このような特許文献1に開示される装置では、顆粒状のシリコン固体原料を主坩堝に、随時投入して融解させ、主坩堝内に融液を補充することで、結晶体を継続的に製造することが可能である。
また顆粒状のシリコン固体原料が主坩堝内の融液に投入される場合、固体原料が融解される直前に顆粒が破裂する。このとき顆粒状のシリコン固体原料が破裂することによって発生する顆粒砕片が主坩堝内に飛散する。また破裂する顆粒状のシリコン固体原料の近傍に存在する融液も主坩堝内に飛散する。
特許文献1に開示される装置では、主坩堝内の隔壁に飛散防止板が設けられるので、前述の飛散した顆粒砕片および融液である飛散物質が、主坩堝内で製造中の結晶体に付着するのを防止することができる。また飛散防止板は、飛散物質が主坩堝から外側に飛出すことを防止する。そのため主坩堝の外側に配置される周辺機器に、飛散物質が付着することを防止して、周辺機器の破損を防止することができる。
しかしながら特許文献1に開示される装置では、主坩堝に投入される固体原料が、粒状シリコン種をシランガスなどに暴露することによって成長させて製造される顆粒状シリコンである。顆粒状シリコンは、シーメンス法によって製造される多結晶シリコン棒と比較してコストが高い。
シーメンス法によって製造される多結晶シリコン棒は、劈開して、塊状のシリコン原料とし、主坩堝に投入する固体原料として使用される。多結晶シリコン棒は、劈開する回数を増やすことによって顆粒形状にすることができるが、劈開作業および得られた固体原料を洗浄する工数が増えて、コストが高くなる。そのためコスト低減のためには、最小限の劈開回数で作成された、大サイズの塊状シリコンを固体原料として使用する必要がある。
特許文献1に開示される装置において、固体原料として大サイズの塊状シリコンを使用する場合、塊状シリコンは、原料供給管および原料導入治具を通して主坩堝に投入される。
そのため塊状シリコンが原料供給管に向けて供給される供給位置は、原料供給管を用いない場合に比べて、塊状シリコンが投入される主坩堝に対して高い位置となる。
前記供給位置における塊状シリコンの位置エネルギーは、原料供給管を用いない場合に比べて大きくなるので、塊状シリコンが主坩堝内の融液に落下したとき、多量かつ激しいスプラッシュが発生する場合がある。この多量のスプラッシュが主坩堝内の隔壁に設けられる飛散防止板に付着すると、スプラッシュの構成であるシリコンと飛散防止板の熱膨張率の差によって、飛散防止板が割れたり、欠けたりする場合がある。さらに原料供給管の下端に多量のスプラッシュが付着して、原料供給管の開口部を塞ぐと、塊状シリコンを主坩堝に投入できなくなる場合がある。
また大サイズの塊状シリコンが原料供給管に向けて供給される場合、塊状シリコンが原料供給管の管内部で、ブリッジを形成して詰まることがないように、原料供給管の管内径を、1つの塊状シリコンの大きさの3倍程度に設計する必要がある。このように管内径が設計された原料供給管は、コストが高い。さらに原料供給管には、前述のように多量のスプラッシュが付着するので、原料供給管を頻繁に交換する必要があり、ランニングコストも増大する。
特許文献2に開示される装置では、主坩堝に固体原料を投入するための供給管の内部に邪魔板が固定される。そのため大サイズの塊状シリコンが供給管の内部を通過するとき、供給管内に配置される邪魔板によって、特許文献1に開示される装置に比べて、塊状シリコンの落下速度が低下された状態で、塊状シリコンを主坩堝に投入することができる。
したがって塊状シリコンが主坩堝内の融液に落下したときの融液面の揺れを抑制することができ、主坩堝内で製造中の結晶体の品質を高品質に維持することができる。さらに塊状シリコンが主坩堝内の融液に落下したときに発生するスプラッシュを抑制することができる。
しかしながら特許文献2に開示される装置のように、原料供給管の内部に邪魔板を配置する構成では、原料供給管の構造が複雑になるため、コストが高くなる。大サイズの塊状シリコンを固体原料として使用する場合、塊状シリコンが邪魔板と原料供給管の管内面との間隙で、ブリッジを形成して詰まることがないように、前記間隙を、1つの塊状シリコンの大きさの3倍程度に設計する必要がある。このように間隙が設計された邪魔板を有する原料供給管は、コストがさらに高くなる。
また特許文献2に開示される装置では、塊状シリコンが主坩堝内の融液に落下したときに発生するスプラッシュの飛散を防止する飛散防止板が設けられていない。そのため飛散物質が主坩堝内で製造中の結晶体に付着したり、主坩堝から外側に飛出してしまう場合がある。
したがって本発明の目的は、塊状の固体原料が坩堝に投入されるときに発生するスプラッシュを抑制するとともに、発生したスプラッシュの飛散を抑制することができる固体原料投入装置を提供することである。また前記固体原料投入装置を含んで構成される融液原料供給装置および結晶製造装置を提供することである。
本発明は、坩堝の開口に対して鉛直方向上方に配置されて、鉛直方向下端部に排出口が形成され、前記排出口とは水平方向にずれた位置で鉛直方向上端部に投入口が形成され、投入口から鉛直方向下方に進むにつれて水平方向に進んで排出口に連なる傾斜面が形成される案内部材と、
坩堝で融解させるべき塊状の固体原料を、案内部材の投入口に供給する固体原料供給手段と、
前記排出口鉛直方向上方に配置され、前記排出口を上面側から覆う飛散防止部材とを含むことを特徴とする固体原料投入装置である。
また本発明は、前記固体原料供給手段は、
固体原料を収容する凹所が形成される固体原料収容容器と、
前記固体原料収容容器を前記投入口の上方に配置した状態で、前記固体原料収容容器を水平な方向に延びる回転軸線まわりに回転させる回転手段とを有することを特徴とする。
また本発明は、前記固体原料収容容器の開口は、四角形状に形成されることを特徴とする。
