JP5107845B2 - 木質材料の表面硬化方法 - Google Patents
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そこで、国産材ではスギ、輸入材では豊富な資源量と生育の速さからラジアータパインその他の針葉樹材が注目されている。
このように、床材や階段材、テーブルなどに用いた場合に、輸送中や使用中に容易に傷がついてしまっては、商品価値が下がってしまう。
後者の場合、表面から1〜2mm程度までの範囲への樹脂含浸を行えば、床材などの使用に必要十分な表面硬度が得られる。つまり、樹脂が含浸されて部分的に密度が800kg/m3となれば、全体としての重量増加は最小限で、表面付近のみ密度が増加して強度も向上するので、優れた実用性を示すようになる。
なお、柱材などでは全体の強度向上が必要で、その為には樹脂含浸深さが5〜10mm程度も必要な場合がある。
この方法は、木質材料を樹脂液に浸漬して長時間放置することで、木質材料表面に樹脂を含浸、硬化させるものである。0.5mm以下の薄い木材単板であれば、比較的短時間で含浸可能であり、特殊な技術は不要で、装置もバット程度の簡単なものでよい。
この方法は、樹脂液を満たした容器内に木質材料を浸漬したまま圧力タンク内に入れ、減圧、加圧を行うことで木質材料内部の空気を抜き、代わってこの空隙に樹脂液を注入するものである。一般には「WPC」と称される、樹脂を含浸、硬化した強化木材が知られており、確実且つ均一に樹脂を木質材料に含浸可能である。
この方法は、ワイヤーブラシやサンドブラストなどの方法で、木材表面の軟質な早材部分のみ除去するか、或いは硬質ゴムロールで早材部分を圧密した後で、ポリエステルなどの強靭な塗膜を形成する塗料を厚く塗装するものである。
この方法によると、塗装後にやや立体感が生じる。また、凹凸加工装置と塗装機があれば容易に実施可能であり、紫外線硬化塗料などを用いれば生産性も良好で、大量生産が可能である。
この方法は、通常の接着などに用いられる圧力(0.7〜1.0MPa)の数倍の高圧を加えられる圧締ロールを用いて木質材料を圧縮し、解圧直後の20〜30%程度復元する際に、樹脂液を塗布し、樹脂液を吸収させるものである。ここで、圧締ロールによって圧縮された部分は密度が上がるので硬くなる。
この方法では、ロールコーターや圧締ロールなどの比較的簡単な装置で連続生産が可能である。また、含浸ムラは比較的少なく、均質に含浸可能である。
この方法は、洗浄などに用いられる高圧噴射機を応用して、樹脂を木質材料表面に噴射して注入するものである。
また、木質材料の表面は軟質のままであるので、衝撃が加わった際に、塗膜に蜘蛛の巣状の割れが生じてしまう場合がある。また、樹脂を大量に使用するのでコスト高となり、また重量も大きくなる。
ここで、予め爪状刃物で木質材料表面に傷をつけて含浸を促進する方法(インサイジング加工)もあるが、多くの傷が残るので土台角や下地材といった構造材や下地材程度しか使用できない。
また、減圧、加圧による方法はバッチ式と呼ばれる、一定量ずつ処理が必要な手間のかかる方法であるので、工程が多く、生産性が極度に悪い。
また、木質材料を加熱した熱硬化性樹脂に浸漬するので、木質材料が温められ、木質材料の仮導管内の空気が膨張し外部へ放出される。よって、仮導管には空気の代わりに熱硬化性樹脂がより含浸し易くなる。したがって、木質材料の一面を浸漬するだけで強度を得るために必要な量を十分含浸できる。すなわち、従来の方法では不可能であった、表面から10mmの深さまで熱硬化性樹脂を含浸可能である。加えて、浸漬工程に要する時間も短くなり、大量生産が可能である。
