JP5062525B2 - 構造性複屈折波長板 - Google Patents

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Description

本発明は、構造性複屈折波長板に関する。より詳細には、優れた機械的特性、耐熱性および耐薬品性を有し、かつ、製造時の高い歩留まりが期待できる構造性複屈折波長板に関する。
CD、DVDといった光情報記録媒体に対して、情報の読み取り、記録または再生を行なうプレーヤー、レコーダー、ドライブといった情報機器には、光ピックアップ装置が備えられている。光ピックアップ装置の光学系は、微小スポットを記録媒体面に照射し情報信号の記録再生を行うための記録再生光学系、微小スポットを記録媒体面の情報トラックに正確に結像させるためのフォーカシング光学系とトラッキング光学系に分けられる。このような光ピックアップ光学系には、種々の光学素子が用いられている。
例えば上記記録再生光学系においては、光情報記録媒体に入射するレーザ光と反射してくるレーザ光を分離させるために光分離デバイスが用いられている。具体的には半導体レーザ等の光源に光デイスクからの反射光を戻さずに光検出器(フォトダイオード)に完全に導くために、このデバイスが利用されている。光分離デバイスの代表例としては、直線偏光を円偏光に変換するための位相差板(代表的には、1/4波長板)が挙げられる。
従来、このような位相差板としては、代表的には、水晶等の複屈折材料を精密に切り出して作製していた。このような位相差板は、作製が非常に困難であり、かつ、コスト的にも問題があった。このような問題を解決するために、対象となる光の波長以下の凹凸周期構造を利用した構造性複屈折波長板が提案されている(特許文献1参照)。
しかし、上記の構造性複屈折波長板は、樹脂(例えばPMMA)製であり、機械的特性(例えば、硬度)、耐熱性および耐薬品性がきわめて不十分である。さらに、PMMAの屈折率は波長によって異なるが、せいぜい1.5程度であり、波長板(代表的には、1/4波長板)として実用上十分な位相差を付与するためには、周期構造におけるアスペクト比を非常に大きく(例えば、8程度まで)しなければならず、その結果、歩留まりが非常に低いという問題がある。
特開2006−323059号公報
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、優れた機械的特性、耐熱性および耐薬品性を有し、かつ、製造時の高い歩留まりを期待できる構造性複屈折波長板を提供することにある。
本発明の構造性複屈折波長板は、基板と;ポリシランとシリコーン化合物とポリゲルマンとを含む組成物から形成され、壁部と溝部とが周期的に繰り返して構成される凹凸周期構造を有する、複屈折部と;を有する。
好ましい実施形態においては、上記複屈折部は、上記組成物をモールドでインプリントすることにより形成されている。
好ましい実施形態においては、本発明の構造性複屈折波長板は、上記複屈折部の屈折率、ならびに上記壁部のピッチ、高さおよび充填率を最適化することにより、所定の波長を有する光に対して所定の位相差を発現する。
本発明によれば、ポリシランとシリコーン化合物とポリゲルマンとを含む組成物をインプリント成形することにより、優れた機械的特性、耐熱性および耐薬品性を有し、かつ、製造時の歩留まりがきわめて高い構造性複屈折波長板が提供される。
加えて、本発明によれば、種々の波長の光に対して所望の位相差を発現する波長板が提供され得る。すなわち、所定の波長の光に対して所望の位相差を発現するには複屈折部の屈折率、壁部のピッチ、高さおよび充填率等を最適化する必要がある。従来の材料およびインプリント方法では、著しく大きさの異なるパターンを一括して形成することがきわめて困難であったので、実質的には単調な周期構造を有する波長板しか作製できず、設計の自由度が狭まるため、このような波長板は、単一波長の光に対して所定の位相差を発現することしかできなかった。これに対して、本発明に用いられる複屈折部用材料および複屈折部の形成方法によれば、ピッチが10nmオーダーから10μmオーダーの広い範囲で、アスペクト比が5以上の高い壁部を一括して形成することが可能となる。しかも、本発明における複屈折部の形成方法は、モールドのパターンの転写精度がきわめて高いので、設計通りのパターンを正確に形成することができる。したがって、本発明の構造性複屈折波長板は、所定の波長の光に対して所望の位相差を発現するように壁部のピッチ、高さおよび充填率等を最適化することが可能であり、その結果、種々の波長の光に対して所望の位相差を発現する(例えば、種々の波長の光に対してほぼ一定の位相差を発現する、フラットな波長分散特性を提供する)ことが可能となる。
A.構造性複屈折波長板
図1は、本発明の好ましい実施形態による構造性複屈折波長板の概略斜視図である。この構造性複屈折波長板100は、基板10と複屈折部20とを有する。複屈折部20は、壁部21と溝部22とが周期的に繰り返して構成される凹凸周期構造を有する。また、複屈折部20は、ポリシランとシリコーン化合物とポリゲルマンとを含む組成物(以下、複屈折部用材料とも称する。詳細は後述のB項で説明する)から形成されている。
基板10としては、光ピックアップ光学系の光学素子に使用可能である限りにおいて、任意の適切な基板が採用され得る。代表例としては、石英基板が挙げられる。石英基板は、複屈折部の複屈折性に与える影響が極めて小さく、優れた光透過性を有し、かつ、優れた機械的特性、耐熱性および耐薬品性を有する点で有利である。基板10の厚みは、目的に応じて適切に選択され得る。1つの実施形態においては、基板10の厚みは1mm程度である。