また本発明は、前記飛散防止部材は、排出口を覆う排出口被覆部と、
排出口被覆部のうち、案内部材の投入口寄りの部分から上方に屈曲する屈曲部とを有することを特徴とする。
また本発明は、前記案内部材は、前記傾斜面と、
前記傾斜面の傾斜方向に垂直で水平な方向の両側端部に形成される側壁面とを含むことを特徴とする。
また本発明は、前記傾斜面は、幅手方向の長さが、投入口から排出口にわたって投入口での幅と同じ長さに形成されるか、または投入口での幅が最も短くなるように形成されることを特徴とする。
また本発明は、前記案内部材の傾斜面と、水平面とが成す鋭角θが、案内部材と固体原料との平均静止摩擦係数をμとしたとき、
0.7tan−1μ≦θ≦2tan−1μで導かれる範囲に設定されることを特徴とする。
また本発明は、前記案内部材は、固体原料の硬さよりも高い硬さをもつ材料によって傾斜面が形成されることを特徴とする。
また本発明は、前記固体原料がシリコンであることを特徴とする。
また本発明は、結晶製造装置の主坩堝に融液原料を供給する融液原料供給装置において、
融液を貯留する副坩堝と、
前記副坩堝を加熱する加熱手段と、
副坩堝に塊状の固体原料を投入する固体原料投入装置と、
副坩堝内に貯留される融液を結晶製造装置の主坩堝に導く融液導入手段とを含み、
前記固体原料投入装置は、
副坩堝の開口に対して鉛直方向上方に配置されて、鉛直方向下端部に排出口が形成され、前記排出口とは水平方向にずれた位置で鉛直方向上端部に投入口が形成され、投入口から鉛直方向下方に進むにつれて水平方向に進んで排出口に連なる傾斜面が形成される案内部材と、
副坩堝で融解させるべき塊状の固体原料を、案内部材の投入口に投入する固体原料供給手段と、
前記排出口鉛直方向上方に配置され、前記排出口を上面側から覆う飛散防止部材とを有することを特徴とする融液原料供給装置である。
また本発明は、融液導入手段は、前記融液原料供給装置の副坩堝の側面に配置されて、副坩堝から結晶製造装置の主坩堝に融液原料を流過させる融液原料流過手段であって、
副坩堝への固体原料の投入によって、副坩堝の側壁に形成される導入口から溢れ出る融液原料を結晶製造装置の主坩堝に導く流路を形成する流路形成部を有することを特徴とする。
また本発明は、副坩堝の中心軸線に垂直な断面で見た場合、前記導入口と、案内部材の排出口とが、中心に関して、略点対称となる位置に位置することを特徴とする。
また本発明は、前記固体原料投入装置は、前記固体原料投入装置であることを特徴とする。
また本発明は、主坩堝内で融解された融液原料から結晶体を成長させる結晶製造装置において、
融液原料を貯留する主坩堝と、
前記主坩堝を加熱する加熱手段と、
主坩堝に融液原料を供給する前記融液原料供給装置とを含んで構成される結晶製造装置である。
本発明によれば、固体原料供給手段によって塊状の固体原料が供給される投入口と、固体原料が坩堝に向かって排出される排出口とが、案内部材の傾斜面を介して、水平方向にずれた位置で形成されるので、飛散防止部材を排出口に対して鉛直方向上方に配置することができる。
塊状の固体原料が坩堝に投入される場合、まず塊状の固体原料が、固体原料供給手段によって、案内部材の投入口に供給される。そのあと塊状の固体原料は、案内部材の傾斜面を滑り落ちて、排出口から坩堝に落下する。このとき固体原料が落下する衝撃によって、坩堝内で融解された融液の融液面に、スプラッシュが発生する。排出口を上面側から覆うように、飛散防止部材が配置されるので、発生したスプラッシュの飛散を抑制することができる。
また塊状の固体原料は、案内部材の傾斜面を滑り落ちて、排出口から坩堝に落下するので、固体原料の鉛直方向下向きの落下速度が低下する。そのためスプラッシュの発生が抑制される。
また本発明によれば、前記固体原料供給手段は、固体原料収容容器と、前記固体原料収容容器を回転させる回転手段とを有する。塊状の固体原料が坩堝に投入される場合、まず固体原料が、固体原料収容容器に落下して収容される。そのあと固体原料収容容器を回転手段によって回転することによって、固体原料収容容器に収容された固体原料が、案内部材の投入口に供給される。そのあと固体原料は、案内部材の傾斜面を滑り落ちて、排出口から坩堝に投入される。
固体原料収容容器を回転手段によって回転することによって、固体原料収容容器に収容された固体原料が案内部材の投入口に供給されるので、特許文献1,2にそれぞれ記載されるような原料供給管などを使用する必要がない。
そのため固体原料が案内部材の投入口に向けて供給される供給位置を、原料供給管を用いる場合に比べて、固体原料が投入される坩堝に対して低い位置に設定することができる。したがって固体原料が投入されたときに坩堝内で発生するスプラッシュを抑制することができる。
また本発明によれば、前記固体原料収容容器の開口は、四角形状に形成される。そのため固体原料収容容器に収容された固体原料を、開口部である四角形状角部に集めた状態で、案内部材の投入口に供給することができる。したがって投入口からの飛出しを防ぐために投入口を大きくする必要がなく、案内部材をコンパクトに設計することができ、装置コストを低減することができる。
また本発明によれば、飛散防止部材が排出口被覆部を有するので、固体原料が坩堝に投入されたときに発生するスプラッシュの飛散を抑制することができる。さらに飛散防止部材が屈曲部を有するので、案内部材の投入口の上方に配置される固体原料供給手段から供給される固体原料の飛散を抑制することができる。
また本発明によれば、前記案内部材には、傾斜面の傾斜方向に垂直で水平な方向の両側端部に側壁面が形成される。そのため固体原料が傾斜面を滑り落ちるときに、傾斜面からはみだしてしまうことを抑制することができる。
