JP5105279B2 - 発振子及び該発振子を有する発振器 - Google Patents
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Description
図18は発振器の概略を示したブロック図である。この発振器100は発振子101、駆動回路102、PLL(Phase Locked Loop)回路(位相差同期回路)103、温度センサ104、温度特性補正回路105及び補正データメモリ106を備えている。
すなわち、発振器100では、温度特性を補正するために、PLL回路103、温度センサ104、温度特性補正回路105及び補正データメモリ106を搭載しなければならないが、発振子101の温度特性がPLL回路103で補正可能な範囲に収まるとは限らず、また個々の発振子101ごとに温度特性が異なるため、効率的に温度特性補正ができない可能性がある。
本発明に係る発振子は、一方向に延びるように形成され、該一方向に直交する他方向に振動する振動片と、該振動片から左右に分岐して延出する一対の延出部と、該振動片の一端または両端を支持するベース部とを有する振動子と、前記振動片に対して所定距離を空けた状態で前記振動片を間に挟むように配置され、駆動電圧が印加された時に静電引力を発生させて前記振動片を振動させる電極部と、前記一対の延出部に対して所定距離を空けた状態でそれぞれ対向配置され、補正電圧が印加されたときに静電引力を発生させて各延出部を引き寄せ、前記振動片に対して前記一方向の圧縮応力を作用させる補正電極と、を備え、前記一対の延出部は、前記振動片の両端側にそれぞれ設けられていることを特徴とするものである。
また、本発明に係る発振子においては、一対の延出部が振動片の両端側からそれぞれ他方向に延出しているため、振動片には、その両端から圧縮応力がそれぞれ作用することとなる。
これにより、振動片に作用する圧縮応力分布が均一になるとともに、振動片に圧縮応力が効果的に作用しやすくなる。したがって、補正電圧を低くしたとしても、必要な圧縮応力を作用させることができるので、省電力化を図ることができる。また、延出部と補正電極との対向面積を増加させることができるため、補正電極に印加する電圧を抑制することができる。この点においても、省電力化が可能となる。
また本発明に係る発振器によれば、上記発振子を有しているので、周波数変動に応じた圧縮応力を振動片に作用させることができ、振動片の温度変化に対するヤング率の変化を補正して、振動特性の変動を補正することができる。特に、アナログ的に温度補正を行うことができる発振子を有しているので、PLL回路のような複雑な回路を設ける必要がない。よって、設計の簡素化及び製造コストを削減することができる。また、アナログ的な回路によって印加電圧を変化させることができるため、印加電圧の調整が連続的となり、PLL回路のようなデジタル的な回路に比べ、周波数の変動が滑らかになる。そのため、温度特性の補正を効率的に行うことができ、高性能な発振器を提供することができる。
次に、本発明の発振子及び該発振子を有する発振器の第1実施形態を図1〜4に基づいて説明する。
なお、以下に示す各図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材ごとに縮尺を異ならせてある。
図1,2に示すように、発振子30は、シリコン支持層11(例えば、厚さ300〜800μm)と、二酸化珪素(SiO2)のBOX(Buried Oxide)層12と、シリコン活性層(例えば、厚さ5〜100μm)44とが順次積層された、いわゆるSOI(Silicon−On−Insulator)基板45を用いて半導体プロセス技術によって製造されるものである。ただし、SOI基板45に限らず、シリコン等の半導体基板で発振子30を製造しても構わない。これらの層の内、シリコン活性層44には振動子32及び駆動電極(電極部)33a及び検出電極(電極部)33bが構成されている。
振動片36は、平面視長方形状のものであり、振動子アイランド34に、その基端部35が支持されるとともに、振動子アイランド34からX方向(一方向)に延出しているものである。また、振動片36は、シリコン支持層11との間にギャップを有しつつ延出しており(図2(a)参照)、その延出方向(X方向)と直交するY方向(振動片36の幅方向である他方向)に振動可能に構成されている。
その結果、図1,2に示す発振子30を製造することができる。
図5に示すように、発振器10は上述した発振子30と駆動IC20とを備えている。駆動IC20は、図示しない電気回路を介して外部電源に電気的に接続されており、上述した駆動電極33aに駆動電圧を印加する駆動回路14と、振動片36に作用させる圧縮応力の圧縮応力値を算出する周波数変動検出回路(算出機構)15と、周波数変動検出回路15により算出された圧縮応力値に応じた補正電圧を補正電極38a,38bに印加する電圧印加回路16とを備えている。なお、本実施形態では、上述したシリコン支持層11を介して駆動IC20と発振子30とが一体的にパッケージングされている。よって、シリコン支持層11は、駆動IC20も同時に支持する共通基板として機能する。