複屈折部20は、上記のように、壁部21と溝部22とが周期的に繰り返して構成される凹凸周期構造を有する。壁部21の高さH、ピッチP、幅L、アスペクト比(H/L)および充填率f(=L/P)は、所定の波長を有する光に対して所定の位相差を発現するよう最適化され得る。これらは相互に関連して最適化されるので、これらの好ましい値や範囲は目的に応じて変化し得る。例えば、壁部のピッチ、幅および充填率を固定すれば、複屈折部の屈折率、ならびに壁部の高さおよびアスペクト比を変化させることにより、所望の位相差を発現する波長板を得ることができる。例えば、壁部のピッチPが500nm、幅Lが250nm、充填率f(=L/P)が0.5であって、700nmの光に対する1/4波長板を目的とする場合には、複屈折部の屈折率は好ましくは1.56〜1.83であり、壁部の高さHは好ましくは1500〜3000nmであり、アスペクト比は好ましくは6〜12である。700nmの光に対する1/2波長板を目的とする場合には、複屈折部の屈折率は好ましくは1.56〜1.83であり、壁部の高さHは好ましくは750〜1500nmであり、アスペクト比は好ましくは3〜6である。具体的な構造を以下に示す:1つの実施形態においては、複屈折部の屈折率が波長632nmで1.830であって、700nmの光に対する1/4波長板を目的とする場合には、高さHは約750nmであり、ピッチPは約500nmであり、幅Lは約250nmであり、アスペクト比は約3であり、充填率は約0.5であり得る。別の実施形態においては、複屈折部の屈折率が波長632nmで1.695であって、700nmの光に対する1/4波長板を目的とする場合には、高さHは約1000nmであり、ピッチPは約500nmであり、幅Lは約250nmであり、アスペクト比は約4であり、充填率は約0.5であり得る。これらの実施形態によれば、アスペクト比を小さくできるので、製造時の歩留まりに優れるという利点が得られる。さらに別の実施形態においては、複屈折部の屈折率が波長632nmで1.614であって、700nmの光に対する1/4波長板を目的とする場合には、高さHは約1250nmであり、ピッチPは約500nmであり、幅Lは約250nmであり、アスペクト比は約5であり、充填率は約0.5であり得る。さらに別の実施形態においては、複屈折部の屈折率が波長632nmで1.560であって、700nmの光に対する1/4波長板を目的とする場合には、高さHは約1500nmであり、ピッチPは約500nmであり、幅Lは約250nmであり、アスペクト比は約6であり、充填率は約0.5であり得る。さらに別の実施形態においては、複屈折部の屈折率が波長632nmで1.695であって、700nmの光に対する1/2波長板を目的とする場合には、高さHは約2000nmであり、ピッチPは約500nmであり、幅Lは約250nmであり、アスペクト比は約8であり、充填率は約0.5であり得る。本発明においては、複屈折部用材料の成形性がきわめて優れるので、アスペクト比が大きい(例えば、8の)壁部であっても良好に形成することが可能となる。
1つの実施形態においては、基板10上に、それぞれ壁部21のピッチが異なる複数の複屈折部20が設けられてもよい(図示せず)。本発明に用いられる複屈折部用材料は成形性にきわめて優れ、例えば10nmオーダーから10μmオーダーまでの異なるサイズを有する複数のパターン(したがって、ピッチ)をインプリントにより成形することが可能である。したがって、このような構成を容易に実現することができる。
複屈折部20の屈折率は、好ましくは1.56以上であり、より好ましくは1.63以上であり、さらに好ましくは1.65以上であり、特に好ましくは1.67以上であり、最も好ましくは1.69以上である。このような屈折率を有することにより、所望の位相差を得るために必要なアスペクト比を非常に小さくすることができる。その結果、波長板製造時の歩留まりをきわめて高くすることができる。屈折率は、任意の適切な方法(例えば、反射分光法、エリプソメトリー法、プリズムカプラー法)により測定され得る。さらに、複屈折部20の硬度は、好ましくは120HV以上であり、より好ましくは140HV以上であり、さらに好ましくは200HV以上である。加えて、複屈折部20の光透過率は、可視領域で、好ましくは90%以上であり、さらに好ましくは95%以上である。本発明によれば、このような高屈折率・高硬度の複屈折部を、非常に高い歩留まりで簡便に作製することができる。
本発明の構造性複屈折波長板の位相差δの発現メカニズムは、以下の式で表され得る:
δ=(nTE−nTM)×(H/λ)
TE={f×n +(1−f)×n 1/2
TM={f/n +(1−f)/n −1/2
TEは周期を持つ方向(壁部に平行な方向)に平行な偏光を有する光の有効屈折率であり、nTMは周期を持たない方向(壁部に垂直な方向)の光の有効屈折率である。ここで、上記の通り、Hは壁部21の高さであり、Pは壁部21のピッチであり、fは壁部21の充填率(L/P)であり、Lは壁部21の幅である。さらに、λは光の波長であり、nは空気の屈折率(=1)であり、nは複屈折部の屈折率である。このようなメカニズムから明らかなように、本発明によれば、複屈折部の屈折率を非常に高くすることができるので、壁部の高さHをそれほど高くしなくても(すなわち、アスペクト比が小さくても)、所望の位相差を得ることができる。このような複屈折部を実際に形成したことが本発明の大きな成果の1つである。
B.複屈折部用材料
上記のように、本発明に用いられる複屈折部用材料は、ポリシランとシリコーン化合物とポリゲルマンとを含む。
B−1.ポリシラン