また本発明によれば、傾斜面は、幅手方向の長さが、投入口から排出口にわたって投入口での幅と同じ長さに形成されるか、または投入口での幅が最も短くなるように形成される。そのため固体原料が傾斜面を滑り落ちるときに、固体原料が滑り落ちる方向に対して固体原料が通過可能な幅が短くならないので、多くの固体原料が通過する場合であっても、傾斜面の途中で固体材料が集中して詰まることを抑制することができる。
また本発明によれば、前記案内部材の傾斜面と水平面とが成す鋭角が、案内部材と固体原料との平均静止摩擦係数を考慮して導かれる範囲に設定される。そのため固体原料が案内部材の傾斜面を滑り落ちるときの速度が抑制されながら、固体原料が坩堝に投入される。したがって固体原料が坩堝に投入されたときに発生するスプラッシュの飛散を抑制することができる。また固体原料が案内部材の傾斜面上で静止することがないので、継続的に固体原料を坩堝に投入することができる。
また本発明によれば、前記案内部材の傾斜面が、固体原料よりも高い硬さをもつ材料によって形成される。そのため固体原料が固体原料供給手段によって案内部材に供給されるとき、固体原料が案内部材に接触する衝撃によって傾斜面に発生する傷を抑制することができる。また固体原料が傾斜面を滑り落ちるときに発生する傷も抑制することができる。そのため傾斜面の傷に由来する異物の発生を抑制することができ、坩堝に異物が混入することを防止できる。
また本発明によれば、固体原料としてシリコンが使用される。シリコンでは、低コストでかつ高品質の固体原料は、シーメンス法によって製造される大サイズの塊状シリコンである。固体原料が大サイズの塊状シリコンであっても、坩堝に投入されるときに発生するスプラッシュを抑制するとともに、発生したスプラッシュの飛散を抑制することができる。
また本発明によれば、結晶製造装置の主坩堝に融液原料を供給する融液原料供給装置が、融液を貯留する副坩堝と、副坩堝を加熱する加熱手段と、副坩堝に塊状の固体原料を投入する固体原料投入装置と、副坩堝に貯留される融液を結晶製造装置の主坩堝に導く融液導入手段とを含んで構成される。
結晶製造装置の主坩堝に融液原料が供給される場合、まず塊状の固体原料が固体原料投入装置によって副坩堝に投入される。加熱手段によって加熱された副坩堝に投入された塊状の固体原料は、融解されて融液となり、副坩堝に貯留される。副坩堝に貯留される融液原料は、融液導入手段によって、結晶製造装置の主坩堝に導かれて、主坩堝内で結晶体を製造するための融液原料となる。
固体原料が固体原料投入装置によって副坩堝に投入され、融液原料が副坩堝に貯留されるので、融液原料を結晶体が製造される主坩堝に随時供給して補充することができる。そのため主坩堝内で結晶体を継続的に製造することができる。また加熱手段によって副坩堝を加熱することができるので、固体原料投入装置によって投入された固体原料を融解することができ、貯留される融液原料を常時融解した状態に維持することができる。
また前記固体原料投入装置の固体原料供給手段によって案内部材の投入口に供給された塊状の固体原料は、案内部材の傾斜面を滑り落ちて、排出口から副坩堝に落下するので、固体原料の鉛直方向下向きの落下速度が低下される。
そのため副坩堝内でのスプラッシュの発生が抑制できる。また排出口を上面側から覆うように飛散防止部材が配置されるので、副坩堝内で発生したスプラッシュの飛散を抑制することができる。そのため飛散物質が副坩堝から外側に飛出すことを防止することができる。したがって副坩堝の外側に配置される周辺機器に飛散物質が付着することを防止するだけでなく、主坩堝内で製造中の結晶体に飛散物質が付着することを防止することができる。
また本発明によれば、前記融液導入手段が、副坩堝の側面に配置され、副坩堝から結晶製造装置の主坩堝に融液原料を流過させる融液原料流過手段である。また融液導入手段は、副坩堝への固体原料の投入によって、副坩堝の側壁に形成される導入口から溢れ出る融液原料を結晶製造装置の主坩堝に導く流路を形成する流路形成部を有する。
副坩堝で貯留される融液原料が結晶製造装置の主坩堝に供給される場合、副坩堝内の融液原料の融液面が、副坩堝の側壁に形成される導入口より下側になるように、融液原料が副坩堝内に貯留される。この状態で副坩堝に固体原料が投入されると、固体原料の投入量に応じた融液原料が、導入口から溢れ出る。導入口から溢れ出た融液原料は、流路形成部内を流過して、結晶製造装置の主坩堝に供給される。
固体原料の投入量に応じて導入口から溢れ出た融液原料が、結晶製造装置の主坩堝に供給されるので、主坩堝への融液原料供給量を制御する別の制御手段を必要としない。そのため装置コストの低減化が可能である。
また本発明によれば、副坩堝の中心軸線に垂直な断面で見た場合、前記融液導入手段の導入口と、前記案内部材の排出口とが、中心に関して、略点対称となる位置にそれぞれ配置される。そのため案内部材の排出口から副坩堝に投入された固体原料は、融液導入手段の導入口に到達するまでに融解される。したがって融解していない固体原料が、導入口から結晶製造装置の主坩堝に供給されることを防止できる。
また本発明によれば、融液原料供給装置に配置される固体原料投入手段が、前記固体原料投入装置である。そのため塊状の固体原料が副坩堝に投入されるときに発生するスプラッシュが抑制されるとともに、発生したスプラッシュの飛散が抑制される。
また本発明によれば、主坩堝内で融解された融液原料から結晶体を成長させる結晶製造装置が、融液原料を貯留する主坩堝と、主坩堝を加熱する加熱手段と、主坩堝に融液原料を供給する前記融液原料供給装置とを含んで構成される。
結晶製造装置の主坩堝内で融液原料から結晶体を成長させる場合、まず融液原料が融液原料供給装置によって主坩堝に供給される。加熱手段によって加熱された主坩堝に投入された融液原料は主坩堝に貯留される。主坩堝に貯留される融液原料は、主坩堝内で結晶を成長させて結晶体を製造するための融液原料となる。そのあと主坩堝および種結晶を回転させた状態で、主坩堝内の融液に種結晶を浸して、引上げを行う。このようにして結晶体が製造される。
