JP5105354B2 - 高屈折率組成物 - Google Patents

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本発明は、高屈折率組成物に関する。
光学用途および眼科用途等において、種々のガラスが用いられている。近年、これらの用途の広がりに伴って、高屈折率のガラスが求められている。しかし、従来のSiO系ガラスでは、高屈折率化の要求を満足させることはできない。
高屈折率ガラスの材料としてBiGe12やKTaOなど種々の組成を有する材料が開発されている。しかし、これらの材料は脆く、かつ、ガラス転移温度が高いので成形が困難であるという問題がある。
さらに、様々な光学デバイスへの応用を考慮すると、微細パターンが形成可能な高屈折率ガラスが求められている。しかし、現在、このような要求を十分に満足する材料は得られていない。
Nanoimprint of Glass Materials with Glassy Carbon Molds Fabricated by Focused-Ion-Beam Etching", Masaharu Takahashi, Koichi Sugimoto and Ryutaro Maeda, Jpn. J. Appl. Phys., 44, 5600 (2005).
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、高屈折率であり、かつ、成形性、耐熱性、機械的特性、光透過性および耐薬品性に優れた組成物を提供することにある。
本発明の高屈折率組成物は、ポリシランとシリコーン化合物とポリゲルマンとを含む。
好ましい実施形態においては、上記ポリシランは分岐型ポリシランである。好ましい実施形態においては、上記分岐型ポリシランの分岐度は2%以上である。
好ましい実施形態においては、上記ポリシランおよび上記シリコーン化合物は重量比80:20〜5:95の割合で含有されている。
好ましい実施形態においては、上記ポリゲルマンは、分岐型メチルフェニルゲルマン/フェニルゲルマン共重合体である。
好ましい実施形態においては、上記高屈折率組成物は、増感剤をさらに含む。
本発明によれば、ポリシランとシリコーン化合物とポリゲルマンとを組み合わせて用いることにより、高屈折率であり、かつ、成形性、耐熱性、機械的特性、光透過性および耐薬品性に優れた組成物が得られる。
本発明の高屈折率組成物は、ポリシランとシリコーン化合物とポリゲルマンとを含む。
A.ポリシラン
本明細書において「ポリシラン」とは、主鎖がケイ素原子のみからなる高分子をいう。本発明で使用するポリシランは、直鎖型であってもよく分岐型であってもよい。分岐型が好ましい。溶媒に対する溶解性ならびにポリゲルマンおよびシリコーン化合物との相溶性に優れかつ成膜性に優れるからである。分岐型と直鎖型は、ポリシラン中に含まれるSi原子の結合状態によって区別される。分岐型ポリシランとは、隣接するSi原子と結合している数(結合数)が3または4であるSi原子を含むポリシランである。これに対して、直鎖型のポリシランでは、Si原子の、隣接するSi原子との結合数は2である。通常、Si原子の原子価は4であるので、ポリシラン中に存在するSi原子の中で結合数が3以下のものは、Si原子以外に、水素原子、炭化水素基、アルコキシ基等の有機置換基と結合している。好ましい炭化水素基の具体例としては、ハロゲンで置換されていてもよい炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜14の芳香族炭化水素基が挙げられる。脂肪族炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、トリフルオロプロピル基およびノナフルオロヘキシル基などの鎖状炭化水素基、および、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基のような脂環式炭化水素基などが挙げられる。芳香族炭化水素基の具体例としては、フェニル基、p−トリル基、ビフェニル基およびアントラシル基などが挙げられる。