本明細書において「ポリシラン」とは、主鎖がケイ素原子のみからなる高分子をいう。本発明で使用するポリシランは、直鎖型であってもよく分岐型であってもよい。分岐型が好ましい。溶媒に対する溶解性ならびにポリゲルマンおよびシリコーン化合物との相溶性に優れかつ成膜性に優れるからである。分岐型と直鎖型は、ポリシラン中に含まれるSi原子の結合状態によって区別される。分岐型ポリシランとは、隣接するSi原子と結合している数(結合数)が3または4であるSi原子を含むポリシランである。これに対して、直鎖型のポリシランでは、Si原子の、隣接するSi原子との結合数は2である。通常、Si原子の原子価は4であるので、ポリシラン中に存在するSi原子の中で結合数が3以下のものは、Si原子以外に、水素原子、炭化水素基、アルコキシ基等の有機置換基と結合している。好ましい炭化水素基の具体例としては、ハロゲンで置換されていてもよい炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜14の芳香族炭化水素基が挙げられる。脂肪族炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、トリフルオロプロピル基およびノナフルオロヘキシル基などの鎖状炭化水素基、および、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基のような脂環式炭化水素基などが挙げられる。芳香族炭化水素基の具体例としては、フェニル基、p−トリル基、ビフェニル基およびアントラシル基などが挙げられる。アルコキシ基としては、炭素数1〜8のものが挙げられる。具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、オクチルオキシ基などが挙げられる。合成の容易さを考慮すると、これらの中でもメチル基およびフェニル基が特に好ましい。例えば、ポリメチルフェニルシラン、ポリジメチルシラン、ポリジフェニルシランやそれらの共重合体が好適に用いられ得る。例えば、ポリシランの構造を変化させることにより、複屈折部の屈折率を調整することができる。例えば、ジフェニル基を共重合にて多く導入することにより、より高屈折率の複屈折部を得ることができる。
分岐型ポリシランは、その分岐度が好ましくは2%以上であり、さらに好ましくは5%〜40%であり、特に好ましくは10%〜30%である。分岐度が2%未満である場合には、溶解性が低く、また得られる膜中に微結晶が生成しやすく、当該微結晶が散乱の原因となるので、透明性が不十分となる場合がある。分岐度が大きすぎると、高分子量体の重合が困難となる場合があり、また分岐に起因して可視領域での吸収が大きくなる場合がある。上記好ましい範囲においては、分岐度が高いほど、より光透過率を高めることができる。なお、本明細書において「ポリシランの分岐度」とは、隣接するSi原子との結合数が3または4であるSi原子が、分岐型ポリシラン中の全体のSi原子数に占める割合をいう。ここで、例えば、「隣接するSi原子との結合数が3である」とは、Si原子の結合手のうち3つがSi原子と結合していることをいう。
本発明に使用されるポリシランは、ハロゲン化シラン化合物をナトリウムのようなアルカリ金属の存在下、n−デカンやトルエンのような有機溶媒中において80℃以上に加熱することによる重縮合反応によって製造することができる。また、電解重合法や、金属マグネシウムと金属塩化物を用いた方法でも合成可能である。
分岐型ポリシランは、例えば、オルガノトリハロシラン化合物、テトラハロシラン化合物およびジオルガノジハロシラン化合物を含むハロシラン混合物を加熱して重縮合することにより得られる。ハロシラン混合物中のオルガノトリハロシラン化合物およびテトラハロシラン化合物の量を調整することにより、分岐型ポリシランの分岐度を調整することができる。例えば、オルガノトリハロシラン化合物およびテトラハロシラン化合物が全体量の2モル%以上であるハロシラン混合物を用いることにより、分岐度が2%以上である分岐型ポリシランが得られ得る。ここで、オルガノトリハロシラン化合物は、隣接するSi原子との結合数が3であるSi原子源となり、テトラハロシラン化合物は、隣接するSi原子との結合数が4であるSi原子源となる。なお、分岐型ポリシランの分岐構造は、紫外線吸収スペクトルや硅素の核磁気共鳴スペクトルの測定により確認することができる。
上記オルガノトリハロシラン化合物、テトラハロシラン化合物、およびジオルガノジハロシラン化合物がそれぞれ有するハロゲン原子は、好ましくは塩素原子である。オルガノトリハロシラン化合物およびジオルガノジハロシラン化合物が有するハロゲン原子以外の置換基としては、上述の水素原子、炭化水素基、アルコキシ基または官能基が挙げられる。
上記分岐型ポリシランは、有機溶媒に可溶でありシリコーン化合物およびポリゲルマンと相溶し、塗布により透明な膜が成膜できるものであれば特に限定されない。
上記ポリシランの重量平均分子量は、好ましくは5000〜50000であり、さらに好ましくは10000〜20000である。
上記ポリシランは、必要に応じて、シランオリゴマーを含んでいてもよい。ポリシラン中のシランオリゴマー含有量は、好ましくは5重量%〜25重量%である。このような量でシランオリゴマーを含有することにより、より低温での成形加工が可能となる。オリゴマー量が25重量%を超える場合には、加工中の加熱工程において流動等が起こる場合がある。
上記シランオリゴマーの重量平均分子量は、好ましくは200〜3000であり、さらに好ましくは500〜1500である。
B−2.シリコーン化合物
上記シリコーン化合物としては、ポリシラン、ポリゲルマンおよび有機溶媒と相溶し、透明な膜を形成し得る任意の適切なシリコーン化合物が採用され得る。1つの実施形態においては、シリコーン化合物は、以下の一般式で表される化合物である。
Figure 0005062525
[式中、RからR12は、それぞれ独立して、ハロゲンまたはグリシジルオキシ基で置換されていてもよい炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜12の芳香族炭化水素基、炭素数1〜8のアルコキシ基からなる群から選択される基である。a、b、cおよびdは、それぞれ0を含む整数であり、a+b+c+d≧1を満たすものである。]
具体的には、有機置換基が2つあるD体と呼ばれるジクロロシランと、有機置換基が1つであるT体と呼ばれるトリクロロロシランの2種類以上を加水分解縮合したものが挙げられる。
