JP5103783B2 - 燃料電池システム及びその運転方法 - Google Patents

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Description

本発明は、燃料電池システム及びその運転方法に関するものである。
従来、燃料電池を搭載した車両(以下「燃料電池搭載車両」という。)においては、積層型の燃料電池によって発生させられた電流をモータに供給し、該モータを駆動することによってトルクを発生させるようにしている。
そのために、前記燃料電池搭載車両に燃料電池システムが配設され、該燃料電池システムは、液体水素が貯蔵された燃料タンク、該燃料タンクから水素ガスが供給されるとともに、空気が供給され、前記積層型の燃料電池を構成する燃料電池スタック、該燃料電池スタックから排出されたガス中の蒸気を凝縮させ、ガスと水とに分離させる凝縮器等を備える。
そして、前記燃料電池スタックにおいては、スタックケース内にモジュールが収容され、該モジュールは、燃料電池の要素を構成する複数のセルを互いに電気的に直列に接続することによって構成された集合体から成る。前記各セルは、電解質膜を挟んで、反応層及び拡散層を備えた空気極並びに燃料極を配設することによって形成された膜・電極接合体であるメンブレン・エレクトロード・アッセンブリ(MEA)、及び該各メンブレン・エレクトロード・アッセンブリを分離させ、かつ、前記空気極に臨ませて空気供給路を、前記燃料極に臨ませて燃料供給路を形成するセパレータを備える。
そして、前記空気極はカソードとして、燃料極はアノードとして機能し、空気極に空気を、燃料極に水素ガスを供給し、空気極及び燃料極に前記セパレータを介して、インバータ及びモータを接続すると、燃料極において触媒反応が起こり、水素が水素イオン(プロトン)と電子とに分解され、水素イオンが、プロトン(H+ )の形態で水分を含んだ電解質膜内を空気極側に移動し、空気中の酸素と結合して水を生成する。一方、前記燃料極で発生した電子がインバータを介して空気極側に移動し、これに伴って電流が発生する。すなわち、水素と酸素とを反応させることによって電流が発生させられ、該電流を前記セパレータを介してインバータ及びモータに供給することができる(例えば、特許文献1参照。)。
特開2003−31254号公報
しかしながら、前記従来の燃料電池システムにおいては、例えば、運転者がアクセルペダルを踏み込んで燃料電池搭載車両を加速させたり、登坂路で走行させたりする高負荷の走行状態から、アクセルペダルを緩めて燃料電池搭載車両を減速させたり、降坂路で走行させたりする低負荷の走行状態に変化すると、燃料電池が高負荷の運転状態から低負荷の運転状態に変化するが、それに伴って、セパレータの燃料供給路側の面において水蒸気が凝縮して水滴が付着することがある。特に、出力が大きくされ、積層密度が高くされた燃料電池スタックにおいては、セルが薄くされ、セパレータとしてメタルセパレータが使用されるが、その場合、セルの熱容量が小さくなるので、水蒸気が凝縮しやすくなり、一旦(たん)付着した水滴が、排除されなくなってしまう。
その結果、燃料極において、水素ガスが円滑に流れなくなり、十分に触媒反応が行われなくなるので、出力が小さくなってしまう。
本発明は、前記従来の燃料電池システムの問題点を解決して、燃料極において十分に触媒反応が行われ、出力を大きくすることができる燃料電池システム及びその運転方法を提供することを目的とする。
そのために、本発明の燃料電池システムにおいては、燃料ガス及び空気が供給されて電力を発生させる燃料電池と、供給管、及び該供給管上に配設されたファンを備え、前記燃料電池に空気を供給するための空気供給系と、前記燃料電池に燃料ガスを供給するための燃料供給系と、前記燃料電池が、発生させた電力を外部の負荷装置に供給しているかどうかを判断する負荷判定処理手段と、前記燃料電池が、発生させた電力を前記負荷装置に供給していて、待受状態にない場合、ファンの風量を燃料電池に加わる負荷に対応させた風量とし、前記燃料電池が、発生させた電力を前記負荷装置に供給しておらず、待受状態にある場合、ファンの風量を燃料電池が待受状態にない場合より多くし、空気極を乾燥させることによって、燃料極側の水滴を空気極側に排出する風量設定処理手段とを有する。