まず、駆動回路14から駆動電極33aに向けて駆動電圧を印加させることで、駆動電極33aと振動片36との間に静電引力が発生する。その結果、振動片36が、Y方向、つまり振動片36の両側方にギャップを介して配置された駆動電極33a,検出電極33bに接近離間するように振動する。振動片36が振動すると、振動片36と各電極33a,33bとの間のギャップが変化し、振動片36と各電極33a,33bとの間の静電容量が変動する。そして、その静電容量の変動が共振周波数として検出電極33bにより検出される。
よって、発振子30のヤング率を基準温度時のヤング率に一定に維持することができるため、振動特性の変動を抑制することができる。その結果、温度変化による振動片36の周波数変動を相殺でき、温度特性の補正を行うことができる。特に、従来のようにPLL回路103(図18参照)を利用したデジタル的な温度補正を行う場合に比べ、温度変化に対応した圧縮応力を加えるというアナログ的な温度補正なので、ノイズが発生する等のデジタル処理特有の不都合が生じない。したがって、温度特性の補正を高精度かつ効率的に行うことができ、高性能化を図ることができる。
さらに、振動片36が振動子アイランド34に片持ち状で支持されることで、振動の変位を大きくすることができ、効率的に周波数信号を出力できる。また、振動片36に作用する支持応力が少ない振動子32を得ることができる。
次に、図6に基づいて本発明の第2実施形態として、発振子の他の構成について説明する。図6は、第2実施形態に係る発振子の平面図である。なお、本実施形態では、第1実施形態と同様の構成については同一符号を付し説明は省略する。
また、対向部40と補正電極42a,42bとの対向面積を増加させることができるため、補正電極42a,42bに印加する電圧を抑制することができる。この点においても、省電力化が可能となる。
次に、図7,8に基づいて本発明の第3実施形態として、発振子の他の構成について説明する。図7は、第3実施形態に係る発振子の平面図であり、図8は図7のC部拡大図である。なお、本実施形態では、第1実施形態と同様の構成については同一符号を付し説明は省略する。
また、平面視コ字状に形成された延出部61に囲まれた領域に補正電極63を配置するとともに、対向部62が延出部61の内側に延出しているため、1つの補正電極63から両側方に向けて櫛歯電極64を延出させることができ、補正電極63を2つ設ける必要がない。したがって、製造コストを削減することができるとともに、レイアウト性を向上させることができる。
次に、図9〜11に基づいて本発明の第4実施形態として、発振子の他の構成について説明する。図9は、第4実施形態に係る発振子の平面図であり、図10は図9のD部拡大図、図11は図9のE部拡大図である。なお、本実施形態では、第3実施形態と同様の構成については同一符号を付し説明は省略する。
より詳述に説明すると、振動子49には、振動片36の両端部35,39から延出した各延出部61のX方向に沿う二辺の側面に、延出部61の内側、つまり互いの辺に向けて延出する多数の対向部62が形成されている。各対向部62は、延出部61の側面に直交するY方向に向けて櫛歯状に延出している。
図10,11に示すように、各対向部62と櫛歯電極64との間のギャップは、振動片36側に向かう側面62bのギャップg1が、他方の側面62aのギャップに比べ狭く形成されている。
次に、図12に基づいて本発明の第5実施形態として、発振子の他の構成について説明する。図12は、第5実施形態に係る発振子の平面図である。なお、本実施形態では、第1実施形態と同様の構成については同一符号を付し説明は省略する。
振動片82は、振動子アイランド81a,81bからX方向に延出するとともに、X方向に直交するY方向に振動可能なものであり、基端部85a,85bを介して振動子アイランド81a,81b間を架け渡すように連結されている。振動片82は、シリコン支持層11(図2参照)との間にギャップを有しつつ延出している。
次に、図13に基づいて本発明の第6実施形態として、発振子の他の構成について説明する。図13は、第6実施形態に係る発振子の平面図である。なお、本実施形態では、第5実施形態と同様の構成については同一符号を付し説明は省略する。
次に、図14に基づいて本発明の第7実施形態として、発振子の他の構成について説明する。図14は、第7実施形態に係る発振子の平面図である。なお、本実施形態では、第5実施形態と同様の構成については同一符号を付し説明は省略する。
次に、図15に基づいて本発明の第8実施形態として、発振子の他の構成について説明する。図15は、第8実施形態に係る発振子の平面図である。なお、本実施形態では、第7実施形態と同様の構成については同一符号を付し説明は省略する。
より詳述に説明すると、振動片82の基端部85a,85bの同一ポイントから各振動子アイランド81a,81bを囲むように、それぞれ同じ長さだけ延出する平面視コ字状の延出部97が形成されている。各延出部97のX方向に沿う側面には、側方に向けて延出する多数の対向部93が形成されている。この対向部93は、延出部97の側面から延出部97と直交するY方向に櫛歯状に形成されている。
