JP5105136B2 - 清浄環境維持機能付きキャビネット - Google Patents
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Description
清浄環境維持機能付きのキャビネット(以下 単にキャビネットと称する)は、一般に、安全キャビネットやクリーンベンチと称されるものであり、筐体の内部に作業台と、作業空間が設けられている。またキャビネットは、作業空間の空気を循環するための送風機と、空気を浄化するためのフィルターが装備されている。作業空間内の空気は、前記した送風機によって常時、換気又は循環され、作業空間は、常に無菌状態に維持される。
これに対してクリーンベンチと称される装置は、毒性が比較的低い薬剤の調剤、例えばIVH(中心静脈栄養)等の点滴注射薬の混合調整を行う場合に使用され、薬剤自体が細菌等に汚染されることを防ぐために作業空間内が正圧に維持される。
またキャビネットの前面には開口がある。この開口は、多くの場合、開閉扉を半開き状態にすることによって形成される。
そのため安全キャビネット等で注射液を調剤する場合は、まず薬剤が入ったアンプルを消毒する。そして手指を消毒し、この消毒した手指でアンプルを作業空間に搬入する。
続いて手動操作で開閉扉を閉じ(半開き状態まで閉じる)、手指を開口から挿入して調剤作業を行う。このときに、開口に差し入れる手指は、勿論消毒されていなければならない。
この一連の作業の中で、開口に差し入れる手指は、最初に消毒されるものの、開口に差し入れる直前に開閉扉に触れている。そのため作業者は、アンプル搬入前に消毒をしているものの、調剤作業の前にもう一度消毒を行わなければならない。
この様に従来技術の安全キャビネット等では手指の消毒を二度行わなければならず、面倒である。
そこで本発明は、従来技術の上記した問題点に注目し、安全キャビネットやクリーンベンチを改良し、手指で触れることなく開閉扉を閉じることができる構成を提案するものである。
また、本発明では、作業検知手段を備え、作業中においては開閉扉の開き方向の動作が制限される。そのため開閉スイッチに誤って触れることがあっても開閉扉は開かない。
動力源等は、作業空間から遮蔽されているだけでなく、空気循環路等の空気流路のすべてから遮蔽されていることが推奨される。
従って安全キャビネットやクリーンベンチにおいては、作業時に作業空間内の空気流が理想的なものとなり、且つ圧力分布も理想的なものとなる様に送風機の出力が選定されている。
そのため開閉扉が開くと、作業空間内の空気の流れが変化し、本来、あってはならない空気流が生じる懸念がある。例えば安全キャビネットでは作業空間内の空気が外部に洩れることが許されないが、開閉扉が開くと、作業空間内の空気が外部に洩れることが懸念される。逆にクリーンベンチでは、外気が作業空間に流れ込むことは許されないが、開閉扉が開くと、外気が内部に流入する懸念がある。
そこで本発明は、開閉扉が開き方向に動作するとき、送風手段の出力が変化する機能を持たせ、許されない空気流の発生を未然に防止する。
安全キャビネット1の本体部3は図2に示すように二重構造となっており、外郭部分と内部筐体6と間は空気循環路10となっている。また本体部3内には送風機11,12が設けられている。作業空間7の前面には開閉扉15が設けられている。
以下、これらの各部材について順次説明する。
本体部3は前記した様に二重構造であり、内部筐体6が内蔵されている。
内部筐体6は、図2に示すように正面壁18と、底面壁20と、左右側面壁21,22と、背面壁23及び天面壁25を有する。内部筐体6の正面壁18は下半分が大きく開口する。
また内部筐体6内は二段に区切られている。即ち内部筐体6の中には、図2の様に中間壁24があり、この中間壁24にフィルター26が装着されている。
また内部筐体6の天面壁25にもフィルター27が設けられている。
また底面壁20は、前記した様に作業台8として機能し、物品を載置することができる。底面壁20と左右側面壁21,22との間には吸気口(図示せず)がある。同様に底面壁20と背面壁23との間にも吸気口(図示せず)がある。
内部筐体6の前面の開口31には、開閉扉15が設けられている。開閉扉15の具体的構造については後記する。