アルコキシ基としては、炭素数1〜8のものが挙げられる。具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、オクチルオキシ基などが挙げられる。合成の容易さを考慮すると、これらの中でもメチル基およびフェニル基が特に好ましい。例えば、ポリメチルフェニルシラン、ポリジメチルシラン、ポリジフェニルシランやそれらの共重合体が好適に用いられ得る。例えば、ポリシランの構造を変化させることにより、組成物から得られる成形体や光学素子の屈折率を調整することができる。例えば、ジフェニル基を共重合にて多く導入することにより、より高屈折率の組成物を得ることができる。
分岐型ポリシランは、その分岐度が好ましくは2%以上であり、さらに好ましくは5%〜40%であり、特に好ましくは10%〜30%である。分岐度が2%未満である場合には、溶解性が低く、また得られる膜中に微結晶が生成しやすく、当該微結晶が散乱の原因となるので、透明性が不十分となる場合がある。分岐度が大きすぎると、高分子量体の重合が困難となる場合があり、また分岐に起因して可視領域での吸収が大きくなる場合がある。上記好ましい範囲においては、分岐度が高いほど、より光透過率を高めることができる。なお、本明細書において「ポリシランの分岐度」とは、隣接するSi原子との結合数が3または4であるSi原子が、分岐型ポリシラン中の全体のSi原子数に占める割合をいう。ここで、例えば、「隣接するSi原子との結合数が3である」とは、Si原子の結合手のうち3つがSi原子と結合していることをいう。
本発明に使用されるポリシランは、ハロゲン化シラン化合物をナトリウムのようなアルカリ金属の存在下、n−デカンやトルエンのような有機溶媒中において80℃以上に加熱することによる重縮合反応によって製造することができる。また、電解重合法や、金属マグネシウムと金属塩化物を用いた方法でも合成可能である。
分岐型ポリシランは、例えば、オルガノトリハロシラン化合物、テトラハロシラン化合物およびジオルガノジハロシラン化合物を含むハロシラン混合物を加熱して重縮合することにより得られる。ハロシラン混合物中のオルガノトリハロシラン化合物およびテトラハロシラン化合物の量を調整することにより、分岐型ポリシランの分岐度を調整することができる。例えば、オルガノトリハロシラン化合物およびテトラハロシラン化合物が全体量の2モル%以上であるハロシラン混合物を用いることにより、分岐度が2%以上である分岐型ポリシランが得られ得る。ここで、オルガノトリハロシラン化合物は、隣接するSi原子との結合数が3であるSi原子源となり、テトラハロシラン化合物は、隣接するSi原子との結合数が4であるSi原子源となる。なお、分岐型ポリシランの分岐構造は、紫外線吸収スペクトルや硅素の核磁気共鳴スペクトルの測定により確認することができる。
上記オルガノトリハロシラン化合物、テトラハロシラン化合物、およびジオルガノジハロシラン化合物がそれぞれ有するハロゲン原子は、好ましくは塩素原子である。オルガノトリハロシラン化合物およびジオルガノジハロシラン化合物が有するハロゲン原子以外の置換基としては、上述の水素原子、炭化水素基、アルコキシ基または官能基が挙げられる。
上記分岐型ポリシランは、有機溶媒に可溶でありシリコーン化合物およびポリゲルマンと相溶し、塗布により透明な膜が成膜できるものであれば特に限定されない。
上記ポリシランの重量平均分子量は、好ましくは5000〜50000であり、さらに好ましくは10000〜20000である。
上記ポリシランは、必要に応じて、シランオリゴマーを含んでいてもよい。ポリシラン中のシランオリゴマー含有量は、好ましくは5重量%〜25重量%である。このような量でシランオリゴマーを含有することにより、より低温での成形加工が可能となる。オリゴマー量が25重量%を超える場合には、加工中の加熱工程において流動等が起こる場合がある。
上記シランオリゴマーの重量平均分子量は、好ましくは200〜3000であり、さらに好ましくは500〜1500である。
B.シリコーン化合物
本発明に用いられるシリコーン化合物としては、ポリシラン、ポリゲルマンおよび有機溶媒と相溶し、透明な膜を形成し得る任意の適切なシリコーン化合物が採用され得る。1つの実施形態においては、シリコーン化合物は、以下の一般式で表される化合物である。