本発明の他の燃料電池システムにおいては、さらに、前記風量設定処理手段は、燃料電池において発生させられた電流が補助蓄電装置に供給され、補助蓄電装置への充電が行われている間にファンの風量を多くする。
本発明の燃料電池システムの運転方法においては、燃料ガス及び空気が供給されて電力を発生させる燃料電池、供給管、及び該供給管上に配設されたファンを備え、前記燃料電池に空気を供給するための空気供給系、並びに前記燃料電池に燃料ガスを供給するための燃料供給系を有する燃料電池システムに適用されるようになっている。
そして、前記燃料電池が、発生させた電力を外部の負荷装置に供給しているかどうかを判断し、前記燃料電池が、発生させた電力を前記負荷装置に供給していて、待受状態にない場合は、ファンの風量を燃料電池に加わる負荷に対応させた風量とし、前記燃料電池が、発生させた電力を前記負荷装置に供給しておらず、待受状態にある場合は、ファンの風量を燃料電池が待受状態にない場合より多くし、空気極を乾燥させることによって、燃料極側の水滴を空気極側に排出する。
本発明によれば、燃料電池システムにおいては、燃料ガス及び空気が供給されて電力を発生させる燃料電池と、供給管、及び該供給管上に配設されたファンを備え、前記燃料電池に空気を供給するための空気供給系と、前記燃料電池に燃料ガスを供給するための燃料供給系と、前記燃料電池が、発生させた電力を外部の負荷装置に供給しているかどうかを判断する負荷判定処理手段と、前記燃料電池が、発生させた電力を前記負荷装置に供給していて、待受状態にない場合、ファンの風量を燃料電池に加わる負荷に対応させた風量とし、前記燃料電池が、発生させた電力を前記負荷装置に供給しておらず、待受状態にある場合、ファンの風量を燃料電池が待受状態にない場合より多くし、空気極を乾燥させることによって、燃料極側の水滴を空気極側に排出する風量設定処理手段とを有する。
この場合、燃料電池が外部の負荷装置に対して電力を供給しているかどうかが判断され、燃料電池が外部の負荷装置に対して電力を供給していない場合、ファンの風量が多くされるので、燃料極側の水滴を排除することができる。したがって、燃料極側において、燃料が円滑に流れるようになるので、燃料と空気との反応が十分に行われるようになる。その結果、燃料電池の出力を大きくすることができる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は本発明の実施の形態における車載燃料電池システムを示す図である。
図において、11は積層型の燃料電池、本実施の形態においては、固体高分子型の燃料電池(PEFC)を構成する燃料電池スタックであり、該燃料電池スタック11は、乗用車、バス、トラック、乗用カート、荷物用カート等の車両に、エネルギー供給源として搭載される。この場合、車両は、照明装置、ラジオ、パワーウインドウ等のように、車両を停車させている間においても電気エネルギーを消費する補機類を多数備え、しかも、多様な走行パターンで走行させられることが多い。
そこで、エネルギー供給源として、燃料電池スタック11のほかに、補助蓄電装置としてのキャパシタ(コンデンサ)81が配設される。なお、該キャパシタ81に代えてバッテリ(2次電池)を使用することができる。
また、12は前記燃料電池スタック11に媒体としての空気を供給するための媒体供給系としての空気供給系、13は前記燃料電池スタック11からガスを排出するためのガス排出系、14は前記燃料電池スタック11に燃料ガスとしての水素ガスを供給するための燃料供給系としての水素ガス供給系、16は前記燃料電池スタック11に水を供給するための冷却媒体機器部としての水供給系である。前記燃料電池スタック11、空気供給系12、ガス排出系13、水素ガス供給系14及び水供給系16によって車載燃料電池システムが構成される。
本実施の形態においては、燃料電池として固体高分子型の燃料電池(PEMFC)を使用しているが、該固体高分子型の燃料電池に代えて、アルカリ水溶液型の燃料電池(AFC)、リン酸型の燃料電池(PAFC)、溶融炭酸塩型の燃料電池(MCFC)、固体酸化物型の燃料電池(SOFC)、ヒドラジン型の燃料電池、直接メタノール型の燃料電池(DMFC)等を使用することもできる。