また、生産ラインにおいて木質材料の一面が浸るだけの熱硬化性樹脂を用意すればいいので、木質材料全体を浸漬する必要がある場合に比べて、熱硬化性樹脂の量が少なくて済む。
加えて、含浸ムラが少ないので、含浸ムラが多い場合には含浸量が少ない箇所をなくすために必要であった長時間の含浸が不要となり、含浸しやすい箇所に必要以上に含浸することもない。よって、処理時間が短くなる。その上、不要な熱硬化性樹脂の含浸もない。したがって、含浸させる熱硬化性樹脂は少量で済む。
その上、熱硬化性樹脂を含浸させることで、木質材料の表面自体が硬化するので、木質材料に衝撃が加わった際に塗膜の割れは発生しない。
また、基材外部にはみ出た熱硬化性樹脂は、削り取ってしまうことも可能なので、木目がぼやけてしまうこともなく、木質材料本来の風合いを残したまま、木質材料を硬化することができる。
また、木質材料に含浸した熱硬化性樹脂を熱圧プレスにて硬化させる熱圧工程を備えるので、木質材料を圧縮する必要がなく、一連の硬化処理後に木質材料が吸湿したとしてもスプリングバックは生じない。よって、硬化処理後の寸法変化はない。
加えて、含浸ムラが少ないので、含浸ムラが多い場合には含浸量が少ない箇所をなくすために必要であった長時間の含浸が不要となり、含浸しやすい箇所に必要以上に含浸することもない。
また、熱可塑性樹脂を含浸させるので、熱硬化性樹脂を含浸させたときには必要であった熱圧工程が不要となる。すなわち、熱可塑性樹脂は一般には常温において固体であるので、含浸させた後に冷却工程において自然冷却すれば熱可塑性樹脂は固化する。よって、冷却工程のための設備は実質不要である。
それに加え、熱可塑性樹脂は、ポリアミド樹脂、テルペンフェノール樹脂、ロジン、ロジン誘導体及びポリエステルのうちいずれか一つであるので、含浸のための粘度と、含浸し固化した後の木質材料の表面硬度は必要十分である。
それに加え、集成材であっても表面を硬化できる。均一な強度である集成材に適用できるということは、強度向上後も強度は均一である。また、集成材は間伐材の有効活用でもあるので、その有効活用の幅が広くなる。
図1乃至図5を参照して、本発明の第一実施形態に係る木質材料1の表面硬化方法を説明する。図1は、本発明の第一実施形態に係る木質材料1の表面硬化方法の製造工程を示す図である。
このラジアータパインは、ニュージーランドやチリにて多く産する、近年注目されている針葉樹であり、密度は450〜550kg/m3である。生育の早い地域では平均年輪幅が広く、密度の低い早材部分の割合が相対的に多くなり密度は450kg/m3程度となり、生育の遅い地域では平均年輪幅が狭く、密度の低い早材部分の割合が相対的に少なくなり密度は550kg/m3程度となる。また、同じ材の中でも早材部分は晩材部分に比較して密度が低い。
このような針葉樹は、広葉樹より軟質な場合が多く、樹種、平均年輪幅、早材と晩材などによっても密度に差が生じる。
この予熱工程100によって、木質材料1の仮導管に存在する空気を膨張することによって、仮導管中の空気を木質材料1外へ放出する。
この熱硬化性樹脂2は、紫外線、電子線等の照射下でラジカル重合(光重合)により硬化する光重合触媒配合のラジカル硬化型の樹脂であり、70℃において粘度が100mPa・S以下であるとともに、110℃以上で硬化する性質を有する樹脂を使用した。ここで使用されるラジカル重合性樹脂としては、例えば、ポリエステル,アクリル,メタクリル,ビニルエステル,ポリスチレンなどがあげられ、有機溶剤が含有されていないものが望ましい。この熱硬化性樹脂2には、70℃では活性化せず、約110℃以上で活性化する潜在性硬化剤を0.2〜1%重量加えているので、70℃以下において熱硬化性樹脂2は安定している。