結晶製造装置が融液原料供給装置を含んでいるので、主坩堝から引上げられる結晶体の成長容量に応じて、結晶体を成長させる融液原料が融液原料供給装置によって主坩堝に供給される。そのため結晶体を継続的に製造することができる。また加熱手段によって主坩堝を加熱することができるので、主坩堝内で貯留される融液原料を常時融解した状態に維持することができる。
図1は、本発明の実施の一形態である結晶製造装置100の構成を示す断面図であり、図2は、融液原料供給装置20の構成を示す断面図である。結晶製造装置100は、主坩堝101と、加熱手段103と、固体原料投入装置10を有する融液原料供給装置20とを含んで構成される。結晶製造装置100は、たとえばシリコンなどの半導体の結晶体を製造する装置である。
融液原料供給装置20は、結晶体を成長させる主坩堝101に融液原料を供給する装置である。融液原料供給装置20は、副坩堝21と、加熱手段23と、固体原料投入装置10と、融液導入手段25とを含んで構成される。
副坩堝21は、固体原料投入装置10から投入された固体原料4および固体原料4が融解された融液原料5を、貯留する部材である。本実施の形態では、副坩堝21は円筒状に形成され、上面から鉛直方向下方に向けて円柱状の凹所が形成される。副坩堝21の側面および下面には、断熱部材22が被覆される。断熱部材22は、副坩堝21からの放熱を抑制して、副坩堝21が加熱手段23によって効率よく加熱されるための部材である。加熱手段23は、副坩堝21を加熱する手段である。加熱手段23は、副坩堝21の側面を被覆する断熱部材22の周囲を囲むように設けられる。
加熱手段23としては、誘導加熱手段および抵抗加熱手段などによって実現される。前記誘導加熱手段では、副坩堝21の側面を被覆する断熱部材22の周囲を囲むように設けられた誘導加熱コイルに電流を流すことによって、副坩堝21を加熱することができる。前記抵抗加熱手段では、カーボンなどで形成された発熱部材に電流を流すことによって、副坩堝21を加熱することができる。本実施の形態では、加熱手段23は誘導加熱手段であり、誘導加熱コイルは耐火煉瓦で被覆され、輻射熱から保護される。
加熱手段23を副坩堝21の外周に配置することによって、副坩堝21に投入された固体原料4を融解させ、かつ副坩堝21内で貯留される融液原料5を常時融解した状態に維持することができる。
固体原料投入装置10は、塊状の固体原料を副坩堝21に投入する装置である。固体原料投入装置10は、案内部材1と、固体原料供給手段3と、飛散防止部材2とを含んで構成される。固体原料投入装置10は、副坩堝21の開口に対して鉛直方向上方に配置される。
固体原料供給手段3は、固体原料4を案内部材1に向けて落下させて供給する。案内部材1は、固体原料供給手段3によって供給される固体原料4を案内するとともに、鉛直方向の落下速度を減速させ、副坩堝21に投入する。固体原料4が、坩堝内の融液内に進入することで、融液面に対して融液の一部が鉛直方向上方に飛散する。飛散防止部材2は、融液の一部となるプラッシュの拡がりを防ぐ。
図3は、案内部材1の構成を示す斜視図である。図4は、案内部材1の構成を示す上面図である。案内部材1は、固体原料供給手段3から供給された固体原料4を、副坩堝21に導く部材であって、大略的に漏斗形状に形成される。案内部材1は、副坩堝21の開口に対して鉛直方向上方に配置される。案内部材1は、鉛直方向両側に開口が形成される略筒状に形成され、鉛直方向両側に開放される連通空間が形成される。
連通空間は、下方に進むにつれて先細に形成される。本実施形態では、連通空間の下底の中心と上底の中心とを結ぶ直線が、鉛直方向下方に進むにつれて水平方向一方に傾斜する形状に形成される。
案内部材1には、鉛直方向下端部に排出口1bが形成される。排出口1bは、連通空間のうち下方に形成される開口となる。また案内部材1は、鉛直方向上端部に上方側開口が形成される。上方側開口のうちで一部の領域には、前記排出口1bとは水平方向にずれた位置に投入口1dが形成される。また案内部材1は、連通空間に対して、鉛直方向下方から臨む傾斜面1aが形成される。傾斜面1aは、投入口1dから鉛直方向下方に進むにつれて水平方向に進んで排出口1bに連なる。
本実施の形態では、図3(a)および図4(a)に示すように、傾斜面1aは、幅手方向の長さが、投入口1dから排出口1bにわたって投入口1dでの幅と同じ長さに形成される。また、図3(b)および図4(b)に示すように、傾斜面1aの幅手方向の長さが連続的に変化して、投入口1dでの幅が最も短くなるように形成されてもよい。このように傾斜面1aの幅手方向の長さを設定することによって、固体原料4が傾斜面1aを滑り落ちるときに、固体原料4が滑り落ちる方向に対して固体原料4が通過可能な幅が短くならない。そのため、多くの固体原料4が通過する場合であっても、固体原料4が傾斜面1aの途中で集中して詰まってしまうことを抑制することができる。
また案内部材1は、連通空間に対して、傾斜面1aの傾斜方向に垂直で水平な方向にそれぞれ臨む側壁面1cを含んで構成される。
側壁面1cは、傾斜面1aから屈曲して、鉛直方向および傾斜方向を含む平面に平行に延びる。また案内部材1は、連通空間に対して、傾斜面1aと反対側から臨む対向面を含んで形成される。このように傾斜面と、2つの側壁面1cと、対向面とによって、連通空間が規定される。以上のように案内部材1に側壁面1cと、対向面とが形成されるので、固体原料4が傾斜面1aを滑り落ちるとき、固体原料4が傾斜面1aからはみだしてしまうことを抑制することができる。
