JP5102850B2 - アルミニウム合金パイプ製品の製造方法 - Google Patents

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本発明は、例えば二輪車用フロントフォークのアウターチューブ等の軟質材(以下、「アルミニウム合金」を意味するものとする。)の厚肉パイプを複数パスでスピニング加工することで該アウターチューブ等としてのアルミニウム合金パイプ製品を製造する、アルミニウム合金パイプの製造方法に関するものである。
従来、二輪車のフロントフォーク等に使用するアウターチューブ等の加工方法としては、図5(正面断面図及び右側面断面図)に示すように、回転する芯金3に加工すべきパイプ材2を挿入して(図5(a))、パイプ材2と芯金3とを一定方向に回転させると共に、パイプ材2の外周にローラー1を圧接し且つ回転させながら軸方向(矢印方向)に移動させて行うスピニング加工を複数パスさせる(図5(b),(c))方法が知られている(特許文献1参照)。
特開2003−56701号公報
しかしながら上記方法によって伸びが少ない軟質材を加工する場合には加工度を大きくすると、表層部に発生するせん断ひずみが大きくなることから、ウロコ状に部材が剥げる剥離が生じることとなる。
この剥離の発生を防止するために従来は加工度を小さくして、剥離が生じない程度までをスピニング加工し、残りの部分を切削加工によって除去していた。
したがって、歩留まりが悪くなり、製造コストも高くなっていた。
本発明は上記点に鑑み、肉厚差の大きい形状に対してもスピニング加工を可能とし、加工度を大きくしても剥離を起こすことがなく、歩留まりを向上させて製造コストを低減することができる軟質材のスピニング加工方法によるアルミニウム合金パイプ製品の製造方法を提供することを目的とする。
本発明のアルミニウム合金パイプ製品の製造方法は、アルミニウム合金からなる厚肉のパイプ材を複数パスでスピニング加工して、アルミニウム合金パイプ製品を製造する製造方法であって、
一方向に回転し、加工すべきパイプ材を共回動するように外挿した芯金と該芯金とは逆方向に回転する複数のローラーとで該ローラの移動方向と該パイプ材の伸びる方向が同じ方向になるようにスピニング加工して第1のパスを行う第1の工程と、
前記第1のパスの回転とは各々反対方向に回転する芯金と前記複数のローラーとで該複数ローラーを第1のパスと同じ送り方向に移動させながらスピニング加工して第2のパスを行う第2の工程とを有していることを特徴とする。
したがって、第1のパスで生じたパイプ材の表層部のひずみが第2のパスで生じるひずみによって打ち消されるため、表層部のひずみを小さくすることができ、加工度を大きくしても剥離が生じるのを防ぐことができる。
上記、手段に記載した通りである。
本発明の第1の実施形態による軟質材のスピニング加工方法を示す説明図である。 加工されるパイプ材を示す説明図である。 本発明と従来の加工方法とでせん断ひずみの大きさを比較した説明図である。 本発明の第2の実施形態による軟質材のスピニング加工方法を示す説明図である。 従来の軟質材のスピニング加工方法を示す説明図である。
1 ローラー
2 パイプ材
3 芯金
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の第1の実施形態による軟質材のスピニング加工方法を示す説明図(正面断面図と右側面断面図)である。この場合に、ローラー1はパイプ材2と芯金3の回転に伴って従動回転しながら軸方向に移動してパイプ材2を芯金3に圧接し、必要な肉厚に調整するのである。尚、加工の対象となるパイプ材2は軟質材であって伸びの少ないもの、一例を挙げればアルミニウム合金等が使用される。
これは伸びの少ない軟質材ほど、従来の方法で加工した場合にはパイプ材2の表層部に剥離が生じ易いことによるものである。
そして、二輪車用フロントフォークのアウターチューブとして加工する場合は一方の端部2aと中間部2bとが厚肉となるように加工調整されるものであり、ローラー1の移動軌跡は図面上、矢印a,bで示している。
先ず、図1(a)に示すようにパイプ材2の一端には小径部2dが形成されており、このパイプ材2の他端から芯金3が挿入され、この芯金3の先端3aが小径部2dに突き当たって支持されるのである。
そして、1パス目(図1(b))の芯金3とパイプ材2の回転を矢印Aに示すように時計回りとした場合には、ローラー1の回転は矢印Bに示すように反時計回りとなる。
次に、2パス目(図1(c))の芯金3とパイプ材2の回転を矢印Cに示すように反時計回り、即ち、1パス目の回転方向とは反対方向に回転させるのである。この場合にローラー1の回転は矢印Dに示すように時計回りとなり、1パス目の回転方向とは反対方向に回転することとなるのである。
上述のように、芯金とパイプ材の回転を1パス目と2パス目とで、逆方向とする効果について、図2及び図3に基づいて以下に説明する。
前述したように、スピニング加工では表面層に大きなせん断ひずみが発生する。即ち、図2のパイプ材2におけるr−θ断面を考えると、従来の方法では複数パス全てにおいて芯金3を同じ方向に回転させるため、図3(b)に示すように、せん断ひずみはパスを重ねる毎に大きくなっていく。
一方、本発明では1パス目の芯金3の回転方向に対して2パス目の芯金3の回転方向を反対方向とするため、図3(a)に示すように、例えば1パス目で図面上、右方向にひずみが生じるものであるが、2パス目及び3パス目では左方向にひずみを生じさせていることから1パス目のひずみが打ち消されることとなって、結果としてせん断ひずみを小さくすることができるのである。尚、この効果は有限要素法を使用したコンピューターシュミレーションによっても確認されている。
図4は本発明の第2の実施形態による軟質材のスピニング加工方法を示す説明図である。この方法と上記第1の実施形態の方法との相異点は複数のローラー1a,1aを使用する点である。ローラーが1個の場合には芯金に若干のたわみが生じるが、ローラーを複数にすることによって芯金周りの力のバランスがとれるため、芯金のたわみを小さくすることができ、加工精度を良くすることができるのである。尚、他の部分については図1に示した第1の実施形態と同様なので説明は省略する。
また、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の実施形態をとるこができることは言うまでもない。即ち、上記実施形態では1パス目の芯金の回転方向と2パス目の回転方向とを反対方向にしているものであるが、これに限定されるものではなく、1パス目と2パス目の芯金の回転方向を同じ方向にして、3パス目を反対方向にする方法であってもよいものである。
つまり、本発明におけるローラーは複数パスのスピニング加工を行うものであり、そのうちの1回又は複数回のスピニング加工における芯金の回転方向が1パス目の芯金の回転方向とは反対の方向に回転させるものであれば、パイプ材の表層部に生じるせん断ひずみが打ち消されることとなって本発明における効果を奏することができるのである。

Claims (1)

  1. アルミニウム合金からなる厚肉のパイプ材を複数パスでスピニング加工して、アルミニウム合金パイプ製品を製造する製造方法であって、
    一方向に回転し、加工すべきパイプ材を共回動するように外挿した芯金と該芯金とは逆方向に回転する複数のローラーとで該ローラの移動方向と該パイプ材の伸びる方向が同じ方向になるようにスピニング加工して第1のパスを行う第1の工程と、
    前記第1のパスの回転とは各々反対方向に回転する芯金と前記複数のローラーとで該ローラーを第1のパスと同じ送り方向に移動させながらスピニング加工して第2のパスを行う第2の工程と、を有したこと特徴とするアルミニウム合金パイプ製品の製造方法。
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