Figure 0005105354
[式中、RからR12は、それぞれ独立して、ハロゲンまたはグリシジルオキシ基で置換されていてもよい炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜12の芳香族炭化水素基、炭素数1〜8のアルコキシ基からなる群から選択される基である。a、b、cおよびdは、それぞれ0を含む整数であり、a+b+c+d≧1を満たすものである。]
具体的には、有機置換基が2つあるD体と呼ばれるジクロロシランと、有機置換基が1つであるT体と呼ばれるトリクロロロシランの2種類以上を加水分解縮合したものが挙げられる。
上記脂肪族炭化水素基の具体例としては、メチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、トリフルオロプロピル基、グリシジルオキシプロピル基などの鎖状炭化水素基、およびシクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基のような脂環式炭化水素基などが挙げられる。上記芳香族炭化水素基の具体例としては、フェニル基、p−トリル基、ビフェニル基などが挙げられる。上記アルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、オクチルオキシ基、ter‐ブトキシ基などが挙げられる。
上記RからR12の種類ならびにa、b、cおよびdの値は、目的に応じて適切に選択され得る。例えば、ポリシランが有する炭化水素基と同じ基をシリコーン化合物に導入することにより、相溶性を向上させることができる。したがって、例えばポリシランとしてフェニルメチル系ポリシランを用いる場合には、フェニルメチル系またはジフェニル系のシリコーン化合物を使用することが好ましい。また例えば、1分子中にアルコキシ基を2つ以上有するシリコーン化合物(具体的には、RからR12のうち少なくとも2つが炭素数1〜8のアルコキシ基であるシリコーン化合物)は、架橋剤として利用可能である。このようなシリコーン化合物の具体例としては、アルコキシ基を15重量%〜35重量%含んだメチルフェニルメトキシシリコーンやフェニルメトキシシリコーンなどを挙げることができる。この場合、アルコキシ基の含有量は、シリコーン化合物の平均分子量とアルコキシユニットの分子量とから算出され得る。
上記シリコーン化合物の重量平均分子量は、好ましくは100〜10000、さらに好ましくは100〜3000である。
1つの実施形態においては、シリコーン化合物は、必要に応じて、二重結合含有シリコーン化合物を含む。シリコーン化合物中における二重結合含有シリコーン化合物の含有量は、好ましくは20重量%〜100重量%、さらに好ましくは50重量%〜100重量%である。このような範囲で二重結合含有シリコーン化合物を用いることにより、エネルギー線照射時の反応性を高め、より低温または低照度での加工が可能となる。また、ポリシランに対してシリコーン化合物が多くなる配合の場合に、固形性の低下による熱処理時の流動や消失を防止することができる。
二重結合含有シリコーン化合物の重量平均分子量は、好ましくは100〜10000、さらに好ましくは100〜5000である。
上記二重結合含有シリコーン化合物において二重結合を提供する化学基は、好ましくはビニル基、アリル基、アクリロイル基またはメタクリロイル基である。例えば、一般にシランカップリング剤と呼ばれているシリコーン化合物の中で二重結合を有するものを用いることができる。この場合、ヨウ素価は、好ましくは10〜254である。シリコーン化合物1分子中の二重結合の個数は2つ以上であってもよい。このようなシリコーン化合物は、架橋剤として利用可能である。このようなシリコーン化合物の具体例としては、二重結合を1重量%〜30重量%含んだビニル基含有メチルフェニルシリコーンレジンなどを挙げることができる。
二重結合含有シリコーン化合物としては、市販品を用いることができる。例えば、以下の表1に示す化合物を用いることができる。