案内部材1は、坩堝周囲の温度に耐え得る耐熱性を有する材料によって実現される。本実施の形態では、案内部材1は、高温に耐えることができ、安価かつ容易に加工することができる黒鉛によって実現される。また固体原料は、シリコン塊によって実現される。傾斜面1aは、固体原料が傾斜面1aを滑落可能となるように設定され、本実施の形態では、傾斜面1aと水平面とが成す鋭角θは、15°以上40°以下に設定されるが、この設定理由を以下に記述する。
案内部材1の傾斜面1aと水平面とが成す鋭角であるθは、案内部材1と固体原料4との平均静止摩擦係数をμとしたとき、下記式(1)で導かれる範囲に設定される。
0.7tan−1μ≦θ≦2tan−1μ …(1)
傾斜面の角度θが、0.7tan−1μ未満に設定されることで、固体原料4が傾斜面を滑落しないおそれがある。また傾斜面の角度θが、2tan−1μを越えると、固体原料4の落下速度が過剰となり、スプラッシュが大きくなるおそれがある。本実施形態では、傾斜面の角度θを、0.7tan−1μ≦θ≦2tan−1μとすることで、固体原料4を滑落させるとともに、スプラッシュが大きくなることを防ぐことができる。
一例として、平均静止摩擦係数μは、任意に複数、たとえば10個程度選出した固体原料4の、それぞれの静止摩擦係数μ0を平均した値としてもよい。ここで各静止摩擦係数μ0は、案内部材1の材質と同じ材質で作成された試験板材を用いて、任意の角度の傾斜面を形成し、固体原料4が動き始める直前の角度η0を求め、その角度η0を下記式(2)に代入することによって算出する。
μ=tanη0 …(2)
試験板材として黒鉛を用い、固体原料4としてシリコンを用いた場合の平均静止摩擦係数μは、シリコンの形状によってばらつきがあるものの、約0.35程度である。前述の平均静止摩擦係数μの測定結果から、固体原料4として塊状のシリコンを用い、案内部材1の材質として黒鉛を用いた場合、案内部材1の傾斜面1aと水平面とが成す鋭角θは、15°以上40°以下に設定される。
したがって案内部材1の傾斜面1aと水平面とが成す鋭角であるθを15°未満に設定すると、固体原料4が傾斜面1a上で滑らずに止まってしまう。鋭角θを40°を超えて設定すると、固体原料4が傾斜面1aを滑り落ちて、副坩堝21に投入されたとき、副坩堝21に貯留される融液原料5が激しくスプラッシュする。さらに案内部材1から外側に、固体原料4が飛散する場合もある。ここでスプラッシュとは、固体原料4が融液原料5に投入されたときの衝撃によって発生する飛散物質である。
また鋭角θを小さく設定することによって、固体原料4が傾斜面1aを滑り落ちる速度を減速させることができる。また鋭角θを大きく設定することによって、固体原料4が傾斜面1a上で止まることなく滑り落ちる。また鋭角θを大きく設定することによって、案内部材1をコンパクトに設計することができる。
また案内部材1のうち、投入口1dから排出口1bまでの鉛直方向の長さL1、融液導入手段25の導入口25aから排出口1bまでの水平方向の長さL2および排出口1bから副坩堝21内で貯留される融液原料5の融液面までの鉛直方向の長さL4は、固体原料4を投入口1dに供給するためのスペース、供給される固体原料4の大きさおよび固体原料4の投入量などを考慮して設定される。
本実施の形態では、供給される固体原料の形状を球形と見なした場合の直径が40mm程度に対して、投入口1dから排出口1bまでの鉛直方向の長さL1が100mm、導入口25aから排出口1bまでの水平方向の長さL2が150mm、排出口1bから副坩堝21内で貯留される融液原料5の融液面までの鉛直方向の長さL4が30mmで設定される。
図5は、案内部材11の構成を示す斜視図である。また図6は、案内部材11の構成を示す上面図である。案内部材11は、傾斜面11aの幅手方向の長さに関する設定以外は、前記案内部材1と同じ構成である。案内部材11が有する傾斜面11aの幅手方向の長さに関する設定についてのみ以下に記載する。
案内部材11は、投入口11dから鉛直方向下方に進むにつれて水平方向に進んで排出口11bに連なる傾斜面11aが形成される。傾斜面11aは、幅手方向の長さが連続的に変化し、投入口11dでの幅が最も長くなるように形成される。これによって、固体原料4が投入口11dに向けて投入されるときの投入スペースを充分に確保することができるので、固体原料4が投入口11dから外方にはずれて装置の外部に飛散してしまうのを防止することができる。また、案内部材11においては、傾斜面11aは、投入口11dでの幅よりも排出口11bでの幅を短く設定することができる。そのため、排出口11bから副坩堝21に向けて排出される固体原料4を集中させて排出することができ、固体原料4が排出口11bから外方にはずれて装置の外部に飛散してしまうのを防止することができる。
図2に示すように、飛散防止部材2は、固体原料4が副坩堝21に投入されたときに発生するスプラッシュが連通空間よりも上方へ飛散することを抑制する部材である。本実施の形態では、飛散防止部材2は、案内部材1の上端部に載置される。具体的には、飛散防止部材2は、排出口の上方で、かつ傾斜面の上方に配置される。
飛散防止部材2は、断面形状が略L字状となる形状に形成される。飛散防止部材2は、排出口被覆部2bと、排出口被覆部2bから上方に屈曲する屈曲部2aとを含んで構成される。排出口被覆部2bは、板状に形成されて、連通空間のうちで投入口を除く上方側開口を塞ぎ、案内部材1の排出口1bの鉛直方向上方に配置される。また屈曲部2aは、いた上に形成されて、排出口被覆部2bのうち、案内部材1の投入口1d寄りの部分から上方に屈曲する。