さらに、各対向部93と櫛歯電極95との間のギャップは、振動片82側に向かう側面のギャップが、他方の側面のギャップに比べ狭く形成されている。つまり、櫛歯電極95に電圧が印加されると、振動片82には両応力発生部99に挟まれるように圧縮応力が作用することとなる。
(第9実施形態)
図16は、第9実施形態における発振器の構成を示すブロック図である。なお、発振子は上述した第1〜8実施形態の発振子のうち何れを用いることも可能だが、以下の説明においては第1実施形態の発振子を用いて説明する。
図16に示すように、発振器200は、上述した発振子30と駆動IC210とを備えている。駆動IC210は駆動回路14、電圧印加回路16と、発振子30の温度を測定する温度センサ211と、補正データが記憶された補正データメモリ(メモリ部)212と、補正データを参照して圧縮応力を算出する算出部213とを備えている。なお、温度センサ211、補正データメモリ212及び算出部213により、本実施形態の算出機構が構成されている。
補正データメモリ212が有する上記補正データには、温度センサ211で検出された温度と予め設定された基準温度との温度差に基づいて、圧縮応力値を算出するテーブルが記憶されている。つまり、上述した式3に対応するテーブルが、予め記憶されているものである。
算出部213は、温度センサ211から出力された検出信号と、補正データが記憶された補正データメモリ212とを参照して、圧縮応力値を算出し、該圧縮応力値に対応した電圧印加信号を電圧印加回路16に出力するものである。
図17は、第10実施形態における発振器の構成を示すブロック図である。
図17に示すように、発振器300は発振子30と駆動IC310とを備えている。駆動IC310は、上述した駆動回路14、電圧印加回路16とレファレンス発振子(算出機構)320と周波数差分検出回路(算出機構)330とを備えている。
周波数差分検出回路330には、基準温度時の共振周波数が予め記憶されるとともに、発振子30とレファレンス発振子320との共振周波数の差分を検出して、この差分に基づいて電圧印加回路16に印加信号を出力するものである。
また、本実施形態の発振器の構成に加えて、PLL回路を採用してもよい。この場合、周波数変動検出回路により温度特性の補正をした後、PLL回路によって温度補正を行うこととなる。これにより、ノイズの発生を抑えた上で、より高精度な補正が可能になる。
Claims (8)
- 一方向に延びるように形成され、該一方向に直交する他方向に振動する振動片と、該振動片から左右に分岐して延出する一対の延出部と、該振動片の一端または両端を支持するベース部とを有する振動子と、
前記振動片に対して所定距離を空けた状態で前記振動片を間に挟むように配置され、駆動電圧が印加された時に静電引力を発生させて前記振動片を振動させる電極部と、
前記一対の延出部に対して所定距離を空けた状態でそれぞれ対向配置され、補正電圧が印加されたときに静電引力を発生させて各延出部を引き寄せ、前記振動片に対して前記一方向の圧縮応力を作用させる補正電極と、を備え、
前記一対の延出部は、前記振動片の両端側にそれぞれ設けられていることを特徴とする発振子。 - 前記振動片は、前記ベース部に一端が片持ち状に支持されていることを特徴とする請求項1記載の発振子。
- 前記振動片は、前記ベース部に両端が両持ち状に支持されていることを特徴とする請求項1記載の発振子。
- 前記一対の延出部は、前記他方向に向けて延出していることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の発振子。
- 前記補正電極及び前記延出部は、それぞれ一部分が櫛歯状に形成され、これら櫛歯状に形成された補正電極と延出部とが互い違いに配されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の発振子。
- 請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の発振子と、駆動ICとを有し、
該駆動ICは、前記電極部に前記駆動電圧を印加する駆動回路と、
前記振動片に作用させる前記圧縮応力の圧縮応力値を算出する算出機構と、
算出された前記圧縮応力値に応じた前記補正電圧を前記補正電極に印加する電圧印加回路と、を備えていることを特徴とする発振器。 - 前記算出機構は、前記発振子の温度を検出する温度センサと、
前記温度センサで検出された温度と予め設定された基準温度との温度差に基づいて、前記圧縮応力値を算出する補正データが記憶されたメモリ部と、を備えていることを特徴とする請求項6記載の発振器。 - 前記算出機構は、前記駆動回路から前記発振子と常時同値の駆動電圧が印加されるレファレンス発振子と、
このレファレンス発振子と前記発振子との周波数の差分を検出するとともに、検出した差分に基づいて前記圧縮応力値を算出する周波数差分検出回路と、を備えていることを特徴とする請求項6記載の発振器。
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