Figure 0005105354
上記シリコーン化合物は、ポリシラン/シリコーン化合物の重量比が好ましくは80:20〜5:95の割合、さらに好ましくは70:30〜40:60の割合でパターニング材料中に含有されている。このような範囲でシリコーン化合物を含有させることにより、十分に硬化し、クラックが非常に少なく、かつ、透明性の高い膜が得られ得る。
C.ポリゲルマン
本明細書において「ポリゲルマン」とは、主鎖がゲルマニウム原子のみからなる高分子をいう。本発明で使用するポリゲルマンは、直鎖型であってもよく分岐型であってもよい。分岐型が好ましい。溶媒に対する溶解性ならびにポリシランおよびシリコーン化合物との相溶性に優れかつ成膜性に優れるからである。分岐型と直鎖型は、ポリゲルマン中に含まれるGe原子の結合状態によって区別される。分岐型ポリゲルマンとは、隣接するGe原子と結合している数(結合数)が3または4であるGe原子を含むポリゲルマンである。これに対して、直鎖型のポリゲルマンでは、Ge原子の、隣接するGe原子との結合数は2である。通常、Ge原子の原子価は4であるので、ポリゲルマン中に存在するGe原子の中で結合数が3以下のものは、Ge原子以外に、水素原子、炭化水素基、アルコキシ基等の有機置換基と結合している。好ましい炭化水素基の具体例としては、ハロゲンで置換されていてもよい炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜14の芳香族炭化水素基が挙げられる。脂肪族炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、トリフルオロプロピル基およびノナフルオロヘキシル基などの鎖状炭化水素基、および、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基のような脂環式炭化水素基などが挙げられる。芳香族炭化水素基の具体例としては、フェニル基、p−トリル基、ビフェニル基およびアントラシル基などが挙げられる。アルコキシ基としては、炭素数1〜8のものが挙げられる。具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、オクチルオキシ基などが挙げられる。合成の容易さを考慮すると、これらの中でもメチル基およびフェニル基が特に好ましい。例えば、ポリメチルフェニルゲルマン、ポリジメチルゲルマン、ポリジフェニルゲルマンやそれらの共重合体が好適に用いられ得る。例えば、ポリゲルマンの構造を変化させることにより、組成物から得られる成形体や光学素子の屈折率を調整することができる。
分岐型ポリゲルマンは、その分岐度が好ましくは2%以上であり、さらに好ましくは5%〜70%であり、特に好ましくは10%〜30%である。分岐度が2%未満である場合には、溶解性が低く、また得られる膜中に微結晶が生成しやすく、当該微結晶が散乱の原因となるので、透明性が不十分となる場合がある。分岐度が大きすぎると、高分子量体の重合が困難となる場合があり、また分岐に起因して可視領域での吸収が大きくなる場合がある。上記好ましい範囲においては、分岐度が高いほど、より光透過率を高めることができる。なお、本明細書において「ポリゲルマンの分岐度」とは、隣接するGe原子との結合数が3または4であるGe原子が、分岐型ポリゲルマン中の全体のGe原子数に占める割合をいう。ここで、例えば、「隣接するGe原子との結合数が3である」とは、Ge原子の結合手のうち3つがGe原子と結合していることをいう。
本発明に使用されるポリゲルマンは、ハロゲン化ゲルマン化合物をナトリウムのようなアルカリ金属の存在下、n−デカンやトルエンのような有機溶媒中において80℃以上に加熱することによる重縮合反応によって製造することができる。基本的には、上記ポリシランと同様の合成方法が使用可能である。