内部筐体6の両側面の外側及び背面の外側には流路形成壁33が設けられている。即ち前記した様に本体部3は二重構造であり、内部筐体6の両側面の外側及び背面の外側には空間があり、空間が空気循環路10として機能する。前記した空気流路は図示しない開口を通じて内部筐体6の上段側(中間壁24よりも上の空間)と連通する。
また内部筐体6の天面壁25に設けられたフィルター27は、外部と連通する。
内部筐体6の正面壁18には開閉扉15の駆動機構が設けられており、さらにその表面を化粧板35で覆っている。
図5は、図1の安全キャビネットの内部筐体の外観構造を及び開閉扉の開閉機構示す概念図であり、開閉扉が半開きの状態を示す。図6は、図1の安全キャビネットの内部筐体の外観構造を及び開閉扉の開閉機構示す概念図であり、開閉扉が閉じた状態を示す。
図5,6は、化粧板等を取り外した状態を図示している。また図5,6は、説明を容易にするために主要部品を実物よりも大きく描いている。各構成部品の大きさの正確な比率は、前述した図4の通りである。
図7は、図1の安全キャビネットの作業空間を示す斜視図である。
開閉扉15は、図5,6に示すように枠体40にガラスやアクリル等の透明な板材41が取り付けられたものである。
開閉扉15の、枠体40はスライド溝(図示せず)と係合し、上下方向にスライド可能である。また枠体40の左右の垂直辺にはバランサー44,44が取り付けられている。
順次説明すると、モータ43はギャードモータであり、比較的低速且つ高トルクで回転する。モータ43は、内部筐体6の正面壁18に固定され、出力軸にプーリ45が固定されている。
ボールネジ50は、上下方向に配置されており、一端にプーリ46が取り付けられている。
またボールネジ50にはボールネジナット52が係合しており、ボールネジナット52は開閉扉15の上端部であって左右方向の中心部に固定されている。ボールネジナット52は開閉扉15に固定されており、直線的に移動可能であるが回転不能である。
ボールネジ50が回転すると、これに係合する軸受け51がボールネジ50に沿って直線移動する。その結果、開閉扉15が昇降する。
また前面開口31の外側であって、当該開口の下端近傍に作業者検知センサー30が設けられている。作業者検知センサー30は透過型の光センサーであり、作業者の腕を検知する。即ち作業者検知センサー30は、作業空間7内に作業者の手が挿入されているか否かを検知するものであり、作業検知手段として機能する。
なお本実施形態では、フットスイッチ60として防水性能を備えたものが選定されている。また安全キャビネット1がクリーンルーム内に設置されて使用される場合が多いことを考慮して、フットスイッチ60は埃や菌等が付着しにくいものであることが望ましく、凹凸の少ない形状であることが推奨される。最も推奨されるフットスイッチ60は、表面が鏡面仕上げされたものである。鏡面仕上げされたフットスイッチ60は、傷つきにくい点でも推奨される。
即ち開閉扉15を図1,4に示すように半開きにした状態で送風機11,12を起動させると、作業空間7内の空気が、吸気口(図示せず)から吸引され、内部筐体6の側面及び背面に形成された空気循環路10を流れて内部筐体6の上段部(中間壁24よりも上の空間)に入る。そして空気の一部は、天面に設けられたフィルター27を介して外部に排気され、残部は中間壁24に設けられたフィルター26を経て作業空間7に戻る。
本実施形態の安全キャビネット1では、開閉扉15を開閉させる全ての部材が、内部筐体6の正面壁18に取り付けられており、動力源及び動力伝達手段の全てが作業空間と遮蔽された位置にあるので、これらの部材によって作業空間内の空気流が乱れることはない。また本実施形態では、動力源及び動力伝達手段の全てが空気循環路10その他の空気流路のいずれからも遮蔽された位置にあるので、空気の流れに全く影響を与えない。
本実施形態では、フットスイッチ60は、左右二つのフットペダル61,62を有し、一方のフッドペタル61を踏むと開閉扉15が上昇し、他方のフッドペタル62を踏むと開閉扉15は降下する。より具体的に説明すると、右のフッドペタル61を踏むと開閉扉15は開き方向に移動し、左のフッドペタル62を踏むと開閉扉15は閉じ方向に移動する。本実施形態では、開閉扉15の開閉動作は段階的に行われ、特定の位置においてフットペダル61,62のいずれかを踏むと、開閉扉15は、一段階だけ昇降する。
即ち作業検知手段たる作業者検知センサー30が作業空間7内に手指があることを検知すると、上昇側のペダル61が無効となり、開閉扉15は開かない。そのため作業中に無意識にペダル61を踏んだとしても開閉扉15は開き方向に移動せず、作業空間7内の空気が外部に洩れることはない。