上記脂肪族炭化水素基の具体例としては、メチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、トリフルオロプロピル基、グリシジルオキシプロピル基などの鎖状炭化水素基、およびシクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基のような脂環式炭化水素基などが挙げられる。上記芳香族炭化水素基の具体例としては、フェニル基、p−トリル基、ビフェニル基などが挙げられる。上記アルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、オクチルオキシ基、ter‐ブトキシ基などが挙げられる。
上記RからR12の種類ならびにa、b、cおよびdの値は、目的に応じて適切に選択され得る。例えば、ポリシランが有する炭化水素基と同じ基をシリコーン化合物に導入することにより、相溶性を向上させることができる。したがって、例えばポリシランとしてフェニルメチル系ポリシランを用いる場合には、フェニルメチル系またはジフェニル系のシリコーン化合物を使用することが好ましい。また例えば、1分子中にアルコキシ基を2つ以上有するシリコーン化合物(具体的には、RからR12のうち少なくとも2つが炭素数1〜8のアルコキシ基であるシリコーン化合物)は、架橋剤として利用可能である。このようなシリコーン化合物の具体例としては、アルコキシ基を15重量%〜35重量%含んだメチルフェニルメトキシシリコーンやフェニルメトキシシリコーンなどを挙げることができる。この場合、アルコキシ基の含有量は、シリコーン化合物の平均分子量とアルコキシユニットの分子量とから算出され得る。
上記シリコーン化合物の重量平均分子量は、好ましくは100〜10000、さらに好ましくは100〜3000である。
1つの実施形態においては、シリコーン化合物は、必要に応じて、二重結合含有シリコーン化合物を含む。シリコーン化合物中における二重結合含有シリコーン化合物の含有量は、好ましくは20重量%〜100重量%、さらに好ましくは50重量%〜100重量%である。このような範囲で二重結合含有シリコーン化合物を用いることにより、エネルギー線照射時の反応性を高め、より低温または低照度での加工が可能となる。また、ポリシランに対してシリコーン化合物が多くなる配合の場合に、固形性の低下による熱処理時の流動や消失を防止することができる。
二重結合含有シリコーン化合物の重量平均分子量は、好ましくは100〜10000、さらに好ましくは100〜5000である。
上記二重結合含有シリコーン化合物において二重結合を提供する化学基は、好ましくはビニル基、アリル基、アクリロイル基またはメタクリロイル基である。例えば、一般にシランカップリング剤と呼ばれているシリコーン化合物の中で二重結合を有するものを用いることができる。この場合、ヨウ素価は、好ましくは10〜254である。シリコーン化合物1分子中の二重結合の個数は2つ以上であってもよい。このようなシリコーン化合物は、架橋剤として利用可能である。このようなシリコーン化合物の具体例としては、二重結合を1重量%〜30重量%含んだビニル基含有メチルフェニルシリコーンレジンなどを挙げることができる。
二重結合含有シリコーン化合物としては、市販品を用いることができる。例えば、以下の表1に示す化合物を用いることができる。
Figure 0005062525
上記シリコーン化合物は、ポリシラン/シリコーン化合物の重量比が好ましくは80:20〜5:95の割合、さらに好ましくは70:30〜40:60の割合で複屈折部用材料中に含有されている。このような範囲でシリコーン化合物を含有させることにより、十分に硬化し、クラックが非常に少なく、かつ、透明性の高い膜が得られ得る。
B−3.ポリゲルマン
本明細書において「ポリゲルマン」とは、主鎖がゲルマニウム原子のみからなる高分子をいう。本発明で使用するポリゲルマンは、直鎖型であってもよく分岐型であってもよい。分岐型が好ましい。溶媒に対する溶解性ならびにポリシランおよびシリコーン化合物との相溶性に優れかつ成膜性に優れるからである。分岐型と直鎖型は、ポリゲルマン中に含まれるGe原子の結合状態によって区別される。分岐型ポリゲルマンとは、隣接するGe原子と結合している数(結合数)が3または4であるGe原子を含むポリゲルマンである。これに対して、直鎖型のポリゲルマンでは、Ge原子の、隣接するGe原子との結合数は2である。通常、Ge原子の原子価は4であるので、ポリゲルマン中に存在するGe原子の中で結合数が3以下のものは、Ge原子以外に、水素原子、炭化水素基、アルコキシ基等の有機置換基と結合している。好ましい炭化水素基の具体例としては、ハロゲンで置換されていてもよい炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜14の芳香族炭化水素基が挙げられる。脂肪族炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、トリフルオロプロピル基およびノナフルオロヘキシル基などの鎖状炭化水素基、および、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基のような脂環式炭化水素基などが挙げられる。芳香族炭化水素基の具体例としては、フェニル基、p−トリル基、ビフェニル基およびアントラシル基などが挙げられる。アルコキシ基としては、炭素数1〜8のものが挙げられる。具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、オクチルオキシ基などが挙げられる。合成の容易さを考慮すると、これらの中でもメチル基およびフェニル基が特に好ましい。例えば、ポリメチルフェニルゲルマン、ポリジメチルゲルマン、ポリジフェニルゲルマンやそれらの共重合体が好適に用いられ得る。例えば、ポリゲルマンの構造を変化させることにより、複屈折部の屈折率を調整することができる。