分岐型ポリゲルマンは、例えば、オルガノトリハロゲルマン化合物、テトラハロゲルマン化合物およびジオルガノジハロゲルマン化合物を含むハロゲルマン混合物を加熱して重縮合することにより得られる。ハロゲルマン混合物中のオルガノトリハロゲルマン化合物およびテトラハロゲルマン化合物の量を調整することにより、分岐型ポリシランの分岐度を調整することができる。例えば、オルガノトリハロゲルマン化合物およびテトラハロゲルマン化合物が全体量の2モル%以上であるハロゲルマン混合物を用いることにより、分岐度が2%以上である分岐型ポリゲルマンが得られ得る。ここで、オルガノトリハロゲルマン化合物は、隣接するGe原子との結合数が3であるGe原子源となり、テトラハロゲルマン化合物は、隣接するGe原子との結合数が4であるGe原子源となる。なお、分岐型ポリゲルマンの分岐構造は、例えば紫外線吸収スペクトルにより確認することができる。
上記オルガノトリハロゲルマン化合物、テトラハロゲルマン化合物、およびジオルガノジハロゲルマン化合物がそれぞれ有するハロゲン原子は、好ましくは塩素原子である。オルガノトリハロゲルマン化合物およびジオルガノジハロゲルマン化合物が有するハロゲン原子以外の置換基としては、上述の水素原子、炭化水素基、アルコキシ基または官能基が挙げられる。
上記分岐型ポリゲルマンは、有機溶媒に可溶でありシリコーン化合物およびポリシランと相溶し、塗布により透明な膜が成膜できるものであれば特に限定されない。
上記ポリゲルマンの重量平均分子量は、好ましくは3000〜50000であり、さらに好ましくは5000〜20000である。
上記ポリゲルマンは、必要に応じて、ゲルマンオリゴマーを含んでいてもよい。ポリゲルマン中のゲルマンオリゴマー含有量は、好ましくは5重量%〜25重量%である。このような量でゲルマンオリゴマーを含有することにより、より低温での成形加工が可能となる。オリゴマー量が25重量%を超える場合には、加工中の加熱工程において流動等が起こる場合がある。
上記ゲルマンオリゴマーの重量平均分子量は、好ましくは200〜3000であり、さらに好ましくは500〜2000である。
上記ポリゲルマンは、上記ポリシランおよびシリコーン化合物の合計100重量部に対して、好ましくは10重量部〜150重量部、さらに好ましくは70重量部〜120重量部の割合で用いられ得る。このような範囲でポリゲルマンを用いることにより、非常に高屈折率の成形体や光学素子が得られ得る。
D.溶媒
本発明の高屈折率組成物は、一般的には溶媒を含む。溶媒は、好ましくは有機溶媒である。好ましい有機溶媒としては、炭素数5〜12の炭化水素系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒が挙げられる。炭化水素系溶媒の具体例としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、n−デカン、n−ドデカン等の脂肪族系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン、メトキシベンゼン等の芳香族系溶媒などが挙げられる。ハロゲン化炭化水素系溶媒の具体例としては、四塩化炭素、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、ジクロロメタン、クロロベンゼンなどが挙げられる。エーテル系溶媒の具体例としては、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラハイドロフランなどが挙げられる。溶媒の使用量は、組成物中のポリシラン、シリコーン化合物およびポリゲルマンの合計濃度が10重量%〜50重量%となるような範囲が好ましい。
E.その他の添加剤
本発明の高屈折率組成物は、目的に応じて任意の適切な添加剤をさらに含み得る。添加剤の代表例としては、増感剤、表面調整剤、硬度を調整するための金属酸化物粒子等が挙げられる。上記増感剤の代表例としては、有機過酸化物が挙げられる。有機過酸化物としては、ポリシランのSi−Si結合間およびポリゲルマンのGe−Ge結合間に効率良く酸素を挿入できる化合物であれば任意の適切な化合物が採用され得る。例えば、パーオキシエステル系過酸化物、ベンゾフェノン骨格を有する有機過酸化物が挙げられる。より具体的には、3,3',4,4'−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン(以下、「BTTB」という)が好ましく用いられる。また、有機過酸化物は、二重結合含有シリコーン化合物の二重結合に作用して、二重結合間同士の付加重合反応を促進する効果を有する。