ここで、本実施形態において製造されるものは主として床材であるので、硬度向上の必要のある一面だけ含浸させればよい。もちろん、硬さが必要である階段踏み板等へも適応できる。
前工程の浸漬工程200では約70℃であった木質材料1の表面温度は、この冷却工程300により、約50℃まで下がる。
これによって、処理時間が短くなり、含浸させる熱硬化性樹脂2は少量で済む。
また、木質材料1の一面を浸漬させるだけなので、生産ラインにおいて木質材料1の一面が浸るだけの熱硬化性樹脂2を用意すればよく、全体を浸漬する必要がある場合に比べて、熱硬化性樹脂2の量が少なくて済む。
また、木質材料1の含浸部分1a自体が硬化するので、表面層1bを薄くしたり、あるいは表面層1bをサンディングで全て削り取ってしまうことが可能である。よって、木質材料1を硬化しても木目がぼやけてしまうことがなく、木質材料1本来の風合いは残る。
次に図6を参照して、本発明の第二実施形態に係る木質材料1の表面硬化方法を説明する。図6は、本発明の第二実施形態に係る木質材料1の表面硬化方法の製造工程を示す図である。なお、第一実施形態と同一部分には同一符号を付した。
次に、本発明の第三実施形態に係る木質材料1の表面硬化方法を説明する。なお、第一、第二実施形態と同一部分には同一符号を付した。
ここで、木質材料1としては、有縁壁孔が完全には閉じていない木質材料1であるラジアータパインを用意した。
前記熱可塑性樹脂5は、常温では固体だが、160℃に加熱されると仮導管に含浸可能な粘度の液状となる。
このバット3から引き上げられた数分のうちに木質材料1の表面温度は下がる。すなわち、木質材料1の仮導管から熱可塑性樹脂5が流れ出なくなるほどに、含浸した熱可塑性樹脂5の粘度は高くなり、その後、熱可塑性樹脂5は完全に固化する。なお前述の通り、熱可塑性樹脂5は常温にて固化する。
また、熱可塑性樹脂を含浸させるので、熱硬化性樹脂2を含浸させたときには必要であった固化のための熱圧工程600が不要となる。よって、より少ない設備で量産できる。
ただし、予熱工程100を省略した場合には、浸漬工程200での木質材料1の表面温度は50℃程度であり、温度が低い分、有縁壁孔内の空気の抜けが悪くなり、熱硬化性樹脂2が木質材料1に含浸し難くなる。この場合、その後の冷却工程300での木質材料1の表面温度は40℃程となる。
若しくは、浸漬工程200において熱硬化性樹脂2に過酸化物,アゾイソブチロニトリルなどの硬化剤を配合しておくことで表面層1bを固化させ、表面固化工程500を省略することもできる。あるいは、浸漬工程200において熱硬化性樹脂2に過酸化物などの硬化剤を配合しておくことで表面層1bを固化させ、さらに表面固化工程500を設けることも可能である。
ここで、含浸深さによって熱圧工程600での熱圧時間を変える必要があり、概ね含浸深さ1mm毎に熱圧時間を1分加算しなければならない。
また、木質材料1の一面だけに表面硬化方法を施すことに限られるものではなく、用途や必要とされる強度によって、浸漬する面を変えることができる。例えば、全ての面を浸漬させることで全ての面の硬度を上げることもできる。
特に、本発明を土台角などに用いれば、土台角自体の耐久性が向上するとともに、構造材の固定用ボルトや金物の緩みを防止できるので、住宅の耐久性や寿命さえも向上させる。
1a 含浸部分
1b 表面層
2 熱硬化性樹脂
3 バット
4 熱圧プレス
5 熱可塑性樹脂
50 有縁壁孔開放工程
100 予熱工程
200 浸漬工程