分岐型ポリゲルマンは、その分岐度が好ましくは2%以上であり、さらに好ましくは5%〜70%であり、特に好ましくは10%〜30%である。分岐度が2%未満である場合には、溶解性が低く、また得られる膜中に微結晶が生成しやすく、当該微結晶が散乱の原因となるので、透明性が不十分となる場合がある。分岐度が大きすぎると、高分子量体の重合が困難となる場合があり、また分岐に起因して可視領域での吸収が大きくなる場合がある。上記好ましい範囲においては、分岐度が高いほど、より光透過率を高めることができる。なお、本明細書において「ポリゲルマンの分岐度」とは、隣接するGe原子との結合数が3または4であるGe原子が、分岐型ポリゲルマン中の全体のGe原子数に占める割合をいう。ここで、例えば、「隣接するGe原子との結合数が3である」とは、Ge原子の結合手のうち3つがGe原子と結合していることをいう。
本発明に使用されるポリゲルマンは、ハロゲン化ゲルマン化合物をナトリウムのようなアルカリ金属の存在下、n−デカンやトルエンのような有機溶媒中において80℃以上に加熱することによる重縮合反応によって製造することができる。基本的には、上記ポリシランと同様の合成方法が使用可能である。
分岐型ポリゲルマンは、例えば、オルガノトリハロゲルマン化合物、テトラハロゲルマン化合物およびジオルガノジハロゲルマン化合物を含むハロゲルマン混合物を加熱して重縮合することにより得られる。ハロゲルマン混合物中のオルガノトリハロゲルマン化合物およびテトラハロゲルマン化合物の量を調整することにより、分岐型ポリシランの分岐度を調整することができる。例えば、オルガノトリハロゲルマン化合物およびテトラハロゲルマン化合物が全体量の2モル%以上であるハロゲルマン混合物を用いることにより、分岐度が2%以上である分岐型ポリゲルマンが得られ得る。ここで、オルガノトリハロゲルマン化合物は、隣接するGe原子との結合数が3であるGe原子源となり、テトラハロゲルマン化合物は、隣接するGe原子との結合数が4であるGe原子源となる。なお、分岐型ポリゲルマンの分岐構造は、例えば紫外線吸収スペクトルにより確認することができる。
上記オルガノトリハロゲルマン化合物、テトラハロゲルマン化合物、およびジオルガノジハロゲルマン化合物がそれぞれ有するハロゲン原子は、好ましくは塩素原子である。オルガノトリハロゲルマン化合物およびジオルガノジハロゲルマン化合物が有するハロゲン原子以外の置換基としては、上述の水素原子、炭化水素基、アルコキシ基または官能基が挙げられる。
上記分岐型ポリゲルマンは、有機溶媒に可溶でありシリコーン化合物およびポリシランと相溶し、塗布により透明な膜が成膜できるものであれば特に限定されない。
上記ポリゲルマンの重量平均分子量は、好ましくは3000〜50000であり、さらに好ましくは5000〜20000である。
上記ポリゲルマンは、必要に応じて、ゲルマンオリゴマーを含んでいてもよい。ポリゲルマン中のゲルマンオリゴマー含有量は、好ましくは5重量%〜25重量%である。このような量でゲルマンオリゴマーを含有することにより、より低温での成形加工が可能となる。オリゴマー量が25重量%を超える場合には、加工中の加熱工程において流動等が起こる場合がある。
上記ゲルマンオリゴマーの重量平均分子量は、好ましくは200〜3000であり、さらに好ましくは500〜2000である。
上記ポリゲルマンは、上記ポリシランおよびシリコーン化合物の合計100重量部に対して、好ましくは10重量部〜150重量部、さらに好ましくは70重量部〜120重量部の割合で用いられ得る。このような範囲でポリゲルマンを用いることにより、非常に高屈折率の複屈折部が得られ得る。
B−4.溶媒
上記複屈折部用材料は、一般的には溶媒を含む。溶媒は、好ましくは有機溶媒である。好ましい有機溶媒としては、炭素数5〜12の炭化水素系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒が挙げられる。炭化水素系溶媒の具体例としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、n−デカン、n−ドデカン等の脂肪族系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン、メトキシベンゼン等の芳香族系溶媒などが挙げられる。ハロゲン化炭化水素系溶媒の具体例としては、四塩化炭素、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、ジクロロメタン、クロロベンゼンなどが挙げられる。エーテル系溶媒の具体例としては、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラハイドロフランなどが挙げられる。溶媒の使用量は、組成物中のポリシラン、シリコーン化合物およびポリゲルマンの合計濃度が10重量%〜50重量%となるような範囲が好ましい。
B−5.その他の添加剤
上記複屈折部用材料は、目的に応じて任意の適切な添加剤をさらに含み得る。添加剤の代表例としては、増感剤、表面調整剤、硬度を調整するための金属酸化物粒子等が挙げられる。上記増感剤の代表例としては、有機過酸化物が挙げられる。有機過酸化物としては、ポリシランのSi−Si結合間およびポリゲルマンのGe−Ge結合間に効率良く酸素を挿入できる化合物であれば任意の適切な化合物が採用され得る。例えば、パーオキシエステル系過酸化物、ベンゾフェノン骨格を有する有機過酸化物が挙げられる。より具体的には、3,3',4,4'−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン(以下、「BTTB」という)が好ましく用いられる。また、有機過酸化物は、二重結合含有シリコーン化合物の二重結合に作用して、二重結合間同士の付加重合反応を促進する効果を有する。
上記増感剤は、上記ポリシランおよびシリコーン化合物の合計100重量部に対して、好ましくは1重量部〜30重量部、さらに好ましくは2重量部〜10重量部の割合で用いられ得る。このような範囲で増感剤を用いることにより、非酸化雰囲気下でもポリシランの酸化が促進され、非常に優れた硬度を有する成形体や光学素子を低温・低圧・短時間で形成することができる。
上記表面調整剤の具体例としては、フッ素系の界面活性剤が挙げられる。表面調整剤は、上記ポリシランおよびシリコーン化合物の合計100重量部に対して、好ましくは0.01重量部〜0.5重量部の割合で用いられ得る。表面調整剤を用いることにより、複屈折部用材料の塗布性を向上させることができる。