図7は、固体原料供給手段3の構成を示す正面図である。図8は、固体原料供給手段3の構成を示す上面図である。固体原料供給手段3は、固体原料4を収容して、収容された固体原料4を案内部材1の投入口1dに供給する手段である。固体原料供給手段3は、凹所が形成される固体原料収容容器3aを含んで構成される。固体原料収容容器3aから案内部材1の投入口1dに固体原料4を供給する場合、固体原料収容容器3aの開口部から案内部材1の投入口1dまでの鉛直方向の長さL3は、固体原料収容容器3aと案内部材1とが接触しないように設定される。
本実施の形態では、長さL3は、20mm以上150mm以下程度の範囲に設定される。長さL3を20mm未満に設定すると、固体原料収容容器3aと案内部材1とが接触する場合がある。また長さL3を150mmを超えて設定すると、固体原料4が案内部材1に供給されたときの衝撃によって、案内部材1が破損したり、固体原料4が案内部材1から外側に飛散する場合がある。
固体原料供給手段3は、固体原料収容容器3aと、シャフト3bと、回転手段と、直動手段とを含んで構成される。固体原料収容容器3aは、固体原料4を収容する凹所が形成され、開口部が正方形である。
シャフト3bは、固体原料収容容器3aの側面に固定される棒状部材である。シャフト3bは、固体原料収容容器3aの正方形状の開口部の一方の対角線が、シャフト3bの軸と平行となり、他方の対角線が垂直となるように、固体原料収容容器3aの側面に固定される。
回転手段は、シャフト3bを介して固体原料収容容器3aを、水平方向に延びる回転軸線まわりBの方向に回転させる。シャフト3bの軸方向Cの一方に案内部材1が配置され、軸方向Cの他方に計量した固体原料4を固体原料収容容器3a内に添加する固体原料添加部が配置される。直動手段は、シャフト3bを介して固体原料収容容器3aを、シャフト3bの軸方向Cの両側に配置される案内部材1と固体原料添加部との間を直線移動させる。
以上のような固体原料供給手段3を用いて、固体原料4を固体原料収容容器3aから案内部材1の投入口1dに供給する場合、まず直動手段が、固体原料収容容器3aを固体原料添加部に移動させる。次に固体原料添加部で、計量された固体原料4が、固体原料収容容器3aに添加される。
そのあと直動手段が、固体原料収容容器3aを案内部材1の投入口1dの鉛直方向上方に移動させる。そのあと回転手段が、シャフト3bを介して固体原料収容容器3aを、水平方向に延びる回転軸線まわりBの方向に回転させ、固体原料4を案内部材1の投入口1dに供給する。このとき固体原料収容容器3aに収容された固体原料4が、固体原料収容容器3aの正方形状開口部の角部に集められた状態で、案内部材1の投入口1dに供給される。
回転手段が固体原料収容容器3aを回転させて、固体原料4が案内部材1の投入口1dに供給されるので、特許文献1,2にそれぞれ記載されるような原料供給管などを使用する必要がない。そのため固体原料4が案内部材1の投入口1dに向けて供給される供給位置を、原料供給管を用いる場合に比べて、固体原料4が投入される副坩堝21に対して低い位置で設定することができる。したがって固体原料4が投入されたときに副坩堝21内で発生するスプラッシュを抑制することができる。
また固体原料4が、固体原料収容容器3aの正方形状開口部の角部に集められた状態で、案内部材1の投入口1dに供給されるので、投入口1dからの飛出しを防ぐために投入口1dを大きくする必要がなく、案内部材1をコンパクトに設計することができ、装置コストを低減することができる。
以上のような本実施の形態の固体原料投入装置10を用いて、塊状の固体原料4が副坩堝21に投入される場合、まず固体原料供給手段3の固体原料収容容器3aに収容されている固体原料4が、案内部材1の投入口1dに供給される。このとき塊状の固体原料4は、1つの塊の重量が約50gで、体積が約50cm3である大サイズの固体原料である。また案内部材1の投入口1dに供給される1回あたりの固体原料4の総重量は約500gで、総体積が約500cm3である。
案内部材1の投入口1dに供給された固体原料4は、案内部材1の傾斜面1aを滑り落ちて、案内部材1の排出口1bから副坩堝21に落下する。固体原料4が案内部材1の傾斜面1aを滑り落ちて、副坩堝21に貯留される融液原料5の融液面に落下するので、後述するように固体原料4の鉛直方向下向きの落下速度が低下される。そのため固体原料4が落下する衝撃によって融液原料5の融液面に発生するスプラッシュを抑制することができる。
また案内部材1の傾斜面1aと水平面とが成す鋭角θが、案内部材1と固体原料4との平均静止摩擦係数μを考慮して導かれる範囲に設定される。そのため固体原料4が案内部材1の傾斜面1aを滑り落ちるときの速度が抑制されながら、固体原料4が副坩堝21に投入される。したがって固体原料4が落下する衝撃によって融液原料5の融液面に発生するスプラッシュをさらに抑制することができる。また固体原料4が案内部材1の傾斜面1a上で静止することがないので、継続的に固体原料4を副坩堝21に投入することができる。
また固体原料4が副坩堝21に投入される案内部材1の排出口1bを、上面側から覆うように飛散防止部材2の排出口被覆部2bが配置されるので、発生したスプラッシュの飛散を抑制することができる。また飛散防止部材2が、排出口被覆部2bのうち、案内部材1の投入口1d寄りの部分から上方に屈曲する屈曲部2aを有するので、案内部材1の投入口1dの上方に配置される固体原料供給手段3から供給される固体原料4の飛散を抑制することができる。
また副坩堝21の開口に対して鉛直方向上方に案内部材1が配置され、かつ案内部材1の排出口1bの上面に飛散防止部材2が配置されているので、副坩堝21の開口は、案内部材1および飛散防止部材2によって覆われる。そのため固体原料4が副坩堝21に投入されることによって発生するスプラッシュが、副坩堝21から外側に飛出すことを防止することができる。