上記増感剤は、上記ポリシランおよびシリコーン化合物の合計100重量部に対して、好ましくは1重量部〜30重量部、さらに好ましくは2重量部〜10重量部の割合で用いられ得る。このような範囲で増感剤を用いることにより、非酸化雰囲気下でもポリシランの酸化が促進され、非常に優れた硬度を有する成形体や光学素子を低温・低圧・短時間で形成することができる。
上記表面調整剤の具体例としては、フッ素系の界面活性剤が挙げられる。表面調整剤は、上記ポリシランおよびシリコーン化合物の合計100重量部に対して、好ましくは0.01重量部〜0.5重量部の割合で用いられ得る。表面調整剤を用いることにより、高屈折率組成物の塗布性を向上させることができる。
上記金属酸化物粒子としては、本発明の効果が得られる限りにおいて任意の適切な粒子が用いられ得る。金属酸化物を構成する金属の具体例としては、リチウム(Li)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、アルミニウム(Al)、イットリウム(Y)、インジウム(In)、セリウム(Ce)、ケイ素(Si)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、スズ(Sn)、ニオブ(Nb)、アンチモン(Sb)、タンタル(Ta)、ビスマス(Bi)、クロム(Cr)、タングステン(W)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、ルテニウム(Ru)およびこれらの合金が挙げられる。金属酸化物における酸素の組成は、金属の価数に応じて決定される。金属酸化物として、酸化ジルコン、酸化チタンおよび/または酸化亜鉛が好適に用いられ得る。これらを用いることにより、非常に優れた硬度を有する成形体を形成し得る組成物を得ることができる。
上記金属酸化物粒子の平均粒子径は、好ましくは1nm〜100nmであり、さらに好ましくは1nm〜50nmである。このような範囲の平均粒子径を有する金属酸化物粒子を用いることにより、硬度および透明性に特に優れた成形体を形成し得る組成物を得ることができる。
上記金属酸化物粒子は、上記ポリシランおよびシリコーン化合物の合計100重量部に対して好ましくは50重量部〜500重量部、さらに好ましくは100重量部〜300重量部の割合で組成物に含有される。このような範囲で金属酸化物粒子を含有することにより、硬度と塗膜形成特性の両方に優れた組成物を得ることができる。
上記金属酸化物粒子は、任意の適切な方法を用いて得ることができる。例えば、湿式法、焼成法などを用いて形成することができる。また、上記金属酸化物粒子は、市販品を用いてもよい。市販品の具体例としては、住友大阪セメント株式会社製の商品名ナノジルコニア分散液NZD-8J61が挙げられる。
F.高屈折率組成物の硬化(成形)および応用
本発明の高屈折率組成物は、例えば、任意の適切な方法(例えば、スピンコート)を用いて塗布された後、加熱により硬化し、高屈折率の成形体が形成され得る。1つの実施形態においては、硬化時にモールドを用いることにより、目的に応じた所望の形状に成形することができる。例えば、加熱温度は、好ましくは200℃〜300℃、さらに好ましくは220℃〜280℃であり、加熱時間は好ましくは10分〜60分、さらに好ましくは20分〜40分である。本発明の高屈折率組成物は、エネルギー線照射によっても硬化し得る。エネルギー線の代表例としては、光(可視光、赤外線、紫外線)、電子線、熱が挙げられる。紫外線が特に好適に用いられる。紫外線は、好ましくは、波長スペクトルのピークが365nm以下のものである。紫外線源の具体例としては、超高圧水銀ランプ、ハロゲンランプが挙げられる。1つの実施形態においては、組成物の塗布厚みが2μm程度である場合には、水平放射強度が105μW/cm(波長λ=360nm〜370nm)の紫外光を3分間程度照射することにより、良好な硬化(または成形)を行うことができる。なお、加熱とエネルギー線照射とを組み合わせて組成物を硬化させてもよいことは言うまでもない。