前記燃料電池スタック11は、筐(きょう)体としての図示されないスタックケース、及び該スタックケース内に収容されたスタックユニット20を備える。そして、該スタックユニット20は、図示されない複数のモジュール、該各モジュールを挟んで配設され、燃料電池の端子を構成する図示されない一対のターミナル、並びに前記モジュール及びターミナルを挟んで配設され、絶縁材料によって形成された図示されないインシュレータを備える。
ところで、前記各モジュールにおいて、前記水素ガス供給系14によって水素ガスとして供給された燃料としての水素と、前記空気供給系12によって酸化剤として供給された空気に含まれる酸素とが反応させられて水が生成されるとともに、反応に伴って電流が発生させられる。この場合、酸化剤として、空気に代えて酸素を供給することができる。そのために、前記モジュールは、燃料電池スタック11の要素を構成する複数の薄い膜状のセルを積層し、互いに電気的に直列に接続することによって形成されたセルの集合体から成る。
前記各セルは、水素イオンを透過する固体電解質(固体高分子電解質膜)としての図示されない電解質膜を挟んで、反応層及び拡散層から成る空気極、並びに反応層及び拡散層から成る燃料極(水素極)を配設することによって形成された膜・電極接合体であるメンブレン・エレクトロード・アッセンブリ、及び該各メンブレン・エレクトロード・アッセンブリを分離させ、かつ、前記空気極に臨ませて空気供給路を、前記燃料極に臨ませて燃料供給路を形成するセパレータを備える。
前記各反応層は、前記空気極及び燃料極における電解質膜と接触する面に配設され、水素と酸素との反応を促進するために、カーボンに、白金系触媒及び固体高分子を混合して形成されたペースト状の物質が、ある程度の厚さで均一に分散させられることによって形成された触媒層から成る。なお、前記空気極に代えて酸素極を使用し、媒体としての純酸素を燃料電池スタック11に供給することもできる。
前記スタックケース内には、前記スタックユニット20より上方に、空気供給系12から供給された空気を各空気極に供給し、分配するための、第1のマニホルドとしての供給マニホルド22が、スタックユニット20より下方に、空気極内のガスを集め、ガス排出系13に排出するための、第2のマニホルドとしての排出マニホルド23が配設される。前記供給マニホルド22及び排出マニホルド23は、前記空気供給路と連通させられ、燃料供給路から遮蔽(へい)される。そのために、前記セパレータにおける空気極と対向する側には、垂直方向に延びる複数の溝が形成され、該各溝によって前記空気供給路が構成される。空気は、供給マニホルド22に供給された後、各空気供給路に分配され、該各空気供給路を下方に向けて流れ、排出マニホルド23に排出される。
また、前記セパレータにおける燃料極と対向する側は、全周が、隣接するメンブレン・エレクトロード・アッセンブリに対して接着剤によって接着され、シールされる。したがって、シールされた部分の内側には、燃料極に水素ガスを供給するための複数の水平な燃料供給路が形成される。
前記空気供給系12は、供給マニホルド22に空気を供給するための供給管25、該供給管25上に配設された酸化剤供給装置としての、かつ、送風装置としてのシロッコファン等から成るファン24、該ファン24によって吸引される空気を濾(ろ)過する図示されないフィルタ等を備える。前記酸化剤供給装置として、ファン24に代えて空気ボンベ、空気タンク、酸素ボンベ、酸素タンク等を使用することができる。
また、前記ガス排出系13は、排出マニホルド23からガスを排出するための排出管30、該排出管30に配設された水回収部材としての凝縮器31、ガスの温度を検出する温度検出部としての図示されない温度センサ等を備える。
したがって、前記ファン24を作動させることによって、車外から取り込まれた空気を前記供給マニホルド22に供給することができる。また、排出マニホルド23から排出されたガスは、排出管30を介して凝縮器31に供給され、該凝縮器31によって、ガス中の蒸気が凝縮されて水になる。そして、水が回収された後のガスは車外に排出される。