上記金属酸化物粒子としては、本発明の効果が得られる限りにおいて任意の適切な粒子が用いられ得る。金属酸化物を構成する金属の具体例としては、リチウム(Li)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、アルミニウム(Al)、イットリウム(Y)、インジウム(In)、セリウム(Ce)、ケイ素(Si)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、スズ(Sn)、ニオブ(Nb)、アンチモン(Sb)、タンタル(Ta)、ビスマス(Bi)、クロム(Cr)、タングステン(W)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、ルテニウム(Ru)およびこれらの合金が挙げられる。金属酸化物における酸素の組成は、金属の価数に応じて決定される。金属酸化物として、酸化ジルコン、酸化チタンおよび/または酸化亜鉛が好適に用いられ得る。これらを用いることにより、非常に優れた硬度を有する成形体を形成し得る組成物を得ることができる。
上記金属酸化物粒子の平均粒子径は、好ましくは1nm〜100nmであり、さらに好ましくは1nm〜50nmである。このような範囲の平均粒子径を有する金属酸化物粒子を用いることにより、硬度および透明性に特に優れた複屈折部を形成し得る。
上記金属酸化物粒子は、上記ポリシランおよびシリコーン化合物の合計100重量部に対して好ましくは50重量部〜500重量部、さらに好ましくは100重量部〜300重量部の割合で複屈折部用材料に含有される。このような範囲で金属酸化物粒子を含有することにより、硬度と塗膜形成特性の両方に優れた複屈折部用材料を得ることができる。
上記金属酸化物粒子は、任意の適切な方法を用いて得ることができる。例えば、湿式法、焼成法などを用いて形成することができる。また、上記金属酸化物粒子は、市販品を用いてもよい。市販品の具体例としては、住友大阪セメント株式会社製の商品名ナノジルコニア分散液NZD-8J61が挙げられる。
C.複屈折部の形成方法
以下、複屈折部20の形成方法を説明する。図2(a)〜(e)は、本発明の好ましい実施形態による複屈折部の形成方法の手順を説明する模式図である。
まず、図2(a)に示すように、上記B項で説明した複屈折部用材料20´を基板10に塗布する。複屈折部用材料の塗布方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。代表例としては、スピンコートが挙げられる。複屈折部用材料の塗布厚みは、複屈折部成形用モールドの微細パターンの高さより大きいことが好ましい。例えばモールドの微細パターン部の高さが1.0μmである場合には、複屈折部用材料の塗布厚みは、好ましくは1.1μm〜2.0μm程度である。複屈折部用材料の塗布厚みは、複屈折部用材料の濃度、スピンコーターの回転数を調整することにより制御され得る。
次に、図2(b)に示すように、複屈折部の所望の凹凸周期構造に対応する微細パターンが形成されたモールド30を、塗布された複屈折部用材料20´に圧接する。圧接は、好ましくは常温付近で行われる。上記のような複屈折部用材料を用いて、かつ、後述する一連の処理を行うことにより、常温付近での圧接が可能となる。常温付近での圧接は昇温および降温に必要な時間を最小限にすることができるので、ナノインプリントプロセスの処理時間が大幅に短縮され得る。さらに、常温付近での圧接のメリットは、温度変化による材料(モールド、基板、複屈折部用材料)の膨張や収縮が非常に小さくなるので、転写中における微細パターンの熱変化がきわめて良好に防止され得ることにある。1つの実施形態においては、圧接温度は常温〜80℃であり、圧接圧力は1MPa〜3MPaであり、圧接時間は5秒〜15秒である。なお、本発明においては、圧接前の複屈折部用材料に加熱処理(いわゆるプリベーク処理)を行うことが好ましい、プリベーク処理の条件としては、例えば、加熱温度は50℃〜100℃であり、加熱時間は3分〜7分である。
上記モールド104は、好ましくはエネルギー線透過性材料で構成され、さらに好ましくはモールドと下部基板のアラインメントを行うために光透過性材料で構成される。モールドを構成する材料の具体例としては、石英ガラスや加工性に優れたSi基板が挙げられる。
次に、図2(c)に示すように、モールド30と複屈折部用材料20´とを圧接した状態で、エネルギー線(代表的には紫外線、後述)を照射する。その結果、複屈折部用材料がガラス化する。代表的には、エネルギー線照射は、基板10側から行われる。基板10側からエネルギー線照射を行うことにより、複屈折部用材料全体としてはモールドのパターンを十分固定するまで酸化(代表的には光酸化)を進行させ、かつ、基板10近傍の複屈折部用材料については、例えば石英基板を用いる場合には基板のSi原子との間でもSi−O−Si結合を形成し、非常に強固な密着を実現することができる。しかも、モールド30近傍の複屈折部用材料については適度な光照射量を選択することにより酸化(代表的には光酸化)の進行を抑制し、モールドとの優れた離型性を確保することができる。モールドと複屈折部用材料との界面に光酸化されていない部分を残した結果、モールドと複屈折部用材料が固着することなく離型を行うことができ、非常に高い歩留まりで複屈折部を形成することができる。しかも、本発明においては、複屈折部のアスペクト比を小さくすることができるので、歩留まりがさらに向上し得る。
上記エネルギー線の代表例としては、光(可視光、赤外線、紫外線)、電子線、熱が挙げられる。本発明においては、紫外線が特に好適に用いられる。紫外線は、好ましくは、波長スペクトルのピークが365nm以下のものである。紫外線源の具体例としては、超高圧水銀ランプ、ハロゲンランプが挙げられる。1つの実施形態においては、複屈折部用材料の塗布厚みが2μm程度である場合には、水平放射強度が105μW/cm(波長λ=360nm〜370nm)の紫外光を3分間程度照射することにより、ガラス化を行うことができる。