本実施形態の安全キャビネット1で注射液を調剤する場合は、従来技術と同様に薬剤が入ったアンプルを消毒する。そして手指を消毒し、この消毒した手指でアンプルを作業空間7に搬入する。
この時、安全キャビネット1の開閉扉15は、予め全開にしておくことが望ましいが、全閉状態または半開状態である場合は、フットスイッチ60の開き側ペダル61を踏む。その結果、モータ43が回転し、ボールネジ50が回転して開閉扉15が上昇する。もし開閉扉15が全閉状態であったならば半開状態となった位置でモータ43が停止するから、再度開き側ペダル61を踏む。
こうして開閉扉15を開くが、作業者は開閉扉15に手を触れることが無いので作業者の手指は清潔である。
そして開閉扉15を下げ、半開状態となるまで開閉扉15を閉じる。この際においても作業者は開閉扉15に触れることはない。即ち作業者は、フットスイッチ60の閉じ側ペダル62を踏む。その結果、モータ43が先の場合とは反対に回転し、ボールネジ50も反対方向に回転して開閉扉15が閉じる。開閉扉15が半開位置に至ると、センサー54が検知してモータ43が停止する。
この様に開閉扉15を閉じる際にも作業者の手指は開閉扉15に触れない。
即ち調剤作業の最中においては、作業者の手指が作業空間7内にあり、作業者検知センサー30が作業者の腕の存在を検知している。本実施形態では、作業者検知センサー30が作業空間7内に手指があり、作業中であることを検知している間、上昇側のペダル61が無効となっているので、開閉扉15は開かず、作業空間7は清浄状態を維持することができる。
一日の作業が終わると、安全キャビネット1が設置された調剤室(クリーンルーム)が清掃され、調剤室の床面が水洗いされるが、本実施形態では、フットスイッチ60が防水性を備えているので、漏電やショートの危険は無い。
即ち安全キャビネット1は、開閉扉15を半開状態で使用するものであるから、開閉扉15が全開となれば、空気の流れは予定の流れから外れる。具体的に説明すると、安全キャビネット1は、作業空間7が負圧となる様に維持されており、通常の使用条件であれば、作業空間7の空気は作業者側に流れない。しかしながら開閉扉15が開かれると、作業空間7の内外の気圧バランスが崩れ、作業空間7の空気が外に洩れようとする。そこで開閉扉15が開き側に動作する場合には送風機11,12の出力を増加させ、作業空間7が負圧となる様に維持する。
送風機11,12の出力を増加させる手段としては、送風機11,12の回転数を増大させる方策の他、ダンパ等を設けてこの開度を調節する方策が考えられる。
3 本体部
6 内部筐体
7 作業空間
8 作業台
11,12 送風機
15 開閉扉
30 作業者検知センサー(作業検知手段)
40 枠体
41 透明な板材
43 モータ
44 バランサー
45,46 プーリ
47 動力伝動ベルト
50 ボールネジ
51 軸受け
52 ボールネジナット
60 フットスイッチ
61 右ペダル
62 左ペダル
70 開口
Claims (4)
- 筐体の内部に清浄な環境に維持される作業空間を備え、前面が透明であって作業空間を外部から目視可能であり、前面に開口を有し、前記開口から手を差し入れて作業空間内で作業を行う清浄環境維持機能付きキャビネットにおいて、動力によって開閉または開度が変更される開閉扉と、作業中であることを検知する作業検知手段を備え、前記作業検知手段によって作業中であることが検知されている間は、開閉扉は開き方向に移動しないことを特徴とする清浄環境維持機能付きキャビネット。
- フットスイッチを有し、フットスイッチによって開閉扉が動作することを特徴とする請求項1に記載の清浄環境維持機能付きキャビネット。
- 開閉扉は昇降方向に移動し、開閉扉を昇降させる動力源及び動力伝達手段の全てが少なくとも作業空間から遮蔽された位置にあることを特徴とする請求項1又は2に記載の清浄環境維持機能付きキャビネット。
- 送風手段を備え、開閉扉が開き方向に動作するとき、送風手段の出力は増大方向に変化することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の清浄環境維持機能付きキャビネット。
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