なお、前記凝縮器31に凝縮促進部材としての図示されない冷却ファンを配設することができる。該冷却ファンの回転速度を高くし、送風量を多くすることによって、蒸気の凝縮量を多くすることができる。
また、前記水素ガス供給系14は、液体水素が貯蔵された燃料供給装置としての、かつ、水素供給装置としての燃料タンク41、該燃料タンク41に接続され、燃料タンク41内の液体水素を水素ガスとして排出するための燃料供給路51、該燃料供給路51と並列に形成された図示されない燃料帰還路、該燃料帰還路に接続され、水素ガスを排出する図示されない燃料排出路等を備える。
そして、前記燃料供給路51に、燃料供給路51に排出された水素ガスの圧力を調整する図示されない調圧弁、水素ガスの燃料電池スタック11への供給量を調整する図示されない開閉弁、水素ガスの圧力を検出する圧力検出器としての図示されない水素圧センサ等が配設される。
なお、前記燃料タンク41に代えて、水素ガスが充填(てん)された水素吸蔵合金を収容する水素吸蔵合金タンクを使用することもできる。その場合、前記水素吸蔵合金は、常温下で水素ガスを放出し、低温下で水素ガスを吸蔵する性質を有する。また、改質装置によってメタノール、ガソリン等を改質して水素ガスを生成し、該水素ガスを燃料電池スタック11に直接供給することもできるが、燃料電池搭載車両の高負荷走行時にも安定して十分な量の水素を供給することができるようにするためには、前記燃料タンク41を使用するのが好ましい。
また、前記水供給系16は、冷却媒体供給源としての水タンク61、水供給装置としてのポンプ(P)62、空気極冷却装置としての噴射装置(インジェクタ)63、前記水タンク61から排出された水を噴射装置63に供給するための供給管60、排出マニホルド23の下部に溜(た)まり、該排出マニホルド23から排出された水、及び凝縮器31において分離させられた水を回収し、水タンク61に供給するための水帰還路59、回収された水を水タンク61に供給する水回収ポンプ(P)65、該水回収ポンプ65と水タンク61との間に配設された逆止弁66等を備える。該逆止弁66においては、水回収ポンプ65側から水タンク61側に水が流れるのを許容し、水タンク61側から水回収ポンプ65側に水が流れるのを阻止する。
ところで、前記空気極はカソードとして、燃料極はアノードとして機能し、空気極に空気を、燃料極に水素ガスを供給し、空気極及び燃料極に前記セパレータを介してインバータ82、並びに前記燃料電池スタック11の外部に配設された負荷装置、本実施の形態においては、電動機械としてのモータ73を接続すると、燃料極において触媒反応が起こり、水素が水素イオンと電子とに分解され、水素イオンが、プロトンの形態で水分を含んだ電解質膜内を空気極側に移動し、空気中の酸素と結合して水を生成する。また、前記燃料極で発生させられた電子がインバータ82を介して空気極側に移動し、これに伴って電流が発生する。すなわち、水素と酸素とを反応させることによって、電力を表す電流が発生させられ、該電流を前記セパレータを介してインバータ82及びモータ73に供給することができる。そして、モータ73に駆動輪whが接続され、前記モータ73に電流を供給することによってモータ73を駆動すると、モータトルクが発生させられ、該モータトルクが駆動輪whに伝達される。したがって、燃料電池搭載車両を走行させることができる。
なお、燃料電池スタック11によって発生させられた電圧Vfcは、第1の検出部としての電圧センサ70によって、燃料電池スタック11によって発生させられた電流は、第2の検出部としての電流センサ71によって検出される。また、キャパシタ81の電圧Vcaは、第3の検出部としての電圧センサ85によって検出される。
本実施の形態において、制御装置72は、CPU、MPU等の図示されない演算装置、半導体メモリ等の図示されない記憶装置、図示されない入出力インタフェース等を備える。そして、前記制御装置72に、温度センサ、水位センサ、水素圧センサ、水素濃度センサ、電圧センサ70、電流センサ71等の等の検出部としての各センサが接続され、各センサのセンサ出力が送られる。また、前記制御装置72に、ファン24、ポンプ62、水回収ポンプ65、キャパシタ81、調圧弁、開閉弁等の各アクチュエータが接続され、制御装置72は、前記センサ出力に基づいて各アクチュエータの動作を制御する。