次に、モールド30を、複屈折部用材料20´から離型する。上記のように、モールド近傍の複屈折部用材料は酸化が適度に抑制されているので、モールドの離型はきわめて容易であり、離型時のパターン欠落や歩留まりの低下が顕著に抑制され得る。しかも、図2(d)に示すように、モールドを離型した時点で、複屈折部の凹凸周期構造は、外見上、十分良好に形成されている。
ここで、必要に応じて、所定の凹凸周期構造が形成された複屈折部用材料20´に、酸素プラズマを照射してもよい。酸素プラズマを照射することにより、酸化が完了していないモールド近傍の複屈折部用材料に十分な量の酸素が供給され、その結果、表面に硬質の酸化被膜が形成される。その結果、形成された凹凸周期構造の型崩れが、非常に良好に防止される。プラズマ処理で形成される酸化被膜の厚みは、例えば2nm〜3nmである。酸素プラズマの照射条件は、例えば、酸素流量800cc、チャンバー圧力10Pa、照射時間1分間、出力400Wである。
次に、必要に応じて、図2(d)に示すように、所定の凹凸周期構造が形成された複屈折部用材料20´に、基板10とは反対側(すなわち、モールド30が圧接されていた側)からエネルギー線(代表的には、紫外線)を照射する。当該紫外線照射により、モールド近傍の複屈折部用材料の光酸化が実質的に完了し、パターン(凹凸周期構造)表面の酸化が十分なものとなる。1つの実施形態においては、紫外線照射は、オゾン存在下で行われ得る。オゾン存在下で紫外線照射を行うことにより、紫外線照射による光酸化反応に加えてオゾンによる化学的な酸化反応が進行し、未反応のパターン表面の酸化をきわめて良好に完了させることができる。
好ましくは、上記モールド側からのエネルギー線照射の後に、加熱処理(いわゆるポストベーク処理)がさらに行われ得る。ポストベーク処理を行うことにより、上記紫外線照射による酸化反応(光酸化)に加えて、熱による酸化反応(熱酸化)が起こる。その結果、酸化がさらに進み、非常に硬質のガラス化が実現され得る(図2(e)参照)。1つの実施形態においては、ポストベーク処理の条件は、加熱温度が好ましくは150℃〜450℃であり、加熱時間が3分〜10分である。なお、加熱温度は、目的に応じて変化し得る。例えば、150℃〜200℃でポストベークすることにより、得られる複屈折部に耐薬品性が付与され得る。また例えば、400℃でポストベークすることにより、低融点ガラスに匹敵するビッカーズ硬度を有する複屈折部が得られ得る。
以上のようにして、壁部21と溝部22とが周期的に繰り返して構成される凹凸周期構造を有する複屈折部20が形成される。なお、実用的には、上記のように複屈折部用材料の塗布厚みが成形用モールドのパターン高さより大きいので、得られる複屈折部20は残存塗布膜が硬化した部分23を含み得る。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例には限定されない。
(実施例1)
1.ポリシランの合成
攪拌機を備えた1000mlフラスコにトルエン400mlおよびナトリウム13.3gを充填した。このフラスコの内容物を紫外線から遮断したイエロールーム中で111℃に昇温し、高速攪拌することによりナトリウムをトルエン中に微細に分散させた。ここにフェニルメチルジクロロシラン42.1g、テトラクロロシラン4.1gを添加し、3時間攪拌することにより重合を行った。その後、得られた反応混合物にエタノールを添加することにより、過剰のナトリウムを失活させた。水洗後、分離した有機層をエタノール中に投入することにより、ポリシランを沈澱させた。得られた粗製のポリシランをエタノールから3回再沈殿させることにより、重量平均分子量11600で、オリゴマーを10%含有した、分岐型ポリメチルフェニルシランを得た。
2.ポリゲルマンの合成
攪拌機を備えた100mlフラスコにトルエン40mlおよびナトリウム3.14gを充填した。このフラスコの内容物を紫外線から遮断したイエロールーム中で111℃に昇温し、高速攪拌することによりナトリウムをトルエン中に微細に分散させた。ここにフェニルメチルジクロロゲルマン9.3g、フェニルトリクロロゲルマン2.6gを添加し、2時間攪拌することにより重合を行った。その後、得られた反応混合物に2-プロパノール30mlを添加することにより、過剰のナトリウムを失活させた。さらに反応物を200mlの2-プロパノール中に攪拌しながら投入することにより、ポリゲルマンを沈澱させた。得られた粗製のポリゲルマンをエタノールから3回再沈殿させることにより、重量平均分子量10000で、オリゴマーを10%含有した、20%分岐型ポリメチルフェニル/フェニルゲルマンを得た。
3.複屈折部用材料の調製
上記のようにして得られたポリメチルフェニルシラン(PMPS)66.6重量部、ビニル基含有フェニルメチルシリコーンレジン(商品名「KR−2020」、Mw=2900、ヨウ素価=61)33.4重量部、及び有機過酸化物BTTB(日本油脂製、固形分20重量%)5重量部を、メトキシベンゼン(商品名「アニソール−S」、協和発酵ケミカル社製)に固形分77重量%となるように溶解した。一方、上記のようにして得られたメチルフェニルゲルマン/フェニルゲルマン共重合体(共重合比:8/2、分岐型)を準備した。上記溶液と共重合体とを固形分比(重量比)が50/50となるように混合し、複屈折部用材料を調製した。
4.構造性複屈折波長板の作製