本発明の高屈折率組成物の硬化後の屈折率は、好ましくは1.63以上であり、さらに好ましくは1.65以上であり、特に好ましくは1.67以上であり、最も好ましくは1.69以上である。屈折率は、任意の適切な方法(例えば、反射分光法、エリプソメトリー法、プリズムカプラー法)により測定され得る。さらに、当該組成物の硬化後の硬度は、好ましくは120HV以上であり、より好ましくは140HV以上であり、さらに好ましくは200HV以上である。加えて、当該組成物の硬化後の光透過率は、可視領域で、好ましくは90%以上であり、さらに好ましくは95%以上である。本発明の高屈折率組成物を用いることにより、このような優れた特性を同時に満足する硬化物(ガラス)を簡便・安価に得ることができる。
本発明の高屈折率組成物は、例えば、光ピックアップ光学系のλ/4板、フォトニック結晶などの光デバイス、バイオチップの流路、パターンドメディアなどのストレージデバイス、ナノインプリント用のレプリカモールド、マイクロレンズ、またはディスプレイなどに好適に利用され得る。また、紫外線照射による屈折率変化を利用した光導波路、回折格子、体積型ホログラム等にも利用され得る。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例には限定されない。
(実施例1)
1.ポリシランの合成
攪拌機を備えた1000mlフラスコにトルエン400mlおよびナトリウム13.3gを充填した。このフラスコの内容物を紫外線から遮断したイエロールーム中で111℃に昇温し、高速攪拌することによりナトリウムをトルエン中に微細に分散させた。ここにフェニルメチルジクロロシラン42.1g、テトラクロロシラン4.1gを添加し、3時間攪拌することにより重合を行った。その後、得られた反応混合物にエタノールを添加することにより、過剰のナトリウムを失活させた。水洗後、分離した有機層をエタノール中に投入することにより、ポリシランを沈澱させた。得られた粗製のポリシランをエタノールから3回再沈殿させることにより、重量平均分子量11600で、オリゴマーを10%含有した、分岐型ポリメチルフェニルシランを得た。
2.ポリゲルマンの合成
攪拌機を備えた100mlフラスコにトルエン40mlおよびナトリウム3.14gを充填した。このフラスコの内容物を紫外線から遮断したイエロールーム中で111℃に昇温し、高速攪拌することによりナトリウムをトルエン中に微細に分散させた。ここにフェニルメチルジクロロゲルマン9.3g、フェニルトリクロロゲルマン2.6gを添加し、2時間攪拌することにより重合を行った。その後、得られた反応混合物に2-プロパノール30mlを添加することにより、過剰のナトリウムを失活させた。さらに反応物を200mlの2-プロパノール中に攪拌しながら投入することにより、ポリゲルマンを沈澱させた。得られた粗製のポリゲルマンをエタノールから3回再沈殿させることにより、重量平均分子量10000で、オリゴマーを10%含有した、分岐型ポリメチルフェニル/フェニルゲルマンを得た。
3.高屈折率組成物の調製および硬化
上記のようにして得られたポリメチルフェニルシラン(PMPS)66.6重量部、ビニル基含有フェニルメチルシリコーンレジン(商品名「KR−2020」、Mw=2900、ヨウ素価=61)33.4重量部、及び有機過酸化物BTTB(日本油脂製、固形分20重量%)5重量部を、メトキシベンゼン(商品名「アニソール−S」、協和発酵ケミカル社製)に固形分77重量%となるように溶解した。さらに、上記メチルフェニルゲルマン/フェニルゲルマン共重合体(共重合比:8/2、分岐型)と上記溶液とを固形分比(重量比)が50/50となるように混合し、高屈折率組成物を調製した。
上記のようにして得られた組成物を石英基板表面に2500rpmで40秒間スピンコートすることにより、厚み約2μmの塗布膜を得た。当該塗布膜を250℃で30分間加熱して、組成物を硬化させた。
硬化後の組成物について、二軸型の反射分光法を採用した測定機(SCI社製フィルムテック4000)を用いて、波長632nmでの屈折率を求めた。硬化後の組成物の屈折率は1.695であった。さらに、硬化後の組成物に関して、以下の評価を行った:
(1)耐熱性
硬化後の組成物を加熱処理し、加熱による収縮率を調べた。250℃、5分間の加熱処理では収縮率はゼロであり、350℃、5分間の加熱処理では収縮率が5%であった。このように、本実施例の組成物は、硬化後に優れた耐熱性を示した。
(2)機械的特性
マイクロビッカーズ硬度を測定して評価した。硬化後の組成物のビッカーズ硬度は310HVであり、PMMAの約3倍の硬度であった。このように、本実施例の組成物は、硬化後に優れた機械的特性(硬度)を示した。
(3)光透過性
通常の方法で透過率を測定した。その結果、硬化後の組成物の可視光透過率は約90%以上であり、かつ、波長300nmの深紫外光の透過率が70%以上であった。このように、本実施例の組成物は、硬化後に可視領域のみならず深紫外領域でも優れた透過性を有していた。
(4)耐薬品性
硬化後の組成物をアセトン中で5分間超音波洗浄した。本実施例の組成物は、超音波洗浄後も、その形状を実質的に完全に維持していた。
また、硬化後の組成物を、10%のHCl水溶液、10%のNaOH水溶液、および5%のHF水溶液にそれぞれ30分間浸漬した。その結果、本実施例の組成物は、いずれの溶液処理においても、その形状を実質的に完全に維持していた。このように、本実施例の組成物は、硬化後に非常に優れた耐薬品性を有していた。
(実施例2)
実施例1と同様にして石英基板表面に厚み約2μmの塗布膜を得た。当該塗布膜に水平放射強度が105μW/cm(波長λ=360nm〜370nm)の紫外光を3分間照射して、組成物を硬化させた。硬化後の組成物について、実施例1と同様にして屈折率を求めた。硬化後の組成物の屈折率は1.695であった。耐熱性、機械的特性、光透過性および耐薬品性についても、実施例1と同等のレベルであった。
(比較例1)
メチルフェニルゲルマン/フェニルゲルマン共重合体を用いなかったこと以外は実施例1と同様にして、組成物を調製し硬化させた。硬化後の組成物の屈折率を波長632nmで測定したところ1.567であった。なお、この組成物の耐熱性、機械的特性、光透過性および耐薬品性については、実施例の組成物と同等のレベルであった。
(比較例2)
実施例1で合成した分岐型ポリシランをメチルフェニルゲルマン/フェニルゲルマン共重合体の代わりに用いたこと以外は実施例1と同様にして、組成物を調製し硬化させた。硬化後の組成物の屈折率を波長632nmで測定したところ1.617であった。なお、この組成物の耐熱性、機械的特性、光透過性および耐薬品性については、実施例の組成物と同等のレベルであった。
以上のように、本発明の実施例の高屈折率組成物は、比較例の組成物に比べて格段に高い屈折率が得られる。しかも、実施例の高屈折率組成物は、優れた耐熱性、機械的特性、光透過性および耐薬品性を併せて有する。
本発明の高屈折率組成物は、高屈折率が要求される素子などの作成に利用され得る。例えば、光ピックアップ光学系のλ/4板、フォトニック結晶などの光デバイス、バイオチップの流路、パターンドメディアなどのストレージデバイス、ナノインプリント用のレプリカモールド、マイクロレンズ、またはディスプレイなどに好適に利用され得る。

Claims (5)

  1. ポリシランとシリコーン化合物とポリゲルマンとを含み、前記ポリシランおよび前記シリコーン化合物が重量比80:20〜5:95の割合で含有されており、前記ポリシランおよび前記シリコーン化合物の合計100重量部に対して10〜150重量部の割合で前記ポリゲルマンを含有している
    高屈折率組成物。
  2. 前記ポリシランが分岐型ポリシランである、請求項1に記載の高屈折率組成物。
  3. 前記分岐型ポリシランの分岐度が2%以上である、請求項2に記載の高屈折率組成物。
  4. 前記ポリゲルマンが、分岐型メチルフェニルゲルマン/フェニルゲルマン共重合体である、請求項1からのいずれかに記載の高屈折率組成物。
  5. 増感剤をさらに含む、請求項1からのいずれかに記載の高屈折率組成物。
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