例えば、制御装置72の図示されない送風処理手段は、送風処理を行い、燃料電池スタック11に加わる負荷を検出し、該負荷に対応させて、ファン24に印加される電圧を調整して燃料電池スタック11に供給される空気の風量を制御する。また、制御装置72の図示されない給水処理手段は、給水処理を行い、前記負荷に対応させて、ポンプ62に印加される電圧を調整して噴射装置63に供給される水の圧力を制御する。なお、燃料電池スタック11に加わる負荷は、燃料電池スタック11によって発生させられた電圧Vfcによって表すことができる。
次に、燃料電池スタック11を構成する単位ユニットとしてのモジュールについて説明する。
図2は本発明の実施の形態におけるモジュールの要部を示す平面図、図3は本発明の実施の形態におけるモジュールの正面図、図4は本発明の実施の形態におけるモジュールの背面図、図5は本発明の実施の形態におけるセパレータの要部を示す斜視図である。
モジュール10は、セル101、隣接するセル101同士を電気的に接続するセパレータ102、並びにセル101及びセパレータ102を支持する2種類のフレーム117、118から成るセットを、板厚方向に複数重ねて構成される。そして、前記各フレーム117、118は、セル101同士が所定の間隙(げき)を置いて配設されるように、交互にスペーサとして重ねられる。
前記セル101は、電解質膜111、該電解質膜111の一方側に配設された空気極112、及び前記電解質膜111の他方側に配設された燃料極113を備える。
また、前記セパレータ102は、セル101間で空気と水素とを遮断するガス遮断部材としてのセパレータ基板116、該セパレータ基板116の一方側に配設され、前記空気極112と接触させて配設された第1のコレクタとしての空気極側コレクタ114、及びセパレータ基板116の他方側に配設され、前記燃料極113と接触させて配設された第2のコレクタとしての燃料極側コレクタ115を備える。前記空気極側コレクタ114は、網目状の導電体から成り、空気及び水の混合流を透過させるために多数の開口143が形成され、燃料極側コレクタ115は、網目状の導電体から成り、燃料を透過させるために多数の開口153が形成される(図5においては、説明の都合上、一部だけに開口143及び開口153が示される。)。そして、空気極側コレクタ114は、セル101の空気極112の拡散層と接触し、燃料極側コレクタ115は燃料極113の反応層と接触して、電流を外部に導出する。
本実施の形態において、前記空気極側コレクタ114及び燃料極側コレクタ115は、板厚が0.2〔mm〕程度の金属製の薄板(エキスパンドメタル板材)から成り、セパレータ基板116は、空気極側コレクタ114及び燃料極側コレクタ115より薄い金属製の薄板から成り、導電性及び耐蝕(しょく)性を備えた、例えば、ステンレス鋼、ニッケル合金、チタン合金等に、金メッキ等の耐蝕導電処理を施したものが使用される。また、フレーム117、118は、適宜の絶縁材料から成る。
前記空気極側コレクタ114は、プレス加工によって形成された細かい凸条124を備える。また、該凸条124は、板材の縦辺(短辺)に対して平行に、かつ、等間隔で形成される。前記凸条124の高さは、フレーム117の厚さと実質上等しくされ、空気供給路faを確保する。各凸条124の底部141の平面は、空気極112の拡散層と接触する当接部となり、各凸条124の頂部142は、セパレータ基板116との当接部となる。
前記空気極側コレクタ114には、親水性処理が施され、処理方法としては、親水処理剤を、表面に塗布する方法が採られる。塗布される処理剤としては、ポリアクリルアミド、ポリウレタン系樹脂、酸化チタン(TiO2 )等が使用される。その他の親水性処理としては、金属の表面を粗化する処理、例えば、プラズマ処理がある。親水性処理は、最も温度が高くなる部位に施すことが好ましく、例えば、セル101に接触する底部141、特に、空気供給路fa側に施される。このように、親水性処理を施すことによって、空気極側コレクタ114と空気極112の拡散層との当接面の濡れが促進され、水の潜熱による冷却効果を向上させることができる。また、これにより、開口143に水が詰まりにくくなるため、水が空気の供給を阻害する可能性も一層低くなる。
