必要がある。このとき、下敷フラックスF2はそのまま使用されるので、固化した裏当フラックスF1を除去するときはできるだけ下敷フラックスF2を残しておくことよい。
この場合、図4に示したように、使用済みとなった裏当フラックスF1は、第2エアホース22bを膨張させることにより、トラフ40の上面に盛り上がった状態となり、その盛り上がり部分をフラックス供給手段26に付属したフラックス掻き落とし器(図示せず)にて、裏当フラックスF1の表面を掻き落として一定高さにした後、フラックス供給手段26によって、新しい裏当フラックスF1を撒いて補充する。掻き落としたフラックスFはフラックス回収手段25によって回収する。
また、昇降ガイド21は、棒状部材として説明したが、その形状は板状であっても構わない。
10 裏当装置
11 裏当部材
17 支持構造体
22 エアホース
22a 第1エアホース
22b 第2エアホース
22c 第3エアホース
24 昇降フレーム
23 昇降装置
33 溶接トーチ
40 トラフ
41 トラフフレーム
B1 第1エアホースの膨張高さ
B2 第2エアホースの膨張高さ(最大膨張時の直径)
B3 第3エアホースの膨張高さ
D トラフの開口幅の長さ
D1 第1エアホースの外径
D2 第2エアホースの外径
E 被溶接鋼板
F フラックス(裏当部材)
F1 裏当フラックス
F2 下敷フラックス
L1 裏当装置の全長
L2 溶接開先部の長さ
M 溶接開先部
S 裏当部材と被溶接鋼板との隙間
Claims (6)
- 被溶接鋼板の片面溶接装置で使用する裏当装置であって、
前記裏当装置の全長は前記被溶接鋼板の溶接開先部以上かつ最小限度の長さに形成され、前記溶接開先部に沿って配置されるトラフフレームおよびこのトラフフレームに固定されフラックスが収納されるトラフからなる裏当部材と、
加圧装置から供給された圧縮空気により膨張して前記フラックスを前記被溶接鋼板の溶接開先部の下面に押し付けるエアホースと、
前記トラフフレームを上昇下降させる昇降装置と、
前記昇降装置上に配置され前記トラフフレームを支持する支持構造体と、を備え、
前記エアホースは、前記トラフと、当該トラフを固定するトラフフレームとの間に介在されたトラフ昇降用エアホースと、
前記トラフフレームと前記支持構造体との間に設けられたトラフフレーム昇降用エアホースと、有すると共に、
前記昇降装置で前記裏当部材を前記トラフの上昇端まで上昇させたときに、前記裏当部材と前記被溶接鋼板との隙間が、前記トラフ昇降用エアホースおよび前記トラフフレーム昇降用エアホースの最大膨張時の直径の75%以下となるようにすると共に、前記トラフ昇降用エアホースおよび前記トラフフレーム昇降用エアホースのエア圧力が0.05〜0.5MPaの範囲であり、
前記トラフフレームには、当該トラフフレームに設けられた昇降ガイドの所定位置に配置され、前記トラフフレーム昇降用エアホースの膨張で当該トラフフレームが上昇した際に、前記支持構造体に当接することでその上昇を規制するストッパが設けられていることを特徴とする裏当装置。 - 前記支持構造体は、前記トラフフレーム昇降用エアホースが載置され、前記昇降ガイドをガイドするガイド穴が形成された天板と、
前記天板の幅方向の両側にそれぞれ上下方向に向けて設けられた側板と、
前記両側の側板の間に連結され、前記昇降ガイドをガイドするガイド穴が形成された底板と、を備えていることを特徴とする請求項1に記載の裏当装置。 - 前記昇降ガイドは、棒状部材からなり、その長さが、上方向にスライド移動した際に、前記トラフフレームに保持された前記トラフを前記溶接開先部の下面に近接または当接させることができる長さに形成され、
前記ストッパは、前記昇降ガイドの所定位置に固定されるナットからなる固定部材によって保持されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の裏当装置。 - 前記トラフは、長手方向に直交する開口幅の長さが、50〜200mmの範囲であることを特徴する請求項1ないし請求項3いずれか一項に記載の裏当装置。
- 片面溶接装置の裏当装置が設置されている対応位置に被溶接鋼板を移動させて配置し、前記被溶接鋼板の溶接開先部に沿って前記裏当装置の裏当部材を押当して溶接作業を行う溶接方法であって、
前記被溶接鋼板の溶接開先部に向かって前記溶接開先部以上かつ最小限度の長さを有するトラフおよびトラフフレームを昇降装置により上昇させる第1工程と、
前記昇降装置により上昇した裏当部材を前記トラフフレームと前記昇降装置上の支持構造体との間に配置されたトラフフレーム昇降用エアホースに圧縮空気を注入することで膨張させて、前記トラフフレームに設けられた昇降ガイドの所定位置に配置されたストッパが、前記トラフフレーム昇降用エアホースの膨張で当該トラフフレームを上昇させた際に、前記支持構造体に当接することでその上昇を規制し、前記トラフを前記溶接開先部の下面に近接または押当させる第2工程と、
そのトラフおよび前記トラフフレームの間に配置されたトラフ昇降用エアホースに圧縮空気を注入することで膨張させて前記トラフ内のフラックスを前記溶接開先部の下面に押圧する第3工程と、
前記片面溶接装置の溶接トーチにより片面溶接を行う第4工程と、を含むことを特徴とする溶接方法。 - 前記第4工程による片面溶接の終了後、前記トラフ昇降用エアホースおよび前記トラフフレーム昇降用エアホースを収縮させると共に、前記昇降装置を下降させ、次いで、前記トラフと前記トラフフレームの上部との間に配置されたフラックス掻き落とし用エアホースに圧縮空気を注入することで膨張させ、前記トラフ内のフラックスを押し上げる工程を含むことを特徴とする請求項5に記載の溶接方法。
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