したがって副坩堝21の外側に配置される周辺機器に飛散物質が付着することを防止することができる。さらに副坩堝21の開口は、案内部材1および飛散防止部材2によって覆われるので、副坩堝21に貯留される融液原料5の融液面からの放熱を防ぐことができ、副坩堝21内の融液原料5を効率的に加熱することができる。
また固体原料投入装置10が、副坩堝21の開口に対して鉛直方向上方に配置されるので、固体原料投入装置10を有する融液原料供給装置20の設置面積を、コンパクトに設計することができる。
融液導入手段25は、副坩堝21内に貯留される融液原料5を結晶製造装置100の主坩堝101に導く手段である。融液導入手段25は、副坩堝21の側面に配置され、副坩堝21の側壁に形成される導入口25aから鉛直方向下方に向けて傾斜する流路形成部25bを有する。流路形成部25bは、内部が中空の円筒形状の部材である。導入口25aから溢れ出た融液原料5は、流路形成部25bの内部を流過する。また副坩堝21の中心軸線に垂直な断面で見た場合、導入口25aと案内部材1の排出口1bとが、中心に関して略点対称となる位置にそれぞれ配置される。
本実施の形態では、流路形成部25bの外周には、断熱部材が被覆される。さらに前記断熱部材の周囲を囲むように加熱手段が配置される。流路形成部25bの外周に断熱部材および加熱手段を配置することによって、流路形成部25bを流過する融液原料が、流路形成部25b内部で凝固するのを防止することができる。
以上のような融液導入手段25を用いて、副坩堝21に貯留される融液原料5を結晶製造装置100の主坩堝101に供給する場合、副坩堝21内の融液原料5の融液面が、副坩堝21の側壁に形成される融液導入手段25の導入口25aより下側になるように、融液原料5が副坩堝21内に貯留される。
この状態で副坩堝21に固体原料4が投入されると、固体原料4の投入量に応じた融液原料5が、導入口25aから溢れ出る。導入口25aから溢れ出た融液原料5は、融液導入手段25の流路形成部25b内を流過して、結晶製造装置100の主坩堝101に供給される。
固体原料4の投入量に応じて導入口25aから溢れ出た融液原料5が、結晶製造装置100の主坩堝101に供給されるので、主坩堝101への融液原料供給量を制御する別の制御手段を必要としない。そのため装置コストの低減化が可能である。
また融液原料5が、副坩堝21の側壁に形成される導入口25aから鉛直方向下方に向けて傾斜する流路形成部25b内を流過して結晶製造装置100の主坩堝101に供給されるので、融液原料5が主坩堝101に流下するときの流下速度を低下させることができる。そのため融液原料5が主坩堝101に流下するときの衝撃によって発生する、主坩堝101内の融液原料の融液面の揺れを抑制することができる。その結果、結晶品質の高い結晶体の製造が可能となる。
また副坩堝21の中心軸線に垂直な断面で見た場合、融液導入手段25の導入口25aと、案内部材1の排出口1bとが、中心に関して略点対称となる位置にそれぞれ配置される。そのため案内部材1の排出口1bから副坩堝21に投入された固体原料4は、融液導入手段25の導入口25aに到達するまでに融解される。したがって融解していない固体原料4が、導入口25aから結晶製造装置100の主坩堝101に供給されることを防止できる。
図9は、本発明の実施の第2形態である融液原料供給装置30の構成を示す断面図である。融液原料供給装置30は、案内部材1の傾斜面1aに保護部材31を配置した以外は、前記融液原料供給装置20と同じ構成である。保護部材31についてのみ以下に記載する。
保護部材31は、固体原料4の硬さよりも高い硬さをもつ材料である。固体原料4の硬さよりも高い硬さをもつ材料としては、たとえばセラミックスである炭化ケイ素(SiC)が挙げられる。ここで材料の硬さは、ビッカース硬さであり、JISZ2244に準拠した方法で測定される。保護部材31は、案内部材1の傾斜面1aを覆うように配置される。本実施の形態では、保護部材31は、炭化ケイ素で形成される。シリコンから成る固体原料のビッカース硬さが1000HVに対して、炭化ケイ素から成る保護部材31のビッカース硬さは2200HVである。
以上のように案内部材1の傾斜面1aに、炭化ケイ素で形成される保護部材31を配置して、シリコンから成る固体原料を傾斜面1aに供給する場合、傾斜面1aに固体原料の硬さよりも高い硬さをもつ保護部材31が形成されるので、固体原料が接触することによって保護部材31に衝撃が加えられても、保護部材31の表面に傷が発生することを抑制することができる。
そのため保護部材31の傷に由来する異物の発生を抑制することができ、副坩堝21に異物が混入することを防止できる。副坩堝21に異物が混入することを防止できるので、結晶体が製造される主坩堝にも異物が混入することを防止でき、結晶体の品質を低下させることを防止できる。
また傾斜面1aに傷が発生することを抑制することができるので、傾斜面1aを固体原料が滑り落ちるとき、傾斜面1aの傷部で固体原料が静止することを防止できる。固体原料が傾斜面1a上で静止することを防止できるので、継続的に固体原料を副坩堝21に投入することができる。
保護部材31が形成されていない黒鉛から成る案内部材1の傾斜面1aに、シリコンから成る固体原料を供給する場合、案内部材1の傾斜面1aが削れる場合がある。案内部材1の傾斜面1aが削られると、傾斜面1aの黒鉛成分で構成される黒鉛粒子が発生する。発生した黒鉛粒子が、副坩堝21に混入し、さらに副坩堝21から結晶製造装置の主坩堝に混入する場合がある。黒鉛粒子が混入した主坩堝内で結晶体を成長させると、結晶体の品質を低下させることになる。
図1に示すように結晶製造装置100は、主坩堝101と、加熱手段103と、前記固体原料投入装置10を有する前記融液原料供給装置20とを含んで構成される。