一方、燃料極側コレクタ115は、プレス加工によって形成された細かい凸条125を備える。該凸条125は、板材の横辺(長辺)に対して平行に、かつ、等間隔で形成される。また、前記凸条125の高さは、フレーム118の厚さと実質上等しくされ、燃料供給路fbを確保する。各凸条125の底部151の平面は、燃料極113の拡散層と接触する当接部となり、各凸条125の頂部152は、セパレータ基板116との当接部となる。
前記空気極側コレクタ114及び燃料極側コレクタ115は、各底部141、151が外側になるようにセパレータ基板116を間に挟んで配設される。このとき、各頂部142、152がセパレータ基板116と当接し、相互に通電可能な状態になる。
そして、前記空気供給路fa内を空気が矢印A方向(縦方向)に、前記燃料供給路fb内を水素が矢B方向(横方向)に流れる。
前記セパレータ102の外側には、フレーム117、118がそれぞれ配設される。前記燃料電池スタック11(図1)においては、最も外側のフレーム117以外の各フレーム117が、空気極側コレクタ114の左右の両端に配設された縦枠部171、172によって形成され、最も外側のフレーム117が、縦枠部171、172、並びに該縦枠部171、172の上端及び下端を連結するバックアッププレート176、177によって形成され、枠状の形状を有する。また、フレーム118は、燃料極側コレクタ115及びセル101の周縁部に配設され、枠状の形状を有する。
そして、前記各縦枠部171、172は、それぞれ板厚方向に貫通する長孔173、174を備え、各縦枠部181、182は、それぞれ板厚方向に貫通する長孔183、184を備え、フレーム117、118を積層すると、長孔173、174、183、184によって、燃料の流路が形成される。
前記構成の燃料電池スタック11において、供給マニホルド22で混合された空気及び水の混合物は、上方から空気極112側の空気供給路faに供給され、該空気供給路fa内を矢印A方向に流れる。前記混合物は、空気中に水滴が霧状に混入した状態で空気極112に沿って供給されるが、燃料電池スタック11の定常運転状態では、セル101が水素と酸素との反応によって発熱するので、空気供給路fa内で混合物は加熱され、混合物中の水滴の一部は、空気極側コレクタ114の網目状部分とセル101の空気極112に付着し、残りは、空気極側コレクタ114と空気極112との間の気相中で加熱されることによって、蒸気になり、空気極側コレクタ114から蒸発潜熱によって熱を奪う。また、前記蒸気は、電解質膜中の水分が空気極112側から蒸発するのを防止し、保湿させる。そして、空気供給路fa中の余剰の空気及び蒸気は、排出マニホルド23から排出される。
一方、燃料は、順次積層されたフレーム117、118の各長孔173、183によって形成される流路を介して、横方から燃料極113側の燃料供給路fbに供給され、燃料供給路fbを矢印B方向に流れる。そして、燃料極113に沿って流れる水素のうち、反応に関与しなかった余剰分は、反対側の各長孔174、184によって形成される流路に排出される。
ところで、例えば、運転者が図示されないアクセルペダルを踏み込んで燃料電池搭載車両を加速させたり、登坂路で走行させたりする高負荷の走行状態から、アクセルペダルを緩めて燃料電池搭載車両を減速させたり、降坂路で走行させたりする低負荷の走行状態に変化すると、燃料電池が高負荷の運転状態から低負荷の運転状態に変化するが、それに伴って、燃料電池スタック11の温度が低くなり、セパレータ基板116の燃料供給路fb側の面において水蒸気が凝縮して水滴が付着することがある。特に、出力が大きくされ、積層密度が高くされた燃料電池スタック11においては、セル101が薄くされ、セパレータ102としてメタルセパレータが使用されるが、その場合、セル101の熱容量が小さくなるので、温度が低下しやすくなり、水蒸気の凝縮量が著しく多くなり、一旦付着した水滴が、排除されなくなってしまう。その結果、燃料極113側において、水素ガスが円滑に流れなくなり、十分に触媒反応が行われなくなるので、出力が小さくなってしまう。