300 冷却工程
400 除去工程
500 表面固化工程
600 熱圧工程
Claims (10)
- 木質材料の一面を、60〜80℃に加熱した熱硬化性樹脂に通常の雰囲気下で所定時間浸漬し、前記熱硬化性樹脂を前記木質材料の表面から1mm以上の深さ領域に含浸させる浸漬工程と、
前記熱硬化性樹脂に浸漬した前記木質材料を冷却する冷却工程と、
前記木質材料に含浸した前記熱硬化性樹脂を熱圧プレスにて硬化させる熱圧工程と、を備えることを特徴とする木質材料の表面硬化方法。 - スギなど有縁壁孔が閉じている木質材料の前記有縁壁孔を強制的に開かせる有縁壁孔開放工程と、
前記木質材料の一面を、60〜80℃に加熱した熱硬化性樹脂に通常の雰囲気下で所定時間浸漬し、前記熱硬化性樹脂を前記木質材料の表面から1mm以上の深さ領域に含浸させる浸漬工程と、
前記熱硬化性樹脂に浸漬した前記木質材料を冷却する冷却工程と、
前記木質材料に含浸した前記熱硬化性樹脂を熱圧プレスにて硬化させる熱圧工程と、を備えることを特徴とする木質材料の表面硬化方法。 - 前記浸漬工程の前処理に前記木質材料を60〜80℃に予熱する予熱工程を設け、予熱した前記木質材料を、前記浸漬工程において前記熱硬化性樹脂に浸漬することを特徴とする請求項1又は2に記載の木質材料の表面硬化方法。
- 前記冷却工程と前記熱圧工程の間に、前記木質材料の表面に付着した余分な前記熱硬化性樹脂を取り除く除去工程を設けたことを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一つに記載の木質材料の表面硬化方法。
- 前記冷却工程と前記熱圧工程の間に、前記木質材料の表面に付着した前記熱硬化性樹脂を紫外線照射装置により固化させる表面固化工程を設けたことを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか一つに記載の木質材料の表面硬化方法。
- 前記熱硬化性樹脂は、光重合触媒配合ラジカル重合性樹脂であることを特徴とする請求項5に記載の木質材料の表面硬化方法。
- 前記熱硬化性樹脂は、70℃において粘度が100mPa・S以下であるとともに、110℃以上で硬化する性質を有する樹脂であることを特徴とする請求項1乃至6のうちいずれか一つに記載の木質材料の表面硬化方法。
- 木質材料の一面を、加熱により液状化した熱可塑性樹脂に通常の雰囲気下で所定時間浸漬し、前記熱可塑性樹脂を前記木質材料の表面から1mm以上の深さ領域に含浸させる浸漬工程と、
前記熱可塑性樹脂に浸漬した前記木質材料を冷却する冷却工程と、を備え、しかも前記熱可塑性樹脂は、ポリアミド樹脂、テルペンフェノール樹脂、ロジン、ロジン誘導体及びポリエステルのうちいずれか一つであることを特徴とする木質材料の表面硬化方法。 - スギなど有縁壁孔が閉じている木質材料の前記有縁壁孔を強制的に開かせる有縁壁孔開放工程と、
前記木質材料の一面を、加熱により液状化した熱可塑性樹脂に通常の雰囲気下で所定時間浸漬し、前記熱可塑性樹脂を前記木質材料の表面から1mm以上の深さ領域に含浸させる浸漬工程と、
前記熱可塑性樹脂に浸漬した前記木質材料を冷却する冷却工程と、を備え、しかも前記熱可塑性樹脂は、ポリアミド樹脂、テルペンフェノール樹脂、ロジン、ロジン誘導体及びポリエステルのうちいずれか一つであることを特徴とする木質材料の表面硬化方法。 - 前記木質材料は、無垢材又は集成材であることを特徴とする請求項1乃至9のうちいずれか一つに記載の木質材料の表面硬化方法。
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