主坩堝101は、融液原料供給装置20から供給される融液原料を、貯留する部材である。本実施の形態では、主坩堝101は円柱状部材であり、上面から鉛直方向下方に向けて円柱状の凹所が形成される。加熱手段103は、主坩堝101を加熱する手段である。加熱手段103としては、誘導加熱手段、抵抗加熱手段などが挙げられる。前記誘導加熱手段では、主坩堝101の外周に設けられた誘導加熱コイルに電流を流すことによって、主坩堝101を加熱することができる。前記抵抗加熱手段では、カーボンなどで形成された発熱部材に電流を流すことによって、主坩堝101を加熱することができる。加熱手段103を主坩堝101の外周に配置することによって、主坩堝101内で貯留される融液原料を常時融解した状態に維持することができる。
融液原料供給装置20は、流路形成部25bのうち、副坩堝21の側壁に形成される導入口25aとは反対側の開口が、主坩堝101の上方になるように配置される。
以上のような結晶製造装置100を用いてシリコン結晶体をチョクラルスキ(CZ)法で製造する場合、まずシーメンス法によって製造される塊状の多結晶シリコン原料が、固体原料投入装置10から副坩堝21に投入される。このとき多結晶シリコン原料の投入量に応じた融液原料が、副坩堝21の側壁に形成される導入口25aから溢れ出る。
導入口25aから溢れ出た融液原料は、流路形成部25b内を流過して、主坩堝101に供給され、貯留される。主坩堝101に貯留される融液原料は、主坩堝101内でシリコン結晶体を製造ための融液原料となる。そのあと主坩堝101および種結晶を回転させた状態で、主坩堝101内の融液に種結晶を浸して、引上げを行う。このようにしてシリコン結晶体が製造される。
結晶製造装置100が融液原料供給装置20を有するので、主坩堝101から引上げられるシリコン結晶体の成長容量に応じて、融液原料が融液原料供給装置20から主坩堝101に供給される。そのためシリコン結晶体を継続的に製造することができる。
また融液原料供給装置20が固体原料投入装置10を備えているので、副坩堝21に投入される固体原料が、シーメンス法によって製造される大サイズの塊状多結晶シリコン原料であっても、副坩堝21に投入されるときに発生するスプラッシュを抑制するとともに、発生したスプラッシュの飛散を抑制することができる。したがって主坩堝101内で製造中のシリコン結晶体に飛散物質が付着することを防止することができる。
また結晶製造装置100は、固体原料4を融解させ融液原料5を貯留する副坩堝21と、副坩堝21から供給された融液原料を貯留する主坩堝101とを有する。副坩堝21の容積は、主坩堝101の容積に比べて小さく設定される。固体原料4を融解させる必要がある副坩堝21の容積が、融液原料を融解された状態で維持するだけでよい主坩堝101の容積よりも小さく設定できるので、各坩堝21,101を加熱手段によって加熱するとき、熱効率がよい状態で加熱することができる。
以上のような本実施の形態は、発明の例示に過ぎず、発明の範囲内において構成を変更することができる。本実施の形態では、固体原料4が固体原料投入装置10から副坩堝21に投入される例を示した。固体原料4が、固体原料投入装置10から結晶体が成長される主坩堝101に投入されてもよい。
また本実施の形態では、副坩堝21で貯留された融液原料5が、副坩堝21の側壁に形成された導入口25aから鉛直方向下方に向けて傾斜する流路形成部25bの内部を流過して、主坩堝101に供給される。副坩堝21から主坩堝101に融液原料5を供給するための構成は、これに限定されるものではなく、副坩堝21と、副坩堝21の外周に設けられる加熱手段23との間に空隙部が形成された構成であってもよい。空隙部は、副坩堝21の外壁を鉛直方向に貫通するように形成される。このような構成では、導入口25aから溢れ出た融液原料5が、空隙部を介して、主坩堝101に供給される。
また副坩堝21は、前記空隙部に隣接する副坩堝21の外壁上面に、前記空隙部に向けて下降勾配になるように形成され、副坩堝21と前記空隙部とを連通させる溝形状の注液手段を含んでもよい。このような構成では、副坩堝21内の融液原料5は、溝形状の注液手段を介して空隙部に流過する。
また前記注液手段が、空隙部に隣接する副坩堝21の外壁上部に該外壁を空隙部に向けて下降勾配になるように挿通し、副坩堝21の外壁側面から空隙部に向けて突出するように設けられ、副坩堝21から溢れ出る融液原料5を流過させる注液筒と、注液筒に対してほぼ垂直になるように注液筒の空隙部側端部またはその近傍に接続され、副坩堝21から注液筒を介して流過する融液原料5を鉛直方向下方に滴下させる滴下部とを含んで構成されてもよい。このような構成では、副坩堝21内の融液原料5は、注液筒を介して滴下部に流過し、そのあと滴下部から空隙部に流過する。
また副坩堝21は、その外壁上面および内壁面に開口部を有する2つの凹所であって、この2つの凹所を結ぶ仮想線が、固体原料投入装置10による固体原料投入位置と前記注液手段とを結ぶ仮想線と交差する2つの凹所が形成され、融液原料5の液面から鉛直方向上方に突出し、固体原料4が供給される側の融液原料5の液面と融液原料5を注液手段内に流入させる側の融液原料5の液面とを仕切るように設けられ、両端部が副坩堝21に形成される2つの凹所に嵌入されて副坩堝21に支持される仕切り板を有してもよい。前記仕切り板によって、副坩堝21に投入される固体原料4が、融液原料5の液面を浮遊し、注液手段近傍に至り、注液手段の融液原料5が流過する流入口を部分的に閉塞させて、融液原料5の注液手段への円滑な流入を阻害するのを防止できる。
また固体原料4が供給される案内部材1の傾斜面1aの表面粗さを粗くして、傾斜面1aに凹凸形状を付けることもできる。傾斜面1aの表面粗さを粗くすることによって、傾斜面1aを滑り落ちる固体原料4の落下速度を低下させることができる。そのため固体原料4が副坩堝21に投入されるときに発生するスプラッシュを抑制することができる。