そこで、燃料電池スタック11が高負荷の運転状態から低負荷の運転状態に変化したとき、例えば、アイドリング時に、燃料供給路fb側の面に付着した水滴を排除するようにしている。
なお、燃料電池システムにおいては、低負荷の運転状態で、キャパシタ81への充電を行うようになっているので、キャパシタ81への充電と併せて水滴の排除を行う。
図6は本発明の実施の形態における制御装置の動作を示すフローチャートである。
まず、制御装置72の図示されない充電条件判定処理手段は、充電条件判定処理を行い、キャパシタ81への充電を行うための第1の充電条件が成立したかどうかを、モータ73において回生が行われていないかどうかによって判断する。該回生が行われていて、第1の充電条件が成立していない場合、前記送風処理手段の風量設定処理手段は、風量設定処理を行い、制御装置72に内蔵された風量マップを参照し、ファン24の風量を燃料電池スタック11に加わる負荷に対応させたものにする。なお、前記風量マップにおいて前記負荷は、燃料電池スタック11によって発生させられた電圧Vfcで表され、該電圧Vfcと風量とが対応させて記録される。
一方、回生が行われておらず、第1の充電条件が成立している場合、前記充電条件判定処理手段は、第2の充電条件が成立したかどうかを、燃料電池スタック11が待受状態にあるかどうかによって判断する。この場合、前記充電条件判定処理手段は負荷判定処理手段として機能し、負荷判定処理を行い、燃料電池スタック11に加わる負荷が小さいかどうかを、本実施の形態においては、燃料電池スタック11がモータ73に対して電力を供給しているかどうかによって判断する。そして、燃料電池スタック11が待受状態にある場合、燃料電池スタック11がモータ73に対して電力を供給していないと判断し、燃料電池スタック11が待受状態にない場合、燃料電池スタック11がモータ73に対して電力を供給していると判断する。
なお、前記待受状態は、運転者がアクセルペダルから足を離し、燃料電池スタック11がアイドリング状態に置かれている状態をいう。燃料電池スタック11が待受状態になく、第2の充電条件が成立していない場合、前記風量設定処理手段は、ファン24の風量を燃料電池スタック11に加わる負荷に対応させた風量に設定する。
これに対して、燃料電池スタック11が待受状態にあり、第2の充電条件が成立している場合、制御装置72の図示されない充電処理手段は、充電処理を行い、燃料電池スタック11において発生させられた電流をキャパシタ81に送り、該キャパシタ81への充電を行う。
なお、本実施の形態においては、モータ73において回生が行われていない場合に燃料電池スタック11からキャパシタ81への電力の供給である充電が行われ、モータ73において回生が行われている場合、燃料電池スタック11からキャパシタ81への充電が行われないので、キャパシタ81が過充電になるのを防止することができる。
続いて、前記風量設定処理手段は、ファン24に印加される電圧を高くするか、又はファン24に供給される電流を大きくしてファン24の回転速度を高くし、ファン24の風量を多くする。これに伴って、供給マニホルド22を介して空気供給路faに供給される空気の量が多くされ、空気極側コレクタ114及び空気極112を乾燥させる。その結果、燃料極113側の水滴は、拡散及び毛細管現象によって、燃料極113、電解質膜111及び空気極112を伝って移動し、空気供給路faに排出される。
次に、前記充電条件判定処理手段は、前記電圧Vfc、Vcaを読み込み、第3の充電条件が成立しているかどうかを、電圧Vfcが電圧Vcaより高いかどうかによって判断する。電圧Vfcが電圧Vcaより高く、第3の充電条件が成立している場合、前記充電処理手段は、キャパシタ81への充電を継続し、前記風量設定処理手段は、ファン24の風量を多くした状態に保持する。
そして、電圧Vfcと電圧Vcaとが等しくなり、第3の充電条件が成立すると、前記充電処理手段は、キャパシタ81の充電を停止させ、前記風量設定処理手段は、ファン24の風量を燃料電池スタック11に加わる負荷に対応させた風量に設定する。