上記のようにして得られた複屈折部用材料を石英基板表面に2500rpmで40秒間スピンコートすることにより、厚み約2μmの塗布膜を得た。壁部と溝部とが周期的に繰り返して構成される凹凸周期構造(壁部の高さH:1130nm、ピッチP:500nm、幅L:250nm)のパターンが形成されたSi製モールドを、圧力2MPaで当該塗布膜に押し当てた。次いで、UV照射、Oプラズマ処理、熱処理により複屈折部用材料を完全にガラス化させて、複屈折部を形成した。このようにして、構造性複屈折波長板を作製した。構造性複屈折波長板の複屈折部は、モールドのパターンが欠落したり変形したりすることなく、きわめて良好に転写されていた。また、同様の作製手順で多数の構造性複屈折波長板を作製したところ、歩留まりもきわめて高かった。二軸型の反射分光法を採用した測定機(SCI社製フィルムテック4000)を用いて、複屈折部の波長632nmにおける屈折率を求めたところ、屈折率は1.695であった。さらに、得られた構造性複屈折波長板は、波長700nmの光に対して、約170nmの位相差を示し、1/4波長板として非常に良好に機能することを確認した。
さらに、上記のように調製した複屈折部用材料を250℃で30分間加熱して硬化させた後、以下の評価に供した:
(1)耐熱性
硬化後の複屈折部用材料を加熱処理し、加熱による収縮率を調べた。250℃、5分間の加熱処理では収縮率はゼロであり、350℃、5分間の加熱処理では収縮率が5%であった。このように、本実施例で用いた複屈折部用材料は、硬化後に優れた耐熱性を示した。
(2)機械的特性
マイクロビッカーズ硬度を測定して評価した。硬化後の複屈折部用材料のビッカーズ硬度は310HVであり、PMMAの約3倍の硬度であった。このように、本実施例で用いた複屈折部用材料は、硬化後に優れた機械的特性(硬度)を示した。
(3)光透過性
通常の方法で透過率を測定した。その結果、硬化後の複屈折部用材料の可視光透過率は約90%以上であり、かつ、波長300nmの深紫外光の透過率が70%以上であった。このように、本実施例で用いた複屈折部用材料は、硬化後に可視領域のみならず深紫外領域でも優れた透過性を有していた。
(4)耐薬品性
硬化後の複屈折部用材料をアセトン中で5分間超音波洗浄した。本実施例で用いた組成物は、超音波洗浄後も、その形状を実質的に完全に維持していた。
また、硬化後の複屈折部用材料を、10%のHCl水溶液、10%のNaOH水溶液、および5%のHF水溶液にそれぞれ30分間浸漬した。その結果、本実施例で用いた複屈折部用材料は、いずれの溶液処理においても、その形状を実質的に完全に維持していた。このように、本実施例で用いた複屈折部用材料は、硬化後に非常に優れた耐薬品性を有していた。
(実施例2)
壁部の高さHを900nmとしたこと以外は実施例1と同様にして、構造性複屈折波長板を作製した。得られた構造性複屈折波長板は、波長700nmの光に対して、約140nmの位相差を示した。
(比較例1)
メチルフェニルゲルマン/フェニルゲルマン共重合体を用いずに複屈折部用材料を調製したこと以外は実施例1と同様にして、構造性複屈折波長板を作製した。得られた構造性複屈折波長板は、波長700nmの光に対して、約80nmの位相差しか示さず、1/4波長板としては実用レベルではなかった。
(比較例2)
PMMAを用いて、実施例1と同様の凹凸周期構造を有する構造性複屈折波長板を作製した。得られた構造性複屈折波長板は、波長700nmの光に対して、約50nmの位相差しか示さず、1/4波長板としては実用レベルではなかった。さらに、この波長板は、硬度、耐熱性および耐薬品性のいずれもが不十分であった。
本発明の構造性複屈折波長板は、例えば光ピックアップ光学系などに好適に利用され得る。
本発明の好ましい実施形態による構造性複屈折波長板の概略斜視図である。 本発明の好ましい実施形態による構造性複屈折波長板の複屈折部の形成手順を説明する模式図である。
符号の説明
100 構造性複屈折波長板
10 基板
20 複屈折部
21 壁部
22 溝部

Claims (7)

  1. 基板と
    ポリシランとシリコーン化合物とポリゲルマンとを含む組成物から形成され、壁部と溝部とが周期的に繰り返して構成される凹凸周期構造を有する複屈折部であって、前記組成物は、前記ポリシラン/前記シリコーン化合物の重量比が80:20〜5:95の割合のものを含有するとともに、前記ポリシランおよび前記シリコーン化合物の合計100重量部に対して10〜150重量部の割合で前記ポリゲルマンを含有しているものである、複屈折部と
    を有する、構造性複屈折波長板。
  2. 前記複屈折部が、前記組成物をモールドでインプリントすることにより形成されている、請求項1に記載の構造性複屈折波長板。
  3. 前記複屈折部の屈折率、ならびに前記壁部のピッチ、高さおよび充填率を最適化することにより、所定の波長を有する光に対して所定の位相差を発現する、請求項1または2に記載の構造性複屈折波長板。
  4. 基板と
    ポリシランとシリコーン化合物とポリゲルマンとを含む組成物から形成され、壁部と溝部とが周期的に繰り返して構成される凹凸周期構造を有する複屈折部であって、前記組成物は、前記ポリシラン/前記シリコーン化合物の重量比が80:20〜5:95の割合のものを含有するとともに、前記ポリシランおよび前記シリコーン化合物の合計100重量部に対して10〜150重量部の割合で前記ポリゲルマンを含有しているものである、複屈折部と
    を備えており、
    配置される雰囲気媒体の示す屈折率である媒体屈折率n と、前記複屈折部の前記組成物の屈折率である複屈折部屈折率n と、前記壁部の繰り返し方向の配置のピッチPと、前記壁部の高さHと、前記壁部が前記壁部および前記溝部の範囲に対して占める割合である充填率fとが、波長λを有する光に対して目的の位相差δが発現するように最適化されている
    構造性複屈折波長板。
  5. 前記位相差δが、
    δ=(n TE −n TM )×(H/λ)
    ただし、
    TE ={f×n +(1−f)×n 1/2
    TM ={f/n +(1−f)/n −1/2
    により決定される
    請求項4に記載の構造性複屈折波長板。
  6. 前記位相差δが1/4となるようにされている
    請求項4または5に記載の構造性複屈折波長板。
  7. 前記位相差δが1/2となるようにされている
    請求項4または5に記載の構造性複屈折波長板。
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