このように、燃料電池スタック11が低負荷の運転状態にあるときに、供給マニホルド22に供給される空気の量が多くされるので、燃料供給路fb側の面に付着した水滴を排除することができる。したがって、燃料極113において、水素ガスが円滑に流れるようになるので、十分に触媒反応が行われるようになり、燃料電池スタック11の出力を大きくすることができる。
次にフローチャートについて説明する。
ステップS1 回生が行われているかどうかを判断する。回生が行われている場合はステップS6に進み、行われていない場合はステップS2に進む。
ステップS2 燃料電池スタック11が待受状態にあるかどうかを判断する。燃料電池スタックは11が待受状態にある場合はステップS3に進み、待受状態にない場合はステップS6に進む。
ステップS3 キャパシタ81への充電を行う。
ステップS4 ファン24の風量を多くする。
ステップS5 電圧Vfcが電圧Vcaより高いかどうかを判断する。電圧Vfcが電圧Vcaより高い場合はステップS3に戻り、電圧Vfcと電圧Vcaとが等しい場合はステップS6に進む。
ステップS6 風量を負荷に対応させて、リターンする。
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
本発明の実施の形態における車載燃料電池システムを示す図である。 本発明の実施の形態におけるモジュールの要部を示す平面図である。 本発明の実施の形態におけるモジュールの正面図である。 本発明の実施の形態におけるモジュールの背面図である。 本発明の実施の形態におけるセパレータの要部を示す斜視図である。 本発明の実施の形態における制御装置の動作を示すフローチャートである。
符号の説明
11 燃料電池スタック
12 空気供給系
13 ガス排出系
14 水素ガス供給系
16 水供給系
72 制御装置
81 キャパシタ
101 セル
102 セパレータ
111 電解質膜
112 空気極
113 燃料極

Claims (3)

  1. 燃料ガス及び空気が供給されて電力を発生させる燃料電池と、
    供給管、及び該供給管上に配設されたファンを備え、前記燃料電池に空気を供給するための空気供給系と、
    前記燃料電池に燃料ガスを供給するための燃料供給系と、
    前記燃料電池が、発生させた電力を外部の負荷装置に供給しているかどうかを判断する負荷判定処理手段と、
    前記燃料電池が、発生させた電力を前記負荷装置に供給していて、待受状態にない場合、ファンの風量を燃料電池に加わる負荷に対応させた風量とし、前記燃料電池が、発生させた電力を前記負荷装置に供給しておらず、待受状態にある場合、ファンの風量を燃料電池が待受状態にない場合より多くし、空気極を乾燥させることによって、燃料極側の水滴を空気極側に排出する風量設定処理手段とを有することを特徴とする燃料電池システム。
  2. 前記風量設定処理手段は、燃料電池において発生させられた電流が補助蓄電装置に供給され、補助蓄電装置への充電が行われている間にファンの風量を多くする請求項1に記載の燃料電池システム
  3. 料ガス及び空気が供給されて電力を発生させる燃料電池、供給管、及び該供給管上に配設されたファンを備え、前記燃料電池に空気を供給するための空気供給系、並びに前記燃料電池に燃料ガスを供給するための燃料供給系を有する燃料電池システムの運転方法において、
    前記燃料電池が、発生させた電力を外部の負荷装置に供給しているかどうかを判断し、
    前記燃料電池が、発生させた電力を前記負荷装置に供給していて、待受状態にない場合は、ファンの風量を燃料電池に加わる負荷に対応させた風量とし、前記燃料電池が、発生させた電力を前記負荷装置に供給しておらず、待受状態にある場合は、ファンの風量を燃料電池が待受状態にない場合より多くし、空気極を乾燥させることによって、燃料極側の水滴を空気極側に排出することを特徴とする燃料電池システムの運転方法。
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